説明

位相差フィルムを利用した可変カラー表示方法

【課題】回転部位を有する機器において前記回転に付随する情報を可変的にカラー表示するための方法であって、設置、維持、使用において安価で、エネルギー効率がよく、かつ、より多色で複雑なカラー表示が可能である方法の提供。
【解決手段】回転部位を有する機器において、前記回転に付随する情報をカラー表示するための方法であって、前記回転の回転軸方向に略垂直に、第一の偏光フィルム、印刷フィルム、位相差フィルム、および第二の偏光フィルムを配置することを含み、ここで、第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムを、この順に配置し、第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムから選択される1つまたは2つのフィルムを、前記回転部位の回転に伴って回転させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部位を有する機器において、前記回転に付随する情報を可変的にカラー表示するための方法に関する。より詳しくは、本発明は、位相差フィルムおよび偏光フィルムを利用して、回転に付随する情報を色の変化により表示する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一定の情報の表示のためにカラー表示を用いると、色を変化させることで異なる情報を伝達できるため、表示できる情報量が増加する。また、色によっては、高級感を付与し表示品位を向上させることができたり、赤などの目立つ色を、警告色として用いたり点滅させたりして、直感的な情報伝達を行うことも可能である。そのため、カラー液晶表示装置の普及に伴い、最近では家電のリモコンやメータなどの表示器に液晶表示装置を利用したカラー表示が応用されている。
【0003】
しかし、一定の情報をカラー液晶表示装置によりカラー表示させる際には、その装置のための実質的な追加のコストが必要となる。また、カラー液晶表示装置においては、バックライト、トランジスタ駆動、および追加の電源回路が必要となり、実際に利用する際に大きな電力を要する。実際、カラー液晶表示装置は原理的にカラーフィルタにより光の利用効率が3分の1以下に低下しており、エネルギー効率もよくない。したがって、例えば、消費電力が航続距離に大きく影響するプラグインハイブリッドカーなどの電気自動車においては、情報表示部位に、消費電力が大きいカラー液晶表示装置を応用することは現実的ではない。
【0004】
車両等の燃料の量を表示するゲージに液晶表示装置を用いないカラー表示を試みた例として、着色偏光板を回転させて発色と消色を制御した例が特許文献1に開示されている。
また、特許文献2には、偏光板を利用して可変的なカラー表示を行うために用いるフィルムとして、2枚の偏光フィルムの間に屈折率異方性高分子フィルムを介在させた発色性積層フィルムが開示されている。しかし、特許文献2に記載のフィルムによっては、回転機構により変化しない表示を付与することは困難であり、メータなどの表示器に用いるには不向きである。また、色表示は実質的に補色の関係にある2色に限定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平3−1765号公報
【特許文献2】実公平4−6899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、回転部位を有する機器において前記回転に付随する情報を可変的にカラー表示するための方法であって、設置、維持、使用において安価で、エネルギー効率がよく、かつ、より多色で複雑なカラー表示が可能である方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意検討し、位相差フィルムを、印刷フィルムとともに用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下[1]〜[16]を提供するものである。
[1]回転部位を有する機器において、前記回転に付随する情報をカラー表示するための方法であって、
前記回転の回転軸方向に略垂直に、第一の偏光フィルム、印刷フィルム、位相差フィルム、および第二の偏光フィルムを配置することを含み、ここで、
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムを、この順に配置し、
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムから選択される1つまたは2つのフィルムを、前記回転部位の回転に伴って回転させる方法。
【0009】
[2]第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムから選択される前記の1つまたは2つのフィルム以外の偏光フィルムまたは位相差フィルムを前記回転軸に対して、実質的に不動にする[1]に記載の方法。
[3]前記位相差フィルムが複屈折性の異なる領域を二つ以上含むパターン化位相差フィルムであるか、ならびに/または第一の偏光フィルムおよびもしくは第二の偏光フィルムが透過軸の方向が異なる領域を二つ以上含むパターン化偏光フィルムである[1]又は[2]に記載の方法。
【0010】
[4]前記印刷フィルム、および位相差フィルムを一体化し、パターン化位相差フィルムのパターンに対応して設計された印刷をパターン化位相差フィルム上に施すことを含む[3]に記載の方法。
[5]さらに1つ以上の追加の位相差フィルムを第一の偏光フィルムと第二の偏光フィルムとの間に配する[1]〜[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]前記の1つ以上の追加の位相差フィルムの1つ以上を、前記回転部位の回転に伴って回転させる[5]に記載の方法。
【0011】
[7]第一の偏光フィルムおよび第二の偏光フィルムが前記回転部位の回転に伴って前記回転の回転軸方向に略垂直の平面上で回転する[1]〜[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]前記回転部位がメータ針である[1]〜[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]前記機器が照明ユニットを有しており、かつ
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、第二の偏光フィルム、および照明ユニットをこの順で配置する[1]〜[8]のいずれか一項に記載の方法。
【0012】
[10]前記回転部位の回転に伴って回転する、第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムの1つまたは2つの回転量を、所望のカラー表示が達成されるように前記回転部位の回転量に対して調整することを含む[1]〜[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11][1]〜[10]のいずれか一項に記載の方法に用いるための位相差フィルム。
【0013】
[12]前記印刷フィルムとして用いられる印刷層を含む[11]に記載のフィルム。
[13]複屈折性層を2以上含む[11]または[12]に記載のフィルム。
[14]いずれか2つの複屈折性層の遅相軸が、少なくとも1部の領域において、互いに45度ずれている[13]に記載のフィルム。
[15]前記複屈折性層のいずれか1つが二軸性の複屈折性を有する[11]〜[14]のいずれか一項に記載のフィルム。
【0014】
[16]回転部位を有し、該回転に付随する情報がカラー表示される機器であって、
前記回転の回転軸方向に略垂直に配置された第一の偏光フィルム、印刷フィルム、位相差フィルム、および第二の偏光フィルムを含み、ここで、
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムは、この順に配置されており、
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムから選択される1つまたは2つのフィルムは、前記回転部位の回転に伴って回転可能であるように配置されている機器。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、回転部位を有する機器において前記回転に付随する情報を可変的にカラー表示するための方法であって、設置、維持、および使用において安価で、エネルギー効率がよく、かつ、より多色で複雑なカラー表示が可能である方法が提供される。本発明の方法により、あらかじめ決められた色、またはパターンを、カラー液晶表示装置に比較して約3倍のバックライト光利用効率で表示できる。本発明の方法により、色を変化させるための回転の駆動も機器の回転部位のモータと共用できるため、省エネルギー効果は大きい。しかも、従来技術のように補色の組み合わせに制限されることがなく、情報を、色の変化により高い表示品位で直感的に観察者に表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例2で組み合わせて用いた位相差フィルムと偏光フィルムとの概観を示す図である。
【図2】実施例4で用いた位相差フィルムの概観を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0018】
本明細書において、Reはレターデーション(位相差)を表す。Reは透過または反射の分光スペクトルから、Journal of Optical Society of America,vol.39,p.791−794(1949)や特開2008−256590号公報に記載の方法を用いて位相差に換算する、スペクトル位相差法を用いて測定することができる。前記文献は透過スペクトルを用いた測定法であるが、特に反射の場合は、光が光学異方性層を2回通過するため、反射スペクトルより換算された位相差の半分を光学異方性層の位相差とすることができる。Reは特に指定がなければ正面レタ−デーションを指す。Re(λ)は測定光として波長λnmの光を用いたものである。本明細書におけるReは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0019】
本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、レターデーションが実質的に0とは、レターデーションが5nm以下であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0020】
[回転部位を有する機器]
本明細書において、回転部位を有する機器とは、回転する部分を有する機器を意味する。回転部位を有する機器は、特定の機能の達成のために内部に回転部位を有する機器を除く、外部から確認できる部位に回転部分を有するものであることが望ましい。ただし、内部の回転機構による回転を外部から確認できる回転に変換して本発明の方法を適用できる場合もあり、さらには機器内部の何らかの情報を回転に変換して本発明の方法を適用できる場合もある。視認できる回転部位の例としては、例えば、車両または車両のインパネの燃料メータや速度計、各種電気機器の情報表示(機械装置の制御パネル、エアコンの温度表示など)各種電気機器の出力調整(つまみを回すことにより、風量を調整する扇風機など)、アナログ時計の表示盤などがあげられる。
回転に付随する情報としては、燃料等の量、速度、電気出力、温度などがあげられる。
【0021】
本明細書において「回転」とは、使用時に視認者から観て通常回転軸が移動しない回転であることが好ましい、また、回転は、回転軸を中心に一定の方向(時計回り、反時計回りなど)にまわり続ける回転であってもよく、回転軸を中心に一定の角度の範囲で両方の方向に回転するものであってもよいが、回転軸を中心に一定の角度の範囲で両方の方向に回転するものであることが好ましい。また、その回転速度は90°/秒〜90°/年を含む広い範囲であり、回転は連続性でも間欠性でもよい。
【0022】
[偏光フィルム]
本明細書において、偏光フィルムは直線偏光フィルムでも円偏光フィルムでも楕円偏光フィルムでもよい。また、偏光フィルム自身が複屈折パターンまたは二色性パターンを有していてもよい。互いに異なる吸収軸の方向を有する領域を2つ以上含む偏光フィルムについては、例えば特開2009−193014号公報の記載を参照できる。第一の偏光フィルムおよび第二の偏光フィルムは同一であってもよく、別の偏光フィルタであってもよい。機器に用いられる偏光フィルムとしては耐熱性、耐候性があることが望ましい。市販のカラー液晶表示装置に用いられるヨウ素ドープ型偏光フィルムは低コストかつ耐熱性、耐候性に優れているので好ましい。色素ドープ型偏光フィルムは特に耐熱性に優れているので、車載など耐熱性を要する場合に好ましい。
【0023】
[印刷フィルム]
本明細書において、印刷フィルムとは、可視光線の一部または全てを吸収または散乱するフィルムである。このような吸収または散乱は全面で同一であってもパターン状であってもよい。印刷フィルムを作製する方法は特に限定はないが、支持体となるフィルム上に一般的に知られている凸版印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷の他、インクジェットやゼログラフィなどを施して作製することができる。インクとしては、各種インクを用いることができるが、耐久性の観点から、UVインクを用いることが好ましい。支持体としてはレターデーションが50nm以下のフィルムが好ましく、20nm以下のフィルムがより好ましい。そのような支持体としては、未延伸ポリマーフィルムや小池康博・多加谷明広著,フォトニクスポリマー,41頁,共立出版(2004)に記載のゼロ複屈折ポリマーフィルムが挙げられる。
印刷フィルムは偏光フィルムまたは位相差フィルムと一体に設けられている印刷層であってもよい。印刷は偏光フィルムまたは位相差フィルムのパターンや使用形態に対応して所望の表示を達成できるように設けられていることが好ましい。
【0024】
[位相差フィルム]
位相差フィルムとは、全面または一部に複屈折性を有するフィルムを意味する。位相差フィルムにおける複屈折性を有する部分のレターデーションは20℃において、10nm以上であればよく、20nm以上2000nm以下であることが好ましく、50nm以上1000nm以下であることが最も好ましい。
位相差フィルムとしては、全面または一部に複屈折性を有している限り、位相差フィルムの種類は特に限定されず、延伸高分子フィルム、配向した高分子液晶フィルム、反応性を有する液晶性化合物が配向固定化された層を有するフィルム、光の波長以下のグリッドまたは薄層多層膜による構造複屈折フィルムなどがあげられる。位相差フィルムは高分子を含むフィルムであることが好ましい。
【0025】
高分子とは一般に一つまたは複数のモノマーユニットの重合体を指し、特に区別しない限りポリマー、プラスチックと同じ意味である。高分子からなるフィルムは延伸により分子鎖が配向してレターデーションを発現するが、特に位相差フィルムと称する場合は面内のレターデーションが制御されているものを表し、全面に複屈折性を有している位相差フィルムの場合は面内のレターデーションの誤差が50nm以下、好ましくは20nm以下のものを表す。複屈折パターンを有する位相差フィルムの場合は、パターンの各ドメイン内のレターデーションの誤差が50nm以下、好ましくは20nm以下のものを表す。RtoRのフィルムの延伸工程は、延伸工程前後の搬送ロール上で吸引などによってフィルムを固着させて前後のロールの回転速度を変えることにより延伸する方法や、フィルムの両端をテンターと呼ばれるクリップで保持して幅方向に広げる方法、あるいはその二つを同時に行う方法(二軸延伸)が挙げられる。延伸工程は加熱しながら行うことが好ましく、加熱温度は高分子のガラス転移温度以上、軟化温度以下であることが好ましい。
【0026】
液晶性化合物としては、高分子液晶でも反応性を有する低分子液晶でもよいが、耐熱性、耐候性から反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物が好ましい。また、前記組成物は、1液晶分子中の反応性基が2以上ある液晶性化合物を少なくとも1つ含むことがさらに好ましい。2種以上の液晶性化合物の混合物の場合、少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0027】
後述のように、パターン化位相差フィルムを作製する場合は、架橋機構の異なる2種類以上の反応性基を有する液晶性化合物を用い、条件を選択して2種類以上の反応性基の一部の種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有するポリマーを含む光学異方性層を作製するとよい。架橋機構としては縮合反応、水素結合、重合など特に限定はないが、2種以上のうち少なくとも一方は重合が好ましく、2種類以上の異なる重合を用いることがさらに好ましい。一般に架橋反応は、重合に用いられるビニル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基だけでなく、水酸基、カルボン酸基、アミノ基なども用いることができる。好ましい、棒状液晶性化合物の具体例としては、特開2009−69793号公報に記載のものがあげられる。機器に用いられる位相差フィルムとしては耐熱性、耐候性があることが望ましい。ポリカーボネートフィルムはレターデーション制御が容易で耐熱性を有しているので好ましい。反応性を有する液晶性化合物の配向固定化フィルムは、車載など耐熱性を要する場合に好ましい。
【0028】
[パターン化位相差フィルム]
位相差フィルムは位相差フィルムが複屈折性の異なる領域を二つ以上含むパターン化位相差フィルムであってもよい。ここで、複屈折性が異なるとは、遅相軸の方向が異なることでもよく、レターデーションの大きさが異なることであってもよい。
【0029】
パターン化位相差フィルムの作製方法は特に限定されない。例えば、複屈折性の異なる複数の位相差フィルム切り張りで作製する方法や、特開2009−69793号公報の段落「0053」〜「0155」に記載の方法などがあげられる。
【0030】
[二軸性位相差フィルム]
二軸性位相差フィルムとは、フィルムの長手方向、幅方向、厚み方向の3軸の屈折率が全て異なるフィルムのことを表する。二軸性位相差フィルムとしては、二軸延伸フィルムや、FUJIFILM RESEARCH & DEVELOPMENT,No.52,p.42−46(2007)に記載の特殊なコレステリック液晶フィルムが挙げられる。
【0031】
[機能性層]
偏光フィルム、位相差フィルム、印刷フィルムはそれぞれ、偏光機能を有する層、位相差層、印刷層の他に、支持体、配向層、接着層、表面保護層などの機能性層がふくまれていてもよい。例えば、支持体としてはセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。接着層としては感圧性樹脂層、感光性樹脂層および感熱性樹脂層などを用いることができる。
【0032】
[フィルムを機器に設ける方法]
本発明の方法においては、回転に付随する情報をカラー表示させたい機器の回転部位において、この回転軸に実質的に垂直になる様に、上記の第一の偏光フィルム、印刷フィルム、位相差フィルム、および第二の偏光フィルムを配置する。このとき、第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムは、この順に配置する。印刷フィルムはどの位置に配置してもよく、複数の印刷フィルムが配置されていてもよい。例えば、第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムから選択されるいずれか2つ以上に設けられた印刷層として印刷フィルムを複数配置してもよい。
【0033】
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムから選択される1つまたは2つのフィルム、回転部位の回転に伴って回転するように前記の回転部位を有する機器に取り付けられる。回転部位の回転に伴ってとは、同一の回転角で回転部位の回転と同時に回転すること、および機器の回転部位の回転に対し、ギア等を用いて回転角を一定の比率で変換した回転角で機器の回転部位の回転と同時に回転すること等を含む。フィルムの回転の方向は前記回転の回転軸方向に略垂直の平面上であることが好ましい。またフィルムの回転が機器の回転部位の回転軸を中心とする回転である態様も好ましい態様としてあげられる。
【0034】
回転する上記のいずれか1つまたは2つのフィルムの回転量は、例えば0°〜360°0°〜270°、0°〜180°、0°〜90°などの範囲であることが好ましく、0°〜90°範囲であることがより好ましい。機器の回転部位が90°または360°を超える回転量など、表示上好ましくない範囲で回転する場合、または視認しにくい狭い範囲で回転する場合、上述のように、ギア等を用いて、フィルムの回転量が上記の範囲の回転量となるように調整すればよい。この回転量の調整は、機器の回転部位の回転量とフィルムの回転量とが6:1〜1:6程度の範囲で行うことが好ましい。
【0035】
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムのうち、回転部位の回転に伴って回転させる上記の1つまたは2つのフィルム以外のフィルムは、回転部位の回転に伴って回転しないことが好ましく、機器の回転部位の回転軸に対して、実質的に動かないことが好ましい。
【0036】
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムは、回転軸の位置に穴を開け、回転させるものは回転軸に取り付け、回転させないものは外枠などに固定化することにより制御できる。フィルム間は回転時に擦れない程度に離れていることが好ましいが、離れすぎると視差が生じるため、好ましくは0.01〜2mm、より好ましくは0.01〜1mmである。機器の回転部位の回転量とフィルムの回転量とは同じでも異なっていてもよい。回転が異なる形態で使用する場合には、回転量調整のためにギアなどを用いることができる。ギアの種類は特に限定はない。また、機器の回転部位の回転軸とフィルムの回転の回転軸とは同一でも異なっていてもよく、ギアを用いる場合も回転量の異なる回転は同軸でも異なる軸でもよい。
【0037】
本発明の方法によるカラー表示には、カラー液晶表示装置におけるバックライトのような照明ユニットは特に必要なく、環境光、または環境光がフィルムの背面から反射した光を利用することができる。また、回転部位を有する機器が回転部位に照明ユニットを有する場合にはその照明ユニットを観察側からみて、第一の偏光フィルム、印刷フィルム、位相差フィルム、および第二の偏光フィルムの反対側に配置して、カラー表示に利用することができる。このような照明ユニットとしては例えば、車両等の燃料や速度を表示するモニター部分のバックライトなどがあげられる。照明ユニットの種類としては特に限定はないが、カラー化のためには白色であることが好ましい。光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、蛍光灯、LED、無機EL、有機ELが挙げられ、組み合わせとして光源の形状制御には種々のレンズや面光源とするための導光板や拡散板が用いられる。消費電力の観点からはLEDが好ましく、LEDアレイの上に拡散板を置いた直下型が特に好ましい。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0039】
[位相差フィルムの作製]
厚みが約100μm、面内リタデーション約8nm、ガラス転移温度約156℃の市販の無延伸ポリカーボネートフィルム(ピュアエース、帝人化成(株)製)を180℃で一軸延伸し、レターデーションが420nmの位相差フィルムR−1および650nmの位相差フィルムR−2を得た。
市販のポリメタクリル酸メチル(平均Mw:35万、シグマアルドリッチ製)をMEKに30重量%溶解した液をアプリケータでガラス板上に400μm/m2になるようにキャスト、乾燥して、厚みが90μmのアクリルフィルムを得た。このフィルムを230℃で二軸延伸し、正面Reが420nm、Rthが0nmの二軸性位相差フィルムR−3を得た。
また、以下の実施例においては偏光フィルムとしてHLC−5618、サンリッツ(株)製を用いた。
【0040】
[実施例1、比較例1]
R−1上にUVインクジェットプリンタ(LuxelJet UV350GTW、富士フイルム(株)製)で全面にグリーンの印刷を施した印刷付位相差フィルムPR−1を作製した。このフィルムを光源側から固定偏光フィルムP−1、PR−1、回転偏光フィルムP−2の順に配置した実施例1の素子を作製した。また、PR−1の代わりにR−1を用いた比較例1の素子を作製した。各フィルムの角度は上方向を0度とし、反時計回り方向を正とした。P−1の透過軸は0度、PR−1の遅相軸は45度となるように配置した。この素子の色変化結果をP−2の透過軸角度と併せて表1に示すが、実施例1は青−赤の色変化の組み合わせができるのに対し、比較例1は必ず補色となるため原理的に青−黄の組み合わせしかできなかった。
【0041】
【表1】

【0042】
[実施例2]
カッティングプロッタを用いてR−1の一部にCOLDと抜きパターンを施した位相差フィルムPR−2を作製した。R−2には同じくHOTと抜きパターンを施し、さらにメモリ表示をUVインクジェットプリンタ(LuxelJet UV350GTW、富士フイルム(株)製)で印刷して、位相差フィルムPR−3を作製した。さらに、偏光フィルム上にメータ針の印刷をUVインクジェットプリンタ(LuxelJet UV350GTW、富士フイルム(株)製)で−22.5度方向に施し、偏光フィルムPP−1を作製した。PR−2、PR−3、PP−1の概観を図1に示す。
【0043】
このフィルムを光源側から回転偏光フィルムP−3、PR−2、PR−3、印刷付回転偏光フィルムPP−1の順に配置した実施例2のメータを作製した。P−3とPP−1は透過軸を揃えて2枚同時に回転するようにした。この素子の色変化結果をPP−1の角度と併せて表2に示す。PP−1の回転に伴ってメータ針が動いて温度を示すだけでなく、文字がCOLDからHOTに変化し、同時に色が青からオレンジに連続的に変化した。
【0044】
【表2】

【0045】
[実施例3]
実施例1のR−1の代わりにR−3を用いて、実施例3の素子を作製した。実施例1および3の素子を、真横方向の斜めおよび左上方向の斜めから観察したときの視野角による色変化を観察した結果を表3に示す。実施例1では左上方向で配置1の青色が無色になり、配置2の赤色が紫になったが、実施例3ではどの視野角方向でも色変化はほとんど見られなかった。
【0046】
【表3】

【0047】
[実施例4]
メータ表示印刷を図2のように変更する以外は上記のPR−3と同様にPR−4を作製した。光源側から回転偏光フィルムP−3、PR−2、PR−4、回転偏光フィルムP−3の順に配置し、さらにメータ針のユニットを準備した。PR−4のメータ表示印刷とメータ針の表示が一致するように、PR−4をメータ針の回転軸に沿って調整し、メータ針は光源側から見て前記のフィルム配置(前記の4つのフィルム)の反対側に位置するようにした。さらに、メータ針の回転角に対して回転角が6分の1倍となるような遊星歯車機構により2つの偏光フィルムをメータ針の回転に伴ってメータ針の回転軸と同軸で回転可能な状態として、実施例4のメータを作製した。実施例2のメータではメータ針の回転が45度に制限されていて振れ幅が小さかったが、本実施例のメータは270度回転でき、設定値のわかりやすい表示となった(表4)。
【0048】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部位を有する機器において、前記回転に付随する情報をカラー表示するための方法であって、
前記回転の回転軸方向に略垂直に、第一の偏光フィルム、印刷フィルム、位相差フィルム、および第二の偏光フィルムを配置することを含み、ここで、
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムを、この順に配置し、
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムから選択される1つまたは2つのフィルムを、前記回転部位の回転に伴って回転させる方法。
【請求項2】
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムから選択される前記の1つまたは2つのフィルム以外の偏光フィルムまたは位相差フィルムを前記回転軸に対して、実質的に不動にする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位相差フィルムが複屈折性の異なる領域を二つ以上含むパターン化位相差フィルムであるか、ならびに/または第一の偏光フィルムおよびもしくは第二の偏光フィルムが透過軸の方向が異なる領域を二つ以上含むパターン化偏光フィルムである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記印刷フィルム、および位相差フィルムを一体化し、パターン化位相差フィルムのパターンに対応して設計された印刷をパターン化位相差フィルム上に施すことを含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
さらに1つ以上の追加の位相差フィルムを第一の偏光フィルムと第二の偏光フィルムとの間に配する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記の1つ以上の追加の位相差フィルムの1つ以上を、前記回転部位の回転に伴って回転させる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第一の偏光フィルムおよび第二の偏光フィルムが前記回転部位の回転に伴って前記回転の回転軸方向に略垂直の平面上で回転する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記回転部位がメータ針である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記機器が照明ユニットを有しており、かつ
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、第二の偏光フィルム、および照明ユニットをこの順で配置する請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記回転部位の回転に伴って回転する、第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムの1つまたは2つの回転量を、所望のカラー表示が達成されるように前記回転部位の回転量に対して調整することを含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法に用いるための位相差フィルム。
【請求項12】
前記印刷フィルムとして用いられる印刷層を含む請求項11に記載のフィルム。
【請求項13】
複屈折性層を2以上含む請求項11または12に記載のフィルム。
【請求項14】
いずれか2つの複屈折性層の遅相軸が、少なくとも1部の領域において、互いに45度ずれている請求項13に記載のフィルム。
【請求項15】
前記複屈折性層のいずれか1つが二軸性の複屈折性を有する請求項11〜14のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項16】
回転部位を有し、該回転に付随する情報がカラー表示される機器であって、
前記回転の回転軸方向に略垂直に配置された第一の偏光フィルム、印刷フィルム、位相差フィルム、および第二の偏光フィルムを含み、ここで、
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムは、この順に配置されており、
第一の偏光フィルム、前記位相差フィルム、および第二の偏光フィルムから選択される1つまたは2つのフィルムは、前記回転部位の回転に伴って回転可能であるように配置されている機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−68893(P2013−68893A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209059(P2011−209059)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】