説明

位置推定装置

【課題】車々間通信が直接可能なエリア外に周辺車両が存在する環境において、この周辺車両の位置を推定する際に行われる車々間通信における通信量を、より少なくすることができる位置推定装置を提供する。
【解決手段】自車両Aからの車々間通信が直接可能な第一通信エリアRa内に位置する通信車両B〜Dのそれぞれから、通信車両B〜Dの位置情報、通信車両B〜Dからの車々間通信が直接可能な第二通信エリアSb〜Sdに関するエリア情報、及び第二通信エリアSb,Sc内に位置する第二周辺車両Xを識別するための車両IDを取得する車々間通信機2と、車々間通信機2により取得された情報に基づいて、第二周辺車両Xが含まれる第二通信エリアSb,Sc内であって第一通信エリアRa外である位置推定領域Tを、第二周辺車両Xが位置する可能性を有する領域として算出する他車両データ処理部3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車々間通信によって周辺車両の位置を推定する位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周辺車両の位置の推定等を行うために、車両と車両との間の通信、即ち車々間通信を行うものが知られている。例えば、特許文献1に記載の技術では、車々間通信が直接可能なエリア外に周辺車両が存在する環境において、この周辺車両の位置の推定等を行う際に、この周辺車両との間で通信しようとする情報が、中継器を用いて中継されている。この中継器は、周辺車両から受信した情報の優先度を判定して、この優先度を基に、この情報を優先処理するか否かを判定している。
【特許文献1】特開2008−11343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車々間通信が直接可能なエリア外に周辺車両が存在する環境において、特許文献1に記載の技術では、車々間で中継器を介して間接的に通信が行われるため、同一内容の情報が中継器によって多重に複製されて通信量が増大してしまう。これにより、車両及び中継器における通信容量が不足して、必要な情報の送受信が困難になってしまうおそれがある。
【0004】
そこで本発明は、車々間通信が直接可能なエリア外に周辺車両が存在する環境において、この周辺車両の位置を推定する際に行われる車々間通信における通信量を、より少なくすることができる位置推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係る位置推定装置は、自車両に取り付けられて車々間通信によって周辺車両の位置を推定する位置推定装置であって、自車両からの車々間通信が直接可能な第一通信エリア内に位置する第一周辺車両から、当該第一周辺車両の位置情報、当該第一周辺車両からの車々間通信が直接可能な第二通信エリアに関するエリア情報、及び当該第二通信エリア内に位置する第二周辺車両を識別するための識別情報を取得する取得手段と、取得手段により取得された位置情報、エリア情報、及び識別情報に基づいて、第二周辺車両が含まれる第二通信エリア内であって第一通信エリア外である領域を、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出する算出手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明では、第一周辺車両から取得手段によって取得された位置情報、エリア情報、及び識別情報に基づいて、第二周辺車両が含まれる第二通信エリア内であって第一通信エリア外である領域が、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出手段によって算出される。このように、車々間で中継器を介して間接的に通信を行うことなく、第一通信エリア外である上記の領域が、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出される。このため、同一内容の情報を多重に複製して通信量を増大させる中継器を介して間接的に通信を行う場合に比べて通信量を少なくすることができる。このことから、車両及び中継器における通信容量が不足する可能性をより低くすることが可能となる。この結果、車々間通信が直接可能なエリア(即ち第一通信エリア)外に周辺車両が存在する環境において、周辺車両(即ち第二周辺車両)の位置を推定する際に行われる車々間通信における通信量を、より少なくすることができる。
【0007】
また、取得手段は、第一通信エリア内に位置する複数の第一周辺車両のそれぞれから、位置情報、エリア情報、及び識別情報を取得し、算出手段は、取得手段により取得された複数の第一周辺車両のそれぞれの位置情報、エリア情報、及び識別情報に基づいて、第二周辺車両が含まれる複数の第二通信エリアが重なる領域内であって第一通信エリア外である領域を、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出するのも好ましい。
【0008】
これにより、取得手段により取得された複数の第一周辺車両のそれぞれの位置情報、エリア情報、及び識別情報に基づいて、第二周辺車両が含まれる複数の第二通信エリアが重なる領域内であって第一通信エリア外である領域が、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出手段によって算出される。このように、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として、複数の第二通信エリアが重なる領域内に絞り込まれる。この結果、周辺車両(即ち第二周辺車両)の位置を推定する際の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車々間通信が直接可能なエリア外に周辺車両が存在する環境において、この周辺車両の位置を推定する際に行われる車々間通信における通信量を、より少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を附し、重複する説明は省略する。
【0011】
まず、図1を用いて、本発明の実施形態に係る位置推定装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る位置推定装置10の構成概略図である。位置推定装置10は、自車両(例えば乗用車)に取り付けられて、無線による車々間通信を行うことによって自車両の周辺に存在する周辺車両(例えば他の乗用車)の位置を推定する装置である。
【0012】
位置推定装置10は、機能的な構成として、送信データ生成部1と、車々間通信機2(取得手段)と、他車両データ処理部3(算出手段)とを備えている。送信データ生成部1、車々間通信機2、及び他車両データ処理部3による機能は、例えば、自車両内部に搭載された電子制御装置であるECU(Electronic Control Unitの略。図示せず)により実現される。ECUは、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするユニットである。
【0013】
送信データ生成部1は、自車両に関する情報である自車両データ(自車両情報)を定期的に生成する部分である。自車両データは、データ生成時点における自車両に関する位置情報、エリア情報、車両ID、速度情報、及び移動方向情報を含んでいる。ここで、自車両の位置情報とは、例えばGPS(Global Positioning System)衛星からの電波信号を受信して検出された自車両の現在位置を示す情報(例えば緯度及び経度に関する情報等)である。また、自車両のエリア情報とは、自車両の現在位置からの車々間通信が直接可能な必要最低限の範囲である第一通信エリアを示す情報(例えばエリアの中心位置及び半径に関する情報等)である。また、自車両の車両IDとは、自車両を他の車両と識別するための識別情報(例えばナンバープレートが示す情報や、救急車や消防車といった緊急車両であるか否かを示す情報等)である。
【0014】
車々間通信機2は、第一通信エリア内に位置する通信車両(第一周辺車両)との間の車々間通信によって、上記のデータを含む各種データの送受信を行うアンテナ部付属通信装置である。より詳しくは、車々間通信機2は、第一通信エリア内に位置する通信車両に、送信データ生成部1により生成された上記の自車両データや、第一通信エリア内に位置する他の通信車両の車両IDを定期的に送信する。なお、自車両データのデータ量に対して、他の通信車両の車両IDのデータ量は比較的小さいため、自車両データへの車両IDの付加によるデータ量の増加による影響はほとんどない。
【0015】
また、車々間通信機2は、第一通信エリア内に位置する通信車両から他車両データを定期的に受信する。この他車両データは、この通信車両に関する位置情報、エリア情報、車両ID、速度情報、及び移動方向情報を含んでいる。ここで、この位置情報とは、この通信車両の現在位置を示す情報である。また、このエリア情報とは、この通信車両の現在位置からの車々間通信が直接可能な必要最低限の範囲である第二通信エリアを示す情報である。また、この車両IDとは、この第二通信エリア内に位置する第二周辺車両を他の車両と識別するための情報である。ここで、第二周辺車両とは、その存在位置が位置推定装置10の運転者によって着目される可能性がある車両のことである。車々間通信機2は、第一通信エリア内に位置する複数の通信車両のそれぞれから、他車両データを受信することができる。
【0016】
なお、車々間通信機2を用いて受信した通信車両の速度情報や、自車両の速度情報を、車々間通信機2を用いて他の通信車両との間で互いに送信することができる。これにより、自車両の運転者は周辺の通信車両の移動速度(例えば法定速度を超えた移動速度)を知ることができるため、自車両の移動速度や移動ルートを変更するといったような、事故防止のための事前の対応をとることができるようになる。
【0017】
他車両データ処理部3は、車々間通信機2により取得された他車両データに基づいて、第二周辺車両が含まれる第二通信エリア内であって第一通信エリア外である領域(以下、位置推定領域という。)を、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として絞り込んで算出する部分である。なお、位置推定領域は第一通信エリア外の領域であるため、位置推定領域内の第二周辺車両と自車両との間では直接的な車々間通信は行われていない。他車両データ処理部3は、通信エリア内車両処理部4及び通信エリア外車両処理部5を有している。通信エリア内車両処理部4が、他車両データに基づいて、第二周辺車両が含まれる第二通信エリア内である領域を算出し、一方、通信エリア外車両処理部5が、通信エリア内車両処理部4によって算出された領域内であって第一通信エリア外である位置推定領域を算出する。
【0018】
この結果、第二周辺車両が含まれる第二通信エリア内であって第一通信エリア外である位置推定領域が算出される。なお、他車両データ処理部3は、車々間通信機2により取得された複数の通信車両のそれぞれの他車両データに基づいて、第二周辺車両が含まれる複数の第二通信エリアが最も多く重なる領域内であって第一通信エリア外である位置推定領域を、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出することができる。
【0019】
また、他車両データ処理部3は、位置推定領域を、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出すると、この位置推定領域に関する情報を、自車両の内部に設置されたディスプレイ(表示手段)に出力して表示させることができる。更に、第二周辺車両が、救急車や消防車といった緊急車両であることが判明した場合、このディスプレイに、速度情報及び移動方向状況に基づくこの緊急車両の移動状況を表示させることができる。これにより、自車両の運転者はこの緊急車両の移動状況を知ることができるため、自車両の移動速度や移動ルートを変更するといったような、事故防止のための事前の対応をとることができるようになる。
【0020】
引き続き、図2を用いて、車々間通信機2により取得された他車両データに基づいて、位置推定領域を、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として他車両データ処理部3が算出する際の詳細を説明する。図2は、車々間通信機2により取得された他車両データに基づいて、第二周辺車両が含まれる複数の第二通信エリアが最も多く重なる領域内であって第一通信エリア外である位置推定領域を、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として他車両データ処理部3が算出する際の詳細を説明するための説明図である。なお、ここでは説明の都合上、全ての通信エリアの形状は円状であるとして説明するが、通信エリアの形状は特に限定されず、矩形でもよく、多角形でもよい。また、第一通信エリア内に位置する通信車両の数は特に限定されない。
【0021】
まず、図2のAの地点に位置する自車両Aの車々間通信機2が、第一通信エリアRa(通信車両Aを中心とした半径dの円状領域)内に位置する通信車両B,C,Dのそれぞれから、他車両データを受信する。通信車両Bから受信した他車両データは、通信車両Bに関する位置情報とエリア情報と車両IDとを含んでいる。ここで、この位置情報とは、通信車両Bの現在位置を示す情報である。また、このエリア情報とは、通信車両Bからの車々間通信が直接可能な範囲である第二通信エリアSb(通信車両Bを中心とした半径dの円状領域)を示す情報である。また、この車両IDとは、この第二通信エリアSb内に位置する第二周辺車両X及び(通信車両Bから見た場合の)通信車両Aを、他の車両と識別するための情報である。
【0022】
同様に、通信車両Cから受信した他車両データは、通信車両Cに関する位置情報とエリア情報と車両IDとを含んでいる。ここで、この位置情報とは、通信車両Cの現在位置を示す情報である。また、このエリア情報とは、通信車両Cからの車々間通信が直接可能な範囲である第二通信エリアSc(通信車両Cを中心とした半径dの円状領域)を示す情報である。また、この車両IDとは、この第二通信エリアSc内に位置する第二周辺車両X及び(通信車両Cから見た場合の)通信車両Aを、他の車両と識別するための情報である。
【0023】
更に、通信車両Dから受信した他車両データは、通信車両Dに関する位置情報とエリア情報と車両IDとを含んでいる。ここで、この位置情報とは、通信車両Dの現在位置を示す情報である。また、このエリア情報とは、通信車両Dからの車々間通信が直接可能な範囲である第二通信エリアSd(通信車両Dを中心とした半径dの円状領域)を示す情報である。また、この車両IDとは、この第二通信エリアSd内に位置する(通信車両Dから見た場合の)通信車両Aを、他の車両と識別するための情報である。
【0024】
次に、自車両Aの通信エリア内車両処理部4が、上記の他車両データに基づいて、第二周辺車両Xが含まれている第二通信エリアSb,Scの全てが重ね合わさっている領域を算出する。一方、自車両Aの通信エリア外車両処理部5が、通信エリア内車両処理部4によって算出された領域内であって第一通信エリアRa外である位置推定領域T(即ち、図2における略三角形状の斜線領域)を特定する。そして、この算出された位置推定領域Tが、第二周辺車両Xが位置する可能性を有する領域として算出される。
【0025】
引き続き、図3を用いて、位置推定領域を、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として数式を用いて算出する際の詳細を説明する。図3は、図2に示す状況において、位置推定領域を、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として数式を用いて算出する際の詳細を説明するためのxy座標面である。
【0026】
まず、自車両Aの位置座標を座標A(Xa,Ya)とし、座標A(Xa,Ya)を原点とする(即ちXa=Ya=0とする)xy座標系において、通信車両B,C,Dのそれぞれの位置座標を座標B(Xb,Yb)、座標C(Xc,Yc)、及び座標D(Xd,Yd)とする。また、第二周辺車両Xの位置座標を座標X(X,Y)とする。ここでは、Xb〜Xd及びYb〜Ydは定数であり、X及びYは変数であるとし、半径dも定数であるとする。
【0027】
ここで、上記したように、第二周辺車両Xは、座標Bを中心とした半径dの円状領域である第二通信エリアSb内に位置するため、以下の数式(1)に示すように、座標Bと座標Xとの間の距離はd未満である。
【数1】

【0028】
同様に、上記したように、第二周辺車両Xは、座標Cを中心とした半径dの円状領域である第二通信エリアSc内に位置するため、以下の数式(2)に示すように、座標Cと座標Xとの間の距離はd未満である。
【数2】

【0029】
更に、上記したように、第二周辺車両Xは、座標Dを中心とした半径dの円状領域である第二通信エリアSd外に位置するため、以下の数式(3)に示すように、座標Dと座標Xとの間の距離はdより大きい。
【数3】

【0030】
更に、上記したように、第二周辺車両Xは、座標Aを中心とした半径dの円状領域である第一通信エリアRa外に位置するため、以下の数式(4)に示すように、座標Aと座標Xとの間の距離はdより大きい。
【数4】

【0031】
ここで、上記の数式(1)〜(4)を全て満たす座標Xが、他車両データ処理部3によって算出される。なお、位置推定領域をより正しく算出するために、算出される座標Xは、より多く算出されるのが好ましい。座標A(Xa,Ya)を原点とするxy座標系において、算出された座標Xを含む領域が、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出される。
【0032】
引き続き、図4を用いて、位置推定装置10で実行される、各データの受信から、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域の算出までの処理の一連の流れについて説明する。図4は、位置推定装置10で実行される処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【0033】
まず、車々間通信機2が、車々間通信によって上記の各データを受信する(ステップS01)と、他車両データ処理部3が、車々間通信機2により取得された他車両データの中から、第一通信エリア外に位置する第二周辺車両の車両IDを抽出する(ステップS02)。そして、他車両データ処理部3が、抽出した車両IDの中に、着目車両の車両IDが含まれているか否かを判定する(ステップS03)。着目車両とは、衝突事故や接触事故を防止して安全を確保するために、自車両の運転者が存在位置を着目している車両のことである。着目車両の例として、救急車や消防車といった緊急車両が挙げられる。着目車両の車両IDは、この運転者によって事前にECU内に登録設定されている。
【0034】
ここで、他車両データ処理部3が抽出した車両IDの中に、着目車両の車両IDである着目車両IDが含まれていない場合は、この一連の処理は終了する。一方、他車両データ処理部3が抽出した車両IDの中に、着目車両IDが含まれている場合は、この着目車両IDが示す第二周辺車両を、現時点で位置を推定すべき着目車両として決定する(ステップS04)。即ち、この着目車両IDが示す第二周辺車両を、上記の第二周辺車両Xとする。
【0035】
次に、他車両データ処理部3が、方程式の設定処理が未処理である通信車両に関する他車両データを選択する(ステップS05)。そして、他車両データ処理部3が、選択した通信車両からの車々間通信が直接可能な第二通信エリア内に、着目車両IDが示す第二周辺車両Xが含まれているか否かを判定する(ステップS06)。この第二通信エリア内にこの第二周辺車両Xが含まれている場合、上記の数式(1)や数式(2)のように、選択した通信車両の位置座標と座標Xとの間の距離はd未満である旨を示す第一の方程式を設定する(ステップS07)。そして、後述のステップS09に移行する。
【0036】
一方、この第二通信エリア内にこの第二周辺車両Xが含まれていない場合、上記の数式(3)のように、選択した通信車両の位置座標と座標Xとの間の距離はdより大きい旨を示す第二の方程式を設定する(ステップS08)。そして、後述のステップS09に移行する。
【0037】
次に、ステップS09で、方程式の設定処理が未処理である通信車両に関する他車両データは未だ存在するか否かを、他車両データ処理部3が判定する(ステップS09)。この設定処理が未処理である通信車両に関する他車両データが未だ存在する場合、ステップS05に戻って移行する。一方、この設定処理が未処理である通信車両に関する他車両データは既に存在しない場合、他車両データ処理部3が、既に設定された上記の数式(1)〜(3)全てによって示される方程式と、ECUにおいて事前に設定された上記の数式(4)によって示される方程式とに基づいて、位置推定領域を、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出する(ステップS10)。
【0038】
次に、位置推定領域の算出処理が未処理である着目車両は存在するか否かを、他車両データ処理部3が判定する(ステップS11)。この算出処理が未処理である着目車両が未だ存在する場合、ステップS04に戻って移行する。一方、この算出処理が未処理である着目車両は既に存在しない場合、一連の処理は終了する。
【0039】
引き続き、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態によれば、通信車両から車々間通信機2によって取得された位置情報、エリア情報、及び車両IDに基づいて、第二周辺車両Xが含まれる第二通信エリア内であって第一通信エリア外である位置推定領域が、第二周辺車両Xが位置する可能性を有する領域として他車両データ処理部3によって算出される。このように、車々間で中継器を介して間接的に通信を行うことなく、第一通信エリア外である上記の位置推定領域が、第二周辺車両Xが位置する可能性を有する領域として算出される。
【0040】
このため、同一内容の情報を多重に複製して通信量を増大させる中継器を介して間接的に通信を行う場合に比べて、通信量を少なくすることができる。このことから、車両及び中継器における通信容量が不足する可能性をより低くすることが可能となる。この結果、車々間通信が直接可能なエリア(即ち第一通信エリア)外に周辺車両が存在する環境において、この周辺車両(即ち第二周辺車両X)の位置を推定する際に行われる車々間通信における通信量を、より少なくすることができる。また、救急車や消防車といった緊急車両が第一通信エリア外の周辺領域に存在するか否か、存在する場合はその存在領域が分かるため、事故防止のための事前の対応をとって安全を確保することができる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では送信データ生成部1及び他車両データ処理部3のそれぞれを個別の構成要素としたが、これらを合わせた構成要素としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係る位置推定装置の構成概略図である。
【図2】位置推定領域を、第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出する際の詳細を説明するための説明図である。
【図3】位置推定領域を、数式を用いて算出する際の詳細を説明するためのxy座標面である。
【図4】位置推定装置で実行される処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1…送信データ生成部、2…車々間通信機、3…他車両データ処理部、4…通信エリア内車両処理部、5…通信エリア外車両処理部、10…位置推定装置、A…自車両、B〜D…通信車両、Ra…第一通信エリア、Sb〜Sd…第二通信エリア、T…位置推定領域、X…第二周辺車両。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両に取り付けられて車々間通信によって周辺車両の位置を推定する位置推定装置であって、
前記自車両からの車々間通信が直接可能な第一通信エリア内に位置する第一周辺車両から、当該第一周辺車両の位置情報、当該第一周辺車両からの車々間通信が直接可能な第二通信エリアに関するエリア情報、及び当該第二通信エリア内に位置する第二周辺車両を識別するための識別情報を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記位置情報、前記エリア情報、及び前記識別情報に基づいて、前記第二周辺車両が含まれる前記第二通信エリア内であって前記第一通信エリア外である領域を、前記第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする位置推定装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記第一通信エリア内に位置する複数の前記第一周辺車両のそれぞれから、前記位置情報、前記エリア情報、及び前記識別情報を取得し、
前記算出手段は、前記取得手段により取得された前記複数の第一周辺車両のそれぞれの前記位置情報、前記エリア情報、及び前記識別情報に基づいて、前記第二周辺車両が含まれる複数の前記第二通信エリアが重なる領域内であって前記第一通信エリア外である領域を、前記第二周辺車両が位置する可能性を有する領域として算出すること、
を特徴とする請求項1に記載の位置推定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−68208(P2010−68208A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232171(P2008−232171)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】