説明

位相差検出回路および傾斜角度測定装置

【課題】能力の小さいCPUを用いた場合には2つの入力信号の位相差を1箇所しか計測できず、前記入力信号間の位相差を連続的に複数箇所について計測し平均化するには負荷が重く、さらにそれぞれの信号が断続的に入力されて同時に入力されることがない複数の入力信号に対しては位相差の検出が困難であるという課題があった。
【解決手段】超音波受信子56が入力するS1とAND回路45の発する基準クロックによって入力信号S1の基準クロックに対する位相差を検出し、超音波受信子57が入力するS2とAND回路45の発する基準クロックによって入力信号S2の基準クロックに対する位相差を検出する。これらの位相差はアップダウンカウンタ11によって平均値として得られ、さらに、入力信号S1とS2の基準クロックに対する各位相差間の差分を計算することで、平均化された入力信号S1とS2の位相差を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の断続的に入力する信号間の平均化した位相差を検出する位相差検出回路および、その位相差検出回路を利用した傾斜角度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の位相差検出回路では、2つのディジタル信号が入力信号として入力され、コンデンサに直列に接続された抵抗を介して前記コンデンサへ電圧を印加する電圧手段と、前記入力信号に応じて前記コンデンサへ2種の電圧を印加し、前記入力信号のパルスが欠損した場合には、前記コンデンサへの電圧印加を停止すべく前記電圧印加手段の制御を行う制御手段を備え、前記入力信号の一部が欠損されたときにも、安定した位相誤差電圧を得るように構成している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−175319号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例はアナログ電圧によって位相差を出力する為に、温度や経年変化によるアナログ的な誤差が発生する。また出力をCPUに入力する為にはD/Aコンバータが必要となり、誤差を増す要因となる。また初段から2信号をCPUに取り込み、2つの入力信号の位相差を時間差と見ることで、前述の従来の位相差検出回路をCPUにより代替させることは容易であり、また、前記2つの入力信号の位相差をディジタル的に保持することで、前記入力信号が途絶えてもその直前の値を出力し続けることは容易であり、散発的な入力信号であっても対応することは可能であるが、能力の小さいCPUを用いた場合には前記2つの入力信号の位相差を1箇所しか計測できず、前記2つの入力信号の位相差を連続的に複数箇所について計測し平均化する機能がなく、この2つの入力信号の位相差の連続的な複数箇所についての計測とその平均化には対応できないという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、能力の小さいCPUを使用して、散発的に入力する入力信号の平均化された位相差を検出できる位相差検出回路を得ることを目的とする。
【0006】
また、この発明は、超音波センサを用いたときの超音波受信子から散発的に入力される入力信号について、能力の小さいCPUを使用して検出した任意期間内の平均化された位相差を利用し、反射物体に対する相対的な角度量を検出できる傾斜角度測定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る位相差検出回路は、複数の入力信号間の位相差をディジタル的に検出する位相差検出回路であって、少なくともひとつの入力信号が断続的に入力されて他の入力信号と同時に入力されることがない信号構成において、同時に入力されることのないそれぞれの入力信号と基準クロックとの位相差情報を抽出する基準クロックに対する位相差情報抽出回路と、各基準クロックに対する位相差情報抽出回路が抽出した位相差情報の差分を求めて、それぞれの入力信号間の位相差として検出する平均化位相差検出手段とを備えたものである。
【0008】
この発明に係る傾斜角度測定装置は、等しい間隔で配置された超音波発振子と超音波受信子との組を複数備え、各組の超音波発振子によって送信されて反射物体により反射した超音波を対応する超音波受信子が受信することで得られたそれぞれの入力信号間の位相差をもとに、超音波発振子および超音波受信子を配置した面と反射物体の相対的な角度量を検出する傾斜角度測定装置において、任意に選択されて断続的に動作する超音波発振子によって送信し、対応する超音波受信子が反射物体から反射された超音波を受信することで得られた断続的に入力されて同時に入力されることのないそれぞれの入力信号間の位相差を、基準クロックと、それぞれの入力信号と基準クロックとの位相差情報を抽出する基準クロックに対する位相差情報抽出回路とを用いて、基準クロックに対する一方の位相差情報抽出回路が抽出した位相差情報と他方の位相差情報抽出回路が抽出した位相差情報の差分を求めて、両者の入力信号間の位相差として検出する位相差検出回路とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、この発明によれば、少なくともひとつの入力信号が断続的に入力されて他の入力信号と同時に入力されることがない信号構成において、同時に入力されることのないそれぞれの入力信号と基準クロックとの位相差情報を抽出する基準クロックに対する位相差情報抽出回路と、基準クロックに対する位相差情報抽出回路が抽出した位相差情報の差分を求めて、それぞれの入力信号間の位相差として検出する平均化位相差検出手段とを備えるように構成したので、能力の小さいCPUを使用し、散発的に入力する入力信号の平均化された位相差を検出できる効果がある。
【0010】
この発明によれば、任意に選択されて断続的に動作する超音波発振子によって送信されて反射物体から反射された超音波を対応する超音波受信子によって受信することで得られた、断続的に入力されて同時に入力されることのないそれぞれの入力信号間の位相差を検出する位相差検出回路を備えるように構成したので、超音波受信子から散発的に入力される入力信号について、能力の小さいCPUを使用しても反射物体に対する相対的な角度量を検出できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1の位相差検出回路の構成を示す回路図である。
【図2】この発明の実施の形態1の位相差検出回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2の位相差検出回路の構成を示す回路図である。
【図4】この発明の実施の形態2の位相差検出回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】この発明の実施の形態3の位相差検出回路の構成を示す回路図である。
【図6】この発明の実施の形態3の位相差検出回路の動作を示すタイミングチャートである。
【図7】この発明の実施の形態4の傾斜角度測定装置の構成を示す回路図である。
【図8】この発明の実施の形態5の傾斜角度測定装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一形態について説明する。
実施の形態1.
図1は、この実施の形態1の位相差検出回路の構成を示す回路図であり、入力信号S1および入力信号S2を比較し、前記入力信号間の位相差に応じた幅のパルス信号を出力する排他的論理和回路(位相差情報抽出回路)1、前記排他的論理和回路1の出力と発振回路3が出力する基準クロック信号と不図示のマイクロコンピュータから与えられる入力タイミング信号S4との論理積を演算し、その演算結果を信号S5として出力するAND回路(位相差情報抽出回路)2と、前記AND回路2が出力する信号S5を計数するカウンタ(平均化位相差検出手段、計数回路)4とを備えている。なお、符号5は、カウンタ4が出力する計数値を前記位相差が発生した回数で除算する例えば能力の小さなCPU(平均化位相差検出手段、演算手段)である。
【0013】
次に動作について説明する。
図2は、図1に示した位相差検出回路の動作を示すタイミングチャートであり、以下、このタイミングチャートに従って動作を説明する。
図2(イ)は入力信号S1の信号波形を示し、また同図(ロ)は入力信号S2の信号波形を示している。排他的論理和回路1からは、前記入力信号S1と入力信号S2との排他的論理和結果(ExOR)が出力され、この排他的論理和結果と発振回路3が出力する基準クロック信号と、同図(ハ)に示す入力タイミング信号S4との論理積がAND回路2により演算され、同図(二)に示す信号S5としてカウンタ4へ出力され、前記カウンタ4からは前記信号S5の計数結果が出力される。同図(ホ)はカウンタ4が出力する前記信号S5の計数結果を示す。
入力タイミング信号S4は、入力信号S1と入力信号S2との位相差を検出する区間を規定する信号であり、信号S5は、入力タイミング信号S4が出力されている状態における、入力信号S1と入力信号S2との位相差時間に相当する数の前記基準クロック信号である。従って、排他的論理和回路1から入力信号S1と入力信号S2との排他的論理和結果が出力され、また発振回路3から基準クロック信号が出力されていても、入力タイミング信号S4が出力されていない状態では、AND回路2の出力は“Lowレベル”を維持し、カウンタ4の計数値は変化しない。
入力タイミング信号S4が出力されている状態において、入力信号S1と入力信号S2との間で位相差が発生した回数は、図2に示すタイミングチャートの例では4回であり、前記カウンタ4が出力する計数値を前記位相差が発生した回数4で除算すれば、入力信号S1と入力信号S2との位相差の平均値は容易に求められる。また、この除算手段は、ハードウェアまたはソフトウェアにより実現でき、能力の小さなCPU5を用いても散発的に入力する入力信号の平均化された位相差を容易に検出できる。
【0014】
以上のように、この実施の形態1によれば、能力の小さなCPUを用る場合であっても、2つの入力信号S1、S2の位相差を連続的に複数箇所について計測し、その位相差の平均値を求めることが可能になる位相差検出回路が得られる効果がある。
【0015】
実施の形態2.
次に、この実施の形態2の位相差検出回路について説明する。
図3は、この実施の形態2の位相差検出回路の構成を示す回路図であり、図1と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
この位相差検出回路では、AND回路2が出力する信号S5を計数するカウンタはアップダウンカウンタ11であり、アップカウント、ダウンカウントを設定するための入力端子へ供給される信号S6が“Lowレベル”のときアップカウンタとして機能し、また前記入力端子へ供給される信号S6が“Highレベル”のときダウンカウンタとして機能する。
また、この位相差検出回路は、入力信号S2を反転させるインバータ回路21と、入力信号S2の立ち上がりエッジおよび立下りエッジを検出するためのコンデンサ14と抵抗15、前記立ち上がりエッジを選択して出力するダイオード16を備えている。さらにインバータ回路21により反転された入力信号S2の立ち上がりエッジおよび立下りエッジを検出するためのコンデンサ22と抵抗23、前記立ち上がりエッジを選択して出力するダイオード24を備えている。ダイオード16およびダイオード24のカソード側は抵抗39およびDフリップフロップ(平均化位相差検出手段)25のクロック入力端子へ接続されている。
また、排他的論理和回路1とグラントとの間には、抵抗12とコンデンサ13とによる遅延回路が配置されており、前記抵抗12と前記コンデンサ13との接続個所は前記Dフリップフロップ25のデータ入力端子へ接続されている。
【0016】
次に動作について説明する。
図4は、図3に示した位相差検出回路の動作を示すタイミングチャートであり、以下、このタイミングチャートに従って動作を説明する。
入力信号S1、入力信号S2およびAND回路2が出力する信号S5については、前記実施の形態1で説明した入力信号S1、入力信号S2および信号S5と同一である。この実施の形態2の位相差検出回路では、アップダウンカウンタ11のアップカウント動作とダウンカウント動作が、入力信号S1と入力信号S2との間の位相差の遅れ、進みに応じて切り替えられ、入力信号S1に対し入力信号S2の位相が進んでいるときにはアップダウンカウンタ11はアップカウント動作、入力信号S1に対し入力信号S2の位相が遅れているときにはアップダウンカウンタ11はダウンカウント動作となる。
図4のタイミングチャートに示すように、入力信号S1に対し入力信号S2の位相が進んでいるときには、Dフリップフロップ25のデータ入力端子には、図4(ニ)に示すような、入力信号S1と入力信号S2の位相差に応じたパルス幅のパルス信号が前記積分回路によりわずかに遅延した矩形波S3が印加されており、また、このときDフリップフロップ25のクロック入力端子へ供給されているクロック信号は入力信号S2の立ち上がりと立ち下がりのタイミングで出力される。入力信号S2の立ち上がりと立ち下がりのタイミングと図4(ニ)に示す遅延波形S3とから明らかなように、Dフリップフロップ25へは前記遅延波形S3の“Lowレベル”が読み込まれることになって、Dフリップフロップ25からは“Lowレベル”の信号S6が出力され、アップダウンカウンタ11はアップカウント動作を行なっている。
入力信号S1に対し入力信号S2の位相が進んでいる状態から遅れている状態へ時刻Ttにおいて移行すると、時刻Ttにおける入力信号S2の立ち上がりのタイミングと図4(ニ)に示す遅延波形S3とから明らかなように、Dフリップフロップ25へは前記遅延波形S3の“Highレベル”が読み込まれることになって、Dフリップフロップ25からは“Highレベル”の信号S6が出力され、アップダウンカウンタ11はダウンカウント動作を行うようになる。
従って、図4のタイミングチャートに示す例では、アップダウンカウンタ11は時刻Ttまではその計数値を増加させ、時刻Ttを過ぎるとその計数値を減少させ、入力タイミング信号S4が“Highレベル”から“Lowレベル”へ変化したときのアップダウンカウンタ11の計数値が出力される。このときアップダウンカウンタ11から出力されている計数値の符号が正であれば入力信号S1に対し入力信号S2の位相が進んでいる状態が入力信号S2の位相が遅れている状態より多く発生し、また計数値の符号が負であれば、入力信号S1に対し入力信号S2の位相が遅れている状態が入力信号S2の位相が進んでいる状態より多く発生したことが判定できる。
このように、アップダウンカウンタ11の計数値は、入力信号S1と入力信号S2との間の位相差に応じて増減するため、入力タイミング信号S4のパルス幅を大きくして入力信号S1と入力信号S2との間の平均化した位相差を広範囲で検出できる。
【0017】
実施の形態3.
次に、この実施の形態3の位相差検出回路について説明する。
図5は、この実施の形態3の位相差検出回路の構成を示す回路図であり、図3と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。
この実施の形態3の位相差検出回路は、排他的論理和回路1による位相差検出信号がLからHに変化するきっかけが、入力信号S1と入力信号S2のどちらの変化によるものか判定でき、入力信号S1と入力信号S2のどちらが先か、つまり遅れ、進みの判定がS1とS2どちらの信号からも得られるため、高い精度で広い範囲の位相差を検出できるものである。
この位相差検出回路でも、AND回路2が出力する信号S5を計数するカウンタはアップダウンカウンタ11であり、アップカウント、ダウンカウントを設定するための入力端子へ供給される信号S6が“Lowレベル”のときアップカウンタとして機能し、また前記入力端子へ供給される信号S6が“Highレベル”のときダウンカウンタとして機能する。
また、この位相差検出回路は、入力信号S1を反転させるインバータ回路31と、入力信号S1の立ち上がりエッジおよび立下りエッジを検出するためのコンデンサ27と抵抗28、前記立ち上がりエッジを選択して出力するダイオード29を備えている。さらにインバータ回路31により反転された入力信号S1の立ち上がりエッジおよび立下りエッジを検出するためのコンデンサ32と抵抗33、前記立ち上がりエッジを選択して出力するダイオード34を備えている。ダイオード29およびダイオード34のカソード側は抵抗38およびセットリセットフリップフロップ(平均化位相差検出手段)35のセット入力端子へ接続されている。また、前記実施の形態2で説明したダイオード16およびダイオード24のカソード側はセットリセットフリップフロップ35のリセット入力端子へ接続されている。また、前記セットリセットフリップフロップ35の出力は、Dフリップフロップ25のデータ入力端子へ接続されている。
また、排他的論理和回路1の出力側とグランドとの間には、抵抗36とコンデンサ37による遅延回路が配置されており、前記抵抗36と前記コンデンサ37との接続個所は前記Dフリップフロップ25のクロック入力端子へ接続されている。
【0018】
次に動作について説明する。
図6は、図5に示した位相差検出回路の動作を示すタイミングチャートであり、以下、このタイミングチャートに従って動作を説明する。
図6(ハ)に示す波形は、排他的論理和回路1の出力が前記遅延回路へ供給されたときの抵抗36とコンデンサ37との接続点における波形であり、この波形で示される信号S9がDフリップフロップ25のクロック入力端子へ供給される。一方、セットリセットフリップフロップ35は、入力信号S1の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジから生成されるパルス信号によりセットされ、また、入力信号S2の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジから生成されるパルス信号によりリセットされる。同図(ニ)は、このセットリセットフリップフロップ35から出力される信号S8の波形を示す。この信号S8は、Dフリップフロップ25のデータ入力端子へ供給される。従って、入力信号S1と入力信号S2との間の遅れ、進みの関係が逆転し、入力信号S1に対し入力信号S2の位相が進んでいる状態から遅れている状態へ時刻Ttにおいて移行すると、信号S9のエッジでデータ入力端子へ供給されている信号S8の“Highレベル”がDフリップフロップ25へ読み込まれ、それまで“Lowレベル”を出力していたDフリップフロップ25からは“Highレベル”が出力され、アップダウンカウンタ11はアップカウント動作からダウンカウント動作へ移行する。
また、入力信号S1に対し入力信号S2の位相が遅れている状態から進んでいる状態へ移行すると、信号S9のエッジでデータ入力端子へ供給されている信号S8の“Lowレベル”がDフリップフロップ25へ読み込まれ、それまで“Highレベル”を出力していたDフリップフロップ25からは“Lowレベル”が出力され、アップダウンカウンタ11はダウンカウント動作からアップカウント動作へ移行する。
【0019】
図6のタイミングチャートに示す例では、アップダウンカウンタ11は時刻Ttまではその計数値を増加させ、時刻Ttを過ぎるとその計数値を減少させ、入力タイミング信号S4が“Highレベル”から“Lowレベル”へ変化したときのアップダウンカウンタ11の計数値が出力される。このときアップダウンカウンタ11から出力されている計数値の符号が正であれば入力信号S1に対し入力信号S2の位相が進んでいる状態が、遅れている状態より多く発生し、また計数値の符号が負であれば、入力信号S1に対し入力信号S2の位相が遅れている状態が、進んでいる状態より多く発生したことが判定できる。
【0020】
このように、入力信号S1の各エッジから生成したパルス信号によりセットリセットフリップフロップ35をセットし、また、入力信号S2の各エッジから生成したパルス信号によりセットリセットフリップフロップ35をリセットし、入力信号S1と入力信号S2とのどちらが先に入力されているかをセットリセットフリップフロップ35により判定し、セットリセットフリップフロップ35の出力と排他的論理和回路1の出力する信号S9とをDフリップフロップ25へ出力することで、前記信号S9である位相差信号が発生する直前の入力信号S1と入力信号S2のタイミングから入力信号S1と入力信号S2の遅れ、進みを判定するため、この実施の形態3では、高い精度でかつ広範囲に入力信号S1と入力信号S2との間の平均化した位相差を検出できる。
【0021】
実施の形態4.
次に、上記の各実施の形態のいずれかの位相差検出回路を利用した傾斜角度測定装置について説明する。この実施の形態4の傾斜角度測定装置は、前記実施の形態2において説明した位相差検出回路を利用している。
図7は、この実施の形態4の傾斜角度測定装置の構成を示す回路図であり、図7において図2と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。この傾斜角度測定装置は、超音波発振子41と超音波受信子42と超音波受信子43を備えている。また、発振回路3から出力される基準クロック信号を1/500分周し、20kHzのパルス信号へ変換する分周回路44と、前記分周回路44の出力と出力タイミング信号とを論理積演算し、前記出力タイミング信号が供給されている期間のみ前記分周回路44の出力を前記超音波発振子41へ出力するAND回路45とを備えている。また、超音波受信子42の出力端子は排他的論理和回路1の一方の入力端子へ接続され、超音波受信子43の出力端子は排他的論理和回路1の他方の入力端子へ接続されている。
【0022】
次に動作について説明する。
この傾斜角度測定装置は、発振回路3において発振させた10MHzの基準クロック信号を分周回路44にて分周し、20KHzのパルス信号に変換し、超音波発振子41へ供給し、超音波発振子41を振動させ、発生させた超音波を反射物体へ向けて発射する。そして、反射物体から反射して戻ってきた超音波を超音波受信子42と超音波受信子43とで受信する。超音波受信子42は受信した超音波を電気的な入力信号S1として出力し、また、超音波受信子43は入力信号S2として出力する。
なお、この傾斜角度測定装置に利用されている位相差検出回路については、前記実施の形態2において詳しく説明したのでここでは説明を省略するが、この実施の形態4の傾斜角度測定装置では、入力信号S1と入力信号S2との平均的な位相差を検出することで、反射物体とこの傾斜角度測定装置との相対的な角度を検出できる。
【0023】
以上のように、この実施の形態4によれば、入力信号S1と入力信号S2との位相差を複数区間について平均化して検出できるため、温度差や対流による空気のゆらぎによる誤差を緩和でき、反射物体とこの傾斜角度測定装置との相対的な角度を検出できる。
【0024】
実施の形態5.
次に、この実施の形態8の傾斜角度測定装置について説明する。
反射物体と超音波発振子、反射物体と超音波受信子との間の空気が流れる場合、前記実施の形態4の傾斜角度測定装置のように1つの超音波発振子41から発射される2経路の超音波をそれぞれの超音波受信子で受信する構成では、風に吹く方向により一方の経路が短縮され、他方の経路は伸張し、各経路が変化して、入力信号S1と入力信号S2の位相差も変化して誤差を生じ易いため、この実施の形態5の傾斜角度測定装置では、風による誤差を回避するため、等しい間隔で配置された超音波発振子と超音波受信子の組み合わせを2組用意する。
【0025】
図8は、この実施の形態5の傾斜角度測定装置の構成を示す回路図であり、図8において図7と同一または相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。この実施の形態5の傾斜角度測定装置では、前記実施の形態4の分周回路44が1/250分周回路51と1/2分周回路52により構成されている。そして、前記1/250分周回路51の40KHzの分周出力がDフリップフロップ25のクロック入力端子へ供給される。また、AND回路45の出力側は、排他的論理和回路1の他方の入力端子と、切り替えスイッチ(動作切替え回路)53の可動片側の端子へ接続されている。また、切り替えスイッチ53の固定接点側の一方の端子は超音波発振子54の入力端子と接続されている。また、切り替えスイッチ53の固定接点側の他方の端子は超音波発振子55の入力端子と接続されている。超音波発振子54から発射され反射物体で反射された超音波を受信する超音波受信子57の出力端子は、切り替えスイッチ(動作切替え回路)58の固定接点側の一方の端子と接続され、また、超音波発振子55から発射され反射物体で反射された超音波を受信する超音波受信子56の出力端子は、切り替えスイッチ58の固定接点側の他方の端子と接続されている。切り替えスイッチ58の可動片側の端子は、排他的論理和回路1の一方の入力端子と接続されている。
【0026】
次に動作について説明する。
この傾斜角度測定装置では、超音波発振子54と超音波受信子57からなる超音波センサと、超音波発振子55と超音波受信子56とからなる超音波センサ、2組の超音波センサを互いに相手の組の超音波信号が干渉しないように交互に動作させる。そして、AND回路45が出力する20KHzのパルス信号を基準クロックにして、切り替えスイッチ53と切り替えスイッチ58を同時に切り替え、前記基準クロックを超音波発振子54と超音波発振子55へ交互に供給し、またこれと同時に前記基準クロックを排他的論理和回路1の他方の入力端子へ供給する。そして、20KHzを基準クロックとして、超音波受信子56が超音波を受信し排他的論理和回路1へ出力する入力信号S1の前記基準クロックに対する位相差を検出する。また、超音波受信子57が超音波を受信し排他的論理和回路1へ出力する入力信号S2の前記基準クロックに対する位相差を検出する。これら位相差はアップダウンカウンタ11の出力として得られる。そしてさらに、基準クロックに対する前記各位相差間の差を計算し、前記入力信号S1と前記入力信号S2とを排他的論理和回路1において同時に処理した場合と同等な位相差を検出する。
このように、互いに相手の組の超音波信号が干渉しないように2組の超音波センサを交互に動作させ、同時に入力されない複数の入力信号間の位相差を容易に検出でき、反射物体とこの傾斜角度測定装置との相対的な角度を検出できる。
【0027】
なお、以上説明した実施の形態4、実施の形態5では、位相差検出回路を傾斜角度測定装置に利用した場合について説明したが、例えば、発電した電力を電力会社へ買電する場合に必要となる、発電機で発電した電力と、電力会社側から供給されている電力との間の位相を整合させる必要があるが、このような場合に前記両者の位相を検出し調べるのに用いても有効である。
【符号の説明】
【0028】
1 排他的論理和回路(位相差情報抽出回路)、2,45 AND回路(位相差情報抽出回路)、4 カウンタ(平均化位相差検出手段、計数回路)、5 CPU(平均化位相差検出手段、演算手段)、11 アップダウンカウンタ、12,15,23,33,36,38,39 抵抗、16,24,29,34 ダイオード、13,22,32,37 コンデンサ、21,31 インバータ回路、25 Dフリップフロップ(平均化位相差検出手段)、35 セットリセットフリップフロップ(平均化位相差検出手段)、41,54,55 超音波発振子、42,43,56,57 超音波受信子、44,51,52 分周回路、53,58 切り替えスイッチ(動作切替え回路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力信号間の位相差をディジタル的に検出する位相差検出回路であって、
少なくともひとつの入力信号が断続的に入力されて他の入力信号と同時に入力されることがない信号構成において、同時に入力されることのないそれぞれの入力信号と基準クロックとの位相差情報を抽出する基準クロックに対する位相差情報抽出回路と、
前記各基準クロックに対する位相差情報抽出回路が抽出した位相差情報の差分を求めて、それぞれの入力信号間の位相差として検出する平均化位相差検出手段と
を備えたことを特徴とする位相差検出回路。
【請求項2】
等しい間隔で配置された超音波発振子と超音波受信子との組を複数備え、各組の超音波発振子によって送信されて反射物体により反射した超音波を対応する超音波受信子が受信することで得られたそれぞれの入力信号間の位相差をもとに、前記超音波発振子および前記超音波受信子を配置した面と前記反射物体の相対的な角度量を検出する傾斜角度測定装置において、
任意に選択されて断続的に動作する前記超音波発振子によって送信し、対応する前記超音波受信子が前記反射物体から反射された超音波を受信することで得られた断続的に入力されて同時に入力されることのないそれぞれの前記入力信号間の位相差を、基準クロックと、それぞれの前記入力信号と前記基準クロックとの位相差情報を抽出する基準クロックに対する位相差情報抽出回路とを用いて、基準クロックに対する一方の前記位相差情報抽出回路が抽出した位相差情報と他方の前記位相差情報抽出回路が抽出した位相差情報の差分を求めて、両者の入力信号間の位相差として検出する請求項1記載の位相差検出回路と
を備えたことを特徴とする傾斜角度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−282047(P2009−282047A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201656(P2009−201656)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【分割の表示】特願2002−374981(P2002−374981)の分割
【原出願日】平成14年12月25日(2002.12.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】