位置ズレ検出装置
【課題】低コストで精度良く位置ズレを検出することのできる位置ズレ検出装置を提供する。
【解決手段】底側に開口部を有する筒状の空間と空間に連通する通気孔とを有する第1の部材と、第1の部材の前記筒状の空間に底側から摺動自在に収容される球状または円錐状の第2の部材と、空間に連通する通気孔を有し、通気孔の端部には前記空間側に向かって広がり第2の部材の一部が係合されるテーパー部が形成され、テーパー部を空間に対向させた状態で前記第1の部材の端部に対して水平方向に移動可能に配置される第3の部材と、第1の部材と第2の部材との間隙および第2の部材とテーパー部とで形成される隙間を介して流通する流体の流量または圧力の計測手段と、計測結果に基づいて第1の部材と第3の部材との水平方向の位置ズレを検出する検出手段とを備えるようにした。
【解決手段】底側に開口部を有する筒状の空間と空間に連通する通気孔とを有する第1の部材と、第1の部材の前記筒状の空間に底側から摺動自在に収容される球状または円錐状の第2の部材と、空間に連通する通気孔を有し、通気孔の端部には前記空間側に向かって広がり第2の部材の一部が係合されるテーパー部が形成され、テーパー部を空間に対向させた状態で前記第1の部材の端部に対して水平方向に移動可能に配置される第3の部材と、第1の部材と第2の部材との間隙および第2の部材とテーパー部とで形成される隙間を介して流通する流体の流量または圧力の計測手段と、計測結果に基づいて第1の部材と第3の部材との水平方向の位置ズレを検出する検出手段とを備えるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は位置ズレ検出装置に係り、特に半導体デバイス等の挿抜装置などにおける位置ズレ検出等に適用して有用な位置ズレ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体デバイスの検査装置等において、検査対象としての半導体デバイスをコネクタやバーンインボード等に着脱させる挿抜装置が用いられている。
【0003】
即ち、LSIやIC等の半導体デバイスの品質および信頼性レベルを得るために、故障メカニズムに即した試験を実施し、潜在的な欠陥を含む半導体デバイスを除去する試験としてスクリーニング試験が行われる。
【0004】
この種のスクリーニング試験の一種としてバーンイン試験が多く実施されている。
【0005】
このバーンイン試験は、熱耐性が比較的低い内部セル構造を有するメモリIC等の半導体デバイスの初期不良を除去することを目的として行われるもので、複数の半導体デバイスを一括して高温下に曝して、高電圧を印加し、初期不良期から偶発不良期に入る半導体デバイスを測定し評価するものである。
【0006】
バーンイン試験では、前工程において、半導体デバイスが収容されているトレイ等から半導体デバイスを取り出して、試験用の基板であるバーンインボードに設けられた複数のICソケットに差し込んで装着する作業が行われる。
【0007】
また、後工程において、試験が終了した半導体デバイスをバーンインボードから取り外して、試験結果に基づいて、トレイ等へ選別して収容する作業が行われる。
【0008】
ところで、上述のバーンイン試験の前工程および後工程において行われる作業は、挿抜装置によって自動化されている。
【0009】
ここで、従来の挿抜装置の概略的構成及び動作を、図10を参照して簡単に説明する。
【0010】
図10に示す挿抜装置Mは、トレイ110を保持するトレイ保持部102と、複数のバーンインボードBを格納して移送するバーンインボードラック103と、被検査体としての半導体デバイスDを保持して移送する2組のハンドリング機構104,105と、アライメントステージ106が配置されている。
【0011】
挿抜装置Mには、制御装置としてのホストコンピュータ108が接続されており、ホストコンピュータ108によって各種制御が行われるようになっている。
【0012】
また、このホストコンピュータ108には、バーンインテスタ109が接続されており、バーンインテスタ109も、ホストコンピュータ108によって制御されるようになっている。バーンインボードラック103には、複数のバーンインボードBが収納されており、バーンインボードラック103を図示しない移動機構に装着することにより、挿抜装置M内にて昇降可能に設置される。
【0013】
そして、挿抜装置Mを稼働させることにより、バーンインボードラック103が移動機構によって昇降され、バーンインボードラック103の上段側から順にバーンインボードBが引き出される。
【0014】
次に、トレイ110内の半導体デバイスDのバーンインボードBへの装着方法について図11を用いて説明する。トレイ保持部102には、複数枚のトレイ110が積み重なる形で配設されており、トレイ110内に、半導体デバイスDが収納されている。
【0015】
そして、挿抜装置Mの稼働によって、最下部のトレイ110は移動機構111により前方へ引き出され所定の位置へセットされる。そして、所定の位置にセットされたトレイ110からハンドリング機構104により半導体デバイスDはアライメントステージ106へ搬送される。
【0016】
次いで、ハンドリング機構105により、アライメントステージ106からバーンインボードBへ搬送され、バーンインボードB上のICソケットSに実装される。
【0017】
そして、上述の一連の動作を繰り返し、バーンインボードB上の全てのICソケットに半導体デバイスDが装着されると、図示しないプリテスタによりバーンインボードB上の全ての半導体デバイスDが電気試験される。ここで不良が発見された場合は再度装着を仕直したり、あるいは、次の半導体デバイスDと交換したりする。
【0018】
このような試験により、バーンインボードB上の全ての半導体デバイスDが良品と判断されると、このバーンインボードBは、バーンインボードラック103へ収納されて、半導体デバイスDが装着されていない他のバーンインボードBが引き出されて再び半導体デバイスDの装着動作が行われる。
【0019】
また、バーンインボードラック103内に、半導体デバイスDが装着されたバーンインボードBが満杯になると、バーンインボードラック103は、バーンインテスタ109のチャンバに入れられバーンイン試験が行われる。
【0020】
さらに、バーンイン試験の終了後、試験済みのバーンインボードラック103は、再び挿抜装置Mに運ばれて収納される。
【0021】
このような挿抜装置としては特開2000−292488号公報等に示されるものなどがある。
【特許文献1】特開2000−292488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところで、上記従来の挿抜装置において、半導体デバイスDは、バーンインボードB上のICソケットSに精度良く実装される必要がある。そのため、アライメントステージ106の半導体デバイスセット部は、半導体デバイスDとのクリアランスが厳密に形成され、かつバーンインボードBとの位置調精度も良く固定される必要がある。
【0023】
また、アライメントステージ106などを所定の位置でロックするロック機構も精度よく係止させる必要がある。
【0024】
しかしながら、ハンドリング機構105や移動機構111を動作させる際の振動等の何らかの原因によりアライメントステージ106やロック機構の係止位置に位置ズレを生ずる場合がある。
【0025】
このような位置ズレを生じた際に、ハンドリング機構105等の運転を続けると、バーンインボードB上のICソケットSに対して半導体デバイスDが位置ズレした状態で挿抜されることとなり、半導体デバイスDに撓みや応力が働いて故障や破損の原因となり、また、ICソケットSにも必要以上の負荷がかかりバーンインボードBおよびICソケットSの劣化を早めるという問題があった。
【0026】
この問題を解消するためには、上述のような位置ズレを生じた際には直ちに検出して、ハンドリング機構105等の運転を停止させる必要がある。
【0027】
一方で、影響のない範囲の位置ズレであるにも関わらず挿抜装置を頻繁に停止させていたのでは試験効率が著しく低下するという不都合がある。
【0028】
また、精度良く位置ズレを検出しようとするとコストが嵩み易いという難点もあった。
【0029】
そこで、本発明は、低コストで精度良く位置ズレを検出することのできる位置ズレ検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記課題を解決するために、請求項1の発明に係る位置ズレ検出装置は、底側に開口部を有する筒状の空間と該空間に連通する通気孔とを有する第1の部材と、該第1の部材の前記筒状の空間に底側から摺動自在に収容される球状または円錐状の第2の部材と、前記空間に連通する通気孔を有し、当該通気孔の端部には前記空間側に向かって広がり前記第2の部材の一部が係合されるテーパー部が形成され、当該テーパー部を前記空間に対向させた状態で前記第1の部材の端部に対して水平方向に移動可能に配置される第3の部材と、前記第1の部材と前記第3の部材との間に形成される隙間および前記第2の部材と前記テーパー部とで形成される隙間を介して流通する流体の流量または圧力の計測手段と、該計測手段の計測結果に基づいて、前記第1の部材と前記第3の部材との水平方向の位置ズレを検出する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0031】
請求項2の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記計測手段は、流量計または圧力計で構成されることを特徴とする。
【0032】
請求項3の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記流体の流路の途中には、レギュレータまたは真空発生器が配置されることを特徴とする。
【0033】
請求項4の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記第1の部材,前記第2の部材および前記第3の部材からなる検出ユニットを複数備えることを特徴とする。
【0034】
請求項5の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記各検出ユニットは、1または2以上の前記計測手段を備え、前記検出手段は、前記計測手段の計測結果に基づいて、前記検出ユニットの少なくとも一方における前記第1の部材と前記第3の部材との水平方向の位置ズレを検出することを特徴とする。
【0035】
請求項6の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記検出手段は、所定の閾値を格納する閾値格納手段と、前記計測手段で計測された流体の流量または圧力が前記閾値を超えたか否かを判定する判定手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0036】
請求項7の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記第2の部材を前記第3の部材側に付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする。
【0037】
請求項8の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記第1の部材と前記第3の部材との接触面には、突起が形成またはスペーサが介在されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0039】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、計測手段による流体の流量または圧力の計測結果に基づいて第1の部材と第3の部材との水平方向の位置ズレを検出しているので、精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0040】
請求項2に記載の発明によれば、計測手段は、流量計または圧力計で構成されるのでコストを低減できるという効果がある。
【0041】
請求項3に記載の発明によれば、流体の流路の途中にレギュレータまたは真空発生器が配置されているので、より精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0042】
請求項4に記載の発明によれば、第1の部材,第2の部材および第3の部材からなる検出ユニットを複数備えているので、より精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0043】
請求項5に記載の発明によれば、各検出ユニットは、1または2以上の計測手段を備え、検出ユニットの少なくとも一方における第1の部材と第3の部材との水平方向の位置ズレを検出しているので、より精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0044】
請求項6に記載の発明によれば、検出手段は、所定の閾値を格納する閾値格納手段と、計測手段で計測された流体の流量または圧力が閾値を超えたか否かを判定する判定手段とをさらに備えているので、的確に位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0045】
請求項7に記載の発明によれば、付勢手段により球状または円錐状の第2の部材が第3の部材が有するテーパー部側に付勢されているので、求心性を高め原点へ復帰し易くすることができ、より精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0046】
請求項8に記載の発明によれば、より精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しつつさらに具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0048】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の概要と動作を示す側方図、図2は第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の適用例を示す側面図、図1は本発明の第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の概要を示す側方図、図3は本発明の第2の実施の形態に係る位置ズレ検出ユニットの概要と動作を示す側方図、図4〜図9は位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【0049】
図1(a)に示すように、第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置M1は、底側に開口部200を有する筒状の空間201と、この空間201に連通する通気孔1bとを有する第1の部材P1と、この第1の部材P1の筒状の空間201に底側から摺動自在に収容される球状の第2の部材P2(例えば、直径15/64インチの鋼球等)と、空間201に連通する通気孔202を有し、この通気孔202の端部には空間200側に向かって広がり第2の部材P2の一部が係合されるテーパー部Tが形成され、このテーパー部Tを空間200に対向させた状態で第1の部材P1の端部に対して水平方向に移動可能に配置される第3の部材P3とから構成されている。
【0050】
なお、第2の部材P2は球状に限らず円錐状であってもよい。
【0051】
テーパー部Tの形状も特には限定されないが、例えば図2に示すように上方に120度の開きを持つようにできる。
【0052】
また、特に限定されないが、筒状の空間201の内径は略8mmとされ、球状の第2の部材P2はこの筒状の空間201内に僅かなクリアランスをもって昇降可能に収容される。
【0053】
また、空間201内には第2の部材P2を第3の部材P3側に付勢する付勢手段としてのスプリング4が設けられている。このスプリング4により第2の部材P2のガタつきを抑えるとともに、後述する流体の負荷に対する抗力を適当に保つことができる。
【0054】
第3の部材P3の通気孔202の下端部には流体(本実施の形態では空気)を送り込む(あるいは吸い込む)ための通気部材6が係合されている。
【0055】
なお、通気部材6を介して空気を送り込む場合には第2の部材P2に正圧が加わることとなり、逆に通気部材6を介して空気を吸い込む場合には部材P2に負圧が加わることとなるが、後述するように本発明に係る位置ズレ検出装置M1は何れの場合にも位置ズレを検出することができる。
【0056】
また、通気部材6には通気管8aが接続され、通気管8aは流量計(計測手段)7を介して通気管8bに接続され、さらに通気管8bは精密レギュレータ9に接続され、精密レギュレータ9は通気管8cを介してポンプ等の空圧源10に接続されている。
【0057】
また、流量計7にはマイクロコンピュータ等で構成される制御部Cが接続され、流量計7による計測結果が送信されるようになっている。
【0058】
なお、流量計7に代えて圧力センサを設けるようにしてもよい。また、精密レギュレータ9と空圧源10に代えて真空発生器を設けることもできる(負圧とする場合)。
【0059】
ここで、特に限定はされないが、流量計7としてはSMC社製のPMF710S−C4−C−M(計測範囲:0〜10L/min、分解能:0.01L/min)を用いることができる。
【0060】
また、流量計7に代えて使用可能な圧力センサとしては、キーエンス社製のAP−C40あるいはAP−44(計測範囲:101.3〜−101.3kPa、分解能:標準0.1kPa)を挙げることができる。
【0061】
また、特に限定はされないが、精密レギュレータ9としては、SMC社製のIR2020−02BG(計測範囲:0.005〜0.8MPa、感度:1.6kPa以内、繰り返し性:±4kPa以内)を用いることができる。
【0062】
また、精密レギュレータ9に代えて使用可能な真空発生器としては、PISCO社製のVGH10E−66−DC24L(到達真空度:−93kPa、吸込流量:27L/min)を挙げることができる。
【0063】
そして、図1(b)に示すように、例えば第3の部材P3に右方向の力Fが加わった場合には、第3の部材P3のテーパー部Tに沿って第2の部材P2が上方に変位すると共に第3の部材P3自体が水平方向(図上は右側)に位置ズレ量Z1で移動する。
【0064】
これにより、第1に部材P1の下端部と第3の部材P3のテーパー部Tとの間に空気が流通可能な空隙600が形成される。なお、確実に流体が流通するように、第1に部材P1の下端部と第3の部材P3との接触面に、突起が形成またはスペーサが介在されるようにすると良い。
【0065】
図1(a)の構成によれば、第2の部材P2には通気部材6を介して正圧の空気が供給されており、空隙600に対応した空気が外部に放出される。これにより、流量計7で流出する空気量が測定され、その測定値が制御部Cに送られる。
【0066】
制御部Cは、内蔵する記憶装置(例えば、フラッシュメモリ等:閾値格納手段)に所定の閾値と判定プログラム等を格納しており、流量計7で計測された流体(空気)の流量または圧力が閾値を超えたか否かを判定している。
【0067】
そして、制御部Cで流体(空気)の流量または圧力が閾値を超えたと判定された場合には、所定の位置ズレを検出したものとして、特定の機器(特には限定されない)等の動作を停止させる等の措置をとることができる。
【0068】
なお、検出できる位置ズレの方向は水平面であれば特に制限はなく、左右方向(X,Y方向)の何れの方向に第1の部材P1あるいは第3の部材P3が位置ズレを生じても検出することができる。
【0069】
また、後述する第2の実施の形態によれば第1の部材P1あるいは第3の部材P3のθ方向(回転方向)の位置ズレも検出可能である。
【0070】
ここで、上記第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置M1の適用例を図2を参照して説明する。
【0071】
図2では、例えば半導体デバイス等を載置するステージ部500が第1の部材P1と一体的に形成され、第3の部材P3は水平方向に延設される板状部Eに連結されている。
【0072】
また、ステージ部500はロック機構Lにより解除可能に係止されている。
【0073】
そして、何らかの影響によりステージ部500または板状部Eに水平方向の力が加わった場合には、位置ズレ検出装置M1によりその位置ズレ量が流体(空気)の流量変化(或いは圧力変化)として検出され、所定の閾値を超えた場合には位置ズレを検出したとして、例えば半導体デバイスの移送装置を停止させたり、ロック機構Lを解除して位置合わせを行う等の措置をとることができる。
【0074】
次に、図3を参照して本発明の第2の実施の形態に係る位置ズレ検出ユニットUについて説明する。
【0075】
本実施の形態に係る位置ズレ検出ユニットUは、上記第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置Mを2個並設した構成となっている。
【0076】
即ち、図3(a)に示す例では、位置ズレ検出装置M1とM2が左右に並設され、一つの第3の部材P3Aが共有されるようになっている。
【0077】
また、第3の部材P3Aに形成される通気孔202A,202Bにはそれぞれ通気部材6A,6Bが接続され、通気管8aを介して流量計7(或いは圧力センサ)に接続されており、制御部Cに電気的に接続されている。
【0078】
この第2の実施の形態に係る位置ズレ検出ユニットUによれば、例えば図3(b)に示すように、位置ズレ検出装置M1の第2の部材P2Aの中心軸J1を中心として所定の回転角度θだけ回転するような位置ズレが第3の部材P3Aに生じた場合に、位置ズレ検出装置M1では第2の部材P2Aは変位しないので流体の放出は生じない。しかし、一方の位置ズレ検出装置M2において位置ズレ量Z2の変位が生じるので、位置ズレ検出装置M2から放出される流体(空気)の流量あるいは圧力を計測することにより、水平面で生じた回転角θの位置ズレを検出することができる。
【0079】
また、同様に位置ズレ検出装置M2側の第2の部材P2Bの中心軸J2を中心として所定の回転角度θだけ回転するような位置ズレも検出することができる。
【0080】
次に、図4〜図10に、上記第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置Mおよび第2の実施の形態に係る位置ズレ検出ユニットUにおけるズレ量と圧力あるいは流量との関係を示す。
【0081】
図4の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に100kPaの正圧を用い、流量を計測(10回)した結果を示している。
【0082】
図5の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に150kPaの正圧を用い、流量を計測(10回)した結果を示している。
【0083】
図6の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に200kPaの正圧を用い、流量を計測(10回)した結果を示している。
【0084】
図7の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に250kPaの正圧を用い、流量を計測(10回)した結果を示している。
【0085】
図8の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に負圧を用い、流量を計測(10回)した結果を示している。
【0086】
図9の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に負圧を用い、圧力を計測(10回)した結果を示している。
【0087】
各図のグラフを参照すると分かるように、ズレ量と流量或いは圧力は略比例しており、本発明によれば、第1の部材P1(P1A,P1B)と第3の部材P3(P3A)の位置ズレを的確に検出することができることが分かる。
【0088】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。即ち、本発明の技術的な範囲は、上記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈すべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明による位置ズレ検出装置は、半導体デバイス等の挿抜装置などにおける位置ズレ検出に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の概要と動作を示す側方図である。
【図2】第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の適用例を示す側面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の概要を示す側方図である。
【図4】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図5】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図6】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図7】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図8】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図9】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図10】挿抜装置の構成を示す斜視図である。
【図11】挿抜装置の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0091】
C 制御部(判定手段)
600 空隙
E 板状部
J1,J2 中心軸
L ロック機構
M,M1,M2 位置ズレ検出装置
U 位置ズレ検出ユニット
P1,P1A,P1B 第1の部材
P2,P2A,P2B 第2の部材
P3,P3A 第3の部材
500 ステージ部
【技術分野】
【0001】
本発明は位置ズレ検出装置に係り、特に半導体デバイス等の挿抜装置などにおける位置ズレ検出等に適用して有用な位置ズレ検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体デバイスの検査装置等において、検査対象としての半導体デバイスをコネクタやバーンインボード等に着脱させる挿抜装置が用いられている。
【0003】
即ち、LSIやIC等の半導体デバイスの品質および信頼性レベルを得るために、故障メカニズムに即した試験を実施し、潜在的な欠陥を含む半導体デバイスを除去する試験としてスクリーニング試験が行われる。
【0004】
この種のスクリーニング試験の一種としてバーンイン試験が多く実施されている。
【0005】
このバーンイン試験は、熱耐性が比較的低い内部セル構造を有するメモリIC等の半導体デバイスの初期不良を除去することを目的として行われるもので、複数の半導体デバイスを一括して高温下に曝して、高電圧を印加し、初期不良期から偶発不良期に入る半導体デバイスを測定し評価するものである。
【0006】
バーンイン試験では、前工程において、半導体デバイスが収容されているトレイ等から半導体デバイスを取り出して、試験用の基板であるバーンインボードに設けられた複数のICソケットに差し込んで装着する作業が行われる。
【0007】
また、後工程において、試験が終了した半導体デバイスをバーンインボードから取り外して、試験結果に基づいて、トレイ等へ選別して収容する作業が行われる。
【0008】
ところで、上述のバーンイン試験の前工程および後工程において行われる作業は、挿抜装置によって自動化されている。
【0009】
ここで、従来の挿抜装置の概略的構成及び動作を、図10を参照して簡単に説明する。
【0010】
図10に示す挿抜装置Mは、トレイ110を保持するトレイ保持部102と、複数のバーンインボードBを格納して移送するバーンインボードラック103と、被検査体としての半導体デバイスDを保持して移送する2組のハンドリング機構104,105と、アライメントステージ106が配置されている。
【0011】
挿抜装置Mには、制御装置としてのホストコンピュータ108が接続されており、ホストコンピュータ108によって各種制御が行われるようになっている。
【0012】
また、このホストコンピュータ108には、バーンインテスタ109が接続されており、バーンインテスタ109も、ホストコンピュータ108によって制御されるようになっている。バーンインボードラック103には、複数のバーンインボードBが収納されており、バーンインボードラック103を図示しない移動機構に装着することにより、挿抜装置M内にて昇降可能に設置される。
【0013】
そして、挿抜装置Mを稼働させることにより、バーンインボードラック103が移動機構によって昇降され、バーンインボードラック103の上段側から順にバーンインボードBが引き出される。
【0014】
次に、トレイ110内の半導体デバイスDのバーンインボードBへの装着方法について図11を用いて説明する。トレイ保持部102には、複数枚のトレイ110が積み重なる形で配設されており、トレイ110内に、半導体デバイスDが収納されている。
【0015】
そして、挿抜装置Mの稼働によって、最下部のトレイ110は移動機構111により前方へ引き出され所定の位置へセットされる。そして、所定の位置にセットされたトレイ110からハンドリング機構104により半導体デバイスDはアライメントステージ106へ搬送される。
【0016】
次いで、ハンドリング機構105により、アライメントステージ106からバーンインボードBへ搬送され、バーンインボードB上のICソケットSに実装される。
【0017】
そして、上述の一連の動作を繰り返し、バーンインボードB上の全てのICソケットに半導体デバイスDが装着されると、図示しないプリテスタによりバーンインボードB上の全ての半導体デバイスDが電気試験される。ここで不良が発見された場合は再度装着を仕直したり、あるいは、次の半導体デバイスDと交換したりする。
【0018】
このような試験により、バーンインボードB上の全ての半導体デバイスDが良品と判断されると、このバーンインボードBは、バーンインボードラック103へ収納されて、半導体デバイスDが装着されていない他のバーンインボードBが引き出されて再び半導体デバイスDの装着動作が行われる。
【0019】
また、バーンインボードラック103内に、半導体デバイスDが装着されたバーンインボードBが満杯になると、バーンインボードラック103は、バーンインテスタ109のチャンバに入れられバーンイン試験が行われる。
【0020】
さらに、バーンイン試験の終了後、試験済みのバーンインボードラック103は、再び挿抜装置Mに運ばれて収納される。
【0021】
このような挿抜装置としては特開2000−292488号公報等に示されるものなどがある。
【特許文献1】特開2000−292488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところで、上記従来の挿抜装置において、半導体デバイスDは、バーンインボードB上のICソケットSに精度良く実装される必要がある。そのため、アライメントステージ106の半導体デバイスセット部は、半導体デバイスDとのクリアランスが厳密に形成され、かつバーンインボードBとの位置調精度も良く固定される必要がある。
【0023】
また、アライメントステージ106などを所定の位置でロックするロック機構も精度よく係止させる必要がある。
【0024】
しかしながら、ハンドリング機構105や移動機構111を動作させる際の振動等の何らかの原因によりアライメントステージ106やロック機構の係止位置に位置ズレを生ずる場合がある。
【0025】
このような位置ズレを生じた際に、ハンドリング機構105等の運転を続けると、バーンインボードB上のICソケットSに対して半導体デバイスDが位置ズレした状態で挿抜されることとなり、半導体デバイスDに撓みや応力が働いて故障や破損の原因となり、また、ICソケットSにも必要以上の負荷がかかりバーンインボードBおよびICソケットSの劣化を早めるという問題があった。
【0026】
この問題を解消するためには、上述のような位置ズレを生じた際には直ちに検出して、ハンドリング機構105等の運転を停止させる必要がある。
【0027】
一方で、影響のない範囲の位置ズレであるにも関わらず挿抜装置を頻繁に停止させていたのでは試験効率が著しく低下するという不都合がある。
【0028】
また、精度良く位置ズレを検出しようとするとコストが嵩み易いという難点もあった。
【0029】
そこで、本発明は、低コストで精度良く位置ズレを検出することのできる位置ズレ検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記課題を解決するために、請求項1の発明に係る位置ズレ検出装置は、底側に開口部を有する筒状の空間と該空間に連通する通気孔とを有する第1の部材と、該第1の部材の前記筒状の空間に底側から摺動自在に収容される球状または円錐状の第2の部材と、前記空間に連通する通気孔を有し、当該通気孔の端部には前記空間側に向かって広がり前記第2の部材の一部が係合されるテーパー部が形成され、当該テーパー部を前記空間に対向させた状態で前記第1の部材の端部に対して水平方向に移動可能に配置される第3の部材と、前記第1の部材と前記第3の部材との間に形成される隙間および前記第2の部材と前記テーパー部とで形成される隙間を介して流通する流体の流量または圧力の計測手段と、該計測手段の計測結果に基づいて、前記第1の部材と前記第3の部材との水平方向の位置ズレを検出する検出手段とを備えることを特徴とする。
【0031】
請求項2の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記計測手段は、流量計または圧力計で構成されることを特徴とする。
【0032】
請求項3の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記流体の流路の途中には、レギュレータまたは真空発生器が配置されることを特徴とする。
【0033】
請求項4の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記第1の部材,前記第2の部材および前記第3の部材からなる検出ユニットを複数備えることを特徴とする。
【0034】
請求項5の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記各検出ユニットは、1または2以上の前記計測手段を備え、前記検出手段は、前記計測手段の計測結果に基づいて、前記検出ユニットの少なくとも一方における前記第1の部材と前記第3の部材との水平方向の位置ズレを検出することを特徴とする。
【0035】
請求項6の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記検出手段は、所定の閾値を格納する閾値格納手段と、前記計測手段で計測された流体の流量または圧力が前記閾値を超えたか否かを判定する判定手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0036】
請求項7の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記第2の部材を前記第3の部材側に付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする。
【0037】
請求項8の発明に係る位置ズレ検出装置は、前記第1の部材と前記第3の部材との接触面には、突起が形成またはスペーサが介在されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0039】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、計測手段による流体の流量または圧力の計測結果に基づいて第1の部材と第3の部材との水平方向の位置ズレを検出しているので、精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0040】
請求項2に記載の発明によれば、計測手段は、流量計または圧力計で構成されるのでコストを低減できるという効果がある。
【0041】
請求項3に記載の発明によれば、流体の流路の途中にレギュレータまたは真空発生器が配置されているので、より精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0042】
請求項4に記載の発明によれば、第1の部材,第2の部材および第3の部材からなる検出ユニットを複数備えているので、より精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0043】
請求項5に記載の発明によれば、各検出ユニットは、1または2以上の計測手段を備え、検出ユニットの少なくとも一方における第1の部材と第3の部材との水平方向の位置ズレを検出しているので、より精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0044】
請求項6に記載の発明によれば、検出手段は、所定の閾値を格納する閾値格納手段と、計測手段で計測された流体の流量または圧力が閾値を超えたか否かを判定する判定手段とをさらに備えているので、的確に位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0045】
請求項7に記載の発明によれば、付勢手段により球状または円錐状の第2の部材が第3の部材が有するテーパー部側に付勢されているので、求心性を高め原点へ復帰し易くすることができ、より精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【0046】
請求項8に記載の発明によれば、より精度良く位置ズレを検出することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しつつさらに具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0048】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の概要と動作を示す側方図、図2は第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の適用例を示す側面図、図1は本発明の第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の概要を示す側方図、図3は本発明の第2の実施の形態に係る位置ズレ検出ユニットの概要と動作を示す側方図、図4〜図9は位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【0049】
図1(a)に示すように、第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置M1は、底側に開口部200を有する筒状の空間201と、この空間201に連通する通気孔1bとを有する第1の部材P1と、この第1の部材P1の筒状の空間201に底側から摺動自在に収容される球状の第2の部材P2(例えば、直径15/64インチの鋼球等)と、空間201に連通する通気孔202を有し、この通気孔202の端部には空間200側に向かって広がり第2の部材P2の一部が係合されるテーパー部Tが形成され、このテーパー部Tを空間200に対向させた状態で第1の部材P1の端部に対して水平方向に移動可能に配置される第3の部材P3とから構成されている。
【0050】
なお、第2の部材P2は球状に限らず円錐状であってもよい。
【0051】
テーパー部Tの形状も特には限定されないが、例えば図2に示すように上方に120度の開きを持つようにできる。
【0052】
また、特に限定されないが、筒状の空間201の内径は略8mmとされ、球状の第2の部材P2はこの筒状の空間201内に僅かなクリアランスをもって昇降可能に収容される。
【0053】
また、空間201内には第2の部材P2を第3の部材P3側に付勢する付勢手段としてのスプリング4が設けられている。このスプリング4により第2の部材P2のガタつきを抑えるとともに、後述する流体の負荷に対する抗力を適当に保つことができる。
【0054】
第3の部材P3の通気孔202の下端部には流体(本実施の形態では空気)を送り込む(あるいは吸い込む)ための通気部材6が係合されている。
【0055】
なお、通気部材6を介して空気を送り込む場合には第2の部材P2に正圧が加わることとなり、逆に通気部材6を介して空気を吸い込む場合には部材P2に負圧が加わることとなるが、後述するように本発明に係る位置ズレ検出装置M1は何れの場合にも位置ズレを検出することができる。
【0056】
また、通気部材6には通気管8aが接続され、通気管8aは流量計(計測手段)7を介して通気管8bに接続され、さらに通気管8bは精密レギュレータ9に接続され、精密レギュレータ9は通気管8cを介してポンプ等の空圧源10に接続されている。
【0057】
また、流量計7にはマイクロコンピュータ等で構成される制御部Cが接続され、流量計7による計測結果が送信されるようになっている。
【0058】
なお、流量計7に代えて圧力センサを設けるようにしてもよい。また、精密レギュレータ9と空圧源10に代えて真空発生器を設けることもできる(負圧とする場合)。
【0059】
ここで、特に限定はされないが、流量計7としてはSMC社製のPMF710S−C4−C−M(計測範囲:0〜10L/min、分解能:0.01L/min)を用いることができる。
【0060】
また、流量計7に代えて使用可能な圧力センサとしては、キーエンス社製のAP−C40あるいはAP−44(計測範囲:101.3〜−101.3kPa、分解能:標準0.1kPa)を挙げることができる。
【0061】
また、特に限定はされないが、精密レギュレータ9としては、SMC社製のIR2020−02BG(計測範囲:0.005〜0.8MPa、感度:1.6kPa以内、繰り返し性:±4kPa以内)を用いることができる。
【0062】
また、精密レギュレータ9に代えて使用可能な真空発生器としては、PISCO社製のVGH10E−66−DC24L(到達真空度:−93kPa、吸込流量:27L/min)を挙げることができる。
【0063】
そして、図1(b)に示すように、例えば第3の部材P3に右方向の力Fが加わった場合には、第3の部材P3のテーパー部Tに沿って第2の部材P2が上方に変位すると共に第3の部材P3自体が水平方向(図上は右側)に位置ズレ量Z1で移動する。
【0064】
これにより、第1に部材P1の下端部と第3の部材P3のテーパー部Tとの間に空気が流通可能な空隙600が形成される。なお、確実に流体が流通するように、第1に部材P1の下端部と第3の部材P3との接触面に、突起が形成またはスペーサが介在されるようにすると良い。
【0065】
図1(a)の構成によれば、第2の部材P2には通気部材6を介して正圧の空気が供給されており、空隙600に対応した空気が外部に放出される。これにより、流量計7で流出する空気量が測定され、その測定値が制御部Cに送られる。
【0066】
制御部Cは、内蔵する記憶装置(例えば、フラッシュメモリ等:閾値格納手段)に所定の閾値と判定プログラム等を格納しており、流量計7で計測された流体(空気)の流量または圧力が閾値を超えたか否かを判定している。
【0067】
そして、制御部Cで流体(空気)の流量または圧力が閾値を超えたと判定された場合には、所定の位置ズレを検出したものとして、特定の機器(特には限定されない)等の動作を停止させる等の措置をとることができる。
【0068】
なお、検出できる位置ズレの方向は水平面であれば特に制限はなく、左右方向(X,Y方向)の何れの方向に第1の部材P1あるいは第3の部材P3が位置ズレを生じても検出することができる。
【0069】
また、後述する第2の実施の形態によれば第1の部材P1あるいは第3の部材P3のθ方向(回転方向)の位置ズレも検出可能である。
【0070】
ここで、上記第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置M1の適用例を図2を参照して説明する。
【0071】
図2では、例えば半導体デバイス等を載置するステージ部500が第1の部材P1と一体的に形成され、第3の部材P3は水平方向に延設される板状部Eに連結されている。
【0072】
また、ステージ部500はロック機構Lにより解除可能に係止されている。
【0073】
そして、何らかの影響によりステージ部500または板状部Eに水平方向の力が加わった場合には、位置ズレ検出装置M1によりその位置ズレ量が流体(空気)の流量変化(或いは圧力変化)として検出され、所定の閾値を超えた場合には位置ズレを検出したとして、例えば半導体デバイスの移送装置を停止させたり、ロック機構Lを解除して位置合わせを行う等の措置をとることができる。
【0074】
次に、図3を参照して本発明の第2の実施の形態に係る位置ズレ検出ユニットUについて説明する。
【0075】
本実施の形態に係る位置ズレ検出ユニットUは、上記第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置Mを2個並設した構成となっている。
【0076】
即ち、図3(a)に示す例では、位置ズレ検出装置M1とM2が左右に並設され、一つの第3の部材P3Aが共有されるようになっている。
【0077】
また、第3の部材P3Aに形成される通気孔202A,202Bにはそれぞれ通気部材6A,6Bが接続され、通気管8aを介して流量計7(或いは圧力センサ)に接続されており、制御部Cに電気的に接続されている。
【0078】
この第2の実施の形態に係る位置ズレ検出ユニットUによれば、例えば図3(b)に示すように、位置ズレ検出装置M1の第2の部材P2Aの中心軸J1を中心として所定の回転角度θだけ回転するような位置ズレが第3の部材P3Aに生じた場合に、位置ズレ検出装置M1では第2の部材P2Aは変位しないので流体の放出は生じない。しかし、一方の位置ズレ検出装置M2において位置ズレ量Z2の変位が生じるので、位置ズレ検出装置M2から放出される流体(空気)の流量あるいは圧力を計測することにより、水平面で生じた回転角θの位置ズレを検出することができる。
【0079】
また、同様に位置ズレ検出装置M2側の第2の部材P2Bの中心軸J2を中心として所定の回転角度θだけ回転するような位置ズレも検出することができる。
【0080】
次に、図4〜図10に、上記第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置Mおよび第2の実施の形態に係る位置ズレ検出ユニットUにおけるズレ量と圧力あるいは流量との関係を示す。
【0081】
図4の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に100kPaの正圧を用い、流量を計測(10回)した結果を示している。
【0082】
図5の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に150kPaの正圧を用い、流量を計測(10回)した結果を示している。
【0083】
図6の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に200kPaの正圧を用い、流量を計測(10回)した結果を示している。
【0084】
図7の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に250kPaの正圧を用い、流量を計測(10回)した結果を示している。
【0085】
図8の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に負圧を用い、流量を計測(10回)した結果を示している。
【0086】
図9の表(a)とグラフ(b)は、ズレ量0〜150μmの計測に負圧を用い、圧力を計測(10回)した結果を示している。
【0087】
各図のグラフを参照すると分かるように、ズレ量と流量或いは圧力は略比例しており、本発明によれば、第1の部材P1(P1A,P1B)と第3の部材P3(P3A)の位置ズレを的確に検出することができることが分かる。
【0088】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。即ち、本発明の技術的な範囲は、上記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈すべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明による位置ズレ検出装置は、半導体デバイス等の挿抜装置などにおける位置ズレ検出に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の概要と動作を示す側方図である。
【図2】第1の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の適用例を示す側面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る位置ズレ検出装置の概要を示す側方図である。
【図4】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図5】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図6】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図7】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図8】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図9】位置ズレ検出の実験例を示す表とグラフである。
【図10】挿抜装置の構成を示す斜視図である。
【図11】挿抜装置の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0091】
C 制御部(判定手段)
600 空隙
E 板状部
J1,J2 中心軸
L ロック機構
M,M1,M2 位置ズレ検出装置
U 位置ズレ検出ユニット
P1,P1A,P1B 第1の部材
P2,P2A,P2B 第2の部材
P3,P3A 第3の部材
500 ステージ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底側に開口部を有する筒状の空間と該空間に連通する通気孔とを有する第1の部材と、
該第1の部材の前記筒状の空間に底側から摺動自在に収容される球状または円錐状の第2の部材と、
前記空間に連通する通気孔を有し、当該通気孔の端部には前記空間側に向かって広がり前記第2の部材の一部が係合されるテーパー部が形成され、当該テーパー部を前記空間に対向させた状態で前記第1の部材の端部に対して水平方向に移動可能に配置される第3の部材と、
前記第1の部材と前記第3の部材との間に形成される隙間および前記第2の部材と前記テーパー部とで形成される隙間を介して流通する流体の流量または圧力の計測手段と、
該計測手段の計測結果に基づいて、前記第1の部材と前記第3の部材との水平方向の位置ズレを検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする位置ズレ検出装置。
【請求項2】
前記計測手段は、流量計または圧力計で構成されることを特徴とする請求項1に記載の位置ズレ検出装置。
【請求項3】
前記流体の流路の途中には、レギュレータまたは真空発生器が配置されることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の位置ズレ検出装置。
【請求項4】
前記第1の部材,前記第2の部材および前記第3の部材からなる検出ユニットを複数備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の位置ズレ検出装置。
【請求項5】
前記各検出ユニットは、1または2以上の前記計測手段を備え、
前記検出手段は、前記計測手段の計測結果に基づいて、前記検出ユニットの少なくとも一方における前記第1の部材と前記第3の部材との水平方向の位置ズレを検出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の位置ズレ検出装置。
【請求項6】
前記検出手段は、
所定の閾値を格納する閾値格納手段と、
前記計測手段で計測された流体の流量または圧力が前記閾値を超えたか否かを判定する判定手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の位置ズレ検出装置。
【請求項7】
前記第2の部材を前記第3の部材側に付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の位置ズレ検出装置。
【請求項8】
前記第1の部材と前記第3の部材との接触面には、突起が形成またはスペーサが介在されることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の位置ズレ検出装置。
【請求項1】
底側に開口部を有する筒状の空間と該空間に連通する通気孔とを有する第1の部材と、
該第1の部材の前記筒状の空間に底側から摺動自在に収容される球状または円錐状の第2の部材と、
前記空間に連通する通気孔を有し、当該通気孔の端部には前記空間側に向かって広がり前記第2の部材の一部が係合されるテーパー部が形成され、当該テーパー部を前記空間に対向させた状態で前記第1の部材の端部に対して水平方向に移動可能に配置される第3の部材と、
前記第1の部材と前記第3の部材との間に形成される隙間および前記第2の部材と前記テーパー部とで形成される隙間を介して流通する流体の流量または圧力の計測手段と、
該計測手段の計測結果に基づいて、前記第1の部材と前記第3の部材との水平方向の位置ズレを検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする位置ズレ検出装置。
【請求項2】
前記計測手段は、流量計または圧力計で構成されることを特徴とする請求項1に記載の位置ズレ検出装置。
【請求項3】
前記流体の流路の途中には、レギュレータまたは真空発生器が配置されることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の位置ズレ検出装置。
【請求項4】
前記第1の部材,前記第2の部材および前記第3の部材からなる検出ユニットを複数備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の位置ズレ検出装置。
【請求項5】
前記各検出ユニットは、1または2以上の前記計測手段を備え、
前記検出手段は、前記計測手段の計測結果に基づいて、前記検出ユニットの少なくとも一方における前記第1の部材と前記第3の部材との水平方向の位置ズレを検出する、
ことを特徴とする請求項4に記載の位置ズレ検出装置。
【請求項6】
前記検出手段は、
所定の閾値を格納する閾値格納手段と、
前記計測手段で計測された流体の流量または圧力が前記閾値を超えたか否かを判定する判定手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の位置ズレ検出装置。
【請求項7】
前記第2の部材を前記第3の部材側に付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の位置ズレ検出装置。
【請求項8】
前記第1の部材と前記第3の部材との接触面には、突起が形成またはスペーサが介在されることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の位置ズレ検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−133669(P2009−133669A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−308645(P2007−308645)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(592136440)エスティケイテクノロジー株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(592136440)エスティケイテクノロジー株式会社 (8)
【Fターム(参考)】
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