説明

伏臥状態座位補助具

【課題】
従来の座位補助具では座位の姿勢を取らせるにしても、意識のない場合等の重症患者の場合には体各部を自分の意思で動かすことが難しいので、当然に頭部を自らが支えることもできない場合があり、座位を取らせることは困難であるという問題があった。
【解決手段】
伏臥状態座位補助具1は、所定の高さを有する骨組部10と、骨組部10の上部に設けられた上半身前面側載置部20と、骨組部10に固定され上半身前面側載置部20の側方に張り出す胴部固定部30と、骨組部10の下部に設けられ骨組部10に収納可能なキャスター部40よりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意識障害があり、頭部の保持が難しい重症患者に座位の姿勢をとらせる伏臥状態座位補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人は、大怪我、重病、高齢等の原因で、仰臥位を長期間続けなければならない状態になること、所謂寝たきりになってしまった場合、骨が弱くなることや、筋力が低下する等の問題が生じることが知られていた。そして、この筋力、特に腹筋が弱くなった場合には、自力での排便がし難くなること、また、肺の動きが弱くなると、肺炎を引き起こす場合があることが知られていた。
【0003】
そこで、大怪我、重病、高齢等の原因で安静にする必要がある患者となった場合でも、ある程度回復して医師が可能と判断した時点で、患者が寝たきりの状態にならないようにするため、患者自らが座位の姿勢を取れれば取り、患者自ら座位の姿勢を取り得ない場合でも、介助者や補助具等の力を借りて座位の姿勢を取ることが推奨されてきた。
【0004】
そして、自ら座位を取る意志はあるが、筋力の低下等により座位の姿勢をとりづらく、支えがあれば座位の姿勢が取れるという人のために、特許文献1に示す「端座位補助座椅子」が開示されていた。
【0005】
また、重症患者を治療する集中治療室(ICU)で用いられる呼吸理学療法の分野においては、人工呼吸器を装着した重症患者が長期間仰臥位の状態で寝たきりになった場合に、重症患者の肺の下側(背側)に、重力により痰等の気道分泌液が貯留して無気肺が生じ、この無気肺で動脈血に酸素化されてない血液が流れ込む状態(シャント効果)が発生することで酸素化能が低下する症状、所謂、下側(背側)肺障害が起こる場合があった。この下側肺障害を防止する方法として、腹臥位等を取らせることにより貯留している気道分泌液を体外に排出させる、所謂、体位ドレナージ(体位排痰法)の考え方があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−56909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の座位補助具では、座位の姿勢を取らせるにしても、意識のない等の重症患者の場合には、体各部を自分の意思で動かすことが難しいので、当然のことながら頭部を自らが支えることもできない場合があり、従来の座位補助具では、座位を取らせることは困難であるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
第1発明の伏臥状態座位補助具は、所定の高さを有する骨組部と、前記骨組部の上部に設けられた上半身前面側載置部と、前記骨組部に固定され前記上半身前面側載置部の側方に張り出す胴部固定部と、前記骨組部の下部に設けられ前記骨組部に収納可能なキャスター部よりなる。
第2発明の伏臥状態座位補助具は、請求項1記載の発明において、前記上半身前面側載置部には、口および鼻の周囲に通気間隔を有した弾力性のある顔面載置部が設けられている。
第3発明の伏臥状態座位補助具は、請求項1または請求項2記載の発明において、前記上半身前面側載置部と前記胴部固定部が寝台の上部の寝るために供される面の一部を覆う状態で張り出すことが可能な骨組部を備えている。
【発明の効果】
【0009】
以上のような技術的手段を有することにより、以下の効果を有する。
第1発明によれば、所定の高さを有する骨組部と、前記骨組部の上部に設けられた上半身前面側載置部と、前記骨組部に固定され前記上半身前面側載置部の側方に張り出す胴部固定部を有することで、意識のない重症患者等で体の各部を自由に動かすことができず、頭部を自らが支えることもできない場合においても、座位の姿勢を取らせることが可能になる。なお、伏臥位からの方が、意識障害の改善に効果があると考えられる。これは、頸部や背筋という人体の構造上、仰臥の姿勢よりも伏臥の姿勢から頭部を起こす動作を取りやすいことによる。このことは、首の座ってない乳児が首を持ち上げる動作を始めるのは、仰臥の姿勢からではなく、伏臥の姿勢から始める事実を考えてみれば明白である。
さらには前記骨組部の下部に設けられ前記骨組部に収納可能なキャスター部を有することで、伏臥状態座位補助具の床面への安定した設置が可能であり、移動が必要な際には楽に移動できる効果を有する。
第2発明によれば、第1発明を利用し、上半身前面側載置部には、口および鼻の周囲に通気間隔を有した弾力性のある顔面載置部が設けられていることにより、意識がないなどにより体各部を自由に動かせず、頭部を自らが支えることもできない重症患者であっても、安全かつ楽な状態で座位の姿勢を取らせることができる。
第3発明によれば、第1発明または第2発明を利用し、前記上半身前面側載置部と前記胴部固定部が寝台の上部の寝るために供される面の一部を覆う状態で張り出すことが可能な骨組部を備えていることで、介助者が寝台に仰臥している重症患者を寝台の端に座らせて容易に座位の姿勢を取らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る第一の実施形態を説明するための、伏臥状態座位補助具の外観図である。
【図2】第一の実施形態の伏臥状態座位補助具の分解図である。
【図3】第一の実施形態の伏臥状態座位補助具のキャスター部の動作説明図である。
【図4】第一の実施形態の伏臥状態座位補助具の側方からの使用状態説明図である。
【図5】第一の実施形態の伏臥状態座位補助具の上方からの使用状態説明図である。
【図6】本発明に係る第二の実施形態の伏臥状態座位補助具の説明図である。
【図7】本発明に係る第三の実施形態の伏臥状態座位補助具の説明図である。
【図8】本発明に係る第四の実施形態の伏臥状態座位補助具の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明を実施する形態について、図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0012】
(全体)
本発明の伏臥状態座位補助具1の外観について図1を用いて説明する。伏臥状態座位補助具1は、所定の高さを有する骨組部10と、骨組部10の上部に設けられた上半身前面側載置部20と、骨組部10に固定され上半身前面側載置部20の側方に張り出す胴部固定部30と、骨組部10の下部に設けられ骨組部10に収納可能なキャスター部40と、上半身前面側載置部10の上方に設けられた顔面載置部50とで大凡構成されている。
【0013】
図2は伏臥状態座位補助具1を分解した状態で説明する図であり、図2に基づいて骨組部10、上半身前面側載置部20、胴部固定部30、キャスター部40および顔面載置部50の各々に分けて説明する。
【0014】
(骨組部)
骨組部10は、金属製の丸パイプを上面側に上側部材11a、11b、11c、11dとして配設し、側面側に側方部材12a、12b、12c、12dとして配設し、下面側に下側部材13a、13b、13c、13dとして配設して形成されている。上側部材11aと側方部材12a、上側部材11bと側方部材12bは曲げ加工により「く」の字形状に曲げられており、上側部材11aと上側部材11bの間に上側部材11c、11dを橋渡しするように溶接して骨組部10の上面が形成されている。下側部材13a、13b、13cは曲げ加工により「コ」の字形状に曲げられており、下側部材13aと下側部材13cの間を橋渡しするように下側部材13dを溶接して骨組部10の下面が形成されている。曲げ加工された下側部材13a、13b、13cの曲げ部近傍に側方部材12aと側方部材12bの曲げ加工のされてない側の端部を溶接し、上側部材11aと下側部材13aとの間を側方部材12cで橋渡しをするように溶接し、上側部材11bと下側部材13cとの間を側方部材12dで橋渡しをするように溶接することで骨組部10の側面が形成されている。
【0015】
なお、曲げ加工や溶接で形成された骨組部10の上面及び下面については、上半身前面側載置部20およびキャスター部40との関係で平面が保てるように形成されている。これにより上半身前面側載置部20を床面より約1メートル程度の高さに固定できるようにしている。伏臥状態座位補助具1の胴部固定部30が寝台の上部の寝るために供される面の一部を覆う状態で張り出すことが可能なように、側方部材12c、12dの溶接位置は側方部材12a、12bとの間隔を狭めて骨組部10を側方から見ると「コ」の字形状に近い形に形成されている。上側部材11a、11b、11c、11d、側方部材12a、12b、12c、12d及び下側部材13a、13b、13c、13dを形成する金属製の丸パイプは上半身前面側載置部10に加わる人の荷重を支えられるパイプ径、肉厚を選定しており、構造上、筋違等の補強材を適宜各所に追加することによっても丸パイプのパイプ径やパイプ肉厚を変えたものも可能である。また、構造材は金属製の丸パイプ以外でも木材、樹脂等のパイプや板材やこれら組み合わせて形成することもできる。
【0016】
(上半身前面側載置部)
上半身前面側載置部20は人間の上半身の前側を支える平板21である。ほぼ四角形の形状であるが、人間の上半身が寄りかかる側には寄りかかり易い様にやや丸みを持った凹部22が設けてあり、四角形の角は安全のために丸みを持たせたものとしている。上半身前面側載置部20の広さは、人間の胸部より上の上半身及び両手を載せることができれば良く、好ましくは、幅50センチメートル、奥行き50センチメートル程度の広さがあれば良い。厚みについては、その材質による強度や骨組部10の上側部材11a、11b、11c、11dで形成される支える側の広さとの関係により上半身の荷重に耐えられるだけの厚みを持たせている。
【0017】
実施例においては、平板21には樹脂の透明板を用いたものとしている。透明板としているのは、下側から上半身前面側載置部20に載った重症患者等の顔を観察し易くするためである。なお、観察等を考慮しなければ、金属や木材としても良い。また、平板21を樹脂性とした場合に一般的に原材料の調達上では、上面側は平坦なものとなるが、上半身前面側載置部20としての機能を考えれば、上面側で紙に字を書く等の作等を想定してないので、多少の凸凹やすべり止め加工等を施したものを使用することもできる。
【0018】
(胴部固定部)
胴部固定部30は、固定金具31a、31bと、側板32a、32bと、背側ベルト33と、前側ベルト34とより成る。固定金具31a、31bは、骨組部10の上側部材11dの人間の上半身が寄りかかる側に40〜50センチメートルの間隔を開けて溶接されている。側板32a、32bは、一組の固定金具31a、31bのそれぞれに軸支され、やや内側に湾曲し周囲をスポンジ状の緩衝剤を巻きつけられている。背側ベルト33は、幅5〜10センチメートル程度の厚みのある布や皮等で、側板32a、32bのそれぞれの自由端側に設けられたベルト通し孔に、輪状に通されている。前側ベルト34は幅5〜10センチメートル程度の厚みのある布や皮等で、固定金具31a、31bの上側部材111dとの溶接個所の近傍に設けられたベルト通し孔に、輪状に通されている。背側ベルト33と前側ベルト34のそれぞれの自由端には面ファスナー35、36が貼り付けてあり、背側ベルト33と前側ベルト34のそれぞれの輪状の長さが調節できるようになっている。
【0019】
胴部固定部30は人の胴部を上半身前面側載置部20の側面から離れないように固定するものであり、人の胴部の周囲の長さは体格により様々であるので、ある程度自由に調整が可能なように面ファスナー25、26により長さ調整が可能な様にし、面ファスナー35は胴部固定部30を人の胴に取り付けまたは取り外す際に用いられる。面ファスナー35、36の具体的な脱着が可能となる構造については、一方の背側ベルト33の自由端付近に面ファスナー35のループ側を取り付け、他方の背側ベル33の自由端付近に面ファスナー35のフック(鉤)側をとりつけるものである。前側ベルト34と面ファスナー36についても同様なものとなる。
【0020】
なお、面ファスナー35、36以外の方法としては、例えば、バックル(ピンバックル、ダブルピンバックル、布ベルト用バックル、リング・リボンベルト用バックル等)のベルトの留め金により、ベルト固定部に固定されて無い側の自由端を取り付けてベルトの長さ調節を自在にする方法も可能である。また、背側ベルト33と前側ベルト34のそれぞれを輪状にするのではなく、それぞれの一端を側板32a、32bまたは固定金具31a、31bに固定し、背側ベルト33と前側ベルト34が二重になるのではなく、一重とする方法でも良い。
【0021】
(キャスター部)
キャスター部40は、車輪式、コロ式やボール方式等の移動手段の上部を金属製の金具で固定されたキャスター41a、41b、41c、41dと、金属製の丸棒であるキャスター固定軸42a、42bと、軸受金具43a、43b、43c、43dと、金属板よりなるスライド枠44と、取っ手の付いた金属板よりなる取手付きスライド板45と、両端に孔を有する金属板よりなる上側リンク46a、46bと、ボルトとナットよりなるジョイント47a、47bと、両端に孔を有する金属板よりなる下側リンク48a、48bとで構成されている。なお、図2において、上側リンク46b、ジョイント47b、下側リンク48bは符号を付してないが、上側リンク46a、ジョイント47a、下側リンク48a線対象の位置の部分となる。
【0022】
キャスター部40の各部の関係およびキャスター41a、41b、41c、41dが骨組部10の内側に収納可能な動作について図3を用いて説明する。図3の(a)はキャスター41a、41b、41c、41dが骨組部10の下側部材13a、13b、13c、13dで形成される下面より下側に出た状態を示している。図3の(b)はキャスター41a、41b、41c、41dがキャスター固定軸42a、42bを回転軸として、互いに内側方向に回転し骨組部10の下側部材13a、13b、13c、13dで形成される下面より上側に上がった状態を示している。なお、図3の(a)と(b)においては、下側部材13bでキャスター41b、41cは一部しか見えないため、キャスター41c側の下側部材13bの左半分を破線にしてキャスター41cが見えるようにして表している。
【0023】
図3において、キャスター41bとキャスター固定軸42a、キャスター41cとキャスター固定軸42bは溶接により固定されている。なお、図示されてないが、奥方向においてキャスター41aとキャスター固定軸42a、キャスター41dとキャスター固定軸42bも溶接されている。軸受金具43bは側方部材12aに、軸受金具43cは側方部材12bに溶接されている。なお、図示されてないが軸受金具43aは側方部材12cに、軸受金具43dは側方部材12dにも溶接されている。キャスター固定軸42aは軸受金具43a、43bにより回動自在に軸支され、キャスター固定軸42bは軸受金具43c、43dに回動自在に軸支されている。下側リンク48aの下端とキャスター固定軸42aは溶接されており、下側リンク48aの上端と上側リンク46aの下端はボルトとナットより成るジョイント47aにより回動自在に取り付けられている。上側リンク46aの上端は取手付きスライド板45の下側付近でボルトとナットにより回動自在に取り付けられている。同様に下側リンク48bの下端とキャスター固定軸42bは溶接されており、下側リンク48bの上端と上側リンク46bの下端はボルトとナットより成るジョイント47bにより回動自在に取り付けられている。上側リンク46bの上端は、上側リンク46aの上端と共に取手付きスライド板45の下側付近でボルトとナットにより回動自在に取り付けられている。
【0024】
スライド枠44は略「T」の字形状であり、上側の横方向の板が上方から見ると「コ」の字に曲げられており、曲げられた両端部が、側方部材12aと側方部材12bにそれぞれ溶接して固定されている。スライド枠44の縦方向の板は中央部に縦方向の長孔が開けられており、長穴の最上部は右方向に短かく曲がる長孔と繋がっている。取手付きスライド板45は伏臥状態座位補助具1の外側に取っ手を備えており、スライド枠44に接する面側の取手付きスライド板45の両端近傍付近には2本の先端に雄ネジを有するピンが取り付けられており、ピンは伏臥状態座位補助具1の内側に向かって突き出している。取手付きスライド板45に取り付けられた2本のピンの先端にはナットが止められており、取手付きスライド板45はスライド枠44から脱落することなく、取手付きスライド板45に取り付けられたピンがスライド枠44に開けられた逆「L」字状の長孔に規制されること逆「L」字状の長孔に沿って摺動する。
【0025】
図3の(a)において、取手付きスライド板45に取り付けられた上側のピンはスライド枠44の逆「L」字状の長孔の横孔に引っかかった状態となることで、上側リンク46a、46b下側リンク48a、48bが上方に引き上げられ、下側リンク48a、48bは伏臥状態座位補助具1の内側に倒れこむように回転する。下側リンク48a、48bに溶接されているキャスター固定軸42a、42bも下側方向に回転して、キャスター固定軸42a、42bに溶接されているキャスター41a、41b、41c、41dも下側方向に回転して骨組部10の下側部材13a、13b、13c、13dで形成される下面より下側に出た状態となる。この状態の伏臥状態座位補助具1はキャスター41a、41b、41c、41dにより簡単に移動が可能となる。
【0026】
図3の(b)において、取手付きスライド板45に取り付けられた上側のピンはスライド枠44の逆「L」字状の長孔の横孔から外れると取手付きスライド板45は下側方向に動くことができ、取手付きスライド板45に回動自在に取り付けられた上側リンク46a、46bが下側に動くことで、下側リンク48a、48bを伏臥状態座位補助具1の両側面にむかって押し出し、下側リンク48a、48bは伏臥状態座位補助具1の外側に引き起こされる様に回転する。下側リンク48a、48bに溶接されたキャスター固定軸42a、42bも上側方向に回転して、キャスター固定軸42a、42bに溶接されているキャスター41a、41b、41c、41dも上側方向に回転して骨組部10の下側部材13a、13b、13c、13dで形成される下面より上側に収納された状態となる。この状態の伏臥状態座位補助具1は骨組部10の下側部材13a、13b、13c、13dで形成される下面が床面に直接設置されることになるので、伏臥状態座位補助具1は床面に対して摩擦が働き簡単に動くことがない安定した状態となっている。
【0027】
(顔面載置部)
顔面載置部50は、意識のない人の顔面、胸部、手を載せたり、支えたりするための部分である。意識のない人が顔面、胸部、手を長時間載せたり、支えたりする場合が想定されるため、顔等の一部分に集中的に荷重が加わることにより血行不良等の障害が発生することを防止するために、顔面、胸部、手の荷重を分散して支えられるよう弾性のある部材、例えばウレタン、スポンジ等クッション材を主な素材としている。その外側は、耐久性や衛生面を考慮して、耐久性があり表面の消毒が容易な素材、例えばビニールシートや合成皮革等で覆ったクッション本体51よりなる。クッション本体51の略中央部には、顔面が顔面載置部40に正対して覆い被さった場合に、鼻や口の部分を塞がないようにする「U」の字状の切欠き部51が設けられている。
【0028】
伏臥状態座位補助具1の使用例を図4および図5を用いて説明する。図4は伏臥状態座位補助具1の側方から見た図であり、寝台7に人6が腰かけて顔面載置部50に伏し、顔面載置部50に腕を回して体を支えている状態を示している。人6の顔面を頭頂方向に向かって所定の角度で上る形態で受けるように顔面載置部50の顔面が接する側を伏臥する人6の胸部側から約30〜45度の角度で上るような角度を設けている。この角度を設けることにで、頭を持ち上げた座位の姿勢を取ることが可能となるので、胸部の圧迫が少なくなり、楽な姿勢を保つことができる。寝台7の高さと人6の脚の長さは一定ではないので、調節する必要がある場合は踏み台8を用いる。図5は伏臥状態座位補助具1の上方から見た図であり、顔面載置部50に人6が伏せた状態を点線で表している。図4及び図5で示す様に、意識のない重症患者で体の各部を動かすことができず、頭部を自らが支えることもできない場合においても、胴部を支えて座位の姿勢を取らせることが可能となっている。
【実施例2】
【0029】
図6は実施例2の伏臥状態座位補助具2を説明しており、伏臥状態座位補助具2は伏臥状態座位補助具1の顔面載置部50を備えてない場合の例である。伏臥状態座位補助具2においては顔面載置部50を使用せずに、適当な既存の枕やクッション等を顔面載置部50に代えて使用する場合である。その他の部分は実施例1と同様であるので同じ符号を附して説明を省略する。
【実施例3】
【0030】
図7は実施例3の伏臥状態座位補助具3を説明しており、実施例1の伏臥状態座位補助具1との違いは、顔面載置50を顔面載置部60に代えた場合の例である。
【0031】
伏臥状態座位補助具1の顔面載置部50においては、人6の顔面を頭頂方向に向かって所定の角度で上るようにしている。一方、伏臥状態座位補助具3の顔面載置部60においては、人6の顔面をほぼ平面の状態で受けるようにしている。クッション本体61には、人6が正対して覆い被さった場合に、鼻や口の部分を塞がないようにする「U」の字状の切欠き部62が設けられている。顔面載置部60は、顔面載置部50に比較して平坦な形状で、簡単な加工により成型することができる。その他の部分は実施例1と同様であるので同じ符号を附して説明を省略する。
【実施例4】
【0032】
図8は実施例4の伏臥状態座位補助具4を説明しており、実施例1の伏臥状態座位補助具1では顔面載置部50の側で人6の顔面を頭頂方向に向かって所定の角度をつけているが、伏臥状態座位補助具4では、骨組部10aの上側部材11a、11bを床面と並行にするのではなく、人6が伏せる側より頭頂方向に向かって所定の角度設けた場合の例である。
【0033】
実施例4の場合には上半身前面側載置部20の平板21には透明板を用いたものとすれば、実施例1に比較してより容易に上半身前面側載置部20に載った重症患者等である人6の顔を観察し易くすることができる。その他の部分は実施例1と同様であるので同じ符号を附して説明を省略する。
【符号の説明】
【0034】
1、2、3、4:伏臥状態座位補助具
6:人
7:寝台
8:踏み台
10、10a:骨組部
11a、11b、11c、11d:上側部材
12a、12b、12c、12d:側方部材
13a、13b、13c、13d:下側部材
20:上半身前面側載置部
21:平板
22:凹部
30:胴部固定部
31a、31b:固定金具
32a、32b:側板
33:背側ベルト
34:前側ベルト
35、36:面ファスナー
40:キャスター部
41a、41b、41c、41d:キャスター
42a、42b:キャスター固定軸
43a、43b、43c、43d:軸受金具
44:スライド枠
45:取手付きスライド板
46a、46b:上側リンク
47a、47b:ジョイント
48a、48b:下側リンク
50、60:顔面載置部
51、61:クッション本体
52、62:切欠き部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さを有する骨組部と、前記骨組部の上部に設けられた上半身前面側載置部と、前記骨組部に固定され前記上半身前面側載置部の側方に張り出す胴部固定部と、前記骨組部の下部に設けられ前記骨組部に収納可能なキャスター部よりなる伏臥状態座位補助具。
【請求項2】
前記上半身前面側載置部には、口および鼻の周囲に通気間隔を有した弾力性のある顔面載置部が設けられた、請求項1記載の伏臥状態座位補助具。
【請求項3】
前記上半身前面側載置部と前記胴部固定部が寝台の上部の寝るために供される面の一部を覆う状態で張り出すことが可能な骨組部を備える請求項1または請求項2記載の伏臥状態座位補助具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−85829(P2012−85829A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235057(P2010−235057)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(512024233)株式会社福光鉄工 (1)
【Fターム(参考)】