説明

介在部材の保持構造、介在部材、及びがたつき防止部材

【課題】がたつき防止部材の組付け時の脱落を防止できると共に、介在部材の剛性の適用範囲を低い側に拡大することができる介在部材の保持構造を提供する。
【解決手段】トルクコンバータハウジング壁5と変速機ケース3(中間壁6)との間にバッフルプレート2が介在され、バッフルプレート2とトルクコンバータハウジング壁5との間にがたつき防止部材39が圧縮された状態で介装されている介在部材の保持構造を前提とする。この前提の下で、がたつき防止部材39の頭部41と膨らみ部42とで凹部31(37)の底部31a(37a)を挟持して、作業中においても、がたつき防止部材39を凹部31(37)の底部31a(37a)に的確に保持する。また、がたつき防止部材39における頭部41内を空洞とするばかりか、頭部41が押し潰し変形されたとき、その頭部41内の空気を環状隙間43を介して外部に排出して、バッフルプレート2に対する圧縮荷重を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介在部材の保持構造、その介在部材の保持構造に用いられる介在部材及びその介在部材のがたつきを防止するがたつき防止部材に関する。
【背景技術】
【0002】
介在部材の保持構造として、第1部材と第2部材との間に介在部材が介在されるものがある。例えば特許文献1には、組付け性を考慮して、介在部材の一端部を第1部材に取付ける一方、介在部材の他端部に、ラバーが取付けられた突出端部を設けて、その突出端部等を、第2部材に形成された嵌合部に嵌合したものが提案されている。
【0003】
ところで、介在部材の保持構造には、部品点数の低減等の観点から、介在部材を第1部材と第2部材とにより挟持するだけで保持し、しかも、その保持の際、介在部材のがたつきを防止するようにしたものがある。このような保持構造は、一般に、介在部材と第1部材又は第2部材の少なくとも一方の部材との間にがたつき防止部材を介装し、第1部材と第2部材との間に介在部材を介在させる際に、がたつき防止部材を圧縮することとなっている。これにより、がたつき防止部材の圧縮に基づき反発力が発生することになり、その反発力により介在部材は、第1,第2部材間でがたつくことが規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−136559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記介在部材の保持構造においては、がたつき防止部材として、一般に、ゴムブッシュが用いられ、そのゴムブッシュが、介在部材に形成される凹部内に仮嵌合(仮留め)されているにすぎず、介在部材を第1,第2部材との間に介在させる組付け作業を行う際に、そのゴムブッシュが介在部材の凹部から脱落するおそれがある。このため、ゴムブッシュが脱落した場合には、そのゴムブッシュを拾って、再度、組付け作業をやり直す必要があり、ゴムブッシュの脱落は作業性を低下させる。
また、第1,第2部材及び介在部材が組付けられると、介在部材が第1,第2部材間でがたつくことを規制すべく、がたつき防止部材としてのゴムブッシュが所定の圧縮状態になるまで圧縮されることになるが、ゴムブッシュを所定の圧縮状態にするためには、非常に高い圧縮荷重が必要となる。このため、がたつき防止部材として、ゴムブッシュを用いる場合には、介在部材として、高い剛性のものが必要となり、低い剛性の介在部材を用いることは困難となる。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その第1の技術的課題は、組付け時のがたつき防止部材の脱落を防止できると共に、介在部材の剛性の適用範囲を低い側に拡大することができる介在部材の保持構造を提供することにある。
第2の技術的課題は、上記介在部材の保持構造に用いられる介在部材を提供することにある。
第3の技術的課題は、上記介在部材の保持構造に用いられるがたつき防止部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
第1部材と第2部材との間に介在部材が介在され、該介在部材と前記第1部材又は第2部材の少なくとも一方の部材との間に、該介在部材のがたつきを防止するがたつき防止部材が圧縮された状態で介装されている介在部材の保持構造において、
前記介在部材に、前記一方の部材に対向するようにして支持板部が備えられ、
前記支持板部に貫通孔が、その軸心延び方向を前記第1,第2部材の並設方向に向くようにして形成され、
前記がたつき防止部材が、
前記支持板部の貫通孔を摺動可能に貫通し、その一端部が前記支持板部よりも前記一方の部材側に位置されると共にその他端部が前記支持板部よりも前記一方の部材から遠い側に位置される軸部と、
前記軸部の一端部に一体的に設けられ該一端部から該支持板部に近づくに従って拡径される傘状の弾性頭部と、
前記軸部のうち、前記支持板部よりも該軸部の他端側に、前記貫通孔の径よりも拡径された状態で形成されて、前記弾性頭部と協働して前記支持板部を挟持する膨らみ部と、を一体的に備えている構成とされている。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2〜6の記載の通りとなる。
【0008】
前記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項7に係る発明)にあっては、
第1部材と第2部材との間に介在されている介在部材であって、
前記第1部材又は第2部材の少なくとも一方の部材に対向するようにして支持板部が備えられ、
前記支持板部に貫通孔が、その軸心方向を前記第1,第2部材の並設方向に向けるようにして形成され、
前記支持板部にがたつき防止部材が保持され、
前記がたつき防止部材が、
前記支持板部の貫通孔を摺動可能に貫通してその一端部が前記支持板部よりも前記一方の部材側に位置されると共にその他端部が前記支持板部よりも前記一方の部材から遠い側に位置される軸部と、
前記軸部の一端部に一体的に設けられ該一端部から該支持板部に近づくに従って拡径される傘状の弾性頭部と、
前記軸部のうち、前記支持板部よりも該軸部の他端側に、前記貫通孔の径よりも拡径された状態で形成され、前記弾性頭部と協働して前記支持板部を挟持する膨らみ部と、を一体的に備えている構成とされている。この請求項7の好ましい態様としては、請求項8〜12の記載の通りとなる。
【0009】
前記第3の技術的課題を達成するために本発明(請求項13に係る発明)にあっては、
第1部材と第2部材との間に介在部材が介在される状態の下で、該介在部材と前記第1部材又は第2部材の少なくとも一方の部材との間に介装されて、該介在部材のがたつきを防止するがたつき防止部材であって、
前記介在部材として、前記一方の部材に対向するようにして支持板部が備えられていると共に、該支持板部に貫通孔がその軸心方向を前記第1,第2部材の並設方向に向けるようにして形成されているものに対して用いられるものであり、
前記支持板部の貫通孔を摺動可能に貫通してその一端部が前記支持板部よりも前記一方の部材側に位置されると共にその他端部が前記支持板部よりも前記一方の部材から遠い側に位置される軸部と、
前記軸部の一端部に一体的に設けられ該一端部から該支持板部に近づくに従って拡径される傘状の弾性頭部と、
前記軸部のうち、前記支持板部よりも該軸部の他端側に、前記貫通孔の径よりも拡径された状態で形成され、前記弾性頭部と協働して前記支持板部を挟持する膨らみ部と、を一体的に備えている構成とされている。
【発明の効果】
【0010】
本発明(請求項1に係る発明)によれば、がたつき防止部材の弾性頭部と膨らみ部とが支持板部を挟持していることから、がたつき防止部材は、支持板部に的確に保持されることになり、第1,第2部材、介在部材の組立て作業時に、がたつき防止部材が脱落することを防止できる。このため、がたつき防止部材の脱落に基づく組立て作業性の低下を防止できる。
また、第1部材と第2部材との間に介在部材が介在される際に、その介在部材に保持されるがたつき防止部材ががたつき防止のため圧縮されることになるが、がたつき防止部材の軸部の一端部に傘状の弾性頭部が設けられて、その弾性頭部の内部が空洞とされていることから、弾性頭部の内部が空洞ではなく中実のものに比べて、介在部材に対する圧縮荷重を低くすることができる。このため、介在部材の剛性を過剰に高める必要はなくなり、介在部材の剛性の適用範囲を低い側に拡大することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、軸部が貫通孔に対して遊嵌状態とされて、軸部と貫通孔内周面との間に環状隙間が形成され、弾性頭部内の内部空間が環状隙間を介して外部に臨んでいることから、がたつき防止部材(弾性頭部)が圧縮されるに伴い(第1部材と第2部材との間に介在部材が介在される際)、傘状の弾性頭部内の空気が環状隙間を介して外部に円滑に排出されることになり、前述の請求項1の場合よりも一層、必要な圧縮荷重(がたつき防止のために必要となる圧縮荷重)を低くすることができると共に、その調整を容易にすることができる。これに伴い、介在部材として、その剛性が一層低いものをも用いることができる。
この場合、軸部が、支持板部の貫通孔を摺動して、弾性頭部を支持板部の所定位置で圧縮するように案内することになり、支持板部上で頭部の圧縮を的確に行うことができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、膨らみ部が、弾性を有していると共に、軸部の他端側から一端側に向うに従って拡径されるように設定されていることから、支持板部に対するがたつき防止部材の組付け時に、がたつき防止部材における軸部をその他端側から支持板部の貫通孔に押し込むことにより、膨らみ部が貫通孔を縮径しつつ円滑に通過することになり、膨らみ部を支持板部よりも軸部の他端側に容易に配置できる。
また、膨らみ部が、支持板部に対して最も大きな径の面をもって当接していることから、がたつき防止部材の軸部がその一端側外方に向けて移動することが確実に規制されることになる。このため、支持板部(介在部材)からのがたつき防止部材の脱落を防止して、組付け作業性が低下することを確実に防止できる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、介在部材の支持板部として、介在部材に設けられる凹部内の底部が用いられ、がたつき防止部材の弾性頭部が、凹部内より凹部開口外方に突出されていることから、がたつき防止部材の圧縮に基づく反発力を得つつ、凹部開口端面を一方の部材に対する支持面(ストッパ面)として利用できる。このため、がたつき防止部材の圧縮に基づく反発力を一方の部材に作用させつつ、その一方の部材を介在部材の凹部開口端面に当接させることができることになり、介在部材を一方の部材に対してがたつかせることなく的確に支持(保持)できる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、介在部材と第1部材又は第2部材の一方の部材との間にがたつき防止部材が圧縮された状態で介装され、介在部材の構成部と第1部材又は第2部材の他方の部材とが、少なくとも2個所において、凹凸嵌合されていることから、第1部材と第2部材との間で介在部材がスライド動及び相対回動することを、第1,第2部材及びがたつき防止部材に基づく保持力だけでなく、介在部材と他方の部材との凹凸嵌合によっても規制できる。このため、介在部材のがたつきを極めて確実に防止できる。
【0015】
請求項6に係る発明によれば、第1,第2部材の一方の部材がトルクコンバータハウジング壁であり、第1,第2部材の他方の部材が、トルクコンバータハウジング壁により閉塞される開口を有すると共に、その開口よりも内方において内部を仕切る仕切壁とを有する変速機ケースであり、介在部材が、変速機ケースの仕切壁とトルクコンバータハウジング壁との間に介在されて、両者間に配設される動力伝達要素に基づく飛散潤滑オイルの流れを調整するバッフルプレートであることから、変速機ケースにトルクコンバータハウジングが取付けられる状況の下で、バッフルプレートをがたつかせることなく的確に保持できる。
【0016】
本発明(請求項7に係る発明)によれば、当該介在部材を用いることにより、前述の請求項1に係る介在部材の保持構造を得ることができる。このため、請求項1に係る介在部材の保持構造に用いられる介在部材を提供できる。また、請求項8〜12に係る発明によれば、前記請求項2〜6に係る発明にそれぞれ対応する作用効果と同等の作用効果を得ることができる。
【0017】
本発明(請求項13に係る発明)によれば、当該がたつき防止部材を用いることにより請求項1に係る介在部材の保持構造を得ることができる。このため、請求項1に係る介在部材の保持構造に用いられるがたつき防止部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】トルクコンバータハウジング壁(第1部材)と変速機ケースの中間壁(第2部材)との間に実施形態に係る介在部材としてのバッフルプレートが介在されている状態を示す斜視図。
【図2】実施形態に係るバッフルプレートを示す斜視図。
【図3】実施形態に係るバッフルプレートの連結壁部を示す図。
【図4】実施形態に係るバッフルプレートが、図3のX4−X4線断面をもって、トルクコンバータハウジング壁と変速機ケースの中間壁との間に介在された状態を説明する図。
【図5】介在部材に取付けられた実施形態に係るがたつき防止部材を示す縦断面図。
【図6】トルクコンバータハウジング壁と変速機ケースの中間壁との間にバッフルプレートが介在される際におけるがたつき防止部材の動作状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係るバッフルプレート2が組み込まれた自動変速機1を示している。自動変速機1は、筒状の変速機ケース(第2部材)3を有しており、その一方の開口4はトルクコンバータハウジング壁(第1部材、一方の部材:図1においては、仮想線をもって示す)5により閉塞され、他方の開口(図示略)はエンドカバー(図示略)により閉塞されている。この変速機ケース3内には、仕切壁としての中間壁6が設けられており、その中間壁6とトルクコンバータハウジング壁5との空間7には、トルクコンバータからの動力が入力される入力軸8と、その入力軸8に入力された動力を、中間壁6とエンドカバーとの間に配置される変速機構(図示略)に伝達するクラッチドラム9と、変速機構からの動力を中間軸10を介して受け取るアウトプットギヤ11と、そのアウトプットギヤ11に噛合されて該アウトプットギヤ11からの動力を受け取るリングギヤ12と、そのリングギヤ12に入力された動力を差動機構13を介して受け取る出力軸14と、が配設されている。
【0020】
この場合、リングギヤ12とクラッチドラム9とは、クラッチドラム9の方を若干、高くしつつ並設されており、アウトプットギヤ11は、リングギヤ12とクラッチドラム9との間において、その両者2,9よりも高い位置に配置されている。このリングギヤ12の径方向外方側においては、変速機ケース3(周壁)が、そのリングギヤ12に沿うように湾曲形状をもって形成され、その変速機ケース3の下部部分は、潤滑オイルを溜めるオイル溜め部15を構成している。これにより、オイル溜め部15に溜まった潤滑オイルは、リングギヤ12により掻き上げられてクラッチドラム9側に供給される(図1中、矢印参照)。
尚、図1中、符号17は、変速機ケース3の下部に、入力軸8及び隔壁部16の下方側において取付けられるオイルパンであり、このオイルパン17内に導かれた潤滑オイルは、ポンプ(図示略)により出力軸14に供給され、そこでの潤滑の役割を果たすと、オイル溜め部15に貯留されることになる。また、クラッチドラム9の下側には、変速機ケース3内において、該クラッチドラム9の外周に沿うようにして湾曲形状をもたせた隔壁部16が形成されており、この隔壁部16に導かれた潤滑オイルに関しては、溜まることなくオイルパン17内に排出されることになる。
【0021】
前記トルクコンバータハウジング壁5と前記変速機ケース3の中間壁6との間の空間7には、図1に示すように、介在部材としてのバッフルプレート2が配置されている。バッフルプレート2は、リングギヤ12により掻き上げられたオイル溜め部15の潤滑オイルが過剰にクラッチドラム9側に飛散されることを抑制することで、抵抗増加を抑制するものである。このため、バッフルプレート2は、第1規制壁部18と、第2規制壁部19と、連結壁部20と、支柱部21,22と、支持部23と、を一体的に備えている。
【0022】
前記第1規制壁部18は、図1に示すように、アウトプットギヤ11の上部外周側に配置されている。この第1規制壁部18は、中間壁6に向けて垂下しつつ、一端側であるリングギヤ12側から他端側であるクラッチドラム9側に延びており、この第1規制壁部18は、リングギヤ12により掻き上げられた潤滑オイルの斜め上方側への飛散移動を抑制する。
【0023】
前記第2規制壁部19は、図1に示すように、前記第1規制壁部18に連続している。この第2規制壁部19は、クラッチドラム9とリングギヤ12との間において中間壁6に向けて垂下しつつクラッチドラム9の外周に沿うように延びており、その第2規制壁部19は、その延び端側(下方側)に向うに従って第1規制壁部18から離間し、その延び端は、前記オイル溜め部15に上方側から臨むことになっている。これにより、第2規制壁部19が、潤滑オイルのクラッチドラム9側への飛散移動(図2の矢印参照)を抑制し、それを潤滑オイルとしてオイル溜め部15に案内する。
【0024】
前記連結壁部20は、前記トルクコンバータハウジング壁5に直接、対向するようにしつつ、該トルクコンバータハウジング壁5に平行に配置されている。この連結壁部20は、トルクコンバータハウジング壁5に近い側における前記第1,第2規制壁部18,19の端面を連結しており、第1,第2規制壁部18,19及び連結壁部20は内部空間を区画し、その内部空間は、第2規制壁部19の延び端と第1規制壁部18との間の開口24を介して開放されている。このため、リングギヤ12の一部が、開口24を介して内部空間に入り込んでいる。また、この連結壁部20には、中心部に大きな開口25が形成されており、その開口25領域内に中間軸10及びアウトプットギヤ11が臨んでいる。
【0025】
前記支柱部21は、図1〜図4に示すように、第1規制壁部18の一端側において、連結壁部20と中間壁6との間を跨ぐように延びている。本実施形態においては、この支柱部21は、第1規制壁部18を外部に膨出させることにより形成されており、その支柱部21の延び方向端面のうち、中間壁6に近い端面には、図4に示すように、嵌合凸部26が形成され、その嵌合凸部26は、予め中間壁6に形成される嵌合凹所27内に嵌合されている。
【0026】
前記支柱部22は、図1〜図4に示すように、第1規制壁部18の他端側において、連結壁部20と中間壁6との間を横切るように延びている。この支柱部22は、本実施形態においては、基本的に円筒形状を軸心延び方向に半割にした状態に形成され、その半割状態を形成するために、第1規制壁部18自体を内方に膨出させている。この支柱部22の延び方向両側には円筒部28,29がそれぞれ設けられており、その各円筒部28(29)には、その内部を閉塞する仕切壁30a(31a)が設けられて、その仕切壁30a(31a)を底部(以下、符号30a(31a)を用いる)とした凹部30(31)が形成されている。この凹部30(31)のうち、中間壁6に近い凹部30には、その中間壁6に予め取付けられたボルトの頭部32が嵌合されている。これにより、前述の支柱部21の嵌合凸部26と中間壁6の嵌合凹所27との凹凸嵌合と相まって(2個所で凹凸嵌合)、バッフルプレート2は、スライドも、相対回動も規制されている。
【0027】
一方、支柱部22における他方の凹部31に関しては、図1,図6に示すように、その底部31aがトルクコンバータハウジング壁5に対向して略平行に設けられており、その底部31aの径方向中央部には貫通孔33が形成されている。
【0028】
前記支持部23は、図1〜図4に示すように、連結壁部20を前記第2規制壁部19の延び端外方に延長することにより形成されている。この支持部23は、前記支柱部21,22(の嵌合凸部26、凹部30)が中間壁6(の嵌合凹所27,ボルト頭部32)に凹凸嵌合されたとき、中間壁6から起立する起立壁部34上に当接されることになり、連結壁部20は、この支持部23、支柱部21,22を介して中間壁6に支持される。このとき、第1規制壁部18及び第2規制壁部19は、中間壁6から多少離間して、その第1規制壁部18と中間壁6との間、第2規制壁部19と中間壁6との間に帯状の開口35がそれぞれ形成されることになっている。これにより、リングギヤ12により掻き上げられた潤滑オイルは、第1,第2規制壁により飛散移動が規制されるものの、その各開口35により、バッフルプレート2外方(クラッチドラム9側)に幾分、飛散移動される。
また、この支持部23上にも円筒部36が一体的に設けられている。この円筒部36は、その端面が、前記支柱部22に設けられる円筒部31の端面と同一水準平面を形成するように設定され,その下部部分は半割状態にされている。この円筒部36にも、その内部を閉塞する仕切壁37aが一体的に設けられており、これにより、その仕切壁37aを底部(以下、符号37aを用いる)とした凹部37が形成されている。この凹部37の底部37aも、トルクコンバータハウジング壁5に対向して略平行に設けられており、その底部37aの径方向中央部には貫通孔38が形成されている。
【0029】
前記支柱部21,22及び支持部23の各凹部30,31内には、図1〜図6に示すように、ゴム製のがたつき防止部材39がそれぞれ保持されている。各がたつき防止部材39は、軸部40と、その軸部40の一端部に一体的に取付けられる傘状の頭部41と、軸部40にその一端部よりも他端側おいて一体的に設けられる膨らみ部42と、を一体的に備えている。このがたつき防止部材39の構成については、凹部31におけるものを例にとり、図5,図6に基づき説明する。
【0030】
前記軸部40は、凹部31における底部31aの径方向中央部の貫通孔33を貫通した状態で延びている。この軸部40は、貫通孔33に対して若干、遊嵌状態にあり、貫通孔33の内周面と軸部40との間には環状隙間43が形成されている。これにより、軸部40は、貫通孔33に案内されつつ、その貫通孔33に対して摺動ないしは移動可能となっている。この軸部40は、その一端側が凹部31の底部31aよりも一方の部材としてのトルクコンバータハウジング壁5側に位置され、その他端側は、凹部31の底部31aよりも変速機ケース3側位置されている。このうち、軸部40の一端側は、その一端部が凹部31の開口端よりも外方に位置するように突出されている(図6参照)。
【0031】
前記傘状の頭部41は、凹部31内にその凹部31開口から外部に突出した状態で配置されている。この傘状の頭部41は、軸部40の一端部から他端側に向うに従って拡径されるように拡がっており、その頭部41の開口端面は凹部31の底部31aに当接されている。このため、頭部41は、軸部40の一端側を内部に覆い隠すことになり、これに伴い、頭部41内には、軸部40を中心として環状空間が形成されることになる。本実施形態においては、頭部41の内外面が滑らかな湾曲面をもって形成されている。また、頭部41の開口端面の当接位置は、凹部31の内周部よりも一定距離だけ、径方向内方側に位置され、頭部41と凹部31の内周部との間には、頭部41を中心とした環状空間が形成されている。
【0032】
前記膨らみ部42は、前記軸部40のうち、前記凹部31の底部31aよりも該軸部40の他端側において形成されている。この膨らみ部42は、前記貫通孔33の径よりも拡径された大きさとされており、この膨らみ部42と貫通孔33周縁部(凹部31の底部31a)とは当接されている。このため、膨らみ部42は、軸部40がその一端側外方(図4,図5中、上方向)に向けて移動(摺動)することを規制(抜け止め)すると共に、前記頭部41と協働して凹部31の底部31aを挟持することにより、がたつき防止部材39を凹部31の底部31aにがたつきなく保持する。
本実施形態においては、膨らみ部42は、軸部40の他端側から一端側に向うに従って拡径された形状とされている。これは、凹部31に対するがたつき防止部材39の組付け時に、がたつき防止部材39における軸部40をその他端側から凹部31における底部31aの貫通孔33に押し込むことにより、その膨らみ部42を縮径させつつその貫通孔33を円滑に通過させ、膨らみ部42が凹部31の底部31aよりも軸部40の他端側に容易に配置できるようにするためであり、また、膨らみ部42に基づく軸部40の一端側外方への抜け止めを、最も大きな径を有する膨らみ部42の開口端面と凹部31の底部31aとの当接関係により、より確実にするためである。これにより、凹部31(介在部材)からのがたつき防止部材39の脱落が防止され、組付け作業性が低下することが確実に防止される。
【0033】
このようながたつき防止部材39は、その頭部41に対して外部から外力Fが作用したときには、その形状及びその材質としてのゴムの性質に基づき、頭部41が凹部31の底部31aに向けて押し潰されるように変形し、その変形に伴い、がたつき防止部材39における軸部40の一端側外方に向けて反発力が生じる。この場合、頭部41内の空気は、押し潰し変形に伴い、貫通孔33内周面と軸部40との間の環状隙間43から外部に排出され、軸部40は、貫通孔33内周面に案内されつつその軸部40の他端側外方に向けて移動する(図6参照)。このため、がたつき防止部材39は、頭部41の押し潰し変形に基づき反発力が生じるものの、その押し潰し変形に要する外力は、頭部41内の空気の排出に基づき比較的小さなものになっている。また、頭部41の押し潰し変形に伴いその内部の空気が環状隙間43から外部に排出されることから、その際、頭部41の開口端が拡径する方向に変形することが抑制され、頭部41の損傷(拡径による破断)を防ぎつつ、頭部41の押し潰し変形を確保できることになる。
【0034】
このようながたつき防止部材39は、図1,図6に示すように、バッフルプレート2がトルクコンバータハウジング壁5と中間壁6との間に介在されるに伴い、凹部31,37において、トルクコンバータハウジング壁5とバッフルプレート2との間に介装される。この際、がたつき防止部材39は、トルクコンバータハウジング壁5とバッフルプレート2とにより挟持されて圧縮される。これにより、がたつき防止部材39の圧縮に伴い反発力が生じることになり、その反発力により、バッフルプレート2は、トルクコンバータハウジング壁5と中間壁6との間でがたつくことが防止される。
【0035】
このとき、頭部41がゴム製とされているばかりか、その頭部41の内部が空洞とされていることから、頭部41の内部が空洞ではなく中実のもの(例えばゴムブッシュ)に比べて、バッフルプレート2に対する圧縮荷重を低くすることができる。しかも本実施形態においては、頭部41が押し潰される際、その内部の空気が環状隙間43を介して外部に排出されることから、一層、バッフルプレート2に対する圧縮荷重を低くすることができる。このため、バッフルプレート2の剛性を過剰に高める必要はなくなり、バッフルプレート2の剛性の適用範囲を低い側に拡大することができる。
【0036】
しかもこのとき、バッフルプレート2における凹部30、嵌合凸部26が中間壁6のボルト頭部32、嵌合凹所27にそれぞれ嵌合されて、バッフルプレート2が、中間壁6に対して、スライドも、相対回動も規制されることになる。このため、バッフルプレート2は、前述のがたつき防止部材39の機能と相まって、トルクコンバータハウジング壁5と中間壁6との間にがたつくことなく確実に保持される。
【0037】
また、がたつき防止部材39の頭部41と膨らみ部42とが、バッフルプレート2における凹部31の底部31aを挟持していることから、がたつき防止部材39は、凹部31の底部31aに的確に保持されることになる。このため、トルクコンバータハウジング壁5、バッフルプレート2、変速機ケース3の組立て作業時に、がたつき防止部材39が脱落することを防止でき、がたつき防止部材39の脱落に基づく組立て作業性の低下を防止できる。
【0038】
この場合、バッフルプレート2における各凹部31(37)の底部31a(37a)にがたつき防止部材39を取付けるに際しては、がたつき防止部材39全体がゴムにより形成されていることに加えて、膨らみ部42が、軸部40の他端側から一端側に向うに従って拡径されるように設定されていることに基づき、がたつき防止部材39における軸部40をその他端側から凹部31(37)における底部31a(37a)の貫通孔33(38)に押し込めばよい。これにより、膨らみ部42が貫通孔33(38)を縮径しつつ円滑に通過することになり、膨らみ部42は、凹部31(37)の底部31a(37a)よりも軸部40の他端側に容易に配置されることになる。しかもこのとき、膨らみ部42が、凹部31(37)の底部31a(37a)に対して最も大きな径の面をもって当接しており、がたつき防止部材39がその軸部40の一端側外方に向けて移動することが規制(抜け止め)されて、凹部31(37)の底部31a(37a)からがたつき防止部材39が脱落することを確実に防止することができる。
【0039】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次の態様を包含する。
(1)第1,第2部材、介在部材は、トルクコンバータハウジング壁5、変速機ケース3(中間壁6)、バッフルプレート2に限らず、種々のものに適用すること。
(2)がたつき防止部材39が、撓み性等を確保することを条件として樹脂成形品であってもよいこと。
(3)中間壁6に嵌合凹所27を形成せず、その部分を平坦な面にし、その平坦な面に支柱21の端部(嵌合凸部26)を当接させる一方、バッフルプレート2の第1又は第2規制壁部18,19等を変速ケース3(要素を含む)に当接させて、支柱部22を中心としたバッフルプレート2の相対回動を規制すること。これにより、中間壁6に、特別に嵌合凹所27を形成する必要はなくなる。
【0040】
尚、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましい或いは利点として記載されたものに対応したものを提供することをも含むものである。
【符号の説明】
【0041】
2 バッフルプレート(介在部材)
3 変速機ケース(第2部材)
5 トルクコンバータハウジング壁(第1部材、一方の部材)
6 中間壁(第2部材、仕切壁)
9 クラッチドラム
12 リングギヤ
26 嵌合凸部
27 嵌合凹所
31,37 凹部
31a,37a 底部(支持板部)
32 ボルト頭部
33,38 貫通孔
39 がたつき防止部材
40 軸部
41 頭部(弾性頭部)
42 膨らみ部
43 環状隙間



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材との間に介在部材が介在され、該介在部材と前記第1部材又は第2部材の少なくとも一方の部材との間に、該介在部材のがたつきを防止するがたつき防止部材が圧縮された状態で介装されている介在部材の保持構造において、
前記介在部材に、前記一方の部材に対向するようにして支持板部が備えられ、
前記支持板部に貫通孔が、その軸心延び方向を前記第1,第2部材の並設方向に向くようにして形成され、
前記がたつき防止部材が、
前記支持板部の貫通孔を摺動可能に貫通し、その一端部が前記支持板部よりも前記一方の部材側に位置されると共にその他端部が前記支持板部よりも前記一方の部材から遠い側に位置される軸部と、
前記軸部の一端部に一体的に設けられ該一端部から該支持板部に近づくに従って拡径される傘状の弾性頭部と、
前記軸部のうち、前記支持板部よりも該軸部の他端側に、前記貫通孔の径よりも拡径された状態で形成されて、前記弾性頭部と協働して前記支持板部を挟持する膨らみ部と、を一体的に備えている、
ことを特徴とする介在部材の保持構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記軸部が前記貫通孔に対して遊嵌状態とされて、該軸部と該貫通孔の内周面との間に環状隙間が形成され、
前記弾性頭部内の内部空間が、前記環状隙間を介して外部に臨んでいる、
ことを特徴とする介在部材の保持構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記膨らみ部が、弾性を有していると共に、前記軸部の他端側から一端側に向うに従って拡径されるように設定されている、
ことを特徴とする介在部材の保持構造。
【請求項4】
請求項1において、
前記介在部材の支持板部として、該介在部材に設けられる凹部内の底部が用いられ、
前記がたつき防止部材の弾性頭部が、前記凹部内より該凹部開口外方に突出されている、
ことを特徴とする介在部材の保持構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記介在部材と前記第1部材又は第2部材の一方の部材との間に前記がたつき防止部材が圧縮された状態で介装され、
前記介在部材の構成部と前記第1部材又は第2部材の他方の部材とが、少なくとも2個所において、凹凸嵌合されている、
ことを特徴とする介在部材の保持構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
前記第1,第2部材の一方の部材がトルクコンバータハウジング壁であり、
前記第1,第2部材の他方の部材が、前記トルクコンバータハウジング壁により閉塞される開口を有すると共に、その開口よりも内方において内部を仕切る仕切壁とを有する変速機ケースであり、
前記介在部材が、前記変速機ケースの仕切壁と前記トルクコンバータハウジング壁との間に介在されて、該両者間に配設される動力伝達要素に基づく飛散潤滑オイルの流れを調整するバッフルプレートである、
ことを特徴とする介在部材の保持構造。
【請求項7】
第1部材と第2部材との間に介在されている介在部材であって、
前記第1部材又は第2部材の少なくとも一方の部材に対向するようにして支持板部が備えられ、
前記支持板部に貫通孔が、その軸心方向を前記第1,第2部材の並設方向に向けるようにして形成され、
前記支持板部にがたつき防止部材が保持され、
前記がたつき防止部材が、
前記支持板部の貫通孔を摺動可能に貫通してその一端部が前記支持板部よりも前記一方の部材側に位置されると共にその他端部が前記支持板部よりも前記一方の部材から遠い側に位置される軸部と、
前記軸部の一端部に一体的に設けられ該一端部から該支持板部に近づくに従って拡径される傘状の弾性頭部と、
前記軸部のうち、前記支持板部よりも該軸部の他端側に、前記貫通孔の径よりも拡径された状態で形成され、前記弾性頭部と協働して前記支持板部を挟持する膨らみ部と、を一体的に備えている、
ことを特徴とする介在部材。
【請求項8】
請求項7において、
前記軸部が前記貫通孔に対して遊嵌状態とされて、該軸部と該貫通孔の内周面との間に環状隙間が形成され、
前記弾性頭部内の内部空間が、前記環状隙間を介して外部に臨んでいる、
ことを特徴とする介在部材。
【請求項9】
請求項7において、
前記膨らみ部が、弾性を有していると共に、前記軸部の他端側から一端側に向うに従って拡径されるように設定されている、
ことを特徴とする介在部材。
【請求項10】
請求項7において、
前記一方の部材に対向するようにして、凹部が設けられ、
前記凹部内の底部が前記支持板部とされ、
前記がたつき防止部材の弾性頭部が、前記凹部内より該凹部開口外方に突出されている、
ことを特徴とする介在部材。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか1項において、
前記第1部材又は第2部材の他方の部材に対向するようにして、該他方の部材と協働して凹凸嵌合するための凹部又は凸部の一方が設けられている、
ことを特徴とする介在部材。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか1項において、
前記第1,第2部材の一方の部材がトルクコンバータハウジング壁であり、
前記第1,第2部材の他方の部材が、前記トルクコンバータハウジング壁により閉塞される開口を有すると共に、その開口よりも内方において内部を仕切る仕切壁とを有する変速機ケースであり、
前記変速機ケースの仕切壁と前記トルクコンバータハウジング壁との間に介在されて、該両者間に配設される動力伝達要素に基づく飛散潤滑オイルの流れを調整するバッフルプレートとして用いられる、
ことを特徴とする介在部材。
【請求項13】
第1部材と第2部材との間に介在部材が介在される状態の下で、該介在部材と前記第1部材又は第2部材の少なくとも一方の部材との間に介装されて、該介在部材のがたつきを防止するがたつき防止部材であって、
前記介在部材として、前記一方の部材に対向するようにして支持板部が備えられていると共に、該支持板部に貫通孔がその軸心方向を前記第1,第2部材の並設方向に向けるようにして形成されているものに対して用いられるものであり、
前記支持板部の貫通孔を摺動可能に貫通してその一端部が前記支持板部よりも前記一方の部材側に位置されると共にその他端部が前記支持板部よりも前記一方の部材から遠い側に位置される軸部と、
前記軸部の一端部に一体的に設けられ該一端部から該支持板部に近づくに従って拡径される傘状の弾性頭部と、
前記軸部のうち、前記支持板部よりも該軸部の他端側に、前記貫通孔の径よりも拡径された状態で形成され、前記弾性頭部と協働して前記支持板部を挟持する膨らみ部と、を一体的に備えている、
ことを特徴とするがたつき防止部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−180897(P2012−180897A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44181(P2011−44181)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】