説明

作業機の油圧供給装置

【課題】エンジンの作動時間を設定できる作業機の油圧供給装置を提供する。
【解決手段】コントローラ19は、電動モータ6を、操作検出器12a,13aによって操作が検出されたときから所定の作動時間だけ作動させてサブ油圧ポンプ7で油圧アクチュエータ8,9を駆動させ、所定の作動時間の経過後にはエンジン1を作動させてメイン油圧ポンプ3で油圧アクチュエータ8,9を駆動させるとともに、エンジン1を電動モータ6によって電力が消費された作業用バッテリー5を回復させるために必要な充電時間以上稼動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機の油圧供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機の油圧供給装置として車両上に作業機を搭載した作業機搭載車両が公知である。この作業機搭載車両として、車両上に油圧で作業台を昇降移動させるようにした高所作業車が知られており、近年作業の低騒音化のため、電動モータにより発生した油圧を用いるものも使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高所作業車に走行用の車両エンジンで駆動される第1の油圧ポンプと、車両に搭載された車両バッテリーとは別に搭載した作業用バッテリーにより電動モータを介して駆動される第2の油圧ポンプとを備え、第1の油圧ポンプおよび第2の油圧ポンプからの油圧で車両に搭載した作業機の油圧アクチュエータを制御弁により駆動制御させるようにした作業機の油圧供給装置で、第1の油圧ポンプおよび第2の油圧ポンプのうちいずれか一方を作動させるために選択する選択スイッチを設け、この選択スイッチを第2の油圧ポンプを選択するように切換えたときに車両エンジンを自動的に停止させる制御手段を備えた高所作業車が開示されている(特許文献1の図1参照)。
【0004】
一方、上記の高所作業車では、オペレータが第2の油圧ポンプを選択するように切換えた場合、第2の油圧ポンプを選択している間は電動モータで第2の油圧ポンプを駆動し続けることになり、作業用バッテリーを過度に放電させてしまうことが問題となっていた。加えて、長時間使用することで電動モータが発熱して損傷するという問題もあった。
【0005】
また、作業用バッテリーの残容量が低下している時に、オペレータが選択スイッチにより第2の油圧ポンプを選択するように切換えた場合、車両エンジンを自動的に停止させても、第2の油圧ポンプが十分に駆動されず、作業機のアクチュエータが停止状態になるおそれがあった。
【0006】
この時、作業用バッテリーは完全に放電状態になってしまい、作業用バッテリーの寿命を短くする要因となっていた。
【0007】
そこで、オペレータは、選択スイッチにより第1の油圧ポンプを選択するように切換えて車両エンジンを自動的に始動させ、第1の油圧ポンプからの油圧によって作業機の油圧アクチュエータを駆動制御するが、選択スイッチの切換え時には一時的に作業を停止させてしまうことになる。
【0008】
また、選択スイッチにより第2の油圧ポンプを選択しても、作業用バッテリーの残容量が低下している場合には、アクチュエータが正常に作動しないため、再び第1の油圧ポンプに切換える必要があり、操作が煩わしいものとなる。
【0009】
そこで、上記のような問題を解決することを目的として、特願2007−171336号(特開2009−8194号)に開示された作業機の油圧供給装置では、モード選択手段を備え、通常モード時には、メイン油圧ポンプで油圧アクチュエータを駆動させ、エコノミーモード時には、作業用バッテリーの残容量が所定量以上かつ操作検出手段が操作を検出すると所定時間サブ油圧ポンプで油圧アクチュエータを駆動させ、作業用バッテリーの残容量が所定量未満又は所定時間に達したときにはメイン油圧ポンプで油圧アクチュエータを駆動させるように制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実用新案登録第2523794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記した特開2009−8194号に開示された作業機の油圧供給装置では、サブ油圧ポンプからメイン油圧ポンプへの切換えに着目したものであった。
【0012】
このため、メイン油圧ポンプへ切換えた後に、作業用バッテリーの充電のため、エンジンを継続して作動させる時間を設定することには及ばなかった。
【0013】
そこで、本発明は、エンジンの作動時間を設定できる作業機の油圧供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明の作業機の油圧供給装置は、走行用の車両エンジンで駆動されるメイン油圧ポンプと、車両に搭載された車両バッテリーとは別に搭載され車両エンジンのオルタネータで充電される作業用バッテリーと、作業用バッテリーから給電される電動モータにより駆動されるサブ油圧ポンプと、前記車両エンジンと前記電動モータとを作動させるコントローラと、を備え、メイン油圧ポンプ及びサブ油圧ポンプからの油圧で車両に搭載した作業機の油圧アクチュエータを、操作されていることを検出する操作検出手段が取り付けられた制御弁により駆動制御させるようにした作業機の油圧供給装置であって、前記コントローラは、前記電動モータを、前記操作検出手段によって操作が検出されたときから所定の作動時間だけ作動させて前記サブ油圧ポンプで前記油圧アクチュエータを駆動させ、所定の作動時間の経過後には前記エンジンを作動させてメイン油圧ポンプで前記油圧アクチュエータを駆動させ、前記電動モータを停止させるとともに、前記エンジンを所定の充電時間作動させることを特徴とする。
【0015】
加えて、前記エンジンを作動させる前記所定の充電時間は、前記電動モータによって電力が消費された前記作業用バッテリーを回復させるために必要な回復時間とすることができる。
【0016】
また、前記コントローラは、前記操作検出手段によって操作が検出されなくなった時に、エンジン稼働時間に所定の待機時間を加算した時間と前記所定の充電時間とを比較し、長い方の時間前記エンジンを作動させることが好ましい。
【0017】
さらに、前記車両バッテリー及び前記作業用バッテリーは、前記車両バッテリーが充電完了状態であるときに前記作業用バッテリーを充電する車両バッテリー優先充電回路を備えた充電コントローラを介して充電されることが好ましい。
【0018】
そして、作業車は、上記したいずれかの作業機の油圧供給装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
前記目的を達成するために、本発明の作業機の油圧供給装置は、コントローラは、電動モータを所定の作動時間だけ作動させてサブ油圧ポンプで油圧アクチュエータを駆動させ、所定の作動時間の経過後にはエンジンを作動させてメイン油圧ポンプで油圧アクチュエータを駆動させ、電動モータを停止させるとともに、エンジンを所定の充電時間作動させる。
【0020】
したがって、サブ油圧ポンプによって電力が消費された作業用バッテリーが、エンジンの作動によって所定量は充電されるため、深い放電によって作業用バッテリーが劣化することを防止できる。
【0021】
加えて、エンジンを作動させる所定の充電時間は、電動モータによって電力が消費された作業用バッテリーを回復させるために必要な回復時間とすることで、作業の1サイクルごとに、サブ油圧ポンプによって電力が消費された作業用バッテリーを回復させて、放電・充電の収支バランスをとることができる。
【0022】
また、コントローラは、操作検出手段によって操作が検出されなくなった時に、エンジン稼働時間に所定の待機時間を加算した時間と所定の充電時間とを比較し、長い方の時間エンジンを作動させる。
【0023】
したがって、作業用バッテリーが十分充電されている場合には、操作終了と同時にエンジンが停止したり、オペレータが短時間操作を繰り返す間歇操作をした場合に間歇操作ごとにサブ油圧ポンプが作動したりエンジンが再始動したりすることを防止できる。
【0024】
加えて、作業用バッテリーが十分充電されていない場合には、所定の充電時間に達するまでエンジンを稼動させて、作業用バッテリーを十分充電させることができる。
【0025】
さらに、車両バッテリー及び作業用バッテリーは、車両バッテリーが充電完了状態であるときに作業用バッテリーを充電する車両バッテリー優先充電回路を備えた充電コントローラを介して充電されることで、車両バッテリーの容量を確保して車両エンジンを確実に始動させることができる。
【0026】
そして、作業車は、上記したいずれかの作業機の油圧供給装置を備えることで、効率よく作業を実施できるうえに、不要な燃料の消費を抑制した作業車となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の最良の実施の形態の作業機の油圧供給装置の構成を説明する回路図である。
【図2】高所作業車の構成を説明する斜視図である。
【図3】本発明の最良の実施の形態の作業機の油圧供給装置を用いて作業用バッテリーを充電させる充電処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0029】
まず、図2を用いて、作業車としての高所作業車Cの全体構成を説明する。ここにおいて、本発明における作業車とは、高所作業車Cに限定されるものではなく、クレーンなど作業用の機械を装備したものであればどのような車両であってもよい。
【0030】
本実施の形態の高所作業車Cは、走行機能を有する車両の本体部分となる車体31と、この車体31に水平旋回可能に取り付けられた作業機としての旋回台32と、この旋回台32の一部である固定されたブラケット33と、このブラケット33に取り付けられた作業機としての伸縮ブーム34と、車体31の四隅に設けられた作業機としてのアウトリガ39,・・・と、を備えている。
【0031】
旋回台32は、旋回用モータの動力を伝達されるピニオンギヤを有しており、このピニオンギヤが車体31に設けた円形状のギヤに噛み合うことで旋回軸を中心に回動する。
【0032】
また、伸縮ブーム34は、基端ブーム341と中間ブーム342と先端ブーム343とによって入れ子式に構成されており、作業機としての油圧シリンダ(不図示)によって伸縮できるようになっている。
【0033】
この基端ブーム341は、ブラケット33に水平に設置された支持軸35によって基端部がブラケット33に取り付けられており、上下に起伏できるようになっている。
【0034】
そして、ブラケット33と基端ブーム341の先端近傍との間には作業機としての起伏シリンダ(油圧シリンダ)36が架け渡されており、この起伏シリンダ36を伸縮することで伸縮ブーム34を起伏することができる。
【0035】
また、先端ブーム343の先端には、作業者が高所作業を行う作業台としてのバケット37が上下左右に回動自在に取り付けられている。
【0036】
さらにバケット37には、作業者がバケット37に乗った状態でブーム34の旋回・起伏・伸縮操作とバケット37の首ふり操作ができるように、操作レバーや操作選択スイッチなどを有する上部操作装置38が設けられている。
【0037】
また、車体31の後部には操作装置収納部40が設けられており、内部に上部操作装置38と略同様な操作を行うことができる下部操作装置41が設置されている。
【0038】
さらに、アウトリガ39は、高所作業車Cの転倒を防止するものであり、車体31のフロント側とリヤ側の左右に設けられ、油圧によって張出・接地がおこなわれる。
【0039】
次に、主に車体31に内蔵された作業機の油圧供給装置Sの構成について、図1を用いて説明する。
【0040】
本実施の形態の作業機の油圧供給装置Sは、走行のための原動機となるエンジン1と、エンジン1を始動するセルモータ1aに給電する車両バッテリー4と、エンジン1の回転動力を取り出すPTO(パワーテイクオフ)2と、PTO2に連結されるメイン油圧ポンプ3と、メイン油圧ポンプ3によって駆動される作業機としての油圧アクチュエータ8,9と、エンジン1の停止時に油圧アクチュエータ8,9を駆動させるサブ油圧ポンプ7と、サブ油圧ポンプ7に連結される電動モータ6と、電動モータ6に給電する作業用バッテリー5と、を備えている。
【0041】
エンジン1は、エンジン1を始動させるセルモータ1aと、車両バッテリー4や作業用バッテリー5を充電するための電気を発電するオルタネータ1bと、エンジン1の燃料噴射ポンプ制御装置1cと、を備えている。
【0042】
また、メイン油圧ポンプ3は、トランスミッション(不図示)に結合されるPTO2に接続されることで、回転しているエンジン1の動力を直接的に取り出して油圧に変換できるようになっている。
【0043】
さらに、車両バッテリー4は、セルモータ1aや燃料噴射ポンプ制御装置1cなどに給電して作動させるもので、一般的に鉛蓄電池が用いられる。
【0044】
同様に、作業用バッテリー5は、サブ油圧ポンプ7に連結される電動モータ6やコントローラ19などに給電して作動させるもので、一般的に鉛蓄電池が用いられる。
【0045】
なお、これらの車両バッテリー4や作業用バッテリー5は、鉛蓄電池でなくてもよく、充電して繰り返し使用できる二次電池であればどのようなものであってもよい。
【0046】
また、サブ油圧ポンプ7は、作業用バッテリー5から給電される電動モータ6の回転動力によって油圧を発生させる。
【0047】
さらに、作業機としての油圧アクチュエータ8,9は、上記したように、走行機能を有する車体31以外であって作業のために発生した油圧により、図2に示す旋回台32や伸縮ブーム34、起伏シリンダ36、バケット37、アウトリガ39などを駆動させる。
【0048】
そして、この油圧アクチュエータ8,9は、作業者が手動によって操作するための操作レバー12,13が操作されることによって開閉される制御弁10,11によって制御される。この操作レバー12,13には、作業者によって操作されたことを感知してコントローラ19に通知する操作検出器12a,13aが接続されている。
【0049】
また、充電コントローラ14は、オルタネータ1bからの発電電力を受け、車両バッテリー4が充電を完了状態でないときに作業用バッテリー5を充電せずに車両バッテリー4を充電し、車両バッテリー4が充電完了状態であるときに作業用バッテリー5を充電するために、車両バッテリー4を優先して充電する優先充電回路を備えた充電用のコントローラである。
【0050】
さらに、スタータリレー15は、車両バッテリー4とセルモータ1aとの接続を開閉する電磁継電器であり、後述するコントローラ19からの司令を受けて車両バッテリー4をセルモータ1aに接続して車両エンジン1を始動させる。
【0051】
そして、電動モータ駆動リレー16は、作業用バッテリー5と電動モータ6との接続を開閉する電磁継電器であり、後述するコントローラ19からの司令を受けて作業用バッテリー5を電動モータ6に接続して電動モータ6を駆動させる。
【0052】
また、コントローラ19は、作業機の動作や安全装置などを制御する制御装置と一体に構成されるもので、集積回路を有して構成されるマイクロコントローラである。
【0053】
さらに、このコントローラ19は、作業用バッテリー5から給電されており、操作検出器12a,13aなどから通知を受けて、スタータリレー15や電動モータ駆動リレー16やスタータリレー15に司令を通知してこれらを開閉するタイミングを調整している。
【0054】
そして、コントローラ19は、後述するように、電動モータ6を所定の作動時間T1だけ作動させてサブ油圧ポンプ7で油圧アクチュエータ8,9を駆動させ、所定の作動時間T1の経過後にはエンジン1を作動させてメイン油圧ポンプ3で油圧アクチュエータ8,9を駆動させるとともに、エンジン1を所定の充電時間T2以上稼動させるように制御する。
【0055】
加えて、コントローラ19は、エンジン1を作動させて所定の充電時間T2が経過した時に、操作検出手段としての操作検出器12a,13aによって操作が検出されない場合に、さらに所定の待機時間T3だけエンジン1を作動させるように制御する。
【0056】
次に、本実施の形態の作業機の油圧供給装置Sを用いて、コントローラ19の司令によって作業用バッテリーを充電させる充電処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。
【0057】
まず、作業者がエンジン停止スイッチ(不図示)を操作することによって、エンジン1を停止させる(ステップS1)。なお、このエンジン停止は、停車を検知してエンジン1を自動的に停止するいわゆるアイドリングストップ機構によるものであってもよい。
【0058】
次に、操作検出器12a,13aからの通知によって操作レバー12,13が操作されたかどうか判断する(ステップS2)。
【0059】
操作レバー12,13が操作された通知を受けていない場合には、同様の判断を繰り返す(ステップS2のNO)。
【0060】
操作レバー12,13が操作された通知を受けている場合には(ステップS2のYES)、電動モータ駆動リレー16を閉じて、電動モータ6と作業用バッテリー5とを電気的に接続させて電動モータ6によってサブ油圧ポンプ7を駆動させる(ステップS3)。
【0061】
そして、操作されてからの駆動時間の積算を開始し(ステップS4)、所定の作動時間T1に達しているかどうかを判断する(ステップS7)。
【0062】
操作されてから所定の作動時間T1が経過していない場合には、同様の判断を繰り返す(ステップS7のNO〜ステップS4)。
【0063】
さらに、所定の作動時間T1の経過前に操作が終了すれば(ステップS5のNO)サブ油圧ポンプ7を停止して(ステップS6)、同様の処理(ステップS2〜ステップS6)を繰り返す。
【0064】
また、操作が作動時間T1の経過時に継続していれば(ステップS7のYES)、スタータリレー15を閉じて、セルモータ1aと車両バッテリー4とを電気的に接続させてエンジン1を始動しPTO2によってメイン油圧ポンプ3を駆動させるとともに、メイン油圧ポンプ3に十分な油圧が発生すれば電動モータ駆動リレー16を開いてサブ油圧ポンプ7を停止させる(ステップS8)。
【0065】
そして、エンジン1が稼動してからのエンジン稼働時間T5の積算を開始した上で(ステップS9)、操作レバー12,13が操作されているかどうかを判断する(ステップS10)。
【0066】
操作が継続していれば(ステップS10のYES)、操作が終了するまで同様の判断を繰り返す(ステップS10)。
【0067】
操作が終了していれば(ステップS10のNO)、エンジン稼働時間T5に所定の待機時間T3を加算した時間と、所定の充電時間T2と、の時間の長さを比較する(ステップS11)。
【0068】
エンジン稼働時間T5に所定の待機時間T3を加算した時間の方が長い場合には(ステップS11のYES)、操作終了以降の時間である非操作時間が待機時間T3に達したかどうか判断する待機時間経過処理に移行する(ステップS12〜S14)。
【0069】
所定の充電時間T2の方が長い場合には(ステップS11のNO)、エンジン稼動時間T5が充電時間T2に達したかどうか判断する充電時間経過処理に移行する(ステップS15〜S16)。
【0070】
そして、待機時間経過処理(ステップS11のYES)では、非操作時間の積算を開始し(ステップS12)、非操作時間が所定の待機時間T3に達したかどうか判断する(ステップS13)。
【0071】
非操作時間が所定の待機時間T3に達していれば(ステップS13のYES)、充電処理の開始へ戻り、エンジン1を停止する(ステップS1)。
【0072】
非操作時間が所定の待機時間T3に達していなければ(ステップS13のNO)、さらに操作しているかどうか判断し(ステップS14)、操作していなければ(ステップS14のNO)同様の処理を繰り返し(ステップS13,S14)、操作していれば(ステップS14のYES)再びエンジン稼動時間T5を積算する。
【0073】
また、充電時間経過処理(ステップS11のNO)では、エンジン稼働時間T5が所定の充電時間T2に達したかどうか判断する(ステップS15)。
【0074】
エンジン稼動時間T5が所定の充電時間T2に達していれば(ステップS15のYES)、充電処理の開始へ戻り、エンジン1を停止する(ステップS1)。
【0075】
エンジン稼働時間T5が所定の充電時間T2に達していなければ(ステップS15のNO)、さらに操作しているかどうか判断し(ステップS16)、操作していなければ(ステップS16のNO)同様の処理を繰り返し(ステップS15,S16)、操作していれば(ステップS16のYES)再びエンジン稼動時間T5を積算する。
【0076】
以上のように、コントローラ19によって作業用バッテリー1を充電させる充電処理が行われる。
【0077】
また、上記の処理において、充電時間T2は、作動時間T1の間に稼動した電動モータ6で消費された電力を、エンジン1の稼動によって充電して回復させるために必要な回復時間T4に設定することができる。
【0078】
例えば、電動モータ6使用時の消費電流値を60(A)、作動時間T1を10(秒)、エンジン1稼動時の充電電流値を20(A)とすると、充電時間T2は、10×60/20=30(秒)となる。
【0079】
次に、本実施の形態の作業機の油圧供給装置Sの作用について説明する。
【0080】
このように、本実施の形態の作業機の油圧供給装置Sは、コントローラ19は、電動モータ6を所定の作動時間T1だけ作動させてサブ油圧ポンプ7で油圧アクチュエータ8,9を駆動させ、所定の作動時間T1の経過後にはエンジン1を作動させてメイン油圧ポンプ3で油圧アクチュエータ8,9を駆動させるとともに、エンジン1を所定の充電時間T2以上作動させる。
【0081】
したがって、サブ油圧ポンプ7によって電力が消費された作業用バッテリー5が、エンジン1の作動によって所定量は充電されるため、深い放電によって作業用バッテリー5が劣化することを防止できる。
【0082】
加えて、エンジン1を作動させる充電時間T2は、電動モータ6によって電力が消費された作業用バッテリー5を回復させるために必要な回復時間T4とすることができる。
【0083】
したがって、作業の1サイクルごとに、サブ油圧ポンプ7によって電力が消費された作業用バッテリー5を回復させて、放電・充電の収支バランスをとることができる。
【0084】
すなわち、作業の1サイクルにおいて電動モータ6が消費した作業用バッテリー5の電力は、同一の作業サイクル内でエンジン1のオルタネータ1bによって充電されることで補完される。
【0085】
そうすると、次の作業サイクルでは、作業用バッテリー5は回復した状態となっているため、作業用バッテリー5の残容量が不足して作業不能となることがなくなる。
【0086】
加えて、このように作業の1サイクルごとに作業用バッテリー5を回復させることができれば、作業用バッテリー5の放電深度を浅くして寿命を長くすることができるうえに、作業用バッテリー5として容量の小さいものを用いることができる。
【0087】
また、コントローラ19は、操作検出器12a,13aによって操作が検出されなくなった時に、エンジン稼働時間T5に所定の待機時間T3を加算した時間と所定の充電時間T2とを比較し、長い方の時間エンジン1を作動させる。
【0088】
つまり、操作が長い時間継続してエンジン稼動時間T5が長く、このエンジン稼動時間T5に所定の待機時間T3を加えた時間が、所定の充電時間T2以上となっている場合には、操作終了以降の非操作時間が所定の待機時間T3に達するまでエンジン1を稼動させる。
【0089】
一方、操作がすぐに終了してエンジン稼動時間T5が短く、このエンジン稼動時間T5に所定の待機時間T3を加えた時間が、所定の充電時間T2以下となっている場合には、エンジン稼動時間T5が所定の充電時間T2に達するまでエンジン1を稼動させる。
【0090】
したがって、エンジン稼動時間T5が長く、作業用バッテリー5が十分充電されている場合には、操作終了と同時にエンジン1が停止したり、オペレータが短時間操作を繰り返す間歇操作をした場合に間歇操作ごとにサブ油圧ポンプ7が作動したりエンジン1が再始動したりすることを防止できる。
【0091】
つまり、オペレータによっては、操作レバー12,13を入れて戻す動作を瞬時に行って、作業機の微動を繰り返すことで作業機の位置を微調整する場合があるが、このような場合に待機時間T3を設けていないと、操作ごとに電動モータ6が作動したり、エンジン1が再始動したりすることになる。
【0092】
そこで、オペレータが上記のような間歇操作をしている場合には、積算時間を再設定して、一連の充電処理を終了させないことで、電動モータ6の作動やエンジン1の再始動を防止することができる。
【0093】
そして、エンジン稼動時間T5が短く、作業用バッテリー5が十分充電されていない場合には、所定の充電時間T2に達するまでエンジン1を稼動させて、作業用バッテリー5を十分充電させることができる。
【0094】
さらに、車両バッテリー4及び作業用バッテリー5は、車両バッテリー4が充電完了状態であるときに作業用バッテリー5を充電する車両バッテリー優先充電回路を備えた充電コントローラ14を介して充電されることで、車両バッテリー4の残容量を確保して車両のエンジン1を確実に始動させることができる。
【0095】
このように、車両バッテリー4を優先的に充電させて作業時・走行時に車両のエンジン1の始動を確保できれば、作業不能・走行不能になるおそれを抑制することができる。
【0096】
そして、本実施の形態の作業車としての高所作業車Cは、上記したいずれかの作業機の油圧供給装置Sを備えることで、効率よく作業を実施できるうえに、不必要な燃料の消費を抑制した作業車となる。
【0097】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0098】
例えば、前記実施の形態では、コントローラ19は充電時間T2が経過した時にさらに待機時間T3だけエンジン1を作動させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、待機時間T3を設けないものであってもよい。
【0099】
また、前記実施の形態では、車両バッテリー優先充電回路を備えた充電コントローラ14を介して車両バッテリー4及び作業用バッテリー5が充電される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、充電コントローラ14を備えないものであってもよい。
【0100】
さらに、前記実施の形態では、電動モータ6の作動時間T1はあらかじめ固定値として設定されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、オペレータの好みで調整できるものであってもよいし、作業の内容等に連動して可変にされるものであってもよい。
【0101】
そして、前記実施の形態では、所定の充電時間T2として作動時間T1の間に稼動した電動モータ6で消費された電力を回復させるために必要な回復時間T4に設定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、作業用バッテリー5をある程度まで充電できる時間(例えば数分程度)であれば、どのような時間であってもよい。
【0102】
また、前記実施の形態では、エンジン1を所定の充電時間T2作動させて作業用バッテリー5を充電する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、作業用バッテリー5の電圧や比重などに基づいて作業用バッテリー5を所定量だけ充電するものであってもよい。
【0103】
さらに、前記実施の形態では、エンジン稼働時間T5に待機時間T3を加算した時間と、充電時間T2と、を比較する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、エンジン稼働時間T5と、充電時間T2から待機時間T3を減算した時間と、を比較するものであってもよい。
【0104】
そして、前記実施の形態では、作業用バッテリー5は走行機能に用いないものとして説明したが、これに限定されるものではなく、作業現場での小移動には適用してもよい。
【符号の説明】
【0105】
C 高所作業車(作業車)
S 作業機の油圧供給装置
T1 作動時間
T2 充電時間
T3 待機時間
T4 回復時間
T5 エンジン稼動時間
1 エンジン(車両エンジン)
1b オルタネータ
2 PTO
3 メイン油圧ポンプ
4 車両バッテリー
5 作業用バッテリー
6 電動モータ
7 サブ油圧ポンプ
8,9 油圧アクチュエータ(作業機)
12,13 操作レバー
12a,13a 操作検出器
14 充電コントローラ
19 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の車両エンジンで駆動されるメイン油圧ポンプと、車両に搭載された車両バッテリーとは別に搭載され車両エンジンのオルタネータで充電される作業用バッテリーと、作業用バッテリーから給電される電動モータにより駆動されるサブ油圧ポンプと、前記車両エンジンと前記電動モータとを作動させるコントローラと、を備え、メイン油圧ポンプ及びサブ油圧ポンプからの油圧で車両に搭載した作業機の油圧アクチュエータを、操作されていることを検出する操作検出手段が取り付けられた制御弁により駆動制御させるようにした作業機の油圧供給装置であって、
前記コントローラは、前記電動モータを、前記操作検出手段によって操作が検出されたときから所定の作動時間だけ作動させて前記サブ油圧ポンプで前記油圧アクチュエータを駆動させ、所定の作動時間の経過後には前記エンジンを作動させてメイン油圧ポンプで前記油圧アクチュエータを駆動させ、前記電動モータを停止させるとともに、
前記エンジンを所定の充電時間作動させることを特徴とする作業機の油圧供給装置。
【請求項2】
前記エンジンを作動させる前記所定の充電時間は、前記電動モータによって電力が消費された前記作業用バッテリーを回復させるために必要な回復時間であることを特徴とする請求項1に記載の作業機の油圧供給装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記操作検出手段によって操作が検出されなくなった時に、エンジン稼働時間に所定の待機時間を加算した時間と前記所定の充電時間とを比較し、長い方の時間前記エンジンを作動させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作業機の油圧供給装置。
【請求項4】
前記車両バッテリー及び前記作業用バッテリーは、前記車両バッテリーが充電完了状態であるときに前記作業用バッテリーを充電する車両バッテリー優先充電回路を備えた充電コントローラを介して充電されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の作業機の油圧供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−56775(P2013−56775A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−272556(P2012−272556)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2008−86564(P2008−86564)の分割
【原出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】