説明

作業機の操作レバー装置

【課題】疲れの少ない容易な操作で、且つ誤作動の無い作業を実現し得るようにした作業機の操作レバー装置を提供する。
【解決手段】グリップ21を上部グリップ22と下部グリップ23からなる上下二段構造とし、下部グリップ23の回動操作によって回動操作検出信号が出力される一方、上部グリップ22と下部グリップ23の間に回動方向への所定の遊びをもたせ、上部グリップ22が遊び範囲を越えて回動されたとき上部グリップ22によって下部グリップ23が回動され回動操作検出信号が出力されるように構成する。係る構成によれば、誤って回動操作検出信号が出力されることが未然に防止され操作の信頼性が確保されとともに、操作途中でスイッチ手段24の押し込み操作の不用意な解除に伴う作業機の誤作動が未然に回避され信頼性の高い作業が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、高所作業車等の作業機に設けられる三軸ジョイスティックを用いた操作レバー装置であって、特にグリップにスイッチ手段が備えられた操作レバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業機の操作系においては、操作上の安全対策として、オペレータによる操作レバーの操作が、操作の意思をもって行われたものであること、換言すれば、誤操作ではないことを確認する手段として、オペレータにより操作されるイネーブルスイッチが備えられるが、このイネーブルスイッチは、操作レバーの操作の前段階として操作されるものであることから、その操作性を考慮して、操作レバーに設けられることが多い。
【0003】
このような操作レバー装置を備えた作業機としては、例えば、図9に示すような高所作業車Zが知られている。また、操作レバーにイネーブルスイッチを備えた作業機の操作レバー装置としては、特許文献1に示されるようなものが知られている。
【0004】
ところで、上記高所作業車Zは、図9に示すように、車体2の前後に車輪3及びアウトリガ4を備えた走行可能な車両1の上記車体2上に搭載された旋回台5に、伸縮ブーム7の基端部を起伏動可能に連結し、該伸縮ブーム7を、伸縮シリンダ9によって伸縮駆動させるとともに、起伏シリンダ8によって起伏駆動させ、さらに上記旋回台5と一体的に旋回駆動装置6によって旋回駆動させ得るようにしている。
【0005】
また、上記伸縮ブーム7の先端部には、該伸縮ブーム7の起伏動に拘らずその姿勢を常時一定に維持する姿勢維持部材10を介して作業台12が取付けられており、該作業台12は首振駆動装置11によって首振駆動される。
【0006】
さらに、上記高所作業車Zの上記作業台12には、上記旋回駆動装置6、起伏シリンダ8、伸縮シリンダ9、首振駆動装置11及びその他の機器を駆動操作するための上記操作レバー装置Xが備えられている。ここで、上記操作レバー装置Xの構成を簡単に説明する。
【0007】
上記操作レバー装置Xは、図10に示すように、ジョイスティック形の操作レバーで構成され、支持機構及び傾動・回動検出機構を含む基台101と、該基台101から上方へ突出して傾動可能に取付けられた操作ロッド102と、該操作ロッド102の先端部に回動可能に取付けられたグリップ103を有して構成される。上記操作ロッド102は、上記基台101内に取付けられたピポット軸受けによって前後方向(矢印A−B方向)及び左右方向(矢印C−D方向)へ傾動可能に保持されており、上記操作ロッド102の前後方向及び左右方向の各傾動角度は、上記基台101に取付けられた第1ポテンショメータ106及び第2ポテンショメータ107によって検出され、各傾動角度に応じた検出信号が出力されるようになっている。
【0008】
また、上記操作ロッド102は、上記基台101内に設けられた付勢バネ(図示省略)によって該操作ロッド102の傾動変位が元に戻る方向に付勢されており、傾動状態にある上記操作ロッド102からオペレータの手が離れてその規制作用が解除されると、中立位置へ自動的に復帰するように構成されている。
【0009】
なお、上記伸縮ブーム7は、上記第1ポテンショメータ106の検出信号に応じて制御手段から出力される制御信号によって起伏駆動され、上記第2ポテンショメータ107の検出信号に応じて制御手段から出力される制御信号によって伸縮駆動される。
【0010】
一方、上記グリップ103は、同軸上に配置された上部グリップ104と下部グリップ105からなる上下二段構造とされている。上記下部グリップ105は、上記操作ロッド102の中心軸線と同軸線上に配置され、上記操作ロッド102に対して矢印F−G方向)へ回動自在に取付けられている。また、上記下部グリップ105には、該下部グリップ105の回動角度を検出して該回動角度に応じた検出信号を出力する第3ポテンショメータ108が取付けられており、該第3ポテンショメータ108の検出信号に応じて制御手段から出力される制御信号によって上記伸縮ブーム7が旋回駆動されるようになっている。
【0011】
また、上記上部グリップ104には、上記イネーブルスイッチ114が設けられている。このイネーブルスイッチ114は、本体部115と該本体部115に突出入可能に取付けられたスイッチ操作部116を備えて構成され、上記上部グリップ104の側部に径方向外方へ突出した状態で設けられている。上記スイッチ操作部116は、図示しない付勢バネによって上記本体部115からから突出する方向へ付勢されており、該スイッチ操作部116が矢印E方向へ押圧されて上記本体部115側へ移動すると、該本体部115からON信号を出力するように構成されている。
【0012】
このイネーブルスイッチ114は、上記スイッチ操作部116を押込みながら上記下部グリップ105が回動操作されることで、制御手段が上記第2ポテンショメータ107の検出信号を有効と判断して、該検出信号に応じて上記伸縮ブーム7を旋回動させるように構成されている。
【0013】
なお、このようなイネーブルスイッチ114の機能は、上記操作ロッド102の傾動操作に基づく上記伸縮ブーム7の起伏動及び伸縮動においても同様である。
【0014】
また、上記上部グリップ104と下部グリップ105には、これらの回動範囲を規制するとともに、回動されたこれらを元の中立位置に自動復帰させる上部リターン機構111及び下部リターン機構112が設けられている。
【0015】
ここで、上記操作レバー装置Xの操作方法を簡単に説明する。
【0016】
高所作業車Zを用いた作業は、上記作業台12に搭乗したオペレータが、該作業台12に備えられた上記操作レバー装置Xを適宜操作することで行われる。この場合、上記操作レバー装置Xは、上記作業台12の上記首振駆動装置11寄りの端部に配置されており、従って、上記作業台12に搭乗して上記操作レバー装置Xを操作するオペレータにとっては、上記作業台12から上記首振駆動装置11へ指向する方向が「正面」とされ、オペレータは正面に向かって立った状態で上記操作レバー装置Xを操作するのが基本とされる。
【0017】
そして、上記操作レバー装置Xの操作は、図10に鎖線図示するように、上記グリップ103の上記上部グリップ104上に掌123を載せた状態で、親指122以外の指121で上記上部グリップ104を掴み、且つ親指122以外の指121の何れかで上記イネーブルスイッチ114を押込みながら上記操作ロッド102を傾動操作するとか、親指122以外の指121の何れかで上記イネーブルスイッチ114を押込みながら親指122で上記下部グリップ105を回動操作するとか、親指122以外の指121の何れかで上記イネーブルスイッチ114を押込みながら上記操作ロッド102の傾動操作と親指122による上記下部グリップ105の回動操作を同時に行うことで、上記伸縮ブーム7の起伏及び伸縮動作、上記伸縮ブーム7の旋回動作、あるいは上記伸縮ブーム7の起伏及び伸縮動作と旋回動作が、適宜行なわれるものである。
【0018】
なお、これら各操作に際して上記イネーブルスイッチ114が押し込まれていなかった場合には、例え上記操作ロッド102が傾動操作され、あるいは上記下部グリップ105が回動操作されたとしても、上記伸縮ブーム7が動作しないことは言うまでもないが、例え当初は上記イネーブルスイッチ114が押し込まれ、この状態で上記操作ロッド102が傾動操作されて上記伸縮ブーム7が起伏動とか伸縮動していたとしても(即ち、各動作が適正に行なわれていたとしても)、その操作中に上記イネーブルスイッチ114から指が離れて該イネーブルスイッチ114に対する押込み操作が解除された場合には、上記伸縮ブーム7の起伏動、伸縮動、旋回動の全てがその時点で停止される。そして、このように操作途中で上記イネーブルスイッチ114の押込みが解除されて上記伸縮ブーム7の作動が停止された場合には、例え上記イネーブルスイッチ114を再度押込んでも上記伸縮ブーム7は動作せず、一旦上記操作レバー装置Xを中立状態に復帰させた後に、再度操作を行うことが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2002−318628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところで、上述のように操作ロッド102の先端部に設けられるグリップ103を、上部グリップ104と下部グリップ105からなる上下二段構成とし、上記操作ロッド102の前後左右への傾動操作と上記下部グリップ105の回動操作を行なうようにした三軸ジョイスティックタイプの操作レバー装置Xにおいては、上記上部グリップ104に掌を置いて操作ロッド102の傾動操作を行なうことができ、且つこの際、例えば、オペレータの作業姿勢の変化等によって上記上部グリップ104が多少回動されたとしても、これに伴って上記下部グリップ105が誤って回動操作される(即ち、誤って回動操作検出信号が出力される)ということがなく、操作上の信頼性の確保という点において有用である。
【0021】
しかし、実際の高所作業においては、オペレータが上記作業台12の正面側(即ち、上記首振駆動装置11側)を向いてレバー操作を行いながら、その視線方向の正面側において作業を行うということは少なく、それよりも、上記作業台12の前方側に各種機器等の作業上の障害物が存在せず、作業スペースの確保が容易な反首振駆動装置11側(即ち、背面側)で作業を行なうことが多い。しかし、この場合でも、上記操作レバー装置Xは上記作業台12の正面側(上記首振駆動装置11側)に設けられていることから、オペレータは、体あるいは首を捩って、上記作業台12の背面側の安全性等の状況を確認しながら、該作業台12の正面側にある操作レバー装置Xを操作しなければならない。係る作業状態は、上記作業台12の通常の移動操作のみならず、例えば、一方の手で移動経路に存在する障害物を排除しながら、他方の手で上記操作レバー装置Xの操作をしなければならない作業状況下においても起こり得るものである。
【0022】
一方、上記操作レバー装置Xを操作して伸縮ブーム7の旋回動作を行なうためには、グリップ103に設けられたイネーブルスイッチ114を押込みながら、上記下部グリップ105を回動操作しなければならないが、この操作は上記イネーブルスイッチ114の押込み操作と、上記下部グリップ105の回動操作という二つの独立した操作を片手で同時に行うことが必要であって、非常に手が疲れる操作である。また、上記伸縮ブーム7の旋回操作のみならず、上記操作ロッド102を前後方向あるいは左右方向へ傾動させて上記伸縮ブーム7の起伏動作あるいは伸縮動作を並行させる場合には、手を捩って傾けるという操作が必要であることから、上記イネーブルスイッチ114を押し込む力を維持し難くなる。
【0023】
このような上記イネーブルスイッチ114を押し込む力を維持し難くなる状況は、特に、上述のように、体あるいは首を捩って、上記作業台12の背面側の安全性等の状況を確認しながら、該作業台12の正面側にある操作レバー装置Xを操作しなければならないような作業状況下では不可避的に発生し易く、従って、作業途中で、イネーブルスイッチ114からのスイッチ信号の入力が途切れて作業全体が不意に中断されるということが起こり易くなる。
【0024】
このような状況に鑑みれば、疲れの少ない容易な操作で、且つ誤作動の無い作業を実現するためには、
(イ)上記イネーブルスイッチ114を押込み操作しての作業中においてその押込操作が誤って解除されないようにすること、
(ロ)操作中の手首の捩り等によって上記上部グリップ104が誤って多少回動されても、その影響が上記下部グリップ105に及ばないようにすること、
(ハ)同時操作が必要な操作項目の数を減らして操作時の手首等に対する負担を軽減すること、
(ニ)上記下部グリップ105を単独で回動させて行なわれる伸縮ブーム7の微動操作の操作性を損なわないこと、
等を考慮することが必要であるが、係る観点からの有効な技術は未だ提案されていない。
【0025】
そこで本願発明は、疲れの少ない容易な操作で、且つ誤作動の無い作業を実現し得るようにした作業機の操作レバー装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0027】
本願の第1の発明では、基台と、該基台にその基端部を略直交する二軸方向に傾動自在に取付けた操作ロッドと、該操作ロッドの先端部に設けたグリップと、上記操作ロッドの傾動方向と傾動量を検出して該傾動方向と傾動量に対応した傾動操作検出信号を出力する傾動操作検出信号出力手段と、上記グリップの回動方向と回動量を検出して該回動方向と回動量に対応した回動操作検出信号を出力する回動操作検出信号出力手段と、上記傾動操作検出信号出力手段と上記回動操作検出信号出力手段からの信号を受信して制御信号を出力する制御手段と、上記グリップに設けられて押動操作されることで押動操作検出信号を出力し上記制御手段からの制御信号の出力を許容するスイッチ手段を備えた作業機の操作レバー装置において、上記グリップを、同軸上に設けられ且つ相対回動可能とされた上部グリップと下部グリップで構成し、上記下部グリップの回動操作によって上記回動操作検出信号出力手段が作動されるようにする一方、上記上部グリップと上記下部グリップの間に回動方向への所定の遊びをもたせ、上記上部グリップが上記遊び範囲を越えて回動されたとき該上部グリップによって上記下部グリップが回動され上記回動操作検出信号出力手段から回動操作検出信号が出力されるように構成したことを特徴としている。
【0028】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る作業機の操作レバー装置において、上記グリップの上記上部グリップと上記下部グリップの何れか一方側にその回動方向へ所定の角度をもって対向する一対の係合面が設ける一方、上記上部グリップと上記下部グリップの何れか他方側には、その回動方向において上記一対の係合面に択一的に係合する係合部材を設けたことを特徴としている。
【0029】
本願の第3の発明では、上記第2の発明に係る作業機の操作レバー装置において、上記係合部材を、上記上部グリップ又は上記下部グリップの何れか一方側と一体的に構成するか、又は上記上部グリップ又は上記下部グリップの何れかに対して相対回動可能とされ且つ操作力が解除された状態では付勢手段によってその回動位置が中立位置に保持されるように構成することを特徴としている。
【0030】
本願の第4の発明では、上記第1、第2又は第3の発明に係る作業機の操作レバー装置において、上記スイッチ手段を上記グリップの上記上部グリップに設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0031】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0032】
(a)本願の第1の発明に係る作業機の操作レバー装置によれば、上記グリップを、同軸上に設けられ且つ相対回動可能とされた上部グリップと下部グリップからなる上下二段構造とし、上記下部グリップの回動操作によって上記回動操作検出信号出力手段が作動されるように構成する一方、上記上部グリップと上記下部グリップの間に回動方向への所定の遊びをもたせ、上記上部グリップが上記遊び範囲を越えて回動されたとき該上部グリップによって上記下部グリップが回動され上記回動操作検出信号出力手段から回動操作検出信号が出力されるように構成しているので、
(a−1)上記上部グリップと上記下部グリップの間に回動方向への所定の遊びをもたせたことで、上記上部グリップを掴んでレバー操作を行っている場合に、例えば、無理な姿勢での操作による手首の捩り等によって上記上部グリップが多少回動されても、この回動量が上記遊びの範囲内である限り、上記上部グリップの回動の影響が上記下部グリップに及ぶことがなく、誤って上記回動操作検出信号出力手段から回動操作検出信号が出力されることが未然に防止され、操作の信頼性が確保される、
(a−2)上記上部グリップが上記遊び範囲を越えて回動されたとき該上部グリップによって上記下部グリップが回動され上記回動操作検出信号出力手段から回動操作検出信号が出力される構成であって、上記イネーブルスイッチを押し込みながら、上記上部グリップを回動操作することで、上記下部グリップのみを回動させて回動操作検出信号を出力させることができ、例えば、上部グリップを掴み、上記イネーブルスイッチを押し込みながら、さらに上記下部グリップを回動させる操作を行なうことで初めて回動操作検出信号が出力される構成の場合に比して、同時に操作することが必要な操作項目の数が減り、それだけ操作時における手首等の捩り度合が少なくなり、また手の疲れが軽減されることから、上記イネーブルスイッチの押し込み操作を継続することが容易となり、その結果、操作途中で上記イネーブルスイッチの押し込み操作の不用意な解除に伴う作業機の誤った作動停止が未然に回避され、信頼性の高い作業が実現される、
(a−3)上記遊び範囲内においては、上記上部グリップ上に掌を乗せた状態のまま、該上部グリップとは別個に上記下部グリップのみを単独で回動させることができるため、該下部グリップを微回動させて上記伸縮ブームを微動操作することが可能であり、上記上部グリップの回動操作に連動して上記下部グリップを回動させる構成を採用したにも拘らず、上記伸縮ブームの旋回動作の微動操作性が確保される、
等の効果が得られる。
【0033】
(b) 本願の第2の発明に係る作業機の操作レバー装置では、上記グリップの上記上部グリップと上記下部グリップの何れか一方側にその回動方向へ所定の角度をもって対向する一対の係合面を設ける一方、上記上部グリップと上記下部グリップの何れか他方側には、その回動方向において上記一対の係合面に択一的に係合する係合部材を設ける、という簡単且つ安価な構成で上記遊びを確保しているため、上記(a)に記載の効果をより低コストで実現することができる。
【0034】
(c) 本願の第3の発明に係る作業機の操作レバー装置によれば、上記(b)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明の作業機の操作レバー装置では、上記係合部材を、上記上部グリップ又は上記下部グリップの何れか一方側と一体的に構成するか、又は上記上部グリップ又は上記下部グリップの何れかに対して相対回動可能とされ且つ操作力が解除された状態では付勢手段によってその回動位置が中立位置に保持されるように構成するので、
(c−1) 前者の構成によれば、上記上部グリップがその回動によって上記遊びの範囲を越えたとき、該上部グリップの更なる回動に伴って上記下部グリップの回動が直ちに開始されるため、該下部グリップの応答性、延いては上記伸縮ブームの旋回動の応答性が良好となり、上記伸縮ブームの旋回方向の位置決め精度が向上し、作業の的確性が確保される、
(c−2) 後者の構成によれば、上記上部グリップを回動操作し、該上部グリップを介して上記下部グリップを回動させる操作形態時には、上記上部グリップの回動量が上記遊びの範囲を越えて上記係合部材が上記係合面に係合しても、直ちに上記下部グリップが回動されることはなく、上記付勢手段の弾性によって時間的なズレをもって上記下部グリップが回動を開始し回動操作検出信号が出力され、しかも上記係合部材と上記係合面との係合時点は上記付勢手段の弾性力の付加によって上記上部グリップの回動抵抗が増加するためオペレータはこれを容易に認知することができることから、例えば、上記上部グリップに対する操作力を減じることで上記伸縮ブームの旋回動を徐々に加速させることができ、作動ショックの少ない安全性の高い作業が可能となる、
上記下部グリップを単独で回動操作する操作形態時には、上記下部グリップが上記遊び範囲を越えて作動し、中立位置にある上記係合部材が上記係合面に係合しても、上記付勢手段の弾性力によって上記上部グリップが回動されること、即ち、掌で掴んだ上記上部グリップが不用意に回動されることが回避されるため、上記イネーブルスイッチの押込み操作が中断されることが可及的に防止され、信頼性の高い作業が実現される、
等の効果が得られる。
【0035】
(d) 本願の第4の発明に係る作業機の操作レバー装置によれば、上記(a)、(b)又は(c)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明の作業機の操作レバー装置では、上記スイッチ手段を上記グリップの上記上部グリップに設けているので、オペレータは上記上部グリップを掴むと同時に難なく上記イネーブルスイッチを押込み操作することができ、その操作及びその操作の継続が容易であり、作業中に上記イネーブルスイッチから指が離れて不用意に上記伸縮ブームの作動が停止されるというような事態の発生が可及的に防止され、作業上の信頼性がさらに高められることになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本願発明の実施の形態に係る操作レバー装置の操作状態を示す要部側面図である。である。
【図2】本願発明の第1の実施形態に係る操作レバー装置の構造を示す断面概略図である。
【図3】図2に示した操作レバー装置の作動説明図である。
【図4】本願発明の第2の実施形態に係る操作レバー装置の構造を示す断面概略図である。
【図5】図4に示した操作レバー装置の第1の作動説明図である。
【図6】図4に示した操作レバー装置の第2の作動説明図である。
【図7】図4に示した操作レバー装置の第3の作動説明図である。
【図8】本願発明に係る操作レバー装置の作動特性図である。
【図9】高所作業車の全体図である。
【図10】従来一般的な操作レバー装置の構造説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本願発明に係る作業機の操作レバー装置を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0038】
なお、本願発明が対象とする作業機の一例としての高所作業車Zの構成は、「背景技術」の項において説明した図9に示す高所作業車Zと同様であるため、ここではその説明を省略し、「背景技術」の項における該当説明を援用する。
【0039】
また、本願発明に係る作業機の操作レバー装置は、図1に示すように、上部グリップ22と下部グリップ23の上下二段構造とされたグリップ21を備えたものであって、その最大の特徴はこれら上部グリップ22と下部グリップ23の連係構造にあり、その他の構造、即ち、基台と該基台に対する操作ロッドの取付構造、上記操作ロッドの傾動方向と傾動量を検出して信号を出力する傾動操作検出信号出力手段(第1、第2ポテンショメータ)、上記グリップ21の下部グリップ23の回動方向と回動量を検出して該回動方向と回動量に対応した回動操作検出信号を出力する回動操作検出信号出力手段(第3ポテンショメータ)の構成は、「背景技術」の項において説明した図10に示す操作レバー装置と同様であるため、「背景技術」の項における該当説明を援用して説明を省略し、ここでは、本願発明の最大の特徴である「上部グリップ22と下部グリップ23の連係構造」を主体に説明する。
I:第1の実施形態
図1には、本願発明の第1の実施形態に係るグリップ21及びその操作の仕方を示している。このグリップ21は、上述のように、上部グリップ22と下部グリップ23からなる上下二段構造とされ、これら何れも操作ロッド20(背景技術で説明した操作ロッド102と同様構造)に対して相対回動可能に取付けられている。また、上記上部グリップ22の一側には、本体部25と押動部材26からなるイネーブルスイッチ24(特許請求の範囲中の「スイッチ手段」に該当する)が設けられている。
【0040】
上記操作レバー装置Xの操作は、図1に示すように、上記上部グリップ22の上面側に掌123を当てて、該掌123と親指122以外の指121で上記上部グリップ22を包み込むようにしてこれを掴む。この場合、親指122は、上記下部グリップ23の回動操作を必要しないときには、他の指121と同様に、上記上部グリップ22を掴むが、上記下部グリップ23の回動操作を必要とするときには、同図に示すように、上記下部グリップ23の側面に添えられる。また、上記親指122以外の指121の何れかが、上記イネーブルスイッチ24の押動部材26を押込み操作できるように、該押動部材26に添えられる。
【0041】
係る掴み状態において、上記伸縮ブーム7を伸縮動あるいは起伏動させるときは、上記イネーブルスイッチ24の押動部材26を指121で押し込んだまま、上記操作ロッド20を前後方向あるいは左右方向へ所要角度だけ傾動させる。この操作ロッド20の傾動操作によって、その傾動方向及び傾動量に対応した傾動操作検出信号が第1ポテンショメータ106、第2ポテンショメータ107(特許請求の範囲中の「傾動操作検出信号出力手段」に該当する)から制御手段(図示省略)に出力され、上記伸縮ブーム7が起伏駆動あるいは伸縮駆動される。
【0042】
一方、上記伸縮ブーム7の旋回駆動は、上記下部グリップ23を回動させることで行なわれるが、この下部グリップ23の回動操作形態としては、次述するように二つの形態があり、その一つは上記上部グリップ22の回動操作によって上記下部グリップ23を間接的に回動させる操作形態であり、他の一つは上記下部グリップ23のみを直接操作して回動させる形態である。これら二つの回動形態は、本願発明に特有の構成によって実現されるものであり、以下においてはこれを詳述する。
【0043】
図2には、上記グリップ21の上部グリップ22と下部グリップ23の断面形状を模式的に示している。
【0044】
上記上部グリップ22は、上記操作ロッド20に対して回動自在に取付けられている。また、この上部グリップ22の一側には、所定幅をもつ突起状の係合部材27が該上部グリップ22と一体的に形成されている。そして、この上部グリップ22は、上記操作ロッド20に一端が固定された上部用付勢バネ31(特許請求の範囲の「付勢部材」に該当する)によって、上記係合部材27が正面側(既述した作業台12の正面側)に指向した中立位置に位置決めされるように付勢されている。
【0045】
上記下部グリップ23は、上記上部グリップ22の外側を取り囲むようにして、上記操作ロッド20に対して回動自在に取付けられている。また、この下部グリップ23は、その内周面側に、C環状の突起が設けられ、該突起の両端面23a,23bは周方向に所定角度をもって対向しており、これら両端面23a,23bをそれぞれ係合面23a、23bとしている。そして、この下部グリップ23は、上記操作ロッド20に一端が固定された下部用付勢バネ32(特許請求の範囲の「付勢部材」に該当する)によって、上記突起の両端面23a,23b間の周方向中心位置が正面側(既述した作業台12の正面側)に指向した中立位置に位置決めされるように付勢されている。
【0046】
さらに、上記各係合面23a、23bは、上記上部グリップ22側の上記係合部材27とその回動方向において係合可能とされており、その角度は、上記正面に指向する正面方向線L0(即ち、中立位置にある上記係合部材27が指向する上部グリップ方向線L1)に対して、左回動方向に「−Δθ」、右回動方向に「+Δθ」とされる。この角度「−Δθ」、「+Δθ」の回動範囲が、上記正面方向線L0を起点とする左右方向への「遊び」とされる。尚、この場合、上記正面方向線L0と、中立位置にある上記係合部材27が指向する上部グリップ方向線L1が合致している。
【0047】
このように構成された上記グリップ21を用いて上記操作レバー装置Xを操作する場合における作動は以下の通りである。
【0048】
A:上記上部グリップ22の上記遊び範囲内での回動
上記上部グリップ22が上記遊び範囲内で回動する場合、例えば、上記伸縮ブーム7を旋回させる意思はなく、該伸縮ブーム7を起伏あるいは伸縮させようとして上記操作ロッド20を前後方向あるいは左右方向へ傾動させたときに、操作姿勢の影響等で上記上部グリップ22が回動されてもその回動角が上記遊び範囲内であるような場合には、例え上記上部グリップ22が回動されたとしても、該上部グリップ22の上記係合部材27が上記下部グリップ23の係合面23a、23bと係合することがないため、該下部グリップ23が回動されず、従って、誤った回動操作検出信号が出力されることがなく、上記伸縮ブーム7の起伏あるいは伸縮動作のみが行なわれ、作業上の信頼性が確保される。
【0049】
この場合、上記操作ロッド20の傾動操作は、上記イネーブルスイッチ24の押動部材26を押しながら行なわれることが条件となるが、上述のように上記遊び範囲内において上記上部グリップ22が回動されても誤った回動操作検出信号は出力されないので、操作時における手首の捩りに起因する上記上部グリップ22の回動ということを気にしなくて良いため、上記イネーブルスイッチ24の押し込み作用を継続することが容易であり、従って、操作途中で上記イネーブルスイッチ24の押込み作用が誤って解除され、これに伴って高所作業車Zの全ての動作が中断されるというような事態の発生が可及的に防止され、これによっても作業上の信頼性が確保される。
【0050】
B:上部グリップ22の操作によって伸縮ブーム7を旋回させる場合
上記上部グリップ22の操作によって上記伸縮ブーム7を旋回させる場合には、上記イネーブルスイッチ24の押動部材26を押し込むとともに、上記グリップ21の上部グリップ22を掴んでこれを所要方向へ回動操作する。この場合、上記上部グリップ22の回動量が上記遊びの範囲、即ち、角度「+Δθ」又は「−Δθ」を越えない領域では上記上部グリップ22の上記係合部材27が上記下部グリップ23の係合面23a又は係合面23bに係合しないので、上記下部グリップ23は回動されないが、上記上部グリップ22が上記遊び範囲を越えてさらに回動操作されると、図3に示すように、上記上部グリップ22の上記係合部材27が上記下部グリップ23の係合面23a又は係合面23bに係合し、上記下部グリップ23は上記上部グリップ22の上記係合部材27に押される状態で該上部グリップ22と一体的に回動され、その回動方向及び回動量に対応した回動操作検出信号が制御手段に出力され、該制御手段からの制御信号を受けて上記旋回駆動装置6が作動し、上記伸縮ブーム7が旋回駆動される。即ち、上記下部グリップ23を回動操作することなく、上記イネーブルスイッチ24の押込み操作と上記上部グリップ22の回動操作のみによって、上記伸縮ブーム7を旋回駆動させることができる。
【0051】
この場合、上記グリップ21の上記上部グリップ22の回動操作は、上記イネーブルスイッチ24の押動部材26を押しながら行なわれるが、その際、上記上部グリップ22を掴んだ手でさらに上記下部グリップ23を回動操作する必要が無いことから、上記イネーブルスイッチ24の押し込み作用を継続することが容易であり、従って、操作途中で上記イネーブルスイッチ24の押込み作用が誤って解除され、これに伴って高所作業車Zの全ての動作が中断されるというような事態の発生が可及的に防止され、これによっても作業上の信頼性が確保される。
【0052】
C:下部グリップ23の単独操作によって伸縮ブーム7を旋回させる場合
上記下部グリップ23の単独操作によって上記伸縮ブーム7を旋回させる場合には、上記グリップ21の上部グリップ22を掴んだ状態で、上記イネーブルスイッチ24の押動部材26を押し込むとともに、親指122によって上記下部グリップ23を所要方向へ回動操作する。すると、この下部グリップ23の回動に伴って、その回動方向及び回動量に対応した回動操作検出信号が制御手段に出力され、該制御手段からの制御信号を受けて上記旋回駆動装置6が作動し、上記伸縮ブーム7が旋回駆動される。
【0053】
即ち、上記イネーブルスイッチ24を押しこんだ状態で、上記上部グリップ22を回動させることなく、上記下部グリップ23のみを直接回動させることで、上記伸縮ブーム7を旋回駆動させることができ、これによって、上記下部グリップ23の微動操作、即ち、上記伸縮ブーム7の旋回微動操作が可能となる。
【0054】
尚、この場合、上記下部グリップ23を回動させる際、手首の捩り度合等によっては上記上部グリップ22が回動されることも起こり得るが、係る場合でも、上記上部グリップ22の回動量が上記遊び範囲内である限り、上記下部グリップ23の回動による上記伸縮ブーム7の旋回駆動には何等支障を生じない。
【0055】
この実施形態の操作レバー装置Xによれば、以下のような特有の作用効果が得られる。
【0056】
(1)この操作レバー装置Xでは、上記上部グリップ22と上記下部グリップ23の間に回動方向への所定の遊びをもたせているので、上記上部グリップ22を掴んでレバー操作を行っている場合に、例えば、無理な姿勢での操作による手首の捩り等によって上記上部グリップ22が多少回動されても、この回動量が上記遊びの範囲内である限り、上記上部グリップ22の回動の影響が上記下部グリップ23に及ぶことがなく、従って、誤って上記第3ポテンショメータ108から回動操作検出信号が出力されることが未然に防止され、操作の信頼性が確保される。
【0057】
(2)上記上部グリップ22が上記遊び範囲を越えて回動されたとき該上部グリップ22によって上記下部グリップ23が回動され上記第3ポテンショメータ108から回動操作検出信号が出力される構成であって、上記イネーブルスイッチ24を押し込みながら、上記上部グリップ22を回動操作することで、上記下部グリップ23を回動させて回動操作検出信号を出力させることができる。従って、例えば、上部グリップ22を掴み、上記イネーブルスイッチ24を押し込みながら、さらに上記下部グリップ23を回動させる操作を行なうことで初めて回動操作検出信号が出力される構成の場合に比して、同時に操作することが必要な操作項目の数が減り、それだけ操作時における手首等の捩り度合が少なくなり、また手の疲れが軽減されることから、上記イネーブルスイッチ24の押し込み操作を継続することが容易となる。この結果、操作途中で上記イネーブルスイッチ24の押し込み操作の不用意な解除に伴う高所作業車Zの誤った作動停止が未然に回避され、信頼性の高い作業が実現される。
【0058】
(3)上記遊び範囲内においては、上記上部グリップ22上に掌を乗せた状態のまま、該上部グリップ22とは別個に上記下部グリップ23のみを単独で回動させることができるため、該下部グリップ23を微回動させて上記伸縮ブーム7を微動操作することが可能であり、上記上部グリップ22の回動操作に連動して上記下部グリップ23を回動させる構成を採用したにも拘らず、上記伸縮ブーム7の旋回動作の微動操作性が確保される。
【0059】
(4)上記上部グリップ22と上記下部グリップ23の間の遊びを確保するための構造として、上記下部グリップ23にその回動方向へ所定の角度をもって対向する一対の係合面23a,23bを設ける一方、上記上部グリップ22には、その回動方向において上記下部グリップ23の上記一対の係合面23a,23bに択一的に係合して該下部グリップ23を回動させる係合部材27を設けるという簡単且つ安価な構成で、上記上部グリップ22の回動方向において上記係合部材27が上記下部グリップ23の上記一対の係合面23a,23bと係合しない領域を確保するようにしており、係る構成を採用することで操作レバー装置Xの低コスト化が実現される。
【0060】
(5)上記上部グリップ22に設けられる上記係合部材27を、該上部グリップ22と一体的に構成しているので、上記上部グリップ22が上記遊び範囲を越えたとき、該上部グリップ22の更なる回動に伴って上記下部グリップ23の回動が直ちに開始されるため、該下部グリップ23の応答性、延いては上記伸縮ブーム7の旋回動の応答性が良好となり、その結果、上記伸縮ブーム7の旋回方向の位置決め精度が向上し、作業の的確性が確保される。
(6)上記イネーブルスイッチ24を上記グリップ21の上記上部グリップ22に設けているので、オペレータは上記上部グリップ22を掴むと同時に難なく上記イネーブルスイッチ24を押込み操作することができ、その操作及びその操作の継続が容易であり、その結果、作業中に上記イネーブルスイッチ24の押動部材26から指が離れて不用意に上記伸縮ブーム7の作動が停止されるというような事態の発生が可及的に防止され、作業上の信頼性がさらに高められることになる。
【0061】
なお、この実施形態では、上記上部グリップ22側に上記係合部材27を、上記下部グリップ23側に上記係合面23a、23bを形成しているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、上記上部グリップ22側に上記係合面23a、23bを、上記下部グリップ23側に上記係合部材27を形成することもできる。
II:第2の実施形態
図4には、本願発明の第2の実施形態に係る操作レバー装置Xに備えられたグリップ21の構造を模式的に示している。
【0062】
この操作レバー装置Xの上記グリップ21は、上記第1の実施形態における上記グリップ21と同様に、上部グリップ22と下部グリップ23からなる上下二段構造を備えており、その基本構造は上記第1の実施形態における上部グリップ22及び下部グリップ23と同様であり、従って、ここでは図2に示したグリップ21に対応させて、これと同じ部材には同一符号を付した上で、その説明を省略し、この実施形態のグリップ21に特有の構成についてのみ詳述する。
【0063】
この第2の実施形態に係るグリップ21は、上述のように、上部グリップ22と下部グリップ23からなる上下二段構造を備えたもので、これら何れも上記操作ロッド20を回動中心として回動可能とされており、さらに上記上部グリップ22側には上記係合部材27が、上記下部グリップ23側には上記係合面23a、23bがそれぞれ設けられる。しかし、上記係合部材27の構造は、上記第1の実施形態と異なっている。
【0064】
即ち、この実施形態においては、上記係合部材27を、上記第1の実施形態のように上記上部グリップ22と一体的に形成するのではなく、該係合部材27を上記操作ロッド20に対して回動自在に取付けるとともに、該係合部材27が常時正面に指向した中立位置を維持するように、左右一対の係合部材付勢バネ33、34によって付勢している。
【0065】
このように構成された上記グリップ21の作動は以下の通りである。
【0066】
A:上記上部グリップ22の上記遊び範囲内での回動
上記上部グリップ22が上記下部グリップ23の上記各係合面23a,23b間の遊び範囲内で回動する場合、即ち、上記伸縮ブーム7を旋回させる意思はなく、該伸縮ブーム7を起伏あるいは伸縮させようとして上記操作ロッド20を前後方向あるいは左右方向へ傾動させたときに、操作姿勢の影響等で上記上部グリップ22が回動されてもその回動角が上記遊び範囲内であるような場合には、例え上記上部グリップ22が回動されたとしても、該上部グリップ22の上記係合部材27が上記下部グリップ23の係合面23a、23bと係合することがないため、該下部グリップ23は回動されず、従って、誤った回動操作検出信号が出力されることがなく、上記伸縮ブーム7の起伏あるいは伸縮動作のみが行なわれ、作業上の信頼性が確保される。
【0067】
この場合、上記操作ロッド20の傾動操作は、上記イネーブルスイッチ24の押動部材26を押しながら行なわれることが条件となるが、上述のように上記遊び範囲内において上記上部グリップ22が回動されても誤った回動操作検出信号は出力されないので、操作時における手首の捩りに起因する上記上部グリップ22の回動ということを気にしなくて良いため、上記イネーブルスイッチ24の押し込み作用を継続することが容易であり、従って、操作途中で上記イネーブルスイッチ24の押込み作用が誤って解除され、これに伴って高所作業車Zの全ての動作が中断されるというような事態の発生が可及的に防止され、これによっても作業上の信頼性が確保される。
【0068】
B:上部グリップ22の操作によって伸縮ブーム7を旋回させる場合
上記上部グリップ22の操作によって上記伸縮ブーム7を旋回させる場合には、上記イネーブルスイッチ24の押動部材26を押し込むとともに、上記グリップ21の上部グリップ22を掴んでこれを所要方向へ回動操作する。この場合、上記上部グリップ22の回動に伴って上記係合部材27も上記各係合部材付勢バネ33,34によって上記上部グリップ22との相対位置を維持したまま回動変位するが、上記上部グリップ22の回動量が上記遊びの範囲、即ち、角度「+Δθ」又は「−Δθ」を越えない領域では上記係合部材27が上記下部グリップ23の係合面23a又は係合面23bに係合しないので、上記下部グリップ23は回動されない。
【0069】
しかし、上記上部グリップ22が上記遊び範囲を越えてさらに回動操作されると、図5に示すように、上記上部グリップ22との相対位置を保持したままこれと一体的に回動する上記係合部材27が上記下部グリップ23の係合面23a又は係合面23bに係合し、上記下部グリップ23は、上記第1係合部材付勢バネ33によって上記上部グリップ22側に弾圧支持された上記係合部材27に押される状態で該上部グリップ22と一体的に回動され、その回動方向及び回動量に対応した回動操作検出信号が制御手段に出力され、該制御手段からの制御信号を受けて上記旋回駆動装置6が作動し、上記伸縮ブーム7が旋回駆動される。
【0070】
即ち、上記下部グリップ23を回動操作することなく、上記イネーブルスイッチ24の押込み操作と上記上部グリップ22の回動操作のみによって、上記伸縮ブーム7を旋回駆動させることができる。
【0071】
この場合、上記上部グリップ22の回動量が上記遊びの範囲を越えて上記係合部材27が上記係合面23bに係合しても、直ちに上記下部グリップ23が回動されることはなく、上記第1係合部材付勢バネ33の弾性によって時間的なズレをもって上記下部グリップ23が回動を開始し回動操作検出信号が出力される。しかも、上記係合部材27と上記係合面23bとの係合時点は上記第1係合部材付勢バネ33の弾性力の付加によって上記上部グリップ22の回動抵抗が増加するためオペレータはこれを容易に認知することができる。この結果、例えば、上記上部グリップ22に対する操作力を減じることで上記伸縮ブーム7の旋回動を徐々に加速させることができ、作動ショックの少ない安全性の高い作業が可能となる。
【0072】
また、上記上部グリップ22の回動操作は、上記イネーブルスイッチ24の押動部材26を押しながら行なわれるが、その際、上記上部グリップ22を掴んだ手でさらに上記下部グリップ23を回動操作する必要が無いことから、上記イネーブルスイッチ24の押し込み作用を継続することが容易であり、従って、操作途中で上記イネーブルスイッチ24の押込み作用が誤って解除され、これに伴って高所作業車Zの全ての動作が中断されるというような事態の発生が可及的に防止され、これによっても作業上の信頼性が確保される。
【0073】
C:下部グリップ23の単独操作によって伸縮ブーム7を旋回させる場合
上記下部グリップ23の単独操作によって上記伸縮ブーム7を旋回させる場合には、上記グリップ21の上部グリップ22を掴んだ状態で、上記イネーブルスイッチ24の押動部材26を押し込むとともに、親指122によって上記下部グリップ23を所要方向へ回動操作する。すると、図6に示すように、上記下部グリップ23の回動に伴って、その回動方向及び回動量に対応した回動操作検出信号が制御手段に出力され、該制御手段からの制御信号を受けて上記旋回駆動装置6が作動し、上記伸縮ブーム7が旋回駆動される。
【0074】
即ち、上記イネーブルスイッチ24を押しこんだ状態で、上記上部グリップ22を回動させることなく、上記下部グリップ23のみを直接回動させることで、上記伸縮ブーム7を旋回駆動させることができ、これによって、上記下部グリップ23の微動操作、即ち、上記伸縮ブーム7の微動操作が可能となる。
【0075】
この場合、図6に示すように、上記係合部材27が上記下部グリップ23の係合面23aに係合する。従って、仮に上記係合部材27が上記上部グリップ22と一体的に形成されていると、上記下部グリップ23の回動に伴って上記上部グリップ22が回動されることになる。しかし、この実施形態では、上記係合部材27が上記第2係合部材付勢バネ34によって弾圧支持され、しかも上記上部グリップ22にはオペレータの掴み力による回動規制作用が働くことから、上記係合部材27が上記下部グリップ23の係合面23aに係合しても上記上部グリップ22は回動しない。従って、上記イネーブルスイッチ24からこれを押し込む指が離れることが確実に防止され、上記操作レバー装置Xを用いて行なわれる作業の信頼性が向上することになる。
【0076】
D:その他の旋回操作
図7には、上記A〜C以外の旋回操作の例として、上記グリップ21を、図4に示す中立状態から、先ず、上記上部グリップ22を左方向へ上記遊び範囲だけ回動させた後、上記下部グリップ23のみを右方向へ回動させて上記伸縮ブーム7を旋回させる場合の作動状態を示している。
【0077】
この場合、上記下部グリップ23の回動に伴って上記係合部材27が回動されても、上記第1係合部材付勢バネ33の縮小変形によって上記上部グリップ22が回動されるのが阻止され、従って、上記イネーブルスイッチ24からこれを押し込む指が離れることが防止され、上記操作レバー装置Xを用いて行なわれる作業の信頼性が確保される。
E:作用効果
この第2の実施形態に係る操作レバー装置Xにおいては、上記の特有の作用効果以外に、上記第1の実施形態と同様の基本的効果が得られるものであり、この基本的効果については上記第1の実施形態における該当説明を援用し、ここでの説明を省略する。
III:その他
(1)上記上部グリップ22と上記下部グリップ23間の遊び量の設定
上記上部グリップ22と上記下部グリップ23間の遊び量は必ずしも一定値に設定する必要はなく、操作形態の重要性を考慮して適宜設定できるものである。
【0078】
即ち、図8に示すように、上部グリップ22の回動操作を介して上記下部グリップ23を間接的に回動させる操作形態を重要視する場合には、同図に特性線L1a,L1bで示すように比較的大きな遊び「Δθ1」に設定し、上記下部グリップ23を単独に直接回動させる走査形態を重要視する場合には、同図に特性線L2a,L2bで示すように比較的大きな遊び「Δθ2」に設定することも考えられる。
【0079】
前者の設定は、作業姿勢等の条件から上記上部グリップ22が不用意に回動され易い場合を考慮したものである。また、後者の設定は、上記下部グリップ23の微動操作性の確保という点を考慮したものである。
(2)一体構造のグリップとの相違点
上述のように、本願発明に係る操作レバー装置Xに採用されたグリップ21は、これを上部グリップ22と下部グリップ23の上下二段構造とし、且つこれら両者間に回動方向の「遊び」をもたせたものである。係る構成によれば、上記「遊び」によって、グリップ操作時における手首の捩れ等により操作途中でイネーブルスイッチ24への押込み作用が誤って解除され作業機が不意に作動停止されることを可及的に防止できるとともに、上記下部グリップ23の単独操作時には上記「遊び」は該下部グリップ23の回動操作に何等関与せず、従って、該下部グリップ23の単独操作時の微動操作性が確保されるものである。
【0080】
一方、グリップを上下二段構造とすることなく、一体構造とし且つ該グリップと操作ロッドの間に回動方向の「遊び」をもたせることも考えられる。しかし、係る構成によれば、グリップの操作時には「遊び」が常に関与することから、微動操作性を確保することが困難となる。従って、この一体構造のグリップは、本願発明に係る上下二段構造のグリップ21とはその機能及び作用効果という点において大きく異なるものであり、同一視できないものである。
【符号の説明】
【0081】
1 ・・車両
2 ・・車体
3 ・・車輪
4 ・・アウトリガ
5 ・・旋回台
6 ・・旋回駆動装置
7 ・・伸縮ブーム
8 ・・起伏シリンダ
9 ・・伸縮シリンダ
10 ・・姿勢維持部材
11 ・・首振駆動装置
12 ・・作業台
20 ・・操作ロッド
21 ・・グリップ
22 ・・上部グリップ
23 ・・下部グリップ
24 ・・イネーブルスイッチ(スイッチ手段)
25 ・・本体部
26 ・・押動部材
27 ・・係合部材
31 ・・上部用付勢バネ
32 ・・下部用付勢バネ
33 ・・係合部材付勢バネ
34 ・・係合部材付勢バネ
X ・・操作レバー装置
Z ・・高所作業車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、該基台にその基端部を略直交する二軸方向に傾動自在に取付けた操作ロッドと、該操作ロッドの先端部に設けたグリップと、上記操作ロッドの傾動方向と傾動量を検出して該傾動方向と傾動量に対応した傾動操作検出信号を出力する傾動操作検出信号出力手段と、上記グリップの回動方向と回動量を検出して該回動方向と回動量に対応した回動操作検出信号を出力する回動操作検出信号出力手段と、上記傾動操作検出信号出力手段と上記回動操作検出信号出力手段からの信号を受信して制御信号を出力する制御手段と、上記グリップに設けられて押動操作されることで押動操作検出信号を出力し上記制御手段からの制御信号の出力を許容するスイッチ手段を備えた作業機の操作レバー装置であって、
上記グリップが、同軸上に設けられ且つ相対回動可能とされた上部グリップと下部グリップを備え、上記下部グリップの回動操作によって上記回動操作検出信号出力手段が作動されるように構成される一方、
上記上部グリップと上記下部グリップの間に回動方向への所定の遊びをもたせ、上記上部グリップが上記遊び範囲を越えて回動されたとき該上部グリップによって上記下部グリップが回動され上記回動操作検出信号出力手段から回動操作検出信号が出力されるように構成されたことを特徴とする作業機の操作レバー装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記グリップの上記上部グリップと上記下部グリップの何れか一方側にその回動方向へ所定の角度をもって対向する一対の係合面が設けられる一方、上記上部グリップと上記下部グリップの何れか他方側には、その回動方向において上記一対の係合面に択一的に係合する係合部材が設けられていることを特徴とする作業機の操作レバー装置。
【請求項3】
請求項2において、
上記係合部材が、上記上部グリップ又は上記下部グリップの何れか一方側と一体的に構成されているか、又は上記上部グリップ又は上記下部グリップの何れかに対して相対回動可能とされ且つ操作力が解除された状態では付勢手段によってその回動位置が中立位置に保持されるように構成されていることを特徴とする作業機の操作レバー装置。
【請求項4】
請求項1、2又は3において、
上記スイッチ手段が上記グリップの上記上部グリップに設けられていることを特徴とする作業機の操作レバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−211649(P2010−211649A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58848(P2009−58848)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】