説明

位置標定装置、位置標定方法、情報配信装置および情報配信方法

【課題】高精度に移動体の位置標定をおこない、移動体の安全な走行を図ること。
【解決手段】車両が通信エリアに進入した場合は、発信部201によって、路側機110に対して、車両の車両IDを含むアップリンク信号を発信し、アップリンク信号が発信された結果、受信部202によって、送信部254によって送信されるダウンリンク信号を受信する。そして、移動時間算出部203によって、通過時刻から現在時刻まで車両が移動した時間を算出し、移動距離算出部204によって、車両が移動した距離を算出する。そして、現在位置標定部205によって、算出された距離およびダウンリンク信号に含まれる観測地点の位置情報から、車両の現在位置を標定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、路側に設置された通信機器から配信される移動体の位置情報を用いて、移動体の現在位置を標定する位置標定装置、位置標定方法、情報配信装置および情報配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両などの移動体の位置情報に基づいて、車両に対する情報提供・警告・介入制御をおこなって、交通事故を減らす先進安全サービスが注目を集めている。具体的には、たとえば、先進安全サービスは、交差点やカーブなどから所定範囲(たとえば、中心部から100m圏内)に進入した車両に対して自他車両の位置情報や信号情報や標識情報などを提供することで、運転者の死角、不注意および見落としなどによる交通事故を予防するサービスである。
【0003】
このような先進安全サービスでは、他車両に提供したり、他車両や信号(あるいは停止線)や標識などの位置と比較したりする自車両の位置について、高精度な位置標定が求められている。具体的には、たとえば、先進安全サービスによって提供される他車両の位置と、運転者が目視する他車両の位置と、の順序が異なってしまう場合、運転者に混乱や違和感を与えてしまうこととなるため、各車両の位置標定の誤差は、半車両分(たとえば、約2.5m)以下であることが望ましい。
【0004】
現在、車両の位置標定技術として、カーナビゲーションシステムに利用されているGPS(Global Positioning System)がある。しかしながら、車高の高いトラックやバスに囲まれた場合や、高層ビルが乱立する都市部などを走行する場合は、GPS衛星への見通しが悪かったり、マルチパスが発生したりするため、GPSによる位置標定が不正確となることがある。
【0005】
一方、車速パルス、加速度センサやジャイロセンサなどによって車両の移動距離を測位する自律航法は、所定範囲の走行であれば誤差が少ないことが知られている。具体的には、たとえば、自律航法による移動距離の誤差は、上述の先進安全サービスを提供する先進安全サービスエリア(たとえば、100m程度)内の走行であれば、2.0m以下である。したがって、先進安全サービスエリアの進入位置で正確な位置標定をおこなうことで、自律航法によって、先進安全サービスエリア内で、常に高精度な位置標定(たとえば、誤差2.5m以下)をおこなうことができる。
【0006】
先進安全サービスエリア進入位置における正確な位置標定技術として、UWB(Ultra Wide Band)、磁気マーカ、超音波測位などが挙げられるが、いずれも車両に新たな機器を搭載する必要があり、運転者へ負担およびコストを強いることとなり、既にインフラ整備が整いつつある光ビーコンを利用した正確な位置標定が検討されている。
【0007】
これまでに、車両が光ビーコン発信機から送信される光信号の受信エリアを通過する際に、車両に搭載された光ビーコン受信機によって受信される光信号の受信回数を用いて、車両の走行位置に関連する情報を取得する方法が提案されている(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【0008】
ここで、図10および図11を用いて、光ビーコンを用いた位置標定の従来の方式について説明する。図10は、光ビーコンを用いた位置標定システムの概要を示す説明図である。図10において、位置標定システム1000は、光ビーコン発信機1001と、位置検出器1002と、から構成されている。
【0009】
光ビーコン発信機1001は、路側に設置された光ビーコンに設けられている。そして、光ビーコン発信機1001は、通信エリア1003を走行する車両1010(1010a,1010b)に対して、VICS(登録商標、Vehicle Information and Communication System)センターから配信される道路交通情報や位置検出器1002によって検出される通過位置P1の位置情報などを光信号を用いて発信する。
【0010】
位置検出器1002は、車両1010(1010a,1010b)が道路上の通過位置P1を通過したことを検出する。具体的には、たとえば、位置検出器1002は、画像センサから構成されていてもよく、通過位置P1における背景画像の変化を検知することによって、通過位置P1を車両1010aが通過したことを検出し、検出した通過位置P1の位置情報を光ビーコンへ出力する。
【0011】
車両1010(1010a,1010b)は、図示しない光ビーコン受信機によって、通信エリア1003を走行中に光ビーコン発信機1001から発信される道路交通情報や通過位置P1の位置情報などを受信し、通過位置P1に基づいて現在位置P2を算出する。具体的には、たとえば、車両1010bは、通信エリア1003を走行中に受信した通過位置P1の位置情報から、自律航法によって現在位置P2を算出する構成である。
【0012】
ここで、図11を用いて、図10に示した位置標定システム1000における通過位置P1の位置情報の受信の概要について説明する。図11は、位置標定システムにおける位置情報の受信の一例を示す説明図である。
【0013】
図11において、光ビーコン発信機1001は、通信エリア1003を走行する車両1110(1110a,1110b,1110c)に対して、位置検出器1002によって検出された通過位置P1の位置情報を発信する。具体的には、たとえば、位置情報の発信は、周期的に複数回の光信号L1,L2,L3によっておこなう構成である。より具体的には、たとえば、車両1110aに対して光信号L1、車両1110bに対して光信号L2、車両1110cに対して光信号L3によって、それぞれ通過位置P1の位置情報を発信する。
【0014】
車両1110(1110a,1110b,1110c)は、図示しない光ビーコン受信機によって、光信号L1,L2,L3を位置P11,P12,P13でそれぞれ受信する。そして、車両1110(1110a,1110b,1110c)は、光信号L1,L2,L3が受信された位置P11,P12,P13において、通過位置P1の位置情報を復元して自律航法によって現在位置を算出する。
【0015】
具体的には、たとえば、車両1110aは、通過位置P1から距離E1だけ離れた位置P11で復元された通過位置P1の位置情報から現在位置を算出することとなる。同様に、車両1110bは、通過位置P1から距離E2だけ離れた位置P12、車両1110cは、通過位置P1から距離E3だけ離れた位置P13でそれぞれ復元された通過位置P1の位置情報から現在位置を算出する。
【0016】
【特許文献1】特開2003−30781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述した従来技術では、雨や霧などの気象条件、光信号の送受信部の汚れ、ワイパーによる遮蔽などに起因する光ビーコン発信機または光ビーコン受信機の受信感度の低下などによって通信エラーが発生してしまう場合がある。したがって、上述した特許文献1の従来技術では、光信号の受信回数を誤ってカウントしてしまい、車両の走行位置に関連する情報の誤差が大きくなってしまうという問題がある。
【0018】
また、図10および図11を用いて説明した例では、光信号を受信した位置で通過位置P1の位置情報を復元するため、光信号を受信した位置P11,P12,P13と、通過位置P1との間の距離によって誤差が大きくなってしまうという問題がある。具体的には、たとえば、図11に示した距離E1,E2,E3などの誤差と、自律航法による測位の誤差との合計によって、車両1010bの現在位置P2の位置標定の誤差が大きくなってしまう。
【0019】
特に、通信エラーが複数回発生してしまう場合、位置情報を復元できる位置が通過位置P1から大きくずれてしまう。具体的には、たとえば、位置P11,P12で位置情報の復元ができない場合は、通過位置P1の位置情報は距離E3ずれることとなる。換言すれば、通過位置P1の位置情報は、最大で通信エリア1003の直径程度(たとえば、約12m)ずれてしまうため、適切な現在位置の位置標定がおこなえなくなってしまう。
【0020】
上述のように、適切な現在位置の位置標定ができずに、位置標定の誤差が大きくなってしまうと、運転者は、自車両と信号や交差点などの地物との位置関係を誤って認識してしまい、無用な混乱や違和感を招くこととなる。
【0021】
特に、先進安全サービスにおいて、自車両と他車両との相対的な位置関係を利用して、車両の安全な走行を促す場合には、他車両から提供される他車両の現在位置の位置標定の誤差によって、運転者を危険にさらすこととなる。具体的には、たとえば、自車両が交差点に進入する際に、他車両の位置標定の誤差によって、自車両とは異なる方向から交差点に進入する他車両までの距離を運転者が誤って認識してしまうと、交差点で衝突事故を引き起こす危険性がある。
【0022】
くわえて、自他車両の双方に位置標定の誤差がある場合には、自他車両の位置関係の信頼感が著しく低下してしまうこととなり、運転者は、適切な先進安全サービスの提供を受けることができない。
【0023】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、高精度に移動体の位置標定をおこなって、移動体の安全な走行を図ることができる位置標定装置、位置標定方法、情報配信装置および情報配信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる位置標定装置および位置標定方法は、路側に設置された通信機器の通信エリアへの移動体による進入を検知した場合、前記通信機器へ光信号を発信し、光信号が発信された結果、前記通信機器による当該光信号の受光時刻と前記移動体による観測地点の通過時刻との時間差に関する情報と、当該観測地点の位置情報とを前記通信機器から受信し、現在時刻から前記光信号の発信時刻までの時間および前記時間差に基づいて、前記通過時刻から当該現在時刻まで前記移動体が移動した時間を算出し、算出された時間を用いて、前記移動体が移動した距離を算出し、算出された距離および前記観測地点の位置情報から、前記移動体の現在位置を標定することを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、移動体から通信機器へ発信される光信号によって、移動体から光信号が発信された発信時刻と、通信機器によって光信号が受光された受光時刻とを同期させることができる。そして、同期された時刻を用いて、観測地点の通過時刻まで遡って移動体の現在位置を標定することができる。
【0026】
また、上記発明において、前記移動体の識別情報を含む光信号を発信し、前記光信号が発信された結果、前記識別情報と関連づけられた前記時間差に関する情報および前記位置情報を受信することとしてもよい。
【0027】
この発明によれば、移動体の識別情報に関連づけられた情報によって、移動体の現在位置を標定することができる。
【0028】
また、上記発明において、前記移動体における自律航法によるセンサの測位情報から前記距離を算出することとしてもよい。
【0029】
この発明によれば、自律航法を用いて算出された距離によって、移動体の現在位置を標定することができる。
【0030】
また、上記発明において、前記通信機器は、光ビーコンであることとしてもよい。
【0031】
この発明によれば、路側に設置されている光ビーコンを用いて、移動体の現在位置を標定することができる。
【0032】
また、この発明にかかる情報配信装置および情報配信方法は、移動体に情報を配信する情報配信装置において、経路上の観測地点における移動体の通過を検出する検出信号を受信し、前記移動体が前記情報配信装置の通信エリアに進入する際に発信する光信号を受光し、前記光信号の受光時刻と前記観測地点における前記移動体の通過時刻との間の時間差に関する情報と、当該観測地点の位置情報とを生成し、生成された前記時間差に関する情報および前記位置情報を、前記光信号の発信元となった前記移動体に送信することを特徴とする。
【0033】
この発明によれば、移動体から発信される光信号の受光時刻と、移動体が観測地点を通過した通過時刻との時間差に関する情報および観測地点の位置情報を移動体に送信することができる。
【0034】
また、上記発明において、前記移動体の識別情報を含む前記光信号を受光し、前記識別情報を関連づけて前記時間差に関する情報および前記位置情報を生成し、前記識別情報によって識別される移動体に対して前記時間差に関する情報および前記位置情報を送信することとしてもよい。
【0035】
この発明によれば、光信号の発信元となった移動体に対して、時間差に関する情報および観測地点の位置情報を的確に送信することができる。
【0036】
また、上記発明において、前記通信エリアを移動する移動体に対して、前記時間差に関する情報および前記位置情報の送信を周期的に繰り返すこととしてもよい。
【0037】
この発明によれば、通信エリアを移動中の移動体に、時間差に関する情報および位置情報を確実に送信することができる。
【0038】
また、上記発明において、前記情報配信装置は、光ビーコンであることとしてもよい。
【0039】
この発明によれば、路側に設置されている光ビーコンを用いて、時間差に関する情報および位置情報を送信することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明にかかる位置標定装置、位置標定方法、情報配信装置および情報配信方法によれば、高精度に移動体の位置標定をおこなって、移動体の安全な走行を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる位置標定装置、位置標定方法、情報配信装置および情報配信方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、たとえば、車両(四輪車、二輪車を含む)などの移動体に搭載されたナビゲーション装置などの車載機によってこの発明の位置標定装置、路側に設置された光ビーコンなどの路側機によってこの発明の情報配信装置を実施した場合の一例について説明する。
【0042】
(実施の形態)
(位置標定システムの概要)
まず、図1を用いて、この発明の実施の形態にかかる位置標定システムの概要について説明する。図1は、この発明の実施の形態にかかる位置標定システムの概要を示す説明図である。
【0043】
図1において、この発明の実施の形態にかかる位置標定システム100は、光ビーコンなどの路側機110と、観測地点111と、から構成されている。位置標定システム100は、先進安全サービスを提供する先進安全サービスエリア101を走行する車両102の位置を標定するシステムである。
【0044】
具体的には、たとえば、先進安全サービスは、交差点やカーブなどから所定範囲(たとえば、中心部まで100m圏内)の先進安全サービスエリア101に進入した車両102に対して自他車両の位置情報や信号情報や標識情報などを提供し、運転者の死角、不注意および見落としなどによる交通事故を予防するサービスである。
【0045】
詳細は図3を用いて説明するが、路側機110は、図示しない位置検出部から車両が観測地点111を通過したことを検出する検出信号を受信する。位置検出部は、たとえば、観測地点111を車両102が通過したことを検出する画像センサやレーザセンサやミリ波センサやテープスイッチなどでもよく、路側機110と一体に構成されていてもよい。具体的には、たとえば、位置検出部は、基準となる観測地点111の車両102の通過を簡便かつ高速に検出できればよい。
【0046】
より具体的には、たとえば、位置検出部に画像センサを用いた場合、車両102の通過による観測地点111の背景画像の変化だけを検出する構成でよく、10ms以下の検出速度で高精度(たとえば、100km/hで走行する車両で0.3m以下)に観測地点111の車両102の通過を検出できる。また、位置検出部にテープスイッチを用いた場合、車両102が観測地点111に設置されたテープスイッチを踏むと発生する電気信号を検出する構成とすればよく、数ns以下の検出速度で高精度(たとえば、100km/hで走行する車両で0.01m以下)に観測地点111の車両102の通過を検出できる。
【0047】
さらに、詳細は図4および図5を用いて説明するが、路側機110は、車両102が路側機110における図示しない通信エリアに進入する際に、車両102から発信される光信号を受光する。そして、路側機110は、光信号の受光時刻と、観測地点111における車両102の通過時刻との時間差と算出し、算出された時間差と、観測地点の位置情報とを通信エリアを走行中の車両102に送信する。
【0048】
車両102は、路側機110の通信エリアに進入した場合、図示しない車載機によって、路側機110へ光信号を発信する。詳細は図4を用いて説明するが、車載機は、車両102が通信エリアへ進入すると、車両102の識別情報を含むアップリンク信号である光信号を路側機110へ発信する。
【0049】
そして、車両102は、路側機110の通信エリアを走行中に、図示しない車載機によって路側機110から前述した時間差と観測地点の位置情報とを受信して、観測地点111を通過した通過時刻から現在時刻までに移動した移動時間を算出する。換言すれば、車両102によって発信された光信号の発信時刻と、路側機110によって受信された光信号の受信時刻とを同期させることで、観測地点111を通過した通過時刻から現在時刻までの移動時間を算出する。
【0050】
具体的には、たとえば、移動時間は、光信号の立ち上がりが鋭く、検出誤差がないことを利用して、発信時刻および受光時刻を同時刻とみなし、路側機110によって算出される通過時刻と受光時刻との時間差と、発信時刻から現在時刻までの時間とを合計することで算出される。
【0051】
また、車両102は、図示しない車載機によって、移動時間および観測地点111の位置情報から現在位置を標定する。詳細は図6を用いて説明するが、現在位置の標定は、たとえば、車載機による自律航法における各種センサの測位情報から、移動時間に車両102が移動した距離を算出することで標定する。換言すれば、観測地点111の位置情報から、通過時刻まで遡って現在位置を標定する構成である。
【0052】
このように、先進安全サービスエリア101内を走行する車両102は、高精度に標定された観測地点111の位置情報を用いて、観測地点111の通過時刻まで遡って現在位置を標定することができるため、適切な先進安全サービスの提供を受けることができる。また、路側機110に光ビーコンなど既に設置されたインフラを利用できるため、簡便かつ安価に先進安全サービスの提供を受けることができる。
【0053】
具体的には、たとえば、現在位置の標定は、観測地点111の誤差および所定範囲(たとえば、約100m)の走行における自律航法による誤差の範囲内の精度でおこなうことができる。すなわち、半車両分(たとえば、約2.5m)以下の誤差で現在位置を標定することができる。
【0054】
(車載機および路側機の機能的構成)
つぎに、図2を用いて、この発明の実施の形態にかかる位置標定システム100における車載機および路側機110の機能的構成について説明する。図2は、この発明の実施の形態にかかる車載機および路側機の機能的構成を示す説明図である。
【0055】
図2において、車載機200は、たとえば、図1に示した車両102に搭載されており、発信部201と、受信部202と、移動時間算出部203と、移動距離算出部204と、現在位置標定部205と、自律測位部206と、タイマー210と、から構成されている。
【0056】
発信部201は、路側に設置された路側機110の通信エリアへの車両102による進入を検知した場合、路側機110へ光信号を発信する。進入の検知は、たとえば、路側機110における通信エリア内の発光を検知したり、地図上の路側機110の設置位置から検知することとしてもよい。
【0057】
また、光信号の発信は、たとえば、車両102の識別情報である車両ID(Identifier)を含むアップリンク信号として発信する。ここで、アップリンク信号とは、ネットワークの端末側から中心側へ送信する信号である。
【0058】
受信部202は、発信部201によって光信号が発信された結果、路側機110による光信号の受光時刻と車両による観測地点の通過時刻との時間差に関する情報と、観測地点の位置情報とを路側機110から受信する。具体的には、たとえば、受信部202は、発信部201によってアップリンク信号が発信された結果、路側機110から、識別情報と関連づけられた時間差に関する情報と、観測地点の位置情報とを受信する。
【0059】
詳細は図5を用いて説明するが、路側機110から送信される情報は、時間差に関する情報と、観測地点の位置情報とを含むダウンリンク信号として、路側機110の通信エリアを走行中の車両102に対して周期的に送信される。すなわち、受信部202は、車両102が通信エリアを走行中にダウンリンク信号を複数回(たとえば、5回程度)受信可能であり、複数回のうち1回の受信が成功すればよいため、ダウンリンク信号の受信を確実におこなうことができる。ここで、ダウンリンク信号とは、ネットワークの中心側から端末側へ送信する信号である。
【0060】
また、詳細は図7を用いて説明するが、ダウンリンク信号は、アップリンク信号の発信元となった車両102の識別情報である車両IDと、車両102における観測地点111の通過時刻および位置情報とが対応づけられている。したがって、通信エリアを複数の車両が走行している場合でも、ダウンリンク信号の送信対象となる車両102によって、適切にダウンリンク信号が受信されることとなる。
【0061】
移動時間算出部203は、現在時刻から光信号の発信時刻までの時間および時間差に基づいて、通過時刻から現在時刻まで車両102が移動した時間を算出する。具体的には、たとえば、移動した時間の算出は、タイマー210によって計時された発信時刻と、路側機110によって受信された光信号の受信時刻とを同期させることで、観測地点111を通過した通過時刻から現在時刻までの時間を算出する。
【0062】
移動距離算出部204は、移動時間算出部203によって算出された時間を用いて、車両102が移動した距離を算出する。具体的には、たとえば、移動距離算出部204は、車両102における自律測位部206の測位情報から距離を算出する。
【0063】
自律測位部206は、車速パルス、加速度センサやジャイロセンサなどの自律測位センサと、自律測位センサから得られた車両102の速度ベクトルを測位情報として、時系列に管理する。すなわち、移動距離算出部204は、自律測位部206によって管理された測位情報によって、通過時刻から現在時刻までの車両102の移動距離を、速度ベクトルを時間積分することで算出できる。
【0064】
現在位置標定部205は、移動距離算出部204によって算出された距離および観測地点111の位置情報から、車両102の現在位置を標定する。具体的には、たとえば、現在位置標定部205は、受信部202によって受信されたダウンリンク信号から観測地点111の位置情報を復元し、復元された位置情報から通過時刻から現在時刻までの車両102の移動距離をくわえることで現在位置を標定する。すなわち、現在位置標定部205は、観測地点111の位置情報を基準として、通過時刻まで遡って車両102の現在位置を標定する。
【0065】
路側機110は、たとえば、道路に設置された光ビーコンなどから構成されており、受信部251と、受光部252と、生成部253と、送信部254と、タイマー260と、から構成されている。
【0066】
受信部251は、道路上の観測地点111における車両102の通過を検出する検出信号を受信する。具体的には、たとえば、受信部251は、図示しない位置検出部から車両102が観測地点111を通過したことを検出する検出信号を受信する。位置検出部は、たとえば、観測地点111を車両102が通過したことを検出する画像センサやレーザセンサやミリ波センサやテープスイッチなどでもよく、路側機110と一体に構成されていてもよい。
【0067】
受光部252は、車両102が路側機110の通信エリアに進入する際に発信する光信号を受光する。具体的には、たとえば、受光部252は、車両102の識別情報を含むアップリンク信号である光信号を受光する。ここで、アップリンク信号である光信号は、エッジがシャープに検出可能であるため、車両102の発信時刻と、タイマー260によって計時される受光時刻とを高精度に同期することができる。
【0068】
生成部253は、光信号の受光時刻と観測地点111における車両102の通過時刻との間の時間差に関する情報と、観測地点111の位置情報とを生成する。また、生成部253は、アップリンク信号である光信号に、車両102の識別情報である車両IDが含まれている場合、車両IDを関連づけて時間差に関する情報および位置情報を生成することとしてもよい。
【0069】
送信部254は、生成部253によって生成された時間差に関する情報および位置情報を、光信号の発信元となった車両102に送信する。具体的には、たとえば、送信部254は、車両IDによって識別される車両102に対して時間差に関する情報および位置情報を送信することとしてもよい。
【0070】
また、送信部254は、通信エリアを移動する車両102に対して、時間差に関する情報および位置情報の送信を周期的に繰り返して送信する。このようにして、送信部254によって、通信エリアを走行中の車両102に対して、適切な情報を確実に送信することができる。
【0071】
図2に示した車載機200および路側機110の各機能部は、具体的には、たとえば、CPU、ROM、RAM、ハードディスクドライブやフレキシブルディスクドライブなどのドライブ、ハードディスクや着脱可能な記録媒体の一例としてのフレキシブルディスクなどの記録媒体、I/F(インターフェース)などによってその機能を実現する。
【0072】
より具体的には、たとえば、CPUは、車載機200あるいは路側機110の全体の制御を司る。ROMは、ブートプログラムなどのプログラムを記録している。RAMは、CPUのワークエリアとして使用される。ドライブは、CPUの制御にしたがって記録媒体に対するデータのリード/ライトを制御する。記録媒体は、ドライブの制御で書き込まれたデータを記録する。
【0073】
また、I/Fは、通信回線を通じてインターネットなどのネットワークに接続され、このネットワークを介して他の装置に接続される。そして、I/Fは、ネットワークと内部のインターフェースを司り、外部装置からのデータの入出力を制御する。
【0074】
(位置標定の概要)
つぎに、図3〜図6を用いて、この発明の実施の形態にかかる位置標定システム100における車両102の現在位置の標定について説明する。図3は、この発明の実施の形態にかかる車両における観測地点の通過時の一例を示す説明図である。
【0075】
図3において、道路上に設置された路側機110は、位置検出器301と、送受信機302と、を備えている。具体的には、たとえば、位置検出器301は、画像センサやレーザセンサやミリ波センサやテープスイッチなどでもよく、観測地点111の車両102の通過を簡便かつ高速に検出できる機器である。
【0076】
また、送受信機302は、たとえば、図2に示した受光部252および送信部254であり、車両102からのアップリンク信号の受光および車両102へのダウンリンク信号の送信をおこなう。具体的には、たとえば、送受信機302は、道路を走行する車両102と通信可能な通信エリア310を有しており、通信エリア310を走行する車両102に対してアップリンク信号の受光およびダウンリンク信号の送信をおこなう。
【0077】
なお、本実施の形態では、アップリンク信号およびダウンリンク信号を光ビーコンを用いた光信号として説明するが、ダウンリンク信号については、他の無線通信を用いた信号であってもよい。すなわち、アップリンク信号は、路側機110における受光時刻および車載機200における発信時刻を高精度に同期させるために光信号を用い、ダウンリンク信号については、汎用性に富んだ信号を利用してもよい。
【0078】
車両102は、道路を走行しており、図2に示した車載機200を搭載している。車載機200は、車両102の走行に伴って、任意の時刻を車載機200の時系列Sにおける基準時刻S0として、自律測位部206によって自律測位をおこなう。
【0079】
具体的には、たとえば、車載機200は、ROM、RAM、記録媒体などに記録されたプログラムをCPUの制御にしたがって実行させ、基準時刻S0からの車両102の速度ベクトルを測位情報としてメモリなどに記録する。なお、基準時刻S0は、たとえば、路側機110へ接近した時刻や、走行を開始した時刻でもよく、すなわち、自律測位部206の測位をリセットする時刻である。
【0080】
そして、車両102が観測地点111に到達すると、路側機110は、位置検出器301によって車両102が観測地点111を通過したことを検出し、検出した時刻を路側機110の時系列Tにおける通過時刻T0とする。
【0081】
具体的には、たとえば、位置検出器301は、ROM、RAM、記録媒体などに記録されたプログラムをCPUの制御にしたがって実行させ、観測地点111を車両102が通過した通過時刻T0と観測地点111の位置情報をメモリなどに記録する。
【0082】
図4は、この発明の実施の形態にかかる車両における通信エリアの進入時の一例を示す説明図である。図4において、車載機200は、発信部201によって車両102が路側機110の通信エリア310に進入したことを検知すると、路側機110へアップリンク信号401を発信する。
【0083】
具体的には、たとえば、車載機200は、路側機110における通信エリア310内への発光を検知したり、地図上の路側機110の設置位置から、車両102が通信エリア310に進入したことを検知すると、車両IDを含むアップリンク信号401を送信する。
【0084】
より具体的には、たとえば、発信部201は、ROM、RAM、記録媒体などに記録されたプログラムをCPUの制御にしたがって実行させ、I/Fを介して路側機110へアップリンク信号401を発信し、時系列Sにおける発信時刻S1をメモリなどに記録する。
【0085】
路側機110は、送受信機302を構成する受光部252によって車両102が路側機110の通信エリア310に進入する際に発信するアップリンク信号401を受光する。具体的には、たとえば、受光部252は、ROM、RAM、記録媒体などに記録されたプログラムをCPUの制御にしたがって実行させ、I/Fを介して車両102からのアップリンク信号401を受光し、時系列Tにおける受光時刻T1をメモリなどに記録する。
【0086】
そして、路側機110は、生成部253によってアップリンク信号401の受光時刻T1と観測地点111における車両102の通過時刻T0との間の時間差Ttに関する情報と、観測地点111の位置情報とを、ダウンリンク信号として車両102の車両IDと関連づけて生成する。
【0087】
具体的には、たとえば、生成部253は、ROM、RAM、記録媒体などに記録されたプログラムをCPUの制御にしたがって実行させ、メモリなどに記録された受光時刻T1と通過時刻T0とから算出されるTtと、観測地点111の位置情報とを車両102の車両IDと関連づけたダウンリンク信号としてメモリなどに記録する。
【0088】
図5は、この発明の実施の形態にかかる車両における通信エリアの走行中の一例を示す説明図である。図5において、路側機110は、送受信機302を構成する送信部254によって車両102が通信エリア310を走行中に、車両102へダウンリンク信号501を送信する。
【0089】
具体的には、たとえば、送信部254は、ROM、RAM、記録媒体などに記録されたプログラムをCPUの制御にしたがって実行させ、メモリなどに記録されたダウンリンク信号501を、I/Fを介して車両102に送信する。ここで、ダウンリンク信号501の送信は、たとえば、通信エリア310を走行中の車両102に対して、周期的に繰り返しておこなう。
【0090】
車載機200は、受信部202によって通信エリア310を走行中に路側機110から送信されるダウンリンク信号501を受信する。ダウンリンク信号501の受信は、通信エリア310を走行中における複数回の送信のうち、1回以上受信する構成でもよく、ダウンリンク信号501のうち、車両102の車両IDに関連づけられた情報を抽出する構成でもよい。
【0091】
具体的には、たとえば、受信部202は、ROM、RAM、記録媒体などに記録されたプログラムをCPUの制御にしたがって実行させ、I/Fを介して路側機110からのダウンリンク信号501を受信し、車両IDに関連づけられたダウンリンク信号501をメモリなどに記録する。
【0092】
図6は、この発明の実施の形態にかかる車両における現在位置の標定の一例を示す説明図である。図6において、車載機200は、移動時間算出部203によって現在時刻S2からアップリンク信号401の発信時刻S1までの時間Ssと、ダウンリンク信号501における時間差Ttとから、車両102が観測地点111を通過した通過時刻T0から現在時刻S2まで、車両102が移動した時間TSを算出する。
【0093】
具体的には、たとえば、移動時間算出部203は、ROM、RAM、記録媒体などに記録されたプログラムをCPUの制御にしたがって実行させ、メモリなどに記録されたダウンリンク信号501および発信時刻S1から、通過時刻T0から現在時刻S2までに車両102が移動した時間TSを算出し、メモリなどに記録する。
【0094】
そして、車載機200は、移動距離算出部204によって、時間TSを用いて、時間TSの間に車両102が移動した距離601を算出する。具体的には、たとえば、移動距離算出部204は、車両102における自律測位部206の測位情報から距離601を算出する。
【0095】
より具体的には、たとえば、移動距離算出部204は、ROM、RAM、記録媒体などに記録されたプログラムをCPUの制御にしたがって実行させ、メモリなどに記録された時間TSと、速度ベクトルなどの測位情報から距離601を算出し、メモリなどに記録する。
【0096】
そして、車載機200は、現在位置標定部205によって、距離601および観測地点111の位置情報から、車両102の現在位置602を標定する。具体的には、たとえば、現在位置標定部205は、ダウンリンク信号501における観測地点111の位置情報から、通過時刻T0から現在時刻S2までに車両102が移動した距離601をくわえることで現在位置602を標定する。
【0097】
より具体的には、たとえば、現在位置標定部205は、ROM、RAM、記録媒体などに記録されたプログラムをCPUの制御にしたがって実行させ、メモリなどに記録された観測地点111の位置情報と、距離601とから現在位置602を標定する。換言すれば、現在位置標定部205は、観測地点111の位置情報を基準として、通過時刻T0まで遡って車両102の現在位置602を標定することとなる。
【0098】
図3〜図6に示したように、光信号であるアップリンク信号401を用いることで、車載機200における発信時刻S1と、路側機110における受光時刻T1とを同期させることで、現在時刻S2から通過時刻T0までを正確に遡ることができる。そして、観測地点111の位置情報から、自律航法によって現在位置602を高精度に標定することができる。
【0099】
具体的には、たとえば、観測地点111の誤差は、画像センサなどからなる位置検出器301によれば、0.5m以下となる。また、現在時刻S2から通過時刻T0までの時間は、光信号であるアップリンク信号401によって発信時刻S1と受光時刻T1とを同期させており、誤差がないものとみなすことができる。そして、自律航法による位置標定の誤差は、先進安全サービスを提供するエリア(たとえば、交差点まで100mの走行)では、2.0m以下であることが知られている。したがって、先進安全サービスを提供するエリアにおいて、半車両分(たとえば、約2.5m)以下の誤差で現在位置602を標定することができる。
【0100】
なお、図3〜図6の説明では観測地点111は、通信エリア310の手前に示しているが、通信エリア310と接する地点や、車両102が通信エリア310へ進入した後に通過する地点などでもよい。
【0101】
(ダウンリンク信号のデータフォーマット)
ここで、図7を用いて、この発明の実施の形態にかかるダウンリンク信号501のデータフォーマットについて説明する。図7は、この発明の実施の形態にかかるダウンリンク信号のデータフォーマットの一例を示す説明図である。
【0102】
図7において、データフォーマット700は、従来からのサブシステムキーにくわえて、先進安全サービス用のサブシステムキー701と、車両の車両IDおよび各車両に送信する送信情報702と、から構成されている。具体的には、たとえば、図3〜図6に示した路側機110の通信エリア310に進入した車両102の車両IDをAとすると、該車両IDのAに関連づけられた観測地点111の緯度・経度などの位置情報および受光時刻T1と通過時刻T0との間の時間差Ttとを含む送信情報702が先進安全サービス用のサブシステムキー701に対応づけられている。
【0103】
また、通信エリア310に車両102とは異なる他の車両が進入した場合、他の車両の車両IDをBとすると、車両102における観測地点111の位置情報および時間差Ttとともに、他の車両における観測地点111の位置情報および時間差○×が送信情報702となる。
【0104】
(車載機200の処理の内容)
つぎに、図8を用いて、この発明の実施の形態にかかる車載機200の処理の内容について説明する。図8は、この発明の実施の形態にかかる車載機の処理の内容を示すフローチャートである。図8のフローチャートにおいて、まず、車載機200は、車両102が走行を開始したか否かを判断する(ステップS801)。走行を開始したか否かの判断は、たとえば、車両102のエンジンのスタートや、車両102の移動開始を検知する。
【0105】
ステップS801において、車両102が走行を開始するのを待って、開始した場合(ステップS801:Yes)は、自律測位部206によって、自律測位を開始する(ステップS802)。具体的には、たとえば、自律測位の開始は、車両102の走行に伴って、任意の時刻を車載機200の時系列Sにおける基準時刻S0として、自律測位部206によって車両102の速度ベクトルを測位情報として、時系列に管理する。
【0106】
つぎに、車載機200は、車両102が路側機110の通信エリア310に進入したか否かを判断する(ステップS803)。具体的には、たとえば、路側に設置された光ビーコンなどによる通信エリア310内の発光や、地図上の路側機110の設置位置などから判断する。
【0107】
ステップS803において、通信エリア310に進入していない場合(ステップS803:No)は、ステップS802に戻って処理を繰り返す。
【0108】
また、ステップS803において、通信エリア310に進入した場合(ステップS803:Yes)は、発信部201によって、路側機110に対して、車両102の識別情報である車両IDを含むアップリンク信号401を発信する(ステップS804)。
【0109】
つぎに、受信部202によって、ステップS804においてアップリンク信号401が発信された結果、路側機110からダウンリンク信号501を受信したか否かを判断する(ステップS805)。具体的には、たとえば、ダウンリンク信号501は、路側機110によるアップリンク信号401の受光時刻T1と車両102による観測地点111の通過時刻T0との時間差Ttに関する情報と、観測地点111の緯度・経度などの位置情報とを含む信号である。
【0110】
ステップS805において、ダウンリンク信号501を受信しなかった場合(ステップS805:No)は、そのまま一連の処理を終了する。
【0111】
また、ステップS805において、ダウンリンク信号501を受信した場合(ステップS805:Yes)は、移動時間算出部203によって、ステップS805において受信されたダウンリンク信号501から、現在時刻S2からアップリンク信号401の発信時刻S1までの時間Ssおよび時間差Ttに基づいて、通過時刻T0から現在時刻S2まで車両102が移動した時間TSを算出する(ステップS806)。
【0112】
つぎに、移動距離算出部204によって、ステップS806において算出された時間TSを用いて、車両102が移動した距離601を算出する(ステップS807)。具体的には、たとえば、移動距離算出部204は、車両102における自律測位部206の測位情報を用いて、時間TSの間に車両102が移動した距離601を算出する。
【0113】
そして、現在位置標定部205によって、ステップS807において算出された距離601およびダウンリンク信号501に含まれる観測地点111の位置情報から、車両102の現在位置602を標定して(ステップS808)、一連の処理を終了する。具体的には、たとえば、現在位置標定部205は、観測地点111の緯度・経度を基点として、車両102が移動した距離601を加算することによって、現在位置602を評定する。
【0114】
なお、図8のフローチャートでは、ステップS805においてダウンリンク信号501を受信しなかった場合は、そのまま一連の処理を終了することとしたが、この場合は、車載機200は、通信エリア310において複数回のダウンリンク信号501に対して、1回も受信が成功しなかったことを示している。
【0115】
したがって、GPSなどを利用した場合は、誤差が大きく(たとえば、10m以上)ても現在位置602を誤った位置として標定してしまっていたが、上述した車載機200によると、車両102の現在位置602は標定できないことを正しく検知できるため、運転者や他車を混乱させることなく、適切に先進安全サービスの提供を受けることができる。
【0116】
(路側機110の処理の内容)
つづいて、図9を用いて、この発明の実施の形態にかかる路側機110の処理の内容について説明する。図9は、この発明の実施の形態にかかる路側機の処理の内容を示すフローチャートである。図9のフローチャートにおいて、まず、路側機110は、受信部251によって、観測地点111における車両102の通過を検出する検出信号を受信したか否かを判断する(ステップS901)。
【0117】
ステップS901において、検出信号を受信するのを待って、受信した場合(ステップS901:Yes)は、受光部252によって、車両102が路側機110の通信エリア310に進入する際に発信するアップリンク信号401を受光したか否かを判断する(ステップS902)。
【0118】
ステップS902において、アップリンク信号401を受光しなかった場合(ステップS902:No)は、そのまま一連の処理を終了する。
【0119】
また、ステップS902において、アップリンク信号を受光した場合(ステップS902:Yes)は、生成部253によって、ダウンリンク信号501を生成する(ステップS903)。具体的には、たとえば、ダウンリンク信号501は、ステップS902において受光されたアップリンク信号401の受光時刻T1と観測地点111における車両102の通過時刻T0との間の時間差に関する情報と、観測地点111の位置情報とからなる。
【0120】
つぎに、送信部254によって、ステップS902において受光されたアップリンク信号401の発信元となった車両102に対して、ステップS903において生成されたダウンリンク信号を送信して(ステップS904)、一連の処理を終了する。
【0121】
また、図9のフローチャートでは、ステップS902においてアップリンク信号401を受信しなかった場合は、そのまま一連の処理を終了することとしたが、この場合は、路側機110は、通信エリア310に進入した車両102に対して、適切な車両IDと関連づけたダウンリンク信号501を送信できない。
【0122】
したがって、車載機200は、車両102の現在位置602は標定できないことを正しく検知できるため、運転者や他車を混乱させることなく、適切に先進安全サービスの提供を受けることができる。
【0123】
以上説明したように、この発明の実施の形態によれば、高精度に標定される観測地点と、アップリンク信号によって同期された時刻とを用いて、観測地点の通過時刻まで遡って現在位置を標定することができ、位置標定の誤差の低減を図ることができる。具体的には、先進安全サービスを提供するエリア(たとえば、100m程度の走行範囲)においては、位置標定の誤差を半車両分(たとえば、約2.5m)以下とすることができ、適切な先進安全サービスの提供を受けることができる。
【0124】
また、この発明の実施の形態によれば、光ビーコンなどの既存のインフラを利用して、車両の現在位置の標定をおこなうことができるため、利用者に新たな装置設置に関する負担をかけることがなく、簡便に位置標定をおこなうことができる。
【0125】
なお、本実施の形態で説明した位置標定方法および情報配信方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【0126】
(付記1)路側に設置された通信機器の通信エリアへの移動体による進入を検知した場合、前記通信機器へ光信号を発信する発信手段と、
前記発信手段によって光信号が発信された結果、前記通信機器による当該光信号の受光時刻と前記移動体による観測地点の通過時刻との時間差に関する情報と、当該観測地点の位置情報とを前記通信機器から受信する受信手段と、
現在時刻から前記光信号の発信時刻までの時間および前記時間差に基づいて、前記通過時刻から当該現在時刻まで前記移動体が移動した時間を算出する移動時間算出手段と、
前記移動時間算出手段によって算出された時間を用いて、前記移動体が移動した距離を算出する移動距離算出手段と、
前記移動距離算出手段によって算出された距離および前記観測地点の位置情報から、前記移動体の現在位置を標定する標定手段と、
を備えることを特徴とする位置標定装置。
【0127】
(付記2)前記発信手段は、
前記移動体の識別情報を含む光信号を発信し、
前記受信手段は、
前記光信号が発信された結果、前記識別情報と関連づけられた前記時間差に関する情報および前記位置情報を受信することを特徴とする付記1に記載の位置標定装置。
【0128】
(付記3)前記移動距離算出手段は、
前記移動体における自律航法によるセンサの測位情報から前記距離を算出することを特徴とする付記1または2に記載の位置標定装置。
【0129】
(付記4)前記通信機器は、光ビーコンであることを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の位置標定装置。
【0130】
(付記5)路側に設置された通信機器の通信エリアへの移動体による進入を検知した場合、前記通信機器へ光信号を発信する発信工程と、
前記発信工程によって光信号が発信された結果、前記通信機器による当該光信号の受光時刻と前記移動体による観測地点の通過時刻との時間差に関する情報と、当該観測地点の位置情報とを前記通信機器から受信する受信工程と、
現在時刻から前記光信号の発信時刻までの時間および前記時間差に基づいて、前記通過時刻から当該現在時刻まで前記移動体が移動した時間を算出する移動時間算出工程と、
前記移動時間算出工程によって算出された時間を用いて、前記移動体が移動した距離を算出する移動距離算出工程と、
前記移動距離算出工程によって算出された距離および前記観測地点の位置情報から、前記移動体の現在位置を標定する標定工程と、
を含むことを特徴とする位置標定方法。
【0131】
(付記6)移動体に情報を配信する情報配信装置において、
経路上の観測地点における移動体の通過を検出する検出信号を受信する受信手段と、
前記移動体が前記情報配信装置の通信エリアに進入する際に発信する光信号を受光する受光手段と、
前記光信号の受光時刻と前記観測地点における前記移動体の通過時刻との間の時間差に関する情報と、当該観測地点の位置情報とを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記時間差に関する情報および前記位置情報を、前記光信号の発信元となった前記移動体に送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする情報配信装置。
【0132】
(付記7)前記受光手段は、
前記移動体の識別情報を含む前記光信号を受光し、
前記生成手段は、
前記識別情報を関連づけて前記時間差に関する情報および前記位置情報を生成し、
前記送信手段は、
前記識別情報によって識別される移動体に対して前記時間差に関する情報および前記位置情報を送信することを特徴とする付記6に記載の情報配信装置。
【0133】
(付記8)前記送信手段は、
前記通信エリアを移動する移動体に対して、前記時間差に関する情報および前記位置情報の送信を周期的に繰り返すことを特徴とする付記6または7に記載の情報配信装置。
【0134】
(付記9)前記情報配信装置は、光ビーコンであることを特徴とする付記6〜8のいずれか一つに記載の情報配信装置。
【0135】
(付記10)移動体に情報を配信する情報配信方法において、
経路上の観測地点における移動体の通過を検出する検出信号を受信する受信工程と、
前記移動体が前記情報配信装置の通信エリアに進入する際に発信する光信号を受光する受光工程と、
前記光信号の受光時刻と前記観測地点における前記移動体の通過時刻との間の時間差に関する情報と、当該観測地点の位置情報とを生成する生成工程と、
前記生成工程によって生成された前記時間差に関する情報および前記位置情報を、前記光信号の発信元となった前記移動体に送信する送信工程と、
を含むことを特徴とする情報配信方法。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上のように、本発明にかかる位置標定装置、位置標定方法、情報配信装置および情報配信方法は、車両などの移動体の現在位置を高精度に標定する場合に有用であり、特に、交差点やカーブなどで提供される先進安全サービスに利用する各車両の位置を標定する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】この発明の実施の形態にかかる位置標定システムの概要を示す説明図である。
【図2】この発明の実施の形態にかかる車載機および路側機の機能的構成を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態にかかる車両における観測地点の通過時の一例を示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態にかかる車両における通信エリアの進入時の一例を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態にかかる車両における通信エリアの走行中の一例を示す説明図である。
【図6】この発明の実施の形態にかかる車両における現在位置の標定の一例を示す説明図である。
【図7】この発明の実施の形態にかかるダウンリンク信号のデータフォーマットの一例を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態にかかる車載機の処理の内容を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態にかかる路側機の処理の内容を示すフローチャートである。
【図10】光ビーコンを用いた位置標定システムの概要を示す説明図である。
【図11】位置標定システムにおける位置情報の受信の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0138】
100 位置標定システム
101 先進安全サービスエリア
102 車両
110 路側機
111 観測地点
200 車載機
201 発信部
202,251 受信部
203 移動時間算出部
204 移動距離算出部
205 現在位置標定部
206 自律測位部
210,260 タイマー
252 受光部
253 生成部
254 送信部
301 位置検出器
302 送受信機
310 通信エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路側に設置された通信機器の通信エリアへの移動体による進入を検知した場合、前記通信機器へ光信号を発信する発信手段と、
前記発信手段によって光信号が発信された結果、前記通信機器による当該光信号の受光時刻と前記移動体による観測地点の通過時刻との時間差に関する情報と、当該観測地点の位置情報とを前記通信機器から受信する受信手段と、
現在時刻から前記光信号の発信時刻までの時間および前記時間差に基づいて、前記通過時刻から当該現在時刻まで前記移動体が移動した時間を算出する移動時間算出手段と、
前記移動時間算出手段によって算出された時間を用いて、前記移動体が移動した距離を算出する移動距離算出手段と、
前記移動距離算出手段によって算出された距離および前記観測地点の位置情報から、前記移動体の現在位置を標定する標定手段と、
を備えることを特徴とする位置標定装置。
【請求項2】
前記発信手段は、
前記移動体の識別情報を含む光信号を発信し、
前記受信手段は、
前記光信号が発信された結果、前記識別情報と関連づけられた前記時間差に関する情報および前記位置情報を受信することを特徴とする請求項1に記載の位置標定装置。
【請求項3】
前記移動距離算出手段は、
前記移動体における自律航法によるセンサの測位情報から前記距離を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の位置標定装置。
【請求項4】
路側に設置された通信機器の通信エリアへの移動体による進入を検知した場合、前記通信機器へ光信号を発信する発信工程と、
前記発信工程によって光信号が発信された結果、前記通信機器による当該光信号の受光時刻と前記移動体による観測地点の通過時刻との時間差に関する情報と、当該観測地点の位置情報とを前記通信機器から受信する受信工程と、
現在時刻から前記光信号の発信時刻までの時間および前記時間差に基づいて、前記通過時刻から当該現在時刻まで前記移動体が移動した時間を算出する移動時間算出工程と、
前記移動時間算出工程によって算出された時間を用いて、前記移動体が移動した距離を算出する移動距離算出工程と、
前記移動距離算出工程によって算出された距離および前記観測地点の位置情報から、前記移動体の現在位置を標定する標定工程と、
を含むことを特徴とする位置標定方法。
【請求項5】
移動体に情報を配信する情報配信装置において、
経路上の観測地点における移動体の通過を検出する検出信号を受信する受信手段と、
前記移動体が前記情報配信装置の通信エリアに進入する際に発信する光信号を受光する受光手段と、
前記光信号の受光時刻と前記観測地点における前記移動体の通過時刻との間の時間差に関する情報と、当該観測地点の位置情報とを生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記時間差に関する情報および前記位置情報を、前記光信号の発信元となった前記移動体に送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする情報配信装置。
【請求項6】
前記受光手段は、
前記移動体の識別情報を含む前記光信号を受光し、
前記生成手段は、
前記識別情報を関連づけて前記時間差に関する情報および前記位置情報を生成し、
前記送信手段は、
前記識別情報によって識別される移動体に対して前記時間差に関する情報および前記位置情報を送信することを特徴とする請求項5に記載の情報配信装置。
【請求項7】
前記送信手段は、
前記通信エリアを移動する移動体に対して、前記時間差に関する情報および前記位置情報の送信を周期的に繰り返すことを特徴とする請求項5または6に記載の情報配信装置。
【請求項8】
移動体に情報を配信する情報配信方法において、
経路上の観測地点における移動体の通過を検出する検出信号を受信する受信工程と、
前記移動体が前記情報配信装置の通信エリアに進入する際に発信する光信号を受光する受光工程と、
前記光信号の受光時刻と前記観測地点における前記移動体の通過時刻との間の時間差に関する情報と、当該観測地点の位置情報とを生成する生成工程と、
前記生成工程によって生成された前記時間差に関する情報および前記位置情報を、前記光信号の発信元となった前記移動体に送信する送信工程と、
を含むことを特徴とする情報配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−181207(P2008−181207A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12681(P2007−12681)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】