説明

伝送装置、中継装置、監視制御装置、IPネットワークシステム及びネットワーク機器生存確認方法

【課題】 IPネットワークシステムが数万におよぶ伝送装置を有している場合であっても、伝送装置の全ての組み合わせの疎通試験を短時間かつ正確に行うことができ、伝送装置及び伝送路トラフィックの負担を軽減することが可能な伝送装置を提供する。
【解決手段】 中継装置、ルータ及び監視制御装置と共にIPネットワークを形成する伝送装置は、ルートトレース部、経路情報作成部及び情報記憶部を具備する。ルートトレース部は、対向伝送装置へ経路探索パケットを送信し、経路探索パケットを受信したルータ及び対向伝送装置から応答されるMACアドレスを取得する。経路情報作成部は、取得したMACアドレスを通信先MACアドレスとして登録されている中継装置の情報を、監視制御装置に対して要求し、監視制御装置からの情報に基づいて対向伝送装置との間に位置する中継装置を把握して経路情報を作成する。情報記憶部は、前記経路情報を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、IPネットワーク上で用いられるIP機器の疎通試験を行う伝送装置と、L2スイッチの機能を有し、複数の伝送装置を収容する中継装置と、伝送装置及び中継装置を監視する監視制御装置と、これらの装置を有するIPネットワークシステムと、このシステムで用いられるネットワーク機器生存確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IPネットワークに配置された多数の伝送装置が相互に通信を行うIPネットワークシステムにおいて、すべての伝送装置間の通信状態を監視するには、各伝送装置が長い周期をかけて順番にポーリングする手法がある。また、各伝送装置が相互にポーリングすることで、負荷を分散させる手法もある。しかし、伝送装置が数万におよぶ大規模なIPネットワークシステムにおいては、全ての組み合わせの疎通試験を常時行うのは時間がかかるばかりでなく、伝送装置及び伝送路トラフィックに多大な負担がかかる。そのため、監視装置を設け、監視装置−伝送装置、又は、一部の伝送装置間で伝送装置の生存確認を行い、全ての伝送装置が正常であることをもって全ての伝送装置間の疎通確認に代用する等の手法が採られている。
【0003】
しかしながら、このような手法では、伝送装置が正常に稼動していても、伝送装置間の通信が正常でない場合、伝送装置が生存していないと判断してしまうおそれがある。また、監視装置が伝送装置の生存を確認している場合であっても、伝送経路が複数存在する場合には、他の伝送路における障害を検出できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−208068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来のネットワークシステムでは、数万におよぶ伝送装置が接続される場合、伝送装置の全ての組み合わせの疎通試験を常時行うには多大な時間がかかり、伝送装置及び伝送路トラフィックに多大な負担がかかる。また、監視装置を設け、伝送装置の生存確認をしようとしても、正確に確認できないおそれがあるという問題がある。
【0006】
そこで、目的は、IPネットワークシステムが数万におよぶ伝送装置を有している場合であっても、伝送装置の全ての組み合わせの疎通試験を短時間かつ正確に行うことができ、伝送装置及び伝送路トラフィックの負担を軽減することが可能な伝送装置、中継装置及び監視制御装置と、これらの装置を有するIPネットワークシステムと、このシステムで用いられるネットワーク機器生存確認方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、L2スイッチの機能を有する中継装置、L3スイッチの機能を有するルータ、及び、前記中継装置の通信先MAC(Media Access Control)アドレスを予め管理する監視制御装置と共にIP(Internet Protocol)ネットワークを形成する伝送装置は、ルートトレース部、経路情報作成部及び情報記憶部を具備する。ルートトレース部は、自装置以外の他の伝送装置を対向伝送装置として経路探索パケットを送信し、前記経路探索パケットを受信したルータ及び前記対向伝送装置から応答されるMACアドレスを取得する。経路情報作成部は、前記取得したMACアドレスを通信先MACアドレスとして登録されている中継装置の情報を、前記監視制御装置に対して要求し、前記監視制御装置からの情報に基づいて前記対向伝送装置との間に位置する中継装置を把握し、前記取得したMACアドレスと、前記把握した中継装置とから経路情報を作成する。情報記憶部は、前記経路情報を記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係るIPネットワークシステムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】図1のIPネットワークシステムの伝送装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図1のIPネットワークシステムの中継装置の機能構成を示すブロック図である。
【図4】図1のIPネットワークシステムの監視制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】図2の伝送装置が疎通試験を始めて実施する際の処理手順を示すシーケンス図である。
【図6】図2の伝送装置が2回目以降の疎通試験を実施する際の処理手順の第1の例を示すシーケンス図である。
【図7】図2の伝送装置が2回目以降の疎通試験を実施する際の処理手順の第2の例を示すシーケンス図である。
【図8】図2の伝送装置が2回目以降の疎通試験を実施する際の処理手順の第3の例を示すシーケンス図である。
【図9】図4の監視制御装置が広域障害を検出する際の処理手順を示すシーケンス図である。
【図10】図2の伝送装置が対向伝送装置から応答を得られない際の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図2の伝送装置が2回目以降の疎通試験を実施する際の処理手順の第4の例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係るIPネットワークシステム10の機能構成の一例を示すブロック図である。図1に示すIPネットワークシステム10は、伝送装置11−1〜11−m,12−1〜12−n,13−1〜13−o、中継装置21〜23、監視制御装置31及びルータ41〜43を具備する。
【0011】
伝送装置11−1〜11−m,12−1〜12−n,13−1〜13−oは、それぞれ中継装置21〜23に収容される。伝送装置11−1〜11−m,12−1〜12−n,13−1〜13−oの動作はそれぞれ同様であるため、以下では伝送装置11−1について説明する。
【0012】
図2は、本実施形態に係るIPネットワークシステム10の伝送装置11−1の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示す伝送装置11−1は、演算部111、情報記憶部112、リスト記憶部113、IPインタフェース114及びIインタフェース115を備える。
【0013】
IPインタフェース114は、中継装置21等のIP機器と接続する。IPインタフェース114は、中継装置21からIPパケットを受信し、また、中継装置21へIPパケットを送信する。
【0014】
Iインタフェース115は、ISDN(Integrated Services Digital Network)回線を収容する。Iインタフェース115は、ISDN回線を介して信号の送受信を行なう。なお、本実施形態では、伝送装置11−1がIインタフェース115を備え、ISDN回線と接続する場合を例に説明するが、これに限定される訳ではない。伝送装置11−1が接続する回線は、IPネットワーク以外のネットワークであるならば、ISDN回線に限定されない。
【0015】
演算部111は、例えばマイクロプロセッサから成るCPU(Central Processing Unit)を備える。演算部111は、CPUの処理により、プロトコル変換部1111、ルートトレース部1112、経路情報作成部1113、バッファ部1114、経路確認部1115、再確認部1116及び通信処理部1117の機能を実現する。
【0016】
プロトコル変換部1111は、IPインタフェース114により受信したIPプロトコルのIPパケットをISDNプロトコルの信号に変換する。また、プロトコル変換部1111は、Iインタフェース115により受信したISDNプロトコルの信号をIPプロトコルのIPパケットに変換する。プロトコル変換部1111は、IPパケットを、通信先となる他の伝送装置のIPアドレスを指定してIPインタフェース114から送信する。
【0017】
ルートトレース部1112は、疎通試験の対象となる対向伝送装置を、監視制御装置31により設定される。ルートトレース部1112は、監視制御装置31により設定された対向伝送装置を、リスト記憶部113に登録する。
【0018】
また、ルートトレース部1112は、疎通試験を実施する際には、リスト記憶部113に登録された対向伝送装置に対して順に、経路探索パケットを送信する。経路探索パケットを受信したルータ及び対向伝送装置は、自身のMACアドレス及びIPアドレスを伝送装置11−1へ返す。ルートトレース部1112は、受信したMACアドレス及びIPアドレスを情報記憶部112に登録する。なお、ルートトレース処理は、対向伝送装置までの間に存在する、L3スイッチの機能を有するルータの検出を目的としている。そのため、L2スイッチの機能を有する中継装置は検出されない。
【0019】
経路情報作成部1113は、情報記憶部112に対向伝送装置及びルータのMACアドレス及びIPアドレスが登録されると、これらの情報を監視制御装置31へ送信する。経路情報作成部1113は、伝送装置11−1と対向伝送装置との経路上に位置する中継装置の管理IPアドレスが監視制御装置31から通知されると、この管理IPアドレスにアクセスする。経路情報作成部1113は、アクセスした中継装置から、ルータ又は対向伝送装置等と接続するポート番号を読み取る。経路情報作成部1113は、管理IPアドレス及び読み取ったポート番号を情報記憶部112に登録する。経路情報作成部1113は、ルートトレース部1112によるルートトレース処理の結果と共に、中継装置の管理IPアドレス及びポート番号を登録することで、対向伝送装置までの経路情報を作成する。
【0020】
バッファ部1114は、次に実行される疎通試験における新たなルートトレース処理の結果及び新たな経路情報を一時的に保持する。
【0021】
経路確認部1115は、情報記憶部112に記憶されている経路情報と、バッファ部1114に保持される新たなルートトレース処理の結果とを比較する。経路確認部1115は、これらが一致するか否かを判断し、一致しない場合、登録された伝送装置までの経路が変更されたと判断する。
【0022】
また、記憶されている経路情報と、新たなルートトレース処理の結果とが一致する場合、経路確認部1115は、記憶されている経路情報と、バッファ部1114に保持される新たな経路情報とを比較する。経路確認部1115は、これらが一致するか否かを判断し、一致しない場合、対向伝送装置までの経路が変更されたと判断する。
【0023】
再確認部1116は、経路確認部1115で経路が変更されたと判断された場合、変更後において経路から外された中継装置及びルータを検出する。再確認部1116は、検出した中継装置及びルータに対してPingによる応答確認を行い、応答がない場合、その中継装置及びルータに障害が発生したと判断する。
【0024】
対向伝送装置に対する疎通試験が初めてである場合には、経路情報が未作成であるため、ルートトレース部1112及び経路情報作成部1113により疎通試験が行われる。これにより、伝送装置と対向伝送装置との経路について最初の経路情報が作成される。経路情報が一度作成されると、それ以降の疎通試験は、ルートトレース部1112、経路情報作成部1113、経路確認部1115及び再確認部1116により実施される。これにより、すでに作成した経路情報を参照して疎通試験が実施されることとなる。
【0025】
通信処理部1117は、情報記憶部112に登録される経路情報を、接続されている中継装置21へ出力する。また、通信処理部1117は、2回目以降の疎通試験において、送信した経路探索パケットの応答が対向伝送装置からない場合、情報記憶部112に登録される経路情報を、監視制御装置31へ出力する。
【0026】
情報記憶部112は、ルートトレース部1112の指示に従い、MACアドレス及びIPアドレスを記憶する。また、情報記憶部112は、経路情報作成部1113の指示に従い、管理IPアドレス及びポート番号を記憶する。
【0027】
また、情報記憶部112は、経路確認部1115及び通信処理部1117の指示に従い、記憶している経路情報を読み出す。
【0028】
リスト記憶部113は、ルートトレース部1112の指示に従い、疎通試験の対象となる対向伝送装置を記憶する。
【0029】
図1の中継装置21〜23は、L2スイッチの機能を有し、それぞれ伝送装置11−1〜11−m,12−1〜12−n,13−1〜13−oを収容する。中継装置21は中継装置23及びルータ41と接続し、中継装置22はルータ42と接続する。中継装置21〜23の動作はそれぞれ同様であるため、以下では中継装置21について説明する。
【0030】
図3は、本実施形態に係るIPネットワークシステム10の中継装置21の機能構成の一例を示すブロック図である。図3に示す中継装置21は、運用系装置211、待機系装置212及びIPインタフェース213を備える。
【0031】
IPインタフェース213は、ポート2131−1〜2131−m’を備え、これらのポートによりIP機器と接続する。ポート2131−1にはルータ41が接続され、ポート2131−2には中継装置23が接続され、ポート2131−3〜ポート2131−m’には伝送装置11−1〜11−mが接続される。なお、伝送装置11−1〜11−mは図1のIPネットワークシステム10内のいずれの場所にも配置可能であり、例えば、ルータ41を介して運用系装置211と接続するようにしても構わない。
【0032】
運用系装置211及び待機系装置212は、演算部2111,2121、MACテーブル記憶部2112,2122及び情報記憶部2113,2123をそれぞれ備える。中継装置21では、二重化構成が採られており、運用系装置211又は待機系装置212が動作する。それぞれの動作は同様であるため、以下では運用系装置211について説明する。
【0033】
MACテーブル記憶部2112は、通信先のIP機器のMACアドレスである通信先MACアドレスと、その通信先のIP機器へ接続するポートのポート番号とを関連付けて予め記憶している。MACテーブル記憶部2112は、後述する通信処理部21111の指示に従い、記憶している通信先MACアドレス及びポート番号を読み出す。
【0034】
情報記憶部2113は、通信処理部21111の指示に従い、伝送装置11−1〜11−mからの経路情報を記憶する。また、情報記憶部2113は、通信処理部21111の指示に従い、記憶する経路情報を読み出す。
【0035】
演算部2111は、例えばマイクロプロセッサから成るCPUを備える。演算部2111は、CPUの処理により、通信処理部21111及び生存確認部21112の機能を実現する。
【0036】
通信処理部21111は、ルータ41又は中継装置23からのIPパケットを、所定のポートを介して転送する。このとき、通信処理部21111は、MACテーブル記憶部2112に記憶される通信先MACアドレスを参照する。
【0037】
また、通信処理部21111は、監視制御装置31から自身の管理IPアドレスに基づいてアクセスされると、MACテーブル記憶部2112から通信先MACアドレス及びポート番号を取得する。通信処理部21111は、取得した通信先MACアドレス及びポート番号を監視制御装置31へ出力する。
【0038】
また、通信処理部21111は、伝送装置11−1〜11−mから経路情報が送信された場合、この経路情報を情報記憶部2113に登録する。
【0039】
また、通信処理部21111は、収容する伝送装置11−1〜11−mの少なくともいずれかに障害が発生した旨の通知が生存確認部21112から与えられた場合、情報記憶部2113に登録される経路情報を読み出す。そして、通信処理部21111は、読み出した経路情報を参照し、自装置を含めて中継機器数が2以下の伝送装置が存在するか否かを判断する。中継機器数が2以下の伝送装置が存在する場合、通信処理部21111は、その伝送装置のリストを監視制御装置31へ送信する。なお、ここでは、中継機器数が2以下の伝送装置を検出するようにしているが、これに限定される訳ではない。
【0040】
生存確認部21112は、収容する伝送装置11−1〜11−mとの通信障害が発生したか否かを確認する。生存確認部21112は、通信障害が発生した場合、その旨を通信処理部21111へ通知する。
【0041】
図1の監視制御装置31は、ルータ43に接続される。図4は、本実施形態に係るIPネットワークシステム10の監視制御装置31の機能構成の一例を示すブロック図である。図4に示す監視制御装置31は、運用系装置311、待機系装置312、操作部313及び表示部314を備える。
【0042】
運用系装置311及び待機系装置312は、演算部3111,3121、リスト記憶部3112,3122、MACテーブル記憶部3113,3123及びIPインタフェース3114,3124をそれぞれ備える。監視制御装置31では、二重化構成が採られており、運用系装置311又は待機系装置312が動作する。それぞれの動作は同様であるため、以下では運用系装置311について説明する。
【0043】
リスト記憶部3112には、IPネットワークに存在する中継装置のID及びこれらの中継装置を管理するための管理IPアドレスが記憶される。IPネットワークに新たな中継装置が加えられる場合には、この中継装置のID及び管理IPアドレスがリスト記憶部3112に新たに記憶される。また、IPネットワークから中継装置が外される場合には、この中継装置のID及び管理IPアドレスがリスト記憶部3112から削除される。
【0044】
IPインタフェース3114は、ルータ43等のIP機器と接続する。IPインタフェース3114は、ルータ43からのIPパケットを受信し、また、ルータ43へIPパケットを送信する。
【0045】
演算部3111は、例えばマイクロプロセッサから成るCPUを備える。演算部3111は、CPUの処理により、登録処理部31111、対向設定部31112、検索部31113、登録確認部31114、判定部31115及び障害特定部31116の機能を実現する。
【0046】
登録処理部31111は、リスト記憶部3112に中継装置が登録されると、登録された管理IPアドレスにアクセスし、中継装置のMACテーブル記憶部2112から通信先MACアドレス及びその通信先へ接続するポート番号を取得する。登録処理部31111は、取得した通信先MACアドレス及びポート番号を、MACテーブル記憶部3113に登録する。また、登録処理部31111は、中継装置へアクセスするのに使用した管理IPアドレスをMACテーブル記憶部3113へ登録する。登録処理部31111は、リスト記憶部3112に中継装置が新たに登録される度に、リスト記憶部3112に登録された中継装置の状態が変更される度に、又は、リスト記憶部3112から中継装置が削除される度に上記処理を繰り返す。
【0047】
対向設定部31112は、伝送装置11−1〜11−m,12−1〜12−n,13−1〜13−oに対して、疎通試験の対象となる対向伝送装置をランダムに設定する。
【0048】
検索部31113は、経路探索パケットの送信元の伝送装置から、対向伝送装置のMACアドレス及びIPアドレス、及び、両伝送装置の経路に存在するルータのMACアドレス及びIPアドレスが通知されると、これらのMACアドレスと一致する通信先MACアドレスをMACテーブル記憶部3113から検索する。一致する通信先MACアドレスがある場合、検索部31113は、その通信先MACアドレスと関連付けられた管理IPアドレスを送信元の伝送装置へ通知する。また、検索部31113は、通知した管理IPアドレスにより管理される中継装置が、伝送装置間の経路に位置する経路中継装置であるとしてMACテーブル記憶部3113に登録する。
【0049】
登録確認部31114は、送信元の伝送装置へ通知された全ての管理IPアドレスにより管理される中継装置が、他の伝送装置の疎通試験で経路中継装置としてすでに登録されているか否かを判断する。全ての中継装置がすでに登録されている場合、登録確認部31114は、経路情報作成部1113に対して、処理の停止を指示する。
【0050】
判定部31115は、中継装置21〜23のうちいずれかの通信処理部21111から伝送装置のリストが送信された場合、リストに掲載される伝送装置の障害状態を確認する。判定部31115は、障害状態にある伝送装置の数が予め設定される数を超えるか否かを判断する。障害状態にある伝送装置の数が予め設定される数を超える場合、判定部31115は、広域障害が発生したと判定する。
【0051】
障害特定部31116は、伝送装置の通信処理部1117から経路情報の通知があった場合、この経路情報に含まれる中継装置が、他の伝送装置による疎通試験で経路中継装置としてすでに登録されているか否かを判断する。通知された経路情報に含まれる中継装置が、他の伝送装置による疎通試験で経路中継装置としてすでに登録されている場合、障害特定部31116は、この経路中継装置に基づき、対向伝送装置までの経路上の中継装置で障害が発生したか否かを判断する。障害特定部31116は、経路情報の通知があった全ての伝送装置に対して、上記処理を行うことで、障害が発生した中継装置を特定する。
【0052】
MACテーブル記憶部3113は、登録処理部31111の指示に従い、通信先MACアドレス、ポート番号及び管理IPアドレスを記憶する。また、MACテーブル記憶部3113は、検索部31116の指示に従い、送信元の伝送装置へ管理IPアドレスが通知された中継装置が疎通試験の経路に位置する旨を記憶する。
【0053】
操作部313は、監視制御装置31のユーザが運用系装置311又は待機系装置312を操作する際に、指示を入力するためのものである。表示部314は、運用系装置311又は待機系装置312での処理結果を表示する。
【0054】
図1に示すルータ41〜43は、L3スイッチの機能を有する。ルータ41〜43は、伝送装置によるルートトレースに対して、自身のMACアドレス及びIPアドレスを、経路探索パケットの送信元の伝送装置へ送信する。
【0055】
次に、以上のように構成された伝送装置11−1による疎通試験を詳細に説明する。図5は、伝送装置11−1が疎通試験を始めて実施する際の処理手順を示すシーケンス図である。なお、図5では、伝送装置12−1を対向伝送装置とする場合を例に説明する。
【0056】
まず、伝送装置11−1は、ルートトレース部1112によるルートトレース処理を実行する。ルートトレース部1112は、伝送装置12−1へ向けて経路探索パケットを送信する(シーケンスS51)。図5では、伝送装置11−1と、伝送装置12−1との経路上に、中継装置21,22と、ルータ41,42とが存在する場合を説明する。L3スイッチの機能を有するルータ41,42は、経路探索パケットに対して、自身のMACアドレス及びIPアドレスを伝送装置11−1へ返す(シーケンスS52,3)。また、伝送装置12−1は、経路探索パケットを受信すると、自身のMACアドレス及びIPアドレスを伝送装置11−1へ返す(シーケンスS54)。
【0057】
ルートトレース部1112は、伝送装置12−1及びルータ41,42のMACアドレス及びIPアドレスを情報記憶部112に登録する(シーケンスS55)。
【0058】
続いて、伝送装置11−1は、経路情報作成部1113による処理を実行する。経路情報作成部1113は、情報記憶部112に伝送装置12−1及びルータ41,42のMACアドレス及びIPアドレスが登録されると、これらの情報を監視制御装置31へ送信する(シーケンスS56)。
【0059】
監視制御部31は、伝送装置11−1から、伝送装置12−1及びルータ41,42のMACアドレス及びIPアドレスが通知されると、検索部31113により、これらのMACアドレスと一致する通信先MACアドレスをMACテーブル記憶部3113から検索する(シーケンスS57)。検索部31113は、通信先MACアドレスにルータ41のMACアドレスを含む中継装置21と、通信先MACアドレスに伝送装置12−1のMACアドレスを含む中継装置22を発見し、これらの中継装置21,22の管理IPアドレスを伝送装置11−1へ出力する(シーケンスS58)。このとき、検索部31113は、中継装置21,22が、経路中継装置であることをMACテーブル記憶部3113に登録する。
【0060】
伝送装置11−1の経路情報作成部1113は、受信した管理IPアドレスに従い、中継装置21へアクセスし(シーケンスS59)、中継装置21のMACテーブル記憶部2112から、ルータ41と接続するポート番号を取得する(シーケンスS510)。また、経路情報作成部1113は、受信した管理IPアドレスに従い、中継装置22へアクセスし(シーケンスS511)、中継装置22のMACテーブル記憶部2112から、伝送装置12−1と接続するポート番号を取得する(シーケンスS512)。経路情報作成部1113は、管理IPアドレス及びポート番号を情報記憶部112に登録する(シーケンスS513)。
【0061】
このように、伝送装置11−1は、まず、ルートトレース処理により通信経路上に位置するルータを把握する。伝送装置11−1は、中継装置についての情報を、把握したルータに応じて監視制御装置31へ要求する。そして、伝送装置11−1は、通信経路上に位置する中継装置を把握するようにしている。これにより、伝送装置11−1は、伝送装置11−1と伝送装置12−1との経路上に位置するルータ及び中継装置についての経路情報を効率的に作成することが可能となる。また、この作用は、ルータ及び中継装置が汎用品である場合であっても得られる。つまり、この作用は、伝送装置11−1を既存のシステムに接続することによっても得られる。
【0062】
また、シーケンスS57において、監視制御部31の登録確認部31114は、検索した中継装置の全てが、すでに実施された疎通試験での経路中継装置として登録されているか否かを判断する。もし、伝送装置11−1が伝送装置12−1を対向伝送装置として実施した疎通試験の前に、伝送装置11−2が伝送装置12−1を対向伝送装置とした疎通試験を実施していた場合、シーケンスS57で検索された全ての中継装置は、以前の疎通試験で経路中継装置としてすでに登録されていることとなる。この場合、登録確認部31114は、経路情報作成部1113に対して、シーケンスS59〜S513の処理を停止させる指示を出す。また、伝送装置11−1のルートトレース部1112は、リスト記憶部113から伝送装置12−1を削除し、伝送装置12−1を疎通試験の対象から除外する。
【0063】
これにより、伝送装置11−1は、すでに登録されている経路に対して疎通試験を繰り返さないで済むようになるため、伝送装置及び伝送路トラフィックの負担を軽減することが可能となる。
【0064】
図6は、伝送装置11−1が2回目以降の疎通試験を実施する際の処理手順の第1の例を示すシーケンス図である。
【0065】
まず、伝送装置11−1は、ルートトレース部1112によるルートトレース処理を実行する。ルートトレース部1112は、伝送装置12−1へ向けて経路探索パケットを送信する(シーケンスS61)。図6では、伝送装置11−1と、伝送装置12−1との間に、中継装置21,22’(図示せず)と、ルータ41,42’(図示せず)とが存在する場合を説明する。L3スイッチの機能を有するルータ41,42’は、経路探索パケットに対して、自身のMACアドレス及びIPアドレスを伝送装置11−1へ返す(シーケンスS62,3)。また、伝送装置12−1は、経路探索パケットを受信すると、自身のMACアドレス及びIPアドレスを伝送装置11−1へ返す(シーケンスS64)。
【0066】
ルートトレース部1112は、伝送装置12−1及びルータ41,42’のMACアドレス及びIPアドレスをバッファ部1114に保持させる(シーケンスS65)。
【0067】
続いて、伝送装置11−1は、経路確認部1115による処理を実行する。経路確認部1115は、情報記憶部112に記憶されている経路情報と、バッファ部1114に保持される新たなルートトレース処理の結果とを比較する(シーケンスS66)。経路確認部1115は、記録されている経路情報ではルータ42を通過しているが、新たなルートトレース処理の結果ではルータ42’を通過しているため、伝送装置12−1までの経路が変更されたと判断する(シーケンスS67)。
【0068】
続いて、伝送装置11−1は、再確認部1116についての処理を実行する。再確認部1116は、変更後において経路から外されたルータ42を検出し、ルータ42に対してPingによる応答確認を行う(シーケンスS68)。再確認部1116は、ルータ42からの応答がない場合、ルータ42に障害が発生したと判断する。
【0069】
記憶されている経路情報と、新たなルートトレース処理の結果との比較が終了すると、ルートトレース部1112は、新たなルートトレース処理の結果を情報記憶部112に登録する(シーケンスS69)。
【0070】
続いて、伝送装置11−1は、経路情報作成部1113による処理を実行する。経路情報作成部1113は、情報記憶部112にルータ42’のMACアドレス及びIPアドレスが登録されると、伝送装置12−1及びルータ42’のMACアドレス及びIPアドレスを監視制御装置31へ送信する(シーケンスS610)。
【0071】
監視制御部31は、伝送装置11−1から伝送装置12−1及びルータ42’のMACアドレス及びIPアドレスが通知されると、検索部31113により、このMACアドレスと一致する通信先MACアドレスをMACテーブル記憶部3113から検索する(シーケンスS611)。検索部31113は、通信先MACアドレスにルータ42’のMACアドレスと伝送装置12−1のMACアドレスとを含む中継装置22’を発見し、中継装置22’の管理IPアドレスを伝送装置11−1へ出力する(シーケンスS612)。このとき、検索部31113は、中継装置22’が、経路中継装置であることをMACテーブル記憶部3113に登録する。
【0072】
伝送装置11−1の経路情報作成部1113は、受信した管理IPアドレスに従い、中継装置22’へアクセスし(シーケンスS613)、中継装置22’のMACテーブル記憶部2112から、伝送装置12−1と接続するポート番号を取得する(シーケンスS614)。経路情報作成部1113は、管理IPアドレス及びポート番号を情報記憶部112に登録し、伝送装置11−1と伝送装置12−1との間の新たな経路情報を作成する(シーケンスS615)。
【0073】
このように、伝送装置11−1は、記録されている経路情報と、新たなルートトレース処理の結果とを比較し、経路が変更されたルータを検出する。そして、伝送装置11−1は、経路が変更されたルータに対してのみ障害確認をするようにしている。これにより、障害が発生したルータを正確に検出することが可能となり、また、障害が発生したルータを検出する際の伝送装置及び伝送路トラフィックの負担を軽減することが可能となる。
【0074】
また、伝送装置11−1は、変更後のルータと接続する中継装置についての情報のみを監視制御装置31に要求するようにしている。これにより、伝送装置11−1と監視制御装置31との間で通信されるデータ量を軽減することが可能となる。
【0075】
なお、図6では、シーケンスS69での登録後、中継装置21に対するアクセスについての説明は行っていないが、経路確認部1115による処理を実行するようにしても構わない。すなわち、経路確認部1115は、情報記憶部112に記憶する中継装置21についての管理IPアドレスを読み出し、この管理IPアドレスを参照することで中継装置21にアクセスする。これにより、中継装置21でのポート番号の変更にも対応することが可能となる。
【0076】
図7は、伝送装置11−1が2回目以降の疎通試験を実施する際の処理手順の第2の例を示すシーケンス図である。
【0077】
まず、伝送装置11−1は、ルートトレース部1112によるルートトレース処理を実行する(シーケンスS51〜S54)。図7では、伝送装置11−1と、伝送装置12−1との間に、中継装置21,22と、ルータ41,42とが存在する場合を説明する。ルートトレース部1112は、伝送装置12−1及びルータ41,42のMACアドレス及びIPアドレスをバッファ部1114に保持させる(シーケンスS71)。
【0078】
伝送装置11−1は、経路確認部1115による処理を実行する。経路確認部1115は、情報記憶部112に記憶されている経路情報と、バッファ部1114に保持される新たなルートトレース処理の結果とを比較する(シーケンスS72)。記憶されている経路情報及び新たなルートトレース処理の結果ではルータ41,42が検出されているため、経路確認部1115は、記憶されている経路情報と、新たなルートトレース処理の結果は一致すると判断する(シーケンスS73)。
【0079】
続いて、経路確認部1115は、情報記憶部112から管理IPアドレスを読み出し(シーケンスS74)、読み出した管理IPアドレスに従い、中継装置21へアクセスする(シーケンスS75)。経路確認部1115は、中継装置21のMACテーブル記憶部2112から、ルータ41と接続するポート番号を取得する(シーケンスS76)。また、経路確認部1115は、読み出した管理IPアドレスに従い、中継装置22へアクセスする(シーケンスS77)。経路確認部1115は、中継装置22のMACテーブル記憶部2112から、伝送装置12−1と接続するポート番号を取得する(シーケンスS78)。経路確認部1115は、取得したポート番号をバッファ部1114に保持させる(シーケンスS79)。これにより、バッファ部1114には、新たな経路情報が保持されることとなる。
【0080】
経路確認部1115は、情報記憶部112に記憶される経路情報と、新たな経路情報とを比較する(シーケンスS710)。両経路情報が一致する場合、経路確認部1115は、経路が変更されていないと判断し、バッファ部1114に保持される新たな経路情報を、情報記憶部112に登録する(シーケンスS711)。
【0081】
また、両経路情報が不一致である場合、経路確認部1115は、中継装置21,22におけるポートが変更されたと判断し、バッファ部1114に保持される新たな経路情報を、情報記憶部112に登録する(シーケンスS711)。
【0082】
このように、伝送装置11−1は、記録されている経路情報と、新たなルートトレース処理の結果とが一致する場合には、情報記憶部112に記憶されている管理IPアドレスを参照し、経路上に位置すると考えられる中継装置にアクセスする。伝送装置11−1は、中継装置から帰ってきたポート番号に基づいて新たな経路情報を作成し、この新たな経路情報と記録されている経路情報とを比較する。そして、中継装置のポート番号が変更されていることを検出した場合、伝送装置11−1は、経路が変更になったと判断するようにしている。これにより、監視制御装置31と通信を行わなくても、中継装置のポート番号の変更が反映された経路情報を作成することが可能となる。
【0083】
図8は、伝送装置11−1が2回目以降の疎通試験を実施する際の処理手順の第3の例を示すシーケンス図である。
【0084】
まず、伝送装置11−1は、ルートトレース部1112によるルートトレース処理を実行する(シーケンスS51〜S54)。図8では、伝送装置11−1と、伝送装置12−1との間に、中継装置21,22’と、ルータ41,42とが存在する場合を説明する。
【0085】
図8におけるシーケンスS71〜S77は、図7におけるものと同一の処理である。図8のシーケンスS77において、中継装置22へアクセスしたが、中継装置22のMACテーブル記憶部2112に伝送装置12−1と接続するポート番号がない場合、経路確認部1115は、中継装置22が異なる中継装置に変更された判断する(シーケンスS81)。
【0086】
続いて、伝送装置11−1は、経路情報作成部1113による処理を実行する。経路情報作成部1113は、情報記憶部112に記憶される伝送装置12−1及びルータ42のMACアドレス及びIPアドレスを監視制御装置31へ送信する(シーケンスS82)。
【0087】
監視制御部31は、伝送装置11−1から伝送装置12−1及びルータ42のMACアドレス及びIPアドレスが通知されると、検索部31113により、このMACアドレスと一致する通信先MACアドレスをMACテーブル記憶部3113から検索する(シーケンスS83)。検索部31113は、通信先MACアドレスにルータ42と伝送装置12−1を含む中継装置22’を発見し、中継装置22’の管理IPアドレスを伝送装置11−1へ出力する(シーケンスS84)。このとき、検索部31113は、中継装置22’が、経路中継装置であることをMACテーブル記憶部3113に登録する。
【0088】
伝送装置11−1の経路情報作成部1113は、受信した管理IPアドレスに従い、中継装置22’へアクセスし(シーケンスS85)、中継装置22’のMACテーブル記憶部2112から、伝送装置12−1と接続するポート番号を取得する(シーケンスS86)。経路情報作成部1113は、管理IPアドレス及びポート番号を情報記憶部112に登録する(シーケンスS87)。これにより、伝送装置11−1と伝送装置12−1との間の新たな経路情報が作成される。
【0089】
このように、伝送装置11−1は、アクセスした中継装置のMACテーブル記憶部2112のポートが経路上のIP機器と接続されていない場合、検出したルータに応じた中継装置を監視制御装置31に対して再度要求する。そして、伝送装置11−1は、監視制御装置31からの管理IPアドレスに基づいて中継装置にアクセスし、ポート番号を取得するようにしている。これにより、新たに形成された経路上に位置する中継装置を効率的に検出することが可能となる。
【0090】
図9は、監視制御装置31が広域障害を検出する際の処理手順の一例を示すシーケンス図である。図9では、図1の中継装置21及び監視制御装置31の動作について説明する。
【0091】
まず、中継装置21の生存確認部21112は、収容する伝送装置11−1〜11−mとの通信障害が発生したか否かを確認する(シーケンスS91)。例えば伝送装置11−4との通信障害が発生している場合、中継装置21の通信処理部21111は、情報記憶部2113に登録される経路情報を読み出す(シーケンスS92)。そして、通信処理部21111は、読み出した経路情報を参照し、自装置を含めて中継機器数が2以下の伝送装置が存在するか否かを判断する(シーケンスS93)。ここで、伝送装置13−1〜13−oは、中継装置21に隣接する中継装置23に収容されるため、中継機器数が2以下の伝送装置に含まれる。通信処理部21111は、伝送装置11−1〜11−m,13−1〜13−oを含む伝送装置のリストを作成し、管理制御装置31へ通知する(シーケンスS94)。
【0092】
監視制御装置31の判定部31115は、中継装置21から伝送装置のリストを受信すると、リストに掲載される伝送装置11−1〜11−m,13−1〜13−oの障害状態を確認する(シーケンスS95)。判定部31115は、障害状態にある伝送装置の数が予め設定される数を超えるか否かを判断する(シーケンスS96)。伝送装置11−1〜11−m,13−1〜13−oのうち障害状態にある伝送装置の数が予め設定される数を超える場合、判定部31115は、広域障害が発生したと判定する(シーケンスS97)。
【0093】
このように、監視制御装置31は、中継装置から通知されるリストに記載される伝送装置の障害状態を確認する。そして、監視制御装置31は、障害が発生した伝送装置が所定個数以上ある場合、広域障害が発生したと判断する。これにより、広域障害を効率的に検出することが可能となる。
【0094】
図10は、伝送装置11−1が伝送装置12−1からの応答を得られない際の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0095】
伝送装置11−1の通信処理部1117は、2回目以降の疎通試験において、送信した経路探索パケットの応答が対向伝送装置からない場合、伝送装置11−1と伝送装置12−1との間の経路情報を情報記憶部112から読み出す(シーケンスS101)。通信処理部1117は、読み出した経路情報を監視制御装置31へ出力する(シーケンスS102)。なお、図10では、伝送装置11−1と伝送装置12−1との間の経路情報として、中継装置21、ルータ41、ルータ42及び中継装置22が情報記憶部112に登録されている場合を説明する。
【0096】
監視制御部31の障害特定部31116は、伝送装置11−1から経路情報の通知があった場合、この経路情報に含まれる中継装置21,22が、他の伝送装置による疎通試験で経路中継装置としてすでに登録されているか否かを判断する(シーケンスS103)。例えば、伝送装置11−1と伝送装置13−1との間の疎通試験により、中継装置21,23が経路中継装置として登録されている場合、障害特定部31116は、中継装置21がすでに登録済みであると判断する。障害特定部31116は、中継装置21がすでに登録済みであると判断すると、中継装置21以外の範囲で障害が発生したと予測する(シーケンスS104)。
【0097】
障害特定部31116は、伝送装置11−1と伝送装置12−1との間の疎通試験以外の疎通試験においても、経路情報が通知されると、新たに通知された経路情報についてシーケンスS103,S104の処理を行う。障害特定部31116は、複数の経路情報についてシーケンスS103,S104を繰り返すことで、障害の発生した中継装置を特定する(シーケンスS105)。
【0098】
このように、監視制御装置31は、対向伝送装置からの応答がない場合、経路中継装置として登録済みである中継装置を参照することで、障害の発生した中継装置を特定するようにしている。これにより、ルートトレース処理が完全に実施されない場合であっても、障害の発生した中継装置を特定することが可能となる。
【0099】
一般的な伝送装置は、通信を行おうとする場合、対向伝送装置を決定し、この対向伝送装置のIPアドレス宛に音声及び動画を含むIPパケットを送信する。このとき、伝送装置は、ネットワークに発生した障害を通信開始前に検出するため、通信の正常性を確認するための疎通試験を行う機能を有している。疎通試験は、伝送装置から任意の対向伝送装置に対して実施するため、その組み合わせは(伝送装置の数)×(伝送装置の数−1)÷2で計算され、伝送装置数が数万にのぼるような大規模なネットワークに適用するのは困難である。また、IP網においては、障害が発生してもダイナミックに経路が変更されることが多いため、伝送装置及び中継装置はネットワーク内の障害に気づかないこともある。
【0100】
本実施形態に係る伝送装置、中継装置、監視制御装置及びIPネットワークシステムによれば、IPネットワークシステムが数万におよぶ伝送装置を有している場合であっても、伝送装置の全ての組み合わせの疎通試験を短時間かつ正確に行うことができ、伝送装置及び伝送路トラフィックの負担を軽減することができる。
【0101】
なお、上記実施形態では、伝送装置11−1が2回目以降の疎通試験を実施する際の処理手順を図6〜図8のように示したが、これらに限定される訳ではない。例えば、図11のように処理しても構わない。
【0102】
すなわち、伝送装置11−1は、ルートトレース部1112によるルートトレース処理を実行する(シーケンスS51〜S54)。図11では、伝送装置11−1と、伝送装置12−1との間に、中継装置21,22と、ルータ41,42とが存在する場合を説明する。ルートトレース部1112は、伝送装置12−1及びルータ41,42のMACアドレス及びIPアドレスをバッファ部1114に保持させる(シーケンスS111)。
【0103】
続いて、伝送装置11−1及び監視制御装置31は、図5のシーケンスS56〜S512の処理を行う。伝送装置11−1の経路情報作成部1113は、管理IPアドレス及びポート番号をバッファ部1114に保持し、新たな経路情報を作成する(シーケンスS112)。
【0104】
続いて、伝送装置11−1は、経路確認部1115による処理を実行する。経路確認部1115は、情報記憶部112に記憶されている経路情報と、バッファ部1114に保持される新たな経路情報とを比較する(シーケンスS113)。両経路情報が一致する場合、経路確認部1115は、経路は変更されていないとして新たな経路情報を、過去の経路情報に替えて情報記憶部112に登録する。
【0105】
一方、新たな経路情報において、中継装置及び/又はルータの経路が変更されていた場合、伝送装置11−1の再確認部1116は、経路が変更されたIP機器に対してPingによる応答確認を行う。再確認部1116は、Pingを送信したIP機器からの応答がない場合、IP機器に障害が発生したと判断する。
【0106】
経路の変更を確認すると、経路情報作成部1113は、バッファ部1114に保持される新たな経路情報を、過去の経路情報に替えて情報記憶部112に登録する。
【0107】
また、上記実施形態では、伝送装置は、監視制御装置31がランダムに設定する対向伝送装置に対して疎通試験を行う場合を例に説明した。しかしながら、これに限定される訳ではない。例えば、監視制御装置31が伝送装置が設置される位置情報を予め記憶しているとする。監視制御装置31は伝送装置のうち、ネットワーク全体の端部近傍、かつ、ネットワーク全体に対して略対角に位置する伝送装置を抽出する。そして、監視制御装置31は、抽出した伝送装置間で疎通試験を実施するように、経路探索パケットの送信元伝送装置及び送信先伝送装置を設定するようにしても良い。例えば、監視制御装置31は、ネットワークの南端近傍に位置する伝送装置に対し、ネットワークの北端近傍に位置する伝送装置を対向伝送装置として設定する。また、ネットワークの西端近傍に位置する伝送装置に対し、ネットワークの東端近傍に位置する伝送装置を対向伝送装置として設定する。こうすることにより、一回の疎通試験で多数のIP機器が含まれることとなり、疎通試験を効率的に実施することが可能となる。
【0108】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0109】
10…IPネットワークシステム
11−1〜11−m,12−1〜12−n,13−1〜13−o…伝送装置
111…演算部
1111…プロトコル変換部
1112…ルートトレース部
1113…経路情報作成部
1114…バッファ部
1115…経路確認部
1116…再確認部
1117…通信処理部
112…情報記憶部
113…リスト記憶部
114…IPインタフェース
115…Iインタフェース
21〜23…中継装置
211…運用系装置
2111,2121…演算部
21111,21211…通信処理部
21112,21212…生存確認部
2112,2122…MACテーブル記憶部
2113,2123…情報記憶部
212…待機系装置
213…IPインタフェース
2131−1〜2131−m’…ポート
31…監視制御装置
311…運用系装置
3111,3112…演算部
31111,31121…登録処理部
31112,31122…対向装置設定部
31113,31123…検索部
31114,31124…登録確認部
31115,31125…判定部
31116,31126…障害特定部
3112,3122…リスト記憶部
3113,3123…MACテーブル記憶部
3114,3124…IPインタフェース
312…待機系装置
313…操作部
314…表示部
41〜43…ルータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L2スイッチの機能を有する中継装置、L3スイッチの機能を有するルータ、及び、前記中継装置の通信先MAC(Media Access Control)アドレスを予め管理する監視制御装置と共にIP(Internet Protocol)ネットワークを形成する伝送装置において、
自装置以外の他の伝送装置を対向伝送装置として経路探索パケットを送信し、前記経路探索パケットを受信したルータ及び前記対向伝送装置から応答されるMACアドレスを取得するルートトレース部と、
前記取得したMACアドレスを通信先MACアドレスとして登録されている中継装置の情報を、前記監視制御装置に対して要求し、前記監視制御装置からの情報に基づいて前記対向伝送装置との間に位置する中継装置を把握し、前記取得したMACアドレスと、前記把握した中継装置とから経路情報を作成する経路情報作成部と、
前記経路情報を記憶する情報記憶部と
を具備することを特徴とする伝送装置。
【請求項2】
前記経路情報作成部により新たに作成された経路情報と、前記情報記憶部に記憶される経路情報とを比較することで、経路から外れた中継装置又はルータを検出する経路確認部と、
前記経路確認部により検出された中継装置又はルータに対して個別に応答確認を行う再確認部と
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の伝送装置。
【請求項3】
前記ルートトレース部により新たに取得されたMACアドレスと、前記情報記憶部に記憶される経路情報を比較することで、経路から外れたルータを検出する経路確認部と、
前記経路確認部により検出されたルータに対して個別に応答確認を行う再確認部と
をさらに具備し、
前記経路情報作成部は、前記新たに取得したMACアドレスを通信先MACアドレスとして登録されている中継装置の情報を、前記監視制御装置に対して要求し、前記監視制御装置からの情報に基づいて前記対向伝送装置との間に位置する中継装置の情報を取得することで新たな経路情報を作成することを特徴とする請求項1記載の伝送装置。
【請求項4】
前記経路確認部は、
前記ルートトレース部により新たに取得されたMACアドレスと、前記情報記憶部に記憶される経路情報とが一致する場合、前記経路情報を作成する際に取得した前記監視制御装置からの情報に基づいて前記対向伝送装置との間に位置する中継装置の情報を取得することで新たな経路情報を作成し、
前記経路確認部により新たに作成された経路情報と、前記情報記憶部に記憶される経路情報とを比較することで、経路から外れた中継装置を検出することを特徴とする請求項3記載の伝送装置。
【請求項5】
前記監視制御部は、前記経路情報作成部からの要求に対して特定した中継装置の全てが、すでに実施された別の伝送装置間の疎通試験で経路として登録されているかを判断し、前記特定した全ての中継装置がすでに登録されている場合、前記経路情報作成部に対して前記経路情報の作成を停止させる指示を作成する登録確認部を備え、
前記経路情報作成部は、前記登録確認部からの指示に応じて、前記経路情報の作成を停止することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の伝送装置。
【請求項6】
前記対向伝送装置からの応答がない場合、前記情報記憶部に記憶される経路情報を、前記監視制御装置が障害の発生した機器を特定するように、前記監視制御装置へ通知する通信処理部をさらに具備することを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の伝送装置。
【請求項7】
それぞれが疎通試験を行う複数の伝送装置、L3スイッチの機能を有するルータ、及び、前記複数の伝送装置を管理する監視制御装置と共にIP(Internet Protocol)ネットワークを形成し、L2スイッチの機能を有して前記複数の伝送装置のうちいずれかを収容する中継装置において、
前記収容する伝送装置との通信障害の発生を検出する生存確認部と、
前記収容する伝送装置が前記疎通試験により作成した、経路上の中継装置及びルータの情報を含む経路情報を記憶する情報記憶部と、
前記通信障害が発生すると前記経路情報を読み出し、予め設定した数の中継装置を介して接続される伝送装置を検索し、検索した伝送装置を、前記監視制御装置における広域障害の発生の判断の指標として前記監視制御装置へ通知する通信処理部と
を具備することを特徴とする中継装置。
【請求項8】
ルートトレース処理を利用した疎通試験を行う伝送装置、L2スイッチの機能を有する中継装置及びL3スイッチの機能を有するルータと共にIP(Internet Protocol)ネットワークを形成し、前記中継装置の通信先MAC(Media Access Control)アドレスを予め管理する監視制御装置において、
前記管理する通信先MACアドレスから、前記ルートトレース処理により取得されたMACアドレスと一致する通信先MACアドレスを検索し、前記検索した通信先MACアドレスにより特定される中継装置に関する情報を、前記疎通試験で経路上に位置する中継装置の検出に用いられるように前記伝送装置へ出力する検索部を具備することを特徴とする監視制御装置。
【請求項9】
前記特定した中継装置の全てが、すでに実施された別の伝送装置間の疎通試験で経路として登録されているかを判断し、前記特定した全ての中継装置がすでに登録されている場合、前記伝送装置の疎通試験を停止させる登録確認部をさらに具備することを特徴とする請求項8記載の監視制御装置。
【請求項10】
前記中継装置は、
前記収容する伝送装置との通信障害の発生を検出する生存確認部と、
前記収容する伝送装置が前記疎通試験により作成した、経路上の中継装置及びルータの情報を含む経路情報を記憶する情報記憶部と、
前記通信障害が発生すると前記経路情報を読み出し、予め設定した数の中継装置を介して接続される伝送装置を検索し、検索した伝送装置を前記監視制御装置へ通知する通信処理部と
を備え、
前記通知された伝送装置との通信障害を検出し、検出した通信障害の数が予め設定した数を超える場合、広域障害が発生したと判定する判定部をさらに具備することを特徴とする請求項8又は9に記載の監視制御装置。
【請求項11】
前記疎通試験において前記伝送装置が経路探索パケットを送信する対向伝送装置を、前記伝送装置に対してランダムに設定する対向装置設定部をさらに具備することを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の監視制御装置。
【請求項12】
前記伝送装置が設置される位置情報を予め記憶し、前記IPネットワークの端部近傍、かつ、前記IPネットワークに対して略対角に位置する伝送装置間で疎通試験を行うように、経路探索パケットの送信元伝送装置及び送信先伝送装置を設定する対向装置設定部をさらに具備することを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の監視制御装置。
【請求項13】
前記伝送装置は、前記疎通試験の対向伝送装置からの応答がない場合、以前の疎通試験により作成した、経路上の中継装置及びルータの情報を含む経路情報を記憶済み経路情報として出力する通信処理部を備え、
前記監視制御装置は、
前記記憶済み経路情報と、すでに実施された別の伝送装置間の疎通試験で経路として登録されている中継装置とに基づいて、障害が発生した範囲を予測し、別の伝送装置から通知される記憶済み経路情報についても前記予測を繰り返すことで障害が発生した中継装置を特定する障害特定部をさらに具備することを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載の監視制御装置。
【請求項14】
伝送装置、L2スイッチの機能を有する中継装置、L3スイッチの機能を有するルータ、及び、前記中継装置の通信先MAC(Media Access Control)アドレスを予め管理する監視制御装置を具備するIP(Internet Protocol)ネットワークシステムにおいて、
前記伝送装置は、
自装置以外の他の伝送装置を対向伝送装置として経路探索パケットを送信し、前記経路探索パケットを受信したルータ及び前記対向伝送装置から応答されるMACアドレスを取得するルートトレース部と、
前記取得したMACアドレスを通信先MACアドレスとして登録されている中継装置の情報を、前記監視制御装置に対して要求し、前記監視制御装置からの情報に基づいて前記対向伝送装置との間に位置する中継装置を把握し、前記取得したMACアドレスと、前記把握した中継装置とから経路情報を作成する経路情報作成部と、
前記経路情報を記憶する情報記憶部と
を備え、
前記監視制御装置は、
前記経路情報作成部からの要求に応じ、前記管理する通信先MACアドレスから、前記取得されたMACアドレスと一致する通信先MACアドレスを検索し、前記検索した通信先MACアドレスにより特定される中継装置に関する情報を、前記経路情報作成部へ出力する検索部を備えることを特徴とするIPネットワークシステム。
【請求項15】
伝送装置、L2スイッチの機能を有する中継装置、L3スイッチの機能を有するルータ、及び、前記中継装置の通信先MAC(Media Access Control)アドレスを予め管理する監視制御装置を具備するIP(Internet Protocol)ネットワークシステムで用いられるネットワーク機器生存確認方法において、
前記伝送装置から、自装置以外の他の伝送装置を対向伝送装置として経路探索パケットを送信し、
前記経路探索パケットを受信したルータ及び前記対向伝送装置から応答されるMACアドレスを取得し、
前記取得したMACアドレスを通信先MACアドレスとして登録されている中継装置の情報を、前記監視制御装置に対して要求し、
前記監視制御装置からの情報に基づいて前記対向伝送装置との間に位置する中継装置を把握し、
前記取得したMACアドレスと、前記把握した中継装置とから経路情報を作成し、
前記経路情報を情報記憶部に記憶し、
新たな経路情報を作成し、
前記新たな経路情報と、前記情報記憶部に記憶される経路情報とを比較することで、経路から外れた中継装置又はルータを検出し、
前記検出された中継装置又はルータに対して個別に応答確認を行うことを特徴とするネットワーク機器生存確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−239125(P2012−239125A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108284(P2011−108284)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】