説明

二重エアゾール容器

【課題】二重エアゾール容器のクリンチの際に、内袋の落下を防止した二重エアゾール容器。
【解決手段】エアゾール容器1本体のビード部2と、マウンテイングカップ3の逆U字溝4内に装着されるガスケット7の間に内袋5を挟み、かつ上方からマウンテイングカップ3をクリンチすることにより、エアゾール容器1内に内袋5を懸吊又は載置する二重エアゾール容器において、クリンチの際に内袋5の落下を防止するため、前記内袋5のフランジ部に代えて、内袋5先端部に、内袋5の胴部の肉厚より、肉厚の厚い落下防止部6を形成すると共に、前記逆U字溝4内に装着されるガスケット7を、ビード部2天面に当接したことを特徴とする二重エアゾール容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二重エアゾール容器に関し、さらに詳しくはマウンティングカップをクリンチする際に、内袋の落下を防止した二重エアゾール容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール容器から噴出する内容物と、この内容物を収納した内袋を加圧するためのプロペラントとを分離して、エアゾール容器内に充填する二重エアゾール容器が使用されている。このような二重エアゾール容器は、通常アルミニウム或はスチール等の金属で造られたエアゾール容器と、このエアゾール容器内に懸吊され又はエアゾール容器内に載置され、かつプロペラントの押圧力で潰される合成樹脂製或は金属製の内袋の二重構造から構成されている。このような二重エアゾール容器は、バルブと一体となったマウンテイングカップを、クリンチコレット爪によって、内側から外部に押し広げるようにして、開口のビード部に取り付けて固定(以下「クリンチ」という)するものである。このよう
な従来のエアゾール容器のクリンチ構造には、第13図及び図14に示すようなものがある。第13図中50はエアゾール容器であり、その開口部のビード部51上には、内袋52の開口に形成されるフランジ部53が当接し、さらにその上部から、環状の逆U字溝55内にガスケット56が内装された、マウンティングカップ54が被せられ、図14に示すように、クリンチコレット爪59によりクリンチされている。
【0003】
すなわち図13及び図14に示すクリンチ構造は、内袋52のフランジ部53が、ビード部51の天面と、逆U字溝55のガスケット56により挟着されているが、このような従来の実施例においては、図15に示すようなネッキング加工時に、ビード部51に形成される複数の皺58を伝って、プロペラントが外部に漏洩するという欠点があった。特に外径の大きなエアゾール容器において、その開口部をネッキング加工する場合、ビード部51に皺58の発生が顕著であった。そして、内袋52のフランジ部53をビード部51の天面51aに当接するだけでは、このプロペラントの漏洩を確実に防止できないという欠点があった(文献1の図8参照)。
【0004】
そこで、図16及び図17に示すように、エアゾール容器50のビード部51の天面51aと、逆U字溝55の間に、Oリング60を装着することにより、図17に示すように、ビード部51の天面51aの皺58からのプロペラントの漏洩を、このOリング60で遮断する発明が案出された。しかし、この図16及び図17に示す発明では、Oリング60の部品が新たに必要となり、二重エアゾール容器50の製造コストが高くなると共に、Oリング60取付作業に手数を要するという欠点がある(文献1の図3(a)、図4(d)参照)。
【0005】
又、図18は他の実施例である、従来の二重エアゾール容器を示す図面である(文献2参照)。この従来の二重エアゾール容器の構造は、内袋62のフランジ部63を、エアゾール容器65のビード部61の天面61a付近で切断し、フランジ部63を短く形成したものである。そして、ビード部61の天面にはガスケット64が装着されている。この従来の実施例においては、短くしたフランジ部63と、内袋62の胴部の肉厚が同一であるため、クリンチの際に内容物の重量で、内袋62がビード部61からエアゾール容器65内に落下したり、又フランジ部63とビード部61の間から、プロペラントをエアゾール容器内に充填(所謂アンダーカップ充填)する際に、プロペラントの充填圧力で、内袋62の短いフランジ部63が、エアゾール容器65内に落ち込んでしまうという欠点があった。
【特許文献1】特開2003−20082号
【特許文献2】実開平4−21488号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、このような問題を解決したものであり、二重エアゾール容器に関し、プロペラントを充填しマウンティングカップをクリンチする際に、内袋の落下を防止すると共に、プロペラントの漏洩を確実に防止でき、さらには製造コストが安価な二重エアゾール容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、エアゾール容器本体のビード部と、マウンテイングカップの逆U字溝内に装着されるガスケットの間に、内袋の先端部を挟み、かつ上方からマウンテイングカップをクリンチすることにより、エアゾール容器内に内袋を懸吊又は載置する二重エアゾール容器において、クリンチの際に内袋の落下を防止するため、内袋のフランジ部に代えて、内袋の先端部に、内袋の胴部の肉厚より、肉厚が厚い落下防止部を形成すると共に、逆U字溝内に装着されるガスケットを、ビード部天面に当接したことを特徴とする二重エアゾール容器である。
【0008】
請求項2記載の発明の解決手段は、内袋の落下防止部は、マウンテイングカップの逆U字溝と、ビード部の間に挟着され、内袋の落下を防止できる程度に厚肉に形成されることを特徴とする二重エアゾール容器である。
【0009】
請求項3記載の発明の解決手段は、内袋の落下防止部は、断面形状が円形状、楕円形状、三角形状、矩形状又は折り曲げ形状から1つ選ばれる形状であることを特徴とする二重エアゾール容器である。
【0010】
請求項4記載の発明の解決手段は、ガスケットは、ビード部天面及びビード部天面外側に当接し、かつ前記落下防止部は、ビード部天面内側に当接することを特徴とする二重エアゾール容器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プロペラントを充填しマウンティングカップをクリンチする際に、内袋の落下を確実に防止することができる効果を有し、かつビード部の皺を伝うプロペラントの漏洩を確実に防止できる効果を奏する。又製造コストが安価な二重エアゾール容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施例を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、この発明の実施例1を示す図面であり、図11及び図12のA矢視図の拡大断面を示す。エアゾール容器1のビード部2と、マウンテイングカップ3の逆U字溝4内に装着されたガスケット7の間には、内袋5の先端部に形成された落下防止部6が挟着されている。この実施例1の落下防止部6は、先端部の断面が円形状又は楕円形状を呈している。内袋5の先端に、内袋5の胴部の肉厚より肉厚の厚い落下防止部6を形成することで、プロペラントを充填しマウンティングカップをクリンチする際に、ビード部2とマウンティングカップ3の隙間に、落下防止部6が引っかかるので、確実に内袋5の落下を防止することができる。
【0014】
図2は、この実施例1において、プロペラントを充填した後、マウンティングカップ3をクリンチする状態を示す図面である。マウンティングカップ3を下降すると同時に、クリンチコレット爪8の先端をマウンティングカップ3の側面に当接して、内側から外部に押し広げるようにして、エアゾール容器1のビード部2に、バルブ付マウンティングカップ3を固定するものである。この際、内袋5を挟着してクリンチするが、内袋5の落下防止部6は、ビード部2とマウンテイングカップ3の隙間に、落下防止部6が確実に挟まっているため、内袋5はエアゾール容器1内に落下しない。この落下防止部6が形成されていない場合は、内袋5は、引掛る部位がないためクリンチの際に、内容物の重量又はプロペラントの充填圧力で落下する虞がある。クリンチと同時に、図2に示すように、ガスケット7が、ビード部2の天面2aに強く当接するので、ビード部2の天面2aの皺を伝って、プロペラントが漏洩するのを確実に防止することができる。
【実施例2】
【0015】
図3は、この発明の実施例2を示す図面であり、図11及び図12のA矢視図の拡大断面を示す。実施例2の落下防止部16は、先端部の断面が矩形状を呈している。実施例1同様、内袋5の先端部に、内袋5の胴部の肉厚より肉厚の厚い落下防止部16を形成することで、プロペラントを充填しマウンティングカップをクリンチする際に、落下防止部6が、ビード部2とマウンテイングカップ3の隙間に、落下防止部6が引っかかるので、内袋5の落下を防止できる。
【実施例3】
【0016】
図4は、この発明の実施例3を示す図面である。実施例1と異なるのは、この実施例3の落下防止部26は、先端部の断面が折曲げ形状を呈している。この落下防止部26の断面形状以外は、実施例1と同様の構成である。
【実施例4】
【0017】
図5は、この発明の実施例4を示す図面である。実施例1と異なるのは、この実施例4の落下防止部36と、ガスケット7が、マウンティングカップ3の逆U字溝4内において、ほぼ2分するように収納される実施例である。すなわち、実施例5の落下防止部36の肉厚は他の実施例より厚い点が特徴である。図6に示すように、ガスケット7は、ビード部2の天面2a及び天面外側2bに当接し、かつ落下防止部36は、ビード部2の天面内側2cに当接する。そして、ガスケット7が、ビード部2の天面2a及び天面外側2bに当接するので、ビード部2に形成された皺を伝って漏洩するプロペラントを確実に遮断することができる。そして、プロペラントを充填しマウンティングカップ3を、クリンチコレット爪8によって、クリンチする際に、肉厚の厚い落下防止部36が内袋5の落下をより確実に防止する。
【0018】
図7〜図10は、この発明に係る実施例1〜実施例4の内袋5の胴部の肉厚Sと、内袋5の先端に形成される落下防止部6、16、26、36の肉厚Tを示している。落下防止部6、16、26、36は、エアゾール容器1のビード部2とマウンティングカップ3の隙間から、内袋5が、内容物の重量又はプロペラントの充填圧力により落下しない程度に厚肉に形成されている。図7〜図10図において、内袋5の胴部の肉厚をS、内袋5の落下防止部6、16、26、36の肉厚をTとすると、1<T/S≦4である。T/Sの値を小さくすると、内袋5がビード部2とマウンティングカップ3の隙間から落下し易くなり、又T/Sを大きくすると、落下し難いが、落下防止部6、16、26、36の形成に手数を要するという欠点がある。好ましくは1.5≦T/S≦2.5であり、より好ましくはT/S=2が適する。落下防止部6、16、26、36の製造方法は、例えばT/S=2の場合は、内袋5の胴部の途中を外側に膨出させ、上下に重ね合わせて溶着し、肉厚を2倍に形成することにより製造することができる。
【0019】
図11及び図12は、この発明に係る実施例1〜実施例4において、マウンティングカップをクリンチしたエアゾール容器1、11を示す図面である。図11は、エアゾール容器1内に、内容物が充填された内袋5が懸吊されている実施例である。この発明によれば、内袋5がエアゾール容器1内に吊した状態でクリンチされるので、クリンチの際に内容物の重量で、内袋5がビード部2から落下し易いのを防止できる。又、図12は、エアゾール容器11内に、内容物が充填された内袋15が、エアゾール容器11の底部11a上に載置されている実施例である。この実施例の場合、内袋15の底部15aが、エアゾール容器11の底部11a上に載置された状態でクリンチされるので、クリンチの際に内袋15が、ビード部12から外れ落下する虞は少ない。しかし、この発明によれば、プロペラントをエアゾール容器11内に充填する際に、プロペラントの充填圧力で、内袋5がエアゾール容器11内に落ち込んでしまうのを防止できる。なお、内袋5及び落下防止部6、16、26、36の素材は、合成樹脂の単層、多層又はアルミ箔を有するラミネート材等のいずれであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明に係る二重エアゾール容器は、プロペラントを充填した後、マウンティングカップをクリンチする際に、内袋の落下を防止した二重エアゾール容器であり、かつビード部の皺を伝うプロペラントの漏洩を完全に遮断することができるので、内袋内に内容物として、食品、薬剤、化粧品、接着剤又は染毛剤を広く充填することができる。又従来の二重エアゾール容器に比し、製造コストが安価であるから、本発明は、従来のすべての二重エアゾール容器に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施例1の二重エアゾール容器を示す図11及び図12のA矢視拡大断面図。
【図2】本発明に係る実施例1のクリンチの状態を示す拡大断面図。
【図3】本発明に係る実施例2の二重エアゾール容器を示す図11及び図12のA矢視拡大断面図。
【図4】本発明に係る実施例3の二重エアゾール容器を示す図11及び図12のA矢視拡大断面図。
【図5】本発明に係る実施例4の二重エアゾール容器を示す図11及び図12のA矢視拡大断面図。
【図6】本発明に係る実施例4のクリンチの状態を示す拡大断面図。
【図7】本発明に係る実施例1の二重エアゾール容器内袋の胴部及び落下防止部の各々の肉厚を示す拡大断面図。
【図8】本発明に係る実施例2の二重エアゾール容器内袋の胴部及び落下防止部の各々の肉厚を示す拡大断面図。
【図9】本発明に係る実施例3の二重エアゾール容器内袋の胴部及び落下防止部の各々の肉厚を示す拡大断面図。
【図10】本発明に係る実施例4の二重エアゾール容器内袋の胴部及び落下防止部の各々の肉厚を示す拡大断面図。
【図11】内袋懸吊タイプの二重エアゾール容器を示す断面図。
【図12】内袋載置タイプの二重エアゾール容器を示す断面図。
【図13】従来の二重エアゾール容器において、クリンチの状態を示す拡大断面図。
【図14】従来の二重エアゾール容器において、クリンチの状態を示す拡大断面図。
【図15】従来の二重エアゾール容器において、口部の皺を示す拡大断面図。
【図16】従来の二重エアゾール容器において、Oリングのクリンチ状態を示す拡大断面図。
【図17】従来の二重エアゾール容器において、Oリングのクリンチ状態を示す拡大断面図。
【図18】従来の二重エアゾール容器において、他の実施例を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0022】
1、11 エアゾール容器
2 ビード部
2a 天面
3 マウンテイングカップ
4 逆U字溝
5 内袋
6、16、26、36 落下防止部
7 ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器本体のビード部と、マウンテイングカップの逆U字溝内に装着されるガスケットの間に内袋の先端部を挟み、かつ上方からマウンテイングカップをクリンチすることにより、エアゾール容器内に内袋を懸吊又は載置する二重エアゾール容器において、
クリンチの際に内袋の落下を防止するため、前記内袋のフランジ部に代えて、内袋の先端部に、内袋の胴部の肉厚より、肉厚の厚い落下防止部を形成すると共に、前記逆U字溝内に装着されるガスケットを、ビード部天面に当接したことを特徴とする二重エアゾール容器。
【請求項2】
前記内袋の落下防止部は、マウンテイングカップの逆U字溝と、ビード部の間に挟着され、内袋の落下を防止できる程度に厚肉に形成されることを特徴とする請求項1記載の二重エアゾール容器。
【請求項3】
前記内袋の落下防止部は、断面形状が円形状、楕円形状、三角形状、矩形状又は折り曲げ形状から1つ選ばれる形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の二重エアゾール容器。
【請求項4】
前記ガスケットは、ビード部天面及びビード部天面外側に当接し、かつ前記落下防止部は、ビード部天面内側に当接することを特徴とする請求項1〜3記載の二重エアゾール容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−57110(P2009−57110A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120114(P2008−120114)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】