説明

二輪車用フロントフォーク

【課題】二輪車用フロントフォークにおける耐久性向上と同時に走行安定性と乗り心地を改善させるもの、および異常な衝撃を受けた場合でも、それを吸収し、和らげる二輪車用フロントフォークを提供する。
【解決手段】インナーチューブ3に内挿入する円筒4に、上下キャップ43,41を設け、上キャップ43に貫通するとともに上端をアウターチューブ端部材71に固定した棒状ロッド6にピストン5が取り付けられ、ピストン5の往復する動きに応じて上下のオイル室44,45を行き来できるようにした二輪車用フロントフォークであって、前記のロッド6の表面にイソナイトLS処理を施す。また、前記のフロントフォークのインナーチューブ3に内挿入する円筒下端キャップ41の中央にニードル42を設け、ロッド6に下端からニードル42に嵌合する孔61を設け、当該孔61の側壁に開放したオイル通路孔62を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二輪車の前輪側に架装されて前輪に影響する路面振動がライダーに伝達するのを和らげるフロントフォークの改良に関するものである。 詳しくは、簡単な構造の廉価な二輪車用フロントフォークにおける不快な振動を低減して、走行安定性と乗り心地を向上させるものである。
【背景技術】
【0002】
従来の簡単な構造の廉価な二輪車用フロントフォークの機構は内部にスプリングのみが入っている構造で、フロントフォークの動きが悪く、乗り心地が不快で走行安定性が低いという問題が多くある。小型の廉価な二輪車なので、生産コスト上やむを得ないことでもあるが、できれば快適な走行をするために、より円滑で細かな作動をするフロントフォークも求められている。大型のオートバイではダンパーが内装されているフロントフォークが広くもちいられていて、多くのもの(例えば特許文献1参照)の技術が公開されている。
【0003】
しかし、フロントフォークが最大ストロークになった場合には、底着きを起こして、異常な衝撃を受け、不快な乗車感となったもので、これを防止するために各種緩衝部材を組み込んではいるが、十分な効果が得られていない。
また、フロントフォークを過酷な条件で使用していると、内部のダンパーのピストンロッドが磨耗して、時には焼付きやひどい変形を生じてしまう問題が多くあった。
これらの問題を解決することが、市場から強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献1】 実公昭58−1103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような問題を解決すると共に、多くの市場の要求にも応えようとするものである。即ち、簡単な構造の廉価な二輪車用フロントフォークにおける耐久性向上と同時に走行安定性と乗り心地を改善させるもの、および異常な衝撃を受けた場合でも、それを吸収し、和らげる二輪車用フロントフォークを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、この発明の二輪車用フロントフォークは、アウターチューブとインナーチューブが互いに摺動自在に嵌合し、インナーチューブに内挿入する円筒に、当該円筒の上下端を閉じるキャップを設け、上端キャップに貫通するとともに上端をアウターチューブ端部材に固定した棒状ロッドを設け、当該ロッドの下端には、前記円筒の内壁に接して往復するピストンが取り付けられ、当該ピストンには円筒軸方向に貫通するオイル通路の孔を設け、前記円筒内のピストン上下の空間に充填されたオイルが、ピストンの往復する動きに応じて上下のオイル室を行き来できるようにした二輪車用フロントフォークであって、前記のロッド表面にイソナイトLS処理を施す。
【0006】
また、前記のフロントフォークのインナーチューブに内挿入する円筒下端キャップの中央に内側に向けたニードルを設け、当該ニードルの軸心に一致させて、ロッドに下端からニードルに嵌合する孔を設け、当該孔の底の側壁に開放したオイル通路孔を設けることである。
【発明の効果】
【0007】
以上のとおり、本発明によれば、以下の多くの優れた効果を奏する。
請求項1の発明によれば、オイルダンパーを設けたことによって、走行安定性に優れ、快適な乗り心地が得られる。そして、ロッド表面にイソナイトLS処理を施したことによって、耐摩耗性、耐かじり性、耐焼付性が極めて向上するので、特に悪路走行におけるフロントフォークの著しい耐久性が得られる。
【0008】
また、請求項2の発明によれば、前記ロッドとニードルが勘合してオイル通路を制御させることによって、フロントフォークが通常の範囲でストロークする際には作用しないで、通常の範囲を超えた異常のショックを受けて、フロントフォークが底着きした場合にはオイル流路面積が変化して、ダンパー作用を変化させることができる。即ち、ライダーが受けるショックの衝撃感を和らげることができると、共に車体への異常な衝撃を与えることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、この発明の第一実施例の断面概略図で、図2は図1のフロントフォークが最大ストロークした状態の断面概略図である。
図1で示すように、この発明におけるフロントフォーク1は、アウターチューブ2とインナーチューブ3が互いに摺動自在に嵌合し、インナーチューブ3に内挿入する円筒4に、当該円筒4の下端を閉じる円筒下端キャップ41と上端を閉じる円筒上端キャップ43とを設け、円筒上端キャップ41に貫通するとともに上端をアウターチューブ2の端部材である上スプリングサポート71にネジ込みで固定した丸棒状のロッド6を設け、当該ロッド6の下端には、前記円筒4の内壁に接して往復するピストン5が取り付けられ、当該ピストン5には円筒軸方向に貫通するオリフィス状のピストンオイル通路孔51を設け、前記円筒内のピストン5上下の空間である上オイル室44と下オイル室45に充填されたオイルが、ピストン5の往復する動きに応じて上下のオイル室44、45を行き来できるようにする。そしてアウターチューブ2とインナーチューブ3が互いに摺動自在に嵌合し会う場所であるアウターチューブ2下端部には、ダストシール9を被せる。
前記のロッド6の全体の表面にイソナイトLS処理を施しておく。
【0010】
前記イソナイトLS処理とは、リチウムを含む塩浴軟窒化処理であり、現在、各種機械的強度を向上させながら耐食性を要求される部品には、窒化処理後に後工程を施すことで要求を満足させている手法が主となっている。
これによって、前記ロッド6が著しい耐磨耗性や耐疲労強度が増して、多くの過激な衝撃の繰り返しにも耐える、十分な耐久性が得られている。
【0011】
そして、前記フロントフォークは以下のように作用する。
図2で示すように、フロントフォーク1が縮む方向にストロークすると円筒4の内部に封じ込められたオイルは、下オイル室45から上オイル室44へピストン5のオイル通路孔51を経過して矢印のように急速に流れて移動する。また、反対にフロントフォーク1が伸びる方向にストロークすると円筒4の内部に封じ込められたオイルは、上オイル室44から下オイル室45へ戻り、これを繰り返して、路面の凹凸によるフロントフォーク1の徴細な伸縮で発生する不快な振動を吸収する作用によって快適な乗車が得られることになる。
【0012】
更に、フロントフォーク1が最大ストロークを超えるほどの異常な衝撃力を受ける恐れがある場合には、必要に応じて、前記上スプリングサポート71の下端面に接して、短円筒形の所定厚さに形成したストッパバンプラバー8を設けておくと好ましい。
尚、明らかに異常な衝撃がない場合や衝撃吸収の他の手段の場合は省略可能である。
【0013】
前記ストッパバンプラバー8の作用は、フロントフォーク1が縮む方向に最大ストロークを超える程の、異常に大きな衝撃を受けた場合に、スプリング7やロッド6が座屈破損を生じやすいので、これを防止するためにゴムの弾性で衝撃を吸収させるのである。
【0014】
図3は、この発明の第二実施例の断面概略図で、図4は図3のフロントフォークが最大ストロークした状態の断面概略図である。
図3に示すように、前記のフロントフォークのインナーチューブ3に内挿入する円筒4の円筒下端キャップ41の中央に内側に向けたニードル42を設け、当該ニードル42の軸心に一致させて、ロッド6に下端からニードル42に嵌合する孔61を設け、当該ニードル嵌合孔61の底の側壁に開放したロッドオイル通路孔62を設けているものである。
【0015】
前記ニードル42の先端テーパー角度は2〜10度程度とし、嵌め合うロッド6の孔61はテーパー無しの円筒状で直径は3〜5mm程度にて、それぞれ最適なものを選択して決定する。ニードル嵌合孔61の左右に開けられたロッドオイル通路孔62は、ニードル42で制御されたオイルが流出できる十分な適当な大きさでよい。
【0016】
以上のように構成されているので、最大ストロークに近い大きなストロークに場合には、テーパー状のニードル42がピストン5のロッド6の先端にあるニードル嵌合孔61に挿入され、ニードル42によってオイル通路が狭くなって、オイルが流出する抵抗が増加する。従って、この抵抗がダンパーとして作用するので、衝撃を和らげることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の第一実施例の断面概略図である。
【図2】図1のフロントフォークが最大ストロークした状態の断面概略図である。
【図3】この発明の第二実施例の断面概略図である。
【図4】図3のフロントフォークが最大ストロークした状態の断面概略図である。
【符号の説明】
【0018】
1 フロントフォーク
2 アウターチューブ
3 インナーチューブ
4 円筒
41 円筒下端キャップ
42 ニードル
43 円筒上端キャップ
44 上オイル室
45 下オイル室
5 ピストン
51 ピストンオイル通路孔
6 ロッド
61 ニードル嵌合孔
62 ロッドオイル通路孔
7 スプリング
71 上スプリングサポート
72 下スプリングサポート
8 ストッパバンプラバー
9 ダストシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブとインナーチューブが互いに摺動自在に嵌合し、インナーチューブに内挿入する円筒に、当該円筒の上下端を閉じるキャップを設け、上端キャップに貫通するとともに上端をアウターチューブ端部材に固定した棒状ロッドを設け、当該ロッドの下端には、前記円筒の内壁に接して往復するピストンが取り付けられ、当該ピストンには円筒軸方向に貫通するオイル通路の孔を設け、前記円筒内のピストン上下の空間に充填されたオイルが、ピストンの往復する動きに応じて上下のオイル室を行き来できるようにした二輪車用フロントフォークであって、前記のロッド表面にイソナイトLS処理を施したことを特徴とする二輪車用フロントフォーク。
【請求項2】
前記のフロントフォークのインナーチューブに内挿入する円筒下端キャップの中央に内側に向けたニードルを設け、当該ニードルの軸心に一致させて、ロッドに下端からニードルに嵌合する孔を設け、当該孔の側壁に開放したオイル通路孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載する二輪車用フロントフォーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−223420(P2010−223420A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96476(P2009−96476)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(592016485)株式会社デイトナ (8)
【Fターム(参考)】