位相比較器及び測定装置
【課題】2つの信号の位相比較結果を確実に保持できる位相比較器を提供する。
【解決手段】2つの信号CMP、REFの位相を比較して、その位相関係を出力する比較部10と、比較部より出力される位相比較結果を入力信号として受信し信号OUTとして出力するホールド回路30と、比較部の出力に基づいて位相比較結果が確定したか否かを判定し、位相比較結果が確定したと判定した場合にホールド信号Cを出力するホールド信号生成部20とを備え、ホールド回路は、ホールド信号が出力されている期間は前記入力信号を保持するようにして、比較部による位相比較結果が確定する前に状態が保持されることを防止し、位相比較結果を確実に保持できるようにする。
【解決手段】2つの信号CMP、REFの位相を比較して、その位相関係を出力する比較部10と、比較部より出力される位相比較結果を入力信号として受信し信号OUTとして出力するホールド回路30と、比較部の出力に基づいて位相比較結果が確定したか否かを判定し、位相比較結果が確定したと判定した場合にホールド信号Cを出力するホールド信号生成部20とを備え、ホールド回路は、ホールド信号が出力されている期間は前記入力信号を保持するようにして、比較部による位相比較結果が確定する前に状態が保持されることを防止し、位相比較結果を確実に保持できるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの信号の位相を比較して比較結果を出力する位相比較器及びそれを備える測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路に搭載されるTDC(Time-to-Digital Converter)やDLL(Delay Locked Loop)回路において、2つの信号の位相を比較して2値で結果を出力する位相比較器が使用されている。この位相比較器は、2つの信号の位相差を測定するのではなく、一方の信号を基準信号として、他方の信号(比較信号)の位相が進んでいるか、遅れているかを判定する。その結果、例えば、基準信号に比べて比較信号の位相が進んでいれば比較結果として“1”を出力し、基準信号に比べて比較信号の位相が遅れていれば比較結果として“0”を出力する。
【0003】
図12に、従来の位相比較器の構成例を示す(例えば、特許文献1参照。)。
比較信号(例えば、入力データ信号)CMPが、否定論理積演算回路(NAND回路)101に入力されるとともに、遅延回路A102及びインバータ103により遅延時間DW1だけ遅延されてNAND回路101に入力される。また、基準信号(例えば、クロック信号)REFが、NAND回路104に入力されるとともに、遅延回路A105及びインバータ106により遅延時間DW1だけ遅延されてNAND回路104に入力される。
【0004】
NAND回路101の出力Z1がNAND回路107に入力され、NAND回路104の出力Z2がNAND回路108に入力される。また、NAND回路107にはNAND回路108の出力Q2が入力され、NAND回路108にはNAND回路107の出力Q1が入力される。すなわち、NAND回路107、108により、セット・リセットフリップフロップ(SR−FF)が構成されている。
【0005】
NAND回路107の出力Q1がDフリップフロップ(D−FF)109に入力される。また、D−FF109には、遅延回路A105及びインバータ106により遅延時間DW1だけ遅延され、さらに遅延回路B110により遅延時間DW2だけ遅延されて基準信号REFが入力される。そして、D−FF109の出力が、位相比較器の出力OUTとして出力される。
【0006】
図12に示した位相比較器において、比較信号CMPがローレベル(“L”)からハイレベル(“H”)に変化すると、図13に示したように期間DW1だけ“L”となるワンショットパルスがNAND回路101の出力Z1に発生する(時刻T51〜T53)。同様に、基準信号REFが“L”から“H”に変化すると、期間DW1だけ“L”となるワンショットパルスがNAND回路104の出力Z2に発生する(時刻T52〜T54)。
【0007】
NAND回路101、104の出力Z1、Z2がともに“L”になることにより、NAND回路107、108の出力Q1、Q2がともに“H”になる。そして、出力Z1、Z2の一方が“H”になることに応じて出力Q1、Q2の一方のみが“L”になり(時刻T53、T54)、続いて出力Z1、Z2がともに“H”になって位相比較結果が保持される。具体的には、NAND回路101の出力Z1が先に“H”になると、NAND回路107の出力Q1が“L”となり、出力Q1、Q2の各々が“L”、“H”である状態が位相比較結果として保持される。一方、NAND回路104の出力Z2が先に“H”になると、NAND回路108の出力Q2が“L”となり、出力Q1、Q2の各々が“H”、“L”である状態が位相比較結果として保持される。
【0008】
その後、基準信号REFが“H”から“L”に変化すると(時刻T55)、遅延回路A105及びインバータ106により遅延時間DW1だけ遅れて出力R1が“L”から“H”に変化し(時刻T56)、さらに遅延回路B110により遅延時間DW2だけ遅れて出力R2が“L”から“H”に変化する(時刻T57)。D−FF109は、この出力R2が“L”から“H”に変化することによって、位相比較結果であるNAND回路107の出力Q1をホールドし出力OUTとして出力する(時刻T58)。
【0009】
【特許文献1】特開2003−243981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
2つの信号の位相を比較して2値で結果を出力する位相比較器は、2つの信号の位相差が狭まると位相比較を行うことができなくなる。これは不感帯と呼ばれ、通常、位相比較器は、ある程度の幅の不感帯を持つ。位相比較器には当然ながら応答時間があり、これがTDCのタイミングの大部分を占めている。特に、位相比較器が不感帯付近で動作する場合には応答速度が低下する。例えば、信号が“L”から“H”に変化するポジティブエッジ同士の位相比較を行う位相比較器では、回路構成によっては“H”から“L”に変化するネガティブエッジにより位相比較結果がクリアされるものもある。
【0011】
TDCは、異なる遅延時間τs、τfの遅延素子を用いて構成され、遅延素子でつくる遅延差を時間分解能(τs−τf)として2つの信号の位相差をコード(例えば、サーモメータコード)で出力する。測定時間分解能が細かいほど、位相比較器の不感帯の広さが誤差要因になる。また、位相比較器の応答時間がTDCのタイミングの最もクリティカルな要因になっているので、位相比較器がTDCの速度性能の上限を決めている。また、位相比較器の位相比較結果がネガティブエッジでクリアされる場合には、信号のデューティ(Duty)比がTDCの速度上限を決めてしまうこともある。
【0012】
したがって、高周波信号の位相差を高分解能で測定する目的のTDCでは、位相比較器は、不感帯が狭く(高感度)、不感帯付近でも高速動作し、かつ信号のデューティ比に依存しないことが要求される。
【0013】
2つの信号の位相を比較して2値で結果を出力する位相比較器として、SR−FF、及びD−FFがある。SR−FFは、不感帯が狭く(1psec程度)、位相比較の感度が高い。しかし、SR−FFは、ネガティブエッジにより位相比較結果がクリアされてしまうため、周波数限界が被測定信号のデューティ比に依存するという欠点を持つ。また、D−FFは、NANDゲートで構成する回路方式のものと、インバータとトランスファーゲートとで構成する回路方式のものがある。NANDゲートで構成する回路方式のものは、SR−FFを組み合わせて使うために周波数限界が被測定信号のデューティ比に依存する。一方、インバータとトランスファーゲートとで構成する回路方式のものは、被測定信号のネガティブエッジは作用しないので、周波数限界が被測定信号のデューティ比に依存せず位相比較器の応答速度に依存するという点では優れているが不感帯が広い(8psec程度)。
【0014】
図12に示したように、信号のネガティブエッジで位相比較結果がクリアされることを防止するために、位相比較器の後段にホールド回路を設ける方法がある。しかしながら、位相比較結果をホールドするためにワンショットパルスを使用しており、SR−FFが応答できる十分なパルス幅を持ち、かつ各信号に基づくワンショットパルスがともに“L”となって前の位相比較結果がクリアされる必要がある。したがって、図12に示した遅延回路A102、105による遅延時間DW1を十分長くしなければならず、動作速度が低
下する。
【0015】
また、位相比較結果を外部に出力したり、RAM等の内部記憶回路に記録したりするには、デジタル回路に信号を送る必要がある。つまり、図12に示したように、位相比較結果がD−FF109等にホールドされクロック同期転送される必要がある。
【0016】
しかしながら、図14に一例を示すように、比較信号CMPと基準信号REFの位相差(P11)が小さくメタステーブル等が発生した場合には、位相比較結果の確定に時間を要し、SR−FFによる位相判定時間が長くなる。したがって、基準信号REFのネガティブエッジ(時刻T61)から遅延時間DW1、DW2が経過した時刻T63までに位相比較結果が確定していないと、正確な位相比較結果をホールドすることができない。また、図15に一例を示すように遅延時間DW2が長すぎても、基準信号REFのネガティブエッジ(時刻T71)から遅延時間DW1、DW2が経過した時刻T74になる以前に、位相比較結果がクリアされてしまい正確な位相比較結果をホールドすることができない。また、ネガティブエッジにより位相比較結果をD−FFにホールドするため、位相比較可能な周波数限界が信号のデューティ比に依存する。
【0017】
本発明は、2つの信号の位相比較結果を確実に保持できる位相比較器及びそれを用いた測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一観点によれば、第1入力信号と第2入力信号の位相を比較してその位相関係を出力する比較部と、前記比較部より出力される位相比較結果を第3入力信号として受信して出力する第1の保持部と、前記比較部の出力に基づいて位相比較結果が確定したか否かを判定し、位相比較結果が確定したと判定した場合には第1制御信号を出力する第1の信号生成部とを備える位相比較器が提供される。第1の保持部は、第1制御信号が出力されている期間は第3入力信号を保持する。
【発明の効果】
【0019】
比較部での位相比較結果が確定したことをもって、第1の信号生成部が第1制御信号を出力し第1の保持部が位相比較結果を保持するので、第1入力信号と第2入力信号の位相比較結果が確定する前に状態が保持されることを防止し、位相比較結果を確実に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る位相比較器の構成例を示すブロック図である。第1の実施形態に係る位相比較器は、比較部10、ホールド信号生成部20、及び第1のホールド回路30を有する。
【0022】
比較部10は、比較信号(例えば、入力データ信号)CMP及び基準信号(例えば、クロック信号)REFが入力される。比較部10は、入力される比較信号CMPと基準信号REFの位相を比較し、位相比較結果を出力信号S1により2値で出力する。
【0023】
ホールド信号生成部20は、比較部10の出力信号S1が入力され、該出力信号S1に基づいてホールド信号S3を生成し出力する。具体的には、ホールド信号生成部20は、入力される信号S1に基づいて、比較信号CMPと基準信号REFの位相比較結果が確定
したか否かを判定し、位相比較結果が確定したと判定した場合にはホールド信号S3を出力(アサート)する。また、ホールド信号生成部20は、比較部10の出力信号S1、すなわち位相比較結果を第1のホールド回路30に合うように処理し出力信号S2として出力する。
【0024】
第1のホールド回路30は、ホールド信号生成部20より出力信号S2及びホールド信号S3が入力される。第1のホールド回路30は、ホールド信号S3に応じて、出力信号S2により伝達される位相比較結果を保持(ホールド)し、出力信号OUTとして出力する。第1のホールド回路30は、ホールド信号S3がアサートされている期間及び出力信号S2が所定値である期間において値を保持して出力信号OUTとして出力し、それ以外の期間(ホールド信号S3が停止(ネゲート)されかつ出力信号S2が所定値でない期間)において出力信号S2を取り込んで出力信号OUTとして出力する。
【0025】
図2は、図1に示した位相比較器の回路構成例を示す図である。
比較部10は、2つのNAND回路11、12を有する。NAND回路11は、比較信号CMP、及びNAND回路12の出力QNが入力される。また、NAND回路12は、基準信号REF、及びNAND回路11の出力QPが入力される。すなわち、NAND回路11、12により、SR−FFが構成されている。このように、比較信号CMPと基準信号REFの位相比較を行う比較部10にSR−FFを使用することで、比較部自体の不感帯を非常に狭くすることができ、高感度の位相比較を実現することができる。なお、位相比較精度の向上等を図るためにNAND回路11、12の駆動能力を調整可能なように構成しても良い。
【0026】
比較部10の論理式を以下に示す。
【0027】
【数1】
【0028】
すなわち、比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の場合には、比較部10の出力QP、QNがともに“H”になる。比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から比較信号CMPが“H”に変化すると、出力QPが“L”になり、出力QNが“H”を維持する。一方、比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から基準信号REFが“H”に変化すると、出力QNが“L”になり、出力QPが“H”を維持する。
【0029】
ホールド信号生成部20は、2つのインバータ21、22及び否定論理和演算回路(NOR回路)23を有する。インバータ21は、比較部10内のNAND回路11の出力QPが入力され、インバータ22は、比較部10内のNAND回路12の出力QNが入力される。NOR回路23は、インバータ21、22の各出力AP、ANが入力され、その演算結果をホールド信号Cとして出力する。
【0030】
すなわち、比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の場合にはインバータ21、22の出力AP、ANがともに“L”であるので、NOR回路23の出力であるホールド信号Cは“H”(ネゲート)になる。比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から、比較信号CMP又は基準信号REFの少なくとも一方が“H”になり、比較部10での位相比較結果が確定すると、出力AP、ANの一方が“H”になりホールド信号Cは“L”にアサートされる。
【0031】
第1のホールド回路30は、ホールド信号生成部20内のインバータ21、22の出力AP、ANがそれぞれ入力される入力端子AP,AN、及びNOR回路23の出力(ホールド信号C)が入力される入力端子Cを有する。また、第1のホールド回路30は、出力端子XP、XNを有し、出力端子XPからの出力が位相比較器の出力信号OUTとして出力される。
【0032】
ホールド回路30の論理式を以下に示す。
【0033】
【数2】
【0034】
すなわち、第1のホールド回路30は、入力端子Cへの入力が“L”の場合には、ホールド状態となり前の値を保持し出力する。また、第1のホールド回路30は、入力端子Cへの入力が“H”であって、かつ入力端子AP,ANへの入力がともに“L”の場合にも、ホールド状態となり前の値を保持し出力する。それ以外の場合、すなわち入力端子Cへの入力が“H”であって、かつ入力端子AP,ANへの入力の一方が“H”の場合には、オープン状態となり入力端子AP,ANへの入力を出力端子XP、XNから出力する。
【0035】
図3は、ホールド回路30の具体的な回路構成例を示す図である。
図3には、一例として入力AP,ANやホールド信号Cのパルス幅が狭くても入力値を書き込むことができるパルスドラッチ型のホールド回路を示している。
【0036】
図3において、Nチャネルトランジスタ31、32のゲートにはホールド信号Cが供給され、Nチャネルトランジスタ33、34のゲートには入力AP、ANが供給される。トランジスタ31は、ソースが基準電位(“L”レベルに相当)に接続され、ドレインがトランジスタ33のソースに接続される。同様に、トランジスタ32は、ソースが基準電位に接続され、ドレインがトランジスタ34のソースに接続される。
【0037】
また、インバータ35、36によりラッチが構成される。トランジスタ33のドレインが、インバータ35の入力端とインバータ36の出力端との接続点に接続され、トランジスタ34のドレインが、インバータ35の出力端とインバータ36の入力端との接続点に接続される。インバータ35の出力が出力XPとして出力され、インバータ36の出力が出力XNとして出力される。なお、図3に示したホールド回路30を用いる場合には、入力値の取り込み時において、入力ANは入力APの反転となっていなければならない。
【0038】
図3に示したホールド回路30の入出力を下表に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
図3に示すようなパルスドラッチ型のホールド回路30を用いることで、上述したように入力AP,ANやホールド信号Cのパルス幅が狭くても入力値を書き込むことができ、入力AP,ANやホールド信号Cのパルス幅が狭くなりやすい高周波信号でも安定した動作を実現することができる。例えば、比較部10の不感帯付近で動作して比較部10の応答速度が低下し、かつ測定対象の信号の周波数が高いために十分なパルス幅のホールド信号Cが出力されなくても入力AP,ANを書き込んでホールドすることができる。
【0041】
図4は、ホールド回路30の他の回路構成例を示す図である。
図4には、一例としてSR−FFを使用した一般的なクロック同期式のホールド回路を示している。
【0042】
図4において、NAND回路71は、ホールド信号C及び入力APが入力され、NAND回路72は、ホールド信号C及び入力ANが入力される。また、NAND回路73は、NAND回路71の出力が入力されるとともに、NAND回路74の出力が入力される。同様に、NAND回路74は、NAND回路72の出力が入力されるとともに、NAND回路73の出力が入力される。すなわち、NAND回路73及び74によりSR−FFが構成され、NAND回路73の出力が出力XPとして出力され、NAND回路74の出力が出力XNとして出力される。なお、図4に示したホールド回路30を用いる場合には、ホールド時において、入力ANは入力APの反転となっていなければならない。
【0043】
図4に示したホールド回路30の論理式を以下に示す。
【0044】
【数3】
【0045】
次に、第1の実施形態に係る位相比較器の動作について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る位相比較器の動作例を示すタイミングチャートである。
【0046】
第1の実施形態に係る位相比較器において、図5に示すように比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から、時刻T11にて比較信号CMPが“H”に変化すると、比較部10での比較信号CMPと基準信号REFの位相比較により出力QPが“H”から“L”に変化する(時刻T12)。
【0047】
これにより、時刻T13にてホールド信号生成部20内のインバータ21の出力APが“L”から“H”に変化する。このとき、ホールド信号Cが“H”であるので、インバータ21、22の出力AP、ANはホールド回路30に取り込まれる。また、ホールド信号生成部20は、インバータ21の出力APが“L”から“H”に変化することにより比較部10での位相比較結果が確定したと判定し、時刻T13からNOR回路23による遅延時間が経過した時刻T14にてホールド信号Cが“L”にアサートされる。これにより、ホールド回路30は、ホールド状態となり、時刻T14における入力値、すなわち2値で出力された確定した位相比較結果を保持する。
【0048】
続いて、時刻T15にて比較信号CMPが“H”から“L”に変化することにより、時刻T16から時刻T20に示すように各信号が変化する。このとき、インバータ21、22の出力AP、ANも変化するが、時刻T20まではホールド信号Cが“L”に維持されるので出力AP、ANはホールド回路30に取り込まれない。すなわち、時刻T14から時刻T20までの期間P1において、ホールド回路30は、アサートされたホールド信号Cに基づいて保持動作を行い、値を保持し続ける。
【0049】
ここで、時刻T19においてインバータ21、22の出力AP、ANがともに“L”になることで、時刻T20において、ホールド信号生成部20から出力されるホールド信号Cが“L”から“H”に変化する。したがって、ホールド回路30は、ホールド信号Cによる保持動作を行わないが、インバータ21、22の出力AP、ANがともに“L”であることによる保持動作を行い、ホールド状態を維持して値を保持する。時刻T21にて基準信号REFが“L”から“H”に変化することにより時刻T21から時刻T24に示すように各信号が変化し、インバータ21、22の出力AP、ANの一方が“H”になる時刻T23までは出力AP、ANがともに“L”であることによる保持動作が行われる。すなわち、時刻T19から時刻T23までの期間P2において、ホールド回路30は、入力端子AP,ANへの入力がともに“L”であることによって入力値を保持し続ける。
【0050】
したがって、第1の実施形態に係る位相比較器では、図5に示すように期間P1ではホールド信号Cにより値を保持し、期間P2ではホールド回路30の機能(所定入力によるホールド)により値が保持される。また、期間P1と期間P2とは、ホールド信号生成部20内のNOR回路23の遅延時間分だけオーバーラップするので、比較部10による位相比較結果を確実に保持し続けることができる。また、図5においてP3に示すように、比較信号CMP及び基準信号REFのポジティブエッジによる位相比較結果を、比較信号CMP及び基準信号REFのネガティブエッジによりクリアされることなく保持することができる。そのため、信号のデューティ比に依存することがなくなり、位相比較可能な周波数限界を上げることができ、高速かつ高感度な位相比較を実現することができる。
【0051】
第1の実施形態によれば、比較部10にて比較信号CMPと基準信号REFの位相比較を行い、ホールド信号生成部20が、比較部10の位相比較の結果が確定したことをもって、位相比較結果をホールド回路30に保持させるためのホールド信号Cをアサートする。これにより、比較部10の位相比較の結果が確定する前に、位相比較結果として値を保持することを防止し、確定した位相比較結果を確実に保持することができる。
また、図12に示した位相比較器のようなワンショットパルスも使用しないので、時間的な制約が緩和され高速かつ高感度な位相比較動作を実現することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0053】
第2の実施形態に係る位相比較器は、第1の実施形態に係る位相比較器に対してさらに1つのホールド回路を設け、ホールド信号とクロック信号を基にクロック同期信号を生成
して新たに設けたホールド回路のホールド制御を行う。なお、以下に説明する第2の実施形態では、基準信号REFはクロック信号であるとする。
【0054】
図6は、第2の実施形態に係る位相比較器の構成例を示すブロック図である。この図6において、図1に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第2の実施形態に係る位相比較器は、比較部10、ホールド信号生成部20、第1のホールド回路30、クロック同期信号生成部40、及び第2のホールド回路50を有する。
【0055】
クロック同期信号生成部40は、基準信号REF及びホールド信号生成部20よりホールド信号S3が入力される。クロック同期信号生成部40は、基準信号REF及びホールド信号S3に基づいてクロック同期信号S5を生成し出力する。具体的には、クロック同期信号生成部40は、入力されるホールド信号S3に基づいて位相比較結果が確定したことを検出し、かつ基準信号REFのポジティブエッジを検出して、その検出結果を基にクロック同期信号S5を出力する。
【0056】
第2のホールド回路50は、第1のホールド回路30より出力信号S4として出力される位相比較結果及びクロック同期信号S5が入力される。第2のホールド回路50は、クロック同期信号S5に応じて、出力信号S4により伝達される位相比較結果を取り込んで保持し、出力信号OUTとして出力する。
【0057】
図7は、図6に示した位相比較器の回路構成例を示す図である。この図7において、図2に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、図7においては、ホールド信号をC1とし、第1のホールド回路30の出力端子XP、XNからの出力を出力XP1、XN1としている。
【0058】
クロック同期信号生成部40は、NAND回路41、インバータ42、44、D−FF43、及び遅延回路45を有する。NAND回路41は、インバータ42を介してホールド信号C1が入力されるとともに、D−FF43の出力CKPが入力される。NAND回路41の出力がインバータ44を介してクロック同期信号C2として出力される。
【0059】
D−FF43は、データ入力端子が“H”に固定され、クロック入力端子に基準信号REFが供給される。D−FF43は、基準信号REFのポジティブエッジを検出すると、その出力CKPが“H”に固定される。なお、D−FF43は、遅延回路45を介して供給されるクロック同期信号C2に応じてリセットされる。遅延回路45は、クロック同期信号C2を所定時間だけ遅延させるとともに反転して出力する。遅延回路45は、例えば奇数段のインバータを縦続接続して構成される。
【0060】
第2のホールド回路50は、第1ホールド回路30と同様に構成される。第2のホールド回路50は、第1のホールド回路30の出力XP1、XN1がそれぞれ入力される入力端子AP,AN、及びクロック同期信号生成部40より出力されるクロック同期信号C2が入力される入力端子Cを有する。また、第2のホールド回路50は、出力端子XP、XNを有し、出力端子XPからの出力XP2が位相比較器の出力信号OUTとして出力される。
【0061】
第2のホールド回路50は、入力端子Cへの入力が“L”の場合には、ホールド状態となり前の値を保持して出力し、入力端子Cへの入力が“H”の場合には、オープン状態となり入力端子AP,ANへの入力を出力端子XP、XNから出力する。
【0062】
次に、第2の実施形態に係る位相比較器の動作について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る位相比較器の動作例を示すタイミングチャートである。
【0063】
第2の実施形態に係る位相比較器において、比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から、比較信号CMP及び基準信号REFの少なくとも一方が“H”に変化すると、第1の実施形態と同様にして比較部10での位相比較結果が第1のホールド回路30に保持される。
【0064】
ここで、図8に示すように、比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から、時刻T31にて基準信号REFが“H”に変化したとする。これにより、クロック同期信号生成部40内のD−FF43は、基準信号REFのポジティブエッジを検出し、その出力CKPが“H”となる(時刻T32)。
【0065】
比較部10での位相比較結果が確定する前は、ホールド信号C1が“H”であるのでインバータ42の出力CLPは“L”である。したがって、クロック同期信号C2は“L”であり、第2のホールド回路50は、ホールド状態となって値を保持する。
【0066】
その後、比較部10での位相比較結果が確定することによりホールド信号C1が“L”となると、位相比較結果が第1のホールド回路30に保持される(時刻T33)。
【0067】
また、D−FF43の出力CKPが“H”であり、かつホールド信号C1が“L”になってインバータ42の出力CLPが“H”になると、クロック同期信号C2が“H”となる(時刻34)。これにより、第2のホールド回路50は、オープン状態となって、第1のホールド回路30の出力XP1、XN1(すなわち、保持している比較部10での確定した位相比較結果)を取り込んで、出力XP2、XN2として出力する。時刻T35に示すように、基準信号REFが“L”に変化しても、基準信号REFのネガティブエッジではD−FF43の出力を変化させないために出力CKPは“H”を維持し、クロック同期信号C2が“H”に維持される。
【0068】
そして、クロック同期信号C2が“H”となってから遅延回路45による遅延時間が経過した時刻T36にて、D−FF43がリセットされ、出力CKPが“L”になる。これにより、時刻T37にて、クロック同期信号C2が“L”となり、第2のホールド回路50は、ホールド状態となって値を保持する。
【0069】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態に係る位相比較器と同様の効果が得られるとともに、基準信号REFに同期させ、位相比較結果を外部に出力したり内部記憶回路に記録したりすることができる。
【0070】
以下、上述した各実施形態に係る位相比較器を適用した測定装置について説明する。上述した各実施形態に係る位相比較器を測定装置に用いることで、高速かつ高感度な位相比較動作を実現し、かつ高周波信号でも安定した動作を実現することができる。
図9は、上述した各実施形態に係る位相比較器を用いて構成された測定装置の構成例を示す図であり、図9においては、一例としてTDCを示している。
【0071】
図9において、FC0〜FC7、FR0〜FR7、SC1〜SC7、SR1〜SR7は可変遅延素子である。可変遅延素子FC0〜FC7、FR0〜FR7の遅延時間はτfで
あり、可変遅延素子SC1〜FC7、SR1〜FR7の遅延時間はτsである。ここで、
遅延時間τf<遅延時間τsとする。
【0072】
可変遅延素子FC0〜FC7は、縦続接続され比較信号CMPを遅延させる。可変遅延素子FC0の出力をPD0.Cとし、可変遅延素子FCi(i=1〜7)の出力をPDi
+.Cとする。また、可変遅延素子FR0〜FR7は、縦続接続され基準信号REFを遅延させる。可変遅延素子FR0の出力をPD0.Rとし、可変遅延素子FRi(i=1〜7)の出力をPDi+.Rとする。
【0073】
同様に、可変遅延素子SC1〜SC7は、縦続接続され比較信号CMPを遅延させる。可変遅延素子SCi(i=1〜7)の出力をPDi−.Cとする。また、可変遅延素子SR1〜SR7は、縦続接続され基準信号REFを遅延させる。可変遅延素子SRi(i=1〜7)の出力をPDi−.Rとする。
【0074】
また、90、91A、91B、・・・、97A、97Bは上述した実施形態に係る位相比較器である。位相比較器90は、PD0.C及びPD0.Rが入力され、その位相比較結果をQf0として出力する。位相比較器91Aは、PD1+.C及びPD1+.Rが入力され、その位相比較結果をQf1+として出力し、位相比較器91Bは、PD1−.C及びPD1−.Rが入力され、その位相比較結果をQf1−として出力する。同様に、位相比較器97Aは、PD7+.C及びPD7+.Rが入力され、その位相比較結果をQf7+として出力し、位相比較器97Bは、PD7−.C及びPD7−.Rが入力され、その位相比較結果をQf7−として出力する。
【0075】
図9に示すTDCは、位相比較器90、91A、91B、・・・、97A、97Bの出力Qf0、Qf1+、Qf1−、・・・、Qf7+、Qf7−により、比較信号CMPと基準信号REFの位相差をサーモメータコードで出力する。
図10及び図11は、図9に示したTDCの出力例を示している。図10に示すようなサーモメータコードが出力された場合には、比較信号CMPが基準信号REFに対して4(τs−τf)分の時間だけ遅れていることとなる。一方、図11に示すようなサーモメータコードが出力された場合には、比較信号CMPが基準信号REFに対して4(τs−τf)分の時間だけ進んでいることとなる。
【0076】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明の諸態様を付記として以下に示す。
【0077】
(付記1)第1入力信号と第2入力信号の位相を比較し、前記第1入力信号と前記第2入力信号の位相関係を出力する比較部と、
前記比較部より出力される位相比較結果を第3入力信号として受信して出力する第1の保持部と、
前記比較部の出力に基づいて前記比較部による位相比較結果が確定したか否かを判定し、位相比較結果が確定したと判定した場合には第1制御信号を出力する第1の信号生成部とを備え、
前記第1の保持部は、前記第1制御信号が出力されている期間は前記第3入力信号を保持することを特徴とする位相比較器。
(付記2)前記第1入力信号と前記第2入力信号の位相比較結果が確定しておらず所定出力が前記比較部から出力されている場合には、前記第1の保持部は前記第3入力信号を保持することを特徴とする付記1記載の位相比較器。
(付記3)前記第1の信号生成部は、前記所定出力が前記比較部から出力されていることを検出して、前記第1制御信号を停止することを特徴とする付記2記載の位相比較器。
(付記4)前記第1の信号生成部は、前記比較部の出力が前記所定出力から変化することによって位相比較結果が確定したことを検出し、検出してから所定時間後に前記第1制御信号を出力することを特徴とする付記2記載の位相比較器。
(付記5)前記第1の保持部の出力を第4入力信号として受信して出力する第2の保持部と、
前記比較部による位相比較結果が確定したことを検出し、かつ基準クロックに基づいて、第2制御信号を停止する第2の信号生成部とを備え、
前記第2の保持部は、前記第2制御信号が出力されている期間は前記第4入力信号を保持することを特徴とする付記1〜4の何れか1項に記載の位相比較器。
(付記6)前記第2の信号生成部は、前記第2制御信号を停止してから所定時間後に前記第2制御信号を出力することを特徴とする付記5記載の位相比較器。
(付記7)前記第2の信号生成部は、前記第1制御信号と前記基準クロックのエッジ検出信号とを論理演算し、演算結果を前記第2制御信号として出力することを特徴とする付記5記載の位相比較器。
(付記8)付記1〜7の何れか1項に記載の位相比較器と、
比較信号を遅延させる複数の遅延素子と、
基準信号を遅延させる複数の遅延素子とを備え、
組毎に遅延量を互いに異ならせた前記比較信号と前記基準信号との組を各位相比較器に入力し、前記位相比較器の出力を基に前記比較信号と前記基準信号の位相差を測定することを特徴とする測定装置。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1の実施形態に係る位相比較器の構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る位相比較器の回路構成例を示す図である。
【図3】ホールド回路の回路構成例を示す図である。
【図4】ホールド回路の他の回路構成例を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る位相比較器の動作例を示すタイミングチャートである。
【図6】第2の実施形態に係る位相比較器の構成例を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係る位相比較器の回路構成例を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る位相比較器の動作例を示すタイミングチャートである。
【図9】本実施形態における位相比較器を適用した測定装置の構成例を示す図である。
【図10】図9に示した測定装置による出力例を示す図である。
【図11】図9に示した測定装置による出力例を示す図である。
【図12】従来の位相比較器の構成例を示す図である。
【図13】図12に示した位相比較器の動作例を示すタイミングチャートである。
【図14】図12に示した位相比較器の他の動作例を示すタイミングチャートである。
【図15】図12に示した位相比較器のその他の動作例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0079】
10 比較部
20 ホールド信号生成部
30、50 ホールド回路
40 クロック同期信号生成部
CMP 比較信号
REF 基準信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの信号の位相を比較して比較結果を出力する位相比較器及びそれを備える測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路に搭載されるTDC(Time-to-Digital Converter)やDLL(Delay Locked Loop)回路において、2つの信号の位相を比較して2値で結果を出力する位相比較器が使用されている。この位相比較器は、2つの信号の位相差を測定するのではなく、一方の信号を基準信号として、他方の信号(比較信号)の位相が進んでいるか、遅れているかを判定する。その結果、例えば、基準信号に比べて比較信号の位相が進んでいれば比較結果として“1”を出力し、基準信号に比べて比較信号の位相が遅れていれば比較結果として“0”を出力する。
【0003】
図12に、従来の位相比較器の構成例を示す(例えば、特許文献1参照。)。
比較信号(例えば、入力データ信号)CMPが、否定論理積演算回路(NAND回路)101に入力されるとともに、遅延回路A102及びインバータ103により遅延時間DW1だけ遅延されてNAND回路101に入力される。また、基準信号(例えば、クロック信号)REFが、NAND回路104に入力されるとともに、遅延回路A105及びインバータ106により遅延時間DW1だけ遅延されてNAND回路104に入力される。
【0004】
NAND回路101の出力Z1がNAND回路107に入力され、NAND回路104の出力Z2がNAND回路108に入力される。また、NAND回路107にはNAND回路108の出力Q2が入力され、NAND回路108にはNAND回路107の出力Q1が入力される。すなわち、NAND回路107、108により、セット・リセットフリップフロップ(SR−FF)が構成されている。
【0005】
NAND回路107の出力Q1がDフリップフロップ(D−FF)109に入力される。また、D−FF109には、遅延回路A105及びインバータ106により遅延時間DW1だけ遅延され、さらに遅延回路B110により遅延時間DW2だけ遅延されて基準信号REFが入力される。そして、D−FF109の出力が、位相比較器の出力OUTとして出力される。
【0006】
図12に示した位相比較器において、比較信号CMPがローレベル(“L”)からハイレベル(“H”)に変化すると、図13に示したように期間DW1だけ“L”となるワンショットパルスがNAND回路101の出力Z1に発生する(時刻T51〜T53)。同様に、基準信号REFが“L”から“H”に変化すると、期間DW1だけ“L”となるワンショットパルスがNAND回路104の出力Z2に発生する(時刻T52〜T54)。
【0007】
NAND回路101、104の出力Z1、Z2がともに“L”になることにより、NAND回路107、108の出力Q1、Q2がともに“H”になる。そして、出力Z1、Z2の一方が“H”になることに応じて出力Q1、Q2の一方のみが“L”になり(時刻T53、T54)、続いて出力Z1、Z2がともに“H”になって位相比較結果が保持される。具体的には、NAND回路101の出力Z1が先に“H”になると、NAND回路107の出力Q1が“L”となり、出力Q1、Q2の各々が“L”、“H”である状態が位相比較結果として保持される。一方、NAND回路104の出力Z2が先に“H”になると、NAND回路108の出力Q2が“L”となり、出力Q1、Q2の各々が“H”、“L”である状態が位相比較結果として保持される。
【0008】
その後、基準信号REFが“H”から“L”に変化すると(時刻T55)、遅延回路A105及びインバータ106により遅延時間DW1だけ遅れて出力R1が“L”から“H”に変化し(時刻T56)、さらに遅延回路B110により遅延時間DW2だけ遅れて出力R2が“L”から“H”に変化する(時刻T57)。D−FF109は、この出力R2が“L”から“H”に変化することによって、位相比較結果であるNAND回路107の出力Q1をホールドし出力OUTとして出力する(時刻T58)。
【0009】
【特許文献1】特開2003−243981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
2つの信号の位相を比較して2値で結果を出力する位相比較器は、2つの信号の位相差が狭まると位相比較を行うことができなくなる。これは不感帯と呼ばれ、通常、位相比較器は、ある程度の幅の不感帯を持つ。位相比較器には当然ながら応答時間があり、これがTDCのタイミングの大部分を占めている。特に、位相比較器が不感帯付近で動作する場合には応答速度が低下する。例えば、信号が“L”から“H”に変化するポジティブエッジ同士の位相比較を行う位相比較器では、回路構成によっては“H”から“L”に変化するネガティブエッジにより位相比較結果がクリアされるものもある。
【0011】
TDCは、異なる遅延時間τs、τfの遅延素子を用いて構成され、遅延素子でつくる遅延差を時間分解能(τs−τf)として2つの信号の位相差をコード(例えば、サーモメータコード)で出力する。測定時間分解能が細かいほど、位相比較器の不感帯の広さが誤差要因になる。また、位相比較器の応答時間がTDCのタイミングの最もクリティカルな要因になっているので、位相比較器がTDCの速度性能の上限を決めている。また、位相比較器の位相比較結果がネガティブエッジでクリアされる場合には、信号のデューティ(Duty)比がTDCの速度上限を決めてしまうこともある。
【0012】
したがって、高周波信号の位相差を高分解能で測定する目的のTDCでは、位相比較器は、不感帯が狭く(高感度)、不感帯付近でも高速動作し、かつ信号のデューティ比に依存しないことが要求される。
【0013】
2つの信号の位相を比較して2値で結果を出力する位相比較器として、SR−FF、及びD−FFがある。SR−FFは、不感帯が狭く(1psec程度)、位相比較の感度が高い。しかし、SR−FFは、ネガティブエッジにより位相比較結果がクリアされてしまうため、周波数限界が被測定信号のデューティ比に依存するという欠点を持つ。また、D−FFは、NANDゲートで構成する回路方式のものと、インバータとトランスファーゲートとで構成する回路方式のものがある。NANDゲートで構成する回路方式のものは、SR−FFを組み合わせて使うために周波数限界が被測定信号のデューティ比に依存する。一方、インバータとトランスファーゲートとで構成する回路方式のものは、被測定信号のネガティブエッジは作用しないので、周波数限界が被測定信号のデューティ比に依存せず位相比較器の応答速度に依存するという点では優れているが不感帯が広い(8psec程度)。
【0014】
図12に示したように、信号のネガティブエッジで位相比較結果がクリアされることを防止するために、位相比較器の後段にホールド回路を設ける方法がある。しかしながら、位相比較結果をホールドするためにワンショットパルスを使用しており、SR−FFが応答できる十分なパルス幅を持ち、かつ各信号に基づくワンショットパルスがともに“L”となって前の位相比較結果がクリアされる必要がある。したがって、図12に示した遅延回路A102、105による遅延時間DW1を十分長くしなければならず、動作速度が低
下する。
【0015】
また、位相比較結果を外部に出力したり、RAM等の内部記憶回路に記録したりするには、デジタル回路に信号を送る必要がある。つまり、図12に示したように、位相比較結果がD−FF109等にホールドされクロック同期転送される必要がある。
【0016】
しかしながら、図14に一例を示すように、比較信号CMPと基準信号REFの位相差(P11)が小さくメタステーブル等が発生した場合には、位相比較結果の確定に時間を要し、SR−FFによる位相判定時間が長くなる。したがって、基準信号REFのネガティブエッジ(時刻T61)から遅延時間DW1、DW2が経過した時刻T63までに位相比較結果が確定していないと、正確な位相比較結果をホールドすることができない。また、図15に一例を示すように遅延時間DW2が長すぎても、基準信号REFのネガティブエッジ(時刻T71)から遅延時間DW1、DW2が経過した時刻T74になる以前に、位相比較結果がクリアされてしまい正確な位相比較結果をホールドすることができない。また、ネガティブエッジにより位相比較結果をD−FFにホールドするため、位相比較可能な周波数限界が信号のデューティ比に依存する。
【0017】
本発明は、2つの信号の位相比較結果を確実に保持できる位相比較器及びそれを用いた測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一観点によれば、第1入力信号と第2入力信号の位相を比較してその位相関係を出力する比較部と、前記比較部より出力される位相比較結果を第3入力信号として受信して出力する第1の保持部と、前記比較部の出力に基づいて位相比較結果が確定したか否かを判定し、位相比較結果が確定したと判定した場合には第1制御信号を出力する第1の信号生成部とを備える位相比較器が提供される。第1の保持部は、第1制御信号が出力されている期間は第3入力信号を保持する。
【発明の効果】
【0019】
比較部での位相比較結果が確定したことをもって、第1の信号生成部が第1制御信号を出力し第1の保持部が位相比較結果を保持するので、第1入力信号と第2入力信号の位相比較結果が確定する前に状態が保持されることを防止し、位相比較結果を確実に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る位相比較器の構成例を示すブロック図である。第1の実施形態に係る位相比較器は、比較部10、ホールド信号生成部20、及び第1のホールド回路30を有する。
【0022】
比較部10は、比較信号(例えば、入力データ信号)CMP及び基準信号(例えば、クロック信号)REFが入力される。比較部10は、入力される比較信号CMPと基準信号REFの位相を比較し、位相比較結果を出力信号S1により2値で出力する。
【0023】
ホールド信号生成部20は、比較部10の出力信号S1が入力され、該出力信号S1に基づいてホールド信号S3を生成し出力する。具体的には、ホールド信号生成部20は、入力される信号S1に基づいて、比較信号CMPと基準信号REFの位相比較結果が確定
したか否かを判定し、位相比較結果が確定したと判定した場合にはホールド信号S3を出力(アサート)する。また、ホールド信号生成部20は、比較部10の出力信号S1、すなわち位相比較結果を第1のホールド回路30に合うように処理し出力信号S2として出力する。
【0024】
第1のホールド回路30は、ホールド信号生成部20より出力信号S2及びホールド信号S3が入力される。第1のホールド回路30は、ホールド信号S3に応じて、出力信号S2により伝達される位相比較結果を保持(ホールド)し、出力信号OUTとして出力する。第1のホールド回路30は、ホールド信号S3がアサートされている期間及び出力信号S2が所定値である期間において値を保持して出力信号OUTとして出力し、それ以外の期間(ホールド信号S3が停止(ネゲート)されかつ出力信号S2が所定値でない期間)において出力信号S2を取り込んで出力信号OUTとして出力する。
【0025】
図2は、図1に示した位相比較器の回路構成例を示す図である。
比較部10は、2つのNAND回路11、12を有する。NAND回路11は、比較信号CMP、及びNAND回路12の出力QNが入力される。また、NAND回路12は、基準信号REF、及びNAND回路11の出力QPが入力される。すなわち、NAND回路11、12により、SR−FFが構成されている。このように、比較信号CMPと基準信号REFの位相比較を行う比較部10にSR−FFを使用することで、比較部自体の不感帯を非常に狭くすることができ、高感度の位相比較を実現することができる。なお、位相比較精度の向上等を図るためにNAND回路11、12の駆動能力を調整可能なように構成しても良い。
【0026】
比較部10の論理式を以下に示す。
【0027】
【数1】
【0028】
すなわち、比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の場合には、比較部10の出力QP、QNがともに“H”になる。比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から比較信号CMPが“H”に変化すると、出力QPが“L”になり、出力QNが“H”を維持する。一方、比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から基準信号REFが“H”に変化すると、出力QNが“L”になり、出力QPが“H”を維持する。
【0029】
ホールド信号生成部20は、2つのインバータ21、22及び否定論理和演算回路(NOR回路)23を有する。インバータ21は、比較部10内のNAND回路11の出力QPが入力され、インバータ22は、比較部10内のNAND回路12の出力QNが入力される。NOR回路23は、インバータ21、22の各出力AP、ANが入力され、その演算結果をホールド信号Cとして出力する。
【0030】
すなわち、比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の場合にはインバータ21、22の出力AP、ANがともに“L”であるので、NOR回路23の出力であるホールド信号Cは“H”(ネゲート)になる。比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から、比較信号CMP又は基準信号REFの少なくとも一方が“H”になり、比較部10での位相比較結果が確定すると、出力AP、ANの一方が“H”になりホールド信号Cは“L”にアサートされる。
【0031】
第1のホールド回路30は、ホールド信号生成部20内のインバータ21、22の出力AP、ANがそれぞれ入力される入力端子AP,AN、及びNOR回路23の出力(ホールド信号C)が入力される入力端子Cを有する。また、第1のホールド回路30は、出力端子XP、XNを有し、出力端子XPからの出力が位相比較器の出力信号OUTとして出力される。
【0032】
ホールド回路30の論理式を以下に示す。
【0033】
【数2】
【0034】
すなわち、第1のホールド回路30は、入力端子Cへの入力が“L”の場合には、ホールド状態となり前の値を保持し出力する。また、第1のホールド回路30は、入力端子Cへの入力が“H”であって、かつ入力端子AP,ANへの入力がともに“L”の場合にも、ホールド状態となり前の値を保持し出力する。それ以外の場合、すなわち入力端子Cへの入力が“H”であって、かつ入力端子AP,ANへの入力の一方が“H”の場合には、オープン状態となり入力端子AP,ANへの入力を出力端子XP、XNから出力する。
【0035】
図3は、ホールド回路30の具体的な回路構成例を示す図である。
図3には、一例として入力AP,ANやホールド信号Cのパルス幅が狭くても入力値を書き込むことができるパルスドラッチ型のホールド回路を示している。
【0036】
図3において、Nチャネルトランジスタ31、32のゲートにはホールド信号Cが供給され、Nチャネルトランジスタ33、34のゲートには入力AP、ANが供給される。トランジスタ31は、ソースが基準電位(“L”レベルに相当)に接続され、ドレインがトランジスタ33のソースに接続される。同様に、トランジスタ32は、ソースが基準電位に接続され、ドレインがトランジスタ34のソースに接続される。
【0037】
また、インバータ35、36によりラッチが構成される。トランジスタ33のドレインが、インバータ35の入力端とインバータ36の出力端との接続点に接続され、トランジスタ34のドレインが、インバータ35の出力端とインバータ36の入力端との接続点に接続される。インバータ35の出力が出力XPとして出力され、インバータ36の出力が出力XNとして出力される。なお、図3に示したホールド回路30を用いる場合には、入力値の取り込み時において、入力ANは入力APの反転となっていなければならない。
【0038】
図3に示したホールド回路30の入出力を下表に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
図3に示すようなパルスドラッチ型のホールド回路30を用いることで、上述したように入力AP,ANやホールド信号Cのパルス幅が狭くても入力値を書き込むことができ、入力AP,ANやホールド信号Cのパルス幅が狭くなりやすい高周波信号でも安定した動作を実現することができる。例えば、比較部10の不感帯付近で動作して比較部10の応答速度が低下し、かつ測定対象の信号の周波数が高いために十分なパルス幅のホールド信号Cが出力されなくても入力AP,ANを書き込んでホールドすることができる。
【0041】
図4は、ホールド回路30の他の回路構成例を示す図である。
図4には、一例としてSR−FFを使用した一般的なクロック同期式のホールド回路を示している。
【0042】
図4において、NAND回路71は、ホールド信号C及び入力APが入力され、NAND回路72は、ホールド信号C及び入力ANが入力される。また、NAND回路73は、NAND回路71の出力が入力されるとともに、NAND回路74の出力が入力される。同様に、NAND回路74は、NAND回路72の出力が入力されるとともに、NAND回路73の出力が入力される。すなわち、NAND回路73及び74によりSR−FFが構成され、NAND回路73の出力が出力XPとして出力され、NAND回路74の出力が出力XNとして出力される。なお、図4に示したホールド回路30を用いる場合には、ホールド時において、入力ANは入力APの反転となっていなければならない。
【0043】
図4に示したホールド回路30の論理式を以下に示す。
【0044】
【数3】
【0045】
次に、第1の実施形態に係る位相比較器の動作について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る位相比較器の動作例を示すタイミングチャートである。
【0046】
第1の実施形態に係る位相比較器において、図5に示すように比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から、時刻T11にて比較信号CMPが“H”に変化すると、比較部10での比較信号CMPと基準信号REFの位相比較により出力QPが“H”から“L”に変化する(時刻T12)。
【0047】
これにより、時刻T13にてホールド信号生成部20内のインバータ21の出力APが“L”から“H”に変化する。このとき、ホールド信号Cが“H”であるので、インバータ21、22の出力AP、ANはホールド回路30に取り込まれる。また、ホールド信号生成部20は、インバータ21の出力APが“L”から“H”に変化することにより比較部10での位相比較結果が確定したと判定し、時刻T13からNOR回路23による遅延時間が経過した時刻T14にてホールド信号Cが“L”にアサートされる。これにより、ホールド回路30は、ホールド状態となり、時刻T14における入力値、すなわち2値で出力された確定した位相比較結果を保持する。
【0048】
続いて、時刻T15にて比較信号CMPが“H”から“L”に変化することにより、時刻T16から時刻T20に示すように各信号が変化する。このとき、インバータ21、22の出力AP、ANも変化するが、時刻T20まではホールド信号Cが“L”に維持されるので出力AP、ANはホールド回路30に取り込まれない。すなわち、時刻T14から時刻T20までの期間P1において、ホールド回路30は、アサートされたホールド信号Cに基づいて保持動作を行い、値を保持し続ける。
【0049】
ここで、時刻T19においてインバータ21、22の出力AP、ANがともに“L”になることで、時刻T20において、ホールド信号生成部20から出力されるホールド信号Cが“L”から“H”に変化する。したがって、ホールド回路30は、ホールド信号Cによる保持動作を行わないが、インバータ21、22の出力AP、ANがともに“L”であることによる保持動作を行い、ホールド状態を維持して値を保持する。時刻T21にて基準信号REFが“L”から“H”に変化することにより時刻T21から時刻T24に示すように各信号が変化し、インバータ21、22の出力AP、ANの一方が“H”になる時刻T23までは出力AP、ANがともに“L”であることによる保持動作が行われる。すなわち、時刻T19から時刻T23までの期間P2において、ホールド回路30は、入力端子AP,ANへの入力がともに“L”であることによって入力値を保持し続ける。
【0050】
したがって、第1の実施形態に係る位相比較器では、図5に示すように期間P1ではホールド信号Cにより値を保持し、期間P2ではホールド回路30の機能(所定入力によるホールド)により値が保持される。また、期間P1と期間P2とは、ホールド信号生成部20内のNOR回路23の遅延時間分だけオーバーラップするので、比較部10による位相比較結果を確実に保持し続けることができる。また、図5においてP3に示すように、比較信号CMP及び基準信号REFのポジティブエッジによる位相比較結果を、比較信号CMP及び基準信号REFのネガティブエッジによりクリアされることなく保持することができる。そのため、信号のデューティ比に依存することがなくなり、位相比較可能な周波数限界を上げることができ、高速かつ高感度な位相比較を実現することができる。
【0051】
第1の実施形態によれば、比較部10にて比較信号CMPと基準信号REFの位相比較を行い、ホールド信号生成部20が、比較部10の位相比較の結果が確定したことをもって、位相比較結果をホールド回路30に保持させるためのホールド信号Cをアサートする。これにより、比較部10の位相比較の結果が確定する前に、位相比較結果として値を保持することを防止し、確定した位相比較結果を確実に保持することができる。
また、図12に示した位相比較器のようなワンショットパルスも使用しないので、時間的な制約が緩和され高速かつ高感度な位相比較動作を実現することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0053】
第2の実施形態に係る位相比較器は、第1の実施形態に係る位相比較器に対してさらに1つのホールド回路を設け、ホールド信号とクロック信号を基にクロック同期信号を生成
して新たに設けたホールド回路のホールド制御を行う。なお、以下に説明する第2の実施形態では、基準信号REFはクロック信号であるとする。
【0054】
図6は、第2の実施形態に係る位相比較器の構成例を示すブロック図である。この図6において、図1に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第2の実施形態に係る位相比較器は、比較部10、ホールド信号生成部20、第1のホールド回路30、クロック同期信号生成部40、及び第2のホールド回路50を有する。
【0055】
クロック同期信号生成部40は、基準信号REF及びホールド信号生成部20よりホールド信号S3が入力される。クロック同期信号生成部40は、基準信号REF及びホールド信号S3に基づいてクロック同期信号S5を生成し出力する。具体的には、クロック同期信号生成部40は、入力されるホールド信号S3に基づいて位相比較結果が確定したことを検出し、かつ基準信号REFのポジティブエッジを検出して、その検出結果を基にクロック同期信号S5を出力する。
【0056】
第2のホールド回路50は、第1のホールド回路30より出力信号S4として出力される位相比較結果及びクロック同期信号S5が入力される。第2のホールド回路50は、クロック同期信号S5に応じて、出力信号S4により伝達される位相比較結果を取り込んで保持し、出力信号OUTとして出力する。
【0057】
図7は、図6に示した位相比較器の回路構成例を示す図である。この図7において、図2に示した構成要素と同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、図7においては、ホールド信号をC1とし、第1のホールド回路30の出力端子XP、XNからの出力を出力XP1、XN1としている。
【0058】
クロック同期信号生成部40は、NAND回路41、インバータ42、44、D−FF43、及び遅延回路45を有する。NAND回路41は、インバータ42を介してホールド信号C1が入力されるとともに、D−FF43の出力CKPが入力される。NAND回路41の出力がインバータ44を介してクロック同期信号C2として出力される。
【0059】
D−FF43は、データ入力端子が“H”に固定され、クロック入力端子に基準信号REFが供給される。D−FF43は、基準信号REFのポジティブエッジを検出すると、その出力CKPが“H”に固定される。なお、D−FF43は、遅延回路45を介して供給されるクロック同期信号C2に応じてリセットされる。遅延回路45は、クロック同期信号C2を所定時間だけ遅延させるとともに反転して出力する。遅延回路45は、例えば奇数段のインバータを縦続接続して構成される。
【0060】
第2のホールド回路50は、第1ホールド回路30と同様に構成される。第2のホールド回路50は、第1のホールド回路30の出力XP1、XN1がそれぞれ入力される入力端子AP,AN、及びクロック同期信号生成部40より出力されるクロック同期信号C2が入力される入力端子Cを有する。また、第2のホールド回路50は、出力端子XP、XNを有し、出力端子XPからの出力XP2が位相比較器の出力信号OUTとして出力される。
【0061】
第2のホールド回路50は、入力端子Cへの入力が“L”の場合には、ホールド状態となり前の値を保持して出力し、入力端子Cへの入力が“H”の場合には、オープン状態となり入力端子AP,ANへの入力を出力端子XP、XNから出力する。
【0062】
次に、第2の実施形態に係る位相比較器の動作について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る位相比較器の動作例を示すタイミングチャートである。
【0063】
第2の実施形態に係る位相比較器において、比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から、比較信号CMP及び基準信号REFの少なくとも一方が“H”に変化すると、第1の実施形態と同様にして比較部10での位相比較結果が第1のホールド回路30に保持される。
【0064】
ここで、図8に示すように、比較信号CMP及び基準信号REFがともに“L”の状態から、時刻T31にて基準信号REFが“H”に変化したとする。これにより、クロック同期信号生成部40内のD−FF43は、基準信号REFのポジティブエッジを検出し、その出力CKPが“H”となる(時刻T32)。
【0065】
比較部10での位相比較結果が確定する前は、ホールド信号C1が“H”であるのでインバータ42の出力CLPは“L”である。したがって、クロック同期信号C2は“L”であり、第2のホールド回路50は、ホールド状態となって値を保持する。
【0066】
その後、比較部10での位相比較結果が確定することによりホールド信号C1が“L”となると、位相比較結果が第1のホールド回路30に保持される(時刻T33)。
【0067】
また、D−FF43の出力CKPが“H”であり、かつホールド信号C1が“L”になってインバータ42の出力CLPが“H”になると、クロック同期信号C2が“H”となる(時刻34)。これにより、第2のホールド回路50は、オープン状態となって、第1のホールド回路30の出力XP1、XN1(すなわち、保持している比較部10での確定した位相比較結果)を取り込んで、出力XP2、XN2として出力する。時刻T35に示すように、基準信号REFが“L”に変化しても、基準信号REFのネガティブエッジではD−FF43の出力を変化させないために出力CKPは“H”を維持し、クロック同期信号C2が“H”に維持される。
【0068】
そして、クロック同期信号C2が“H”となってから遅延回路45による遅延時間が経過した時刻T36にて、D−FF43がリセットされ、出力CKPが“L”になる。これにより、時刻T37にて、クロック同期信号C2が“L”となり、第2のホールド回路50は、ホールド状態となって値を保持する。
【0069】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態に係る位相比較器と同様の効果が得られるとともに、基準信号REFに同期させ、位相比較結果を外部に出力したり内部記憶回路に記録したりすることができる。
【0070】
以下、上述した各実施形態に係る位相比較器を適用した測定装置について説明する。上述した各実施形態に係る位相比較器を測定装置に用いることで、高速かつ高感度な位相比較動作を実現し、かつ高周波信号でも安定した動作を実現することができる。
図9は、上述した各実施形態に係る位相比較器を用いて構成された測定装置の構成例を示す図であり、図9においては、一例としてTDCを示している。
【0071】
図9において、FC0〜FC7、FR0〜FR7、SC1〜SC7、SR1〜SR7は可変遅延素子である。可変遅延素子FC0〜FC7、FR0〜FR7の遅延時間はτfで
あり、可変遅延素子SC1〜FC7、SR1〜FR7の遅延時間はτsである。ここで、
遅延時間τf<遅延時間τsとする。
【0072】
可変遅延素子FC0〜FC7は、縦続接続され比較信号CMPを遅延させる。可変遅延素子FC0の出力をPD0.Cとし、可変遅延素子FCi(i=1〜7)の出力をPDi
+.Cとする。また、可変遅延素子FR0〜FR7は、縦続接続され基準信号REFを遅延させる。可変遅延素子FR0の出力をPD0.Rとし、可変遅延素子FRi(i=1〜7)の出力をPDi+.Rとする。
【0073】
同様に、可変遅延素子SC1〜SC7は、縦続接続され比較信号CMPを遅延させる。可変遅延素子SCi(i=1〜7)の出力をPDi−.Cとする。また、可変遅延素子SR1〜SR7は、縦続接続され基準信号REFを遅延させる。可変遅延素子SRi(i=1〜7)の出力をPDi−.Rとする。
【0074】
また、90、91A、91B、・・・、97A、97Bは上述した実施形態に係る位相比較器である。位相比較器90は、PD0.C及びPD0.Rが入力され、その位相比較結果をQf0として出力する。位相比較器91Aは、PD1+.C及びPD1+.Rが入力され、その位相比較結果をQf1+として出力し、位相比較器91Bは、PD1−.C及びPD1−.Rが入力され、その位相比較結果をQf1−として出力する。同様に、位相比較器97Aは、PD7+.C及びPD7+.Rが入力され、その位相比較結果をQf7+として出力し、位相比較器97Bは、PD7−.C及びPD7−.Rが入力され、その位相比較結果をQf7−として出力する。
【0075】
図9に示すTDCは、位相比較器90、91A、91B、・・・、97A、97Bの出力Qf0、Qf1+、Qf1−、・・・、Qf7+、Qf7−により、比較信号CMPと基準信号REFの位相差をサーモメータコードで出力する。
図10及び図11は、図9に示したTDCの出力例を示している。図10に示すようなサーモメータコードが出力された場合には、比較信号CMPが基準信号REFに対して4(τs−τf)分の時間だけ遅れていることとなる。一方、図11に示すようなサーモメータコードが出力された場合には、比較信号CMPが基準信号REFに対して4(τs−τf)分の時間だけ進んでいることとなる。
【0076】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明の諸態様を付記として以下に示す。
【0077】
(付記1)第1入力信号と第2入力信号の位相を比較し、前記第1入力信号と前記第2入力信号の位相関係を出力する比較部と、
前記比較部より出力される位相比較結果を第3入力信号として受信して出力する第1の保持部と、
前記比較部の出力に基づいて前記比較部による位相比較結果が確定したか否かを判定し、位相比較結果が確定したと判定した場合には第1制御信号を出力する第1の信号生成部とを備え、
前記第1の保持部は、前記第1制御信号が出力されている期間は前記第3入力信号を保持することを特徴とする位相比較器。
(付記2)前記第1入力信号と前記第2入力信号の位相比較結果が確定しておらず所定出力が前記比較部から出力されている場合には、前記第1の保持部は前記第3入力信号を保持することを特徴とする付記1記載の位相比較器。
(付記3)前記第1の信号生成部は、前記所定出力が前記比較部から出力されていることを検出して、前記第1制御信号を停止することを特徴とする付記2記載の位相比較器。
(付記4)前記第1の信号生成部は、前記比較部の出力が前記所定出力から変化することによって位相比較結果が確定したことを検出し、検出してから所定時間後に前記第1制御信号を出力することを特徴とする付記2記載の位相比較器。
(付記5)前記第1の保持部の出力を第4入力信号として受信して出力する第2の保持部と、
前記比較部による位相比較結果が確定したことを検出し、かつ基準クロックに基づいて、第2制御信号を停止する第2の信号生成部とを備え、
前記第2の保持部は、前記第2制御信号が出力されている期間は前記第4入力信号を保持することを特徴とする付記1〜4の何れか1項に記載の位相比較器。
(付記6)前記第2の信号生成部は、前記第2制御信号を停止してから所定時間後に前記第2制御信号を出力することを特徴とする付記5記載の位相比較器。
(付記7)前記第2の信号生成部は、前記第1制御信号と前記基準クロックのエッジ検出信号とを論理演算し、演算結果を前記第2制御信号として出力することを特徴とする付記5記載の位相比較器。
(付記8)付記1〜7の何れか1項に記載の位相比較器と、
比較信号を遅延させる複数の遅延素子と、
基準信号を遅延させる複数の遅延素子とを備え、
組毎に遅延量を互いに異ならせた前記比較信号と前記基準信号との組を各位相比較器に入力し、前記位相比較器の出力を基に前記比較信号と前記基準信号の位相差を測定することを特徴とする測定装置。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1の実施形態に係る位相比較器の構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る位相比較器の回路構成例を示す図である。
【図3】ホールド回路の回路構成例を示す図である。
【図4】ホールド回路の他の回路構成例を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る位相比較器の動作例を示すタイミングチャートである。
【図6】第2の実施形態に係る位相比較器の構成例を示す図である。
【図7】第2の実施形態に係る位相比較器の回路構成例を示す図である。
【図8】第2の実施形態に係る位相比較器の動作例を示すタイミングチャートである。
【図9】本実施形態における位相比較器を適用した測定装置の構成例を示す図である。
【図10】図9に示した測定装置による出力例を示す図である。
【図11】図9に示した測定装置による出力例を示す図である。
【図12】従来の位相比較器の構成例を示す図である。
【図13】図12に示した位相比較器の動作例を示すタイミングチャートである。
【図14】図12に示した位相比較器の他の動作例を示すタイミングチャートである。
【図15】図12に示した位相比較器のその他の動作例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0079】
10 比較部
20 ホールド信号生成部
30、50 ホールド回路
40 クロック同期信号生成部
CMP 比較信号
REF 基準信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力信号と第2入力信号の位相を比較し、前記第1入力信号と前記第2入力信号の位相関係を出力する比較部と、
前記比較部より出力される位相比較結果を第3入力信号として受信して出力する第1の保持部と、
前記比較部の出力に基づいて前記比較部による位相比較結果が確定したか否かを判定し、位相比較結果が確定したと判定した場合には第1制御信号を出力する第1の信号生成部とを備え、
前記第1の保持部は、前記第1制御信号が出力されている期間は前記第3入力信号を保持することを特徴とする位相比較器。
【請求項2】
前記第1入力信号と前記第2入力信号の位相比較結果が確定しておらず所定出力が前記比較部から出力されている場合には、前記第1の保持部は前記第3入力信号を保持することを特徴とする請求項1記載の位相比較器。
【請求項3】
前記第1の信号生成部は、前記所定出力が前記比較部から出力されていることを検出して、前記第1制御信号を停止することを特徴とする請求項2記載の位相比較器。
【請求項4】
前記第1の保持部の出力を第4入力信号として受信して出力する第2の保持部と、
前記比較部による位相比較結果が確定したことを検出し、かつ基準クロックに基づいて、第2制御信号を停止する第2の信号生成部とを備え、
前記第2の保持部は、前記第2制御信号が出力されている期間は前記第4入力信号を保持することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の位相比較器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の位相比較器と、
比較信号を遅延させる複数の遅延素子と、
基準信号を遅延させる複数の遅延素子とを備え、
組毎に遅延量を互いに異ならせた前記比較信号と前記基準信号との組を各位相比較器に入力し、前記位相比較器の出力を基に前記比較信号と前記基準信号の位相差を測定することを特徴とする測定装置。
【請求項1】
第1入力信号と第2入力信号の位相を比較し、前記第1入力信号と前記第2入力信号の位相関係を出力する比較部と、
前記比較部より出力される位相比較結果を第3入力信号として受信して出力する第1の保持部と、
前記比較部の出力に基づいて前記比較部による位相比較結果が確定したか否かを判定し、位相比較結果が確定したと判定した場合には第1制御信号を出力する第1の信号生成部とを備え、
前記第1の保持部は、前記第1制御信号が出力されている期間は前記第3入力信号を保持することを特徴とする位相比較器。
【請求項2】
前記第1入力信号と前記第2入力信号の位相比較結果が確定しておらず所定出力が前記比較部から出力されている場合には、前記第1の保持部は前記第3入力信号を保持することを特徴とする請求項1記載の位相比較器。
【請求項3】
前記第1の信号生成部は、前記所定出力が前記比較部から出力されていることを検出して、前記第1制御信号を停止することを特徴とする請求項2記載の位相比較器。
【請求項4】
前記第1の保持部の出力を第4入力信号として受信して出力する第2の保持部と、
前記比較部による位相比較結果が確定したことを検出し、かつ基準クロックに基づいて、第2制御信号を停止する第2の信号生成部とを備え、
前記第2の保持部は、前記第2制御信号が出力されている期間は前記第4入力信号を保持することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の位相比較器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の位相比較器と、
比較信号を遅延させる複数の遅延素子と、
基準信号を遅延させる複数の遅延素子とを備え、
組毎に遅延量を互いに異ならせた前記比較信号と前記基準信号との組を各位相比較器に入力し、前記位相比較器の出力を基に前記比較信号と前記基準信号の位相差を測定することを特徴とする測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−164831(P2009−164831A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−341047(P2007−341047)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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