説明

位置検出方法及び位置検出装置

【課題】停止時に振動を伴う移動体の位置の精密測定において、信頼性が高く且つ測定時間が短時間で済む位置検出方法及び位置検出装置を提供する。
【解決手段】外周にコイル15を有するレンズ支持体7は、マグネット13が配置された筐体5、6の内周に配置され且つスプリング9、11により移動自在に支持されており、コイル15に所定値の電流(単位駆動力)を流すことにより生じる電磁力とスプリング9、11の付勢力とが釣り合った位置で停止するレンズ駆動装置1のレンズ支持体7の位置を検出する方法において、レンズ支持体7は単位駆動電流を与えると所定量移動した後に振動を伴って停止しており、連続的にレンズ支持体7の位置を測定し、測定したレンズ支持体7の位置の平均値を所定時間毎に求め、平均値が同じ値の個数を数えて比較し、一番多い個数の値を単位駆動電流による移動位置としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単位駆動力を与えて移動した後に振動を伴って停止する移動体の位置検出方法に関し、特に、小型カメラに用いられるオートフォーカス用レンズ駆動装置の検査に用いる位置検出方法及び位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スプリングにより支持されて移動(変位)と停止を繰り返して所定位置まで移動する移動体は停止時に振動を伴うので、移動位置(停止位置)を測定するときに測定値がまちまちになる。このため、従来は測定した値の平均値をとっていた。
【0003】
一方、特許文献1には移動しない対象物に対して、精密な位置検出を行う為、測定値の平均をとったり、最大値と最小値を外したりして精密に測定する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には搬送されてくる移動体の厚みを測定する方法として測定した距離の平均値をとる方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−227632号公報
【特許文献2】特開2001−19227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術ではいずれも平均値を計算したり、最大値と最小値を外したりするだけであるから、停止時に振動を伴う移動体の位置検出の場合には、測定地点が振動の山付近に偏ったり谷付近に偏ったりする場合もあり、データの信頼性に劣るという問題があった。
【0007】
また、振動の停止まで待っていたのでは、連続的に移動と停止を繰り返して移動する移動体のような場合には測定に長時間を要することになる。
【0008】
そこで、本発明は、停止時に振動を伴う移動体の位置の精密測定において信頼性が高く且つ測定時間が短時間で済む位置検出方法及び位置検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、単位駆動力を与えると所定量移動した後に振動を伴って停止する移動体の位置検出方法であって、連続的に移動体の位置を測定し、測定した移動体の位置の平均値を所定時間毎に求め、平均値が同じ値の個数を数えて比較し、一番多い個数の値を単位駆動力による移動位置とすることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、単位駆動力は移動体に連続的に付与し、単位駆動力毎の移動位置を求めることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、移動体はレンズを支持すると共に外周にコイルを有するレンズ支持体であり、マグネットが配置された固定体の内周に配置され固定体に対してスプリングにより移動自在に支持されており、単位駆動力はコイルに所定値の電流を流すことにより生じる電磁力であり、コイルに電流を流して生じる電磁力とスプリングの付勢力とが釣り合った位置で停止するレンズ駆動装置のレンズ支持体の位置を検出することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置検出方法を行う位置検出装置である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、レーザ変位計と、定電流源と、コンピュータとを備え、請求項3に記載の位置検出方法を行う位置検出装置であって、単位駆動力として所定時間毎に定電流源から所定値の電流をコイルに流し、レーザ変位計で連続的に計測した移動体の位置情報をコンピュータに蓄積して、コンピュータでは移動体の位置情報から、所定時間毎の移動体の位置の平均値を求め、平均値が同じ値の個数を数えて比較し、一番多い個数の値を所定値の電流を流したときの移動位置とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、平均値の値が同じものの個数を数えて比較し、一番多い個数の値が単位駆動を与えたときの移動位置(又は停止位置)としているので、極めて簡単な演算で済み、演算処理も早くできる。しかも、停止時の振動により生じる極端な測定値(振動の山と谷)を確実に外すことができ、停止位置測定の信頼性が高い。また、振動の停止を待つことも必要ないので測定時間が短時間で済む。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の作用効果を得ることができると共に、連続駆動する移動体の単位駆動力毎の移動位置や移動量の測定が容易に測定できる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の作用効果を得ることができると共に、所定の電流を流すことにより所定位置までレンズを駆動するレンズ駆動装置の検査においては、極めて精密な検査が要求されるが、かかる検査における信頼性を高めることができると共に迅速な検査ができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項に記載の効果を奏する位置検出装置を提供することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3に記載の効果を奏すると共にレーザ変位計と定電流源とで、所定電流で駆動するレンズ駆動装置のレンズ支持体の移動位置を精密に測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態にかかる位置検出装置の構成を示すブロック図であり、図2は本発明の実施の形態にかかる方法のフローチャートであり、図3は図2におけるデータ処理のフローチャートであり、図4は時間毎に測定した移動体の平均値データを示した図であり、図5は移動体に単位駆動力を付与したときの移動距離と時間との関係を示すグラフであり、図6は移動体の連続駆動における電流と移動距離との関係を示すグラフであり、図7はレンズ駆動装置の位置測定を説明する斜視図であり、図8は図7に示すレンズ駆動装置の断面図であり、図9は図7に示すレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【0020】
まず、図7〜図9を参照して検査対象となるレンズ駆動装置1について説明する。レンズ駆動装置1は、携帯電話に組み込まれるオートフォーカスカメラのレンズ駆動装置である。このレンズ駆動装置1は、環状のヨーク3と、レンズ支持体(以下「移動体」という)7と、前側スプリング9と、後側スプリング11と、ヨーク3の後側に配置されるベース5(筐体)と、ヨークの前側に配置されるフレーム(筐体)6とを備えており、レンズ支持体7には、外周に環状のコイル15が固定されている。ヨーク3と後側スプリング11との間には絶縁体(スペーサ)17が配置されている。このレンズ駆動装置1は、縦横が約10mm、高さが約3.5mmで非常に小さいものである。
【0021】
ヨーク3の各角部14において、外周壁3aの内周面にはマグネット13が固定されている。マグネット13は、角部14のみに設けてあり、内周壁3bに形成された切除部12に対応する位置にはない。
【0022】
移動体7は略円筒形状であり、その内周部にレンズ(図示せず)が装着されて、ヨーク3の内周側を光軸方向に移動自在に設けられている。
【0023】
コイル15はヨーク3の外周壁3aと内周壁3bとの間に配置するが、マグネット13がある角部14ではマグネット13と内周壁3bとの間に位置し、移動体7と共にヨーク3内を前後方向に移動するようになっている。
【0024】
前側スプリング9は環状の板ばねであり、内周側部9aはレンズ支持体7に取り付けてあり、外周側部9bはヨーク3とフレーム6との間に挟持して固定されている。内周側部9aと外周側部9bとは弾性変形可能な腕部9cにより連結してある。
【0025】
後側スプリング11の各外周側部11b、11bは、絶縁体(スペーサ)17を介してベース5とヨーク3との間に挟持され、各内周側部11a、11aは、レンズ支持体7の後端に取り付けてある。後側スプリング11の各内周側部9aと外周側部9bとは弾性変形可能な腕部11cにより連結してある。
【0026】
後側スプリング11の端子18、19は電源供給端子に接続されるようになっており、端子18、19からコイル15に通電し、コイル15に作用する電磁力で、移動体(レンズ支持体)7は前側スプリング9及び後側スプリング11の付勢力に抗して移動し、スプリング9、11との力の釣り合う位置で停止する。
【0027】
次に、図1〜図6を参照して本実施の形態にかかる位置検出装置21について説明する。図1に示すように、位置検出装置21は、レーザ変位計23と、定電流源25と、コントローラ27と、コンピュータ(PC)29とから構成されている。
【0028】
レーザ変位計23は、照射したレーザ光の反射光を受けて、測定対象物の表面位置を測定するものである。このレーザ変位計23は、図7に示すように、レンズ駆動装置1において後側スプリング11の後端面に向けてレーザ光を照射しており、レーザ光を照射する部分は移動体7が固定された内周側部11a(図8参照)であり、この測定箇所が移動体7の位置として測定されるものである。
【0029】
レーザ変位計23の測定信号はコントローラ27を介してコンピュータ29に位置情報として送信される。コントローラ27ではレーザ変位計23による測定値を50KHz(1秒間に50、000回)でサンプリングしているが、本実施の形態では、50KHzのサンプリングではデータが多くなりすぎるので、1/10間引いて、5KHzでのサンプリングデータを採用している。尚、このサンプリング間隔でも0.1秒間に500回のデータが0.1μmの精度で得られるから、スプリング9、11の振動周波数よりも十分に高いサンプリング周波数である。
【0030】
定電流源25は、例えば、1mAから80mAを流すことができ、本実施の形態では、1mA,2mA,4mA、6mA等に予め設定した電流を所定時間毎にレンズ駆動装置1に流すものである。
【0031】
コンピュータ29には、コントローラ27から受けた所定時間毎の位置情報を蓄積するデータ記録部31と、所定時間毎における位置情報の平均値を演算する平均値演算部33と、演算した平均値が同じ値である個数をカウントする同一値カウント部35と、カウントした個数を比較する比較部37と、一番多い同一値を真値(移動体の位置)として記録する記録部39と、平均値演算部33で演算したデータやデータ記録部31のデータ等の任意のデータ列を表示する表示部41、及び所定のデータをグラフ化するグラフ部43を備えている。
【0032】
次に、図2〜図7を参照して位置検出装置21による移動体7の移動検査について説明する。図2にフローチャートを示すように、ステップS1で、定電流源25から所定時間毎に所定値の電流(単位駆動電流)を増加又は減少させてレンズ駆動装置1に供給する。尚、移動体7を往復動させる為、定電流源25では電流値を所定値まで増加させた後に増加と同じ割合で減少させている。本実施の形態では、0.1秒毎に4mA、8mA、12mA、16mAの如く、4mA〜80mAまで供給電流を20回上昇させた後、80mA、76mA、72mAの如く80mA〜4mAまで供給電流を20回減少させる。
【0033】
一方、レーザ変位計23により測定したデータのサンプリングはコントローラ27で制御しており、本実施の形態ではコントローラ27は0.001秒毎に測定したデータ(位置情報)をコンピュータ29に送信し、ステップS3でコンピュータ29のデータ記録部31がコントローラ27から送信されたデータを蓄積する。そして、ステップS4では、設定した回数(M回)、本実施の形態では往復動合わせて合計40回の単位駆動電流の供給までのデータ蓄積を行う。
【0034】
データ記録部31にデータ蓄積後、コンピュータ29ではステップS5で本発明にかかるデータ処理を行うが、ステップS5におけるデータ処理の工程は図3に示す。図3に示すようデータ処理では、ステップS21で所定個数毎の測定値(位置情報)について平均値Rを求める。例えば、0.001秒毎の測定値について10個毎に平均値(R)を算出し(図4参照)、ステップS22で平均値Rが同じ値の個数Vをカウントする。
【0035】
次に、ステップS23で同一値の個数を比較して最大個数となっている平均値Rを決定し、ステップS24でこの最大個数の値を所定の電流値、例えば12mAでの停止位置(移動量)として決定する。即ち、図4に平均値のデータ情報列を示すように、平均値Rを算出して平均値Rが同じ値の個数Vを算出し、個数Vを比較することにより、Vが26で最大個数となっている平均値0.010を単位駆動電流あたりの移動量として決定するのである。
【0036】
ここで図2に戻り、ステップS6で、上述のようにして求めた単位駆動電流あたりの移動量(停止位置)データを蓄積し、この単位駆動電流あたりの移動量にもとづいてステップS7で図6に示すようにグラフ化する。この図6のグラフは、移動体7に付与する電流と移動距離との関係を示すものであるが、このグラフ上の破線で示すようなグラフから比例関係を求め、所定の比例関係にあるかどうかを検査する。
【0037】
図5に単位駆動力あたりにおける移動体7の移動距離と時間との関係を示すように、移動体7は単位駆動電流値(図5中破線で示す)を付与すると、所定量移動して停止するが、停止したときにスプリング9、11の作用によりグラフ中一点鎖線で示すように振動する。この為、単に平均値を求めて比較したのでは誤差が生じ、単位駆動力あたりの移動量を性格に把握するのは困難であるが、本実施の形態によれば、図5に実線で示すように、平均値の最大個数領域を移動位置(停止位置)としているので、単位駆動力あたりの移動位置を正確に特定することができ、検査装置としての信頼性が高い。
【0038】
また、平均値が同じものの個数を数えて比較し、一番多い個数が単位駆動を与えたときの停止位置(移動位置)としているので、極めて簡単な演算で演算処理も早くできる。
【0039】
しかも、停止時の振動により生じる極端な測定値(振動の山と谷)を確実に外すことができ、移動位置測定の信頼性が高い。
【0040】
レンズ駆動装置における移動体(レンズ支持体)の連続した駆動データを蓄積し、一括して処理できるので、移動体の駆動検査が迅速且つ容易に行うことができる。
【0041】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0042】
例えば、本発明はレンズ駆動装置1におけるレンズ支持体7の駆動検査に限らず、他の装置や機器において停止時に振動を伴う移動体の精密検査や移動位置測定に使用することができ、特にミクロン(μm)単位で移動する移動体の位置測定に用いることができる。
【0043】
また、本発明は検査方法として用いることに限らず、本発明にかかる方法を実行するプログラムを移動体が駆動する装置に搭載し、移動体の位置を検出して移動体の駆動を制御する方法に用いるものであってもよい。
【0044】
本発明において移動体の位置を測定するサンプリング回数や単位駆動力の種類等は限定されず、停止時の振動の原因もスプリングに限らず、例えば移動体が気体の弾性緩衝を利用する為に生じる振動であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態にかかる位置検出装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる方法のフローチャートである。
【図3】図2におけるデータ処理のフローチャートである。
【図4】時間毎に測定した移動体の平均値データを示した図である。
【図5】移動体の単位駆動力における移動距離と時間との関係を示すグラフである。
【図6】移動体の連続駆動における電流と移動量との関係を示すグラフである。
【図7】レーザ変位計によるレンズ駆動装置の測定位置を説明する斜視図である。
【図8】図7に示すレンズ駆動装置の断面図である。
【図9】図7に示すレンズ駆動装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
7 レンズ支持体(移動体)
9 前側スプリング
11 後側スプリング
13 マグネット
15 コイル
21 位置検出装置
23 レーザ変位計
25 定電流源
27 コントローラ
29 コンピュータ
31 記録部
33 平均値演算部
35 同一値カウント部
37 同一値個数比較部
39 記録部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位駆動力を与えると所定量移動した後に振動を伴って停止する移動体の位置検出方法であって、連続的に移動体の位置を測定し、測定した移動体の位置の平均値を所定時間毎に求め、平均値が同じ値の個数を数えて比較し、一番多い個数の値を単位駆動力による移動位置とすることを特徴とする位置検出方法。
【請求項2】
単位駆動力は移動体に連続的に付与し、単位駆動力毎の移動位置を求めることを特徴とする請求項1に記載の位置検出方法。
【請求項3】
移動体はレンズを支持すると共に外周にコイルを有するレンズ支持体であり、マグネットが配置された固定体の内周に配置され固定体に対してスプリングにより移動自在に支持されており、単位駆動力はコイルに所定値の電流を流すことにより生じる電磁力であり、コイルに電流を流して生じる電磁力とスプリングの付勢力とが釣り合った位置で停止するレンズ駆動装置のレンズ支持体の位置を検出することを特徴とする請求項2に記載の位置検出方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置検出方法を行う位置検出装置。
【請求項5】
レーザ変位計と、定電流源と、コンピュータとを備え、請求項3に記載の位置検出方法を行う位置検出装置であって、単位駆動力として所定時間毎に定電流源から所定値の電流をコイルに流し、レーザ変位計で連続的に計測した移動体の位置情報をコンピュータに蓄積して、コンピュータでは移動体の位置情報から、所定時間毎の移動体の位置の平均値を求め、平均値が同じ値の個数を数えて比較し、一番多い個数の値を所定値の電流を流したときの移動位置とすることを特徴とする位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−96306(P2008−96306A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279017(P2006−279017)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000131348)株式会社シコー技研 (168)
【Fターム(参考)】