説明

低温同時焼成セラミック組成物及びこれを含む低温同時焼成セラミック基板並びにその製造方法

【課題】本発明は、低温同時焼成セラミック組成物及びこれを含む低温同時焼成セラミック基板並びにその製造方法に関する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る低温同時焼成セラミック組成物は、セラミック粉末20〜70重量部と、低温焼結用のガラス成分30〜80重量部とを含み、当該セラミック粉末は、板状セラミック粉末と球状セラミック粉末とを含み、当該板状セラミック粉末に対する当該球状セラミック粉末の含量比(球状セラミック粉末/板状セラミック粉末)が0〜1である。本発明に係る低温同時焼成セラミック組成物は、面方向(x−y方向)の収縮が抑制され、且つ優れた強度を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温同時焼成セラミック組成物及びこれを含む低温同時焼成セラミック基板並びにその製造方法に関し、より詳細には、面方向の収縮が抑制され、且つ優れた強度を有する低温同時焼成セラミック組成物及びこれを含む低温同時焼成セラミック基板並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガラス−セラミックを利用した低温同時焼成セラミック(Low Temperature Co−Fired Ceramic)基板は、3次元構造の層間回路の具現及びキャビティーの形成が可能であるため、優れた設計柔軟性を有している。
【0003】
近年、小型化且つ高機能化される高周波部品市場において、多層セラミック基板の活用度は、次第に高くなっている。特に、多層セラミック基板の構造が複合化且つ精密化されるにつれて、内部パターン及びビア構造の設計マージンが徐々に減少し、これにより、多層セラミック基板の横方向の収縮を抑制する無収縮焼成工程が求められている。
【0004】
このため、未焼結セラミック基板の一面又は両面に、セラミック基板材料の焼成温度では焼成されない難焼結性素材の可溶性グリーンシートを接合して、セラミック基板のx−y方向の収縮を抑制する方法が用いられている。
【0005】
しかしながら、セラミック基板が厚くなるほど、両面に接合された可溶性グリーンシートの拘束力が基板の中心にまで及ばなくなるため、厚い基板ではx−y方向の収縮抑制効果が減少する。
【0006】
複数のセラミックグリーンシート(ceramic green sheet)を積層して製造される多層セラミック基板では、各層間回路の電気的連結のために、多数のビアホールを形成し、その内部を導電性電極物質で充填している。この際、ビア電極は、導電性金属粉末と有機バインダーと溶媒とからなるため、焼成過程でその体積が収縮するようになる。さらに、導電性金属粉末は、セラミックに比べて体積の収縮が大きいため、焼成前にビアホールに導電性電極物質が100%満たされていたとしても、焼成収縮率の差によってビアホールとビア電極とが分離されて、ビアホール内部に巨大な気孔ができるようになる。特に、無収縮焼成では、未焼結セラミック積層体に対する収縮抑制用のグリーンシートの収縮抑制効果が低いため、主面方向に収縮するようになり、その分、厚さ方向の収縮は小さくなる。その結果、焼成後、ビア電極の高さがビアホールの高さより高くなって外部に突出すると共に、ビアホールの周りに気孔ができるようになる。
【0007】
このような焼成後にできるビアホールの周りの気孔を防止するために、グリーン状態のビアホールの体積を超える過度な量の導電性電極物質でビアホールを満たすと、積層過程又は加圧過程中にビアホールに充填されなかった導電性電極物質はビアホールの入口の周りに広がるようになり、これによって、基板の層間ショートが発生したり、層の剥離現象等の不良を引き起こして製品の歩留まりが下がったりする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、面方向(x−y方向)の収縮率が抑制され、且つ優れた強度を有する低温同時焼成セラミック組成物及びこれを含む低温同時焼成セラミック基板並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る低温同時焼成セラミック組成物は、セラミック粉末20〜70重量部と、低温焼結用のガラス成分30〜80重量部とを含み、当該セラミック粉末は、板状セラミック粉末と球状セラミック粉末のうち板状セラミック粉末を少なくとも含み、当該板状セラミック粉末に対する当該球状セラミック粉末の含量比(球状セラミック粉末/板状セラミック粉末)は0〜1である。
【0010】
上記板状セラミック粉末の幅は4〜15μm、厚さは0.2〜1μmであっても良く、当該板状セラミック粉末の幅に対する厚さの比(厚さ/幅)は0.01〜0.25であっても良い。
【0011】
上記球状セラミック粉末の平均粒径は、0.5〜5μmであっても良い。
【0012】
上記板状セラミック粉末又は球状セラミック粉末は、アルミナであっても良い。
【0013】
本発明の他の実施形態に係る低温同時焼成セラミック基板は、セラミック粉末20〜70重量部と、低温焼結用のガラス成分30〜80重量部とを含み、当該セラミック粉末は、板状セラミック粉末と球状セラミック粉末のうち板状セラミック粉末を少なくとも含み、当該板状セラミック粉末に対する当該球状セラミック粉末の含量比(球状セラミック粉末/板状セラミック粉末)が0〜1、下記式1で表示される板状セラミック粉末の平行配列度が0.4以上の第1のセラミックシートとを含む。
【0014】
[式1]
平行配列度=I006/(I006+I104
【0015】
上記式1において、I006及びI104は、それぞれ(006)方向及び(104)方向で測定した回折強度である。
【0016】
上記板状セラミック粉末の幅は4〜15μm、厚さは0.2〜1μmであっても良く、当該板状セラミック粉末の幅に対する厚さの比(厚さ/幅)は0.01〜0.25であっても良い。
【0017】
上記第1のセラミックシートの厚さは、5mm以上であっても良い。
【0018】
上記低温同時焼成セラミック基板は、上記第1のセラミックシートの一面及び他面の少なくとも一方に積層され、当該第1のセラミックシートと比較して上記板状セラミック粉末に対する上記球状セラミック粉末の含量比が異なる第2のセラミックシートを含むことができる。
【0019】
上記第2のセラミックシートは、上記第1のセラミックシートの低温焼結用のガラス成分と同一のものを含むことができる。
【0020】
本発明のさらに他の実施形態に係る低温同時焼成セラミック基板の製造方法は、セラミック粉末20〜70重量部と、低温焼結用のガラス成分30〜80重量部とを含み、当該セラミック粉末は、板状セラミック粉末と球状セラミック粉末のうち板状セラミック粉末を少なくとも含み、当該板状セラミック粉末に対する当該球状セラミック粉末の含量比(球状セラミック粉末/板状セラミック粉末)が0〜1のスラリーを製造する段階と、当該スラリーに剪断応力を与えて上記板状セラミック粉末の下記式1で表示される平行配列度が0.4以上となるようにセラミックグリーンシートを成形する段階と、上記低温焼結用のガラス成分を溶かして上記セラミックグリーンシートを焼成する段階とを含む。
【0021】
[式1]
平行配列度=I006/(I006+I104
【0022】
上記式1において、I006及びI104は、それぞれ(006)方向及び(104)方向で測定した回折強度である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、低温同時焼成セラミック組成物は、焼成過程で水平に配列された板状セラミック粉末の異方性収縮によって、面方向(x−y方向)の収縮が抑制される。これにより、厚さが5mm以上の低温同時焼成セラミック基板の製造が可能である。
【0024】
さらに、板状セラミック粉末と球状セラミック粉末との混合比率を調節することで、強度の低下もまた防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1a】本発明の一実施形態に係る低温同時焼成セラミック基板を示す概略斜視図である。
【図1b】図1aのI-I'線に沿って切り取った低温同時焼成セラミック基板を示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る板状セラミック粉末を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る低温同時焼成セラミック基板を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0027】
しかしながら、本発明の実施形態は、多様な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当業界において通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及びサイズなどは、より明確な説明のために誇張されることがある。なお、図面上において同一の符号で表示される要素は、同一の要素である。
【0028】
図1aは、本発明の一実施形態に係る低温同時焼成セラミック基板を示す概略斜視図であり、図1bは、図1aのI-I'線に沿って切り取った低温同時焼成セラミック基板を示す概略断面図である。
【0029】
図1a及び図1bを参照すると、本実施形態に係る低温同時焼成セラミック基板は、第1のセラミック層10からなるものであって、当該第1のセラミック層10は、板状セラミック粉末11と、球状セラミック粉末12と、低温焼結用のガラス成分とを含む。
【0030】
上記低温同時焼成セラミック基板は、上記低温焼結用のガラス成分の溶融によって焼結されたものであって、上記セラミック粉末は、溶解されることなく、板状セラミック粉末の形態及び球状セラミック粉末の形態を維持している。
【0031】
また、上記板状セラミック粉末は、下記式1で表示される平行配列度が0.4以上であって、水平に配列された板状セラミック粉末11の異方性収縮によって面方向(x−y方向)の収縮が抑制される。さらに、板状セラミック粉末11と球状セラミック粉末12との適宜な混合によって、低温同時焼成セラミック基板の強度は、優れた特性を有する。
【0032】
[式1]
平行配列度=I006/(I006+I104
【0033】
上記式において、I006及びI104は、それぞれ(006)方向及び(104)方向で測定した回折強度である。
【0034】
上記低温同時焼成セラミック基板は、本発明の一実施形態に係る低温同時焼成セラミック組成物を含むものであって、以下、本発明の一実施形態に係る低温同時焼成セラミック組成物についてより詳細に説明する。
【0035】
本発明の一実施形態に係る低温同時焼成セラミック組成物は、セラミック粉末20〜70重量部と、低温焼結用のガラス成分30〜80重量部とを含むものであって、当該低温焼結用のガラス成分によってセラミック粉末を緻密化する。
【0036】
上記セラミック粉末は、板状セラミック粉末11と球状セラミック粉末12とを含む。
【0037】
図2は、本発明の一実施形態に係る板状セラミック粉末11を示す概略斜視図である。
【0038】
上記板状セラミック粉末11は、低温同時焼成セラミック(Low Temperature Co−Fired Ceramic:LTCC)材料として用いられる一般的な物質であっても良く、板状に製造することが容易であり且つLTCC材料の低温焼結用のガラス成分との反応性が良いアルミナであっても良い。
【0039】
上記板状セラミック粉末11の横方向サイズである幅wは4〜15μm、縦方向サイズである厚さtは0.2〜1μmであっても良い。好ましくは、板状セラミック粉末の横方向サイズである幅wは8〜15μm、縦方向サイズである厚さtは0.2〜0.4μmであっても良い。
【0040】
上記板状セラミック粉末の幅に対する厚さの比(t/w)は、0.01〜0.25であっても良く、好ましくは0.01〜0.05であっても良い。
【0041】
上記板状セラミック粉末11は、低温同時焼成セラミック組成物を含むグリーンシート内で水平に配列されて、グリーンシートの厚さ方向(z方向)への収縮に比べて面方向(x−y方向)への収縮を抑制する役割をする。
【0042】
上記板状セラミック粉末の幅wが狭すぎたり厚さtが厚すぎると、グリーンシート内で板状セラミック粉末の水平配列が十分になされないため、焼成時に異方性収縮による面方向(x−y方向)への収縮が抑制されないことがあり、板状セラミック粉末の厚さtが薄すぎたり幅wが広すぎると、スラリー製造のための混合粉砕時に板状セラミック粉末が破壊される恐れがある。
【0043】
上記球状セラミック粉末12は、低温同時焼成セラミック(Low Temperature Co−Fired Ceramic:LTCC)材料として用いられる一般的な物質であっても良く、LTCC材料の低温焼結用のガラス成分との反応性が良いアルミナであっても良い。
【0044】
上記球状セラミック粉末12は、低温同時焼成セラミック基板の緻密度を高めることで、基板の強度を向上させることができる。
【0045】
上記球状セラミック粉末12の平均粒径は、0.5〜5μmであっても良い。
【0046】
上記板状セラミック粉末と球状セラミック粉末との混合比率は、低温同時焼成セラミック組成物の用途に応じて、適宜調節されることができる。これに制限されるものではなく、上記板状セラミック粉末に対する上記球状セラミック粉末の含量比(球状セラミック粉末/板状セラミック粉末)は、0〜1であっても良い。
【0047】
セラミック基板が大型化する場合、面方向の無収縮焼成を効果的に具現し、且つ耐湿性及び電気的特性を確保するために、球状セラミック粉末の含量は制限されることができ、この際の板状セラミック粉末に対する球状セラミック粉末の含量比は、0〜0.5であっても良い。
【0048】
本実施形態に係る低温同時焼成セラミック基板は、上記板状セラミック粉末11と、上記球状セラミック粉末12との混合比率を調節することで、面方向の収縮率及び強度を調節することができる。球状セラミック粉末12の含量が増加するほど、面方向(x−y方向)の収縮率並びに低温同時焼成セラミック基板の強度及び焼成密度が増加するようになる。
【0049】
本発明の一実施形態に係る低温同時焼成セラミック組成物は、板状セラミック粉末及び球状セラミック粉末が溶解されることなく、低温焼結用のガラス成分の溶融によって焼成されるものであって、当該低温焼結用のガラス成分は、特に制限されるものではなく、通常低温同時焼成セラミック材料に用いられるものを用いることができる。
【0050】
例えば、高温で流動性の良いボロシリケイト系ガラス(SiO−B−RO:Rは、Li、Na、K等のアルカリ金属)を用いることができ、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0051】
上記低温焼結用のガラス成分の含量は、30〜80重量部であっても良い。当該含量が、30重量部未満であると、低温で焼成が十分になされないことがあり、80重量部を超過すると、面方向の収縮抑制効果及び強度が低下する恐れがある。
【0052】
従来は、低温同時焼成セラミック基板の面方向の収縮を抑制するために、グリーンシートの上面及び下面に拘束層を積層したり、圧力などを加えて焼成したりした。しかしながら、セラミック基板が厚くなるにつれて、外部拘束層による拘束力がセラミック基板の中心部まで及ばなくなるため、厚い基板の中心に行くほど、無収縮焼成を具現できないという問題があった。
【0053】
これに反し、本発明によると、低温同時焼成セラミック組成物内の成分自体によって面方向の収縮が抑制されることによって、大面積の低温同時焼成セラミック基板及び厚さの増加したセラミック基板を製造することができる。
【0054】
このことから、本発明の一実施形態に係る低温同時焼成セラミック基板の厚さは、5mm以上であっても良いが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0055】
さらに、低温同時焼成セラミック組成物の構成成分間の均一な配列が可能であるため、不均一な焼結によって基板の強度が低下することを防止することができる。
【0056】
本発明の一実施形態に係る低温同時焼成セラミック基板は、上記低温同時焼成セラミック組成物を含むものであって、下記のような方法で製造されることができる。
【0057】
本発明の一実施形態に係る低温同時焼成セラミック組成物に、結合剤、溶媒、分散剤などを混合して、グリーンシートを形成するためのスラリーを製造することができる。
【0058】
上記スラリーは、PETフィルム等の成形フィルムの上のブレードによって、シート状に成形されることができる。上記スラリーをシート状に成形するためにブレードに通過させると、ブレードとPETフィルムとの間で発生する剪断応力などによって、スラリーに含まれた板状セラミック粉末が水平に配列され、当該水平に配列された板状セラミック粉末間に、球状セラミック粉末及び焼結調剤用のガラス成分が位置するようになる。
【0059】
上記板状セラミック粉末は、下記式1で表示される平行配列度が0.4以上となるように形成されることができる。
【0060】
[式1]
平行配列度=I006/(I006+I104
【0061】
上記式1において、I006及びI104は、それぞれ(006)方向及び(104)方向で測定した回折強度である。
【0062】
上記板状セラミック粉末の平行配列度は、Cu−KαX線回折で測定した(006)方向及び(104)方向の回折強度の比である。
【0063】
上記低温同時焼成セラミック組成物中の板状セラミック粉末のグリーンシート内における平行配列度を高めるためには、成形条件を調節すべきである。
【0064】
例えば、セラミックグリーンシートの成形厚さが50μm以上の際、成形速度が1分当たり5m以上となるように、スラリー組成及び粘度を制御すべきである。板状セラミック粉末の平行配列度が高いほど、x−y方向の収縮抑制効果がある。
【0065】
上記グリーンシートに、ビアホール及び電極パターンを印刷し、脱バインダー及び焼成を行うことで、セラミック基板を製造することができる。上記焼成は、セラミック粉末は溶解されず、上記低温焼結用のガラス成分が溶ける温度で行われることができる。上記焼成温度は、低温焼結用のガラス成分に応じて適宜調節されることができ、900℃以下の低温で行われることができる。
【0066】
上記焼成過程で、ガラス成分が流動しながらセラミック粉末間の接触を起こし、セラミック粉末間の移動が発生しながら収縮が起こる。この際、板状セラミック粉末の水平配列によって、板状セラミック粉末の水平方向への移動が制約を受けるようになって、水平方向の収縮率が抑制される。
【0067】
図3は、本発明の他の実施形態に係る低温同時焼成セラミック基板を示す概略断面図である。
【0068】
本実施形態に係る低温同時焼成セラミック基板は、図1aに示される第1のセラミックシート10と、当該第1のセラミックシートの一面及び他面の少なくとも一方に第2のセラミックシート20が積層された形態で理解されることができる。
【0069】
上記第1のセラミックシート10は、上述した通りであり、上記第2のセラミックシート20は、上記第1のセラミックシートと比較して上記板状セラミック粉末に対する上記球状セラミック粉末の含量比が異なる低温同時焼成セラミックシートであっても良い。
【0070】
この際、上記第2のセラミックシート20に含まれる低温焼結用のガラス成分は、第1のセラミックシートのガラス成分と同一の組成を用いることができる。これによって、第1のセラミックシート10と第2のセラミックシート20との接合界面での異常反応を防止し、異種シートの接合による物理的又は化学的特性低下を防止することができる。
【0071】
以下、実施例及び比較例を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これは、発明の具体的な理解のためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0072】
下記表1に示すように、板状充填剤、球状充填剤及びガラス成分の含量を調節して、低温同時焼成用のセラミック組成物を製造した。また、セラミック組成物のスラリーの成形条件を調節して、グリーンシート内の板状セラミック粉末の平行配列度を異ならせた。このことから、100mm×100mm×1.0mmサイズ及び100mm×100mm×5mmサイズの低温同時焼成セラミック基板をそれぞれ製造し、焼成特性を測定した。この際、セラミック多層基板には、収縮率測定用及び形状観察用のビアホールを内装させた。
【0073】
【表1】

【0074】
上記表1の比較例2は、低温同時焼成用のセラミック組成物の充填剤として球状セラミック粉末のみを用いたものであって、 z方向の収縮率/x−y方向の収縮率で計算される収縮異方性比が2.0に過ぎず、厚さ5mmの基板の無収縮焼成時のx−y収縮率が1.34で無収縮が具現されていない。
【0075】
実施例1及び2と比較例1とは、ガラス成分の含量を固定し、充填剤として板状セラミック粉末と球状セラミック粉末との混合比を異ならせたものである。球状セラミック粉末の含量が増加するほど、板状セラミック粉末の平行配列度は減少し、その結果、厚さ1mmの基板のx−y収縮率も増加して、収縮異方性比が減少することが分かる。収縮異方性比が減少するにつれて、厚さ5mmの基板の無収縮焼成時のx−y収縮率が増加するようになり、板状セラミック粉末の平行配列度が0.3の比較例1では、無収縮基板のx−y収縮率が0.65であって、通常の無収縮焼成の最大許容収縮率を超過し、それによりビアホールの形状もまた悪化した。
【0076】
実施例3は、セラミック粉末の含量比が比較例1と同一であるが、スラリー組成及び成形条件を調節して、板状セラミック粉末の平行配列度を0.3から0.41に増加させたものである。同一のセラミック粉末の組成において、スラリー組成及び成形条件の調節によって、グリーンシート内の板状セラミック粉末の平行配列度のみを増加させることで、1mmの基板のx−y収縮率が減少し、5mmの基板の無収縮焼成時のx−y収縮率が0.37に減少して、無収縮が具現されることが分かる。
【0077】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されることなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。従って、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲内に属すると言えるはずである。
【符号の説明】
【0078】
10 第1のセラミックシート
11 板状セラミック粉末
12 球状セラミック粉末
20 第2のセラミックシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック粉末20〜70重量部と、低温焼結用のガラス成分30〜80重量部とを含み、
当該セラミック粉末は、板状セラミック粉末と球状セラミック粉末のうち板状セラミック粉末を少なくとも含み、当該板状セラミック粉末に対する当該球状セラミック粉末の含量比が0〜1である、低温同時焼成セラミック組成物。
【請求項2】
前記板状セラミック粉末の幅は4〜15μm、厚さは0.2〜1μmである、請求項1に記載の低温同時焼成セラミック組成物。
【請求項3】
前記板状セラミック粉末の幅に対する厚さの比は、0.01〜0.25である、請求項1に記載の低温同時焼成セラミック組成物。
【請求項4】
前記球状セラミック粉末の平均粒径は、0.5〜5μmである、請求項1に記載の低温同時焼成セラミック組成物。
【請求項5】
前記板状セラミック粉末又は球状セラミック粉末は、アルミナである、請求項1に記載の低温同時焼成セラミック組成物。
【請求項6】
セラミック粉末20〜70重量部と、低温焼結用のガラス成分30〜80重量部とを含み、
当該セラミック粉末は、板状セラミック粉末と球状セラミック粉末のうち板状セラミック粉末を少なくとも含み、当該板状セラミック粉末に対する当該球状セラミック粉末の含量比が0〜1、下記式1で表示される板状セラミック粉末の平行配列度が0.4以上の第1のセラミックシートとを含む、低温同時焼成セラミック基板。
[式1]
平行配列度=I006/(I006+I104
前記式1において、I006及びI104は、それぞれ(006)方向及び(104)方向で測定した回折強度である。
【請求項7】
前記板状セラミック粉末の幅は4〜15μm、厚さは0.2〜1μmである、請求項6に記載の低温同時焼成セラミック基板。
【請求項8】
前記板状セラミック粉末の幅に対する厚さの比は、0.01〜0.25である、請求項6に記載の低温同時焼成セラミック基板。
【請求項9】
前記第1のセラミックシートの厚さは、5mm以上である、請求項6に記載の低温同時焼成セラミック基板。
【請求項10】
前記第1のセラミックシートの一面及び他面の少なくとも一方に積層され、当該第1のセラミックシートと比較して当該板状セラミック粉末に対する当該球状セラミック粉末の含量比が異なる第2のセラミックシートを含む、請求項6に記載の低温同時焼成セラミック基板。
【請求項11】
前記第2のセラミックシートは、前記第1のセラミックシートの低温焼結用のガラス成分と同一のものを含む、請求項10に記載の低温同時焼成セラミック基板。
【請求項12】
セラミック粉末20〜70重量部と、低温焼結用のガラス成分30〜80重量部とを含み、当該セラミック粉末は、板状セラミック粉末と球状セラミック粉末のうち板状セラミック粉末を少なくとも含み、当該板状セラミック粉末に対する当該球状セラミック粉末の含量比が0〜1のスラリーを製造する段階と、
当該スラリーに剪断応力を与えて、前記板状セラミック粉末の下記式1で表示される平行配列度が0.4以上となるように、セラミックグリーンシートを成形する段階と、
前記低温焼結用のガラス成分を溶かして、前記セラミックグリーンシートを焼成する段階と、
を含む、低温同時焼成セラミック基板の製造方法。
[式1]
平行配列度=I006/(I006+I104
前記式1において、I006及びI104は、それぞれ(006)方向及び(104)方向で測定した回折強度である。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−31040(P2012−31040A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282882(P2010−282882)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】