説明

人造大理石

【課題】本発明は、機械的強度に優れ、尚且つ従来の人工大理石にはない質感を有する人造大理石を提供することを目的とする。
【解決手段】バサルト繊維を含む繊維補強材と、熱硬化性樹脂と、添加剤とを含有する材料100質量部に対し、厚さ100μm以下、平均径0.1〜10mmの着色高分子フィルム細片5質量部以下を添加した成形材料を加熱加圧成形して得られる人造大理石である。繊維補強材は、10質量%〜100質量%のバサルト繊維を含むことが好ましい。この人造大理石は、キッチン天板に好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人造大理石に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然石である大理石は、外観が美麗で、かつ高級さを備えた重量感を有することから、住宅資材や浴室用基材などをはじめ、様々な用途に供されている。しかし、この天然大理石は自重が大である上、急加熱に弱く、かつ表面が多孔質であるため液体系汚染が落ちにくいなどの欠点がある。そのため、近年、天然大理石に近い質感をもつ人造大理石が開発され、実用化されている。この人造大理石は、天然大理石に近い質感を有するとともに、加工・施工性に優れ、しかも天然大理石にはない色合いや模様が得られる上、上述した欠点も解消している。このような長所を有する人造大理石は、例えばキッチン天板や各種カウンタートップ、洗面化粧台、バスタブ、シャワートレー、防水パン、床材、壁材、間仕切り板などに使用されている。
【0003】
この人造大理石は、通常不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、アクリル系樹脂などの熱硬化性樹脂からなるマトリックスに各種フィラー(繊維補強材や柄材を含む)を分散させてなるものである(例えば、特許文献1を参照)。その製造方法としては、通常ハンドレイアップ法、注型法及び加熱加圧法が用いられている。そして、人造大理石は透明感が要求されるために、フィラーなどの充填物とマトリックス樹脂との屈折率がほぼ同程度となるように考慮されており、特に、柄材を添加してなる人造大理石の場合、その鮮明性や深み感は不可欠である。
【0004】
【特許文献1】特開平11−34087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の人造大理石では、機械的強度等に優れるものの、質感が未だ十分ではないという問題があった。
従って、本発明は、機械的強度に優れ、且つ従来の人工大理石にはない質感を有する人造大理石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、バサルト繊維を含む繊維補強材と、熱硬化性樹脂と、添加剤とを含有する材料に対し、特定の厚さ及び平均径を有する着色高分子フィルムを特定の割合で添加した成形材料を加熱加圧成形して得られる人造大理石が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、バサルト繊維を含む繊維補強材と、熱硬化性樹脂と、添加剤とを含有する材料100質量部に対し、厚さ100μm以下、平均径0.1〜10mmの着色高分子フィルム細片5質量部以下を添加した成形材料を加熱加圧成形して得られる人造大理石である。
繊維補強材は、10質量%〜100質量%のバサルト繊維を含むことが好ましい。
バサルト繊維の繊維長は1mm〜150mmであることが好ましい。
本発明の人造大理石は、キッチン天板に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機械的強度に優れ、尚且つ従来の人工大理石にはない質感を有する人造大理石を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明よる人造大理石は、バサルト繊維を含む繊維補強材と、熱硬化性樹脂と、添加剤と、着色高分子フィルム細片とを含む成形材料を加熱加圧成形して得られるものである。そして、この人造大理石は、繊維補強材と熱硬化性樹脂とによって和紙模様を呈する。即ち、繊維補強材と熱硬化性樹脂との色彩や光沢が混ざり合って和紙のような繊維感及び混色感を有し、かつ和紙のような奥深い色彩を有するように構成されている。
【0009】
本発明に用いられるバサルト繊維は、玄武岩を主原料とする暗色の繊維である。バサルト繊維は、一般に、玄武岩を砂状に粉砕した後、これを高温で溶融紡糸することにより製造される。バサルト繊維の繊維長は特に限定されるものではないが、好ましくは1mm〜150mm、より好ましくは6mm〜70mmである。繊維長が1mm〜150mmであれば、人造大理石の機械的強度をより高めることができる上に、成形時の型内流動性が良好となるため好ましい。バサルト繊維を二次加工したものも使用することができ、例えば、チョップドファイバー、ミルドファイバー、マット等がある。
【0010】
また、バサルト繊維をシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等で表面処理したものも使用可能である。バサルト繊維をカップリング剤で表面処理することで、バサルト繊維と熱硬化性樹脂との間の親和性が増大され、バサルト繊維と熱硬化性樹脂とが衝撃により剥離するのを防止することができる。このような表面処理に用いられるシランカップリング剤としては、例えば、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプルトリメトキシシラン等が挙げられる。チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。表面処理方法としては、乾式法、湿式法、スプレー方式等の当該分野において公知であるものを採用することができる。カップリング剤の使用量は、バサルト繊維の形状によっても異なるが、薄く均一に表面をコーティングできる量であればよい。
【0011】
本発明に用いられる上記バサルト繊維以外の繊維補強材としては、以下のような繊維が挙げられる。
無機繊維としては、当該分野において公知の無機繊維を制限なく用いることができ、例えば、ガラス繊維、アルミナシリカ繊維(セラミックファイバー)、アルミナ繊維、ムライト繊維、石英繊維、高珪酸ガラス繊維、熔融シリカ繊維、フォスフェート繊維、ロックウール、チタン酸カリ繊維、ジルコニアファイバー、硫酸カルシウム繊維、ボロン繊維等の無機繊維が挙げられる。また、有機繊維としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、PVAレーヨン、ポリクラール、PP、アラミド、カイノール繊維等の合成有機繊維が挙げられる。これらの繊維は、1種単独で用いてもよいし或いは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明において、バサルト繊維を含む繊維補強材は、着色高分子フィルム細片を除いた成形材料全体に対して2質量%〜75質量%配合される。繊維補強材の配合量が2質量%未満であると、機械的強度が不十分となり、75質量%を超えると、成形時の型内流動性及び成形品外観が著しく悪化することがあるためである。また、繊維補強材に含まれるバサルト繊維の割合は、10質量%〜100質量%であることが好ましく、15質量%〜50質量%であることが更に好ましい。バサルト繊維含有量を上記範囲とすることで、より質感の高い人造大理石を得ることができる。
【0013】
さらに、本発明に用いられる熱硬化性樹脂としては特に制限はなく、人造大理石に慣用されているもの、例えば不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル系樹脂及びアクリル系樹脂などの中から、任意のものを選択して用いることができる。これらの中でも、耐熱性、耐汚染性、加工・施工性に優れ、質感をより向上させる観点から、不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。
また、本発明における熱硬化性樹脂は、着色高分子フィルム細片を除いた成形材料全体に対して、好ましくは10〜95質量%、更に好ましくは15質量%〜50質量%配合される。熱硬化性樹脂の配合割合が上記範囲であれば、機械的強度に優れるとともに、従来の天然大理石にはない色合いや和紙模様のような深み感がでるためより好ましい。
【0014】
また、不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば不飽和二塩基酸、飽和二塩基酸及び多価アルコールを縮合反応させて得られる不飽和ポリエステルを架橋性単量体に溶解して得られるものなどが挙げられ、特に不飽和ポリエステルの二塩基酸成分として、テレフタル酸を20〜50モル%含むものを用いたものが好適である。
【0015】
前記不飽和ポリエステルを得るために使用される不飽和二塩基酸としては、例えばフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びこれらの混合物などが、飽和二塩基酸としては、例えばテレフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びこれらの混合物などが挙げられる。
一方、多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールAなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし或いは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
さらに、架橋性単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、この架橋性単量体の不飽和ポリエステル樹脂中に占める割合は、通常25〜55質量%の範囲である。本発明においては、上記した不飽和ポリエステル樹脂を一種単独で用いてもよいし或いは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
また、ビニルエステル系樹脂としては、例えば分子中にエポキシ基を少なくとも1個有するエポキシ化合物に、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和一塩基酸をエステル化反応させることにより得られたビニルエステル化合物を、必要に応じ用いられる前記架橋性単量体に溶解させて得られたものが挙げられる。上記したビニルエステル系樹脂を一種単独で用いてもよいし或いは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
一方、アクリル系樹脂としては、例えばメタクリル酸メチルを主体とするビニル系単量体40〜70質量%、架橋性単量体0〜10質量%、平均分子量1万〜15万のポリメタクリル酸メチル30〜60質量%を含有するアクリルシロップを挙げることができる。ここで、メタクリル酸メチルと併用しうるビニル系単量体としては、例えば他のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物などが挙げられ、架橋性単量体としては、前記不飽和ポリエステル樹脂の説明において例示したものと同じものを挙げることができる。また、ポリメタクリル酸メチルはカルボキシル基を含有するものであってもよい。本発明においては、上記したアクリル系樹脂を一種単独で用いてもよいし或いは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本発明に用いられる着色高分子フィルム細片は、厚さが100μm以下、望ましくは25〜100μmの範囲にあり、かつ平均径が0.1〜10mm、望ましくは0.5〜10mmの範囲にある。厚さが25μm未満では加熱加圧成形時にフィルム変形や内部への巻き込みが起こりやすく、また100μmを超えるとひけなどの外観不良が発生しやすくなる。フィルムの変形や内部への巻き込み、ひけなどの外観不良の発生などを防止する点から、このフィルムの好ましい厚さは30〜100μmの範囲であり、特に30〜50μmの範囲が好ましい。一方、平均径が0.1mm未満では天然大理石調の外観が得られず、10mmを超えると均一分散が困難となり、外観不良が生じる。
【0020】
フィルム細片の形状については、平均径が上記の範囲にあればよく、特に制限されず、いかなる形状であってもよい。この高分子フィルム細片の基材樹脂としては、成形時の加熱において、実質上溶融しないものであればよく、特に制限されず、様々な樹脂を用いることができる。例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアセテート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリイミド系、ポリカーボネート系、ポリフェニレンサルファイド系などが挙げられる。また、着色高分子フィルム細片の作製方法については特に制限はなく、種々の方法を用いることができる。例えばカーボンブラック(黒)、ベンガラ(赤)、酸化チタン(白)などの顔料を、高分子フィルム表面に真空蒸着させたのち、細片化してもよく、また高分子フィルム表面に各種方法により印刷したのち、細片化してもよい。あるいは、高分子フィルム表面に印刷を施した後、その上にさらに透明なプラスチックフィルムをラミネートしたものを細片化してもよい。
【0021】
本発明においては、このような着色高分子フィルム細片を、バサルト繊維を含む繊維補強材と熱硬化性樹脂と添加剤との合計100質量部当たり、5質量部以下添加する。この添加量が5質量部を超えると均一分散が困難となる上、フィルム細片の重なり部が多くなって、所望の天然大理石調が得られにくくなり、また表面突出部分が発生する場合がある。さらに、人造大理石の機械的強度が低下する虞がある。また、この添加量があまり少なすぎると所望の天然大理石調のものが得られにくい。フィルム細片が均一分散し、天然大理石調の外観の美麗な人造大理石を得るには、この着色高分子フィルム細片は、バサルト繊維を含む繊維補強材と熱硬化性樹脂と添加剤との合計100質量部当たり、3〜5質量部の範囲で添加するのが有利である。本発明においては、この着色高分子フィルム細片は、単一色のものを用いてもよいし或いは着色の異なるものを二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明における成形材料には、本発明の効果を損なわない範囲で、フィラー、内部離型剤、低収縮化剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、着色剤、カップリング剤、増粘剤、シリコーンオイル、界面活性剤などの添加剤を添加することができる。
フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、ガラス粉末、酸化マグネシウムなどの中から、使用する熱硬化性樹脂の屈折率に応じて適宜選択して用いられる。なお、上記したフィラーもシラン系、チタネート系などのカップリング剤で表面処理して用いることができ、フィラーは、熱硬化性樹脂100質量部当たり、通常150〜550質量部の範囲で用いられる。
内部離型剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。低収縮化剤としては、例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。硬化剤(有機過酸化物)としては、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアリルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類などが挙げられる。硬化促進剤としては、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルトなど公知の金属石鹸が挙げられる。
【0023】
次に、本発明の人造大理石の製造方法について説明する。まず、バサルト繊維を含む繊維補強材、熱硬化性樹脂、硬化剤、着色高分子フィルム細片及び所望により用いられる各種添加剤を、混練機、例えばバンバリー型ニーダーなどを用いて混練して均質な成形材料を調製したのち、所望の形状の金型に充填し、30〜120kg/cm2程度の成形圧力下、100℃以上、好ましくは120℃以上の温度で、5〜15分間程度加圧成形し、硬化させることにより、本発明の人造大理石が得られる。このようにして得られた本発明の人造大理石は、機械的強度が優れる上に、表面にひけやふくれなどがなく外観が美麗で、従来の人工大理石にはない質感を有している。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、それらは例示であって、本発明を限定するものではない。
【0025】
<実施例1>
不飽和ポリエステル樹脂(二塩基酸成分中のテレフタル酸含有量20モル%)100質量部、ポリメチルメタクリレート「三菱レーヨン(株)製、ダイヤナールBR−87」20質量部、パーヘキサTMH「日本油脂(株)製、硬化剤」2質量部、ガラス粉「日本フェロー(株)製、M−10S」400質量部、ステアリン酸亜鉛4質量部、酸化マグネシウム0.1質量部、バサルト繊維10質量部及びガラス繊維40質量部からなる材料の合計100質量部に対し、黒色ポリエステルフィルム細片(厚さ30μm、平均径1.5mm)4質量部を加え、バンバリー型ニーダーにて混練して組成物を調製した。次に、この組成物を厚さ10mmのキッチンカウンター用試験金型に充填したのち、圧力100kg/cm2、温度130℃の条件で8分間加熱加圧成形し、硬化させることにより得られた良好な黒御影調の人造大理石でキッチンカウンター作製した。これは、表面にひけやふくれなどが認められず、外観の美麗なものであった(図1参照)。また、この成形品の曲げ強度(JIS K7203に準拠)は8.1kgf/mm2であった。
【0026】
<実施例2>
実施例1において、黒色ポリエステルフィルム細片として、厚さ50μm、平均径1.5mmのものを3質量部用いた以外は、実施例1と同様に実施して、人造大理石製のキッチンカウンターを作製した。組成物調製における混練状態は良好であり、また得られた成形品は、良好な黒御影調を有し、かつ表面に柄材フィルムの突出はなく、美麗な外観を有していた(図1参照)。また、この成形品の曲げ強度(JIS K7203に準拠)は6.0kgf/mm2であった。
【0027】
<比較例1>
実施例1において、黒色ポリエステルフィルム細片の添加量を7質量部とした以外は、実施例1と同様に実施して、人造大理石製のキッチンカウンターを作製した。組成物調製における混練状態については、時折トルクに異常が認められた。また、得られた成形品は、表面の一部に柄材フィルムの突出が認められた(突出数3個/100cm2)(図2参照)。さらに、この成形品の曲げ強度(JIS K7203に準拠)は4.8kgf/mm2であった。
【0028】
<比較例2>
実施例1において、黒色ポリエステルフィルム細片として、厚さ50μm、平均径1.5mmのものを10質量部用いた以外は、実施例1と同様に実施して、人造大理石製のキッチンカウンターを作製した。組成物調製における混練状態については、異常なトルク値を示し、回転が一時停止するなど、混練不良であった。また、得られた成形品は、柄材フィルムの重なり及び表面の一部に柄材フィルムの突出が認められた(突出数21個/100cm)(図2参照)。さらに、この成形品の曲げ強度(JIS K7203に準拠)は3.0kgf/mm2であった。
【0029】
<比較例3>
実施例1において、黒色ポリエステルフィルム細片として、厚さ20μm、平均径3mmのものを7質量部用いた以外は、実施例1と同様に実施して、人造大理石製のキッチンカウンターを作製した。組成物調製における混練状態は良好であった。しかし、得られた成形品は、表面にひけや凹凸が発生して外観が悪く、且つ質感も不十分でものであった。なお、この成形品の曲げ強度(JIS K7203に準拠)は4.2kgf/mm2であった。
【0030】
<比較例4>
実施例1において、黒色ポリエステルフィルム細片の代わりに黒色のBMC粉砕物(成分:不飽和ポリエステル樹脂、厚さ及び平均径約3mm)を10質量部用いた以外は、実施例1と同様に実施して、人造大理石製のキッチンカウンターを作製した。組成物調製における混練状態は良好であった。しかし、得られた成形品は、表面にひけや凹凸が発生して外観が悪く、且つ質感も不十分なものであった(図3参照)。この成形品の曲げ強度(JIS K7203に準拠)は4.2kgf/mm2であった。
【0031】
<実施例3>
ビニルエステル樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とメタクリル酸との反応生成物72質量%及びスチレンモノマー28質量%を含有するもの)100質量部、ポリメチルメタクリレート「三菱レーヨン(株)製、ダイヤナールBR−87」25質量部、アルミニウムキレート「川研ファインケミカル(株)製、ALCH」1質量部、ポリスチレン20質量部、パーヘキサTMH「日本油脂(株)製、硬化剤」2質量部、水酸化アルミニウム「昭和電工(株)製、ハイジライトH−320」550質量部、ステアリン酸亜鉛4質量部、バサルト繊維20質量部及びガラス繊維20質量部からなる材料の合計100質量部に対し、黒色ポリエステルフィルム細片(厚さ30μm、平均径1.5mm)1質量部を加え、バンバリー型ニーダーにて混練して組成物を調製した。次に、この組成物を厚さ10mmのキッチンカウンター用試験金型に充填したのち、圧力120kgf/cm2、温度130℃の条件で9分間プレス成形し、硬化させることにより、人造大理石製のキッチンカウンターを作製した。組成物調製における混練状態は良好であり、また得られた成形品は、従来の人造大理石にはない黒和紙調の模様を有し、かつ表面に柄材フィルムの突出はなく、美麗な外観を有していた(図1参照)。また、この成形品の曲げ強度(JIS K7203に準拠)は6.1kgf/mm2であった。
【0032】
<実施例4>
実施例3において、黒色ポリエステルフィルム細片の添加量を2.5質量部に変えた以外は、実施例3と同様に実施して、人造大理石製のキッチンカウンターを作製した。組成物調製における混練状態は良好であり、また得られた成形品は、従来の人造大理石にはない黒和紙調模様を有し、かつ表面に柄材フィルムの突出はなく、美麗な外観を有していた(図1参照)。また、この成形品の曲げ強度(JIS K7203に準拠)は5.9kgf/mm2であった。
【0033】
<実施例5>
実施例3において、黒色ポリエステルフィルム細片の添加量を4.5質量部に変えた以外は、実施例3と同様に実施して、人造大理石製のキッチンカウンターを作製した。組成物調製における混練状態については、トルクにやや乱れが認められたが、混練は可能であった。得られた成形品は、従来の人造大理石にはない和紙調模様を有し、かつ表面に柄材フィルムの突出はなく、美麗な外観を有していた(図1参照)。また、この成形品の曲げ強度(JIS K7203に準拠)は5.2kgf/mm2であった。
【0034】
<実施例6>
アクリル樹脂(メタクリル酸メチル60質量%、トリメチロールプロパントリメタクリレート1質量%、ポリメチルメタクリレート39質量%含有)100質量部、水酸化アルミニウム「住友化学工業(株)製、CW−308、平均粒径8μm」200質量部、パーヘキサTMH「日本油脂(株)製、硬化剤」1質量部、ステアリン酸亜鉛1質量部、バサルト繊維2質量部及びガラス繊維8質量部からなる材料の合計100質量部に対し、黒色ポリエステルフィルム細片(厚さ30μm、平均径1.5mm)4質量部を加え、バンバリー型ニーダーにて混練して組成物を調製した。次にこの組成物を厚さ10mmのキッチンカウンター用試験金型に充填したのち、圧力120kgf/cm2、温度130℃の条件で8分間プレス成形し、硬化させることにより、従来の人造大理石にはない和紙調模様の人造大理石製のキッチンカウンターが得られた。このものは、表面にひけやふくれなどが認められず、外観の美麗なものであった(図1参照)。また、この成形品の曲げ強度(JIS K7203に準拠)は8.1kgf/mm2であった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例1〜6で得られた人造大理石の表面付近の状態を示す概念図である。
【図2】比較例1、2で得られた人造大理石の表面付近の状態を示す概念図である。
【図3】比較例3、4で得られた人造大理石の表面付近の状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0036】
1 人造大理石の表面、2 着色高分子フィルム細片、3 BMC粉砕物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バサルト繊維を含む繊維補強材と、熱硬化性樹脂と、添加剤とを含有する材料100質量部に対し、厚さ100μm以下、平均径0.1〜10mmの着色高分子フィルム細片5質量部以下を添加した成形材料を加熱加圧成形して得られる人造大理石。
【請求項2】
前記繊維補強材が、10質量%〜100質量%のバサルト繊維を含むことを特徴とする請求項に1に記載の人造大理石。
【請求項3】
前記バサルト繊維の繊維長が1mm〜150mmであることを特徴とする請求項1または2の何れか一項に記載の人造大理石。
【請求項4】
キッチン天板用であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の人造大理石。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−201598(P2008−201598A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36562(P2007−36562)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】