説明

作業時刻表示機能付き工作機械

【課題】 自動運転中にメンテナンス作業のために工作機械に訪れるべき時刻の管理が行えて、作業者が別の業務に専念できる作業時刻表示機能付き工作機械を提供する。
【解決手段】 制御装置2による工作機械本体1の自動運転中に作業者による複数種類のメンテナンス作業が必要となる工作機械に適用される。設定規則に基づきメンテナンス作業必要予告時刻を、前記複数種類のうちの各メンテナンス作業種類毎に演算する予告時刻演算手段13と、演算された各メンテナンス作業必要予告時刻を画面表示装置25の画面25aに並べて複数表示する表示出力手段14とを備える。メンテナンス作業必要予告時刻として、少なくとも生産数完了時刻、ツール交換発生時刻、品質チェック時刻を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤やその他の自動運転される工作機械であって、作業時刻表示機能を設けた作業時刻表示機能付き工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転される工作機械においても、メンテナンス作業として、生産予定の完了に伴う作業や、工具摩耗等による工具交換の作業が必要な場合が多い。また、設定個数毎に品質チェックをする場合等は、メンテナンス作業として品質チェックが必要となる。
従来、これらのメンテナンス作業を作業者に促す一般的な手段として、トータルカウンタや、ツールカウンタ、品質チェックカウンタ等がある。これらのカウンタは、機械停止させるためのアラームや警告を表示するものである。
【0003】
また、従来、工具寿命を予測し、表示装置の画面に表示するもの(例えば特許文献1)や、加工プログラムの運転予想時刻を演算し、工作機械に対する定期点検等の作業予定時刻を報知するもの(例えば特許文献2)が提案されている。また、複数台の工場機械の稼働率や停止原因等の作業情報を1台のコンピュータで集中管理し、表示するものも提案されている(例えば特許文献3)。
【特許文献1】特開平10−263988号公報
【特許文献2】特開平5−19829号公報
【特許文献3】特開平5−345262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の一般的に設けられているトータルカウンタ、ツールカウンタ、品質チェックカウンタ等は、機械停止させるためのアラームや警告を表示するためのものでしかなく、作業者はアラームや警告が確認できる範囲の場所にいなければならない。そのため、例えば、工場内の10〜20台の自動運転される工作機械を1〜2人で管理する場合、人手が足りなくて対応に遅れが生じ、稼働率の低下を招く。
【0005】
特許文献1の工具寿命を予測して表示するものや、特許文献2の作業予定時刻を報知するものは、その表示や報知によって、後の工具交換等のメンテナンス作業の予定をしておくことができる。しかし、これら特許文献1や特許文献2のものは、いずれも、工具寿命に関する表示、あるいは切粉排出のための機械停止等の一つのメンテナンス作業についての表示を行うのみであり、工作機械における他の種々のメンテナンス作業については、何時必要であるかがわからない。そのため、上記のように工場内の多数の工作機械を少人数で管理する場合に、個々の工作機械に訪れることが必要な時刻が分からず、メンテナンス作業の必要発生に迅速な対応を行って稼働率を維持するためには、管理の人員削減が難しい。特許文献3の作業表示装置は、ネットワーク上で集中管理するものであるが、単に稼働率や停止原因等の情報を分析するための手段でしかなく、工場内の多数設置された工作機械のメンテナンス作業の効率化を図るものではない。
【0006】
この発明の目的は、自動運転中にメンテナンス作業のために工作機械に訪れるべき時刻の管理が行え、作業者が別の業務に専念できる作業時刻表示機能付き工作機械を提供することである。
この発明の他の目的は、工作機械のメンテナンス作業として一般的に必要となる生産数完了時刻、ツール交換発生時刻、品質チェック時刻が全て簡単に分かるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、作業者が複数の工作機械の管理を掛け持ちしている場合に、メンテナンス巡回スケジュール管理が容易となる工作機械工場システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の作業時刻表示機能付き工作機械(A)は、制御装置(2)による自動運転中に作業者による複数種類のメンテナンス作業が必要となる工作機械(A)であって、設定規則に基づきメンテナンス作業必要予告時刻を、前記複数種類のうちの各メンテナンス作業種類毎に演算する予告時刻演算手段(13)と、演算された各メンテナンス作業のメンテナンス作業必要予告時刻を画面表示装置(25)の画面(25a)に複数並べて表示する表示出力手段とを備える。
この構成によると、自動運転中に必要な複数種類のメンテナンス作業につき、メンテナンス作業必要予告時刻が1つの画面(25a)に並べて表示される。そのため、工作機械(A)に訪れる時刻の管理が行え、作業者が別の業務に専念することができる。
例えば、作業者は、表示されたメンテナンス作業必要予告時刻を目で確認し、何台もの工作機械(A)を掛け持ちして工作機械(A)を作業する。この場合に、表示された時刻までは、突発的な問題が発生しない限り工作機械(A)へ戻る必要は無く、工作機械(A)から離れていても、確認した時刻にさえ工作機械(A)に戻れば良いため、無人化、および作業計画が可能になる。
【0008】
前記予告時刻演算手段(13)で演算するメンテナンス作業必要予告時刻として、少なくとも、生産数完了時刻、ツール交換発生時刻、品質チェック時刻を含むようにしても良い。
旋盤等の自動運転される工作機械(A)では、主なメンテナンス作業は、一般的に、生産数完了に伴う作業、ツール交換の作業、および品質チェックの作業である。したがって、生産数完了時刻、ツール交換発生時刻、および品質チェック時刻を表示することで、作業者が必要となる大部分のメンテナンス作業が表示されることになって、工作機械(A)に訪れる時刻の管理を、より正確に行うことができる。
【0009】
この発明の工作機械工場システムは、この発明の作業時刻表示機能付き工作機械(A)を複数設置したものである。
複数設置される各工作機械(A)がこの発明の作業時刻表示機能付き工作機械(A)であると、作業者が複数の工作機械の管理を掛け持ちしている場合であっても、メンテナンス巡回スケジュール管理を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明の作業時刻表示機能付き工作機械は、制御装置による自動運転中に作業者による複数種類のメンテナンス作業が必要となる工作機械であって、設定規則に基づきメンテナンス作業必要予告時刻を、前記複数種類のうちの各メンテナンス作業種類毎に演算する予告時刻演算手段と、演算された各メンテナンス作業のメンテナンス作業必要予告時刻を画面表示装置の画面に複数並べて表示する表示出力手段とを備えたものであるため、自動運転中にメンテナンス作業のために工作機械に訪れるべき時刻の管理が行え、作業者が別の業務に専念することができる。
前記予告演算手段で演算するメンテナンス作業必要予告時刻として、少なくとも、生産数完了時刻、ツール交換発生時刻、品質チェック時刻を含む場合は、工作機械のメンテナンス作業として一般的に必要となる生産数完了時刻、ツール交換発生時刻、品質チェック時刻が、全て簡単に分かり、工作機械に訪れる時刻の管理を、より正確に行うことができる。
【0011】
この発明の工作機械工場システムは、この発明の作業時刻表示機能付き工作機械を複数設置したものであるため、作業者が複数の工作機械の管理を掛け持ちしている場合に、メンテナンス巡回スケジュール管理を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施形態を図面と共に説明する。この作業時刻表示機能付き工作機械Aは、工作機械本体1と、この工作機械本体1を制御する制御装置2とを備える。制御装置2の一部として、または制御装置2とは独立して、制御装置2や工作機械本体1に対する操作を行う操作盤3が設けられている。工作機械本体1は、工作機械の全体を機械部分と制御系とに分けたうちの機械部分を言う。工作機械本体1は、さらに、加工を行う工作機械加工手段部(図示せず)と、この工作機械加工手段部に対してワークの搬入搬出を行うローダ部(図示せず)とに区分される。工作機械本体1は、例えば旋盤であり、ベッド4上に主軸5を支持する主軸台と、工具7が装着された刃物台6とを備える。刃物台6は、例えばタレットからなり、それぞれ工具7を装着する工具ステーションSが外周の複数箇所に設けられている。
【0013】
制御装置2は、工作機械本体1を自動運転するものであり、コンピュータ式の数値制御部8と、スケジュール管理部9とを備える。スケジュール管理部9は、数値制御部8の上位制御手段となるものであり、数値制御部8に実行させるスケジュールが設定される。このスケジュールは、加工プログラムまたはそのプログラムナンバーと、各加工プログラム毎の実行回数である生産個数とを設定したものである。スケジュール管理部9は、数値制御部8と同じコンピュータ上に構成されたものであっも、また別のコンピュータに構成されたものであっても良い。スケジュール管理部9は、例えば、工作機械本体1のうちのローダ部を制御するコンピュータに設けられる。
【0014】
数値制御部8は、数値制御装置およびプログラマブルコントローラにより構成される。数値制御部8は、加工プログラム10に記憶された加工プログラムを演算制御部11により解読して実行し、工作機械本体1を制御する。演算制御部11で解読された加工プログラムのうちのシーケンス制御命令は、プログラマブルコントローラに転送されて実行される。プログラマブルコントローラの一部として、次のメンテナンス作業予告処理手段12が構成される。
【0015】
メンテナンス作業予告処理手段12は、設定規則に基づきメンテナンス作業必要予告時刻を、複数種類のメンテナンス作業のうちの各メンテナンス作業種類毎に演算する予告時刻演算手段13と、演算された各メンテナンス作業のメンテナンス作業必要予告時刻を画面表示装置25の画面25aに複数並べて表示する表示出力手段14とを備える。
【0016】
画面表示装置25は、画面25a上に文字やイメージ情報を表示可能な装置であり、例えば操作盤3に設けられた液晶ディスプレイ等からなる。操作盤3は、画面表示装置25と、キーボードまたはその他の入力手段26で構成される。入力手段26は、画面表示装置25に設けられたタッチパネルであっても良い。
【0017】
予告時刻演算手段13は、メンテナンス作業必要予告時刻として、設定規則に基づき、それぞれ生産数完了時刻、ツール交換発生時刻、および品質チェック時刻を演算する生産数完了時刻演算部15、ツール交換発生時刻演算部16、品質チェック時刻演算部17を有している。予告時刻演算手段13は、この他のメンテナンス作業についてのメンテナンス作業必要予告時刻を演算する手段を有しているが、これについては説明を省略する。
【0018】
生産数完了時刻演算部15は、トータルカウンタ値設定部20に設定されたワークWの生産数であるトータルカウンタ設定値と、トータルカウンタ21のカウント値との差に、ワークWの1個の生産(つまり加工)に要するサイクルタイムを乗じた値に、現在時刻を加えた時刻を、生産数完了時刻として演算する。すなわち、
(生産数完了時刻)=〔(トータルカウンタ設定値)−(トータルカウンタ値)〕×(サイクルタイム)+(現在時刻)
とする。この演算式が、上記設定規則となる。
トータルカウンタ21は、所定の基準時刻、例えば1日の生産開始時から、工作機械本体1がワークWを1個加工する毎に1つカウントする手段である。
トータルカウンタ値設定部20は、予定の生産個数を設定する手段であり、例えば、スケジュール管理部9のスケジュールから自動設定し、または手入力等で設定する。
サイクルタイムは、設定手段(図示せず)に設定した値を用いても良いが、この実施形態では、連続運転中のサイクルタイムを自動算出するサイクルタイム自動計算手段19を有していて、この手段19で計算されたサイクルタイムを、生産数完了時刻演算部15での計算に用いる。
タイマ18は、現在時刻を表示する手段であり、このタイマ18の値を現在時刻として用いる。他の演算部16,17においても同様である。
【0019】
ツール交換発生時刻演算部16は、ツールカウンタ22の残寿命値とサイクルタイムとを乗じた値に、現在時刻を加えた時刻をツール交換発生時刻として演算する。すなわち、 (ツール交換発生時刻)=(ツールカウンタ残寿命値)×(サイクルタイム)+(現在時刻)
とする。この演算式が、上記設定規則となる。
ツールカウンタ残寿命値には、ツールカウンタ22の値を用いる。ツールカウンタ22は、工作機械本体1の工具7毎に、設定された寿命時間から使用した時間を減算し、残寿命値として出力する手段である。
ツール交換発生時刻演算部16において、ツール交換発生時刻は、全ての工具7につき出力するようにしても良く、また最もツール交換発生時刻が現在に近い工具7についてのツール交換発生時刻を出力するものとしても良い。
ツール交換発生時刻演算部16において、サイクルタイムは、生産数完了時刻演算部15と同様に、設定手段(図示せず)に設定した値またはサイクルタイム自動計算手段19で演算された値を用いる。
【0020】
品質チェック時刻演算部17は、品質チェックカウンタ設定部23に設定された品質チェックカウンタ設定値から、品質チェックカウンタ24より得られる品質チェックカウンタ値を減算し、この減算結果にサイクルタイムを乗じた値に現在時刻を加算した値を、品質チェック時刻として演算する。すなわち、
(品質チェック時刻)=〔(品質チェックカウンタ設定値)−(品質チェックカウンタ値)〕×(サイクルタイム)+(現在時刻)
とする。この演算式が、上記設定規則となる。
品質チェック時刻演算部17においても、設定手段(図示せず)に設定した値またはサイクルタイム自動計算手段19で演算された値を用いる。
【0021】
表示出力手段14は、このように生産数完了時刻演算部15、ツール交換発生時刻演算部16、品質チェック時刻演算部17でそれぞれ計算された時刻を、同図に画面表示装置25の画面例を示すように、一つの画面25a上に並べて表示する手段である。
【0022】
図2は、工作機械工場システムを概念的に示す平面図である。上記実施形態に係る作業時刻表示機能付き工作機械Aは、同図に示すように複数台が並設され、工作機械工場システムを構成する。なお、これら複数台の作業時刻表示機能付き工作機械Aは、互いに同じ構成のものであっても、それぞれ異なる構成のものであっても良い。
【0023】
この構成の作業時刻表示機能付き工作機械Aによると、自動運転中に必要な複数種類のメンテナンス作業につき、メンテナンス作業必要予告時刻として、生産数完了時刻、ツール交換発生時刻、および品質チェック時刻が、画面表示装置25の1つの画面25aに並べて表示される。そのため、工作機械Aに訪れる時刻の管理が行え、作業者が別の業務に専念することができる。
旋盤等の自動運転される工作機械では、主なメンテナンス作業は、一般的に、生産数完了に伴う作業、ツール交換の作業、および品質チェックの作業である。したがって、生産数完了時刻、ツール交換発生時刻、および品質チェック時刻を表示することで、作業者が必要となる大部分のメンテナンス作業が表示されることになって、工作機械に訪れる時刻の管理を、より正確に行うことができる。
【0024】
例えば、作業者は、表示されたメンテナンス作業必要予告時刻を目で確認し、何台もの工作機械Aを掛け持ちする機械を作業する。この場合に、表示された時刻までは、突発的な問題が発生しない限り機械へ戻る必要は無く、機械から離れていても、確認した時刻にさえ機械Aに戻れば良いため、無人化、および作業計画が可能になる。
【0025】
なお、上記実施形態では、個々の工作機械Aの持つ操作盤3の画面表示装置25に、その工作機械Aについてのメンテナンス作業必要予告時刻を表示するようにしたが、この個々の工作機械Aの持つ画面表示装置25による表示と共に、または個々の工作機械Aの持つ画面表示装置25では表示することなく、別の工作機械Aの画面表示装置25、または工作機械本体1とは離れて設けられた画面表示装置25にメンテナンス作業必要予告時刻を表示するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施形態に係る作業時刻表示機能付き工作機械の概念構成を示すブロック図である。
【図2】その工作機械を並設した工作機械工場システムの概念構成のレイアウト図である。
【符号の説明】
【0027】
1…工作機械本体
2…制御装置
3…操作盤
8…数値制御部
9…スケジュール管理部
12…メンテナンス作業予告処理手段
13…予告時刻演算手段
14…表示出力手段
15…生産数完了時刻演算部
16…ツール交換発生時刻演算部
17…品質チェック時刻演算部
18…タイマ
19…サイクルタイム自動計算手段
20…トータルカウンタ値設定部
21…トータルカウンタ
22…ツールカウンタ
23…品質チェックカウンタ設定部
24…品質チェックカウンタ
25…画面表示装置
25a…画面
A…作業時刻表示機能付き工作機械

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置による工作機械本体の自動運転中に作業者による複数種類のメンテナンス作業が必要となる工作機械であって、設定規則に基づきメンテナンス作業必要予告時刻を、前記複数種類のうちの各メンテナンス作業種類毎に演算する予告時刻演算手段と、演算された各メンテナンス作業のメンテナンス作業必要予告時刻を画面表示装置の画面に複数並べて表示する表示出力手段とを備えた作業時刻表示機能付き工作機械。
【請求項2】
前記予告時刻演算手段で演算するメンテナンス作業必要予告時刻として、少なくとも、生産数完了時刻、ツール交換発生時刻、品質チェック時刻を含む請求項1記載の作業時刻表示機能付き工作機械。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の作業時刻表示機能付き工作機械を複数設置した工作機械工場システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−47021(P2008−47021A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−223973(P2006−223973)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】