説明

低いハロゲン化物含量を有する硫酸アルキルオニウムの調製方法

本発明は、ハロゲン化オニウムの、アルキル基が1〜14個のC原子を有することができる対称的に置換された硫酸ジアルキルとの、1つのアルキル基が4〜20個のC原子を有することができ、第2のアルキル基がメチルまたはエチルを示す非対称的に置換された硫酸ジアルキルとの、硫酸アルキルトリアルキルシリルとの、硫酸アルキルアシルとの、または硫酸アルキルスルホニルとの反応により、硫酸アルキルオニウムを調製する方法であって、硫酸ジアルキルとの反応を室温で行う、前記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化オニウムの、アルキル基が1〜14個のC原子を有することができる対称的に置換された硫酸ジアルキルとの、1つのアルキル基が4〜20個のC原子を有することができ、第2のアルキル基がメチルまたはエチルを示す非対称的に置換された硫酸ジアルキルとの、硫酸アルキルトリアルキルシリルとの、硫酸アルキルアシルとの、または硫酸アルキルスルホニルとの反応により、硫酸アルキルオニウムを調製する方法であって、硫酸ジアルキルとの反応を室温で行う、前記方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のオニウム塩、特に硫酸アルキルは、イオン性液体である。これらの特性により、イオン性液体は、現代の研究における有機合成のための伝統的な揮発性有機溶媒に対する有効な代替物である。イオン性液体を新規な反応媒体として用いることは、さらに溶媒排出およびまた触媒の再処理における問題の両方のための実際的な解決法であり得る。
【0003】
イオン性液体または液体塩は、有機カチオンおよび一般的に無機アニオンからなるイオン性種である。これらは、いかなる中性分子も含まず、通常373Kより低い融点を有する。しかし、融点はまた、すべての適用領域における当該塩の有用性を制限せずに、一層高くてもよい。有機カチオンの例は、特に、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、N−アルキルピリジニウム、1,3−ジアルキルイミダゾリウムまたはトリアルキルスルホニウムである。多数の好適なアニオンの中で、例えば、BF、PF、SbF、NO、CFSO、(CFSO、アリールSO、CFCO、CHCOまたはAlClを挙げることができる。
【0004】
硫酸アルキルオニウムの調製のための一般的な方法は、有機塩基、即ち、例えばアミン、ホスフィン、グアニジンまたは複素環式塩基の、硫酸ジアルキルを用いたアルキル化であり、これはまた、John D. Holbreyらによる刊行物、Green Chemistry (2002), 4(5), 407-413により開示されている。しかし、この方法の欠点は、生成した硫酸アルキルオニウムの1つの置換基が常に、硫酸ジアルキルの対応するアルキル基に一致することである。以下で非対称的に置換された硫酸アルキルオニウムと呼ぶ、アニオン中のアルキル基がカチオンの置換基と異なる硫酸アルキルオニウムを調製するために、混合アルキル化された硫酸アルキルオニウムを生成する、非対称的に置換された硫酸ジアルキル、例えば硫酸エチルメチルを用いることが必要である。一方で、有機塩基はエチル化され、メチル硫酸を生成し、他方で、有機塩基はメチル化され、エチル硫酸を生成する。
【0005】
上記で定義した非対称硫酸アルキルオニウム、例えばオクチル硫酸1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムを、P. Wasserscheidら、Green Chemistry (2002), 4(4), 400-404の方法により、またハロゲン化オニウム、例えば塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムの対応するアルカリ金属硫酸塩、例えばオクチル硫酸ナトリウムとの反応により合成することができるが、生成したアルカリ金属ハロゲン化物、例えば塩化ナトリウムを、追加の精製方法により除去しなければならない。ハロゲン化物イオン、例えば塩化物イオンによる、1000ppm(0.1%)より高い汚染により、特に電気化学的方法への適用において、イオン性液体の有用性が低下する。したがって、オニウム塩、特にイオン性液体の調製のための方法において、これらを、これら自体の反応により、または反応手順により低レベルの不純物を伴って合成することができ、したがってさらに合成の間の費用を要する追加の処理段階が不必要であるようにするための技術が決定的に重要である。
【発明の開示】
【0006】
したがって、本発明の目的は、高い純度の硫酸アルキル、好ましくは非対称的に置換された硫酸アルキルオニウムを良好な収率で生成し、また大規模の工業的な生産に適する、低いハロゲン化物含量を有する硫酸アルキルオニウムを調製するための代替の方法を提供することにあった。
【0007】
このように、このタイプの方法は、対称的に置換された硫酸アルキルオニウムの調製にも当然適する。本発明の方法は、ハロゲン化物含有硫酸アルキルオニウムの精製にも用いることができる。
【0008】
この目的は本発明の方法により達成され、これは、アルキル基が1〜14個のC原子を有することができる対称的に置換された硫酸ジアルキル、1つのアルキル基が4〜20個のC原子を有することができ、第2のアルキル基がメチルまたはエチルを示す非対称的に置換された硫酸ジアルキル、硫酸アルキルトリアルキルシリル、硫酸アルキルアシルまたは硫酸アルキルスルホニルが、用いられるハロゲン化オニウムのアニオンをアルキル化し、有機カチオンをアルキル化しないためである。副産物として生成したハロゲン化アルキル、アシル、トリアルキルシリルまたはスルホニルは、一般的に、大掛かりなプロセスエンジニアリング手段なしに反応混合物から除去することができるガスまたは容易に揮発する化合物である。
【0009】
したがって、本発明は、ハロゲン化オニウムの、アルキル基が1〜14個のC原子を有することができる対称的に置換された硫酸ジアルキルとの、1つのアルキル基が4〜20個のC原子を有することができ、第2のアルキル基がメチルまたはエチルを示す非対称的に置換された硫酸ジアルキルとの、硫酸アルキルトリアルキルシリルとの、硫酸アルキルアシルとの、または硫酸アルキルスルホニルとの反応により、硫酸アルキルオニウム、特に非対称的に置換された硫酸アルキルオニウムを調製する方法であって、硫酸ジアルキルとの反応を室温で行う、前記方法に関する。
【0010】
硫酸C〜C20アルキルメチルまたは硫酸C〜C20アルキルエチルを用いるにあたり、混合物の生成は、メチル基またはエチル基が一層反応性であり、ハロゲン化物をメチル化またはエチル化し、4〜20個のC原子を有する硫酸アルキルが主に硫酸アルキルオニウムのアニオンを生成するため、回避される。
【0011】
1〜20個のC原子を有する対称的に置換された硫酸ジアルキル、または1〜20個のC原子を有する非対称的に置換された硫酸ジアルキル、さらには高度にアルキル化された出発物質を共に本発明の方法において用いることが当然可能である。利点は常に、生成した硫酸アルキルオニウムが、低いハロゲン化物含量で調製されていることである。
【0012】
US 2,585,979には、ピリミジルアミノキノリン誘導体
【化1】

の第四級硫酸塩の、対応するハロゲン化ピリミジルアミノキノリンの硫酸ジメチルまたはジエチルとの反応による調製が開示されている。しかし、本発明の方法とは対照的に、この反応は、90℃〜150℃の温度において、溶媒、例えばニトロベンゼンの存在下で行われる。しかし、驚異的なことに、本発明の反応は、室温において、即ち10℃〜30℃の温度において、溶媒を用いずに成功し、ほぼ定量的な収率である。
【0013】
US 2,585,979と同様の技術的教示が、Vompeら、J. Org. Chem. USSR(英訳)、17, 1981, 1551-1554にも提供されており、ここで、ヨウ化2−メチル−3−エチルナフト[2,1−d]チアゾリウムの硫酸ジメチルとの80℃〜130℃における反応により、硫酸メチルと重硫酸塩(硫酸水素塩)との混合物が得られ、一方130℃の温度においては、重硫酸イオンHSOが得られることが開示されている。ここでも、高温が必要である。
【0014】
したがって、特に対称的に置換された硫酸ジアルキルを試薬として用いるにあたり、本発明の方法を、従来技術の方法からの選択発明とみなすべきである。試薬、硫酸アルキルトリアルキルシリル、硫酸アルキルアシルまたは硫酸アルキルスルホニルを用いることは示唆されていない。
【0015】
好適なハロゲン化オニウムは、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ホスホニウム、ハロゲン化チオウロニウム、ハロゲン化グアニジニウムまたは複素環式カチオンとのハロゲン化物であり、ここでハロゲン化物は、塩化物または臭化物の群から選択することができる。好ましいのは、本発明の方法において、ハロゲン化ホスホニウム、チオウロニウムもしくはグアニジニウムまたは複素環式カチオンとのハロゲン化物を用いることである。塩化物および臭化物に加えて、ヨウ化チオウロニウムが特に好適である。
【0016】
ハロゲン化オニウムは、一般的に、商業的に入手できるか、または文献から、例えば標準的な学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg-Thieme-Verlag, StuttgartまたはRichard C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 第2版、Wiley-VCH, New York, 1999において知られている合成方法により、調製することができる。またここで、自体公知であり、ここでは一層詳細に述べない変法を用いることができる。
【0017】
ハロゲン化ホスホニウムは、例えば式(1)
[PRHal (1)
式中、
Halは、ClまたはBrを示し、
Rは、各々の場合において互いに独立して、
H(ここですべての置換基Rは、同時にはHであってはならない)、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル
を示し、
ここで、1つまたは2つ以上のRは、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−NOにより部分的に置換されていてもよいが、ここで、4つすべて、または3つのRは、ハロゲンにより完全に置換されていてはならない、
により記載することができる。
【0018】
したがって、4つすべて、または3つの置換基Rがハロゲンにより完全に置換されている、式(1)で表される化合物、例えば塩化トリス(トリフルオロメチル)メチルホスホニウム、塩化テトラ(トリフルオロメチル)ホスホニウムまたは塩化テトラ(ノナフルオロブチル)ホスホニウムは除外される。
【0019】
ハロゲン化グアニジニウムは、例えば式(2)
[C(NR)(NR)(NR)] Hal (2)
式中、
Halは、ClまたはBrを示し、
〜Rは、各々、互いに独立して、
水素、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル
を示し、
ここで、置換基R〜Rの1つまたは2つ以上は、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−NOにより部分的に置換されていてもよいが、ここで、1個のN原子上のすべての置換基は、ハロゲンにより完全に置換されていてはならず、また
ここで、置換基R〜Rは、単結合または二重結合により互いに対になって結合していてもよい、
により記載することができる。
【0020】
ハロゲン化チオウロニウムは、例えば式(3)
[(RN)−C(=SR)(NR)]Hal (3)
式中、
Halは、Cl、BrまたはIを示し、
〜Rは、各々、互いに独立して、
水素(ここで水素はRについては除外される)、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル
を示し、
ここで、置換基R〜Rの1つまたは2つ以上は、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−NOにより部分的に置換されていてもよいが、ここで、1個のN原子上のすべての置換基は、ハロゲンにより完全に置換されていてはならず、また
ここで、置換基R〜Rは、単結合または二重結合により互いに対になって結合していてもよい、
により記載することができる。
【0021】
複素環式カチオンとのハロゲン化物は、例えば式(4)
[HetN]Hal (4)
式中、
Halは、ClまたはBrを示し、
HetNは、
【化2】

の群から選択される複素環式カチオンを示し、
【0022】
ここで、置換基
1’〜R4’は、各々、互いに独立して、
水素もしくはCN、
1〜20個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルケニルまたは
アリール−C〜Cアルキル
を示し、
ここで、置換基R1’〜R4’の1つまたは2つ以上は、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−NOもしくはCNにより部分的に置換されていてもよいが、ここで、R1’およびR4’は、同時にはハロゲンにより完全に置換されていてはならない、
により記載することができる。
【0023】
〜C14アルキル基は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−もしくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−もしくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルまたはテトラデシル、あるいは随意にパーフルオロ化されたアルキル基、例えばジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピルまたはノナフルオロブチルである。
【0024】
2〜20個のC原子を有し、さらに複数の二重結合が存在してもよい直鎖状または分枝状アルケニルは、例えば、ビニル、アリル、2−もしくは3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、−C17、−C1019〜−C2039;好ましくはビニル、アリル、2−もしくは3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらにまた好ましくは4−ペンテニル、イソペンテニルまたはヘキセニルである。
【0025】
アリール−C〜Cアルキルは、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチルまたはフェニルヘキシルを示し、ここでフェニル環およびまたアルキレン鎖は共に、上記のように、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−NOにより部分的に置換されていてもよく、特に好ましくはベンジルまたはフェニルプロピルである。しかし、フェニル環またはアルキレン鎖もまた、同様に、他の官能基、例えばCN、SOR’、SOOR’またはCOOR’により置換されていてもよい。R’はここで、上記で定義した意味を有する。
【0026】
本発明において、式(1)〜(3)で表される化合物の好適な置換基RおよびR〜Rは、水素に加えて、各々の場合において好ましくは、互いに独立して:C〜C20、特にC〜C14アルキル基であり、ここで水素はRについて除外される。
しかし、置換基RおよびR〜Rは、同様に、他の官能基により、例えばCN、SOR’、SOOR’またはCOOR’により置換されていてもよい。R’は、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、またはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、非置換または置換フェニルを示す。
【0027】
式(4)で表される複素環式カチオンの置換基R並びにR〜R並びにR1’およびR4’としてのアルキル基は、好ましくは、硫酸アルキルオニウムにおけるアニオンのアルキル基とは異なっている。
しかし、本発明に従って調製された硫酸アルキルオニウムはまた、カチオン中に、アニオン中のアルキル基と同一であるが、アルキル化により本発明に従って導入されていないアルキル基を有していてもよい。したがって、焦点は、単純な反応手順および最終生成物中の特に低いハロゲン化物含量にある。
【0028】
式(1)中の置換基Rは、特に、各々の場合において互いに独立して、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシルまたはテトラデシルである。
グアニジニウムカチオン[C(NR)(NR)(NR)]の4つまでの置換基はまた、単環式、二環式または多環式カチオンが形成されるように、対になって結合していてもよい。
【0029】
一般性を制限せずに、このようなグアニジニウムカチオンの例は、以下のものである:
【化3】

式中、置換基R〜RおよびRは、前述の、または特に好ましい意味を有していてもよい。
前述のグアニジニウムカチオンの炭素環または複素環はまた、随意にC〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、F、Cl、BrまたはIにより置換されていてもよい。
【0030】
チオウロニウムカチオン[(RN)−C(=SR)(NR)]の4つまでの置換基はまた、単環式、二環式または多環式カチオンが形成されるように、対になって結合していてもよい。
一般性を制限せずに、このようなカチオンの例を以下に示す:
【化4】

式中、置換基R、RおよびRは、前述の、または特に好ましい意味を有していてもよい。
【0031】
前述のチオウロニウムカチオンの炭素環または複素環はまた、随意に、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、F、Cl、Br、I、C〜Cアルコキシ、SCF、SOCF、SOCH、COOR”、SONR”、SOX’もしくはSOR”により置換されていてもよく、ここでX’は、F、ClもしくはBrを示し、R”は、R’について定義したように、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、もしくはパーフルオロ化されているC〜CアルキルもしくはC〜Cシクロアルキルを示し、または置換もしくは非置換フェニルにより置換されていてもよい。
【0032】
置換基R〜Rは、各々、互いに独立して、好ましくは1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基である。式(2)または(3)で表される化合物中の置換基RおよびR、RおよびR並びにRおよびRは、ここでは同一であっても異なっていてもよい。
〜Rは、特に好ましくは、各々、互いに独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチルまたはsec−ブチル、極めて特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルまたはn−ブチルである。
【0033】
本発明において、式(4)で表される化合物の好適な置換基R1’〜R4’は、水素以外には、好ましくは、以下のものである:C〜C20、特にC〜C12アルキル基またはアリール−C〜Cアルキル。
【0034】
しかし、置換基R1’〜R4’は、同様に、他の官能基により、例えばCN、SOR’、SOOR’またはCOOR’により置換されていてもよい。R’は、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、またはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、非置換または置換フェニルを示す。
【0035】
置換基R1’およびR4’は、各々、互いに独立して、特に好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシルまたはベンジルである。これらは、極めて特に好ましくは、メチル、エチル、n−ブチル、ヘキシルまたはベンジルである。ピロリジニウムまたはピペリジニウム化合物において、2つの置換基R1’およびR4’は、好ましくは異なっている。
【0036】
置換基R2’またはR3’は、各々の場合において互いに独立して、特に水素、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルである。R2’は、特に好ましくは、水素、メチルまたはエチルである。R2’およびR3’は、極めて特に好ましくは水素である。
【0037】
式(4)のHetNは、好ましくは、
【化5】

であり、ここで、置換基R1’〜R4’は、各々、互いに独立して、上記の意味を有する。
【0038】
HetNは、特に好ましくは、上記で定義したように、イミダゾリウム、ピロリジニウムまたはピリジニウムであり、ここで、置換基R1’〜R4’は、各々、互いに独立して、上記の意味を有する。
【0039】
用いる対称的に置換された硫酸ジアルキルは、好ましくは、1〜14個のC原子、好ましくは1〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を有する硫酸ジアルキルである。対称的に置換された硫酸ジアルキルの例は、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ(n−プロピル)、硫酸ジ(イソプロピル)、硫酸ジ(n−ブチル)、硫酸ジ(sec−ブチル)および硫酸ジ(n−ペンチル)、硫酸ジ(n−ヘキシル)、硫酸ジ(n−ヘプチル)および硫酸ジ(n−オクチル)である。
【0040】
用いる対称的な硫酸ジアルキルは、一般的には、商業的に入手できるか、または文献から、例えば標準的な学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg-Thieme-Verlag, StuttgartまたはRichard C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 第2版、Wiley-VCH, New York, 1999において知られている合成方法により、調製することができる。またここで、自体公知であり、ここでは一層詳細に述べない変法を用いることができる。
【0041】
用いる非対称的に置換された硫酸ジアルキルは、好ましくは、4〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基および第2のアルキル基としてメチルまたはエチル基を有する、好ましくは4〜8個のC原子を有するアルキル基を有する硫酸ジアルキルである。非対称的に置換された硫酸ジアルキルの例は、硫酸メチルブチル、硫酸エチルブチル、硫酸メチルペンチル、硫酸エチルペンチル、硫酸メチルヘキシル、硫酸エチルヘキシル、硫酸メチルヘプチル、硫酸エチルヘプチル、硫酸メチルオクチルおよび硫酸エチルオクチルである。
【0042】
用いる非対称的な硫酸ジアルキルは、文献から、例えば標準的な学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg-Thieme-Verlag, StuttgartまたはRichard C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 第2版、Wiley-VCH, New York, 1999において知られている合成方法により調製することができる。またここで、自体公知であり、ここでは一層詳細に述べない変法を用いることができる。
【0043】
硫酸アルキルトリアルキルシリルは、式アルキル−O−SO−OSi(アルキル’)に適合し、ここでアルキル基は、1〜20個のC原子を有することができ、アルキル’基は、1〜4個のC原子を有することができる。アルキル’基は、好ましくは同一である。アルキル’は、好ましくはメチルである。
【0044】
用いる硫酸アルキルトリアルキルシリルは、文献から、例えば標準的な学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg-Thieme-Verlag, StuttgartまたはRichard C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 第2版、Wiley-VCH, New York, 1999において知られている合成方法により調製することができる。またここで、自体公知であり、ここでは一層詳細に述べない変法を用いることができる。
【0045】
硫酸アルキルアシルは、式アルキル−O−SO−O−C(O)Rに適合し、ここで、アルキル基は、1〜20個のC原子を有することができ、R基は、1〜4個のC原子を有するパーフルオロアルキル基を示す。Rは、好ましくはトリフルオロメチルである。
【0046】
用いる硫酸アルキルアシルは、文献から、例えば標準的な学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg-Thieme-Verlag, StuttgartまたはRichard C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 第2版、Wiley-VCH, New York, 1999において知られている合成方法により調製することができる。またここで、自体公知であり、ここでは一層詳細に述べない変法を用いることができる。
【0047】
硫酸アルキルスルホニルは、式アルキル−O−SO−O−SOF’に適合し、ここで、アルキル基は、1〜20個のC原子を有することができ、RF’基は、1〜4個のC原子を有するパーフルオロアルキル基、ClまたはFを示す。RF’は、好ましくはFまたはトリフルオロメチルである。
【0048】
用いる硫酸アルキルスルホニルは、文献から、例えば標準的な学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie[有機化学の方法]、Georg-Thieme-Verlag, StuttgartまたはRichard C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 第2版、Wiley-VCH, New York, 1999において知られている合成方法により調製することができる。またここで、自体公知であり、ここでは一層詳細に述べない変法を用いることができる。
【0049】
一般的なスキームが、本発明の方法を要約する:
【化6】

式(1)〜(8)で表される化合物の置換基R、R〜RおよびHetNは、上記の意味に相当する。
【0050】
硫酸ジアルキルとの反応は、本発明に従って、室温で、即ち一般的に10℃〜30℃の温度にて行う。硫酸アルキルトリアルキルシリル、硫酸アルキルアシルまたは硫酸アルキルスルホニルとの反応は、0℃〜200℃、好ましくは10℃〜100℃、特に好ましくは10℃〜50℃の温度、極めて特に好ましくは室温で行うことができ、ここで50℃からの温度は、加熱源、例えば油浴の温度に相当する。溶媒は必要ではない。しかし、溶媒、例えばジメトキシエタン、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、プロピオニトリルまたは互いの混合物を用いることも可能である。
反応は、過剰の、または等モル量の硫酸ジアルキル、硫酸アルキルトリアルキルシリル、硫酸アルキルアシルまたは硫酸アルキルスルホニルを用いて行う。
【0051】
記載した方法はまた、オニウム塩の精製にも適する。このことは、例えば硫酸ジメチルとの本発明の対応するエステルまたはアニオンの酸のシリルエステルを、ハロゲン化物イオンにより汚染されたイオン性液体、例えば塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムで汚染された1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩に加えることを意味する。汚染物は反応して除去され、ハロゲン化物が減少したイオン性液体が得られる。
【0052】
本発明は、同様に、硫酸アルキルオニウム、特に、アルキル基が4〜20個のC原子、特に好ましくは4〜14個のC原子を有する硫酸アルキルを調製するためのワンポット方法であって、ハロゲン化オニウムを、アルキル基が1〜3個のC原子を有することができる対称的に置換された硫酸ジアルキルと、4〜20個のC原子を有するアルコールと反応させることを特徴とする、前記方法に関する。
1〜3個のC原子を有する副産物のハロゲン化アルキルおよび1〜3個のC原子を有するアルコールは、容易に除去することができる。
【0053】
反応は、0℃〜200℃、好ましくは10℃〜100℃、特に好ましくは10℃〜60℃の温度にて、真空を用いて行い、ここで60℃からの温度は、加熱源、例えば油浴の温度に相当する。
ワンポット反応は、特に好ましくは、対称的な硫酸ジメチルおよびアルコールのヘキサノール、ヘプタノールまたはオクタノール、極めて特に好ましくはオクタノールを用いて行う。
【0054】
本発明はまた、トリアルキルシリル基のアルキル基が1〜4個のC原子を有することができる化合物、硫酸トリアルキルシリルオクチルに関する。好ましい硫酸トリアルキルシリルオクチルは、トリアルキルシリル基中のアルキル基が同一である化合物である。特に好ましいのは、硫酸トリメチルシリルオクチルまたは硫酸トリエチルシリルオクチル、極めて特に好ましくは硫酸トリメチルシリルオクチルである。
これらの化合物は、本発明の方法において用いるのに、即ち硫酸オクチルアニオンをイオン性液体に導入するのに極めて適している。
【0055】
さらなるコメントを伴わなくても、当業者は、前記記載を最も広い範囲において用いることができると推測される。したがって、好ましい態様および例は、単に説明的な開示であり、これはいかなる形においても絶対に限定的ではないと見なすべきである。
当業者にはいうまでもないが、本明細書中に述べた化合物における置換基、例えばH、N、O、ClまたはFは、対応する同位体により置換することができる。
【0056】
NMRスペクトルは、例中に示さない限りは、重水素化した溶媒に溶解した溶液について、20℃でBruker ARX 400分光計上で、重水素ロックを有する5mmのH/BB広帯域ヘッドを用いて測定した。種々の核の測定周波数は、以下の通りである:H:400.13MHzおよび19F:376.50MHz。参照方法は、各々のスペクトルまたは各々のデータセットについて別個に示す。
【0057】
例1:
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムエチル硫酸塩の合成
【化7】

3.62g(20.7mmol)の塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムおよび3.19g(20.7mmol)の硫酸ジエチルの混合物を、室温で2時間攪拌する。NMR測定値が、反応の完全性を示す。残留物を、30分間、13.3Paの真空中、60℃(油浴温度)にて乾燥し、5.47gの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムエチル硫酸塩をほぼ定量的な収率で得る。
【化8】

【0058】
例2:
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩の合成
【化9】

例1と同様に、1.51g(7.45mmol)の塩化1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムおよび1.02g(8.09mmol)の硫酸ジメチルを1時間攪拌し、13.3Paの真空中、120℃(油浴温度)にて乾燥し、2.06gの1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩をほぼ定量的な収率で得る。
【化10】

【0059】
例3:
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩の合成
【化11】

例1と同様に、1.36g(7.79mmol)の塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムおよび0.99g(7.95mmol)の硫酸ジメチルを1時間攪拌し、13.3Paの真空中、120℃(油浴温度)にて乾燥し、1.95gの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩をほぼ定量的な収率で得る。
【化12】

【0060】
例4:
例3と同様にして、
塩化1,3−ジメチルイミダゾリウムを硫酸ジメチルと反応させて、1,3−ジメチルイミダゾリウムメチル硫酸塩が得られ;
塩化1,3−ジブチルイミダゾリウムを硫酸ジメチルと反応させて、1,3−ジブチルイミダゾリウムメチル硫酸塩が得られ;
塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを硫酸ジメチルと反応させて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩が得られ;
【0061】
塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを硫酸ジエチルと反応させて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチル硫酸塩が得られ;
塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを硫酸ジブチルと反応させて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブチル硫酸塩が得られ;
塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを硫酸ジヘキシルと反応させて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキシル硫酸塩が得られ;
塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを硫酸ジオクチルと反応させて、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムオクチル硫酸塩が得られ;
【0062】
塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムを硫酸ジオクチルと反応させて、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムオクチル硫酸塩が得られ;
塩化3−メチル−1−オクチルイミダゾリウムを硫酸ジオクチルと反応させて、3−メチル−1−オクチルイミダゾリウムオクチル硫酸塩が得られ;
塩化3−メチル−1−オクチルイミダゾリウムを硫酸ジメチルと反応させて、3−メチル−1−オクチルイミダゾリウムメチル硫酸塩が得られ;
【0063】
塩化1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムを硫酸ジメチルと反応させて、1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩が得られ;
塩化1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムを硫酸ジメチルと反応させて、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムメチル硫酸塩が得られ;
塩化1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムを硫酸ジメチルと反応させて、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムメチル硫酸塩が得られ;
塩化1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムを硫酸ジオクチルと反応させて、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムオクチル硫酸塩が得られる。
【0064】
例5:
トリヘキシルテトラデシルホスホニウムメチル硫酸塩の合成
【化13】

1.72g(3.31mmol)の塩化トリヘキシルテトラデシルホスホニウムおよび0.51g(4.04mmol)の硫酸ジメチルの混合物を、室温で1時間攪拌する。NMR測定値が、反応の完全性を示す。残留物を、30分間、13.3Paの真空中、120℃(油浴温度)にて乾燥し、1.96gのトリヘキシルテトラデシルホスホニウムメチル硫酸塩をほぼ定量的な収率で得る。
【化14】

【0065】
例6:
例5と同様に、塩化トリブチルメチルホスホニウムを硫酸ジエチルと反応させて、トリブチルメチルホスホニウムエチル硫酸塩を得る。
【0066】
例7:
1−エチルピリジニウムメチル硫酸塩の合成
【化15】

1.96g(10.4mmol)の臭化1−エチルピリジニウムおよび1.31g(10.4mmol)の硫酸ジメチルの混合物を、室温で1時間攪拌する。NMR測定値が、反応の完全性を示す。残留物を、30分間、13.3Paの真空中、120℃(油浴温度)にて乾燥し、2.28gの1−エチルピリジニウムメチル硫酸塩をほぼ定量的な収率で得る。
【化16】

【0067】
例8:
1−ブチルピリジニウムメチル硫酸塩の合成
【化17】

1.22g(5.65mmol)の臭化1−ブチルピリジニウムおよび0.95g(7.53mmol)の硫酸ジメチルの混合物を、室温で1時間攪拌する。NMR測定値が、反応の完全性を示す。残留物を、30分間、13.3Paの真空中、120℃(油浴温度)にて乾燥し、1.39gの1−ブチルピリジニウムメチル硫酸塩をほぼ定量的な収率で得る。
【化18】

【0068】
これと同様にして、
臭化1−ブチル−3−メチルピリジニウムを硫酸ジメチルと反応させて、1−ブチル−3−メチルピリジニウムメチル硫酸塩が得られ;
臭化1−ブチル−3−エチルピリジニウムを硫酸ジメチルと反応させて、1−ブチル−3−エチルピリジニウムメチル硫酸塩が得られ;
塩化1−ブチル−4−メチルピリジニウムを硫酸ジメチルと反応させて、1−ブチル−4−メチルピリジニウムメチル硫酸塩が得られ、または
塩化1−ブチル−4−エチルピリジニウムを硫酸ジメチルと反応させて、1−ブチル−4−エチルピリジニウムメチル硫酸塩が得られる。
【0069】
例9:
1−エチル−1−メチルピロリジニウムエチル硫酸塩の合成
【化19】

2.35g(12.11mmol)の臭化1−エチル−1−メチルピロリジニウムおよび1.87g(12.13mmol)の硫酸ジエチルの混合物を、室温で3時間攪拌する。NMR測定値が、反応の完全性を示す。残留物を、1時間、13.3Paの真空中、室温にて乾燥し、2.89gの1−エチル−1−メチルピロリジニウムエチル硫酸塩をほぼ定量的な収率で得る。
【0070】
融点:35〜36℃
【化20】

これと同様にして、
臭化1−ブチル−1−メチルピロリジニウムを硫酸ジエチルと反応させて、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムエチル硫酸塩が得られる。
【0071】
例10:
N,N,N’,N’−テトラメチル−N”−エチルグアニジニウムメチル硫酸塩の合成
【化21】

2.59g(11.56mmol)の臭化N,N,N’,N’−テトラメチル−N”−エチル−グアニジニウムおよび1.46g(11.58mmol)の硫酸ジメチルの混合物を、室温で1時間攪拌する。NMR測定値が、反応の完全性を示す。残留物を、2時間、13.3Paの真空中、室温にて乾燥し、2.95gのN,N,N’,N’−テトラメチル−N”−エチルグアニジニウムメチル硫酸塩を粘性液体としてほぼ定量的な収率で得る。
【化22】

【0072】
これと同様にして、
塩化グアニジニウムを硫酸ジメチルと反応させて、グアニジニウムメチル硫酸塩が得られ;
塩化グアニジニウムを硫酸ジエチルと反応させて、グアニジニウムエチル硫酸塩が得られ、または
臭化N,N,N’,N’−テトラメチル−N”,N”−ジエチルグアニジニウムを硫酸ジメチルと反応させて、N,N,N’,N’−テトラメチル−N”,N”−ジエチルグアニジニウムメチル硫酸塩が得られる。
【0073】
例11:
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩の合成
a)臭化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムの合成
【化23】

111.43g(1.36mol)のメチルイミダゾールおよび160g(1.47mol)のブロモエタンを混合し、その後400mlのイソプロパノールを加える。反応混合物を、攪拌しながら72時間加熱し、この間油浴温度を80℃とする。次に、イソプロパノールを蒸留により除去し、残留物を、2時間、13.3Paの真空中、100℃の油浴温度にて乾燥し、258.6gの臭化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムを得、これは99.7%の収率に相当する。
融点:73〜74℃
【化24】

【0074】
b)1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩の合成
【化25】

134.17g(1.064mol)の硫酸ジメチルを、203.26g(1.064mol)の臭化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムに加える。反応混合物を、室温で3時間、臭化物が完全に溶解するまで攪拌する。その後、液体生成物を、3時間、13.3Paの真空中、室温にて乾燥し、236.4gの1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩を得、これはほぼ定量的な収率に相当する。
【化26】

【0075】
例12:
N,N,N’,N’−テトラメチル−S−メチルチオウロニウムエチル硫酸塩の合成
【化27】

2.25g(8.21mmol)のヨウ化N,N,N’,N’−テトラメチル−S−メチルチオウロニウムおよび1.27g(8.24mmol)の硫酸ジエチルの混合物を、室温で6時間攪拌する。NMR測定値が、反応の完全性を示す。残留物を、1時間、室温にて、13.3Paの真空中で乾燥し、2.16gのN,N,N’,N’−テトラメチル−S−メチルチオウロニウムエチル硫酸塩を得、これは96.6%の収率に相当する。
【化28】

【0076】
これと同様にして、
ヨウ化N,N,N’,N’−テトラメチル−S−エチルチオウロニウムを硫酸ジエチルと反応させて、N,N,N’,N’−テトラメチル−S−エチルチオウロニウムエチル硫酸塩が得られ;
ヨウ化N,N,N’,N’−テトラメチル−S−プロピルチオウロニウムを硫酸ジメチルと反応させて、N,N,N’,N’−テトラメチル−S−プロピルチオウロニウムメチル硫酸塩が得られ;
ヨウ化N,N,N’,N’−テトラメチル−S−ブチルチオウロニウムを硫酸ジエチルと反応させて、N,N,N’,N’−テトラメチル−S−ブチルチオウロニウムエチル硫酸塩が得られ;
【0077】
ヨウ化N,N,N’,N’−テトラメチル−S−オクチルチオウロニウムを硫酸ジエチルと反応させて、N,N,N’,N’−テトラメチル−S−オクチルチオウロニウムエチル硫酸塩が得られ;
ヨウ化N,N,N’,N’−テトラエチル−S−メチルチオウロニウムを硫酸ジエチルと反応させて、N,N,N’,N’−テトラエチル−S−メチルチオウロニウムエチル硫酸塩が得られ;
ヨウ化N,N,N’,N’−テトラエチル−S−エチルチオウロニウムを硫酸ジエチルと反応させて、N,N,N’,N’−テトラエチル−S−エチルチオウロニウムエチル硫酸塩が得られ;
【0078】
ヨウ化N,N,N’,N’−テトラエチル−S−プロピルチオウロニウムを硫酸ジメチルと反応させて、N,N,N’,N’−テトラエチル−S−プロピルチオウロニウムメチル硫酸塩が得られ;
ヨウ化N,N,N’,N’−テトラエチル−S−ブチルチオウロニウムを硫酸ジエチルと反応させて、N,N,N’,N’−テトラエチル−S−ブチルチオウロニウムエチル硫酸塩が得られ;
ヨウ化N,N,N’,N’−テトラエチル−S−オクチルチオウロニウムを硫酸ジエチルと反応させて、N,N,N’,N’−テトラエチル−S−オクチルチオウロニウムエチル硫酸塩が得られ;
【0079】
ヨウ化N,N−ジメチル−N’,N’−ジエチル−S−メチルチオウロニウムを硫酸ジエチルと反応させて、N,N−ジメチル−N’,N’−ジエチル−S−メチルチオウロニウムエチル硫酸塩が得られ;
ヨウ化N,N−ジメチル−N’,N’−ジエチル−S−エチルチオウロニウムを硫酸ジエチルと反応させて、N,N−ジメチル−N’,N’−ジエチル−S−エチルチオウロニウムエチル硫酸塩が得られ;
ヨウ化N,N−ジメチル−N’,N’−ジエチル−S−プロピルチオウロニウムを硫酸ジメチルと反応させて、N,N−ジメチル−N’,N’−ジエチル−S−プロピルチオウロニウムメチル硫酸塩が得られ;
【0080】
ヨウ化N,N−ジメチル−N’,N’−ジエチル−S−ブチルチオウロニウムを硫酸ジエチルと反応させて、N,N−ジメチル−N’,N’−ジエチル−S−ブチルチオウロニウムエチル硫酸塩が得られ、または
ヨウ化N,N−ジメチル−N’,N’−ジエチル−S−オクチルチオウロニウムを硫酸ジエチルと反応させて、N,N−ジメチル−N’,N’−ジエチル−S−オクチルチオウロニウムエチル硫酸塩が得られる。
【0081】
例13:
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩の合成
a)トリメチルシリルメチル硫酸塩の合成
(CHSiOSOCl+CHOH→CHOSOOSi(CH+HCl↑
0.56g(17.48mmol)のメタノールを、3.3g(17.49mmol)のクロロスルホン酸のトリメチルシリルエステルに、攪拌し、温度を制御しながら10分かけて加える。揮発性の生成物をすべて、13Paの真空中、室温にて除去する。1.21gのトリメチルクロロシランを加え、反応混合物を、70℃の油浴温度にて30分間加熱する。混合物に、13Paの真空中で分別蒸留を施し、沸点が63〜64℃である2.24gのトリメチルシリルメチル硫酸塩を得る。収率は、69.9%に相当する。
【化29】

【0082】
b)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩の合成
【化30】

0.91g(5.21mmol)の塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムおよび0.96g(5.21mmol)のトリメチルシリルメチル硫酸塩の混合物を、室温で12時間攪拌する。NMR測定値が、反応の完全性を示す。残留物を、1時間、13.3Paの真空中、60℃の油浴温度にて乾燥し、1.30gの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩を得る。収率はほぼ定量的である。
【化31】

【0083】
例14:
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムオクチル硫酸塩の合成
a)トリメチルシリルオクチル硫酸塩の合成
(CHSiOSOCl+C17OH→C17OSOOSi(CH+HCl↑
1.17g(8.98mmol)のオクタノールを、1.70g(9.01mmol)のクロロスルホン酸のトリメチルシリルエステルに加える。反応混合物を、室温で30分間攪拌し、その後揮発性の生成物をすべて、13Paの真空中、室温にて除去する。1.12gのトリメチルクロロシランを加え、反応混合物を、70℃の油浴温度にて30分間加熱する。混合物に、13Paの真空中で分別蒸留を施し、沸点が132℃である2.48gのトリメチルシリルオクチル硫酸塩を得る。収率は、57.2%に相当する。
【化32】

【0084】
b)1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムオクチル硫酸塩の合成
【化33】

0.358g(2.05mmol)の塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムおよび0.58g(2.06mmol)のトリメチルシリルオクチル硫酸塩の混合物を、室温で12時間攪拌する。NMR測定値が、反応の完全性を示す。残留物を、1時間、13.3Paの真空中、60℃の油浴温度にて乾燥し、0.71gの1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムオクチル硫酸塩を得る。収率はほぼ定量的である。
【化34】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化オニウムの、アルキル基が1〜14個のC原子を有することができる対称的に置換された硫酸ジアルキルとの、1つのアルキル基が4〜20個のC原子を有することができ、第2のアルキル基がメチルまたはエチルを示す非対称的に置換された硫酸ジアルキルとの、硫酸アルキルトリアルキルシリルとの、硫酸アルキルアシルとの、または硫酸アルキルスルホニルとの反応により、硫酸アルキルオニウムを調製する方法であって、硫酸ジアルキルとの反応を室温で行う、前記方法。
【請求項2】
アルキル基が1〜14個のC原子を有することができる対称的に置換された硫酸ジアルキルとの反応を、室温で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つのアルキル基が4〜20個のC原子を有することができ、第2のアルキル基がメチルまたはエチルを示す非対称的に置換された硫酸ジアルキルとの反応を、室温で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応を硫酸アルキルトリアルキルシリルと行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
反応を硫酸アルキルアシルと行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応を硫酸アルキルスルホニルと行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ハロゲン化物が、塩化もしくは臭化ホスホニウム、塩化もしくは臭化グアニジニウム、塩化、臭化もしくはヨウ化チオウロニウムまたは複素環式カチオンとの塩化物もしくは臭化物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ハロゲン化物が、式(1)
[PRHal (1)
式中、
Halは、ClまたはBrを示し、
Rは、各々の場合において互いに独立して、
H(ここですべての置換基Rは、同時にはHであってはならない)、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル
を示し、
ここで、1つまたは2つ以上のRは、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−NOにより部分的に置換されていてもよいが、ここで、4つすべて、または3つのRは、ハロゲンにより完全に置換されていてはならない、
に適合することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ハロゲン化物が、式(2)
[C(NR)(NR)(NR)] Hal (2)
式中、
Halは、ClまたはBrを示し、
〜Rは、各々、互いに独立して、
水素、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル
を示し、
ここで、置換基R〜Rの1つまたは2つ以上は、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−NOにより部分的に置換されていてもよいが、ここで、1個のN原子上のすべての置換基は、ハロゲンにより完全に置換されていてはならず、また
ここで、置換基R〜Rは、単結合または二重結合により互いに対になって結合していてもよい、
に適合することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ハロゲン化物が、式(3)
[(RN)−C(=SR)(NR)]Hal (3)
式中、
Halは、Cl、BrまたはIを示し、
〜Rは、各々、互いに独立して、
水素(ここで水素はRについては除外される)、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル
を示し、
ここで、置換基R〜Rの1つまたは2つ以上は、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−NOにより部分的に置換されていてもよいが、ここで、1個のN原子上のすべての置換基は、ハロゲンにより完全に置換されていてはならず、また
ここで、置換基R〜Rは、単結合または二重結合により互いに対になって結合していてもよい、
に適合することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ハロゲン化物が、式(4)
[HetN]Hal (4)
式中、
Halは、ClまたはBrを示し、
HetNは、
【化1】

【化2】

の群から選択される複素環式カチオンを示し、
ここで、置換基
1’〜R4’は、各々、互いに独立して、
水素もしくはCN、
1〜20個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルケニルまたは
アリール−C〜Cアルキル
を示し、
ここで、置換基R1’〜R4’の1つまたは2つ以上は、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、または−NOもしくはCNにより部分的に置換されていてもよいが、ここで、R1’およびR4’は、同時にはハロゲンにより完全に置換されていてはならない、
に適合することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
ハロゲン化物の、硫酸ジアルキル、硫酸アルキルトリアルキルシリル、硫酸アルキルアシルまたは硫酸アルキルスルホニルとの反応を、溶媒を用いずに行うことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
アルキル基が4〜20個のC原子を有する硫酸アルキルオニウムを調製するためのワンポット方法であって、ハロゲン化オニウムを、アルキル基が1〜3個のC原子を有することができる対称的に置換された硫酸ジアルキル、および4〜20個のC原子を有するアルコールと反応させることを特徴とする、前記方法。
【請求項14】
請求項1〜12または13のいずれかに記載の方法の、ハロゲン化オニウムにより汚染された硫酸アルキルオニウムの精製のための使用。
【請求項15】
トリアルキルシリル基のアルキル基が、各々の場合において互いに独立して1〜4個のC原子を有することができる、硫酸トリアルキルシリルオクチル。
【請求項16】
トリアルキルシリル基のアルキル基が同一であることを特徴とする、請求項15に記載の化合物。

【公表番号】特表2008−523119(P2008−523119A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545857(P2007−545857)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012399
【国際公開番号】WO2006/063654
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】