作業機械のブームエネルギの回生装置
【課題】比較的単純な構成で、操作性の急変を招くことなく、回生量の増大と操作性の向上を高度なレベルで両立させる。
【解決手段】ブームシリンダ24の伸長・収縮によってブームを駆動可能な作業機械のブームエネルギの回生装置において、前記ブームを下げるときにおけるブームシリンダ24からの戻り油ラインをスプール390の中で2本の油路52、54に分流する分岐部Dと、分流された一方(52)を、その流量を連続的に可変とした上で発電機36を伴う回生用油圧モータ34を介してタンク60に導く回生回路と、分流された他方(54)を、流量調整弁58を介してその流量を連続的に可変とした上でタンク60に導く調整回路と、を備える。
【選択図】図4
【解決手段】ブームシリンダ24の伸長・収縮によってブームを駆動可能な作業機械のブームエネルギの回生装置において、前記ブームを下げるときにおけるブームシリンダ24からの戻り油ラインをスプール390の中で2本の油路52、54に分流する分岐部Dと、分流された一方(52)を、その流量を連続的に可変とした上で発電機36を伴う回生用油圧モータ34を介してタンク60に導く回生回路と、分流された他方(54)を、流量調整弁58を介してその流量を連続的に可変とした上でタンク60に導く調整回路と、を備える。
【選択図】図4
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等の作業機械のエネルギの回生装置、特にブームエネルギの回生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、ブーム、アーム、及びバケット等のアタッチメントを有する作業部を備えた建設機械が開示されている。
【0003】
作業部は、油圧シリンダ(ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ等)の伸縮によって駆動されるように構成され、油圧シリンダのメータアウト側に回生回路が形成されている。回生回路には、戻り油によって駆動されるポンプモータが備えられている。
【0004】
この回生回路は、切り換え手段によって開閉されるようになっており、掘削作業等を行う際には、該回生回路が開かれ、戻り油のエネルギが回収される。一方、微操作作業等を行う際には該回生回路は閉じられ、操作性が重視される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−329012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記建設機械においては、切り換え手段の切り換えは、モニタパネルにて選択された作業モードに依存して行われ、この切り換えによって回生運転、又は操作性重視の運転が切り換えられるようになっていた。
【0007】
そのため、作業が繁雑であり、運転者によっては、切り換えを必ずしも適正に行わないことがあり、意図された回生ができないことがあるという問題があった。
【0008】
これについては、作業状態を何らかの方法で検知あるいは判断し、この切り換えを自動的に行わせることも考えられるが、この場合には、運転者の意図せぬタイミングで切換が行われ、却って操作性が悪化することがあるという問題がある。
【0009】
この本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、操作性の急変を招くことなく、エネルギ回生量の増大と操作性の向上を高度なレベルで両立させることができる作業機械のエネルギ回生装置、特にブームエネルギの回生装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ブームを有する作業部を備え、ブームシリンダの伸長・収縮によって前記ブームを駆動可能な作業機械のブームエネルギの回生装置において、前記ブームを下げるときにおける前記ブームシリンダからの戻り油ラインを2本の油路に分流する分岐部と、分流された一方を、回生手段を介してタンクに導く回生回路と、分流された他方を、流量調整手段を介してタンクに導く流量調整回路と、を備えたことにより、上記課題を解決したものである。
【0011】
本発明によれば、ブームシリンダからのオイルの流れを2本の油路に分流し、その内の一方が回生手段に常に連結されている。
【0012】
その上で、回生回路と流量調整回路に流出する戻り油の流量を制御することにより、ブーム降下速度を制御でき、操作性を向上させることができる。また、回生回路側に流出する戻り油の流量を多く設定することにより、エネルギの回生量を増大させることができる。
【0013】
本発明には、種々のバリーションが考えられる。
【0014】
例えば、流量調整手段による流量調整は、ブームシリンダを駆動している油圧に依存して行うようにするとよい。一般に、掘削作業等の重作業(多量の回生エネルギを回収し得る作業)を行うときには、ブームシリンダを駆動している油圧が高い傾向にある。また、整地作業等の軽作業(微小操作の要求される作業)を行うときには、ブームシリンダを駆動している油圧が低い傾向にある。従って、流量調整をブームシリンダを駆動している油圧に依存して行うことにより、意図する定性的な傾向と合致した制御を行うことができる。
【0015】
また、前記分流された一方と他方は、それぞれ別個のスプールに導くようにするとよい。これにより、回路構成を単純化でき、トラブルが少なく調整の再現性が高い油圧回路を得ることができるようになる。
【0016】
なお、このように分流された一方と他方をそれぞれ別個のスプールに導くようにした場合には、当該別個のスプールには、それぞれ独立したブーム力行用の駆動源を接続するように構成するとよい。これにより、油圧モータあるいは発電機の容量を搭載スペースを考慮したサイズとすることができ、設計の自由度をより拡大できる。
【0017】
本発明における回生手段の具体的構成は、特に限定されないが、例えば、ブームの力行時に駆動源として機能し得る両方向ポンプモータを備える構成とすることができる。この場合には、当該回生回路に配置した両方向ポンプモータを力行時にも活用することができ、その分を、例えば操作トルクの増大、あるいは搭載スペースの縮小などに寄与させることができる。
【0018】
なお、本発明は、ブームを有する作業部を備えた作業機械の駆動装置において、当該ブームにおけるエネルギの回生や操作性の向上に適用すると最も顕著な効果を得ることができるが、本発明の適用対象は必ずしもブームのみに限定されるものではなく、油圧シリンダの伸長・収縮によって駆動される作業部を有する作業機械において同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
比較的単純な構成で、操作性の急変を招くことなく、回生量の増大と操作性の向上を高度なレベルで両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るブームエネルギの回生装置の一実施形態の要部構成を示すスケルトン図
【図2】他の実施形態の要部構成を示すスケルトン図
【図3】更に他の実施形態の要部構成を示すスケルトン図
【図4】更に他の実施形態の要部構成を示すスケルトン図
【図5】本発明が適用された油圧ショベル(作業機械)の全体構成を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面に基づいて、本発明に係る作業機械のブームエネルギの回生装置の好適な実施形態の一例について詳細に説明する。
【0022】
図5に本発明が適用された油圧ショベル(作業機械)10の全体構成を示す。
【0023】
油圧ショベル10は、下部走行体12、上部旋回体14、及び作業部16を備える。
【0024】
作業部16は、ブーム18、アーム20、バケット22を備え、上部旋回体14の運転室23の横から片持ち状態でせり出している。作業部16のブーム18、アーム20、バケット22には、これら18、20、22を駆動する油圧シリンダとして、それぞれブームシリンダ24、アームシリンダ26、バケットシリンダ28が組み込まれている。本実施形態では、このうち特に、ブーム18に組み込まれたブームシリンダ24を収縮するときの戻り油ライン(メータアウト側のライン)に対して本発明が適用されている。
【0025】
図1は、油圧ショベル10のブームエネルギの回生装置R1の要部構成を示すスケルトン図である。
【0026】
回生装置R1は、該ブームシリンダ24に圧油を供給するための第1、第2油圧ポンプ30、32と、ブームシリンダ24からの戻り油を利用して回生エネルギを取り出すための回生用油圧モータ34及び発電機36を備える。また、ブームシリンダ24と第1、第2油圧ポンプ30、32及び回生用油圧モータ34との間のオイルの流れを切換・制御するために、第1、第2スプール38、40を備える。
【0027】
第1、第2スプール38、40は、同一の構造を持ち、それぞれ伸長位置A、中立位置B、収縮位置Cの各位置で、ポートP1〜P4、P11〜P14を所定の接続態様に切り換える3位置4ポートのパイロット式切換弁である。
【0028】
第1、第2スプール38、40のパイロットポートPp1、Pp3と、Pp2、Pp4とには、操作レバー42の操作に対応してそれぞれ同一圧力の油圧が同時に印加可能とされ、第1、第2スプール38、40は同位相で連動して動くようになっている。
【0029】
伸長位置Aは、ブームシリンダ24を伸長させるとき(ブームが上げられるとき)の切換位置に相当している。伸長位置Aでは、第1、第2スプール38、40は、第1、第2油圧ポンプ30、32をポートP1、P4及びポートP11、P14を介して油路52、54と接続し、合流した油路50を力行ラインとしてブームシリンダ24のボトム側24Aと接続する。一方、ブームシリンダ24のトップ側24Bを第1スプール38のポートP3、P2を介して回生用油圧モータ34と接続する。回生用油圧モータ34には、発電機36が連結されており、回生用油圧モータ34から回転動力を得て所定の回生発電を行い、図示せぬバッテリに回生電力を蓄積可能である。
【0030】
中立位置Bは、ブームシリンダ24を保持状態に維持するときの切換位置に相当している。中立位置Bでは、入力側のポートP1、P2、P11、P12及び出力側のポートP3、P4、P13、P14を、それぞれブロックされた状態に維持する。
【0031】
収縮位置Cは、ブームシリンダ24を収縮させるとき(ブームが下げられるとき)の切換位置に相当している。収縮位置Cでは、油路50は、ブームシリンダ24のボトム側24Aからの戻り油ライン(メータアウト側のライン)として機能する。図1から明らかなように、油路50は、分岐部Dにおいて2本の油路52、54に分流されている。そのうちの一方の油路52は、第1スプール38のポートP4、P2を介して回生用油圧モータ34と接続され、さらにタンク60と接続される。これに対し、他方の油路54の方は、第2スプール40の収縮位置Cに相当するスプール内に形成された流量制御弁58と接続され、さらにタンク60へと接続される。
【0032】
第1、第2スプール38、40の切り換えは、完全ブロック状態の中立位置Bを中心として、伸長位置A側及び収縮位置C側に向けてアナログ的に(中間位置を含んで徐々に)切り換え可能である。
【0033】
次に、この回生装置R1の作用を説明する。
【0034】
ブームシリンダ24が伸長されるとき(ブームが上げられるとき)は、操作レバー42の動きに依存してパイロット油圧が第1、第2スプール38、40のパイロットポートPp1及びPp3に印加され、該第1、第2スプール38、40は、伸長位置A側に位置決めされる。このため、第1、第2油圧ポンプ30、32から吐出された圧油はそれぞれ油路52、54を介して油路50に流入した後、ブームシリンダ24のボトム側24Aに供給され、ブームシリンダ24が伸長する。
【0035】
一方、伸長位置Aにおいては、ブームシリンダ24のトップ側24Bが第1スプール38のポートP3、P2を介して回生用油圧モータ34に接続されるため、トップ側24Bに存在していた戻り油は回生用油圧モータ34に流入し、回生用油圧モータ34を回転させる。この回転により、発電機36を回転させることができ、所定のエネルギを回収できる。ただし、ブームシリンダ24が伸長するときは、回収し得るエネルギは、元々それほど多くはなく、回生用油圧モータ34は、「回生」よりは「ブームシリンダ24の伸長制御を適正に行うための所定の背圧発生」という観点で駆動される。なお、第2スプール40のポートP13は、伸長位置Aにおいてはブロックされた状態にあるため、トップ側24Bの戻り油は、その全量が回生用油圧モータ34を介してタンク60に戻る。
【0036】
操作レバー42が操作されない中立状態にあるときは、各パイロット油圧はすべてタンク圧となり、第1、第2スプール38、40のパイロットポートPp1〜Pp4のいずれにもパイロット油圧は導出されない。したがって、該第1、第2スプール38、40は、ばね38a、38b、40a、40bの付勢力により中立位置Bに位置決めされる。このため、第1、第2スプール38、40のすべてのポートP1〜P4、P11〜P14はブロック状態となり、オイルの移動が阻止される。
【0037】
ブームシリンダ24が収縮されるとき(ブームが下げられるとき)は、操作レバー42の動きに依存してパイロット油圧が第1、第2スプール38、40のパイロットポートPp2及びPp4に印加され、該第1、第2スプール38、40は、収縮位置Cに位置決めされる。このため、第1油圧ポンプ30から吐出された圧油が第1スプール38のポートP1、P3を介してブームシリンダ24のトップ側24Bに流入し、ブームシリンダ24が収縮する。
【0038】
このとき、ブームシリンダ24のボトム側24Aに存在していた圧油は、油路50を介して分岐部Dに至り、ここから油路52及び54に分流される。油路52側に分流された圧油は、第1スプール38のポートP4、P2を介して回生用油圧モータ34に流入し、該回生用油圧モータ34を回転させる。この結果、発電機36による回生発電が行われ、回生電力が図示せぬバッテリに蓄積される。
【0039】
一方、油路54側に分流された圧油は、第2スプール40のポートP14から流量調整弁58を通り、ポートP12からタンク60にドレンされる。
【0040】
結局、ブーム18を下げるときにおけるブームシリンダ24からの戻り油は、分岐部Dにおいて2本の油路52、54に分流され、分流された一方が、回生用油圧モータ34を介してタンク60に導かれると共に、分流された他方は、流量調整弁58を介してタンク60に導かれることになる。
【0041】
この回生装置R1によれば、簡単な構成でブーム18のエネルギを回生することができる。第1、第2油圧ポンプ30、32、回生用油圧モータ34、あるいは発電機36の大きさは、分流割合によって任意に変えることができるため、搭載スペースに応じたサイズの選定をすることができるようになり、設計の自由度が高い。
【0042】
この回生装置R1におけるブームシリンダ24の降下速度は、操作レバー42の操作量に応じて変化させる。この場合、操作量が多いほど、降下速度が大きくなる。一方、回生用油圧モータ34に流入する戻り油は、発電機36の速度制御により、また、油路54への戻り油は流量制御弁58によりそれぞれ制御し、操作レバー42の操作量が多いほど、合計流量が多くなるように制御する。
【0043】
図2に示す回生装置R101は、流量制御弁158における流量制御を駆動圧Prにより補正し、操作性をより向上させるようにしたものである。
【0044】
即ち、この回生装置R101では、流量制御弁158における流量制御を、操作レバー142の動きに依存したパイロット操作から切り離すと共に、油圧センサPsをブームシリンダ124のトップ側124Bに配置して駆動圧Prを検出し、ブームの操作状態をこの駆動圧Prをパラメータとして行うようにしている。パイロットポートPp104には、パイロット制御弁170によって駆動圧Prに依存して発生されたパイロット油圧が供給される。
【0045】
例えばバケットに土砂を積み込んでいるときには、ブーム124の負荷が高く、一般に保持圧Phが高い状態にある。この状態では、流量制御弁158を通過する流量が多くなる。そして、第1油圧ポンプ130の吐出量が不足すると駆動圧Prが減少する。そのため、パイロット制御弁170によってパイロット圧を低下させ、これを第2スプール140のパイロットポートPp104に供給する。これにより、第2スプール140は、中立位置B側に移動し、流量制御弁158が絞られることにより、油路154側に分流してきた戻り油は少なくなる。その結果、駆動圧Prが上昇し、第1油圧ポンプ130による補油が適切になされ、逸走が防止される。
【0046】
一方、整地作業などの軽作業を行っているときには、ブーム124の負荷が低く、一般に保持圧Phは低い状態にある。この状態では、流量制御弁158を通過する流量が少なくなる。そして、ブームシリンダ124の降下速度が遅くなると、第1油圧ポンプ130の吐出量の供給が過剰になり、駆動圧Prが大きくなる。そのため、パイロット制御弁170によってパイロット圧を上昇させ、第2スプール140の位置をより収縮位置C側にシフトさせることにより、油路154側に分流してきた戻り油を多くすることができる。この結果、ブームシリンダ124の圧力バランスが良好に保持される。
【0047】
なお、この実施形態では、第1スプール138のパイロットポートPp101、Pp102、及び第2スプール140のパイロットポートP103には、操作レバー142の動きに依存したパイロット圧が供給されるようになっているが、パイロット制御弁170によって生成されたパイロット圧を、第1スプール138のパイロットポートPp102にも並列に供給するようにしてもよいし、図示せぬパイロット制御弁で個別供給してもよい。また、第1スプール138に流量制御弁158を設け、第2スプール140へ回生用油圧モータ134を設けるようにしてもよい。
【0048】
その他の構成は、基本的に図1を用いて既に説明した先の実施形態と同様であるため、図2中で同一または類似する部分に下2桁が同一の符号を付すにとどめ、重複説明を省略する。なお、以降の変形例においても同様である。
【0049】
図3に、本発明の更なる変形例を示す。この実施形態における回生装置R201では、図1、図2の実施形態において第2油圧ポンプ32、132が配置されていた位置に、第2油圧ポンプとしての機能を有し、かつ回生手段としての機能をも有する両方向ポンプモータ280を配置するようにしている。これに伴って、先の実施形態における回生装置R101と比較して、収縮位置Cにおける第1スプール238のポートP204とP202との間がストレートではなく、ここに流量制御弁258Aが配置されており、且つ、収縮位置Cにおける第2スプール240のポートP214からP211へ向かう油路282が新たに形成されている。なお、両方向ポンプモータ280には、モータとしても、発電機としても機能し得るモータジェネレータ288が接続されている。
【0050】
この回生装置R201では、ブームシリンダ224の伸長工程(ブーム上げの工程)では、第1油圧ポンプ230及び両方向ポンプモータ280によって力行し、収縮工程(ブーム下げの工程)では、両方向ポンプモータ280の駆動によって回転するモータジェネレータ288により回生する。このため、設置スペース的なコンパクト化が可能となる。もし、第2油圧ポンプを残したままの先の実施形態における回生用油圧モータ(34、134)の代わりに両方向ポンプモータ280を設置した場合には、当該第2油圧ポンプを他の用途に使うことができる。この場合には、油圧ショベルとしての他の特性(例えば応答性、あるいは複合操作での各アクチュエータ同士の独立性など)をより高めることができるようになる。この実施形態における回生装置R201では、両方向ポンプモータ280は、自身が回生したエネルギを自身の駆動のために使用することになる。
【0051】
ところで、この実施形態の場合、本発明に係る分岐部Dは、図3のD1と捉えることも、またD2と捉えることもできる。分岐路DをD1と捉えた場合には、該分岐路D1から分流した油路281、282が回生手段としての両方向ポンプモータ280に向かう油路に相当し、油路283、284が油量調整弁258Aに向かう油路に相当していることになる。一方、本発明に係る分岐部Dを図3のD2と捉えた場合には、該分岐路D2から分流した油路282が、回生手段としての両方向ポンプモータ280に向かう油路に相当し、油路285が油量調整弁258Bに向かう油路に相当することになる。何れの場合も本発明の構成要件を満足している。因みに、分岐部DをD2と捉える場合には、この実施形態のスプールは見かけ上2本に分かれているが、分流された油路を受けているのは第2スプール240の方のみということになる。
【0052】
図4に、見かけ上も1本のスプールのみが備えられた例を示す。
【0053】
この図4の実施形態に係る回生装置R301では、3位置5ポートのパイロット式切換弁の機能を果たすスプール390が1個のみ使用され、収縮位置Cにおける該スプール390のポートP305からポートP303に向かう油路の途中に、分岐部Dが存在している。この分岐部Dからブームを下げるときにおけるブームシリンダ324からの戻り油の流れが2本の油路392、394に分流される。分流された一方の油路392は、油路393を介して回生手段としての両方向ポンプモータ380に導かれ、さらにタンク360に導かれている。また、分留された他方の油路394は、流量調整弁358を介してタンク360に導かれている。
【0054】
この実施形態においても、ブームの伸長時においては、油圧ポンプ330及び両方向ポンプモータ380の双方から圧油がブームシリンダ324のボトム側324Aに供給される。また、ブームシリンダ324の収縮時において、両方向ポンプモータ380にはボトム側324Aの戻り油が直接的に供給されており、且つ、戻り油の一部が流量調整弁358を経てタンク360に導かれている。このため、この実施形態においても既に説明した実施形態とほぼ同様の作用を得ることができる。
【0055】
本発明においては、このほかにも種々のバリエーションが存在する。要は、メータアウト側のラインが2つの油路に分流されており、その内の一方が直接回生手段と接続された後にタンクに至り、他方が流量調整手段と接続された後にタンクに至る構成とされていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
ブームを有する作業部を備え、油圧シリンダの伸長・収縮によって前記ブームを駆動可能な作業機械の回生装置に適用可能である。ブームを駆動するブームシリンダの場合、その性質上、回生エネルギが大きく、回生用油圧モータ、あるいは両方向ポンプモータは、相応の容量を必要とする。その一方で、軽作業など、操作性を要求される場合も頻繁に発生するため、エネルギ回生と操作性の両立が不可欠である。
【0057】
本発明は、構造が簡単で、トラブルが発生しにくく、且つ、良好な操作性と回生手段によるエネルギー回生効果を分流によって実現したが、特にエネルギ回生の大きいブームシリンダに適用した場合に、最も顕著な効果が得られる。
【0058】
しかしながら、本発明は、その適用対象を敢えてブームシリンダのみに限定する必要はなく、回生が可能な種々の油圧シリンダの回生装置に適用可能であり、相応の効果が得られる。
【符号の説明】
【0059】
10…油圧ショベル
12…下部走行体
14…上部旋回体
16…作業部
18…ブーム
20…アーム
22…バケット
24…ブームシリンダ
24A…ボトム側
24B…トップ側
26…アームシリンダ
28…バケットシリンダ
30、32…第1、第2油圧ポンプ
34…回生用油圧モータ
36…発電機
38、40…第1、第2スプール
P1〜P4、P11〜P14…ポート
60…タンク
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等の作業機械のエネルギの回生装置、特にブームエネルギの回生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、ブーム、アーム、及びバケット等のアタッチメントを有する作業部を備えた建設機械が開示されている。
【0003】
作業部は、油圧シリンダ(ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ等)の伸縮によって駆動されるように構成され、油圧シリンダのメータアウト側に回生回路が形成されている。回生回路には、戻り油によって駆動されるポンプモータが備えられている。
【0004】
この回生回路は、切り換え手段によって開閉されるようになっており、掘削作業等を行う際には、該回生回路が開かれ、戻り油のエネルギが回収される。一方、微操作作業等を行う際には該回生回路は閉じられ、操作性が重視される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−329012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記建設機械においては、切り換え手段の切り換えは、モニタパネルにて選択された作業モードに依存して行われ、この切り換えによって回生運転、又は操作性重視の運転が切り換えられるようになっていた。
【0007】
そのため、作業が繁雑であり、運転者によっては、切り換えを必ずしも適正に行わないことがあり、意図された回生ができないことがあるという問題があった。
【0008】
これについては、作業状態を何らかの方法で検知あるいは判断し、この切り換えを自動的に行わせることも考えられるが、この場合には、運転者の意図せぬタイミングで切換が行われ、却って操作性が悪化することがあるという問題がある。
【0009】
この本発明は、このような従来の問題を解消するためになされたものであって、操作性の急変を招くことなく、エネルギ回生量の増大と操作性の向上を高度なレベルで両立させることができる作業機械のエネルギ回生装置、特にブームエネルギの回生装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ブームを有する作業部を備え、ブームシリンダの伸長・収縮によって前記ブームを駆動可能な作業機械のブームエネルギの回生装置において、前記ブームを下げるときにおける前記ブームシリンダからの戻り油ラインを2本の油路に分流する分岐部と、分流された一方を、回生手段を介してタンクに導く回生回路と、分流された他方を、流量調整手段を介してタンクに導く流量調整回路と、を備えたことにより、上記課題を解決したものである。
【0011】
本発明によれば、ブームシリンダからのオイルの流れを2本の油路に分流し、その内の一方が回生手段に常に連結されている。
【0012】
その上で、回生回路と流量調整回路に流出する戻り油の流量を制御することにより、ブーム降下速度を制御でき、操作性を向上させることができる。また、回生回路側に流出する戻り油の流量を多く設定することにより、エネルギの回生量を増大させることができる。
【0013】
本発明には、種々のバリーションが考えられる。
【0014】
例えば、流量調整手段による流量調整は、ブームシリンダを駆動している油圧に依存して行うようにするとよい。一般に、掘削作業等の重作業(多量の回生エネルギを回収し得る作業)を行うときには、ブームシリンダを駆動している油圧が高い傾向にある。また、整地作業等の軽作業(微小操作の要求される作業)を行うときには、ブームシリンダを駆動している油圧が低い傾向にある。従って、流量調整をブームシリンダを駆動している油圧に依存して行うことにより、意図する定性的な傾向と合致した制御を行うことができる。
【0015】
また、前記分流された一方と他方は、それぞれ別個のスプールに導くようにするとよい。これにより、回路構成を単純化でき、トラブルが少なく調整の再現性が高い油圧回路を得ることができるようになる。
【0016】
なお、このように分流された一方と他方をそれぞれ別個のスプールに導くようにした場合には、当該別個のスプールには、それぞれ独立したブーム力行用の駆動源を接続するように構成するとよい。これにより、油圧モータあるいは発電機の容量を搭載スペースを考慮したサイズとすることができ、設計の自由度をより拡大できる。
【0017】
本発明における回生手段の具体的構成は、特に限定されないが、例えば、ブームの力行時に駆動源として機能し得る両方向ポンプモータを備える構成とすることができる。この場合には、当該回生回路に配置した両方向ポンプモータを力行時にも活用することができ、その分を、例えば操作トルクの増大、あるいは搭載スペースの縮小などに寄与させることができる。
【0018】
なお、本発明は、ブームを有する作業部を備えた作業機械の駆動装置において、当該ブームにおけるエネルギの回生や操作性の向上に適用すると最も顕著な効果を得ることができるが、本発明の適用対象は必ずしもブームのみに限定されるものではなく、油圧シリンダの伸長・収縮によって駆動される作業部を有する作業機械において同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
比較的単純な構成で、操作性の急変を招くことなく、回生量の増大と操作性の向上を高度なレベルで両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るブームエネルギの回生装置の一実施形態の要部構成を示すスケルトン図
【図2】他の実施形態の要部構成を示すスケルトン図
【図3】更に他の実施形態の要部構成を示すスケルトン図
【図4】更に他の実施形態の要部構成を示すスケルトン図
【図5】本発明が適用された油圧ショベル(作業機械)の全体構成を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面に基づいて、本発明に係る作業機械のブームエネルギの回生装置の好適な実施形態の一例について詳細に説明する。
【0022】
図5に本発明が適用された油圧ショベル(作業機械)10の全体構成を示す。
【0023】
油圧ショベル10は、下部走行体12、上部旋回体14、及び作業部16を備える。
【0024】
作業部16は、ブーム18、アーム20、バケット22を備え、上部旋回体14の運転室23の横から片持ち状態でせり出している。作業部16のブーム18、アーム20、バケット22には、これら18、20、22を駆動する油圧シリンダとして、それぞれブームシリンダ24、アームシリンダ26、バケットシリンダ28が組み込まれている。本実施形態では、このうち特に、ブーム18に組み込まれたブームシリンダ24を収縮するときの戻り油ライン(メータアウト側のライン)に対して本発明が適用されている。
【0025】
図1は、油圧ショベル10のブームエネルギの回生装置R1の要部構成を示すスケルトン図である。
【0026】
回生装置R1は、該ブームシリンダ24に圧油を供給するための第1、第2油圧ポンプ30、32と、ブームシリンダ24からの戻り油を利用して回生エネルギを取り出すための回生用油圧モータ34及び発電機36を備える。また、ブームシリンダ24と第1、第2油圧ポンプ30、32及び回生用油圧モータ34との間のオイルの流れを切換・制御するために、第1、第2スプール38、40を備える。
【0027】
第1、第2スプール38、40は、同一の構造を持ち、それぞれ伸長位置A、中立位置B、収縮位置Cの各位置で、ポートP1〜P4、P11〜P14を所定の接続態様に切り換える3位置4ポートのパイロット式切換弁である。
【0028】
第1、第2スプール38、40のパイロットポートPp1、Pp3と、Pp2、Pp4とには、操作レバー42の操作に対応してそれぞれ同一圧力の油圧が同時に印加可能とされ、第1、第2スプール38、40は同位相で連動して動くようになっている。
【0029】
伸長位置Aは、ブームシリンダ24を伸長させるとき(ブームが上げられるとき)の切換位置に相当している。伸長位置Aでは、第1、第2スプール38、40は、第1、第2油圧ポンプ30、32をポートP1、P4及びポートP11、P14を介して油路52、54と接続し、合流した油路50を力行ラインとしてブームシリンダ24のボトム側24Aと接続する。一方、ブームシリンダ24のトップ側24Bを第1スプール38のポートP3、P2を介して回生用油圧モータ34と接続する。回生用油圧モータ34には、発電機36が連結されており、回生用油圧モータ34から回転動力を得て所定の回生発電を行い、図示せぬバッテリに回生電力を蓄積可能である。
【0030】
中立位置Bは、ブームシリンダ24を保持状態に維持するときの切換位置に相当している。中立位置Bでは、入力側のポートP1、P2、P11、P12及び出力側のポートP3、P4、P13、P14を、それぞれブロックされた状態に維持する。
【0031】
収縮位置Cは、ブームシリンダ24を収縮させるとき(ブームが下げられるとき)の切換位置に相当している。収縮位置Cでは、油路50は、ブームシリンダ24のボトム側24Aからの戻り油ライン(メータアウト側のライン)として機能する。図1から明らかなように、油路50は、分岐部Dにおいて2本の油路52、54に分流されている。そのうちの一方の油路52は、第1スプール38のポートP4、P2を介して回生用油圧モータ34と接続され、さらにタンク60と接続される。これに対し、他方の油路54の方は、第2スプール40の収縮位置Cに相当するスプール内に形成された流量制御弁58と接続され、さらにタンク60へと接続される。
【0032】
第1、第2スプール38、40の切り換えは、完全ブロック状態の中立位置Bを中心として、伸長位置A側及び収縮位置C側に向けてアナログ的に(中間位置を含んで徐々に)切り換え可能である。
【0033】
次に、この回生装置R1の作用を説明する。
【0034】
ブームシリンダ24が伸長されるとき(ブームが上げられるとき)は、操作レバー42の動きに依存してパイロット油圧が第1、第2スプール38、40のパイロットポートPp1及びPp3に印加され、該第1、第2スプール38、40は、伸長位置A側に位置決めされる。このため、第1、第2油圧ポンプ30、32から吐出された圧油はそれぞれ油路52、54を介して油路50に流入した後、ブームシリンダ24のボトム側24Aに供給され、ブームシリンダ24が伸長する。
【0035】
一方、伸長位置Aにおいては、ブームシリンダ24のトップ側24Bが第1スプール38のポートP3、P2を介して回生用油圧モータ34に接続されるため、トップ側24Bに存在していた戻り油は回生用油圧モータ34に流入し、回生用油圧モータ34を回転させる。この回転により、発電機36を回転させることができ、所定のエネルギを回収できる。ただし、ブームシリンダ24が伸長するときは、回収し得るエネルギは、元々それほど多くはなく、回生用油圧モータ34は、「回生」よりは「ブームシリンダ24の伸長制御を適正に行うための所定の背圧発生」という観点で駆動される。なお、第2スプール40のポートP13は、伸長位置Aにおいてはブロックされた状態にあるため、トップ側24Bの戻り油は、その全量が回生用油圧モータ34を介してタンク60に戻る。
【0036】
操作レバー42が操作されない中立状態にあるときは、各パイロット油圧はすべてタンク圧となり、第1、第2スプール38、40のパイロットポートPp1〜Pp4のいずれにもパイロット油圧は導出されない。したがって、該第1、第2スプール38、40は、ばね38a、38b、40a、40bの付勢力により中立位置Bに位置決めされる。このため、第1、第2スプール38、40のすべてのポートP1〜P4、P11〜P14はブロック状態となり、オイルの移動が阻止される。
【0037】
ブームシリンダ24が収縮されるとき(ブームが下げられるとき)は、操作レバー42の動きに依存してパイロット油圧が第1、第2スプール38、40のパイロットポートPp2及びPp4に印加され、該第1、第2スプール38、40は、収縮位置Cに位置決めされる。このため、第1油圧ポンプ30から吐出された圧油が第1スプール38のポートP1、P3を介してブームシリンダ24のトップ側24Bに流入し、ブームシリンダ24が収縮する。
【0038】
このとき、ブームシリンダ24のボトム側24Aに存在していた圧油は、油路50を介して分岐部Dに至り、ここから油路52及び54に分流される。油路52側に分流された圧油は、第1スプール38のポートP4、P2を介して回生用油圧モータ34に流入し、該回生用油圧モータ34を回転させる。この結果、発電機36による回生発電が行われ、回生電力が図示せぬバッテリに蓄積される。
【0039】
一方、油路54側に分流された圧油は、第2スプール40のポートP14から流量調整弁58を通り、ポートP12からタンク60にドレンされる。
【0040】
結局、ブーム18を下げるときにおけるブームシリンダ24からの戻り油は、分岐部Dにおいて2本の油路52、54に分流され、分流された一方が、回生用油圧モータ34を介してタンク60に導かれると共に、分流された他方は、流量調整弁58を介してタンク60に導かれることになる。
【0041】
この回生装置R1によれば、簡単な構成でブーム18のエネルギを回生することができる。第1、第2油圧ポンプ30、32、回生用油圧モータ34、あるいは発電機36の大きさは、分流割合によって任意に変えることができるため、搭載スペースに応じたサイズの選定をすることができるようになり、設計の自由度が高い。
【0042】
この回生装置R1におけるブームシリンダ24の降下速度は、操作レバー42の操作量に応じて変化させる。この場合、操作量が多いほど、降下速度が大きくなる。一方、回生用油圧モータ34に流入する戻り油は、発電機36の速度制御により、また、油路54への戻り油は流量制御弁58によりそれぞれ制御し、操作レバー42の操作量が多いほど、合計流量が多くなるように制御する。
【0043】
図2に示す回生装置R101は、流量制御弁158における流量制御を駆動圧Prにより補正し、操作性をより向上させるようにしたものである。
【0044】
即ち、この回生装置R101では、流量制御弁158における流量制御を、操作レバー142の動きに依存したパイロット操作から切り離すと共に、油圧センサPsをブームシリンダ124のトップ側124Bに配置して駆動圧Prを検出し、ブームの操作状態をこの駆動圧Prをパラメータとして行うようにしている。パイロットポートPp104には、パイロット制御弁170によって駆動圧Prに依存して発生されたパイロット油圧が供給される。
【0045】
例えばバケットに土砂を積み込んでいるときには、ブーム124の負荷が高く、一般に保持圧Phが高い状態にある。この状態では、流量制御弁158を通過する流量が多くなる。そして、第1油圧ポンプ130の吐出量が不足すると駆動圧Prが減少する。そのため、パイロット制御弁170によってパイロット圧を低下させ、これを第2スプール140のパイロットポートPp104に供給する。これにより、第2スプール140は、中立位置B側に移動し、流量制御弁158が絞られることにより、油路154側に分流してきた戻り油は少なくなる。その結果、駆動圧Prが上昇し、第1油圧ポンプ130による補油が適切になされ、逸走が防止される。
【0046】
一方、整地作業などの軽作業を行っているときには、ブーム124の負荷が低く、一般に保持圧Phは低い状態にある。この状態では、流量制御弁158を通過する流量が少なくなる。そして、ブームシリンダ124の降下速度が遅くなると、第1油圧ポンプ130の吐出量の供給が過剰になり、駆動圧Prが大きくなる。そのため、パイロット制御弁170によってパイロット圧を上昇させ、第2スプール140の位置をより収縮位置C側にシフトさせることにより、油路154側に分流してきた戻り油を多くすることができる。この結果、ブームシリンダ124の圧力バランスが良好に保持される。
【0047】
なお、この実施形態では、第1スプール138のパイロットポートPp101、Pp102、及び第2スプール140のパイロットポートP103には、操作レバー142の動きに依存したパイロット圧が供給されるようになっているが、パイロット制御弁170によって生成されたパイロット圧を、第1スプール138のパイロットポートPp102にも並列に供給するようにしてもよいし、図示せぬパイロット制御弁で個別供給してもよい。また、第1スプール138に流量制御弁158を設け、第2スプール140へ回生用油圧モータ134を設けるようにしてもよい。
【0048】
その他の構成は、基本的に図1を用いて既に説明した先の実施形態と同様であるため、図2中で同一または類似する部分に下2桁が同一の符号を付すにとどめ、重複説明を省略する。なお、以降の変形例においても同様である。
【0049】
図3に、本発明の更なる変形例を示す。この実施形態における回生装置R201では、図1、図2の実施形態において第2油圧ポンプ32、132が配置されていた位置に、第2油圧ポンプとしての機能を有し、かつ回生手段としての機能をも有する両方向ポンプモータ280を配置するようにしている。これに伴って、先の実施形態における回生装置R101と比較して、収縮位置Cにおける第1スプール238のポートP204とP202との間がストレートではなく、ここに流量制御弁258Aが配置されており、且つ、収縮位置Cにおける第2スプール240のポートP214からP211へ向かう油路282が新たに形成されている。なお、両方向ポンプモータ280には、モータとしても、発電機としても機能し得るモータジェネレータ288が接続されている。
【0050】
この回生装置R201では、ブームシリンダ224の伸長工程(ブーム上げの工程)では、第1油圧ポンプ230及び両方向ポンプモータ280によって力行し、収縮工程(ブーム下げの工程)では、両方向ポンプモータ280の駆動によって回転するモータジェネレータ288により回生する。このため、設置スペース的なコンパクト化が可能となる。もし、第2油圧ポンプを残したままの先の実施形態における回生用油圧モータ(34、134)の代わりに両方向ポンプモータ280を設置した場合には、当該第2油圧ポンプを他の用途に使うことができる。この場合には、油圧ショベルとしての他の特性(例えば応答性、あるいは複合操作での各アクチュエータ同士の独立性など)をより高めることができるようになる。この実施形態における回生装置R201では、両方向ポンプモータ280は、自身が回生したエネルギを自身の駆動のために使用することになる。
【0051】
ところで、この実施形態の場合、本発明に係る分岐部Dは、図3のD1と捉えることも、またD2と捉えることもできる。分岐路DをD1と捉えた場合には、該分岐路D1から分流した油路281、282が回生手段としての両方向ポンプモータ280に向かう油路に相当し、油路283、284が油量調整弁258Aに向かう油路に相当していることになる。一方、本発明に係る分岐部Dを図3のD2と捉えた場合には、該分岐路D2から分流した油路282が、回生手段としての両方向ポンプモータ280に向かう油路に相当し、油路285が油量調整弁258Bに向かう油路に相当することになる。何れの場合も本発明の構成要件を満足している。因みに、分岐部DをD2と捉える場合には、この実施形態のスプールは見かけ上2本に分かれているが、分流された油路を受けているのは第2スプール240の方のみということになる。
【0052】
図4に、見かけ上も1本のスプールのみが備えられた例を示す。
【0053】
この図4の実施形態に係る回生装置R301では、3位置5ポートのパイロット式切換弁の機能を果たすスプール390が1個のみ使用され、収縮位置Cにおける該スプール390のポートP305からポートP303に向かう油路の途中に、分岐部Dが存在している。この分岐部Dからブームを下げるときにおけるブームシリンダ324からの戻り油の流れが2本の油路392、394に分流される。分流された一方の油路392は、油路393を介して回生手段としての両方向ポンプモータ380に導かれ、さらにタンク360に導かれている。また、分留された他方の油路394は、流量調整弁358を介してタンク360に導かれている。
【0054】
この実施形態においても、ブームの伸長時においては、油圧ポンプ330及び両方向ポンプモータ380の双方から圧油がブームシリンダ324のボトム側324Aに供給される。また、ブームシリンダ324の収縮時において、両方向ポンプモータ380にはボトム側324Aの戻り油が直接的に供給されており、且つ、戻り油の一部が流量調整弁358を経てタンク360に導かれている。このため、この実施形態においても既に説明した実施形態とほぼ同様の作用を得ることができる。
【0055】
本発明においては、このほかにも種々のバリエーションが存在する。要は、メータアウト側のラインが2つの油路に分流されており、その内の一方が直接回生手段と接続された後にタンクに至り、他方が流量調整手段と接続された後にタンクに至る構成とされていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
ブームを有する作業部を備え、油圧シリンダの伸長・収縮によって前記ブームを駆動可能な作業機械の回生装置に適用可能である。ブームを駆動するブームシリンダの場合、その性質上、回生エネルギが大きく、回生用油圧モータ、あるいは両方向ポンプモータは、相応の容量を必要とする。その一方で、軽作業など、操作性を要求される場合も頻繁に発生するため、エネルギ回生と操作性の両立が不可欠である。
【0057】
本発明は、構造が簡単で、トラブルが発生しにくく、且つ、良好な操作性と回生手段によるエネルギー回生効果を分流によって実現したが、特にエネルギ回生の大きいブームシリンダに適用した場合に、最も顕著な効果が得られる。
【0058】
しかしながら、本発明は、その適用対象を敢えてブームシリンダのみに限定する必要はなく、回生が可能な種々の油圧シリンダの回生装置に適用可能であり、相応の効果が得られる。
【符号の説明】
【0059】
10…油圧ショベル
12…下部走行体
14…上部旋回体
16…作業部
18…ブーム
20…アーム
22…バケット
24…ブームシリンダ
24A…ボトム側
24B…トップ側
26…アームシリンダ
28…バケットシリンダ
30、32…第1、第2油圧ポンプ
34…回生用油圧モータ
36…発電機
38、40…第1、第2スプール
P1〜P4、P11〜P14…ポート
60…タンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームを有する作業部を備え、ブームシリンダの伸長・収縮によって前記ブームを駆動可能な作業機械のブームエネルギの回生装置において、
前記ブームを下げるときにおける前記ブームシリンダからの戻り油ラインを2本の油路に分流する分岐部と、
分流された一方を、回生手段を介してタンクに導く回生回路と、
分流された他方を、流量調整手段を介してタンクに導く流量調整回路と、
を備えたことを特徴とする作業機械のブームエネルギの回生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記流量調整手段による流量調整が、前記ブームシリンダを駆動している油圧に依存して行われる
ことを特徴とする作業機械のブームエネルギの回生装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記分流された一方と他方が、それぞれ別個のスプールに導かれている
ことを特徴とする作業機械のブームエネルギの回生装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記別個のスプールには、それぞれ独立したブーム力行用の駆動源が接続されている
ことを特徴とする作業機械のブームエネルギの回生装置。
【請求項5】
請求項1〜4において、
前記回生手段が、前記ブームの力行時には駆動源として機能し得る両方向ポンプモータを備える
ことを特徴とする作業機械のブームエネルギの回生装置。
【請求項6】
油圧シリンダの伸長・収縮によって作業部を駆動可能な作業機械のエネルギの回生装置において、
前記油圧シリンダのメータアウト側のラインを2本の油路に分流する分岐部と、
分流された一方を、回生手段を介してタンクに導く回生回路と、
分流された他方を、流量調整手段を介してタンクに導く調整回路と、
を備えたことを特徴とする作業機械のエネルギの回生装置。
【請求項1】
ブームを有する作業部を備え、ブームシリンダの伸長・収縮によって前記ブームを駆動可能な作業機械のブームエネルギの回生装置において、
前記ブームを下げるときにおける前記ブームシリンダからの戻り油ラインを2本の油路に分流する分岐部と、
分流された一方を、回生手段を介してタンクに導く回生回路と、
分流された他方を、流量調整手段を介してタンクに導く流量調整回路と、
を備えたことを特徴とする作業機械のブームエネルギの回生装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記流量調整手段による流量調整が、前記ブームシリンダを駆動している油圧に依存して行われる
ことを特徴とする作業機械のブームエネルギの回生装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記分流された一方と他方が、それぞれ別個のスプールに導かれている
ことを特徴とする作業機械のブームエネルギの回生装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記別個のスプールには、それぞれ独立したブーム力行用の駆動源が接続されている
ことを特徴とする作業機械のブームエネルギの回生装置。
【請求項5】
請求項1〜4において、
前記回生手段が、前記ブームの力行時には駆動源として機能し得る両方向ポンプモータを備える
ことを特徴とする作業機械のブームエネルギの回生装置。
【請求項6】
油圧シリンダの伸長・収縮によって作業部を駆動可能な作業機械のエネルギの回生装置において、
前記油圧シリンダのメータアウト側のラインを2本の油路に分流する分岐部と、
分流された一方を、回生手段を介してタンクに導く回生回路と、
分流された他方を、流量調整手段を介してタンクに導く調整回路と、
を備えたことを特徴とする作業機械のエネルギの回生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2010−169268(P2010−169268A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63189(P2010−63189)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【分割の表示】特願2005−136392(P2005−136392)の分割
【原出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【分割の表示】特願2005−136392(P2005−136392)の分割
【原出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]