説明

位置情報提供システムおよび移動通信装置

【課題】 位置検知手段をもたない携帯通信端末などに現在位置情報を提供する。
【解決手段】 自律的に現在位置を取得する第1の移動通信装置は、自律的に現在位置を取得できない第2の移動通信装置との間で無線通信を行う無線通信手段と、第2の移動通信装置と交信し、送受信パワーまたは信号伝送時間を計測して第2の移動通信装置との間を距離を算出する測距手段と、現在位置と測距手段が取得した第1の移動通信装置と第2の移動通信装置との間を距離から、第2の移動通信装置の現在位置を算出し、当該現在位置を含むデータを無線通信手段から第2の移動通信装置に送信する制御を行う制御手段とを備える。第2の移動通信装置は、第1の移動通信装置との間で無線通信を行う無線通信手段と、第1の移動通信装置から送信されたデータを無線通信手段で受信し、該データから第2の移動通信装置の現在位置を取得する制御を行う制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律的に現在位置を取得できない移動通信装置に対して、その現在位置情報を提供する位置情報提供システムおよび移動通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行者などが現在位置を取得可能な小型の携帯通信端末を所持し、指定した目的地までの経路を案内するナビゲーションシステムが提案されてきた。このようなシステムは、歩行者ナビゲーションシステムあるいは歩行者ITS(Intelligent Transport Systems)と呼ばれている。
【0003】
従来の歩行者ナビゲーションシステム(特許文献1)では、歩行者は携帯電話またはPDAなどの携帯型の情報端末(以下、「携帯通信端末」という)を携行し、携帯通信端末は自装置の現在位置を検知し、通信回線を利用して遠隔のサーバと交信して現在地から目的地までの経路を携帯通信端末の画面に表示させ、利用者に経路情報を提供している。携帯通信端末が現在位置を取得する手段としては、人工衛星(GPS衛星)から送信される電波を受信することにより位置を検知する全地球測位システム(GPS)が広く利用されている。以下、GPSについて簡単に説明する。
【0004】
GPS衛星は、高度20,000kmにある6つの軌道上に計24個(1軌道に4個)が配置されており、マイクロ波帯(1575.42MHzおよび1227.6MHz)の電波を放出している。地上では、少なくとも4つのGPS衛星からの電波を同時に受信することにより、測定点の位置(緯度、経度、高度)を得ることができる。このGPSによる位置測定の誤差は、一般的な単独測位の場合に約10mといわれている。GPSは、自動車の経路案内システム(一般にはカーナビゲーションと呼ばれる)の位置検知に広く用いられている。
【特許文献1】特開2006-18573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歩行者ナビゲーションシステムでは、歩行者が携帯通信端末を持ち歩く必要があることから、携帯通信端末は小型かつ軽量であることが望ましい。また、携帯通信端末は充電池などの電池から電力供給を受けることから、低消費電力であることが望ましい。
【0006】
しかし、携帯通信端末でGPSによる現在位置検知を行うためには、GPSアンテナや受信回路、さらに位置解析回路またはソフトウェアを携帯通信端末に搭載する必要がある。しかし、これらの搭載は、携帯通信端末の小型化、軽量化、経済化に大きな支障となる。また、GPS電波の受信および位置検知処理で電力を消費するため、低消費電力化にも大きな支障となる。
【0007】
なお、上記の課題は、歩行者が所持する携帯通信端末または歩行者ナビゲーションシステムに限らず、例えば自転車、自動二輪車、自動車に搭載される通信端末においても同様である。
【0008】
本発明は、位置検知手段をもたない携帯通信端末などに自装置の現在位置情報を提供する位置情報提供システムおよび移動通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、現在位置を検知する位置検知手段を備えて自律的に現在位置を取得する第1の移動通信装置が、自律的に現在位置を取得できない第2の移動通信装置の現在位置を検出し、その現在位置を第2の移動通信装置に通知する位置情報提供システムにおいて、第1の移動通信装置は、第2の移動通信装置との間で無線通信を行う無線通信手段と、無線通信手段を用いて第2の移動通信装置と交信し、送受信パワーまたは信号伝送時間を計測して第1の移動通信装置と第2の移動通信装置との間を距離を算出する測距手段と、位置検知手段が取得した現在位置と、測距手段が取得した第1の移動通信装置と第2の移動通信装置との間を距離から、第2の移動通信装置の現在位置を算出し、当該現在位置を含むデータを無線通信手段から第2の移動通信装置に送信する制御を行う制御手段とを備える。第2の移動通信装置は、第1の移動通信装置との間で無線通信を行う無線通信手段と、第1の移動通信装置から送信されたデータを無線通信手段で受信し、該データから第2の移動通信装置の現在位置を取得する制御を行う制御手段とを備える。
【0010】
また、第1の移動通信装置の測距手段は、無線通信手段を用いて第2の移動通信装置と交信した際の平均送信パワーと平均受信パワーを計測し、その計測値の比を用いて第1の移動通信装置と第2の移動通信装置との間を距離を算出する構成である。
【0011】
また、第1の移動通信装置の測距手段は、無線通信手段を用いて第2の移動通信装置との間で伝送される信号の伝送時間を計測し、その計測値を用いて第1の移動通信装置と第2の移動通信装置との間を距離を算出する構成である。
【0012】
また、第1の移動通信装置の測距手段は、複数の地点で無線通信手段を用いて第2の移動通信装置と交信し、それぞれの地点における送受信パワーまたは信号伝送時間を計測して第2の移動通信装置との間の距離を算出する構成であり、第1の移動通信装置の制御手段は、位置検知手段が取得した現在位置と、測距手段が取得した第1の移動通信装置と第2の移動通信装置との間を複数の距離から、第2の移動通信装置の現在位置を算出する構成である。
【0013】
第2の発明は、現在位置を検知する位置検知手段を備えて自律的に現在位置を取得するとともに、自律的に現在位置を取得できない他の移動通信装置の現在位置を検出し、その現在位置を当該移動通信装置に通知する位置情報提供システムの移動通信装置において、他の移動通信装置との間で無線通信を行う無線通信手段と、無線通信手段を用いて他の移動通信装置と交信し、送受信パワーまたは信号伝送時間を計測して自装置と他の移動通信装置との間を距離を算出する測距手段と、位置検知手段が取得した現在位置と、測距手段が取得した自装置と他の移動通信装置との間を距離から、他の移動通信装置の現在位置を算出し、当該現在位置を含むデータを無線通信手段から他の移動通信装置に送信する制御を行う制御手段とを備える。
【0014】
また、測距手段は、無線通信手段を用いて他の移動通信装置と交信した際の平均送信パワーと平均受信パワーを計測し、その計測値の比を用いて自装置と他の移動通信装置との間を距離を算出する構成である。
【0015】
また、測距手段は、無線通信手段を用いて他の移動通信装置との間で伝送される信号の伝送時間を計測し、その計測値を用いて自装置と他の移動通信装置との間を距離を算出する構成である。
【0016】
また、測距手段は、複数の地点で無線通信手段を用いて他の移動通信装置と交信し、それぞれの地点における送受信パワーまたは信号伝送時間を計測して他の移動通信装置との間の距離を算出する構成であり、制御手段は、位置検知手段が取得した現在位置と、測距手段が取得した自装置と他の移動通信装置との間を複数の距離から、他の移動通信装置の現在位置を算出する構成である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、第1の移動通信装置が自装置の現在位置を検知し、さらに第2の移動通信装置との通信によりその間の距離を観測し、現在位置と距離を用いて第2の移動通信装置の位置を計算し、第2の移動通信装置に通知することができる。これにより、第2の移動通信装置が自律的に現在位置を取得できない場合でも、第1の移動通信装置を介して現在位置を取得することができるので、第2の移動通信装置の構成を必要最小限に抑えることができる。すなわち、第2の移動通信装置の小型化、軽量化、経済化、低消費電力化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(システム構成)
図1は、本発明の位置情報提供システムの実施形態を示す。図において、位置情報提供システムは、自装置の現在位置を取得可能な移動通信装置10と、自律的に自装置の現在位置を取得できない移動通信装置20から構成される。移動通信装置10は、位置検知部11、無線通信部12、測距部13を備え、それらが制御部14を介して接続された構成である。一方、移動通信装置20は、無線通信部21と制御部22が接続された構成である。移動通信装置10と移動通信装置20は、互いに無線通信可能な範囲に存在している限り、双方の無線通信部12,21を介して無線通信が可能である。
【0019】
ここで、移動通信装置10および移動通信装置20は、例えば携帯電話やPHSなどの通話装置、または無線通信機能を内蔵した携帯型コンピュータやPDAなどの小型コンピュータであってもよい。また、移動通信装置10は、例えば車載の通信機能付きカーナビゲーション装置であってもよい。このような通信機能を備えたカーナビゲーション装置は、カーテレマティクス装置とも呼ばれている。また、移動通信装置20は、例えばICタグなどであってもよい。これらの装置は、内蔵された補助記憶装置に格納されているプログラムを主記憶部に展開し、処理部が該プログラムに従って演算処理する「コンピュータ」に類するものであればその形態を問わない。また、移動通信装置10および移動通信装置20は、自走するロボットのような装置でもよいが、必ずしも自走できる必要はない。すなわち、人が携帯して持ち運べる装置、あるいは車両に搭載して移動できる装置であればよい。また、本発明の位置情報提供システムは、移動通信装置10と移動通信装置20の2台で運用される場合に限らず、本システムが適用される空間(実空間およびコンピュータやネットワークで展開される仮想空間)上で複数あってもよい。また、移動通信装置10を構成する位置検知部11、無線通信部12および測距部13、移動通信装置20を構成する無線通信部21は、ソフトウェア処理またはハードウェア処理のいずれの形態であってもよい。
【0020】
(制御部14,22)
移動通信装置10の制御部14は、位置検知部11、無線通信部12および測距部13との間でやりとりされるデータの流れを制御する。移動通信装置20の制御部22は、無線通信部21との間のデータの流れを制御する。また、移動通信装置10,20に図示していないディスプレイなどの表示装置(出力装置)や、キーボードやマウスなどの指示装置(入力装置)が搭載される場合、これらの装置に対するデータの流れも制御する。制御部14の実施形態としては、ROMなどの補助記憶装置に蓄積されたプログラム(ファームウェア)を主記憶部に展開し、プログラムの命令に従って中央処理装置がデータ処理する形態となる。また、制御部14の別の実施形態としては、ASIC(Application Specific Integrated Circuit) などのように、制御部で実施される機能が予め実装されたLSIであってもよい。
【0021】
(位置検知部11)
移動通信装置10の位置検知部11は、移動通信装置10の現在位置を検知する機能を有する。なお、現在位置とは、緯度・経度で表される2次元情報、あるいは緯度・経度・標高で表される3次元情報のいずれでもよい。このような現在位置を取得するシステムとしては、GPSを利用することができる。
【0022】
(無線通信部12,21)
移動通信装置10の無線通信部12および移動通信装置20の無線通信部21は、マイクロ波などの電波を用いた無線送受信手段により構成される。無線送受信の方法としては、例えば無線LANやBluetooth (登録商標)などを利用することができる。あるいは、赤外線や可視光線を用いた無線送受信手段であってもよいし、いわゆる特定小電力無線による無線送受信手段を用いてもよい。また、変調方式としては、搬送波を拡散符号系列で変調するスペクトル拡散通信方式を用いてもよい。
【0023】
(測距部13)
移動通信装置10の測距部13は、移動通信装置10の無線通信部12と移動通信装置20の無線通信部21が交信し、送受信パワーまたは信号伝送時間を計測し、移動通信装置10と移動通信装置20との間の距離を算出する。以下、図2〜図6を参照して移動通信装置10,20間の距離測定処理手順について説明する。
【0024】
図2は、第1の距離測定処理手順を示す。移動通信装置10から移動通信装置20に対して、データ信号の送信を要求する送信要求信号を送信する。移動通信装置20は、この送信要求信号を受信すると、予め設定されている平均送信電力Ps[dBm] の情報を格納したデータ信号を生成し、その平均送信電力Ps[dBm] で当該データ信号を移動通信装置10に送信する。移動通信装置10は、このデータ信号を受信し、そのときの平均受信電力Pr[dBm] を測定する。また、受信したデータ信号から移動通信装置20における平均送信電力Ps[dBm] を抽出する。ここで、無線区間における搬送波の伝搬損失(減衰量)をη [dB/m] とすると、移動通信装置10と移動通信装置20との間の距離L[m]は、
L=(Ps−Pr)/η …(1)
で与えられる。なお、移動通信装置20の平均送信電力Ps が規定のものであり、移動通信装置10がそれを認識している場合には、移動通信装置20から送信するデータ信号は平均送信電力Ps の情報を含まない例えば搬送波のみでもよい。
【0025】
図3は、第2の距離測定処理手順を示す。移動通信装置10は、平均送信電力Ps[dBm] を記録し、その平均送信電力Ps で移動通信装置20に搬送波を送信する。移動通信装置20は、この搬送波を受信し、そのときの平均受信電力Pr[dBm] を測定する。そして、この平均受信電力Pr[dBm] の情報を格納したデータ信号を生成し、移動通信装置10に送信する。移動通信装置10は、このデータ信号を受信し、移動通信装置20における平均送信電力Ps[dBm] を抽出する。これにより、移動通信装置10と移動通信装置20との間の距離L[m]は、式(1) で与えられる。
【0026】
図4は、第3の距離測定処理手順を示す。移動通信装置10は、平均送信電力Ps1 [dBm] を記録し、その平均送信電力Ps1で移動通信装置20に搬送波を送信する。移動通信装置20は、この搬送波を受信し、そのときの平均受信電力Pr1 [dBm] を測定する。そして、この平均受信電力Pr1 [dBm] と平均送信電力Pr2 [dBm] の情報を格納したデータ信号を生成し、平均送信電力Pr2 [dBm] で当該データ信号を移動通信装置10に送信する。移動通信装置10は、このデータ信号を受信し、そのときの平均受信電力Pr2 [dBm] を測定する。また、受信したデータ信号から移動通信装置20における平均送信電力Ps1 [dBm] および平均送信電力Pr2 [dBm] を抽出する。これにより、移動通信装置10と移動通信装置20との間の距離L1,L2 [m]は、
L1 =(Ps1−Pr1) /η …(2)
L2 =(Ps2−Pr2) /η …(3)
で与えられる。移動通信装置10では、この二つの距離L1,L2 [m]の平均をとり、移動通信装置10と移動通信装置20との間の距離L[m]を算出する。
【0027】
図5は、第4の距離測定処理手順を示す。移動通信装置10は、送信時刻ts を記録するとともに、所定の制御信号を移動通信装置20に送信する。移動通信装置20は、この制御信号を受信し、その受信時刻と対応する応答信号の送信時刻の差から得られる処理時間tp を算出し、この処理時間tp を格納した応答信号を生成し、移動通信装置10に送信する。移動通信装置10は、この応答信号を受信し、受信時刻tr を記録するとともに、応答信号から処理時間tp を抽出する。ここで、無線区間における搬送波の伝搬速度をβとすると、移動通信装置10と移動通信装置20との間の距離Lは、
L=(tr−ts−tp)β/2 …(4)
で与えられる。式(4) は、移動通信装置10,20間で測定される信号往復時間から移動通信装置20における処理時間tp を引くことにより実際の信号往復時間を算出し、その半分を信号伝送時間とみなして装置間距離を算出するものである。
【0028】
図6は、第5の距離測定処理手順を示す。なお、本処理手順の場合は、移動通信装置10と移動通信装置20がもつ時計が時刻同期しているものとする。また、時刻同期していない場合には、あらかじめ時刻同期をとる処理を行うものとする。
【0029】
移動通信装置10は、送信時刻ts を格納した制御信号(例えばIP上で用いられるpingコマンド)を生成し、移動通信装置20に送信する。移動通信装置20は、この制御信号の受信し、その受信時刻tr を計時する。次に、制御信号に格納された送信時刻ts と計時した受信時刻tr から、制御信号の伝送時間tを算出する。次に、この伝送時間tを格納した制御信号を生成し、移動通信装置10に送信する。移動通信装置10は、この制御信号を受信し、制御信号から伝送時間tを抽出する。移動通信装置10と移動通信装置20との間の距離Lは、
L=t・β …(5)
で与えられる。
【0030】
また、移動通信装置20から移動通信装置10に、伝送時間tを格納した制御信号を送信する際に、移動通信装置20における送信時刻ts'を格納し、移動通信装置10でその受信時刻tr'を計時して伝送時間t' を算出し、往復のそれぞれの伝送時間t,t' を用いて、移動通信装置10と移動通信装置20との間の平均の距離を算出するようにしてもよい。また、移動通信装置20が送信時刻ts を格納した制御信号を生成して移動通信装置10に送信し、移動通信装置10自身が、この制御信号を受信した受信時刻tr と制御信号に格納されている送信時刻ts とから制御信号の伝送時間tを算出し、装置間距離Lを求めてもよい。
【0031】
(移動通信装置20の位置同定方法)
移動通信装置10は、位置検知部11で得た自装置の現在位置と、測距部13で得た移動通信装置20との距離から、移動通信装置20の位置を次のように同定する。なお、この処理は、移動通信装置10の制御部14で行われ、同定された移動通信装置20の位置情報は無線通信部12から移動通信装置20に通知される。また、移動通信装置10における移動通信装置20の位置の同定には、移動通信装置10の移動量に対して移動通信装置20の移動量が小さい(または静止している)ことが前提になる。
【0032】
図7は、第1の位置同定方法を示す。図において、移動通信装置10は(1) の位置で、自装置の現在位置P1と移動通信装置20との距離L1を得る。このとき、移動通信装置20は、移動通信装置10の現在位置P1に対して半径L1の円周上に位置することがわかる。次に、移動通信装置10は(2) の位置に移動し、同様に自装置の現在位置P2と移動通信装置20の距離L2を得る。このとき、移動通信装置20は、P1を中心とする半径L1の円周と、P2を中心とする半径L2の円周の交点C1,C2のいずれかに位置することがわかる。
【0033】
次に、例えば移動通信装置10から位置C1,C20の方向にアンテナ指向性を設定し、交互に指向方向を変えて移動通信装置20に制御信号を送信し、その応答信号のあった方向に移動通信装置20の位置を同定する。
【0034】
また、図8に示すように、移動通信装置10が非直線的に移動する場合には、移動通信装置10,20間の(1),(2),(3) で距離計測を3回以上行うことにより、移動通信装置20の1つの位置を同定することが可能である。
【0035】
図9は、本発明の位置情報提供システムの処理手順を示す。図において、移動通信装置10は、起動後に通信可能な移動通信装置20の存在を検索する(S11)、同様に、移動通信装置20は、起動後に通信可能な移動通信装置10の存在を検索する(S21)。次に、移動通信装置10と移動通信装置20が通信可能になると、移動通信装置10は自装置の現在位置を取得し、さらに移動通信装置20との間の距離を計測するための信号(データ信号、制御信号)を移動通信装置20に送信する(S12)。移動通信装置20は、移動通信装置10から送信される信号を待ち受ける(S22)。
【0036】
移動通信装置20は、移動通信装置10から送信された信号を受信した場合には、図2〜図6に示した手順に応じた信号(データ信号、応答信号)を生成し、移動通信装置10に送信する(S23)。また、移動通信装置20は、移動通信装置10からの受信信号に移動通信装置20の位置情報を含まれていない場合には、移動通信装置10から送信される信号を待ち受けに戻る(S24,S22)。
【0037】
移動通信装置10は、移動通信装置20から送信された信号を受信した場合には、図2〜図6に示した手順に従って移動通信装置20との距離を算出し、さらに自装置の現在位置と合わせて上記の同定手順に従って移動通信装置20の位置を計算する(S14)。次に、図7および図8に示すように、移動通信装置10の位置を変えて移動通信装置20との距離計算の処理を所定回数繰り返し、移動通信装置20の位置を同定する(S15,S16)。次に、移動通信装置10は、同定した移動通信装置20の位置情報を含む信号を移動通信装置20に送信する(S17)。移動通信装置20では、受信信号に位置情報が格納されている場合には、S22〜S24の処理を介してその位置情報を認識し、自装置の現在位置として取得する(S25)。
【0038】
ここで、移動通信装置20は複数の移動通信装置10と通信し、各移動通信装置10からそれぞれ位置情報を取得し、大きく外れた位置情報を除く各位置情報の平均処理を行って位置を確定することも可能である。その場合には、図9に示す処理は、各移動通信装置10に対して時分割で行うことになる。
【0039】
また、移動通信装置20は、ある時点からの相対位置を取得可能な位置検知補助機能を備えてもよい。位置検知補助機能としては、例えば「光ジャイロ」や「3次元加速度センサ」などがある。すなわち、移動通信装置20がある時間に移動通信装置10から位置情報を取得し、その後に所定の時間が経過して再度位置情報を取得したとする。このとき、再度取得した位置情報と、位置検知補助機能を用いて算出された位置情報を比較し、その差分を位置情報の評価または補正に活用するようにしてもよい。また、移動通信装置20が移動している場合、移動通信装置10から通知される位置情報に誤差が生じる場合がある。上記の位置検知補助機能はこの誤差補正にも活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の位置情報提供システムの実施形態を示す図。
【図2】第1の距離測定処理手順を示す図。
【図3】第2の距離測定処理手順を示す図。
【図4】第3の距離測定処理手順を示す図。
【図5】第4の距離測定処理手順を示す図。
【図6】第5の距離測定処理手順を示す図。
【図7】移動通信装置20の位置同定手順例1を説明する図。
【図8】移動通信装置20の位置同定手順例2を説明する図。
【図9】本発明の位置情報提供システムの処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0041】
10 移動通信装置
11 位置検知部
12 無線通信部
13 測距部
14 制御部
20 移動通信装置
21 無線通信部
22 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を検知する位置検知手段を備えて自律的に現在位置を取得する第1の移動通信装置が、自律的に現在位置を取得できない第2の移動通信装置の現在位置を検出し、その現在位置を第2の移動通信装置に通知する位置情報提供システムにおいて、
前記第1の移動通信装置は、
前記第2の移動通信装置との間で無線通信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段を用いて前記第2の移動通信装置と交信し、送受信パワーまたは信号伝送時間を計測して前記第1の移動通信装置と前記第2の移動通信装置との間を距離を算出する測距手段と、
前記位置検知手段が取得した現在位置と、前記測距手段が取得した前記第1の移動通信装置と前記第2の移動通信装置との間を距離から、前記第2の移動通信装置の現在位置を算出し、当該現在位置を含むデータを前記無線通信手段から前記第2の移動通信装置に送信する制御を行う制御手段とを備え、
前記第2の移動通信装置は、
前記第1の移動通信装置との間で無線通信を行う無線通信手段と、
前記第1の移動通信装置から送信されたデータを前記無線通信手段で受信し、該データから第2の移動通信装置の現在位置を取得する制御を行う制御手段とを備えた
ことを特徴とする位置情報提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載の位置情報提供システムにおいて、
前記第1の移動通信装置の測距手段は、前記無線通信手段を用いて前記第2の移動通信装置と交信した際の平均送信パワーと平均受信パワーを計測し、その計測値の比を用いて前記第1の移動通信装置と前記第2の移動通信装置との間を距離を算出する構成である
ことを特徴とする位置情報提供システム。
【請求項3】
請求項1に記載の位置情報提供システムにおいて、
前記第1の移動通信装置の測距手段は、前記無線通信手段を用いて前記第2の移動通信装置との間で伝送される信号の伝送時間を計測し、その計測値を用いて前記第1の移動通信装置と前記第2の移動通信装置との間を距離を算出する構成である
ことを特徴とする位置情報提供システム。
【請求項4】
請求項1に記載の位置情報提供システムにおいて、
前記第1の移動通信装置の測距手段は、複数の地点で前記無線通信手段を用いて前記第2の移動通信装置と交信し、それぞれの地点における送受信パワーまたは信号伝送時間を計測して前記第2の移動通信装置との間の距離を算出する構成であり、
前記第1の移動通信装置の制御手段は、前記位置検知手段が取得した現在位置と、前記測距手段が取得した前記第1の移動通信装置と前記第2の移動通信装置との間を複数の距離から、前記第2の移動通信装置の現在位置を算出する構成である
ことを特徴とする位置情報提供システム。
【請求項5】
現在位置を検知する位置検知手段を備えて自律的に現在位置を取得するとともに、自律的に現在位置を取得できない他の移動通信装置の現在位置を検出し、その現在位置を当該移動通信装置に通知する位置情報提供システムの移動通信装置において、
前記他の移動通信装置との間で無線通信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段を用いて前記他の移動通信装置と交信し、送受信パワーまたは信号伝送時間を計測して自装置と前記他の移動通信装置との間を距離を算出する測距手段と、
前記位置検知手段が取得した現在位置と、前記測距手段が取得した自装置と前記他の移動通信装置との間を距離から、前記他の移動通信装置の現在位置を算出し、当該現在位置を含むデータを前記無線通信手段から前記他の移動通信装置に送信する制御を行う制御手段と
を備えたことを特徴とする位置情報提供システムの移動通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載の位置情報提供システムの移動通信装置において、
前記測距手段は、前記無線通信手段を用いて前記他の移動通信装置と交信した際の平均送信パワーと平均受信パワーを計測し、その計測値の比を用いて自装置と前記他の移動通信装置との間を距離を算出する構成である
ことを特徴とする位置情報提供システムの移動通信装置。
【請求項7】
請求項5に記載の位置情報提供システムの移動通信装置において、
前記測距手段は、前記無線通信手段を用いて前記他の移動通信装置との間で伝送される信号の伝送時間を計測し、その計測値を用いて自装置と前記他の移動通信装置との間を距離を算出する構成である
ことを特徴とする位置情報提供システムの移動通信装置。
【請求項8】
請求項5に記載の位置情報提供システムの移動通信装置において、
前記測距手段は、複数の地点で前記無線通信手段を用いて前記他の移動通信装置と交信し、それぞれの地点における送受信パワーまたは信号伝送時間を計測して前記他の移動通信装置との間の距離を算出する構成であり、
前記制御手段は、前記位置検知手段が取得した現在位置と、前記測距手段が取得した自装置と前記他の移動通信装置との間を複数の距離から、前記他の移動通信装置の現在位置を算出する構成である
ことを特徴とする位置情報提供システムの移動通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−316028(P2007−316028A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148808(P2006−148808)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】