説明

位相同期ループ回路、半導体集積回路、電子機器、位相同期ループ回路の制御方法

【課題】位相同期ループ回路において、制御応答の改善や消費電力の低減を図る。
【解決手段】発振器制御部255と分周器制御部257は、発振制御信号と分周制御信号が、引込み過程およびロック時の双方において、ループフィルタ電圧に基づいて比例関係を持って連動して変化するようにする。発振部210と分周部220が引込み過程およびロック時の双方において連動した動作をする。引込み過程およびロック時の双方における任意のループフィルタ電圧に対応する分周部220の最高動作周波数が発振部210の発振出力信号の周波数よりも常に高くなるように各制御信号の関係を設定する。ロック時の分周制御信号は、引込み過程における発振部210の発振出力信号の最高周波数と対応するループフィルタ信号に基づくバイアス電流よりも小さなバイアス電流を分周部220に自動的に設定するようになる。このことにより、ロック時の電力消費を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相同期ループ(PLL:Phase Locked Loop) 回路、半導体集積回路、電子機器、位相同期ループ回路の制御方法に関する。より詳細には、位相同期ループ回路における制御応答の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器においては、位相同期ループ回路(位相同期回路と称することもある)が組み込まれることがある。
【0003】
一般的な位相同期ループ回路では、外部からの基準クロック信号に同期して、所望の発振周波数の内部クロック信号を生成する。具体的には、外部からの基準クロック信号と内部で生成した比較クロック信号の位相および周波数を位相周波数比較器により比較する。この比較結果に応じた位相差信号をループフィルタ部に供給して、位相差信号の低周波数成分を抽出して発振制御信号とする。ループフィルタ部から出力された発振制御信号を発振器(電圧制御発振器や電流制御発振器)に供給する。発振器は、発振制御信号に応じた発振周波数の内部クロック信号を生成して分周器に供給する。分周器は、発振器により生成された内部クロック信号を予め定められた分周比で分周して比較クロック信号を生成し、位相周波数比較器に供給する。
【0004】
ここで、特許文献1には、位相周波数比較器の出力信号に基づいて、位相同期ループ回路の動作状態を正確に判定することができるようにした仕組みが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−180349号公報
【0006】
特許文献1に記載の仕組みでは、動作状態判定部は、ループフィルタから出力される制御電圧が所定の電圧範囲内にあるか否かに基づいて、PLL周波数シンセサイザが所望の動作状態であるか否かを判定する。電流制御回路は、動作状態判定部からの判定信号に基づいて分周器を制御するための分周制御信号を生成する。このとき、電流制御回路は、PLL周波数シンセサイザが所望の動作状態を維持する範囲内において、分周器の駆動電流を小さくするように分周制御信号を生成する。
【0007】
このような仕組みにすることで、PLL周波数シンセサイザの動作状態を正確に判定することができるし、帰還分周回路の誤動作を検出することもでき、さらに、電流制御回路を設けることで、分周器やPLL周波数シンセサイザの低消費電力化を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の仕組みでは、アナログ/デジタル変換器、メモリ回路、判定回路により動作状態判定部を構成しており、その構成が特殊な回路構成になっており、信号処理系統が複雑になっている。そしてこのことを起因として、発振器を制御する発振制御信号と分周器を制御する分周制御信号との間で制御応答にズレが生じてしまうという難点がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、位相同期ループ回路における発振器と分周器の制御応答のズレを低減することのできる仕組みを提供することを目的とする。
【0010】
また、さらに好ましくは、分周器を制御する分周制御信号の生成回路の規模や電力消費を低減することのできる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る位相同期ループ回路は、外部からの基準クロック信号と比較クロック信号の位相を比較し、比較結果に応じた誤差信号を生成する位相周波数比較部と、誤差信号に応じた発振周波数の内部クロック信号を生成する発振部と、内部クロック信号を予め定められた分周比で分周して比較クロック信号を生成する分周部と、誤差信号に基づいて発振部から出力される内部クロック信号の周波数を制御するための発振制御信号を生成する発振器制御部と、誤差信号に基づいて分周部のバイアス電流を制御するための分周制御信号を生成する分周器制御部と、を備えたものとする。
【0012】
さらに、本発明の第1の態様においては、発振器制御部と分周器制御部は、発振制御信号と分周制御信号が、引込み過程およびロック時の双方において、誤差信号に基づいて予め定められた関係を持って応答するようにする。
【0013】
あるは、本発明の第2の態様においては、発振器制御部と分周器制御部は、引込み過程およびロック時の双方において、誤差信号に基づいて、発振部と分周部が連動した動作をするようにする。
【0014】
本発明の第1の態様は本発明の仕組みを制御信号の関係の側面から規定したものであり、本発明の第2の態様は本発明の仕組みを制御動作の側面から規定したものである。
【0015】
発振制御信号と分周制御信号が、引込み過程およびロック時の双方において、誤差信号に基づいて予め定められた関係を持って応答するようにすることで、発振部と分周部は誤差信号に基づいて連動した動作をするようになる。このことにより、位相同期ループ回路における発振部と分周部の制御応答のズレは軽減される。また、連動した動作をするようにするための回路構成は特許文献1に記載のものよりも簡易なものでよくなる。
【0016】
また、好ましくは、誤差信号に対する発振制御信号と分周制御信号の関係を適正に設定する。「適正に」とは、「予め定められた相関を持つように」という意味である。たとえば、引込み過程およびロック時の双方における任意の誤差信号の値に対応する分周部の最高動作周波数が発振部から出力される内部クロック信号の周波数よりも常に高くなるように、各制御信号の関係を設定する。この場合、ロック時の分周制御信号が、引込み過程における発振部から出力される内部クロック信号の最高周波数と対応するループフィルタ信号に基づくバイアス電流よりも小さなバイアス電流を分周部に自動的に設定するようになる。これにより、ロック時の電力消費は、本発明を適用しない場合よりも低減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、位相同期ループ回路における発振器と分周器の制御応答のズレを低減することができるし、回路規模を特許文献1よりも小さくできる。
【0018】
また、誤差信号に対する発振制御信号と分周制御信号の関係を適正に設定することで、ロック時の電力消費を、本発明を適用しない場合よりも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を適用した電子回路の一例であるタイミング生成回路の全体構成を説明する図である。
【図2】基準タイミング生成部の基本構成を説明する図である。
【図2A】発振部の構成例を説明する図である。
【図2B】分周部の構成例を説明する図である。
【図3】電圧電流変換回路の制御系を示す図である。
【図3A】発振部と分周部の制御応答の一例を説明する図である。
【図4】電圧電流変換回路の第1例を説明する図(その1)である。
【図4A】電圧電流変換回路の第1例を説明する図(その2)である。
【図5】電圧電流変換回路の第2例を説明する図である。
【図6】電圧電流変換回路の第3例を説明する図である。
【図7】電圧電流変換回路の第4例を説明する図である。
【図8】電圧電流変換回路の第5例を説明する図である。
【図9】電圧電流変換回路の第6例を説明する図である。
【図10】本実施形態の発振部、分周部、電圧電流変換回路が適用される電子機器の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際には、A,B,C,…などのように大文字の英語の参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
【0021】
説明は以下の順序で行なう。
1.タイミング生成回路の全体構成
2.基準タイミング生成部(基本構成、発振部、分周部)
3.発振部と分周部の制御応答の関係
4.電圧電流変換部:第1例
5.電圧電流変換部:第2例
6.電圧電流変換部:第3例
7.電圧電流変換部:第4例
8.電圧電流変換部:第5例
9.電圧電流変換部:第6例
10.比較例との対比
11.電子機器への適用例
【0022】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態を適用した電子回路や半導体集積回路の一例であるタイミング生成回路の全体構成を説明する図である。タイミング生成回路100は、位相同期ループ回路を利用した基準タイミング生成部110と信号処理部140とを備えている。
【0023】
図1(1)に示す第1基本構成例のタイミング生成回路100Aは、単一の信号処理部140を備える。
【0024】
図1(2)に示す第2基本構成例のタイミング生成回路100Bは、複数の信号処理部140を備え、複数の信号処理部140に対して1つの基準タイミング生成部110が共通に設けられている。基準タイミング生成部110を複数(この例では全ての)の信号処理部140で共用することで全体構成をコンパクトにしている。基準タイミング生成部110を複数の信号処理部140で共用する構成であればよく、信号処理部140の全てについて基準タイミング生成部110を共用することは必須でなく、基準タイミング生成部110を複数備える構成にしてもよいが、その場合、その分だけ回路規模が大きくなる。
【0025】
信号処理部140としては、より高速の信号処理が求められる高速信号処理部回路であってもよいし、高速処理が求められない信号処理を行なう標準信号処理部であってもよいし、それらを併存させた構成であってもよい。
【0026】
ここで、本明細書において「高速の信号処理」であるとは、基準タイミング生成部110から出力される出力クロックのトグル頻度(周波数)よりも信号処理部140から出力される出力される信号のトグル頻度(周波数)の方がトグル頻度が高い場合を意味する。
【0027】
高速信号処理部は、高速な処理が求められる機能を実現する機能ブロックや回路部であり、たとえば、高速パラレル・シリアル変換回路、高速シリアル・パラレル変換回路などが該当する。
【0028】
一方、標準信号処理部は、基準タイミング生成部110からの基準タイミング信号J0に基づいて動作する回路部であり、高速信号処理部よりも低速のデジタル信号処理を行なう低速信号処理部の一例である。換言すると、標準信号処理部は、高速でない標準的な速度の処理が求められる機能を実現する機能ブロックや回路部である。
【0029】
基準タイミング生成部110は、システム全体の基準となるタイミング信号であって、信号処理部140へ供給される基準タイミング信号J0を生成するものである。基準タイミング生成部110は基準タイミング信号J0を生成できるものであればよく、種々の回路構成を採り得るが、本実施形態では、PLL(Phase-Locked Loop :位相同期ループ)で構成する。
【0030】
信号処理部140が高速信号処理部である場合、基準タイミング信号J0は、信号処理部140における高速な処理を行なうための基準となるタイミング情報である。ただし、この場合の基準タイミング信号J0を構成する各タイミング信号は、信号処理部140から出力される信号のトグル頻度よりもトグル頻度の低い信号であり、特に「多相タイミング信号J2」と称する。
【0031】
より具体的には、多相タイミング信号J2は、複数のクロック信号の組合せにより複数のクロック位相を持つものである、換言すると、各々のクロック信号の周波数は低速であるが、各クロック信号の位相を組み合わせることで、全体としては高速なタイミング情報を高速な処理を行なう信号処理部140へ供給できるようになっている信号である。この多相タイミング信号J2は高速信号処理部140側が必要とする位相関係を持つ複数本のクロック信号で構成されるが、典型的には、等間隔に位相の異なる複数本のクロック信号で構成される。たとえば、基準タイミング生成部110を構成する各段の発振器要素の差動出力を複数本のクロック信号として利用することが考えられる。
【0032】
基準タイミング生成部110の位相同期ループ回路で使用される発振回路としては、種々の回路構成を採り得るが、たとえば、リングバッファによる発振回路、遅延制御されたバッファチェーンによるディレイラインなどで構成するのが好適である。その一例については後述する。
【0033】
<基準タイミング生成部>
[基本構成]
図2は、基準タイミング生成部110の基本構成を説明する図である。基準タイミング生成部110は先ず、位相同期ループ回路(PLL)を利用した構成のものを使用している。基準タイミング生成部110は、たとえば、半導体集積回路として提供されることがある。
【0034】
基準タイミング生成部110は、発振部210(OSC)と、分周部220(帰還分周器)と、位相周波数比較部230(PFD)と、チャージポンプ部240(CP)と、ループフィルタ部250と、バッファ部260と、バッファ部270とを備えている。
【0035】
発振部210は、電圧制御発振回路(VCO:Voltage Controlled Oscillator )と電流制御発振回路(CCO;Current Controlled Oscillator )の何れを採用してもよい。以下では、特段の断りのない限り、電流制御発振回路を採用するものとして説明する。
【0036】
電流制御発振回路で構成された発振部210は、複数の発振器の段が、環状構造に縦続接続されたリングバッファによる発振回路を用いており、具体的には、複数の発振器の段として複数の単位遅延素子212(ディレイセルやディレイステージとも称される)が縦続接続されている。ここでは、一例として、3つの単位遅延素子212を使用し、その単位遅延素子212としてバッファ回路を使用する例で示す。ζ段目の単位遅延素子212を区別する場合には参照子ζを付して記載する。後述の他の構成要素において段数などを区別する場合にも同様である。
【0037】
発振部210は、全体としてリング発振器を構成するように、たとえば接続としては負帰還となり、動作時は内部のRC成分(抵抗成分および容量成分)による位相ずれで正帰還となる。たとえば、各単位遅延素子212は縦続配置され、さらに何れかの段(通常は最終段)の単位遅延素子212の出力信号を、1段目の単位遅延素子212の入力に戻す。基準タイミング生成部110の発振部210の各単位遅延素子212からは差動のクロック信号が出力され、それらが後段の単位遅延素子212に供給される。「接続としては負帰還となる」ことを明示するため、何れかの段(一例として、1段目)の単位遅延素子212の入力に「反転入力」の記号○を付して示す。
【0038】
各単位遅延素子212(バッファ回路)は遅延制御が可能な構成のものであればよく、たとえば、2つのトランジスタ(たとえば電界効果トランジスタ)を使用した差動回路で構成すればよい。一例については後述するが、たとえば、一方のトランジスタのゲートを非反転入力とし、そのドレインを抵抗素子を介して第1の基準電位に接続し、そのドレインを反転出力とする。また、他方のトランジスタのゲートを反転入力とし、そのドレインを抵抗素子を介して第1の基準電位に接続し、そのドレインを非反転出力とする。また、各トランジスタのソースを接続して、電流値可変型の電流源を介して第2の基準電位に接続する。
【0039】
電流値可変型の電流源は、制御入力端子212inに供給される発振制御信号CN_OSC(=バッファ部260を介在させたループフィルタ出力電流Ilp)をカレントミラー形式(ミラー比は1:1でよい)で受けてトランジスタにバイアス電流を供給するようにする。電流値可変型の電流源により差動回路のバイアス電流を制御することで、各単位遅延素子212による遅延量が制御され、また、全体としての発振周波数が制御される。
【0040】
各単位遅延素子212の各制御入力端子212inは、共通に周波数制御入力端子210inに接続される。周波数制御入力端子210inを介して制御入力端子212inに供給されるループフィルタ出力電流Ilp(詳しくはバッファ部260を介在させたもの)が発振制御信号CN_OSCとして使用される。
【0041】
発振制御信号CN_OSCは、発振部210が電流制御発振回路のときは発振制御電流Icco であり、その発振周波数Fosc は発振周波数Fcco であるし、発振部210が電圧制御発振回路のときは発振制御電圧Vvco であり、その発振周波数Fosc は発振周波数Fvco である。
【0042】
分周部220は、逓倍機能を実現する場合に備えられるもので、発振部210の出力端子から出力された内部クロック信号の一例である出力発振信号Vout の発振周波数Fcco を1/ηに分周して比較クロック信号の一例である分周発振信号Vout1を取得する。ηは、PLL逓倍数(分周比とも称する)であって、1以上の正の整数で、かつ、PLL出力クロックCK_PLLの周波数を変更できるように可変にするのがよい。
【0043】
位相周波数比較部230は、外部から供給される基準クロックと分周部220からの分周発振信号Vout1の位相および周波数を比較し、比較結果である位相差および周波数差を示す誤差信号を比較結果信号Vcompとして出力する。位相周波数比較部230の一方の入力端に外部から供給される基準クロックを外部基準クロックCLK0と称し、位相周波数比較部230の他方の入力端に供給される他方の信号は比較クロック信号の一例である分周発振信号Vout1である。
【0044】
チャージポンプ部240は、位相周波数比較部230から出力された比較結果信号Vcompに応じた駆動電流(チャージポンプ電流Icpと称する)を入出力する。チャージポンプ部240は、たとえば、位相周波数比較部230から出力されたチャージポンプ電流Icpを入出力するチャージポンプと、チャージポンプにバイアス電流Icpbiasを供給する電流値可変型の電流源とを備えて構成される。
【0045】
ループフィルタ部250は、チャージポンプ部240を介して位相周波数比較部230から出力された比較信号を平滑化する平滑化部の一例であり、電流出力型および電圧出力型の何れをも採用してよい。図の例では、電流出力型の例で示している。ループフィルタ部250は、たとえばローパスフィルタをフィルタ回路252として具備し、チャージポンプ部240により生成されたチャージポンプ電流Icpをフィルタ回路252で積分し、発振部210の発振周波数Fcco を制御するためのループフィルタ出力電流Ilpを生成する。
【0046】
ループフィルタ部250は、電流制御発振回路で構成された発振部210に適合するように電流出力に対応した構成とする。つまり、ループフィルタ部250は、電流出力型とするため、詳しくは、フィルタ回路252の後段に電圧電流変換部254および電圧電流変換部256が設けられる。電圧電流変換部254とバッファ部260で発振器制御部255が構成され、電圧電流変換部256とバッファ部270で分周器制御部257が構成される。電圧出力型とする場合には、フィルタ回路252の後段に電圧電流変換部254および電圧電流変換部256を設ける必要はない。
【0047】
なお、この図では電圧電流変換部254と電圧電流変換部256をループフィルタ部250内に含めて示しているが、フィルタ回路252のみを有するループフィルタ部250として捉えて、電圧電流変換部254と電圧電流変換部256をループフィルタ部250の外に配置して考えてもよい。
【0048】
具体的には、ループフィルタ部250は、ループフィルタ容量Cpのコンデンサ(容量素子)を備えてフィルタ回路252が構成され、電圧電流変換ゲインGm_OSCの電圧電流変換回路(トランスコンダクタンス)を電圧電流変換部254として備え、電圧電流変換ゲインGm_DIVの電圧電流変換回路(トランスコンダクタンス)を電圧電流変換部256として備えるものとする。
【0049】
チャージポンプの出力は、コンデンサの一方の端子と電圧電流変換部254および電圧電流変換部256の入力とに共通に接続される。コンデンサの他方の端子は基準電位(たとえば接地、もしくは電源)に接続される。
【0050】
ループフィルタ部250では、チャージポンプから出力されたチャージポンプ電流Icpに基づいてコンデンサの一方の端子(つまり電圧電流変換部の入力)に電圧信号(チャージポンプ電圧Vcpと称する)が生成される。
【0051】
コンデンサへの充放電動作となるので、ループフィルタ部250(のフィルタ回路252)は、位相周波数比較部230からの比較結果信号Vcomp中の所定のカットオフ周波数(ロールオフ周波数やポールともいう)以上の周波数成分を減衰させて、発振部210に供給される発振制御電流Icco を平滑化してその低周波数成分を抽出するように、少なくとも1つのカットオフ周波数(ポール)を呈する低域通過フィルタとして機能する。
【0052】
なお、フィルタ回路252は、コンデンサだけでなくループフィルタ抵抗Rpの抵抗素子を直列に接続することで、低域通過フィルタとしての機能を高めるようにしてもよい。1つのチャージポンプを備える構成を採る場合、通常は、この抵抗素子を備えた構成を採用する。また、コンデンサの単独の回路とコンデンサおよび抵抗素子の直列回路とを並列接続するなどして伝達特性のポールを複数にするなどの変形も考えられる。
【0053】
電圧電流変換部254および電圧電流変換部256は、チャージポンプから出力されたチャージポンプ電流Icpに基づいてフィルタ回路252のコンデンサの一方の端子(つまり電圧電流変換部の入力)に生成されるループフィルタ電圧Vlf(この例ではチャージポンプ電圧Vcp)を電圧電流変換ゲインGmに従って電流信号(ループフィルタ出力電流Ilp)に変換する。
【0054】
ループフィルタ出力電流Ilp_OSCは、バッファ部260を介在させることで発振部210の発振制御信号CN_OSCとして使用されるし、ループフィルタ出力電流Ilp_DIVは、バッファ部270を介在させることで分周部220を制御する分周制御信号CN_DIVとしても使用される。換言すると、各ループフィルタ出力電流Ilpは、発振制御信号CN_OSCや分周制御信号CN_DIVの大元となる制御信号である。
【0055】
バッファ部260は、ループフィルタ部250(この例では電圧電流変換部254)と発振部210との間の発振制御信号のインタフェースをなす機能部であり、たとえば電流バッファとして機能する電流電流変換回路で構成される。電流電流変換回路は、ループフィルタ部250からのループフィルタ出力電流IlpをK_OSC倍(K_OSCはミラー比であり、1を含む任意の値でよく、1よりも大きくてもよいし、1よりも小さくてもよい)に変換する機能を持つ。
【0056】
バッファ部260は、電流方向の折返しの必要性やミラー比K_OSCの設定など必要に応じて設けられればよく、必須の構成要素ではなく、必要に応じて設けられればよい。たとえば、ミラー比K_OSCが「1」でよく、また、ループフィルタ出力電流Ilp_OSCをそのまま発振制御電流Icco として使用してもよい場合はバッファ部260を設けなくてもよい。一方、たとえば、ミラー比K_OSCを「1」以外とする場合や、ミラー比K_OSCに関わらず、ループフィルタ出力電流Ilp_OSCに基づく制御信号(この例では制御電流)に定常値(この例では定電流成分)を重畳する場合にはバッファ部260を設ける。なお、バッファ部260の機能を電圧電流変換部254に取り込んだ構成にすることも考えられる。
【0057】
因みに、ループフィルタ部250を電圧出力型とする場合において、ループフィルタ電圧Vlfに対してのバッファ機能として電圧ゲインG_OSCが「1」のいわゆるボルテージフォロワをバッファ部260として設けることが考えられる。また、ループフィルタ部250を電圧出力型とする場合において、電圧ゲインG_OSCを「1」以外とする場合や、電圧ゲインG_OSCに関わらず、ループフィルタ出力電圧Vlp_OSCに基づく制御信号(この例では制御電圧)に定常値(この例では定電圧成分)を重畳する場合にバッファ部260を設けることも考えられる。
【0058】
バッファ部270は、ループフィルタ部250(この例では電圧電流変換部256)と分周部220との間の分周制御信号のインタフェース機能をなす機能部であり、たとえば電流バッファとして機能する電流電流変換回路で構成される。電流電流変換回路は、ループフィルタ部250からのループフィルタ出力電流IlpをK_DIV倍(K_DIVはミラー比であり、1を含む任意の値でよく、1よりも大きくてもよいし、1よりも小さくてもよい)に変換する機能を持つ。
【0059】
このバッファ部270は、電流方向の折返しの必要性やミラー比K_DIV(フィンガー比)の設定など必要に応じて設けられればよく、必須の構成要素ではなく、必要に応じて設けられればよい。たとえば、ミラー比K_DIVが「1」でよく、また、ループフィルタ出力電流Ilp_DIVをそのまま分周制御信号CN_DIVとして使用してもよい場合はバッファ部270を設けなくてもよい。一方、たとえば、ミラー比K_DIVを「1」以外とする場合や、ミラー比K_DIVに関わらず、ループフィルタ出力電流Ilp_DIVに基づく制御信号(この例では制御電流)に定常値(この例では定電流成分)を重畳する場合にはバッファ部270を設ける。なお、バッファ部270の機能を電圧電流変換部256に取り込んだ構成にすることも考えられる。
【0060】
因みに、発振部210を電圧制御発振器とし、ループフィルタ部250を電圧出力型とする場合において、ループフィルタ電圧Vlfに対してのバッファ機能として電圧ゲインG_DIVが「1」のいわゆるボルテージフォロワをバッファ部270として設けることが考えられる。また、同様の場合において、電圧ゲインG_DIVを「1」以外とする場合や、電圧ゲインG_DIVに関わらず、ループフィルタ出力電圧Vlp_DIVに基づく制御信号(この例では制御電圧)に定常値(この例では定電圧成分)を重畳する場合にバッファ部270を設けることも考えられる。
【0061】
[発振部:電流制御発振回路]
図2Aは、基準タイミング生成部110の発振部210の構成例を説明する図である。ここでは、発振部210が電流制御発振回路である場合で示す。なお、図2A(1)は詳細回路図であり、図2A(2)は、発振制御電流Icco に対する発振周波数Fcco の特性例である。
【0062】
図2A(1)に示すように、電流制御発振回路で構成された発振部210の単位遅延素子212は、2つのNMOS(N型のMOSトランジスタ)であるトランジスタTR1とトランジスタTR2を使用した差動回路で構成されている。トランジスタTR1のゲートを非反転入力INpとし、そのドレインを抵抗素子R1を介して電源Vddに接続し、そのドレインを反転出力Qnとする。また、トランジスタTR2のゲートを反転入力INnとし、そのドレインを抵抗素子R2を介して電源Vddに接続し、そのドレインを非反転出力Qpとする。
【0063】
そして、本例では、1段目の単位遅延素子212_1の反転出力Qnが2段目の単位遅延素子212_2の反転入力INnに接続されるとともに、1段目の非反転出力Qpが2段目の非反転入力INpに接続されている。さらに、2段目の単位遅延素子212_2の反転出力Qnが3段目の単位遅延素子212_3の反転入力INnに接続されるとともに、2段目の非反転出力Qpが3段目の非反転入力INpに接続されている。さらに、3段目の単位遅延素子212_3の反転出力Qnが1段目の単位遅延素子212_1の非反転入力INpに接続されるとともに、3段目の非反転出力Qpが1段目の反転入力INnに接続されている。これによって、接続としては負帰還となり、全体としてリング発振器が構成される。
【0064】
各段のトランジスタTR1およびトランジスタTR2のソース同士が接続され、さらに電流値可変型の電流源Is1を介して基準電位(たとえば接地電位GND )に接続されている。
【0065】
電流源Isが発振器制御部255からの発振制御信号CN_OSCとしての発振制御電流Icco により制御される。あるいは、電流源Is1が電圧電流変換部254やバッファ部260に組み込まれた構成とすることも考えられ、この場合は、電流源Is1の出力電流が発振制御信号CN_OSCとしての発振制御電流Icco そのものとなる。
【0066】
図2A(2)には、電流制御発振器の発振制御電流Icco に対する発振周波数Fcco の特性例が示されている。この例では、発振周波数Fcco が発振制御電流Icco に対して単調増加するようになっており、特に、発振周波数Fcco は、発振制御電流Icco にほぼ比例して増加している。
【0067】
[分周部:電流受け型]
図2Bは、基準タイミング生成部110の分周部220の構成例を説明する図である。ここでは、分周部220の制御入力端が電流受け型の場合で示す。なお、図2B(1)は機能ブロック図であり、図2B(2)は詳細回路図であり、図2B(3)は動作例を示すタイミングチャートであり、図2B(4)は、分周制御電流Idiv に対する最高動作周波数Fdiv_max の特性例である。
【0068】
分周部220は一例として、図2B(1)に示すように、2つのDラッチ222(D型フリップフロップ)を使用した2分周回路(プリスケーラ)で構成されている。各段のDラッチ222には、発振部210から出力された出力発振信号Vout であって相補関係を持つ非反転クロックCKpと反転クロックCKnが互い違いに供給される。
【0069】
「互い違い」の意味は、たとえば、1段目のDラッチ222_1は非反転クロックCKpのHレベル期間にデータを取り込み、その取り込んだデータを反転クロックCKnのHレベル期間で保持する一方、2段目のDラッチ222_2は反転クロックCKnのHレベル期間にデータを取り込み、その取り込んだデータを非反転クロックCKpのHレベル期間で保持することである。
【0070】
1段目のDラッチ222_1の非反転出力Qpが2段目のDラッチ222_2の非反転入力INpに接続されるとともに、1段目の反転出力Qnが2段目の反転入力INnに接続されている。さらに、2段目の非反転出力Qpが1段目の反転入力INnに接続されるとともに、2段目の反転出力Qnが1段目の非反転入力INpに接続されている。これによって、全体として差動入出力構成となり、2段目の非反転出力Qpおよび反転出力Qnが分周発振信号Vout1となる。
【0071】
図2B(2)に示すように、分周部220のDラッチ222は、データ取込回路224とデータ保持回路226とバイアス回路228で構成されている。
【0072】
データ取込回路224は、2つのNMOS(N型のMOSトランジスタ)を使用した差動回路を具備し、負荷にPMOS(P型のMOSトランジスタ)を持ついわゆる能動負荷となっている。具体的には、トランジスタTR1とトランジスタTR2が差動接続され、その負荷(ドレイン側)にトランジスタTR3とトランジスタTR4が接続されている。
【0073】
トランジスタTR1は、ゲートを非反転入力INpとし、そのドレインがトランジスタTR3のドレインに接続され、そのドレインを反転出力Qnとする。また、トランジスタTR2は、ゲートを反転入力INnとし、そのドレインがトランジスタTR4のドレインに接続され、そのドレインを非反転出力Qpとする。
【0074】
トランジスタTR1とトランジスタTR2は、ソース同士が接続され、さらにトランジスタTR5のドレインと接続されている。トランジスタTR5のゲートにはクロック(非反転クロックCKpと反転クロックCKnの何れか一方)が供給される。トランジスタTR5のソースは基準電位(たとえば接地電位GND )に接続されている。
【0075】
トランジスタTR3とトランジスタTR4は、各ソースが電源Vddに接続され、各ゲートは各段が共通にバイアス回路228に接続されている。
【0076】
データ保持回路226は、2つのNMOS(N型のMOSトランジスタ)を襷掛け接続とした構造を採っており、その各ドレインをデータ取込回路224の非反転出力Qpおよび反転出力Qnに接続した構成になっている。具体的には、データ取込回路224の反転出力Qnと接続されたトランジスタTR6のドレインをトランジスタTR7のゲートへ接続し、データ取込回路224の非反転出力Qpと接続されたトランジスタTR7のドレインをトランジスタTR6のゲートへ接続した襷掛け接続構造を採っている。
【0077】
トランジスタTR6とトランジスタTR7は、ソース同士が接続され、さらにトランジスタTR8のドレインと接続されている。トランジスタTR8のゲートにはクロック(非反転クロックCKpと反転クロックCKnの内のトランジスタTR5への入力と異なる方)が供給される。トランジスタTR8のソースは基準電位(たとえば接地電位GND )に接続されている。
【0078】
なお、トランジスタTR5およびトランジスタTR8の各ソースを共通に、電流源をなすトランジスタを介して基準電位に接続するようにしてもよい。この場合の電流源は固定バイアス電流を供給する構成にする。
【0079】
データ取込回路224のトランジスタTR3とトランジスタTR4の各ゲートと接続されたバイアス回路228は、トランジスタTR3およびトランジスタTR4とカレントミラー接続されるPMOSのトランジスタTR9を有する。トランジスタTR9は、ソースが電源Vddに接続され、ドレインとゲートがトランジスタTR3およびトランジスタTR4のゲートと接続されるとともに電流値可変型の電流源Is2を介して基準電位(たとえば接地電位GND )に接続されている。
【0080】
電流源Is2が分周器制御部257からの分周制御信号CN_DIVとしての分周制御電流Idiv により制御される。あるいは、電流源Is2が電圧電流変換部256やバッファ部270に組み込まれた構成とすることも考えられ、この場合は、電流源Is2の出力電流が分制御信号CN_DIVとしての分周制御電流Idiv そのものとなる。何れの場合も、能動負荷であるトランジスタTR3およびトランジスタTR4を介してDラッチ222の各トランジスタTRに供給されるバイアス電流は、分周制御電流Idiv に対してほぼ比例するようになる。
【0081】
因みに、分周部220の制御入力端を電圧受け型とする場合には、トランジスタTR3およびトランジスタTR4のゲートを電圧信号で制御するように構成すればよい。
【0082】
図2B(3)を参照して分周部220の動作を説明する。以下では、1段目のトランジスタTR5に非反転クロックCKpが供給され、2段目のトランジスタTR5に反転クロックCKnが供給されるものとする。先ず、2段目の反転出力Qn2がHレベルであり、非反転出力Qp2がLレベルあったとする(T0の期間)。1段目は、データ取込回路224が非反転クロックCKpのHレベル期間T1に、2段目のデータを取り込み、その取り込んだデータを反転クロックCKnのHレベル期間T2で保持する。その結果、1段目は、反転出力Qn1がLレベルになり、非反転出力Qp1がHレベルになる。
【0083】
その後、2段目は、データ取込回路224が反転クロックCKnのHレベル期間T2に、1段目で保持されているデータを取り込み、その取り込んだデータを非反転クロックCKpのHレベル期間T3で保持する。その結果、2段目は、反転出力Qn2がLレベルになり、非反転出力Qp2がHレベルになる。これにより、非反転クロックCKpおよび反転クロックCKnとして入力された出力発振信号Vout の発振周波数Fcco を1/2に分周した分周発振信号Vout1が2段目から出力される。
【0084】
図2B(4)には、分周部220の分周制御電流Idiv に対する最高動作周波数Fdiv_max の特性例が示されている。この例では、最高動作周波数Fdiv_max が分周制御電流Idiv に対して単調増加するようになっており、特に、最高動作周波数Fdiv_max は、分周制御電流Idiv にほぼ比例して増加している。ここでは図示しないが、分周部220の消費電流Ipwは、分周部220のバイアス電流にほぼ比例すると考えてよく、消費電流Ipwも分周制御電流Idiv にほぼ比例して増加することになる。
【0085】
<発振部と分周部の制御応答の関係>
図3〜図3Aは、発振制御信号CN_OSCによる発振部210の制御応答と、分周制御信号CN_DIVによる分周部220の制御応答の関係を説明する図である。ここで、図3は、本実施形態の電圧電流変換回路253の制御系を示し、図3Aは、本実施形態および本実施形態を採用しない比較例の場合の発振部210と分周部220の制御応答の一例を説明する図である。
【0086】
図3(1)は、電圧電流変換部254、バッファ部260、および発振部210の系統と、電圧電流変換部256、バッファ部270、および分周部220の系統に着目した機能ブロック図である。図3(2)は、図3(1)について、特に、発振部210が電流制御発振回路であり、分周部220の制御入力端が電流受け型の場合を示した機能ブロック図である。図3(3)は、図3(1)について、特に、発振部210が電圧制御発振回路であり、分周部220の制御入力端が電圧受け型の場合を示した機能ブロック図である。図3(2)および図3(3)では、ループフィルタ部250のフィルタ回路252が、コンデンサ252aの単独の回路とコンデンサ252bおよび抵抗素子252cの直列回路とを並列接続した例で示している。
【0087】
図3A(1)〜図3A(3)は、本実施形態の発振器制御部255と分周器制御部257の両系統の制御応答の関係の一例を示す特性図である。図3A(4)は、本実施形態を採用しない比較例の制御応答の関係の一例を示す特性図である。図3A(5)は、本実施形態の分周部220の消費電流の制御応答の関係の一例を示す特性図である。
【0088】
本実施形態の基準タイミング生成部110は、分周部220のバイアス電流がバッファ部270からの分周制御信号CN_DIVにより制御されるようになっている。分周部220の制御入力端が電流受け型の場合は発振部210が電流制御発振回路のときのときに準じて分周制御信号CN_DIVは分周制御電流Idiv であり、分周部220の制御入力端が電圧受け型の場合は発振部210が電圧制御発振回路のときのときに準じて分周制御信号CN_DIVは分周制御電圧Vdiv である。以下では特段の断りがない限り分周部220の制御入力端が電流受け型であるとして説明する。
【0089】
なお、発振部210および分周部220がともに電流型や電圧型で共通であることは必須でなく、発振部210と分周部220の何れか一方が電流型で、他方が電圧型の態様であってもよい。つまり、発振部210が電流制御発振回路であり、分周部220の制御入力端が電圧受け型の態様、発振部210が電圧制御発振回路であり、分周部220の制御入力端が電流受け型の態様にしてもよい。
【0090】
分周部220は、そのバイアス電流が、制御電流のみで制御される構成、制御電流に定電流(つまりオフセット成分)を足した電流で制御される構成の何れでもよい。また、分周部220は、バイアス電流で制御されている分周器のみで構成される場合と、バイアス電流で制御される分周器とそれ以外の方式の分周器の組み合わせで構成される場合の何れでもよい。
【0091】
本実施形態では、ループフィルタ電圧Vlfに基づく電圧電流変換部254およびバッファ部260の発振器制御部255での制御応答と電圧電流変換部256およびバッファ部270の分周器制御部257での制御応答が予め定められた相関を持つように、各回路を構成する。
【0092】
「制御応答が予め定められた相関を持つ」ようにするための典型的な手法は、「ループフィルタ電圧Vlfに基づく発振制御信号CN_OSCと分周制御信号CN_DIVの各値が概ね同じように変化する」ようにすることで実現できる。たとえば、図3A(1)に示す第1例のように、ループフィルタ電圧Vlfに基づく発振制御信号CN_OSCと分周制御信号CN_DIVの各値にほぼ比例関係を持つようにすることで実現できる。つまり、発振器制御部255と分周器制御部257の両系統は、分周部220を制御する分周制御信号CN_DIVが、発振部210を制御する発振制御信号CN_OSCに比例するようにする。換言すると、両者の値がループフィルタ電圧Vlfの1次関数式(線形式)で表わすことができるようにすることである。
【0093】
この限りにおいて、発振制御信号CN_OSCに対する発振周波数Fosc の関係が1次関数式で表わされることや、分周制御信号CN_DIVに対する分周部220の消費電流Ipwや最高動作周波数Fdiv_max の関係が1次関数式で表わされることは必須でない。この関係は、発振制御信号CN_OSCと分周制御信号CN_DIVがともに電流信号である場合に限らず、双方が電圧信号の場合や、何れか一方が電流信号で他方が電圧信号の場合についても同様である。
【0094】
なお、図3(2)に示す電流重畳回路258が設けられていて、ループフィルタ電圧Vlfに基づく制御信号(分周制御電流Idiv')に定常電流I_offを重畳する場合には、図3A(2)に示す第2例のように、定常電流I_offを除いた制御信号がほぼ比例関係を持っていればよい。図示しないが、ループフィルタ電圧Vlfに基づく制御信号(発振制御電流Iosc')に定常電流を重畳する場合にも同様に、その定常電流を除いた制御信号がほぼ比例関係を持っていればよい。
【0095】
つまり、電圧電流変換部256により得られる分周制御電流Idiv'と電流重畳回路258が持つ電流源(図示せず)により生成されるオフセット電流成分としての定常電流I_offを合成(加算)した成分を分周制御電流Idiv として分周部220に供給する。
【0096】
この場合、電流制御発振器で構成された発振部210に供給される発振制御電流Icco がほぼゼロ(Icco ≒0μA)の場合でも、分周部220に固定バイアス電流成分としての定常電流I_offを与えることができ、分周部220内部の動作点を安定させることができる利点がある。つまり、補助電流源(電流重畳回路258)が存在することで、補助電流(定常電流I_off)による動作マージン拡大を図ることができる。
【0097】
また、素子ばらつきによって生じる発振制御電流Icco と分周制御電流Idiv の誤差が、Icco >0μA、Idiv'=0μAという状況を引き起こし分周不良が起きること(主にIcco ≒0μAの領域において)も防ぐことができる。
【0098】
オフセット成分に関することは、オフセット電流成分に限らず、オフセット電圧成分の場合についても同様にいえる。たとえば、図3(3)に示す電圧重畳回路259が設けられていて、ループフィルタ電圧Vlfに基づく制御信号(分周制御電圧Vdiv')に定常電圧V_offを重畳する場合には、定常電圧V_offを除いた各制御信号がほぼ比例関係を持っていればよい。図示しないが、ループフィルタ電圧Vlfに基づく制御信号(発振制御電圧Vosc')に定常電圧を重畳する場合にも同様に、その定常電圧を除いた制御信号がほぼ比例関係を持っていればよい。
【0099】
つまり、分周制御電圧Vdiv'と電圧重畳回路259が持つ電圧源(図示せず)により生成されるオフセット電圧成分としての定常電圧V_offを合成(加算)した成分を分周制御電圧Vdiv として分周部220に供給する。
【0100】
この場合、電圧制御発振器で構成された発振部210に供給される発振制御電圧Vvco がほぼゼロ(Vvco ≒0V)の場合でも、分周部220に固定バイアス電圧成分としての定常電圧V_offを与えることができ、分周部220内部の動作点を安定させることができる利点がある。つまり、オフセット電流成分の場合と同様に考えればよく、補助電圧源(電圧重畳回路259)が存在することで、補助電圧(定常電圧V_off)による動作マージン拡大を図ることができる。また、素子ばらつきによって生じる発振制御電圧Vvco と分周制御電圧Vdiv の誤差が、Vvco >0V、Vdiv'=0Vという状況を引き起こし分周不良が起きること(主にVvco ≒0Vの領域において)も防ぐことができる。
【0101】
以上のことは、比例係数αとした場合、dCN_OSC/dVlf=α・dCN_DIV/dVlfという比例式で表わすことができる。比例係数αはループフィルタ電圧Vlfに依存しないものであればよく、好ましくは、適宜その値を変更可能にするのがよい(その回路構成例については後述する)。好ましくは、比例係数αがループフィルタ電圧Vlfに依存せず一定値の場合が完全なる比例関係(完全な1次関数式)であるが、α(Vlf)なる関係、つまり比例係数αもループフィルタ電圧Vlfに多少依存する場合であってもよい。
【0102】
たとえば、図3A(3)に示す第3例のように、発振制御信号CN_OSCと分周制御信号CN_DIVの何れか一方の値がループフィルタ電圧Vlfの1次関数式で表わされるのに対して、他方の値がループフィルタ電圧Vlfに対して単調増加特性を呈するものの1次関数式からずれている場合であってもよい。また、双方が双方の値がループフィルタ電圧Vlfに対して単調増加特性を呈するものの1次関数式からずれている場合であってもよい。回路構成上、理想的(原理的)には線形関係にできる場合であっても、実際には非線形となる場合でも、問題ないということである。
【0103】
発振部210が電流制御発振回路であり、分周部220の制御入力端が電流受け型の場合は、前述の式はdIcco /dVlf=α・dIdiv /dVlfに変換でき、発振部210が電圧制御発振回路であり、分周部220の制御入力端が電圧受け型の場合は、前述の式はdVcco /dVlf=α・dVdiv /dVlfに変換できる。発振部210が電流制御発振回路であり、分周部220の制御入力端が電圧受け型の場合は、前述の式はdIcco /dVlf=α・dVdiv /dVlfに変換でき、発振部210が電圧制御発振回路であり、分周部220の制御入力端が電流受け型の場合は、前述の式はdVcco /dVlf=α・dIdiv /dVlfに変換できる。
【0104】
「制御応答が予め定められた相関を持つ」ようにするための典型的な態様は、前述のように発振制御信号CN_OSCと分周制御信号CN_DIVのループフィルタ電圧Vlfに基づく値の関係が比例式で表わされることに限らず、たとえば2次以上のより高次の関数式で表わされるものでもよい。ただし、その場合、積極的にそのような高次関数式とするための回路構成が比例式とする場合よりも複雑になるので、前述の「比例関係」、つまり、発振制御信号CN_OSCと分周制御信号CN_DIVの両者の値がループフィルタ電圧Vlfの1次関数式で表わすことができるようにすることが最適といえる。
【0105】
また、分周部220の最高動作周波数Fdiv_max が、発振部210の発振周波数より大きくなるように、電圧電流変換部254およびバッファ部260の系統での全体の変換比(Gm_OSC×K_OSC)と電圧電流変換部256およびバッファ部270の系統での全体の変換比(Gm_DIV×K_DIV)を調整する。
【0106】
これは、バイアス電流によって最高動作周波数Fdiv_max が決められるような分周器を使用する位相同期ループ回路において、「分周器の最高動作周波数は発振器の任意の発振周波数Fosc を上回る」という条件を満たすことが、位相同期ループ回路として求められることに基づく。つまり、発振部210の任意の発振周波数Fosc において分周部220が動作することが必要になり、分周部220の最高動作周波Fdiv_max 、発振部210の最高発振周波数Fosc_max 、発振部210の任意の発振周波数Fosc とすると、「Fdiv_max >Fosc_max >Fosc 」を満たす必要がある。
【0107】
一方、位相同期ループ回路がロックした後は、所望のロック周波数Flockで分周部220は動作してればよく、位相同期ループ回路のロック後に状況を限定すると「Fdiv_max >Flock」を満たせてればよい。ロック後にも分周部220に最高動作周波Fdiv_max を与えるバイアス電流を流し続けるのは無駄であるといえる。
【0108】
たとえば、カメラやテレビなどの内部で用いられる高速チップ間通信には、高周波の位相同期ループ回路が使用される。高周波の位相同期ループ回路においては、発振器の発振周波数が高くなるので、それに応じて高い周波数で動作する分周器が必要となる。
【0109】
分周器はスタティック型フリップフロップで構成されるのが一般的であるが、高い周波数で動作させることが実現できない場合がある。
【0110】
そのような場合を考慮して、本実施形態の分周部220としては、インピーダンス・マッチングが容易なCML(current mode logic)型などの定常的にバイアス電流を流すタイプの分周器を用いる。
【0111】
CMLはコレクタ出力であり、通常は、その分周器のバイアス電流はある値に固定され、その値は前記の条件を満たすようにある一定以上のバイアス電流値に設定される。出力信号の電圧振幅はバイアス電流値とコレクタ側の負荷抵抗の積となり、インタフェースが極めて容易である。
【0112】
このようなタイプの分周器は、バイアス電流により分周部220の最高動作周波数を決めることができ、バイアス電流に対して最高動作周波数が単調増加していく。つまり、バイアス電流で最高動作周波数が決まる。しかしながら、このような分周器の消費電流Ipwを下げるには、バイアス電流を下げればよいが、前記の条件によって一定値以下には下げられないという制約がある。
【0113】
そのため、図3A(4)に示すように、分周器の最高動作周波数Fdiv_max は、位相同期ループ回路のロック周波数Flockよりも十分に高い値に設定されることになる。位相同期ループ回路がロックした後には、分周器は位相同期ループ回路のロック周波数Flockで動作に必要なバイアス電流以上のバイアス電流を流してしまっていることになり、ロックした以降は無駄な電流を分周器に流していることになる。「Fdiv_max >Fosc_max >Fosc 」を満たす固定のバイアス電流で分周器を動作させている限りは、ロック後の無駄な電流を削減することはできない。
【0114】
本実施形態では、この問題を解決する手法として、ループフィルタ部250からのループフィルタ電圧Vlfに基づく制御信号で、発振部210と分周部220を連動して動作させる手法を採る。
【0115】
具体的には先ず、分周部220のバイアス電流をループフィルタ電圧Vlf(に基づくループフィルタ出力電流Ilp_DIV、ループフィルタ出力電圧Vlp_DIV)に基づいて動的に変化させる。
【0116】
ここで、本実施形態の位相同期ループ回路では、発振制御信号CN_OSCに基づく発振部210の発振周波数Fosc の変化に伴い、分周部220に流れるバイアス電流をループフィルタ電圧Vlfに基づく分周制御信号CN_DIVで制御することで、分周部220の最高動作周波Fdiv_max を変化させる。
【0117】
図3A(5)に示すように、ループフィルタ電圧Vlfに基づく発振制御信号CN_OSCによる発振部210の動作と連動して、分周部220も、ループフィルタ電圧Vlfに基づく分周制御信号CN_DIVで制御することで、発振部210の発振周波数Fosc と分周部220のバイアス電流(つまり消費電力)を変化させる。
【0118】
発振部210と分周部220を同じループフィルタ電圧Vlfに基づく各制御信号(発振制御信号CN_OSC、分周制御信号CN_DIV)で制御したとき、引込み過程およびロック時の双方における任意のループフィルタ電圧Vlfに対応する分周部220の最高動作周波数Fdiv_max が発振部210の発振周波数Fosc より高くなるように、各制御信号の関係を設定する。
【0119】
発振部210の最高発振周波数Fosc_max を与えるループフィルタ電圧Vlfmax と対応する分周部220の最高動作周波数Fdiv_max を与える分周制御信号CN_DIVを分周制御信号CN_DIV_maxとする。位相同期ループ回路がロック時のループフィルタ電圧Vlflockに対応する分周制御信号CN_DIVを分周制御信号CN_DIV_lock とする。
【0120】
このような手法を採ると、引込み過程およびロック時の双方において、ループフィルタ部250からのループフィルタ電圧Vlfに基づく制御信号で、発振部210と分周部220が連動して動作することになる。
【0121】
位相同期ループ回路が一定のロック周波数Flockにロックした後は、ロック時のループフィルタ電圧Vlfに対応する分周制御信号CN_DIV_lock で分周部220が制御される。「分周制御信号CN_DIV_max>分周制御信号CN_DIV_lock 」であるから、分周部220の最高動作周波数Fdiv_max をロック周波数Flockより大きくするという条件を満たしつつ、分周部220に流れるバイアス電流を一定の量に抑えることができ、消費電流の低減(省消費電力化)を実現できる。ロック時の分周部220の消費電流Ipwは、分周制御信号CN_DIV_lock に対応したIpwlockとなり、本実施形態を適用しない場合よりも省消費電力化を実現できる。
【0122】
たとえば、位相同期ループ回路におけるロック過程では、発振部210の発振周波数Fosc は動的に変化し、ロック周波数Flockより高い発振周波数の状態も存在する。
【0123】
ここで、本実施形態の位相同期ループ回路では、発振部210の発振周波数Fosc の変化に伴い、分周部220に流れるバイアス電流をループフィルタ電圧Vlfに基づく制御信号(分周制御信号CN_DIV)で制御することで、分周部220の最高動作周波Fdiv_max を変化させる。
【0124】
ループフィルタ電圧Vlfに対応する分周部220の最高動作周波数Fdiv_max が発振部210の発振周波数Fosc より高くなるように各制御信号の関係が設定されているから、引込み過程およびロック時の双方において、ループフィルタ電圧Vlfに基づく制御信号で、発振部210と分周部220が不都合なく連動して動作する。したがって、位相同期ループ回路が一定のロック周波数Flockにロックした後は、分周部220の最高動作周波数Fdiv_max をロック周波数Flockより大きくするという条件を満たしつつ、分周部220に流れるバイアス電流を一定の量に抑えることができ、消費電流の低減(省消費電力化)を実現できる。
【0125】
ループフィルタ電圧Vlfに発振部210の発振周波数Fosc と分周部220の最高動作周波数Fdiv_max が連動するような手法を採り、かつ、任意のループフィルタ電圧Vlfにて常に「Fdiv_max >Fosc 」を満たしていれば、分周部220が問題なく動作する。
【0126】
分周制御信号CN_DIVが大きくなると分周部220の消費電流Ipwが増えるような構成にすると、所望の周波数に位相同期ループ回路がロックした後は、分周部220の消費電流Ipwを抑えることができるのである。
【0127】
以下、発振部210と分周部220がともに電流型、つまり、発振部210が電流制御発振回路であり、分周部220の制御入力端が電流受け型である場合を例にして、具体的に説明する。
【0128】
<電圧電流変換部:第1例>
図4および図4Aは、電圧電流変換部254および電圧電流変換部256(纏めて電圧電流変換回路253と称する)の第1例を説明する図である。
【0129】
第1例の電圧電流変換回路253Aは、電圧電流変換回路253の基本構成といえるものである。電圧電流変換部254と電圧電流変換部256の関係は、dIcco /dVlf=α・dIdiv /dVlfを満たすように、分周部220の分周制御電流Idiv が発振部210の発振制御電流Icco に比例するように、つまり「Icco =α・Idiv 」を満たすようにする。
【0130】
このような関係を満たすようにするには、たとえば、いわゆる電流コピーの仕組みを採るのが最も簡易であるといえる。電流コピーの仕組みとするためのトランジスタとしては、N型、P型の何れをも採用し得る。回路構成としては種々のものが考えられるが、どのようなものであっても、ループフィルタ電圧Vlfに基づいて電流を生成する電流源部として機能すると考えてよい。
【0131】
たとえば、図4(1−1)に示す例はNMOS出力段とする例であり、電圧電流変換部254として1つのNMOS1(第1のN型のMOSトランジスタ)が使用され、電圧電流変換部256として1つのNMOS2(第2のN型のMOSトランジスタ)が使用されている。NMOS1を発振制御電流Icco 用のメイン(Main)出力段と称し、NMOS2を分周制御電流Idiv 用のレプリカ(Replica )出力段と称する。NMOS1およびNMOS2は、ゲートには共通にループフィルタ電圧Vlfが供給され、ソースが基準電位に接続(たとえば接地)され、ドレインが各制御電流の出力端となる。
【0132】
図4(1−2)に示す例はPMOS出力段とする例であり、電圧電流変換部254として1つのPMOS1(第1のP型のMOSトランジスタ)が使用され、電圧電流変換部256として1つのPMOS2(第2のP型のMOSトランジスタ)が使用されている。PMOS1を発振制御電流Icco 用のメイン(Main)出力段と称し、PMOS2を分周制御電流Idiv 用のレプリカ(Replica )出力段と称する。PMOS1およびPMOS2は、ゲートには共通にループフィルタ電圧Vlfが供給され、ソースが電源に接続され、ドレインが各制御電流の出力端となる。
【0133】
何れの構成も、見方を変えると、電圧電流変換部254と電圧電流変換部256の本体は同一(カレントミラー構成)で、それぞれ制御電流に対応した「出力段を複数持つ」という構成であるともいえる。
【0134】
なお、NMOS1やPMOS1のドレインおよびNMOS2やPMOS2のドレインには、電流方向の折返し対応のため、図4(2−1)や図4(2−2)に示すように、カレントミラー構成のトランジスタ対が設けられることもある。こうすることで、図4(1−1)のNMOS出力段はPMOS出力段に変更でき、また、図4(1−2)のPMOS出力段はNMOS出力段に変更できる。
【0135】
第1例の電圧電流変換回路253Aの場合、NMOSやPMOSのVgs−Ids特性を利用して電圧電流変換を行なうことになる。このような構成では、先端プロセスのロジック用低電圧でも動作可能であるし、構造がシンプルなため、小面積で実装可能となる利点がある。
【0136】
第1例の電圧電流変換回路253Aにおいては、NMOS1とNMOS2のカレントミラー比(NMOS2の電流/NMOS1の電流)やPMOS1とPMOS2のカレントミラー比(PMOS2の電流/PMOS1の電流)が比例係数αと対応するようにする。カレントミラー比は、トランジスタのフィンガーの数(フィンガー比)またはトランジスタの個数(マルチ比)、あるいはトランジスタのサイズ(サイズ比)で設定できる。
【0137】
たとえば、図4(3)は、図4(1−1)の詳細構成例を示す図である。NMOS1は、M個(MはNMOS1のフィンガー数)のNMOSの単素子の集合体で構成され、NMOS2は、N個(NはNMOS2のフィンガー数)のNMOSの単素子の集合体で構成されている。カレントミラー比はN/MでありIdiv =(N/M)・Icco となる。したがって、比例係数α=Icco /Idiv =M/Nとなるようにすればよい。
【0138】
図2Aに示した電流制御発振回路(発振部210)および図2Bに示した分周部220との関係では、たとえば図4Aに示すように、図4(1−1)に示すNMOS1,NMOS2がそれぞれの電流源Is1、電流源Is2として使用することができる。また図示しないが、トランジスタ対による折返し対応を備えた図4(2−2)に示す構成のものをそれぞれの電流源Is1、電流源Is2として使用することもできる。
【0139】
比例係数αは、分周部220の最高動作周波数Fdiv_max が発振部210の電流制御発振器の発振周波数Fcco より大きくなるように調整する必要がある。このとき、電流制御発振器の発振制御電流Icco や分周制御電流Idiv に対する、分周部220の最高動作周波数Fdiv_max と電流制御発振器の発振周波数Fcco は図4(4)に示すような関係になる。
【0140】
この例においては、発振部210の電流制御発振器の発振周波数Fcco と分周部220の最高動作周波数Fdiv_max が、発振制御電流Icco (=α・Idiv )、つまりその大元となるループフィルタ電圧Vlfにほぼ比例して増加している。加えて、「Fdiv_max >Fcco 」という分周部220の動作条件を満たしているし、分周部220の消費電流Ipwは分周制御電流Idiv (つまり、発振制御電流Icco やループフィルタ電圧Vlf)にほぼ比例して増加している。
【0141】
ここで、位相同期ループ回路のロック過程では電流制御発振器の発振周波数Fcco は動的に変化し、ロック周波数Flockより高い発振周波数の状態も存在する。
【0142】
本実施形態の位相同期ループ回路は、電流制御発振器の発振周波数Fcco の変化に伴い、分周部220に流れるバイアス電流を制御することで、分周部220の最高動作周波数Fdiv_max を変化させる。「Icco =α・Idiv 」を満たすようにする比例係数αの前述の調整により、任意のループフィルタ電圧Vlfにおいて、分周部220の最高動作周波数Fdiv_max が電流制御発振器の発振周波数Fcco より高くなるように調整されている。
【0143】
位相同期ループ回路が所望の一定のロック周波数Flockにロックした後は、分周部220の最高動作周波数Fdiv_max をロック周波数Flockより大きくするという条件を満たしつつ、分周部220に流れるバイアス電流をロック時のループフィルタ電圧Vlfに対応する一定の量に設定でき、分周部220の消費電流の低減を実現することができる。
【0144】
電圧信号で発振部210や分周部220を制御する場合、演算増幅回路などを必要とすることが考えられ、その場合、電圧電流変換回路253用の電源電圧としてある程度のものが必要になる。これに対して、この第1例のように電流信号で発振部210や分周部220を制御すると、図からも明らかなように電源電圧の制約を殆ど受けず、低電圧プロセスでの適用に好適である。
【0145】
<電圧電流変換部:第2例>
図5は、電圧電流変換回路253(電圧電流変換部254および電圧電流変換部256)の第2例を説明する図である。図5(1)は図4(1−1)や図4(2−1)に対する変形例であり、図5(2)は図4(1−2)や図4(2−2)に対する変形例である。
【0146】
第2例の電圧電流変換回路253Bは、ソース帰還(Source Degeneration )を利用することで電圧電流変換特性のばらつき第1例よりも低減できるようにしたものである。
【0147】
たとえば、図5(1)に示す例はPMOS出力段とする例であり、NMOS1のソースが抵抗素子Rを介して基準電位に接続(たとえば接地)されている。NMOS1のドレインには、PMOS2、PMOS3、PMOS4が、PMOS2に対してPMOS3とPMOS4がカレントミラー接続となるように設けられている。すなわち、NMOS1のドレインが、PMOS2のゲートおよびドレインと接続されるとともに、PMOS3およびPMOS4のゲートとも接続されている。たとえば、PMOS3を発振制御電流Icco 用のメイン出力段として機能させ、PMOS4を分周制御電流Idiv 用のレプリカ出力段として機能させる。
【0148】
なお、PMOS3とPMOS4のドレインに、電流方向の折返し対応のため、NMOSを使用したカレントミラー構成のトランジスタ対を設けることで、PMOS出力段はNMOS出力段に変更できる。
【0149】
図5(2)に示す例はNMOS出力段とする例であり、PMOS1のソースが抵抗素子Rを介して電源に接続されている。PMOS1のドレインには、NMOS2、NMOS3、NMOS4が、NMOS2に対してNMOS3とNMOS4がカレントミラー接続となるように設けられている。すなわち、PMOS1のドレインが、NMOS2のゲートおよびドレインと接続されるとともに、NMOS3およびNMOS4のゲートとも接続されている。たとえば、NMOS3を発振制御電流Icco 用のメイン出力段として機能させ、NMOS4を分周制御電流Idiv 用のレプリカ出力段として機能させる。
【0150】
なお、NMOS3とNMOS4のドレインに、電流方向の折返し対応のため、PMOSを使用したカレントミラー構成のトランジスタ対を設けることで、NMOS出力段はPMOS出力段に変更できる。
【0151】
NMOS1やPMOS1は、ループフィルタ電圧Vlfに基づいてソース帰還により電流Is_0を生成する電流源部として機能する。
【0152】
第2例の電圧電流変換回路253Bは、図5(1)および図5(2)の何れの構成も、NMOS1やPMOS1のソースに抵抗素子Rを接続しソース帰還による電圧電流変換を行なう。このような構成では、電圧電流変換特性が「1/抵抗素子Rの抵抗値Rs」に近くなるため、電圧電流変換特性のばらつきが小さくなり、位相同期ループ回路の設計としが容易になるケースがある。ただし、第1例と比べると、低電圧プロセスでの実現が難しくなるし、また、素子数が多くなるので、必要な面積、電力も増加する。
【0153】
<電圧電流変換部:第3例>
図6は、電圧電流変換回路253(電圧電流変換部254および電圧電流変換部256)の第3例を説明する図である。図6(1)は図5(1)に対する変形例であり、図6(2)は図5(2)に対する変形例である。
【0154】
第3例の電圧電流変換回路253Cは、ソース帰還を利用した第2例をベースに、増幅回路によるフィードバック機構を追加することで、電圧電流変換特性の線形性やダイナミックレンジの拡大を図るようにしたものである。
【0155】
たとえば、図6(1)に示す例は、NMOS1と抵抗素子Rとの接続点を電圧増幅回路AMPの反転入力端に接続し、電圧増幅回路AMPの出力端をNMOS1のゲートに接続している。電圧増幅回路AMPの非反転入力端にはループフィルタ電圧Vlfを供給する。図6(2)に示す例は、PMOS1と抵抗素子Rとの接続点を電圧増幅回路AMPの反転入力端に接続し、電圧増幅回路AMPの出力端をPMOS1のゲートに接続している。電圧増幅回路AMPの非反転入力端にはループフィルタ電圧Vlfを供給する。
【0156】
電圧増幅回路AMPは、ループフィルタ電圧VlfとNMOS1やPMOS1により生成される電流Is_0と抵抗素子Rの抵抗値Rsの積で表わされるソース電位(帰還電圧)とを比較してフィードバック動作する。
【0157】
第3例の電圧電流変換回路253Cは、図6(1)および図6(2)の何れの構成も、NMOS1やPMOS1により生成される電流Is_0が「ループフィルタ電圧Vlf/抵抗素子Rの抵抗値Rs」となるように電圧増幅回路AMPによる帰還作用が働く。そのため、電圧電流変換のダイナミックレンジが広く取れるし、変換係数の線形性が非常に良くなる。ただし、第1例や第2例と比べると、低電圧プロセスでの実現が難しくなるし、また、素子数が多くなるので、必要な面積、電力も増加する。
【0158】
<電圧電流変換部:第4例>
図7は、電圧電流変換回路253(電圧電流変換部254および電圧電流変換部256)の第4例を説明する図である。図7(1)は、その機能ブロック図であり、図7(2)は、詳細構成例である。
【0159】
第4例の電圧電流変換回路253Dは、第1例をベースに、電圧電流変換部256側のNMOS2(あるいはPMPOS2:以下NMOS2で説明する)を複数(X個)にした変形例である。個数Xは、任意の整数に設定すればよい。なお、ここでは第1例をベースに示すが、基本構成は第2例や第3例であってもよい。
【0160】
第4例の電圧電流変換回路253Dでは、X個のNMOS2の出力を加算することができる。Idiv =(N・X/M)・Icco となり、比例係数α=M/(N・X)である。Xの最小値は1であり、その場合は、実質的に第1例と同一となる。この第4例は、第1例と同様に比例係数αを適宜変更することはできないが、同一構成のNMOS2の個数を予め設定して製造することで、比例係数αを所望の値に設定できる利点がある。
【0161】
[電圧電流変換部:第1例+第4例]
図示しないが、第1例と第4例を組み合わせることで、比例係数αを細かに設定できるようになる。たとえば、フィンガー数NのNMOS2をX個使用するとともに、フィンガー数n(n<N)のNMOS2を1個併用することで、比例係数α=M{1/(N・X)+1/n}に設定できる。
【0162】
<電圧電流変換部:第5例>
図8は、電圧電流変換回路253(電圧電流変換部254および電圧電流変換部256)の第5例を説明する図である。
【0163】
第5例の電圧電流変換回路253Eは、比例係数αを適宜変更できるようにする構成例である。特に第5例では、第1例をベースに、電圧電流変換部256側のNMOS2(あるいはPMPOS2:以下NMOS2で説明する)を構成するN個の単素子のドレイン側と分周部220の制御入力端との間に選択用のスイッチSW_1〜SW_Nを設け、実際の使用の場面において、オンさせるスイッチの数nを調整することで比例係数αを調整するようにしている。スイッチSW_1〜SW_Nとしては、アナログスイッチ(たとえばトランスファーゲート構成のもの)を使用する。nはたとえばデジタルコードにより任意の整数に設定すればよい。なお、ここでは第1例をベースに示すが、基本構成は第2例や第3例であってもよい。
【0164】
第5例の電圧電流変換回路253Eでは、NMOS2を構成するN個の単素子の出力をスイッチSW_1〜SW_Nを用いて加算することができる。Idiv =(n/M)・Icco となり、比例係数α=M/nであり、「n=1〜N」の範囲で比例係数αを調整できる。nの最大値はNであり、その場合は、実質的に第1例と同一となる。
【0165】
図示しないが、電圧電流変換部254側のNMOS1(あるいはPMPOS1:以下NMOS1で説明する)を構成するM個の単素子のドレイン側と発振部210の電流制御発振器の制御入力端との間に選択用のスイッチSW_1〜SW_Mを設け、実際の使用の場面において、オンさせるスイッチの数mを調整することで比例係数αを調整するようにしてもよい。この場合、Idiv =(N/m)・Icco となり、比例係数α=m/Nであり、「m=1〜M」の範囲で比例係数αを調整できる。
【0166】
<電圧電流変換部:第6例>
図9は、電圧電流変換回路253(電圧電流変換部254および電圧電流変換部256)の第6例を説明する図である。図9(1)は、その機能ブロック図であり、図9(2)は、詳細構成例である。
【0167】
第6例の電圧電流変換回路253Fは、第5例と同様に比例係数αを適宜変更できるようにする構成例である。特に第6例では、第1例をベースに、電圧電流変換部256側のNMOS2(あるいはPMPOS2:以下NMOS2で説明する)を複数(X個)にし、NMOS2_1〜NMOS2_Xの各ドレインと分周部220の制御入力端との間に選択用のスイッチSW_1〜SW_Xを設け、実際の使用の場面において、オンさせるスイッチの数xを調整することで比例係数αを調整するようにしている。スイッチSW_1〜SW_Xとしては、アナログスイッチ(たとえばトランスファーゲート構成のもの)を使用する。xはたとえばデジタルコードにより任意の整数に設定すればよい。
【0168】
第6例の電圧電流変換回路253Fでは、X個のNMOS2の出力をスイッチSW_1〜SW_Xを用いて加算することができる。Idiv =(N・x/M)・Icco となり、比例係数α=M/(N・x)であり、「x=1〜X」の範囲で比例係数αを調整できる。Xの最小値は1であり、その場合は、スイッチが不要になり実質的に第1例と同一となる。
【0169】
図示しないが、電圧電流変換部254側のNMOS1(あるいはPMPOS1:以下NMOS1で説明する)を複数(X個)にし、NMOS1_1〜NMOS1_Xの各ドレインと発振部210の電流制御発振器の制御入力端との間に選択用のスイッチSW_1〜SW_Xを設け、実際の使用の場面において、オンさせるスイッチの数xを調整することで比例係数αを調整するようにしてもよい。この場合、Idiv =(N/M・x)・Icco となり、比例係数α=(M・x)/Nであり、「x=1〜X」の範囲で比例係数αを調整できる。Xの最小値は1であり、その場合は、スイッチが不要になり実質的に第1例と同一となる。
【0170】
ここで、比例係数αの調整に対処できる第5例と第6例を比べた場合、1つのNMOS2やPMOS2(あるいはNMOS1やPMOS1)で比例係数αの調整に対処できる点では第5例の方が第6例よりも回路規模が小さくてすむ。ただし、通常のデバイス構成に対して、選択用のスイッチSW_1〜SW_n(あるいはスイッチSW_1〜SW_m)への引出し配線の対処の変更が必要になる。一方、第6例は、NMOS2やPMOS2(あるいはNMOS1やPMOS1)の個数が増えるので回路規模が大きくなるが、通常のデバイス構成のものをそのまま使用して、同一構成のNMOSやPMOSの個数の調整により比例係数αを所望の値に設定できる利点がある。
【0171】
<比較例との対比>
特許文献1には、位相同期ループ回路の動作状態を正確に判定することができ、かつ低消費電力を図るようにした仕組みが提案されている。しかしながら、特許文献1では、位相同期ループ回路の動作状態を正確に判定するために、アナログ/デジタル変換器、メモリ回路、および判定回路を必要としている。
【0172】
これに対して、本実施形態の仕組みでは、アナログ/デジタル変換器、メモリ回路、および判定回路を必要とせず、特許文献1の仕組みよりも、信号処理系統が簡易であり、発振器を制御する発振制御信号と分周器を制御する分周制御信号との間に制御応答にズレが生じる可能性を軽減できるし、回路構成を大幅に削減できる。
【0173】
たとえば、本実施形態の仕組みでは、アナログ/デジタル変換器が不要となるので、次の点で特許文献1の仕組みに対して優位性がある。
1)低電圧プロセスでは、一般的に、精度の良いアナログ/デジタル変換器の設計が困難である。アナログ/デジタル変換器の構成にもよるが、変換のサンプリングに伴うキックバックノイズが発振周波数変動を引き起こすことがあり、いわゆるジッタが大きくなる。これに対して、本実施形態では、アナログ/デジタル変換器を使用しなくて済むので、ジッタを無視あるいは小さくできる。
2)アナログ/デジタル変換器が不要となるので、実装面積や消費電力を大幅に減らすことができる。
【0174】
また、温度や電圧の変化に対して、以下の理由で特許文献1の仕組みには難点がある。1)特許文献1の仕組みでは、予め決められたループフィルタ電圧の範囲を元に帰還分周器の電流を決めるが、ループフィルタ電圧に対する発振回路の発振振周波数のばらつき、アナログ/デジタル変換器、デジタル/アナログ変換器のオフセットなどの影響を加味した甘い値に設定しておかなければならない。このことは、帰還分周器のバイアス制御が大雑把になることを意味する。仮に設定値を攻めると誤動作し易くなる。
2)アナログ/デジタル変換器を使用して処理するため、一定のレイテンシ(Latency )の処理時間が必要となり、発振器系と帰還分周器系の制御応答にズレが発生してしまう。アナログ/デジタル変換器を使用する場合、離散時間での動作のため変換クロック周期の間の変動についていくことができない。このことは、周波数が大きく変わるロック過程で最適な制御ができないということに繋がる。
【0175】
また、特許文献1の仕組みと本実施形態の仕組みとでは、次の点でも相違がある。
1)特許文献1の仕組みは、「ある閾値で状態判定」を行なうことの目的達成のための手段としているが、本実施形態の仕組みは、動的(かつ連続時間的)に最適な動作状態(バイアス電流値)に追従することができるようにするものである。
2)特許文献1の仕組みは、アナログ信号(ループフィルタ電圧)→アナログ/デジタル変換→判定→デジタル/アナログ変換(電流制御回路)→バイアス電流という調整機構を持っている。判定自体はデジタル的なので簡単である。しかしながら、その周辺にアナログ/デジタル変換器やデジタル/アナログ変換器が必要となるため、その変換過程の誤差が累積する。変換誤差を小さくするためには電流値の増加も必要となるため、本来の低消費電力化の目的に合致しない。
【0176】
これに対して、本実施形態の仕組みは、分周部220を制御する分周制御信号CN_DIVを生成する分周器制御部257に必要とされる消費電流は特許文献1と比べた場合殆どないといってよい。たとえば、第6例の電圧電流変換回路253Fの場合、N・x/Mで分周制御電流Idiv を調整可能であるため、省消費電力という本来の目的に対する負担が極めて小さい。
【0177】
また、特許文献1の仕組みでは、実施の形態4において、帰還分周器における消費電力を低減する仕組みが提案されている。しかしながら、その手法は、電流制御回路51を使用し、外部からの動作モードの指示信号に基づいて帰還分周回路の駆動電流を制御するというものであり、本実施形態の仕組みとは全く異なる。
【0178】
本実施形態の仕組みは、引込み過程およびロック時の双方において、ループフィルタ部250からのループフィルタ電圧Vlfに基づく制御信号で、発振部210と分周部220が連動して動作するから、位相同期ループ回路が所望の周波数にロックしたときには自動的にロック時の電流(Fosc_max時よりも少ない)に自動的に設定されるから、外部からの動作モードの指示信号に基づいて分周部220の駆動電流を制御する必要はない。
【0179】
因みに、本実施形態の仕組みは、特許文献1とは異なり「位相同期ループ回路の動作状態を正確に判定する」という目的のものではなく、そのための機構を備えていないので、動作領域の判定はできない。
【0180】
<電子機器への適用例>
図10は、前述した実施形態で説明したタイミング生成回路100(特に発振部210、分周部220、電圧電流変換回路253)が適用される電子機器の一例を説明する図である。
【0181】
前述した実施形態で説明した位相同期ループ回路を利用した基準タイミング生成部110としては、先端プロセスが必要かつ省消費電力が求められる、たとえばポータブル機器用のLSI(Large Scale Integrated Circuit:大規模集積回路)に搭載するPLLとして有効である。もちろん、ポータブル機器に限定されないのは言うまでもない。
【0182】
バイアス電流が必要な分周器は主にロック周波数が高い場合に用いられることから、高速のデータインタフェースを行なうPCI Express,シリアルATA(SATA、Serial Advanced Technology Attachment )、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)用のDDR2,DDR3などに好適であると考えられる。
【0183】
たとえば、ゲーム機、電子ブック、電子辞書、携帯電話機などのポータブル機器やポータブル機器に限らず画像表示装置などの各種の電子機器において、高速のデータ転送が要求される場合に、前記実施形態で説明した発振部210、分周部220、電圧電流変換回路253を適用することが考えられる。
【0184】
たとえば、図10(1)は、電子機器900が、画像表示装置の一例である表示モジュール904(液晶表示装置や有機EL表示装置)を利用したテレビジョン受像機902の場合の外観例を示す図である。テレビジョン受像機902は、台座906に支持されたフロントパネル903の正面に表示モジュール904を配置した構造となっており、表示面にはフィルターガラス905が設けられている。このテレビジョン受像機902には、図示しないSDRAM(DDR2仕様やDDR3仕様)が使用されており、そのデータインタフェース用のクロックの生成に前述した実施形態の仕組みが適用される。加えて、テレビジョン受像機902は、録画機能用として、シリアルATA方式のハードディスク装置908を着脱可能に構成されており、ハードディスク装置908のデータインタフェース用のクロックの生成に前述した実施形態の仕組みが適用される。
【0185】
図10(2)は、電子機器900がデジタルカメラ912の場合の外観例を示す図である。デジタルカメラ912は、表示モジュール914、コントロールスイッチ916、シャッターボタン917、その他を含んでいる。デジタルカメラ912にはメモリカード918を着脱可能に構成されており、メモリカード918のデータインタフェース用のクロックの生成に前述した実施形態の仕組みが適用される。
【0186】
図10(3)は、電子機器900がビデオカメラ922の場合の外観例を示す図である。ビデオカメラ922は、本体923の前方に被写体を撮像する撮像レンズ925が設けられ、さらに、表示モジュール924や撮影のスタート/ストップスイッチ926などが配置されている。ビデオカメラ922にはシリアルATA方式のハードディスク装置928を着脱可能に構成されており、ハードディスク装置928のデータインタフェース用のクロックの生成に前述した実施形態の仕組みが適用される。
【0187】
図10(4)は、電子機器900が携帯電話機932の場合の外観例を示す図である。携帯電話機932は、折り畳み式であり、上側筐体933a、下側筐体933b、表示モジュール934、連結部936(この例ではヒンジ部)などを含んでいる。携帯電話機932にはメモリカード938を着脱可能に構成されており、メモリカード938のデータインタフェース用のクロックの生成に前述した実施形態の仕組みが適用される。
【0188】
図10(5)は、電子機器900がコンピュータ942の場合の外観例を示す図である。コンピュータ942は、下型筐体943a、上側筐体943b、表示モジュール944、キーボード946などを含んでいる。コンピュータ942は、バスがPCI Express仕様であり、また、図示しないSDRAM(DDR2仕様やDDR3仕様)やシリアルATA方式のハードディスク装置が使用されており、SDRAMやハードディスク装置のデータインタフェース用のクロックの生成に前述した実施形態の仕組みが適用される。また、コンピュータ942には各種仕様の可搬型の記憶媒体948(たとえばUSBメモリ)を着脱可能に構成されており、記憶媒体948のデータインタフェース用のクロックの生成に前述した実施形態の仕組みが適用される。
【0189】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0190】
また、前記の実施形態は、クレーム(請求項)に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の発明を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0191】
100…タイミング生成回路、110…基準タイミング生成部、140…信号処理部、210…発振部、220…分周部、230…位相周波数比較部、240…チャージポンプ部、250…ループフィルタ部、252…フィルタ回路、253…電圧電流変換回路、254,256…電圧電流変換部、255…発振器制御系統、257…分周器制御系統、258…電流重畳回路、259…電圧重畳回路、260,270…バッファ部、900…電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの基準クロック信号と比較クロック信号の位相を比較し、比較結果に応じた誤差信号を生成する位相周波数比較部と、
前記誤差信号に応じた発振周波数の内部クロック信号を生成する発振部と、
前記内部クロック信号を予め定められた分周比で分周して前記比較クロック信号を生成する分周部と、
前記誤差信号に基づいて前記発振部から出力される前記内部クロック信号の周波数を制御するための発振制御信号を生成する発振器制御部と、
前記誤差信号に基づいて前記分周部のバイアス電流を制御するための分周制御信号を生成する分周器制御部と、
を備え、
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、前記発振制御信号と前記分周制御信号が、引込み過程およびロック時の双方において、前記誤差信号に基づいて予め定められた関係を持って応答するように構成されている
位相同期ループ回路。
【請求項2】
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、前記発振制御信号と前記分周制御信号の前記誤差信号に基づく制御応答が、引込み過程およびロック時の双方において、予め定められた相関を持つように構成されている
請求項1に記載の位相同期ループ回路。
【請求項3】
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、前記発振制御信号と前記分周制御信号の前記誤差信号に基づく制御応答が、引込み過程およびロック時の双方において、線形関係を持つように構成されている
請求項2に記載の位相同期ループ回路。
【請求項4】
外部からの基準クロック信号と比較クロック信号の位相を比較し、比較結果に応じた誤差信号を生成する位相周波数比較部と、
前記誤差信号に応じた発振周波数の内部クロック信号を生成する発振部と、
前記内部クロック信号を予め定められた分周比で分周して前記比較クロック信号を生成する分周部と、
前記誤差信号に基づいて前記発振部から出力される前記内部クロック信号の周波数を制御するための発振制御信号を生成する発振器制御部と、
前記誤差信号に基づいて前記分周部のバイアス電流を制御するための分周制御信号を生成する分周器制御部と、
を備え、
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、引込み過程およびロック時の双方において、前記誤差信号に基づいて、前記発振部と前記分周部が連動した動作をするように構成されている
位相同期ループ回路。
【請求項5】
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、引込み過程およびロック時の双方における任意の前記誤差信号の値に対応する前記分周部の最高動作周波数が前記発振部から出力される前記内部クロック信号の周波数よりも常に高くなるように、各制御信号の関係を設定する
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の位相同期ループ回路。
【請求項6】
前記分周器制御部は、ロック時の前記分周制御信号が、引込み過程における前記発振部から出力される前記内部クロック信号の最高周波数と対応する前記誤差信号に基づくバイアス電流よりも小さなバイアス電流を前記分周部に設定するように構成されている
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の位相同期ループ回路。
【請求項7】
前記発振部は、電流モードの前記発振制御信号に基づいて動作するように構成されており、
前記分周部は、電流モードの前記分周制御信号に基づいて動作するように構成されており、
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、前記誤差信号に基づいて、電流コピー動作により、電流モードの各制御信号を生成するように構成されている
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の位相同期ループ回路。
【請求項8】
前記誤差信号に基づいてソース帰還により電流信号を生成する電流源部を備え、
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、前記電流源部により生成された電流信号に基づいて、電流コピー動作により、電流モードの各制御信号を生成するように構成されている
請求項7に記載の位相同期ループ回路。
【請求項9】
前記電流源部は、前記誤差信号と生成した前記電流信号とを比較してフィードバック動作するように構成されている
請求項8に記載の位相同期ループ回路。
【請求項10】
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、前記誤差信号に基づいて電流を生成する電流源部を有し、
前記発振器制御部と前記分周器制御部の少なくとも一方は、同一構成の前記電流源部を複数備え、各電流源部で生成される電流信号の組合せにより前記制御信号とするように構成されている
請求項7〜請求項9の何れか一項に記載の位相同期ループ回路。
【請求項11】
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、前記誤差信号に基づいて電流を生成するトランジスタ素子を有し、
前記発振器制御部と前記分周器制御部の少なくとも一方は、
前記トランジスタ素子の各フィンガーと接続されたスイッチを備え、
前記スイッチの前記フィンガーと反対側が共通に接続され、この接続点側の電流を前記制御信号とするように構成されており、
オンするスイッチの数の調整により前記制御信号の大きさが調整可能に構成されている
請求項7〜請求項9の何れか一項に記載の位相同期ループ回路。
【請求項12】
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、前記誤差信号に基づいて電流を生成する電流源部を有し、
前記発振器制御部と前記分周器制御部の少なくとも一方は、
同一構成の前記電流源部を複数備え、
各電流源部の出力と接続されたスイッチを備え、
前記スイッチの前記電流源部と反対側が共通に接続され、この接続点側の電流を前記制御信号とするように構成されており、
オンするスイッチの数の調整により前記制御信号の大きさが調整可能に構成されている
請求項7〜請求項9の何れか一項に記載の位相同期ループ回路。
【請求項13】
外部からの基準クロック信号と比較クロック信号の位相を比較し、比較結果に応じた誤差信号を生成する位相周波数比較部、前記誤差信号に応じた発振周波数の内部クロック信号を生成する発振部、前記内部クロック信号を予め定められた分周比で分周して前記比較クロック信号を生成する分周部、前記誤差信号に基づいて前記発振部から出力される前記内部クロック信号の周波数を制御するための発振制御信号を生成する発振器制御部、前記誤差信号に基づいて前記分周部のバイアス電流を制御するための分周制御信号を生成する分周器制御部と、
前記内部クロック信号に基づいて動作する信号処理部と、
を備え、
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、
前記発振制御信号と前記分周制御信号が、引込み過程およびロック時の双方において、前記誤差信号に基づいて予め定められた関係を持って応答するように構成されている、または、
引込み過程およびロック時の双方において、前記誤差信号に基づいて前記発振部と前記分周部が連動した動作をするように構成されている
半導体集積回路。
【請求項14】
外部からの基準クロック信号と比較クロック信号の位相を比較し、比較結果に応じた誤差信号を生成する位相周波数比較部、前記誤差信号に応じた発振周波数の内部クロック信号を生成する発振部、前記内部クロック信号を予め定められた分周比で分周して前記比較クロック信号を生成する分周部、前記誤差信号に基づいて前記発振部から出力される前記内部クロック信号の周波数を制御するための発振制御信号を生成する発振器制御部、前記誤差信号に基づいて前記分周部のバイアス電流を制御するための分周制御信号を生成する分周器制御部と、
前記内部クロック信号に基づいて動作する信号処理部と、
を備え、
前記発振器制御部と前記分周器制御部は、
前記発振制御信号と前記分周制御信号が、引込み過程およびロック時の双方において、前記誤差信号に基づいて予め定められた関係を持って応答するように構成されている、または、
引込み過程およびロック時の双方において、前記誤差信号に基づいて前記発振部と前記分周部が連動した動作をするように構成されている
電子機器。
【請求項15】
外部からの基準クロック信号と比較クロック信号の位相を比較し、比較結果に応じた誤差信号を生成する工程と、
前記誤差信号に応じた発振周波数の内部クロック信号を生成する工程と、
前記内部クロック信号を予め定められた分周比で分周して前記比較クロック信号を生成する工程と、
前記誤差信号に基づいて前記内部クロック信号の周波数を制御するための発振制御信号を生成する工程と、
前誤差信号に基づいて前記分周を行なう回路のバイアス電流を制御するための分周制御信号を生成する工程と、
を備え、
前記発振制御信号と前記分周制御信号を、引込み過程およびロック時の双方において、前記誤差信号に基づいて予め定められた関係を持って応答させる
位相同期ループ回路の制御方法。
【請求項16】
外部からの基準クロック信号と比較クロック信号の位相を比較し、比較結果に応じた誤差信号を生成する工程と、
前記誤差信号に応じた発振周波数の内部クロック信号を生成する工程と、
前記内部クロック信号を予め定められた分周比で分周して前記比較クロック信号を生成する工程と、
前記誤差信号に基づいて前記内部クロック信号の周波数を制御するための発振制御信号を生成する工程と、
前記誤差信号に基づいて前記分周を行なう回路のバイアス電流を制御するための分周制御信号を生成する工程と、
を備え、
引込み過程およびロック時の双方において、前記誤差信号に基づいて、前記内部クロック信号を生成する工程と前記比較クロック信号を生成する工程を連動して動作させる
位相同期ループ回路の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−188183(P2011−188183A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50513(P2010−50513)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】