説明

位置指示装置

【課題】軟磁性金属粉末をバインダーに混合した組成物を成形した磁気コアを用いることで、緩衝材等の構成を簡略化して位置指示装置の軸径を細くする。
【解決手段】ペン先1を一端とする芯体2が、位置検出コイル3の巻かれた磁気コア4を貫通するように配設される。この磁気コア4は、軟磁性金属粉末を有機樹脂等のバインダーに混合した組成物を、例えば射出成形により成形した構造物により形成される。芯体2の他端には、ドーム状に形成された導電性弾性部材5が設けられ、その近傍に一方の面には所定の面積を有する電極7が設けられ、他方の面にはリード電極8が設けられた誘電体6が設けられる。さらに、電極7及びリード電極8からのリード線が回路基板9に接続される。また、位置検出コイル3からのリード線も回路基板9に接続される。以上の構成が外筐体10に収容されて位置指示装置が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばコンピュータに接続されるデジタイザーに使用して好適な位置指示装置に関する。詳しくは、磁気コアの破損の虞を少なくして耐衝撃性を向上させ、特に軸径を細くした位置指示装置の形成を容易に行うことができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に位置指示装置においては、位置検出用の共振コイルが、例えばペン形の形状の先端近傍に設けられている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このような構成では、位置指示装置が落下したときの衝撃などによって、共振コイルの巻かれているコアに損傷が生じる虞がある。
【0003】
すなわち、従来の磁気装置に用いられているコアは、軟磁性金属を成形したものであって、このような軟磁性金属の成形物は衝撃等に対して脆いものである。そこで従来の位置指示装置では、共振コイルの周囲に緩衝材を設けるなどの構成が採用されており、そのため部品点数が増加し、軸径が太くなるなどの問題を生じていた。
【0004】
さらに、近年、位置指示装置は、PDA(Personal Digital Assistant)などの小型の携帯情報端末での位置を指示する手段として利用される機会が増えている。この場合に、位置指示装置はより細いものが望まれる。すなわち、この場合の位置指示装置はPDAに収納するため、ある程度細いことが必要にある。しかし、従来の材質では、細くすることは可能でもそれに反比例するように強度は弱くなる。このため、例えば落下に対する衝撃に耐えられない場合や、持つ時の力加減で位置指示装置が撓り、コアが折れてしまうなどの問題もあった。
【0005】
一方、このような磁気装置のコアの材質として軟磁性金属扁平粉末を有機バインダーに混合し、射出成形等によってコアを形成することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法により、成形加工性が高まることが知られている。また、この方法により形成されたコアは、樹脂との混合により衝撃等に強いという性質も有していた。
【0006】
【特許文献1】特開2001−319831号公報
【特許文献2】特開2004−71845号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は上記問題点に鑑みて成されたものであって、落下時等の衝撃に強い位置指示装置のコアを提供することを課題とする。すなわち、本発明の目的は、共振コイルの巻かれているコアに損傷が生じる虞を少なくし、緩衝材等を設ける必要をなくして構造を簡単にし、位置指示装置の軸径を細くできるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決し、本発明の目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、少なくとも1つのコイルを有し、電磁波を送信して位置を指示する位置指示装置であって、コイルのコアとして、軟磁性金属粉末を樹脂のバインダーに混合した組成物を成形した構造物を用いることを特徴とする位置指示装置である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、位置検出用の共振コイルと筆圧検出用の可変容量コンデンサと制御回路とを有し、電磁波を送信して位置を指示する位置指示装置であって、可変容量コンデンサの容量値に従って共振コイルの共振を制御し、共振コイルのコアとして、軟磁性金属粉末を樹脂のバインダーに混合した組成物を成形した構造物を用いることを特徴とする位置指示装置である。
【0010】
請求項3に記載の位置指示装置は、ペン形の形状とされ、コイルのコアがペン形の形状の先端近傍に設けられることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載の位置指示装置は、ペン形の形状とされ、コイルのコアがペン形の形状の外筐体の内部に直接設けられることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5に記載の位置指示装置は、ペン形の形状とされ、ペン形の形状の先端を一端とする芯体がコイルのコアを貫通して設けられることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6に記載の位置指示装置において、軟磁性金属粉末は、Feを母合金とする軟磁性金属扁平粉末25〜65体積%からなることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7に記載の位置指示装置において、軟磁性金属粉末の組成物は、軟磁性金属粉末を一定方向に配向させるように射出圧縮成形機を用いて射出圧縮成形されたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜7に述べた本発明の位置指示装置によれば、コイルのコアとして、軟磁性金属粉末をバインダーに混合した組成物を成形した構造物を用いるため、位置指示装置の軸径を容易に細くすることができ、衝撃等に対してコアに損傷が生じる虞が少なくなる。また、緩衝材等を不要にして構造を簡単にすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1には、本発明を適用した位置指示装置の一実施形態の構成を示す。
【0017】
図1において、ペン先1を一端とする芯体2が、位置検出コイル3となる導電線の巻かれた磁気コア4を貫通するように配設される。この磁気コア4は、軟磁性金属粉末を有機樹脂等のバインダーに混合した組成物を、例えば射出成形により成形した構造物である。なお、位置検出コイル3は磁気コア4に巻かれることにより、その検出感度が高くなる。
【0018】
また、芯体2の他端部には、ドーム状に形成された導電性弾性部材5が設けられる。さらに、導電性弾性部材5の近傍に扁平形状の誘電体6が設けられる。この誘電体6の一方の面には所定の面積を有する電極7が設けられ、誘電体6の他方の面にはリード電極8が設けられる。そして、この他方の面が導電性弾性部材5に対向するように誘電体6が配置される。
【0019】
また、誘電体6の他方の面に設けられるリード電極8は、誘電体6の他方の面の略中心から誘電体6の側面を介して誘電体6の一方の面まで延長して設けられている。さらに、電極7及びリード電極8からのリード線が回路基板9に接続される。また、位置検出コイル3からのリード線も回路基板9に接続されている。そして、以上の構成が外筐体10に収容されることによって位置指示装置が形成される。
【0020】
この構成において、ペン先1に筆圧が掛かり、芯体2を介してその他端部に設けられた導電性弾性部材5が誘電体6の他方の面に押し付けられ、導電性弾性部材5の先端が扁平となって、誘電体6の他方の面に対する接触面積が増加する。そして、導電性弾性部材5の先端がリード電極8に接触している状態で、導電性弾性部材5の誘電体6の他方の面に対する接触面積が変わることによって、その接触面積に応じて電極7とリード電極8との間の容量値が変化する。
【0021】
このようにして、ペン先1に掛かる筆圧値が電極7とリード電極8との間の容量値の変化として検出される。そこでこの容量値の変化が、回路基板9に設けられる例えば図2に示すような回路で検出処理される。すなわち図2には、検出された筆圧値に従って、位置検出コイル3から送信される信号を制御するための回路構成をブロック図で示す。
【0022】
この図2では、ペン先1を一端とする芯体2が位置検出コイル3の巻かれた磁気コア4を貫通して設けられ、この芯体2の他端に筆圧検出部となる導電性弾性部材5と、電極7及びリード電極8を有する誘電体6とが設けられる。また、位置検出コイル3と並列に共振コンデンサ11が接続され、この共振コンデンサ11の両端間にスイッチ手段12が接続される。さらに、位置検出コイル3の一端が電圧検出回路13を通じて蓄電バッテリー14に接続される。
【0023】
さらに、上述の電極7及びリード電極8から導出されるリード線が筆圧検出回路15に接続され、この筆圧検出回路15で電極7、リード電極8間の容量値の変化が検出され、芯体2を通じて押圧される筆圧が所定の筆圧値として取り出される。この筆圧値がCPU(Central Processing Unit)16に供給される。そして、このCPU16で形成された信号がスイッチ手段12に供給され、スイッチ手段12のオンオフによって、筆圧値を含む所望の信号の送信が行われる。
【0024】
また、蓄電バッテリー14に蓄えられた電力がCPU16の駆動電源として供給されると共に、筆圧検出回路15などの位置指示装置の各部に供給される。従ってこの位置指示装置においては、駆動電源が位置検出コイル3を通じて供給されるので、有線による電源の供給や乾電池等を必要とせず、簡便で良好な位置指示装置を実現することができる。また、この電源を用いて、より強力な送信を可能にすることもできる。
【0025】
さらにこの場合に、筆圧検出部となる可変容量コンデンサの構成は、他端部にドーム状に形成された導電性弾性部材5の設けられた芯体2と、一方の面に電極7と他方の面にリード電極8の設けられた扁平形状の誘電体6の2点だけであって、極めて簡略化された構成になっている。なお、導電性弾性部材5にはシリコン導電ゴムや、加圧導電ゴム(PCR:Pressure sensitive Conductive Rubber)などを用いることができる。
【0026】
そしてこの構成によれば、磁気コア4は、軟磁性金属粉末を有機樹脂等のバインダーに混合した組成物を、例えば射出成形により成形した構造物により形成される。そのため、従来の軟磁性金属の成形物よりも安易に形を作ることができる。また、形成された磁気コア4は、従来の軟磁性金属の成形物に比べて耐衝撃性に優れ、位置検出用の共振コイルの巻かれているコアに損傷が生じる虞を少なくすることができる。従って、コアの周囲に緩衝材等を設ける必要をなくして構造を簡単にし、位置指示装置の軸径を細くすることが可能になる。
【0027】
また、図3には、本発明のコードレスの位置指示装置20を具備する座標入力装置の概略構成を模式的に示す。この座標入力装置は、電磁授受方式を採用しており、座標入力面上のX軸方向及びY軸方向にそれぞれ複数のセンサコイル群が並設されている。
【0028】
このような電磁授受方式の座標入力装置においては、先ず、送信状態にあるセンサコイルに対して電流を送出することによりセンサコイルから交番磁界を送信する。この送信された交番磁界により、位置指示装置20に内蔵されるコイル若しくは共振回路が励振されることにより位置指示器20から応答交番磁界が送信される。続いて、センサコイルからの交番磁界の送信を止めてセンサコイルを受信状態とし、応答交番磁界をセンサコイルにて受信する。そして、各センサコイルから得られた受信信号の強度分布を信号解析することにより、位置指示装置20の座標を算出することができる。
【0029】
ここで、送信状態にあるセンサコイルへ送出される電流としては、高周波信号が用いられる。適宜の高周波信号発生器21が高周波信号を発生する。さらに、高周波信号を送出するために、又は受信信号を受け取るために、各センサコイルを選択するコイル切り替え手段を有する。また、各センサコイルの送信状態と受信状態とを切り替えるための送信/受信切り替え手段を有する。コイル切り替え手段と送信/受信切り替え手段は、別個に設けられる場合と兼用される場合とがある。そして受信信号は、受信回路22を介して信号解析部(図示せず)へ渡され、位置指示装置20の座標が算出される。
【0030】
さらに図4には、磁気コア4を例えば射出成形により成形する際に用いられる装置の構成を模式図で示す。この図4で、軟磁性金属粉末を有機樹脂等のバインダーに混合した組成物がホッパー101から射出装置100に投入される。この射出装置100には熱源が設けられ、投入された組成物が溶融されて射出ノズル102から金型200に向けて射出される。
【0031】
金型200は、上述した位置指示装置の外筐体10の内面に略沿う形状とされる。そして、この金型200の一端が接続部201を介して射出ノズル102に接続され、他端には、射出された溶融組成物の捨て代となる空房を有する吐出部202が設けられる。従って、射出ノズル102から射出された溶融組成物は、一部が吐出部202に吐出された状態で金型200に満たされ、冷却固化される。
【0032】
なお、上記の軟磁性金属粉末は、Feを母合金とする軟磁性金属扁平粉末25〜65体積%からなるものとする。この組成物を用いることにより、より強度の高く、衝撃に強く割れにくい位置指示装置のコアが実現される。また、軟磁性金属粉末の組成物の成形は、樹脂のバインダーで固めるため透磁率は非常に低くなる。それを、上述の射出圧縮成形機を用いることにより、軟磁性金属扁平粉を一定方向に配向させて透磁率を高めることができる。
【0033】
すなわち、このようにして形成された磁気コア4は、バインダーに混合された軟磁性金属粉末が、略一定の向きに揃った状態で固化され、磁気コアとしての特性に優れた製品を得ることができる。さらに、磁気コア4の形状が位置指示装置の外筐体10の内面に略沿う形状とされたことにより、磁気コア4の先端を位置指示装置のペン先1の極めて近傍に配置することができる。また、検出装置側からの磁界に敏感に反応することができ、これによっても位置検出の精度を高めることができる。
【0034】
そして、このような射出成形により成形した構造物で形成される磁気コア4は、従来の軟磁性金属の成形物に比べて耐衝撃性に優れている。このため、位置検出用の共振コイルの巻かれているコアに損傷が生じる虞を少なくすることができるので、コアの周囲に緩衝材等を設ける必要をなくして構造を簡単にし、位置指示装置の軸径を細くすることが可能になる。なお、図5には、上述のようにして成形された磁気コア4の外観図を示す。
【0035】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形例、応用例を含むことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明を適用した位置指示装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明を適用した位置指示装置の回路構成の例を示すブロック図である。
【図3】本発明の位置指示装置を具備する座標入力装置を説明する模式図である。
【図4】本発明を適用した位置指示装置の磁気コアの形成を説明する模式図である。
【図5】形成された磁気コアの例を示す外観図である。
【符号の説明】
【0037】
1…ペン先、2…芯体、3…位置検出コイル、4…磁気コア、5…導電性弾性部材、6…誘電体、7…電極、8…リード電極、9…回路基板、10…外筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのコイルを有し、電磁波を送信して位置を指示する位置指示装置であって、
前記コイルのコアとして、軟磁性金属粉末を樹脂のバインダーに混合した組成物を成形した構造物を用いる
ことを特徴とする位置指示装置。
【請求項2】
位置検出用の共振コイルと筆圧検出用の可変容量コンデンサと制御回路とを有し、電磁波を送信して位置を指示する位置指示装置であって、
前記可変容量コンデンサの容量値に従って前記共振コイルの共振を制御し、
前記共振コイルのコアとして、軟磁性金属粉末を樹脂のバインダーに混合した組成物を成形した構造物を用いる
ことを特徴とする位置指示装置。
【請求項3】
前記位置指示装置はペン形の形状とされ、
前記コイルのコアが前記ペン形の形状の先端近傍に設けられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位置指示装置。
【請求項4】
前記位置指示装置はペン形の形状とされ、
前記コイルのコアが前記ペン形の形状の外筐体の内部に直接設けられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位置指示装置。
【請求項5】
前記位置指示装置はペン形の形状とされ、
前記ペン形の形状の先端を一端とする芯体が前記コイルのコアを貫通して設けられる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位置指示装置。
【請求項6】
前記軟磁性金属粉末は、
Feを母合金とする軟磁性金属扁平粉末25〜65体積%からなる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位置指示装置。
【請求項7】
前記軟磁性金属粉末の組成物は、
前記軟磁性金属粉末を一定方向に配向させるように射出圧縮成形機を用いて射出圧縮成形されたものである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の位置指示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−186071(P2008−186071A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16648(P2007−16648)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】