説明

人工物検出装置及び人工物検出方法及び人工物検出プログラム

【課題】多偏波観測によって人工物のみを精度よく検出する。
【解決手段】合成開口レーダを用いた4偏波観測の結果を偏波特性データ201として予め記憶する人工物検出装置100にて、散乱成分抽出部101は、偏波特性データ201から、表面散乱成分と2回散乱成分と体積散乱成分とヘリックス散乱成分とを、観測位置ごとに抽出する。人工物検出部104は、散乱成分抽出部101により2回散乱成分と体積散乱成分とヘリックス散乱成分とのうち1種類以上の散乱成分が抽出された観測位置の集合である第1領域と、第1領域の周囲で散乱成分抽出部101により所定量以上の表面散乱成分が抽出された観測位置の集合である第2領域とを含む領域を、人工物として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工物検出装置及び人工物検出方法及び人工物検出プログラムに関するものである。本発明は、特に、合成開口レーダ(SAR:Synthetic・Aperture・Radar)の多偏波観測データに対する表面散乱及び2回散乱成分を用いた海上人工物の抽出及び特定方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成開口レーダで地上の多偏波観測を行う技術がある(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。合成開口レーダから電波を地上に発射すると、地面の状態や地上にある物の構成によって電波の散乱のされ方が異なる。偏波状態を解析すると、散乱のされ方がわかるため、従来技術では、これによって地面の状態や地上にある物の構成を推測している。
【0003】
また、従来、合成開口レーダで海上の多偏波観測を行う技術もある(例えば、特許文献2参照)。従来技術では、一定周期で海面に向けて放射される送信パルスの偏波方向を切り換え、送信パルスの偏波方向切換前後の反射波受信信号について振幅の差異により目標成分か海面クラッタ成分かを類別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−140607号公報
【特許文献2】特開平6−308226号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】山口芳雄著、「レーダポーラリメトリの基礎と応用−偏波を用いたレーダリモートセンシング−」、電子情報通信学会、2007年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
海面が穏やかなときに合成開口レーダで海上の単偏波観測を行うと、海面での鏡面反射により暗いレーダ画像が得られる。海上に船舶等の人工物があると、人工物での散乱により、その部分だけ海面に比べて後方散乱強度が上がる。これを利用し、海上を観測したレーダ画像の中で強度の高い点(即ち、明るい点)は人工物として抽出することができる。しかしながら、海面が荒れているときは海面での後方散乱が強くなる場合があり、人工物のみを精度よく検出するのは困難であるという課題があった。また、海面の荒れ具合によらず、人工物の種類(例えば、船舶の種類)を特定するのは困難であるという課題があった。従来技術では、合成開口レーダで地上や海上の多偏波観測を行っているが、これらの課題を解決するものではなかった。
【0007】
本発明は、例えば、多偏波観測によって人工物のみを精度よく検出することを目的とする。また、例えば、人工物の種類(例えば、船舶の種類)を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の態様に係る人工物検出装置は、
偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも3種類の偏波成分を測定した結果を、当該散乱波が得られた位置である測定位置ごとに偏波特性データとして予め記憶する記憶装置と、データ処理を行う処理装置とを具備し、
前記記憶装置に記憶された偏波特性データから、前記複数の電波が1回反射した場合に得られる表面散乱成分と、前記表面散乱成分以外の少なくとも2種類の散乱成分である特殊散乱成分とを、測定位置ごとに前記処理装置により抽出する散乱成分抽出部と、
前記散乱成分抽出部により特殊散乱成分が抽出された測定位置の集合である第1領域と、前記第1領域の周囲で前記散乱成分抽出部により所定量以上の表面散乱成分が抽出された測定位置の集合である第2領域とを含む領域を、人工物として前記処理装置により検出する人工物検出部とを備えることを特徴とする。
【0009】
前記散乱成分抽出部は、前記複数の電波が2回反射した場合に得られる2回散乱成分と、前記複数の電波がランダムに向いた線状物体の集合で反射した場合に得られる体積散乱成分と、前記複数の電波が反射して直線偏波から円偏波に変わった場合に得られるヘリックス散乱成分との3種類の散乱成分のうち、少なくとも2種類を、測定位置ごとに前記特殊散乱成分として前記処理装置により抽出することを特徴とする。
【0010】
前記散乱成分抽出部は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出装置は、さらに、
前記散乱成分抽出部により生成された表面散乱画像にて、前記第1領域の周囲の一定領域を複数の小領域に分割し、輝度の統計量を小領域ごとに前記処理装置により算出する小領域統計量算出部と、
前記散乱成分抽出部により生成された表面散乱画像にて、前記一定領域より広い大領域について、輝度の統計量を前記処理装置により算出する大領域統計量算出部とを備え、
前記人工物検出部は、前記小領域統計量算出部により算出された輝度の統計量と前記大領域統計量算出部により算出された輝度の統計量との差異が所定の閾値以上となる小領域の集合を前記第2領域とみなすことを特徴とする。
【0011】
前記複数の電波は、上空を飛行する飛行体に搭載された合成開口レーダにより発射されるものであり、
前記散乱成分抽出部は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出装置は、さらに、
前記散乱成分抽出部により生成された表面散乱画像に対してマルチルック処理を前記処理装置により行うマルチルック処理部を備え、
前記人工物検出部は、前記マルチルック処理部により前記マルチルック処理が行われた表面散乱画像にて、前記第1領域の周囲で輝度が所定の閾値以上となる領域を前記第2領域とみなすことを特徴とする。
【0012】
前記複数の電波は、上空を飛行する飛行体に搭載された合成開口レーダにより発射されるものであり、
前記散乱成分抽出部は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出装置は、さらに、
前記散乱成分抽出部により生成された表面散乱画像に対してマルチルック処理を前記処理装置により行うマルチルック処理部を備え、
前記人工物検出部は、前記マルチルック処理部により前記マルチルック処理が行われた表面散乱画像に対してエッジ検出処理を前記処理装置により行い、前記エッジ検出処理にて検出されたエッジ線で囲まれた領域を前記第2領域とみなすことを特徴とする。
【0013】
前記人工物検出装置は、さらに、
前記人工物検出部により検出された人工物について、前記散乱成分抽出部により抽出された表面散乱成分と特殊散乱成分とに基づき、当該人工物の特徴量を前記処理装置により計測する特徴量計測部を備えることを特徴とする。
【0014】
前記人工物検出装置は、さらに、
複数の人工物について、各人工物の特徴量を特徴量データとして記憶する特徴量データベースと、
前記特徴量計測部により計測された特徴量を前記特徴量データベースに記憶された特徴量データと照合して、前記複数の人工物の中から、前記人工物検出部により検出された人工物を前記処理装置により特定するデータベース照合部とを備えることを特徴とする。
【0015】
前記複数の電波は、海上に発射されるものであり、
前記記憶装置は、前記複数の電波が発射されたときの海面の荒れ具合を示す海面データを記憶し、
前記特徴量データベースは、前記複数の人工物について、海面の荒れ具合を定量化して複数の段階に分類した海面状況分類ごとに計測されるべき各人工物の特徴量を前記特徴量データとして記憶し、
前記データベース照合部は、前記記憶装置に記憶された海面データに基づき、該当する海面状況分類を特定し、特定した海面状況分類を検索キーとして、前記特徴量計測部により計測された特徴量を前記特徴量データベースに記憶された特徴量データと照合することを特徴とする。
【0016】
本発明の一の態様に係る人工物検出方法は、
偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも3種類の偏波成分を測定した結果を、当該散乱波が得られた位置である測定位置ごとに偏波特性データとして予め記憶する記憶装置と、データ処理を行う処理装置とを具備する人工物検出装置を用いた人工物検出方法であって、
前記人工物検出装置の散乱成分抽出部が、前記記憶装置に記憶された偏波特性データから、前記複数の電波が1回反射した場合に得られる表面散乱成分と、前記表面散乱成分以外の少なくとも2種類の散乱成分である特殊散乱成分とを、測定位置ごとに前記処理装置により抽出し、
前記人工物検出装置の人工物検出部が、前記散乱成分抽出部により特殊散乱成分が抽出された測定位置の集合である第1領域と、前記第1領域の周囲で前記散乱成分抽出部により所定量以上の表面散乱成分が抽出された測定位置の集合である第2領域とを含む領域を、人工物として前記処理装置により検出することを特徴とする。
【0017】
本発明の一の態様に係る人工物検出プログラムは、
偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも3種類の偏波成分を測定した結果を、当該散乱波が得られた位置である測定位置ごとに偏波特性データとして予め記憶する記憶装置と、データ処理を行う処理装置とを具備するコンピュータにより実行される人工物検出プログラムであって、
前記記憶装置に記憶された偏波特性データから、前記複数の電波が1回反射した場合に得られる表面散乱成分と、前記表面散乱成分以外の少なくとも2種類の散乱成分である特殊散乱成分とを、測定位置ごとに前記処理装置により抽出する散乱成分抽出手順と、
前記散乱成分抽出手順により特殊散乱成分が抽出された測定位置の集合である第1領域と、前記第1領域の周囲で前記散乱成分抽出手順により所定量以上の表面散乱成分が抽出された測定位置の集合である第2領域とを含む領域を、人工物として前記処理装置により検出する人工物検出手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0018】
前記散乱成分抽出手順は、前記複数の電波が2回反射した場合に得られる2回散乱成分と、前記複数の電波がランダムに向いた線状物体の集合で反射した場合に得られる体積散乱成分と、前記複数の電波が反射して直線偏波から円偏波に変わった場合に得られるヘリックス散乱成分との3種類の散乱成分のうち、少なくとも2種類を、測定位置ごとに前記特殊散乱成分として前記処理装置により抽出することを特徴とする。
【0019】
前記散乱成分抽出手順は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出プログラムは、さらに、
前記散乱成分抽出手順により生成された表面散乱画像にて、前記第1領域の周囲の一定領域を複数の小領域に分割し、輝度の統計量を当該小領域ごとに前記処理装置により算出する小領域統計量算出手順と、
前記散乱成分抽出手順により生成された表面散乱画像にて、前記一定領域より広い大領域について、輝度の統計量を前記処理装置により算出する大領域統計量算出手順とをコンピュータに実行させ、
前記人工物検出手順は、前記小領域統計量算出手順により算出された輝度の統計量と前記大領域統計量算出手順により算出された輝度の統計量との差異が所定の閾値以上となる小領域の集合を前記第2領域とみなすことを特徴とする。
【0020】
前記複数の電波は、上空を飛行する飛行体に搭載された合成開口レーダにより発射されるものであり、
前記散乱成分抽出手順は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出プログラムは、さらに、
前記散乱成分抽出手順により生成された表面散乱画像に対してマルチルック処理を前記処理装置により行うマルチルック処理手順をコンピュータに実行させ、
前記人工物検出手順は、前記マルチルック処理手順により前記マルチルック処理が行われた表面散乱画像にて、前記第1領域の周囲で輝度が所定の閾値以上となる領域を前記第2領域とみなすことを特徴とする。
【0021】
前記複数の電波は、上空を飛行する飛行体に搭載された合成開口レーダにより発射されるものであり、
前記散乱成分抽出手順は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出プログラムは、さらに、
前記散乱成分抽出手順により生成された表面散乱画像に対してマルチルック処理を前記処理装置により行うマルチルック処理手順をコンピュータに実行させ、
前記人工物検出手順は、前記マルチルック処理手順により前記マルチルック処理が行われた表面散乱画像に対してエッジ検出処理を前記処理装置により行い、前記エッジ検出処理にて検出されたエッジ線で囲まれた領域を前記第2領域とみなすことを特徴とする。
【0022】
前記人工物検出プログラムは、さらに、
前記人工物検出手順により検出された人工物について、前記散乱成分抽出手順により抽出された表面散乱成分と特殊散乱成分とに基づき、当該人工物の特徴量を前記処理装置により計測する特徴量計測手順をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0023】
前記人工物検出プログラムは、さらに、
複数の人工物について、各人工物の特徴量を特徴量データとして記憶する特徴量データベースにアクセスし、
前記特徴量計測手順により計測された特徴量を前記特徴量データベースに記憶された特徴量データと照合して、前記複数の人工物の中から、前記人工物検出手順により検出された人工物を前記処理装置により特定するデータベース照合手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0024】
前記複数の電波は、海上に発射されるものであり、
前記記憶装置は、前記複数の電波が発射されたときの海面の荒れ具合を示す海面データを記憶し、
前記特徴量データベースは、前記複数の人工物について、海面の荒れ具合を定量化して複数の段階に分類した海面状況分類ごとに計測されるべき各人工物の特徴量を前記特徴量データとして記憶し、
前記データベース照合手順は、前記記憶装置に記憶された海面データに基づき、該当する海面状況分類を特定し、特定した海面状況分類を検索キーとして、前記特徴量計測手順により計測された特徴量を前記特徴量データベースに記憶された特徴量データと照合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一の態様によれば、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも3種類の偏波成分を測定した結果を、測定位置ごとに偏波特性データとして予め記憶する人工物検出装置にて、散乱成分抽出部が、偏波特性データから、前記複数の電波が1回反射した場合に得られる表面散乱成分と、前記表面散乱成分以外の少なくとも2種類の散乱成分である特殊散乱成分とを、測定位置ごとに抽出し、人工物検出部が、前記散乱成分抽出部により特殊散乱成分が抽出された測定位置の集合である第1領域と、前記第1領域の周囲で前記散乱成分抽出部により所定量以上の表面散乱成分が抽出された測定位置の集合である第2領域とを含む領域を、人工物として検出するため、多偏波観測によって人工物のみを精度よく検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態1に係る人工物検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る人工物検出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る人工物検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態1に係る表面散乱画像、2回散乱画像、体積散乱画像、ヘリックス散乱画像の一例を示す図である。
【図5】実施の形態1に係るカラー合成画像の一例を示す図である。
【図6】実施の形態1に係る海面の状況による表面散乱画像の違いの一例を示す図である。
【図7】実施の形態1に係る方法を用いた人工物抽出の一例を示す図である。
【図8】実施の形態1に係る人工物の特徴量計測の一例を示す図である。
【図9】実施の形態2に係る人工物検出装置の構成を示すブロック図である。
【図10】実施の形態2に係るマルチルック処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2に係るマルチルック処理での表面散乱画像の変化の一例を示す図である。
【図12】実施の形態4に係る人工物検出装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0028】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る人工物検出装置100の構成を示すブロック図である。
【0029】
図1において、人工物検出装置100は、散乱成分抽出部101、小領域統計量算出部102、大領域統計量算出部103、人工物検出部104、特徴量計測部105、データベース照合部106、特徴量データベース107を備える。また、人工物検出装置100は、処理装置151、記憶装置152、入力装置153、出力装置154等のハードウェアを具備する。
【0030】
人工物検出装置100の各部の動作については後述する。
【0031】
処理装置151は、データ処理を行う。処理装置151は、人工物検出装置100の各部でデータや情報の演算、加工、読み取り、書き込み等を行うために利用される。
【0032】
記憶装置152は、偏波特性データ201、陸海判別用データ202、海面データ203等のデータを記憶する。記憶装置152は、人工物検出装置100の各部でデータや情報を記憶するために利用される。
【0033】
偏波特性データ201は、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも3種類の偏波成分を測定した結果を、測定位置ごとに示すデータである。本実施の形態では、偏波特性データ201は、合成開口レーダを用いたポラリメトリ(4偏波)観測の結果を示すデータであるとする。合成開口レーダは、上空を飛行する飛行体(人工衛星、航空機等)に搭載されており、水平偏波の電波と垂直偏波の電波との2つの電波を上空から海上に向けて発射する。偏波特性データ201は、具体的には、合成開口レーダによって発射された水平偏波の電波が海面や海上の人工物等で反射して得られる散乱波の水平偏波成分(HH成分)と垂直偏波成分(HV成分)との2種類の偏波成分を測定した結果、及び、同じく合成開口レーダによって発射された垂直偏波の電波が海面や海上の人工物等で反射して得られる散乱波の水平偏波成分(VH成分)と垂直偏波成分(VV成分)との2種類の偏波成分を測定した結果(4種類の偏波成分を測定しているがHV成分とVH成分は同じになるので、実際には3種類の偏波成分を測定した結果)を、測定位置ごとに示すデータである。測定位置は、具体的には、合成開口レーダの電波の発射対象となった海面や海上の人工物等の位置、即ち、散乱波が得られた海上の位置である。陸海判別用データ202は、それぞれの測定位置が陸であるか海であるかを示すデータである。海面データ203は、4偏波観測時、即ち、合成開口レーダから電波が発射されたときの海面の荒れ具合を示すデータである。
【0034】
入力装置153は、データの入力をする。入力装置153は、人工物検出装置100の各部でデータや情報の入力をユーザ等から受け付けるために利用される。
【0035】
出力装置154は、データを出力する。出力装置154は、人工物検出装置100の各部でユーザ等に対してデータや情報を出力するために利用される。
【0036】
図2は、人工物検出装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0037】
図2において、人工物検出装置100は、コンピュータであり、LCD901(Liquid・Crystal・Display)、キーボード902(K/B)、マウス903、FDD904(Flexible・Disk・Drive)、CDD905(Compact・Disc・Drive)、プリンタ906といったハードウェアデバイスを備えている。これらのハードウェアデバイスはケーブルや信号線で接続されている。LCD901の代わりに、CRT(Cathode・Ray・Tube)、あるいは、その他の表示装置が用いられてもよい。マウス903の代わりに、タッチパネル、タッチパッド、トラックボール、ペンタブレット、あるいは、その他のポインティングデバイスが用いられてもよい。
【0038】
人工物検出装置100は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit)を備えている。CPU911は、処理装置151の一例である。CPU911は、バス912を介してROM913(Read・Only・Memory)、RAM914(Random・Access・Memory)、通信ボード915、LCD901、キーボード902、マウス903、FDD904、CDD905、プリンタ906、HDD920(Hard・Disk・Drive)と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。HDD920の代わりに、フラッシュメモリ、光ディスク装置、メモリカードリーダライタ又はその他の記憶媒体が用いられてもよい。
【0039】
RAM914は、揮発性メモリの一例である。ROM913、FDD904、CDD905、HDD920は、不揮発性メモリの一例である。これらは、記憶装置152の一例である。通信ボード915、キーボード902、マウス903、FDD904、CDD905は、入力装置153の一例である。また、通信ボード915、LCD901、プリンタ906は、出力装置154の一例である。
【0040】
通信ボード915は、LAN(Local・Area・Network)等に接続されている。通信ボード915は、LANに限らず、IP−VPN(Internet・Protocol・Virtual・Private・Network)、広域LAN、ATM(Asynchronous・Transfer・Mode)ネットワークといったWAN(Wide・Area・Network)、あるいは、インターネットに接続されていても構わない。LAN、WAN、インターネットは、ネットワークの一例である。
【0041】
HDD920には、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。プログラム群923には、本実施の形態の説明において「〜部」として説明する機能を実行するプログラムが含まれている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。ファイル群924には、本実施の形態の説明において、「〜データ」、「〜情報」、「〜ID(識別子)」、「〜フラグ」、「〜結果」として説明するデータや情報や信号値や変数値やパラメータが、「〜ファイル」や「〜データベース」や「〜テーブル」の各項目として含まれている。「〜ファイル」や「〜データベース」や「〜テーブル」は、RAM914やHDD920等の記憶媒体に記憶される。RAM914やHDD920等の記憶媒体に記憶されたデータや情報や信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出、検索、参照、比較、演算、計算、制御、出力、印刷、表示といったCPU911の処理(動作)に用いられる。抽出、検索、参照、比較、演算、計算、制御、出力、印刷、表示といったCPU911の処理中、データや情報や信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
【0042】
本実施の形態の説明において用いるブロック図やフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示す。データや信号は、RAM914等のメモリ、FDD904のフレキシブルディスク(FD)、CDD905のコンパクトディスク(CD)、HDD920の磁気ディスク、光ディスク、DVD(Digital・Versatile・Disc)、あるいは、その他の記録媒体に記録される。また、データや信号は、バス912、信号線、ケーブル、あるいは、その他の伝送媒体により伝送される。
【0043】
本実施の形態の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜工程」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。即ち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。あるいは、「〜部」として説明するものは、ソフトウェアのみ、あるいは、素子、デバイス、基板、配線といったハードウェアのみで実現されていても構わない。あるいは、「〜部」として説明するものは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、あるいは、ソフトウェアとハードウェアとファームウェアとの組み合わせで実現されていても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、磁気ディスク、光ディスク、DVD等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。即ち、プログラムは、本実施の形態の説明で述べる「〜部」としてコンピュータを機能させるものである。あるいは、プログラムは、本実施の形態の説明で述べる「〜部」の手順や方法をコンピュータに実行させるものである。
【0044】
図3は、本実施の形態に係る人工物検出装置100の動作(本実施の形態に係る人工物検出方法、本実施の形態に係る人工物検出プログラムの処理手順)を示すフローチャートである。
【0045】
図3のステップS101(散乱成分分解ステップ)において、散乱成分抽出部101は、記憶装置152に予め記憶された偏波特性データ201から、表面散乱成分と、表面散乱成分以外の少なくとも1種類の散乱成分である特殊散乱成分とを、測定位置ごとに処理装置151により抽出する。本実施の形態では、散乱成分抽出部101は、2回散乱成分と体積散乱成分とヘリックス散乱成分との3種類の散乱成分を、測定位置ごとに特殊散乱成分として処理装置151により抽出するものとする。なお、上記3種類の散乱成分のうち、1種類あるいは2種類の散乱成分のみを抽出することとしてもよい。例えば、偏波特性データ201として偏波ごとの複素数データ(SLC:Single・Look・Complex)が記憶装置152に記憶されている場合、散乱成分抽出部101は、この複素数データに対して四成分分解(非特許文献1参照)を行うことにより、表面散乱成分と2回散乱成分と体積散乱成分とヘリックス散乱成分とを抽出することができる。
【0046】
ここで、それぞれの散乱成分について説明する。
(1)表面散乱成分は、地面、海面等の表面で引き起こされる1回(奇数回)反射の散乱成分である。本実施の形態では、散乱成分抽出部101は、表面散乱成分として、合成開口レーダから発射された電波が海面や海上の船舶の甲板等で1回反射した場合に得られる散乱成分を抽出する。
(2)2回散乱成分は、地面と幹、道路と建物の壁等の直角構造で引き起こされる2回(偶数回)反射の散乱成分である。本実施の形態では、散乱成分抽出部101は、2回散乱成分として、合成開口レーダから発射された電波が船舶の甲板とブリッジ(船橋又は艦橋)との組み合わせ等で2回反射した場合に得られる散乱成分を抽出する。
(3)体積散乱成分は、絡み合った枝等、ランダムに向いた線状物体の集合から引き起こされる散乱成分である。本実施の形態では、散乱成分抽出部101は、体積散乱成分として、合成開口レーダから発射された電波が船舶に搭載されたアンテナ等、ランダムに向いた線状物体の集合で反射した場合に得られる散乱成分を抽出する。
(4)ヘリックス(Helix)散乱成分は、人工物の表面から発生する、直線偏波を円偏波に変える散乱成分である。本実施の形態では、散乱成分抽出部101は、体積散乱成分として、合成開口レーダから発射された電波が船舶に搭載されたアンテナ等で反射して直線偏波から円偏波に変わった場合に得られる散乱成分を抽出する。
【0047】
散乱成分抽出部101は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像を、処理装置151により表面散乱画像204として生成する。同様に、散乱成分抽出部101は、抽出した2回散乱成分と体積散乱成分とヘリックス散乱成分とのそれぞれの強度分布を輝度分布で表す画像を、処理装置151により2回散乱画像205、体積散乱画像206、ヘリックス散乱画像207として生成する。
【0048】
ここで、図4に、表面散乱画像204、2回散乱画像205、体積散乱画像206、ヘリックス散乱画像207の一例を示す。図5に、これらの画像をカラー合成した場合のイメージを示す。
【0049】
図4に示した表面散乱画像204では、海面が暗くなっている(輝度が低い)のに対し、海上の人工物である船舶が明るくなっている(輝度が高い)。図4に示した2回散乱画像205、体積散乱画像206、ヘリックス散乱画像207では、船舶の一部分のみが明るくなっており、当該部分はブリッジであると推定できる。図5に示したカラー合成画像208では、例えば、海面から得られた表面散乱成分が紺色、船舶から得られた表面散乱成分が青色、同じく船舶から得られた2回散乱成分、体積散乱成分、ヘリックス散乱成分がそれぞれ赤色、緑色、黄色で表される。このように複数種類の画像を合成することにより、船舶等、海上の人工物の特徴(形状や大きさ)を推定しやすくなる。
【0050】
図3のステップS102(陸海判別ステップ)において、人工物検出部104は、記憶装置152に予め記憶された陸海判別用データ202を用いて、陸海の判別を処理装置151により行う。陸海判別用データ202としては海岸線データや数値標高データを用いることができる。例えば、陸海判別用データ202として国土地理院刊行の50mメッシュ数値標高データが記憶装置152に記憶されている場合、散乱成分抽出部101は、以下のように、陸海の判別を行うことができる。
【0051】
上記数値標高データでは、海に無効値(−9999)が格納されている。前述した偏波ごとの複素数データでは、横方向は飛行体(人工衛星、航空機等)からの距離に比例してデータが並んでおり、縦方向は飛行体の進行に応じて等間隔の時刻順にデータが並んでいる。そのため、表面散乱画像204やカラー合成画像208等の画像上のピクセル番号は飛行体からの距離へ換算できる。また、画像上のライン番号は観測時刻へ換算できる。これを利用して、人工物検出部104は、同時刻における飛行体の位置情報を用いて画像上の任意の画素に対応する緯度・経度を算出する。そして、人工物検出部104は、この緯度・経度に相当するデータを上記数値標高データから読み取り、無効値(−9999)であれば海、有効値(−9999以外)であれば陸と判定する。人工物検出部104は、この判定結果に基づき、画像内の海域を特定する。
【0052】
ステップS103(人工物の候補抽出ステップ)において、人工物検出部104は、散乱成分抽出部101により特殊散乱成分が抽出された測定位置の集合(第1領域)を、人工物の候補として処理装置151により検出する。例えば、人工物検出部104は、2回散乱画像205、体積散乱画像206、ヘリックス散乱画像207のうち、1つ又は複数の画像において明るい点(輝度が一定値以上の画素)があれば、その点を人工物の候補として抽出する。このとき、その点がステップS102で特定された海域に含まれていない場合、人工物検出部104は、その点が島等の陸地であると判断して無視する。人工物検出部104は、抽出した人工物の候補の位置情報209(ピクセル、ライン番号)を記憶装置152に記憶する。人工物の候補の位置情報209は、後述するステップS104にて各画像内で第1領域を特定するために使用される。
【0053】
ステップS104(表面散乱を用いた人工物抽出ステップ)において、人工物検出部104は、ステップS103で検出した人工物の候補(第1領域)と、その人工物の候補の周囲で散乱成分抽出部101により所定量以上の表面散乱成分が抽出された測定位置の集合(第2領域)とを含む領域を、人工物として処理装置151により検出する。例えば、人工物検出部104は、散乱成分抽出部101により生成された表面散乱画像204にて、他の画像で人工物の候補として検出した第1領域の周囲で明るい領域(輝度が一定値以上の領域)があれば、その領域を第2領域とみなし、第1領域と第2領域とを含む領域を、人工物として検出する。なお、表面散乱画像204のみを用いて人工物を抽出することも可能であるが、海面の状況によって、人工物の抽出が容易な場合と困難な場合がある。
【0054】
ここで、図6に、海面の状況による表面散乱画像204の違いの一例を示す。
【0055】
図6に示すように、穏やかな海面の画像204aでは、船舶が周囲の海面より明るい(輝度が高い)ため、船舶を抽出することは比較的容易である。一方、荒れた海面の画像204bでは、船舶と周囲の海面との明るさ(輝度)があまり変わらないため、船舶を抽出することは困難である。さらに、非常に荒れた海面の画像204cでは、船舶と周囲の海面との明るさ(輝度)がほぼ同じであるため、船舶を抽出することは不可能である。
【0056】
このように、海面が穏やかであれば、輝度に閾値を設定し、閾値以上を人工物とすることも可能であるが、海面が荒れている場合は、閾値で一律に抽出するのは困難である(誤抽出が多くなる)。そのため、上記のように、他の画像(2回散乱画像205、体積散乱画像206、ヘリックス散乱画像207)も用いて人工物を抽出することが必要となる。
【0057】
SAR画像(SARにより海上を観測した画像)において、海面は荒れ具合によって輝度の平均値及び標準偏差がともに大きくなる傾向がある。他方、人工物の輝度は海面の荒れ具合にほとんど影響を受けない。そこで、上記と似た方法として、輝度の統計量(平均、標準偏差)の差異で人工物を検出する方法が有効である。
【0058】
図7に、上記の方法を用いた人工物抽出の一例を示す。
【0059】
小領域統計量算出部102は、散乱成分抽出部101により生成された表面散乱画像204にて、人工物の候補(第1領域)の周囲の一定領域を複数の小領域に分割し(ただし、小領域同士は重なっていてもよいものとする)、輝度の統計量を小領域ごとに処理装置151により算出する。即ち、図7の(a)に示すように、小領域統計量算出部102は、人工物と思われる領域に小エリアを設定し、小エリア内の統計量(平均、標準偏差)を算出する。このとき、小エリアを、人工物を含めて周囲に対して移動させながら統計量を算出する。一方、大領域統計量算出部103は、散乱成分抽出部101により生成された表面散乱画像204にて、小領域統計量算出部102により複数の小領域に分割された一定領域より広い大領域(例えば、ステップS102で特定された海域全体、あるいは、海域のうち、サンプルとして十分な広さの領域)について、輝度の統計量を処理装置151により算出する。即ち、図7の(b)に示すように、大領域統計量算出部103は、海域を適当なサイズで抽出し、抽出したエリアの輝度の統計量(平均、標準偏差)を算出する。人工物検出部104は、小領域統計量算出部102により算出された輝度の統計量と大領域統計量算出部103により算出された輝度の統計量との差異が所定の閾値以上となる小領域の集合を第2領域とみなし、第1領域と第2領域とを含む領域を、人工物として検出する。即ち、図7の(c)に示すように、人工物検出部104は、海域に対して統計量が閾値より大きく異なる領域を人工物とみなす。このとき、閾値の設定としては、例えば海域に対して平均値が50%以上異なる、及び/又は、標準偏差が50%異なるといった設定が可能である。
【0060】
図3のステップS105(特徴量計測ステップ)において、特徴量計測部105は、人工物検出部104により検出された人工物について、散乱成分抽出部101により抽出された表面散乱成分と特殊散乱成分とに基づき、当該人工物の特徴量を処理装置151により計測する。
【0061】
ここで、図8に、人工物である船舶の特徴量計測の一例を示す。
【0062】
図8において、特徴量計測部105は、まず、表面散乱画像204(あるいはカラー合成画像208)で人工物とみなされた領域の大きさ(全長、全幅)を計測する。次に、同領域において、2回散乱画像205、体積散乱画像206、ヘリックス散乱画像207(あるいはカラー合成画像208)で散乱成分の強い領域があれば、その領域との相対的な関係から突起物等の特徴量を計測する(例えば、ブリッジの幅、先端からブリッジまでの長さ)。
【0063】
図3のステップS106(海面状況の分類ステップ)において、データベース照合部106は、海上の荒れ具合を定量化して複数の段階(例えば、3段階)に分類し、段階ごとに海面状況分類として定義したデータを記憶装置152に記憶する。例えば、データベース照合部106は、SAR画像から海面の荒れ具合を定量化(方法1)したり、気象庁発表の波情報を使用(方法2)したりすることにより、海面状況分類を定義することができる。
【0064】
ここで、方法1について説明する。データベース照合部106は、表面散乱画像204において、海域の輝度の統計量(平均μ、標準偏差σ)を海上風速Vに換算する。そのために、下記関数fを事前にいくつかの事例により経験則として決定しておく。
V=f(μ,σ)[単位:ノット]
例えば、いくつかのSAR画像、及び、SAR観測日の気象庁発表の「波情報」を用い、関数fを以下のように仮定する。
V=f(μ,σ)=a×μ+b×σ+c×μ×σ+d(a,b,c,dは最小二乗法により決定する係数)
【0065】
データベース照合部106は、さらに、上式で求めた海上風速Vを用いて海の荒れ具合を、例えば、以下の3段階に分類する。
(分類1)28ノット以下・・・おだやかな海面
(分類2)28〜48ノット・・・荒れた海面(気象庁の「海上風警報」及び「海上強風警報」に相当)
(分類3)48ノット以上・・・非常に荒れた海面(気象庁の「海上暴風警報」に相当)
【0066】
また、方法2について説明する。データベース照合部106は、SAR観測日時に近い「波情報」があればこれを活用してもよい。海上風速を海面の荒れ具合(3段階)へ換算する方法は方法1と同じである。ただし、気象庁発表の情報は日本近海に限られる。また、データ間隔が粗いため、補間処理が必要となる。よって、精度は方法2が優れている場合があるが、利便性や汎用性は方法1の方が優れている。
【0067】
特徴量データベース107は、複数の人工物(例えば、複数の種類の船舶)について、海面状況分類ごとに計測されるべき各人工物の特徴量を特徴量データ210として記憶装置152に記憶する。
【0068】
ステップS107(データベース照合ステップ)において、データベース照合部106は、記憶装置152に記憶された海面データ203に基づき、該当する海面状況分類を特定する。その方法としては、例えば、前述した方法1を用いることができる。データベース照合部106は、特定した海面状況分類を検索キーとして、特徴量計測部105により計測された特徴量を特徴量データベース107に記憶された特徴量データ210と照合する。そして、データベース照合部106は、特徴量データベース107に特徴量が記憶されている複数の人工物の中から、人工物検出部104により検出された人工物を処理装置151により特定し、人工物の特定結果211を記憶装置152に記憶したり、出力装置154へ出力したりする。例えば、データベース照合部106は、全長、全幅、突起物の位置等、ステップS105における人工物特徴量の計測結果に加えて、海面の荒れ具合(3段階)をキーとして特徴量データベース107を検索し、人工物の種類を特定する。ここで、海面の荒れ具合を検索キーの1つとしているのは、海面の荒れ具合によって人工物に対するSAR観測結果が変化することに対応するためである。例えば、海面の荒れ具合によって、人工物の全長に対するヘリックス散乱成分の強い箇所やその強度(画像上の輝度)が変化することが予想される。
【0069】
以上のように、本実施の形態によれば、人工物(特に、船舶等、海上の人工物)を高精度で検出し、さらには、その特徴量を抽出することが可能となる。また、特徴量をデータベースで照合することにより、人工物の特定も可能となる。
【0070】
実施の形態2.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を説明する。
【0071】
図9は、本実施の形態に係る人工物検出装置100の構成を示すブロック図である。
【0072】
図9において、人工物検出装置100は、図1に示した実施の形態1と同様の構成要素のほか、マルチルック処理部108を備える。
【0073】
図3を用いて、本実施の形態に係る人工物検出装置100の動作(本実施の形態に係る人工物検出方法、本実施の形態に係る人工物検出プログラムの処理手順)について説明する。
【0074】
図3のステップS101〜S103については、実施の形態1のものと同様である。
【0075】
本実施の形態では、ステップS104(表面散乱を用いた人工物抽出ステップ)において、表面散乱画像204に対し、マルチルック処理による海域のスペックルの低減を行った上で、表面散乱画像204を用いて人工物を抽出する。
【0076】
マルチルック処理部108は、散乱成分抽出部101により生成された表面散乱画像204に対してマルチルック処理を処理装置151により行う。人工物検出部104は、マルチルック処理部108によりマルチルック処理が行われた表面散乱画像204にて、ステップS103で検出した人工物の候補(第1領域)の周囲で輝度が所定の閾値以上となる領域を第2領域とみなし、第1領域と第2領域とを含む領域を、人工物として検出する。前述したように、海面の輝度と人工物の表面の輝度には一定以上の差があるはずなので、本実施の形態では、例えば、海面の輝度の平均値に対してある閾値を設定し、閾値の範囲外を人工物であると特定する。閾値は、例えば海面の平均輝度の±20%等に設定する(海面の平均輝度に対し、人工物の方が必ず明るいとは限らないので、ここでは、+方向と−方向の両方に範囲をもたせている)。
【0077】
ここで、マルチルック処理の詳細について説明する。
【0078】
図10に、マルチルック処理の手順の一例を示す。また、図11に、マルチルック処理での表面散乱画像204の変化の一例を示す。
【0079】
図10において、マルチルック処理部108は、偏波特性データ201をアジマス方向(飛行体の進行方向)にフーリエ変換し(ステップS201)、周波数領域において複数領域に帯域を分割する(ステップS202)。図10の例では3分割としている。マルチルック処理部108は、分割した帯域ごとにアジマス方向の逆フーリエ変換を行う(ステップS203)。これにより、帯域分割の個数と同じ数の複素数データ(画像)が作成される。それぞれの画像は異なる周波数から構成された画像である。
【0080】
ここでの周波数はドップラ(Doppler)周波数であり、海上(地上でも同様)のある1点(以下、Pと呼ぶ)について考えると、SARから点Pに対してビームが照射され始める段階でのドップラ周波数は高い。SARが点Pへ近づくにつれてドップラ周波数は低くなり、SARの進行方向に対して点Pが直角に位置するときにドップラ周波数はゼロとなる。SARが点Pから遠ざかるにつれてドップラ周波数はさらに低くなる。よって、人工物(あるいは陸地)のように移動速度が低いものや変化しないものについては、マルチルック処理により帯域分割された個々の画像のいずれにおいても同じ画像になる。一方、海面のように絶えず変化しているものについては、帯域分割された個々の画像の間では異なった画像となる。これをノイズとみなすならば、各画像には異なるノイズがほぼ独立に発生していることになるため、帯域分割された個々の画像を画素ごとに平均化することによってノイズを軽減し、海面の輝度の標準偏差を低くすることができる。このとき、海面の輝度の平均は保たれる。
【0081】
通常のマルチルック処理では、分割画像(複素数データ)に対して画素ごとに強度(実部の2乗+虚部の2乗)を計算し、さらに分割画素の同一ピクセル・ライン番号の値(強度)の平均を計算する。これにより、ノイズは軽減され、人工物や陸のように変化しないものはS/N(信号/雑音)比が改善される。本実施の形態では、マルチルック処理後の分割画像(複素数データ)として、ステップS101と同様の処理を行い、表面散乱画像204x〜zを作成する。なお、2回散乱画像205、体積散乱画像206、ヘリックス散乱画像207の作成は不要である。
【0082】
図11に示したように、表面散乱画像204x〜zは帯域分割の個数と同じ数だけ作成される。マルチルック処理部108は、これらを画素ごとに平均化して、海面における波による表面の乱れを軽減し、海面を滑らかにした表面散乱画像204sを生成する(ステップS205)。
【0083】
図3のステップS105〜S107については、実施の形態1のものと同様である。
【0084】
以上のように、本実施の形態によれば、海面が荒れている場合であっても、人工物をより高精度で検出することが可能となる。
【0085】
実施の形態3.
本実施の形態について、主に実施の形態2との差異を説明する。
【0086】
本実施の形態に係る人工物検出装置100の構成は、図9に示した実施の形態2のものと同様である。
【0087】
本実施の形態では、ステップS104(表面散乱を用いた人工物抽出ステップ)において、表面散乱画像204に対し、マルチルック処理による海域のスペックルの低減を行った上で、表面散乱画像204にてエッジ検出を行うことにより人工物を抽出する。
【0088】
マルチルック処理部108は、実施の形態2と同様に、散乱成分抽出部101により生成された表面散乱画像204に対してマルチルック処理を処理装置151により行う。人工物検出部104は、マルチルック処理部108によりマルチルック処理が行われた表面散乱画像204に対してエッジ検出処理を処理装置151により行う。そして、人工物検出部104は、エッジ検出処理にて検出されたエッジ線で囲まれた領域を第2領域とみなし、第1領域と第2領域とを含む領域を、人工物として検出する。前述したように、海面の輝度と人工物の表面の輝度には一定以上の差があるはずなので、本実施の形態では、上記のように、エッジ検出を行い、検出されたエッジ線が取り囲むエリアを人工物であると特定する。
【0089】
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態2と同様に、海面が荒れている場合であっても、人工物をより高精度で検出することが可能となる。
【0090】
実施の形態4.
本実施の形態について、主に実施の形態1との差異を説明する。
【0091】
本実施の形態に係る人工物検出装置100の構成は、図1に示した実施の形態1のものと同様である。
【0092】
本実施の形態では、偏波特性データ201は、偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも2種類の偏波成分を測定した結果を、測定位置ごとに示すデータである。ここでは、偏波特性データ201は、合成開口レーダを用いた2偏波観測の結果を示すデータであるとする。偏波特性データ201は、具体的には、合成開口レーダによって発射された水平偏波の電波が海面や海上の人工物等で反射して得られる散乱波の水平偏波成分(HH成分)を測定した結果、及び、同じく合成開口レーダによって発射された垂直偏波の電波が海面や海上の人工物等で反射して得られる散乱波の垂直偏波成分(VV成分)を測定した結果(即ち、HH成分とVV成分との2種類の偏波成分を測定した結果)を、測定位置ごとに示すデータである。なお、偏波特性データ201は、実施の形態1と同様に、合成開口レーダを用いたポラリメトリ(4偏波)観測の結果を示すデータであってもよい。
【0093】
図12は、本実施の形態に係る人工物検出装置100の動作(本実施の形態に係る人工物検出方法、本実施の形態に係る人工物検出プログラムの処理手順)を示すフローチャートである。
【0094】
図12のステップS301(散乱成分分解ステップ)において、散乱成分抽出部101は、記憶装置152に予め記憶された偏波特性データ201から、表面散乱成分と、表面散乱成分以外の少なくとも1種類の散乱成分である特殊散乱成分とを、測定位置ごとに処理装置151により抽出する。本実施の形態では、散乱成分抽出部101は、2回散乱成分のみを、測定位置ごとに特殊散乱成分として処理装置151により抽出するものとする。例えば、偏波特性データ201として偏波ごとの複素数データが記憶装置152に記憶されている場合、散乱成分抽出部101は、以下のように、この複素数データに対して散乱成分分解を行うことにより、表面散乱成分と2回散乱成分とを抽出することができる。
【0095】
合成開口レーダで水平偏波の電波を送信し、その散乱波の水平偏波成分を得た場合の反射係数をHHとする。また、合成開口レーダで垂直偏波の電波を送信し、その散乱波の垂直偏波成分を得た場合の反射係数をVVとする。散乱成分抽出部101は、|HH+VV|及び|HH−VV|をそれぞれ作成する。そして、散乱成分抽出部101は、|HH+VV|を表面散乱成分、|HH−VV|を2回散乱成分として計算する。なお、この計算方法は、偏波特性データ201が、ポラリメトリ(4偏波)観測の結果を示すデータであっても利用可能である。
【0096】
ステップS302(陸海判別ステップ)については、図3のステップS102と同様である。
【0097】
ステップS303(人工物の候補抽出ステップ)において、人工物検出部104は、散乱成分抽出部101により特殊散乱成分が抽出された測定位置の集合(第1領域)を、人工物の候補として処理装置151により検出する。本実施の形態では、人工物検出部104は、|HH−VV|の画像、即ち、2回散乱画像205において明るい点(輝度が一定値以上の画素)があれば、その点を人工物の候補として抽出する。
【0098】
ステップS304(表面散乱を用いた人工物抽出ステップ)については、図3のステップS104と同様である。
【0099】
ステップS305(特徴量計測ステップ)において、特徴量計測部105は、人工物検出部104により検出された人工物について、散乱成分抽出部101により抽出された表面散乱成分と特殊散乱成分とに基づき、当該人工物の特徴量を処理装置151により計測する。本実施の形態では、特徴量計測部105は、、表面散乱画像204(あるいはカラー合成画像208)で人工物とみなされた領域の大きさ(全長、全幅)を計測した後、同領域において、2回散乱画像205で散乱成分の強い領域があれば、その領域との相対的な関係から突起物等の特徴量を計測する(例えば、ブリッジの幅、先端からブリッジまでの長さ)。
【0100】
ステップS306(海面状況の分類ステップ)については、図3のステップS106と同様である。また、ステップS307(データベース照合ステップ)については、図3のステップS107と同様である。
【0101】
以上のように、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様に、人工物(特に、船舶等、海上の人工物)を高精度で検出し、さらには、その特徴量を抽出することが可能となる。また、特徴量をデータベースで照合することにより、人工物の特定も可能となる。
【0102】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、これらのうち、2つ以上の実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらのうち、1つの実施の形態を部分的に実施しても構わない。あるいは、これらのうち、2つ以上の実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【符号の説明】
【0103】
100 人工物検出装置、101 散乱成分抽出部、102 小領域統計量算出部、103 大領域統計量算出部、104 人工物検出部、105 特徴量計測部、106 データベース照合部、107 特徴量データベース、108 マルチルック処理部、151 処理装置、152 記憶装置、153 入力装置、154 出力装置、201 偏波特性データ、202 陸海判別用データ、203 海面データ、204 表面散乱画像、204a 穏やかな海面の画像、204b 荒れた海面の画像、204c 非常に荒れた海面の画像、204s,x〜z 表面散乱画像、205 2回散乱画像、206 体積散乱画像、207 ヘリックス散乱画像、208 カラー合成画像、209 人工物の候補の位置情報、210 特徴量データ、211 人工物の特定結果、901 LCD、902 キーボード、903 マウス、904 FDD、905 CDD、906 プリンタ、911 CPU、912 バス、913 ROM、914 RAM、915 通信ボード、920 HDD、921 オペレーティングシステム、922 ウィンドウシステム、923 プログラム群、924 ファイル群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも3種類の偏波成分を測定した結果を、当該散乱波が得られた位置である測定位置ごとに偏波特性データとして予め記憶する記憶装置と、データ処理を行う処理装置とを具備し、
前記記憶装置に記憶された偏波特性データから、前記複数の電波が1回反射した場合に得られる表面散乱成分と、前記表面散乱成分以外の少なくとも2種類の散乱成分である特殊散乱成分とを、測定位置ごとに前記処理装置により抽出する散乱成分抽出部と、
前記散乱成分抽出部により特殊散乱成分が抽出された測定位置の集合である第1領域と、前記第1領域の周囲で前記散乱成分抽出部により所定量以上の表面散乱成分が抽出された測定位置の集合である第2領域とを含む領域を、人工物として前記処理装置により検出する人工物検出部とを備えることを特徴とする人工物検出装置。
【請求項2】
前記散乱成分抽出部は、前記複数の電波が2回反射した場合に得られる2回散乱成分と、前記複数の電波がランダムに向いた線状物体の集合で反射した場合に得られる体積散乱成分と、前記複数の電波が反射して直線偏波から円偏波に変わった場合に得られるヘリックス散乱成分との3種類の散乱成分のうち、少なくとも2種類を、測定位置ごとに前記特殊散乱成分として前記処理装置により抽出することを特徴とする請求項1に記載の人工物検出装置。
【請求項3】
前記散乱成分抽出部は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出装置は、さらに、
前記散乱成分抽出部により生成された表面散乱画像にて、前記第1領域の周囲の一定領域を複数の小領域に分割し、輝度の統計量を小領域ごとに前記処理装置により算出する小領域統計量算出部と、
前記散乱成分抽出部により生成された表面散乱画像にて、前記一定領域より広い大領域について、輝度の統計量を前記処理装置により算出する大領域統計量算出部とを備え、
前記人工物検出部は、前記小領域統計量算出部により算出された輝度の統計量と前記大領域統計量算出部により算出された輝度の統計量との差異が所定の閾値以上となる小領域の集合を前記第2領域とみなすことを特徴とする請求項1又は2に記載の人工物検出装置。
【請求項4】
前記複数の電波は、上空を飛行する飛行体に搭載された合成開口レーダにより発射されるものであり、
前記散乱成分抽出部は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出装置は、さらに、
前記散乱成分抽出部により生成された表面散乱画像に対してマルチルック処理を前記処理装置により行うマルチルック処理部を備え、
前記人工物検出部は、前記マルチルック処理部により前記マルチルック処理が行われた表面散乱画像にて、前記第1領域の周囲で輝度が所定の閾値以上となる領域を前記第2領域とみなすことを特徴とする請求項1又は2に記載の人工物検出装置。
【請求項5】
前記複数の電波は、上空を飛行する飛行体に搭載された合成開口レーダにより発射されるものであり、
前記散乱成分抽出部は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出装置は、さらに、
前記散乱成分抽出部により生成された表面散乱画像に対してマルチルック処理を前記処理装置により行うマルチルック処理部を備え、
前記人工物検出部は、前記マルチルック処理部により前記マルチルック処理が行われた表面散乱画像に対してエッジ検出処理を前記処理装置により行い、前記エッジ検出処理にて検出されたエッジ線で囲まれた領域を前記第2領域とみなすことを特徴とする請求項1又は2に記載の人工物検出装置。
【請求項6】
前記人工物検出装置は、さらに、
前記人工物検出部により検出された人工物について、前記散乱成分抽出部により抽出された表面散乱成分と特殊散乱成分とに基づき、当該人工物の特徴量を前記処理装置により計測する特徴量計測部を備えることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載の人工物検出装置。
【請求項7】
前記人工物検出装置は、さらに、
複数の人工物について、各人工物の特徴量を特徴量データとして記憶する特徴量データベースと、
前記特徴量計測部により計測された特徴量を前記特徴量データベースに記憶された特徴量データと照合して、前記複数の人工物の中から、前記人工物検出部により検出された人工物を前記処理装置により特定するデータベース照合部とを備えることを特徴とする請求項6に記載の人工物検出装置。
【請求項8】
前記複数の電波は、海上に発射されるものであり、
前記記憶装置は、前記複数の電波が発射されたときの海面の荒れ具合を示す海面データを記憶し、
前記特徴量データベースは、前記複数の人工物について、海面の荒れ具合を定量化して複数の段階に分類した海面状況分類ごとに計測されるべき各人工物の特徴量を前記特徴量データとして記憶し、
前記データベース照合部は、前記記憶装置に記憶された海面データに基づき、該当する海面状況分類を特定し、特定した海面状況分類を検索キーとして、前記特徴量計測部により計測された特徴量を前記特徴量データベースに記憶された特徴量データと照合することを特徴とする請求項7に記載の人工物検出装置。
【請求項9】
偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも3種類の偏波成分を測定した結果を、当該散乱波が得られた位置である測定位置ごとに偏波特性データとして予め記憶する記憶装置と、データ処理を行う処理装置とを具備する人工物検出装置を用いた人工物検出方法であって、
前記人工物検出装置の散乱成分抽出部が、前記記憶装置に記憶された偏波特性データから、前記複数の電波が1回反射した場合に得られる表面散乱成分と、前記表面散乱成分以外の少なくとも2種類の散乱成分である特殊散乱成分とを、測定位置ごとに前記処理装置により抽出し、
前記人工物検出装置の人工物検出部が、前記散乱成分抽出部により特殊散乱成分が抽出された測定位置の集合である第1領域と、前記第1領域の周囲で前記散乱成分抽出部により所定量以上の表面散乱成分が抽出された測定位置の集合である第2領域とを含む領域を、人工物として前記処理装置により検出することを特徴とする人工物検出方法。
【請求項10】
偏波特性の異なる複数の電波が反射して得られる散乱波の少なくとも3種類の偏波成分を測定した結果を、当該散乱波が得られた位置である測定位置ごとに偏波特性データとして予め記憶する記憶装置と、データ処理を行う処理装置とを具備するコンピュータにより実行される人工物検出プログラムであって、
前記記憶装置に記憶された偏波特性データから、前記複数の電波が1回反射した場合に得られる表面散乱成分と、前記表面散乱成分以外の少なくとも2種類の散乱成分である特殊散乱成分とを、測定位置ごとに前記処理装置により抽出する散乱成分抽出手順と、
前記散乱成分抽出手順により特殊散乱成分が抽出された測定位置の集合である第1領域と、前記第1領域の周囲で前記散乱成分抽出手順により所定量以上の表面散乱成分が抽出された測定位置の集合である第2領域とを含む領域を、人工物として前記処理装置により検出する人工物検出手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする人工物検出プログラム。
【請求項11】
前記散乱成分抽出手順は、前記複数の電波が2回反射した場合に得られる2回散乱成分と、前記複数の電波がランダムに向いた線状物体の集合で反射した場合に得られる体積散乱成分と、前記複数の電波が反射して直線偏波から円偏波に変わった場合に得られるヘリックス散乱成分との3種類の散乱成分のうち、少なくとも2種類を、測定位置ごとに前記特殊散乱成分として前記処理装置により抽出することを特徴とする請求項10に記載の人工物検出プログラム。
【請求項12】
前記散乱成分抽出手順は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出プログラムは、さらに、
前記散乱成分抽出手順により生成された表面散乱画像にて、前記第1領域の周囲の一定領域を複数の小領域に分割し、輝度の統計量を当該小領域ごとに前記処理装置により算出する小領域統計量算出手順と、
前記散乱成分抽出手順により生成された表面散乱画像にて、前記一定領域より広い大領域について、輝度の統計量を前記処理装置により算出する大領域統計量算出手順とをコンピュータに実行させ、
前記人工物検出手順は、前記小領域統計量算出手順により算出された輝度の統計量と前記大領域統計量算出手順により算出された輝度の統計量との差異が所定の閾値以上となる小領域の集合を前記第2領域とみなすことを特徴とする請求項10又は11に記載の人工物検出プログラム。
【請求項13】
前記複数の電波は、上空を飛行する飛行体に搭載された合成開口レーダにより発射されるものであり、
前記散乱成分抽出手順は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出プログラムは、さらに、
前記散乱成分抽出手順により生成された表面散乱画像に対してマルチルック処理を前記処理装置により行うマルチルック処理手順をコンピュータに実行させ、
前記人工物検出手順は、前記マルチルック処理手順により前記マルチルック処理が行われた表面散乱画像にて、前記第1領域の周囲で輝度が所定の閾値以上となる領域を前記第2領域とみなすことを特徴とする請求項10又は11に記載の人工物検出プログラム。
【請求項14】
前記複数の電波は、上空を飛行する飛行体に搭載された合成開口レーダにより発射されるものであり、
前記散乱成分抽出手順は、抽出した表面散乱成分の強度分布を輝度分布で表す画像である表面散乱画像を、前記処理装置により生成し、
前記人工物検出プログラムは、さらに、
前記散乱成分抽出手順により生成された表面散乱画像に対してマルチルック処理を前記処理装置により行うマルチルック処理手順をコンピュータに実行させ、
前記人工物検出手順は、前記マルチルック処理手順により前記マルチルック処理が行われた表面散乱画像に対してエッジ検出処理を前記処理装置により行い、前記エッジ検出処理にて検出されたエッジ線で囲まれた領域を前記第2領域とみなすことを特徴とする請求項10又は11に記載の人工物検出プログラム。
【請求項15】
前記人工物検出プログラムは、さらに、
前記人工物検出手順により検出された人工物について、前記散乱成分抽出手順により抽出された表面散乱成分と特殊散乱成分とに基づき、当該人工物の特徴量を前記処理装置により計測する特徴量計測手順をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項10から14までのいずれかに記載の人工物検出プログラム。
【請求項16】
前記人工物検出プログラムは、さらに、
複数の人工物について、各人工物の特徴量を特徴量データとして記憶する特徴量データベースにアクセスし、
前記特徴量計測手順により計測された特徴量を前記特徴量データベースに記憶された特徴量データと照合して、前記複数の人工物の中から、前記人工物検出手順により検出された人工物を前記処理装置により特定するデータベース照合手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする請求項15に記載の人工物検出プログラム。
【請求項17】
前記複数の電波は、海上に発射されるものであり、
前記記憶装置は、前記複数の電波が発射されたときの海面の荒れ具合を示す海面データを記憶し、
前記特徴量データベースは、前記複数の人工物について、海面の荒れ具合を定量化して複数の段階に分類した海面状況分類ごとに計測されるべき各人工物の特徴量を前記特徴量データとして記憶し、
前記データベース照合手順は、前記記憶装置に記憶された海面データに基づき、該当する海面状況分類を特定し、特定した海面状況分類を検索キーとして、前記特徴量計測手順により計測された特徴量を前記特徴量データベースに記憶された特徴量データと照合することを特徴とする請求項16に記載の人工物検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−197337(P2010−197337A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45485(P2009−45485)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)
【Fターム(参考)】