説明

交流電源装置

【課題】スイッチ素子の数を削減することによりコストを低減できる交流電源装置。
【解決手段】直流電源Vinと、1次巻線P1と2次巻線S1とを有するトランスT1と、直流電源にトランスの1次巻線を介して接続されるスイッチ素子SW1と、トランスの2次巻線に発生した電圧を入力して交流電圧を出力する出力回路2と、第1期間と第2期間との合計期間を1周期とする駆動信号によりスイッチ素子をオン/オフ動作させる制御回路10と、第2期間にトランスをリセットさせるリセット回路1とを備え、制御回路は、第1期間ではスイッチ素子のオン期間の合計がオフ期間の合計よりも長くなるように駆動信号を生成し、第2期間ではスイッチ素子のオフ期間の合計がオン期間の合計よりも長くなるように駆動信号を生成し、交流電圧の波形を略正負対称とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧をトランスを介して交流電圧に変換し変換された交流電圧を負荷に供給する交流電源装置に関し、特に交流電圧を負荷としての放電灯に供給して放電灯を点灯させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電源装置は、直流電圧をトランスを介して交流電圧に変換するもので、交流電圧により負荷を駆動することができる。この交流電源装置に負荷を接続した装置の一例としては、交流電圧により負荷としての冷陰極放電灯を点灯させる放電灯点灯装置が知られている。
【0003】
冷陰極放電灯(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)は、一般的に、交流電源装置により、数10kHzの周波数で且つ数百V〜千数百Vの電圧が印加されることにより点灯する。また、外部電極蛍光灯(EEFL:External Electrode Fluorescent Lamp)と呼ばれる蛍光管もある。外部電極蛍光灯と冷陰極放電灯とは電極の構造が相違し、それ以外の相違はほとんどなく、発光原理も冷陰極放電灯と同じである。このため、外部電極蛍光灯や冷陰極放電灯を点灯させるための交流電源装置は、原理的には同じである。このため、以下、冷陰極放電灯(放電灯と略称する。)を用いて説明する。
【0004】
放電灯と交流電源装置は、液晶TV、液晶モニタ、照明装置、液晶表示装置、看板などに用いられている。交流電源装置に求められる特性としては、(a)交流電圧周波数が50kHz程度であり、(b)放電灯に印加される電圧は交流電圧で、正負対称の波形である。
【0005】
(a)について、放電灯に印加される電圧周波数は、一般的におおよそ10kHz〜100kHz程度である。これは、放電灯の輝度特性や効率特性、放電灯をセットに組み込んだときの輝度特性など、様々な特性を考慮し、ユーザーが決定する。交流電源装置は、決定された周波数、又はその付近の周波数で駆動される。このため、交流電源装置の都合で周波数を設定、変化させることができないことが多い。液晶TVや液晶モニタ、照明装置などではおおよそ50kHz付近で用いられることが多いので、以下、50kHzの交流電源装置を用いるものとする。
【0006】
(b)について、一般的に、放電灯に印加される電圧は交流電圧で、正負対称の波形である必要がある。放電灯はガラスのチューブ状になっており、内部には水銀、希ガス等が封入されている。この放電灯に直流電圧を印加しても発光はする。しかし、内部の水銀が片方に片寄ってしまい、次第に放電灯両端での輝度に差が出てきてしまうため、寿命が著しく短くなる。このため、放電灯には交流電圧を印加するが、交流電圧であっても電圧波形の正負の形に違いがあれば、水銀分布の偏りが生じてしまう可能性がある。このため、正負対称の波形を印加することが求められる。また、理想的には正弦波や台形波が良く、実際にも正弦波電圧を印加するシステムが多い。
【0007】
従来の放電灯点灯装置の回路構成を図18に示す。この放電灯点灯装置は、4個のスイッチ素子SW1〜SW4を用いたフルブリッジ方式と呼ばれるもので、交流電源25の交流電圧を全波整流回路26及び平滑コンデンサ27で整流平滑して得られた直流電圧をスイッチ素子SW1〜SW4でスイッチングして50kHzの正負対称の矩形波信号を生成し、この矩形波信号を絶縁トランスT10で絶縁し、昇圧トランスT20で昇圧して、交流電圧として正負対称の正弦波を得ている。また、2個のスイッチ素子を用いたハーフブリッジでもフルブリッジ構成と同様に構成できる。
【0008】
これらの放電灯点灯装置は、2個以上のスイッチ素子を用いて正負対称の波形を得ている。スイッチ素子の数に応じて、ハイサイドドライバ、ロードサイドドライバ、絶縁素子など、スイッチ素子の駆動回路が増加する。このため、部品コスト、製造コスト、実装面積も増加する。また、スイッチ素子自体の部品コストも増大する。
【0009】
なお、従来の技術として例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開平8−162280号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、スイッチ素子の数は2個以上必要であり、部品実装面積、部品コスト、製造コストが増加する。
【0011】
本発明は、スイッチ素子の数を削減することによりコストを低減できる交流電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、直流電源と、1次巻線と2次巻線とを有する第1トランスと、前記直流電源に前記第1トランスの1次巻線を介して接続される第1スイッチ素子と、前記第1トランスの2次巻線に発生した電圧を入力して交流電圧を出力する出力回路と、第1期間と第2期間との合計期間を1周期とする駆動信号により前記第1スイッチ素子をオン/オフ動作させる制御回路と、前記第2期間に前記第1トランスをリセットさせるリセット回路とを備え、前記制御回路は、前記第1期間では前記第1スイッチ素子のオン期間の合計がオフ期間の合計よりも長くなるように前記駆動信号を生成し、前記第2期間では前記第1スイッチ素子のオフ期間の合計がオン期間の合計よりも長くなるように前記駆動信号を生成し、前記交流電圧の波形を略正負対称とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載の交流電源装置において、前記駆動信号はパルス信号であって、前記駆動信号の1周期内のパルス数は1以上で、且つ、固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2記載の交流電源装置において、前記制御回路は、第1周波数の発振信号を生成する第1発振器と、前記第1発振器の第1周波数とは異なる第2周波数の発振信号を生成する第2発振器と、前記第1発振器の発振信号と前記第2発振器の発振信号との論理積を求める論理回路とを備え、前記パルス信号を前記論理回路の出力信号とすることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3記載の交流電源装置において、前記出力回路の出力電圧を検出する電圧検出回路と、前記出力回路の出力電流を検出する電流検出回路の少なくともいずれか一方を備え、前記制御回路は、前記電圧検出回路と前記電流検出回路の少なくともいずれか一方の出力信号に基づいて前記パルス信号のパルス幅を変調するパルス幅変調回路を備えることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の交流電源装置において、前記第1トランスは、更に、前記1次巻線と磁気結合するリセット巻線を有し、前記リセット回路は、前記直流電源に並列に接続され、前記リセット巻線とダイオードとを直列に接続した回路からなることを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の交流電源装置において、前記リセット回路は、前記第1トランスの1次巻線に並列に接続され、ダイオードに抵抗とコンデンサとの並列回路を直列に接続した回路からなることを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の交流電源装置において、前記リセット回路は、前記第1トランスの1次巻線に並列に接続され、コンデンサと第2スイッチ素子とを直列に接続した回路からなることを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の交流電源装置において、前記出力回路は、前記第1トランスの2次巻線に並列に接続され、第1リアクトルと第1コンデンサとを直列に接続した回路からなり、前記交流電圧を前記第1コンデンサから出力することを特徴とする。
【0020】
請求項9の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の交流電源装置において、前記出力回路は、前記第1トランスの2次巻線に対して第2リアクトルと第2トランスの1次巻線とが直列に接続され、該第2トランスの2次巻線と第2コンデンサとが並列に接続された回路からなり、前記交流電圧を前記第2コンデンサから出力することを特徴とする。
【0021】
請求項10の発明は、請求項8記載の交流電源装置において、前記第1リアクトルは、前記第1トランスのリーケージインダクタンスからなることを特徴とする。
【0022】
請求項11の発明は、請求項9記載の交流電源装置において、前記第2リアクトルは、前記第2トランスのリーケージインダクタンスからなることを特徴とする。
【0023】
請求項12の発明は、請求項9記載の交流電源装置において、前記第2リアクトルは、前記第1トランスのリーケージインダクタンスと前記第2トランスのリーケージインダクタンスとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、1つのスイッチ素子を用い、制御回路は、第1期間では第1スイッチ素子のオン期間の合計がオフ期間の合計よりも長くなるように駆動信号を生成し、第2期間では第1スイッチ素子のオフ期間の合計がオン期間の合計よりも長くなるように駆動信号を生成するので、出力回路の交流電圧の波形を略正負対称とすることができる。このため、スイッチ素子の数を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の交流電源装置の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。以下の実施例では、本発明の交流電源装置を放電灯点灯装置に適用した場合について説明する。この放電灯点灯装置は、本発明の交流電源装置に負荷としての放電灯が接続されて構成される。
【0026】
なお、この例では、負荷を放電灯としたが、負荷は放電灯でなくても良く、本発明の交流電源装置は、その他の負荷に適用しても良い。
【実施例1】
【0027】
図1は本発明の実施例1の放電灯点灯装置の構成を示す図である。図1において、直流電源Vinの両端にはトランスT1(第1トランス)の1次巻線P1とMOSFET等からなるスイッチ素子SW1(第1スイッチ素子)との直列回路が接続されている。
【0028】
トランスT1の1次巻線P1にはトランスT1の1次巻線P1と磁気結合するリセット巻線P1aの一端が接続され、トランスT1のリセット巻線P1aの他端(●側)はダイオードD1のカソードに接続され、ダイオードD1のアノードは直流電源Vinの負極に接続されている。トランスT1のリセット巻線P1aとダイオードD1はリセット回路1を構成する。
【0029】
トランスT1の2次巻線S1の両端にはリアクトルL1(第1リアクトル)とコンデンサC1(第1コンデンサ)の直列回路が接続されている。リアクトルL1とコンデンサC1とは、トランスT1の2次巻線S1に発生した電圧を入力して交流電圧を出力端子OP1,OP2に出力する出力回路2を構成する。リアクトルL1は、トランスT1のリーケージインダクタンスを用いても良い。コンデンサC1の両端には、コンデンサCaと放電灯7aとの直列回路と、コンデンサCbと放電灯7bとの直列回路とがそれぞれ接続されている。
【0030】
図2はスイッチ素子の1パルス駆動時における時比率が小さい時と大きい時の各部のタイミングチャートである。
【0031】
ここで、時比率とは、パルス信号のオンデューティ比であり、具体的には、パルス信号の1周期において、100*パルスオン期間/(パルスオン期間+パルスオフ期間)であって百分率で表される。
【0032】
図2に示すように、スイッチ素子SW1を例えば50kHzでオン/オフさせる。スイッチ素子SW1がオンしている期間には、Vin→P1→SW1→Vinの経路でトランスT1の1次巻線P1に電流I1が流れて、トランスT1の2次巻線S1に正電圧が発生する。
【0033】
スイッチ素子SW1がオフしている期間には、P1a→Vin→D1→P1aの経路でトランスT1のリセット巻線P1aにリセット電流I2が流れる。即ち、スイッチ素子SW1がオフした時に、リセット巻線P1aが、トランスT1の励磁エネルギーをリセットする。また、このリセット期間に、トランスT1の2次巻線S1に負電圧が発生する。
【0034】
このようにトランスT1の2次巻線S1には矩形波状の交流電圧V(S1)が発生し、リアクトルL1とコンデンサC1とのフィルタ作用により正弦波状の交流電圧V(C1)が得られる。交流電圧V(C1)はコンデンサC1の両端電圧である。
【0035】
図2(a)に示すように、スイッチ素子SW1の時比率が小さいときは交流電圧は正負対称ではなくなるが、時比率が大きいときには交流電圧V(C1)は正負対称の正弦波が得られる。このため、時比率が50%に近い状態で使用すれば有効な回路である。
【0036】
しかし、時比率が50%固定では、交流電圧V(C1)を制御できない。放電灯の輝度を制御する場合には、放電灯に印加される電圧や流れる電流を制御する必要がある。この場合、スイッチ素子SW1の時比率を制御する必要があるため、条件によっては時比率が小さくなり、正負対称の正弦波を出力できない場合も考えられる。正負対称の正弦波が得られないのは、トランスT1の2次巻線S1の電圧V(S1)の正電圧の期間が1周期に対して短いからである。
【0037】
そこで、実施例1では、第1期間と第2期間との合計期間を1周期とする駆動信号によりスイッチ素子SW1をオン/オフ動作させる制御回路10を設けている。制御回路10は、第1期間ではスイッチ素子SW1のオン期間の合計がオフ期間の合計よりも長くなるように駆動信号を生成し、第2期間ではスイッチ素子SW1のオフ期間の合計がオン期間の合計よりも長くなるように駆動信号を生成し、交流電圧の波形を略正負対称とする。
【0038】
図3は実施例1の放電灯点灯装置のスイッチ素子の2パルス駆動時における時比率が小さい時と大きい時の各部のタイミングチャートである。図3において、スイッチ素子SW1の駆動信号は、期間TM1(第1期間)と期間TM2(第2期間)との合計期間を1周期とする信号であり、期間TM1では、スイッチ素子SW1のオン期間(パルスPL1,PL2のオン期間)の合計(2A)がオフ期間(2B)の合計よりも長くなるように駆動信号を生成し、第2期間TM2では、スイッチ素子SW1のオフ期間の合計がオン期間の合計よりも長くなるように駆動信号を生成している。
【0039】
図3(a)は駆動信号の時比率が大きい場合の各部の波形で、図3(b)は駆動信号の時比率が小さい場合の各部の波形である。ここで、時比率は、図3(a)に示す例では、100*A/(A+B)である。期間TM1に2個のパルスPL1,PL2があるので、時比率が小さい場合でも、トランスT1の2次巻線の電圧V(S1)の正電圧の期間が長く取れる。このため、交流電圧V(C1)の波形を正負対称の正弦波に近づけることができる。
【0040】
また、図3に示すように、例えば、パルス信号が存在する期間を期間TM1、パルス信号の存在しない期間を期間TM2とした場合、制御回路10は、期間Aと期間Bの合計期間を一定値に制御することにより、交流電圧の周波数を一定に制御することができる。また、制御回路10は、期間TM1と期間TM2との合計期間を変化させることにより交流電圧の周波数を変化させることもできる。
【0041】
次に、パルス信号の時比率について考察する。図1において、パルス信号の時比率が50%以下の場合、期間TM1、期間TM2のパルス信号の平均値はそれぞれゼロである。従って、時比率が50%以下でスイッチ素子SW1を駆動した場合、図4に示すように、コンデンサC1には交流電圧V(C1)はほとんど発生しない。このため、期間TM1では少なくとも1つのパルス信号の時比率は50%より大きく(即ち、パルス信号のオン期間がオフ期間よりも長い)、期間TM2では少なくとも1つのパルス信号の時比率は50%より小さくする(即ち、パルス信号のオフ期間がオン期間よりも長い)必要がある。
【0042】
即ち、50%を超えた時比率でスイッチ素子SW1を駆動するということは、トランスT1の1次巻線P1のリセットをかけずに動作させることであり、この作用によりコンデンサC1に電圧が発生する。また、期間TM2では、時比率がゼロでなくとも、50%以下であれば良い。
【0043】
なお、実施例1では、期間TM1にパルスを2個挿入したが、このパルスは3個以上でも同様の効果が得られる。
【0044】
このように実施例1によれば、1つのスイッチ素子SW1を用い、且つ、制御回路10は、期間TM1ではスイッチ素子SW1のオン期間の合計がオフ期間の合計よりも長くなるように駆動信号(パルス信号)を生成し、期間TM2ではスイッチ素子SW1のオフ期間の合計がオン期間の合計よりも長くなるように駆動信号を生成するので、出力回路の交流電圧の波形を正負対称の正弦波とすることができる。このため、スイッチ素子の数を削減できる。
【実施例2】
【0045】
図5は本発明の実施例2の放電灯点灯装置の構成を示す図である。直流電源Vinの両端にはトランスT1の1次巻線P1とスイッチ素子SW1との直列回路が接続されている。リセット回路1aは、トランスT1aの1次巻線P1に並列に接続され、ダイオードD2に抵抗R1とコンデンサC4との並列回路を直列に接続した回路からなる。図5に示すその他の構成は図1に示す実施例1の構成と同一である。
【0046】
このように実施例2の構成によれば、スイッチ素子SW1がオフした時には、トランスT1の励磁エネルギーは、ダイオードD2を介してコンデンサC4に蓄えられ、抵抗R1によって消費される。即ち、リセット回路1aにより、トランスT1の1次巻線P1に誘起された励磁エネルギーをリセットすることができる。これにより、実施例1の効果と同様な効果が得られる。
【実施例3】
【0047】
図6は本発明の実施例3の放電灯点灯装置の構成を示す図である。図6に示す回路は、ハーフブリッジ回路である。直流電源Vinの両端にはスイッチ素子SW1とMOSFET等からなるスイッチ素子SW2の直列回路が接続されている。リセット回路1bは、トランスT1aの1次巻線P1に並列に接続され、電流共振コンデンサCri(第2コンデンサ)とスイッチ素子SW2(第2スイッチ素子)とを直列に接続した回路からなる。
【0048】
図6に示すその他の構成は図1に示す実施例1の構成と同一である。制御回路10aは、図1に示す制御回路10の機能を有するとともに、スイッチ素子SW1とスイッチ素子SW2とを交互にオン/オフさせる。
【0049】
このような実施例3によれば、スイッチ素子SW1がオンしたときには、Vin→SW1→Cri→P1→Vinの経路で電流が流れ、電流共振コンデンサCriとトランスT1aの1次巻線P1にエネルギーが蓄えられる。スイッチ素子SW1がオフしスイッチ素子SW2がオンしたときには、P1→Cri→SW2→P1の経路で電流が流れる。即ち、リセット回路1bにより、トランスT1の励磁エネルギーをリセットすることができる。
【0050】
このように実施例3の構成であっても、実施例1の効果と同様な効果が得られる。
【実施例4】
【0051】
図7は本発明の実施例4の放電灯点灯装置の構成を示す図である。図7に示す実施例4は、図1に示す実施例1の制御回路10を具体化したものである。即ち、制御回路として、第1発振器11、第2発振器12、アンド回路13、駆動回路14とが設けられている。図8は本発明の実施例4の放電灯点灯装置の各部のタイミングチャートである。
【0052】
第1発振器11は、例えば200kHz(第1周波数)の矩形波状の電圧(発振信号)V11を発生する。第2発振器12は、例えば50kHz(第2周波数)の矩形波状の電圧(発振信号)V12を発生する。アンド回路13(論理回路)は、第1発振器11の200kHzの矩形波状の電圧V11と第2発振器12の50kHzの矩形波状の電圧V12との論理積を求めることによりスイッチ素子SW1の駆動信号を生成する。駆動回路14は、アンド回路13からの駆動信号V13によりスイッチ素子SW1を駆動させる。
【0053】
期間TM1と期間TM2とは第2発振器12の発振信号の時比率により決定される。一般的に第2発振器12の発振信号の時比率は約50%にすることが望ましい。このため、スイッチ素子SW1は、時比率50%程度の50kHzの信号で間欠発振させている。また、第1発振器11の発振信号の時比率を変化させることにより交流電圧V(C1)を制御することができる。
【0054】
なお、図7において、第1発振器11と第2発振器12とを個別に動作させた場合には、僅かな周波数の変動やばらつきにより、図9に示すように、1周期当たりのパルス信号のパルス数が変動してしまう。このようなパルス信号では、出力回路の交流電圧が安定しない。
【0055】
従って、第1発振器11の信号と第2発振器12の信号との同期をとることが有効である。ここで、同期とは、交流電圧の1周期当たり(期間TM1と期間TM2との合計期間で例えば50kHzの周期)のスイッチ素子SW1の駆動信号のパルスの数を一定(例えば2個)に保つことである。交流電圧1周期当たりのスイッチ素子SW1のパルスの数が一定であるため、交流電圧の変動を抑制できる。
【0056】
同期をとった2信号は、例えば、フリップフロップ、タイマ、カウンタ等を用いた分周回路、倍周回路などで容易に生成可能である。
【0057】
図10に示す例では、第2発振器としての4逓倍回路17が、第1発振器11aの基準信号の50kHzを4倍だけ周波数逓倍することにより200kHzを有する基準信号を生成する。
【0058】
図11に示す例では、第2発振器としての1/4分周回路18が、第1発振器11の信号の200kHzを1/4分周することにより50kHzを有する基準信号を生成する。
【0059】
図10、図11に示す例では、第1発振器11、第2発振器としての分周回路18、逓倍回路17の分周比や逓倍を変えることにより、任意の周波数で同期の取れた2つの信号を容易に生成することができる。
【0060】
さらに、図12に示すように、第1発振器11と、JKフリッププロップ29a,29bからなる第2発振器とが設けられる。第1発振器11からの200kHzの信号は、JKフリッププロップ29aのクロック端子CLKに入力される。JKフリッププロップ29aは、200kHzの信号から100kHzの信号を生成して、JKフリッププロップ29bのクロック端子CLKに出力する。JKフリッププロップ29bは、100kHzの信号から50kHzの信号を生成する。
【0061】
結果としてスイッチSW1の駆動信号と交流電圧の周波数との同期が取れれば良く、発振器出力同士の同期はその一例に過ぎない。
【実施例5】
【0062】
図13は本発明の実施例5の放電灯点灯装置の構成を示す図である。図7に示す実施例4では、トランスT1の2次巻線S1に矩形波状の高い電圧を発生させ、この電圧をリアクトルL1とコンデンサC1とのフィルタ作用により正弦波状の電圧を得ていた。
【0063】
ここで、例えば図7に示すシステムにおいて、トランスT1により絶縁を行う場合、トランスT1は各種安全規格で指定される絶縁距離等の条件を満たす必要がある。この場合、トランスT1の2次巻線S1の電圧が高いほど、これらの条件は厳しくなり、トランスT1が大型化及び高価格化するため、2次巻線S1の電圧は低く制限する必要がある。また、リアクトルL1にも高い電圧が印加されるので、スロット分割巻などの対応が必要になり、大型化、高価格化する。
【0064】
そこで、図13に示す実施例5では、トランスT1の2次巻線S1の両端に、昇圧トランスであるトランスT2(第2トランス)の1次巻線P2とリアクトルL2(第2リアクトル)を接続し、トランスT2の2次巻線S2の両端にコンデンサC2を並列に接続してコンデンサC2から交流電圧V(C2)を得ている。
【0065】
また、トランスT2とリアクトルL2とコンデンサC2とにより、トランスT2の2次巻線S2に発生した電圧を入力して交流電圧を出力端子OP1,OP2に出力する出力回路2aを構成する。
【0066】
このように実施例5の構成によれば、トランスT1により各種安全規格で求められる絶縁を行い、トランスT2で昇圧を行うので、上記問題を回避できる。また、トランスT1で矩形波状の低い電圧を発生させるため、トランスT1は各種安全規格の条件を緩くすることができる。トランスT2は2次側での昇圧であるので、所謂、機能絶縁のみで良い。
【0067】
また、図13に示すリアクトルL2は、トランスT2の1次巻線P2と2次巻線S2との間のリーケージインダクタンスを用いても良い。
【0068】
また、図13に示すリアクトルL2は、トランスT1のリーケージインダクタンスとトランスT2のリーケージインダクタンスとからなっても良い。
【実施例6】
【0069】
放電灯点灯装置は、放電灯に流れる電流を検出して検出された電流を所定値に制御することにより放電灯を安定に点灯させる。その方法として放電灯に流れる電流を検出する方法がよく用いられる。
【0070】
しかし、アプリケーション上の制約、構造上の制約等により必ずしも放電灯電流を検出できない場合もある。この場合、他の電気量を検出して制御することもできる。図14は本発明の実施例6の具体例1の放電灯点灯装置の構成を示す図である。図15は本発明の実施例6の具体例2の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【0071】
図14に示す実施例6の具体例1では、放電灯7a,7bに直列に接続された電流検出回路19が放電灯7a,7bに流れる電流を検出する。時比率調整回路20は、アンド回路13と駆動回路14との間に接続され、電流検出回路19で検出された電流が所定値になるようにスイッチ素子SW1のパルス信号の時比率を変化させる。即ち、時比率調整回路20は、公知のパルス信号のパルス幅を変調するパルス幅変調回路からなる。
【0072】
図15に示す実施例6の具体例2では、トランスT2の2次巻線S2の両端間に接続された電圧検出回路22が、トランスT2の2次巻線電圧(交流電圧)を検出する。時比率調整回路20aは、アンド回路13と駆動回路14との間に接続され、電圧検出回路22で検出された電圧が所定値になるようにスイッチ素子SW1のパルス信号の時比率を変化させる。即ち、時比率調整回路20aは、公知のパルス信号のパルス幅を変調するパルス幅変調回路からなる。
【実施例7】
【0073】
図16は本発明の実施例7の具体例1の放電灯点灯装置の構成を示す図である。図16に示す実施例7は、図14に示す構成に対して、さらに、トランスT3と、電流検出回路19bと、フォトカプラPC1とを設けている。
【0074】
トランスT3の1次巻線P3とリアクトルL3は、トランスT1の2次巻線S1の両端に接続され、トランスT3の2次巻線S3の両端には、コンデンサC3が接続されるとともに、放電灯7bと電流検出回路19bとの直列回路が接続されている。
【0075】
時比率調整回路20bは、第1発振器11からの信号と第2発振器としての1/4分周回路18からの信号と電流検出回路19aからの検出電流と電流検出回路19bからの検出電流とに基づいてスイッチ素子SW1のパルス信号の時比率を調整する。フォトカプラPC1は、時比率調整回路20bからの出力に応じた電流を流す。駆動回路14は、フォトカプラPC1からの出力信号、即ち、時比率が調整されたパルス信号によりスイッチ素子SW1をオン/オフ駆動させる。
【0076】
このように、複数の昇圧トランスT2,T3を用いて、複数の放電灯7a,7bを点灯させることができる。
【0077】
実施例7の具体例1では、放電灯が2灯の例であるが、昇圧トランスを増やすことにより、さらに多くの放電灯を同時に点灯することができる。
【0078】
また、図17に示す実施例7の具体例2では、トランスT2の高圧側とトランスT3の高圧側との間に、1灯7a又は複数灯の放電灯7a,7bを接続し、2個のトランスT2,T3で1灯又は複数灯の放電灯を点灯させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施例1の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図2】スイッチ素子の1パルス駆動時における時比率が小さい時と大きい時の各部のタイミングチャートである。
【図3】実施例1の放電灯点灯装置のスイッチ素子の2パルス駆動時における時比率が小さい時と大きい時の各部のタイミングチャートである。
【図4】パルス信号の時比率が50%以下の場合の各部のタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施例2の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例3の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施例4の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の実施例4の放電灯点灯装置の各部のタイミングチャートである。
【図9】第1発振器の出力信号と第2発振器の出力信号との同期が取れていない場合の各部のタイミングチャートである。
【図10】本発明の実施例4の放電灯点灯装置の第1発振器の周波数と第2発振器の周波数との同期の取れた2つの信号の生成方法の一例を示す図である。
【図11】実施例4の放電灯点灯装置の同期の取れた2つの信号の生成方法の他の一例を示す図である。
【図12】1/4分周回路の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施例5の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図14】本発明の実施例6の具体例1の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図15】本発明の実施例6の具体例2の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図16】本発明の実施例7の具体例1の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図17】本発明の実施例7の具体例2の放電灯点灯装置の構成を示す図である。
【図18】従来の放電灯点灯装置の一例の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
T1,T1a,T2,T3 トランス
P1,P2,P3 1次巻線
P1a リセット巻線
S1,S2,S3 2次巻線
C1,C2,C3,C4,Ca,Cb コンデンサ
D1,D2 ダイオード
SW1,SW2 スイッチ素子
L1,L2 リアクトル
Cri 電流共振コンデンサ
Vin 直流電源
PC1 フォトカプラ
1,1a,1b リセット回路
2,2a,2b,2c 出力回路
7a,7b 放電灯
10,10a 制御回路
11,11a 第1発振器
12 第2発振器
13 アンド回路
14 駆動回路
17 4逓倍回路
18 1/4分周回路
19,19a,19b 電流検出回路
20,20a,20b 時比率調整回路
22 電圧検出回路
29a,29b JKフリップフロップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
1次巻線と2次巻線とを有する第1トランスと、
前記直流電源に前記第1トランスの1次巻線を介して接続される第1スイッチ素子と、
前記第1トランスの2次巻線に発生した電圧を入力して交流電圧を出力する出力回路と、
第1期間と第2期間との合計期間を1周期とする駆動信号により前記第1スイッチ素子をオン/オフ動作させる制御回路と、
前記第2期間に前記第1トランスをリセットさせるリセット回路とを備え、
前記制御回路は、前記第1期間では前記第1スイッチ素子のオン期間の合計がオフ期間の合計よりも長くなるように前記駆動信号を生成し、前記第2期間では前記第1スイッチ素子のオフ期間の合計がオン期間の合計よりも長くなるように前記駆動信号を生成し、前記交流電圧の波形を略正負対称とすることを特徴とする交流電源装置。
【請求項2】
前記駆動信号はパルス信号であって、前記駆動信号の1周期内のパルス数は1以上で、且つ、固定されていることを特徴とする請求項1記載の交流電源装置。
【請求項3】
前記制御回路は、第1周波数の発振信号を生成する第1発振器と、
前記第1発振器の第1周波数とは異なる第2周波数の発振信号を生成する第2発振器と、
前記第1発振器の発振信号と前記第2発振器の発振信号との論理積を求める論理回路とを備え、
前記パルス信号を前記論理回路の出力信号とすることを特徴とする請求項2記載の交流電源装置。
【請求項4】
前記出力回路の出力電圧を検出する電圧検出回路と、前記出力回路の出力電流を検出する電流検出回路の少なくともいずれか一方を備え、
前記制御回路は、前記電圧検出回路と前記電流検出回路の少なくともいずれか一方の出力信号に基づいて前記パルス信号のパルス幅を変調するパルス幅変調回路を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の交流電源装置。
【請求項5】
前記第1トランスは、更に、前記1次巻線と磁気結合するリセット巻線を有し、前記リセット回路は、前記直流電源に並列に接続され、前記リセット巻線とダイオードとを直列に接続した回路からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の交流電源装置。
【請求項6】
前記リセット回路は、前記第1トランスの1次巻線に並列に接続され、ダイオードに抵抗とコンデンサとの並列回路を直列に接続した回路からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の交流電源装置。
【請求項7】
前記リセット回路は、前記第1トランスの1次巻線に並列に接続され、コンデンサと第2スイッチ素子とを直列に接続した回路からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の交流電源装置。
【請求項8】
前記出力回路は、前記第1トランスの2次巻線に並列に接続され、第1リアクトルと第1コンデンサとを直列に接続した回路からなり、前記交流電圧を前記第1コンデンサから出力することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の交流電源装置。
【請求項9】
前記出力回路は、前記第1トランスの2次巻線に対して第2リアクトルと第2トランスの1次巻線とが直列に接続され、該第2トランスの2次巻線と第2コンデンサとが並列に接続された回路からなり、前記交流電圧を前記第2コンデンサから出力することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の交流電源装置。
【請求項10】
前記第1リアクトルは、前記第1トランスのリーケージインダクタンスからなることを特徴とする請求項8記載の交流電源装置。
【請求項11】
前記第2リアクトルは、前記第2トランスのリーケージインダクタンスからなることを特徴とする請求項9記載の交流電源装置。
【請求項12】
前記第2リアクトルは、前記第1トランスのリーケージインダクタンスと前記第2トランスのリーケージインダクタンスとからなることを特徴とする請求項9記載の交流電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−48935(P2009−48935A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−216108(P2007−216108)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】