説明

作業機械

【課題】操作部材の切換が短時間に繰り返された場合であってもエア溜りの発生を抑えることができる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械において、連通流路55は、第1パイロット流路53と第2パイロット流路54とを連通し、タンク流路52に接続される。第1絞り57は、第1パイロット流路53と連通流路55との間に設けられる。第2絞り58は、第2パイロット流路54と連通流路55との間に設けられる。コントローラ43は、第1油圧センサ48が検知した油圧と第2油圧センサ49が検知した油圧とに基づいて、電動モータ18を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械は、アクチュエータを操作制御するための操作装置を備えている。操作装置は、オペレータによって操作される操作部材を有しており、操作部材の操作に応じて、アクチュエータの動作が制御される。例えば、特許文献1に示される油圧ショベルは、下部走行体と、下部走行体に載置された上部旋回体と、上部旋回体を旋回させるためのアクチュエータとしての旋回モータとを有している。そして、操作装置のレバーの操作方向および操作量に応じて旋回モータが制御される。
【0003】
上記の操作装置の構成の概略を図5に示す。この操作装置では、操作レバー81の操作方向に応じて、第1パイロット圧制御弁82と第2パイロット圧制御弁83とが択一的に選択される。選択された一方のパイロット圧制御弁は、作動油流路84とパイロット油圧源85とを連通させ、パイロット油圧源85からの作動油を操作レバー81の操作量に応じた圧力に調整して出力する。選択されなかった他方のパイロット圧制御弁は、作動油流路84とタンク86とを連通させる。各作動油流路84の油圧は圧力センサ87,88によって検知される。また、各作動油流路84は絞り89を介して接続されている。そして、コントローラ90は、圧力センサ87,88によって検知された油圧に基づいて、旋回モータ91を制御する。
【0004】
上記の操作装置では、第1パイロット圧制御弁82から送出される作動油は、作動油流路84を通じて圧力センサ87に流れ込む。ここで、仮に圧力センサ87および圧力センサ88のそれぞれで作動油流路84が行き止まりになっていると、作動油中に混在するエアが圧力センサ87の手前で滞留する、いわゆるエア溜りが発生する。エア溜りが発生すると、圧力センサ87の検知機能を低下させる恐れがある。しかし上記の操作装置では、作動油流路84が絞り89を介して互いに接続されている。また、操作レバー81の操作により第1パイロット圧制御弁82が選択されると、第2パイロット圧制御弁83は作動油流路84をタンク86に接続する。このため、第1パイロット圧制御弁82から作動油流路84に供給された作動油中のエアは、絞り89、作動油流路84、及び第2パイロット圧制御弁83を通じてタンク86側に逃がされる。逆に、第2パイロット圧制御弁83が選択されると、第2パイロット圧制御弁83から作動油流路84に供給された作動油中のエアは、絞り89、作動油流路84、及び第1パイロット圧制御弁82を通じてタンク86側に逃がされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−139146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の操作装置では、エアがタンクに逃がされるまでに通過する経路長が長い。従って、エアがタンクに逃がされるまでに必要な時間が長くなる。この場合、操作レバーが短い時間で切り換えられると、エアがタンクに逃がされる前に作動油の流れの方向が切り換えられてしまう。このため、操作レバーの切換が短い時間で繰り返されると、作動油中のエアが、作動油流路、絞り、作動油流路の間を往復移動して、タンクに逃がされなくなる恐れがある。また、エアがタンクまで到達する時間を短くするためには、絞りの量を大きくして作動油の流れを早くすることが考えられる。しかし、この場合、作動油の流量が無駄に大きくなり、油圧源(例えば、油圧ポンプ)の効率を低下させてしまう。
【0007】
本発明の課題は、操作部材の切換が短時間に繰り返された場合であってもエア溜りの発生を抑えることができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る作業機械は、アクチュエータと、作動油を吐出する油圧ポンプと、油圧ポンプに接続されるポンプ流路と、作動油を貯留するタンクと、タンクに接続されるタンク流路と、操作部材と、第1パイロット圧制御部と、第2パイロット圧制御部と、第1パイロット流路と、第2パイロット流路と、第1油圧検知部と、第2油圧検知部と、連通流路と、第1絞りと、第2絞りと、アクチュエータ制御部と、を備える。
【0009】
第1パイロット圧制御部は、ポンプ流路に接続される第1ポンプポートと、タンク流路に接続される第1タンクポートと、第1給排ポートとを有する。第1パイロット圧制御部は、操作部材の操作に応じて出力状態と排出状態とに切り換えられる。第1パイロット圧制御部は、出力状態では、第1ポンプポートと第1給排ポートとを連通させ、操作部材の操作量に応じた圧力の作動油を第1給排ポートから出力する。第1パイロット圧制御部は、排出状態では、第1タンクポートと第1給排ポートとを連通させる。
【0010】
第2パイロット圧制御部は、ポンプ流路に接続される第2ポンプポートと、タンク流路に接続される第2タンクポートと、第2給排ポートとを有する。第2パイロット圧制御部は、第1パイロット圧制御部が排出状態である場合には、出力状態となる。第2パイロット圧制御部は、出力状態では、第2ポンプポートと第2給排ポートとを連通させ、操作部材の操作量に応じた圧力の作動油を第2給排ポートから出力する。第2パイロット圧制御部は、第1パイロット圧制御部が出力状態である場合には、第2タンクポートと第2給排ポートとを連通させる排出状態となる。
【0011】
第1パイロット流路は、第1給排ポートに接続される。第2パイロット流路は、第2給排ポートに接続される。第1油圧検知部は、第1パイロット流路の油圧を検知する。第2油圧検知部は、第2パイロット流路の油圧を検知する。連通流路は、第1パイロット流路と第2パイロット流路とを連通し、タンク流路に接続される。第1絞りは、第1パイロット流路と連通流路との間に設けられる。第2絞りは、第2パイロット流路と連通流路との間に設けられる。アクチュエータ制御部は、第1油圧検知部が検知した油圧と第2油圧検知部が検知した油圧とに基づいて、アクチュエータを制御する。
【0012】
この作業機械では、第1パイロット流路と第2パイロット流路とが連通流路によって連通されている。また、連通流路はタンク流路に接続されている。このため、第1パイロット流路を流れる作動油中のエアは、第2パイロット流路および第2パイロット圧制御部を通らずに、連通流路およびタンク流路を通ってタンクに逃がされることができる。また、第2パイロット流路を流れる作動油中のエアは、第1パイロット流路および第1パイロット圧制御部を通らずに、連通流路及びタンク流路を通ってタンクに逃がされることができる。このため、作動油中のエアがタンクに逃がされるまでの流路が短い。このため、エアがタンクに逃がされるまでに要する時間を短くすることができる。これにより、操作部材の切換が短時間に繰り返された場合であってもエア溜りの発生を抑えることができる。
【0013】
さらに、第1パイロット流路と連通流路との間に第1絞りが設けられることにより、第1油圧検知部が検知する油圧が、タンク流路の油圧の影響を受けることを抑えることができる。また、第2パイロット流路と連通流路との間に第2絞りが設けられることにより、第2油圧検知部が検知する油圧が、タンク流路の油圧の影響を受けることを抑えることができる。これにより、第1油圧検知部および第2油圧検知部による油圧の検知の精度を向上させることができる。
【0014】
第2発明に係る作業機械は、アクチュエータと、作動油を吐出する油圧ポンプと、油圧ポンプに接続されるポンプ流路と、作動油を貯留するタンクと、タンクに接続されるタンク流路と、操作部材と、第1パイロット圧制御部と、第2パイロット圧制御部と、第1パイロット流路と、第2パイロット流路と、第1油圧検知部と、第2油圧検知部と、第1絞りと、第2絞りと、アクチュエータ制御部と、を備える。
【0015】
第1パイロット圧制御部は、ポンプ流路に接続される第1ポンプポートと、タンク流路に接続される第1タンクポートと、第1給排ポートとを有する。第1パイロット圧制御部は、操作部材の操作に応じて出力状態と排出状態とに切り換えられる。第1パイロット圧制御部は、出力状態では、第1ポンプポートと第1給排ポートとを連通させ、操作部材の操作量に応じた圧力の作動油を第1給排ポートから出力する。第1パイロット圧制御部は、排出状態では、第1タンクポートと第1給排ポートとを連通させる。
【0016】
第2パイロット圧制御部は、ポンプ流路に接続される第2ポンプポートと、タンク流路に接続される第2タンクポートと、第2給排ポートとを有する。第2パイロット圧制御部は、第1パイロット圧制御部が排出状態である場合には、出力状態となる。第2パイロット圧制御部は、出力状態では、第2ポンプポートと第2給排ポートとを連通させ、操作部材の操作量に応じた圧力の作動油を第2給排ポートから出力する。第2パイロット圧制御部は、第1パイロット圧制御部が出力状態である場合には、第2タンクポートと第2給排ポートとを連通させる排出状態となる。
【0017】
第1パイロット流路は、第1給排ポートとタンク流路とに接続される。第2パイロット流路は、第2給排ポートとタンク流路とに接続される。第1油圧検知部は、第1パイロット流路の油圧を検知する。第2油圧検知部は、第2パイロット流路の油圧を検知する。第1絞りは、第1パイロット流路とタンク流路との間に設けられる。第2絞りは、第2パイロット流路とタンク流路との間に設けられる。アクチュエータ制御部は、第1油圧検知部が検知した油圧と第2油圧検知部が検知した油圧とに基づいて、アクチュエータを制御する。
【0018】
この作業機械では、第1パイロット流路と第2パイロット流路とがそれぞれ絞りを介してタンク流路に接続されている。このため、第1パイロット流路を流れる作動油中のエアは、第2パイロット流路および第2パイロット圧制御部を通らずに、タンク流路を通ってタンクに逃がされることができる。また、第2パイロット流路を流れる作動油中のエアは、第1パイロット流路および第1パイロット圧制御部を通らずに、タンク流路を通ってタンクに逃がされることができる。このため、作動油中のエアがタンクに逃がされるまでの流路が短い。このため、エアがタンクに逃がされるまでに要する時間を短くすることができる。これにより、操作部材の切換が短時間に繰り返された場合であってもエア溜りの発生を抑えることができる。
【0019】
さらに、第1パイロット流路とタンク流路との間に第1絞りが設けられることにより、第1油圧検知部が検知する油圧が、タンク流路の油圧の影響を受けることを抑えることができる。また、第2パイロット流路とタンク流路との間に第2絞りが設けられることにより、第2油圧検知部が検知する油圧が、タンク流路の油圧の影響を受けることを抑えることができる。これにより、第1油圧検知部および第2油圧検知部による油圧の検知の精度を向上させることができる。
【0020】
第3発明に係る作業機械は、第1発明又は第2発明に記載の作業機械であって、アクチュエータ制御部は、第1油圧検知部が検知した油圧又は第2油圧検知部が検知した油圧が所定の閾値以下の場合は、検知された油圧をアクチュエータの制御に使用しない。
【0021】
この作業機械では、万一、エア溜りが生じても、エアによって実際よりも低く検知された油圧の値は、アクチュエータの制御に使用されない。これにより、アクチュエータの制御を安定させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る作業機械では、作動油中のエアがタンクに逃がされるまでの流路が短い。このため、エアがタンクに逃がされるまでに要する時間を短くすることができる。これにより、操作部材の切換が短時間に繰り返された場合であってもエア溜りの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの斜視図。
【図2】油圧ショベルの油圧回路の概略図。
【図3】旋回モータの操作に関する油圧回路を簡略化した図。
【図4】本発明の他の実施形態に係る油圧回路を示す図。
【図5】従来の作業機械の油圧回路を簡略化した図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<外観構成>
本発明の一実施形態に係る油圧ショベル1を図1に示す。この油圧ショベル1は、走行体2と、旋回体3と、作業機4とを備えている。
【0025】
走行体2は、一対の走行装置11,12を有する。各走行装置11,12は、履帯13,14と走行モータ16,17(図2参照)とを有し、履帯13,14が走行モータ16,17によって駆動されることによって、油圧ショベル1を走行させる。
【0026】
旋回体3は、走行体2上に載置されている。旋回体3は、電動モータ18(図2参照)によって走行体2上において旋回する。また、旋回体3の前部左側位置には運転室15が設けられている。
【0027】
作業機4は、旋回体3の前部中央位置に取り付けられており、ブーム21、アーム22、バケット23を有する。ブーム21の基端部は、旋回体3に回転可能に連結されている。また、ブーム21の先端部はアーム22の基端部に回転可能に連結されている。アーム22の先端部は、バケット23に回転可能に連結されている。また、ブーム21、アーム22およびバケット23のそれぞれに対応するように油圧シリンダ(ブームシリンダ24、アームシリンダ25およびバケットシリンダ26)が配置されている。これらの油圧シリンダ24〜26が駆動されることによって作業機4が駆動され、これにより、掘削等の作業が行われる。
【0028】
<油圧システムの構成>
次に、油圧ショベル1が備える油圧システムの構成を図2に示す。この油圧システムでは、第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ32がエンジン33によって駆動される。第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ32は、ブームシリンダ24、アームシリンダ25、バケットシリンダ26、走行モータ16,17を駆動するための駆動源となる。
【0029】
第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ32から吐出された作動油は、操作弁34を介して、ブームシリンダ24、アームシリンダ25、バケットシリンダ26、走行モータ16,17などの油圧アクチュエータに供給される。また、油圧アクチュエータに供給された作動油は、操作弁34を介してタンク35に排出される。具体的には、操作弁34は、アーム操作弁36、ブーム操作弁37、左走行操作弁38、右走行操作弁39、バケット操作弁40を有する。アーム操作弁36は、アームシリンダ25への作動油の供給及び排出を制御する。ブーム操作弁37はブームシリンダ24への作動油の供給及び排出を制御する。左走行操作弁38は左走行モータ17への作動油の供給及び排出を制御する。右走行操作弁39は、右走行モータ16への作動油の供給及び排出を制御する。バケット操作弁40はバケットシリンダ26への作動油の供給及び排出を制御する。アーム操作弁36、ブーム操作弁37、左走行操作弁38、右走行操作弁39、バケット操作弁40は、それぞれ一対のパイロットポートp1,p2を有しており、各パイロットポートp1,p2へ所定のパイロット圧の作動油が供給されることにより、各操作弁36〜40が制御される。また、アーム操作弁36、ブーム操作弁37、バケット操作弁40に印加されるパイロット圧は、後述する第1操作レバー装置41および第2操作レバー装置42が操作されることによって制御される。左走行操作弁38および右走行操作弁39に印加されるパイロット圧は、図示しない走行レバー装置が操作されることによって制御される。このように、各操作弁36〜40が制御されることにより、作業機4の動作、および走行体2の走行動作が制御される。
【0030】
また、油圧ショベル1では、電動モータ18によって旋回体3が旋回する。電動モータ18は、電力によって駆動され、コントローラ43からの電気的な制御信号によって制御される。コントローラ43は、第1操作レバー装置41および第2操作レバー装置42の操作に応じて電動モータ18を制御する。
【0031】
<操作レバー装置の構成>
以下、第1操作レバー装置41および第2操作レバー装置42と、これらの装置に関する油圧回路の構成について詳細に説明する。
【0032】
第1操作レバー装置41は、オペレータによって操作される第1操作レバー44と、第1パイロット圧制御弁41A、第2パイロット圧制御弁41B、第3パイロット圧制御弁41C、第4パイロット圧制御弁41Dを有する。第2操作レバー装置42は、オペレータによって操作される第2操作レバー45と、第5パイロット圧制御弁42A、第6パイロット圧制御弁42B、第7パイロット圧制御弁42C、第8パイロット圧制御弁42Dとを有する。第1操作レバー44は、前後左右の4方向に操作することができる。第1操作レバー44の4つの操作方向に対応して、第1パイロット圧制御弁41A、第2パイロット圧制御弁41B、第3パイロット圧制御弁41C、第4パイロット圧制御弁41Dが設けられている。第2操作レバー45も第1操作レバー44と同様に、前後左右の4方向に操作することができる。第2操作レバー45の4つの操作方向に対応して、第5パイロット圧制御弁42A、第6パイロット圧制御弁42B、第7パイロット圧制御弁42C、第8パイロット圧制御弁42Dが設けられている。オペレータは、第1操作レバー44および第2操作レバー45を操作することにより、作業機4の動作および旋回体3の旋回動作を制御することができる。これらのパイロット圧制御弁41A〜41D,42A〜42Dのうちの6つは、マルチバルブ47を介して、上述した操作弁36,37,40の各パイロットポートp1,p2に接続されている。また、パイロット圧制御弁41A〜41D,42A〜42Dのうちの2つは、後述する油圧センサ48,49に接続されている。マルチバルブ47は、状態S1から状態S4までの4つの状態に切換可能であり、各状態S1〜S4のいずれかに切り換えられることにより、パイロット圧制御弁41A〜41D,42A〜42Dと、操作弁36〜40の各パイロットポートp1,p2、油圧センサ48,49との間の接続を切り換えることができる。これにより、オペレータは、第1操作レバーおよび第2操作レバーの操作方向と、作業機の動作および旋回体の旋回動作との対応関係を所望のパターンに設定することができる。以下、マルチバルブ47が状態S2である場合について説明する。
【0033】
第1パイロット圧制御弁41Aは、第1ポンプポートX1と、第1タンクポートY1と、第1給排ポートZ1とを有する。第1ポンプポートX1は、ポンプ流路51に接続されている。ポンプ流路51は第3油圧ポンプ50に接続されている。第3油圧ポンプ50は、上述した第1油圧ポンプ31および第2油圧ポンプ32とは別個のポンプである。ただし、第3油圧ポンプ50に代えて第1油圧ポンプ31または第2油圧ポンプ32が用いられてもよい。第1タンクポートY1は、タンク流路52に接続されている。タンク流路52は、作動油を貯留するタンク35に接続されている。第1給排ポートZ1は、第1パイロット流路53に接続されている。第1パイロット圧制御弁41Aは、第1操作レバー44の操作に応じて、出力状態と、排出状態とに切り換えられる。第1パイロット圧制御弁41Aは、出力状態では、第1ポンプポートX1と第1給排ポートZ1とを連通させ、第1操作レバー44の操作量に応じた圧力の作動油を第1給排ポートZ1から第1パイロット流路53に出力する。また、第1パイロット圧制御弁41Aは、排出状態では、第1タンクポートY1と第1給排ポートZ1とを連通させる。
【0034】
第2パイロット圧制御弁41Bは、第2ポンプポートX2と、第2タンクポートY2と、第2給排ポートZ2とを有する。第2ポンプポートX2は、ポンプ流路51に接続されている。第2タンクポートY2は、タンク流路52に接続されている。第2給排ポートZ2は、第2パイロット流路54に接続されている。第2パイロット圧制御弁41Bは、第1操作レバー44の操作に応じて、出力状態と、排出状態とに切り換えられる。第2パイロット圧制御弁41Bは、出力状態では、第2ポンプポートX2と第2給排ポートZ2とを連通させ、第1操作レバー44の操作量に応じた圧力の作動油を第2給排ポートZ2から第2パイロット流路54に出力する。また、第2パイロット圧制御弁41Bは、排出状態では、第2タンクポートY2と第2給排ポートZ2とを連通させる。
【0035】
第1パイロット流路53と第2パイロット流路54とは、連通流路55によって連通されている。連通流路55はタンク流路52に接続されている。また、第1パイロット流路53と連通流路55との間には第1絞り57が設けられている。第2パイロット流路54と連通流路55との間には第2絞り58が設けられている。
【0036】
ここで、第1パイロット圧制御弁41Aと第2パイロット圧制御弁41Bとは、対になっており、互いに反対向きの第1操作レバー44の操作方向に対応している。例えば、第1パイロット圧制御弁41Aと第2パイロット圧制御弁41Bとは、第1操作レバー44の前方向および後方向への操作にそれぞれ対応する。或いは、第1パイロット圧制御弁41Aと第2パイロット圧制御弁41Bとは、第1操作レバー44の右方向および左方向への操作にそれぞれ対応する。第1パイロット圧制御弁41Aと第2パイロット圧制御弁41Bとは、第1操作レバー44の操作によって択一的に選択される。すなわち、第1パイロット圧制御弁41Aが出力状態である場合には、第2パイロット圧制御弁41Bは排出状態となる。また、第1パイロット圧制御弁41Aが排出状態である場合には、第2パイロット圧制御弁41Bは出力状態となる。
【0037】
第1パイロット圧制御弁41Aを介して第1パイロット流路53に供給された作動油の圧力は、第1油圧センサ48によって検知される。第1油圧センサ48は検知した作動油の圧力に応じて電気的な検知信号をコントローラ43に出力する。また、第2パイロット圧制御弁41Bを介して第2パイロット流路54に供給された作動油の圧力は、第2油圧センサ49によって検知される。第2油圧センサ49は検知した作動油の圧力に応じて電気的な検知信号をコントローラ43に出力する。
【0038】
コントローラ43は、第1油圧センサ48が検知した油圧と第2油圧センサ49が検知した油圧とに基づいて、電動モータ18を制御する。すなわち、コントローラ43は、第1油圧センサ48から油圧が検知された場合と、第2油圧センサ49から油圧が検知された場合とでは、逆方向に電動モータ18を回転駆動する。そして、コントローラ43は、検知された油圧の大きさに応じて、旋回速度を調整する。これにより、第1操作レバー44の操作方向および操作量に応じて、旋回体3の旋回方向と旋回速度とが制御される。なお、コントローラ43は、第1油圧センサ48が検知した油圧又は第2油圧センサ49が検知した油圧が所定の閾値以下の場合は、検知された油圧を電動モータ18の制御に使用しない。つまり、コントローラ43は、閾値を越えている油圧の値に基づいて電動モータ18の制御を行う。これにより、油圧センサ48,49の誤検知などにより電動モータ18が予期せぬ動作を行うことを防止することができる。
【0039】
第3パイロット圧制御弁41Cおよび第4パイロット圧制御弁41Dは、上述した第1パイロット圧制御弁41Aおよび第2パイロット圧制御弁41Bのように、対になっており、第1操作レバー44の操作によって択一的に選択される。第3パイロット圧制御弁41Cおよび第4パイロット圧制御弁41Dは、第1パイロット圧制御弁41Aおよび第2パイロット圧制御弁41Bと同様の構成である。第3パイロット圧制御弁41Cは、上述したアーム操作弁36の第2パイロットポートp2へ作動油の供給及び排出を制御する。第4パイロット圧制御弁41Dは、上述したアーム操作弁36の第1パイロットポートp1へ作動油の供給及び排出を制御する。これにより、第1操作レバー44の操作に応じて、アームシリンダ25に対する作動油の供給及び排出が制御され、アームシリンダ25の伸張と収縮とが制御される。
【0040】
第5パイロット圧制御弁42A、第6パイロット圧制御弁42B、第7パイロット圧制御弁42C、第8パイロット圧制御弁42Dは、第1パイロット圧制御弁41A、第2パイロット圧制御弁41B、第3パイロット圧制御弁41C、第4パイロット圧制御弁41Dと同様の構成である。第5パイロット圧制御弁42Aと第6パイロット圧制御弁42Bとは対になっており、第2操作レバー45の操作によって択一的に選択される。また、第7パイロット圧制御弁42Cと第8パイロット圧制御弁42Dとが対になっており、第2操作レバー45の操作によって択一的に選択される。第5パイロット圧制御弁42Aは、上述したバケット操作弁40の第1パイロットポートp1への作動油の供給及び排出を制御する。第6パイロット圧制御弁42Bはバケット操作弁40の第2パイロットポートp2へ作動油の供給及び排出を制御する。これにより、第2操作レバー45の操作に応じて、バケットシリンダ26に対する作動油の供給及び排出が制御され、バケットシリンダ26の伸張と収縮とが制御される。また、第7パイロット圧制御弁42Cは、上述したブーム操作弁37の第1パイロットポートp1へ作動油の供給及び排出を制御する。第8パイロット圧制御弁42Dはブーム操作弁37の第2パイロットポートp2へ作動油の供給及び排出を制御する。これにより、第2操作レバー45の操作に応じて、ブームシリンダ24に対する作動油の供給及び排出が制御され、ブームシリンダ24の伸張と収縮とが制御される。
【0041】
<電動モータ18の操作に関する制御>
図2に示す油圧回路の構成のうち、電動モータ18の操作に関する構成を抜き出して簡略化した図を図3に示す。以下、図3に基づいて、電動モータ18の操作に関する制御を詳細に説明する。
【0042】
第1操作レバー44がある方向(例えば右方向)に倒されると、第1パイロット圧制御弁41Aが出力状態となると共に、第2パイロット圧制御弁41Bが排出状態となる。これにより、ポンプ流路51が第1給排ポートZ1を介して第1パイロット流路53に接続される。また、タンク流路52が第2給排ポートZ2を介して第2パイロット流路54に接続される。このため、第3油圧ポンプ50から吐出された作動油が第1パイロット流路53に供給され、第1油圧センサ48が第1パイロット流路53の油圧を検知する。第1油圧センサ48によって検知された油圧は、検知信号に変換され、コントローラ43に出力される。コントローラ43は、検知信号に基づいて電動モータ18を制御する。第1パイロット流路53に供給された作動油は、第1絞り57、連通流路55、タンク流路52を通り、タンク35に回収される。なお、第2パイロット流路54の作動油は、第2給排ポートZ2およびタンク流路52を通ってタンク35に回収される。
【0043】
ここで、連通流路55において作動油にエアが含まれている場合、エアはタンク流路52を通って直ちに排出される。第1パイロット流路53において作動油にエアが含まれている場合、エアは第1絞り57、連通流路55、タンク流路52を通って排出される。また、第2パイロット流路54の作動油にエアが含まれている場合には、第2パイロット圧制御弁41B、タンク流路52を通って排出される。
【0044】
次に、第1操作レバー44が上記とは反対の方向(例えば左方向)に倒されると、第1パイロット圧制御弁41Aが排出状態となると共に、第2パイロット圧制御弁41Bが出力状態となる。これにより、ポンプ流路51が第2給排ポートZ2を介して第2パイロット流路54に接続される。また、タンク流路52が第1給排ポートZ1を介して第1パイロット流路53に接続される。このため、第3油圧ポンプ50から吐出された作動油が第2パイロット流路54に供給され、第2油圧センサ49が第2パイロット流路54の油圧を検知する。第2油圧センサ49によって検知された油圧は、検知信号に変換され、コントローラ43に出力される。コントローラ43は、検知信号に基づいて電動モータ18を制御する。第2パイロット流路54に供給された作動油は、第2絞り58、連通流路55、タンク流路52を通り、タンク35に回収される。なお、第1パイロット流路53の作動油は、第1給排ポートZ1およびタンク流路52を通ってタンク35に回収される。
【0045】
ここで、連通流路55において作動油にエアが含まれている場合、エアはタンク流路52を通って直ちに排出される。第2パイロット流路54において作動油にエアが含まれている場合、エアは第2絞り58、連通流路55、タンク流路52を通って排出される。また、第1パイロット流路53の作動油にエアが含まれている場合には、第1パイロット圧制御弁41A、タンク流路52を通って排出される。
【0046】
以上のように、作動油のエアが排出される際に通る流路が短いため、短時間でエアを排出することができる。これにより、エア溜りの発生を抑えることができる。また、短時間でエアを排出することができるため、作動油の流速を早めるために第1絞り57及び第2絞り58の絞りを大きくする必要がない。このため、作動油の流量の無駄を防いで、第3油圧ポンプ50の効率を向上させることができる。
【0047】
<他の実施形態>
(a)上記の実施形態では、第1絞り57と第2絞り58との二つの絞りが設けられているが、連通流路55とタンク流路52との間に1つの絞り59が設けられてもよい。
【0048】
(b)上記の実施形態では、第1パイロット流路53とパイロット流路54とが連通流路55によって連通されているが、図4に示すように、第1パイロット流路53と第2パイロット流路54とがそれぞれ独立してタンク流路52に接続されてもよい。この場合、第1パイロット流路53とタンク流路52との間に第1絞り57が設けられ、第2パイロット流路54とタンク流路52との間に第2絞り58が設けられる。
【0049】
(c)上記の実施形態では、電動モータ18が旋回用のアクチュエータとして用いられているが、他のアクチュエータとして用いられてもよい。
【0050】
(d)上記の実施形態では、第1操作レバー装置41は、作業機4の操作と旋回の操作とに共用されているが、作業機4の操作と旋回の操作とのそれぞれに別の操作装置が用いられてもよい。また、操作部材としては、レバーの形態に限らず、他の形態の部材が用いられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、操作部材の切換が短時間に繰り返された場合であってもエア溜りの発生を抑えることができる効果を有し、作業機械として有用である。
【符号の説明】
【0052】
18 電動モータ(アクチュエータ)
35 タンク
41A 第1パイロット圧制御弁(第1パイロット圧制御部)
41B 第2パイロット圧制御弁(第2パイロット圧制御部)
43 コントローラ(アクチュエータ制御部)
44 第1操作レバー(操作部材)
48 第1油圧センサ(第1油圧検知部)
49 第2油圧センサ(第2油圧検知部)
50 第3油圧ポンプ
51 ポンプ流路
52 タンク流路
53 第1パイロット流路
54 第2パイロット流路
55 連通流路
57 第1絞り
58 第2絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータと、
作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプに接続されるポンプ流路と
作動油を貯留するタンクと、
前記タンクに接続されるタンク流路と、
操作部材と、
前記ポンプ流路に接続される第1ポンプポートと、前記タンク流路に接続される第1タンクポートと、第1給排ポートとを有し、前記第1ポンプポートと前記第1給排ポートとを連通させ前記操作部材の操作量に応じた圧力の作動油を前記第1給排ポートから出力する出力状態と、前記第1タンクポートと前記第1給排ポートとを連通させる排出状態とに、前記操作部材の操作に応じて切り換えられる第1パイロット圧制御部と、
前記ポンプ流路に接続される第2ポンプポートと、前記タンク流路に接続される第2タンクポートと、第2給排ポートとを有し、前記第1パイロット圧制御部が排出状態である場合には、前記第2ポンプポートと前記第2給排ポートとを連通させ前記操作部材の操作量に応じた圧力の作動油を前記第2給排ポートから出力する出力状態となり、前記第1パイロット圧制御部が出力状態である場合には、前記第2タンクポートと前記第2給排ポートとを連通させる排出状態となる第2パイロット圧制御部と、
前記第1給排ポートに接続される第1パイロット流路と、
前記第2給排ポートに接続される第2パイロット流路と、
前記第1パイロット流路の油圧を検知する第1油圧検知部と、
前記第2パイロット流路の油圧を検知する第2油圧検知部と、
前記第1パイロット流路と前記第2パイロット流路とを連通し、前記タンク流路に接続される連通流路と、
前記第1パイロット流路と前記連通流路との間に設けられる第1絞りと、
前記第2パイロット流路と前記連通流路との間に設けられる第2絞りと、
前記第1油圧検知部が検知した油圧と前記第2油圧検知部が検知した油圧とに基づいて前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部と、
を備える作業機械。
【請求項2】
アクチュエータと、
作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプに接続されるポンプ流路と
作動油を貯留するタンクと、
前記タンクに接続されるタンク流路と、
操作部材と、
前記ポンプ流路に接続される第1ポンプポートと、前記タンク流路に接続される第1タンクポートと、第1給排ポートとを有し、前記第1ポンプポートと前記第1給排ポートとを連通させ前記操作部材の操作量に応じた圧力の作動油を前記第1給排ポートから出力する出力状態と、前記第1タンクポートと前記第1給排ポートとを連通させる排出状態とに前記操作部材の操作に応じて切り換えられる第1パイロット圧制御部と、
前記ポンプ流路に接続される第2ポンプポートと、前記タンク流路に接続される第2タンクポートと、第2給排ポートとを有し、前記第1パイロット圧制御部が排出状態である場合には、前記第2ポンプポートと前記第2給排ポートとを連通させ前記操作部材の操作量に応じた圧力の作動油を前記第2給排ポートから出力する出力状態となり、前記第1パイロット圧制御部が出力状態である場合には、前記第2タンクポートと前記第2給排ポートとを連通させる排出状態となる第2パイロット圧制御部と、
前記第1給排ポートと前記タンク流路とに接続される第1パイロット流路と、
前記第2給排ポートと前記タンク流路とに接続される第2パイロット流路と、
前記第1パイロット流路の油圧を検知する第1油圧検知部と、
前記第2パイロット流路の油圧を検知する第2油圧検知部と、
前記第1パイロット流路と前記タンク流路との間に設けられる第1絞りと、
前記第2パイロット流路と前記タンク流路との間に設けられる第2絞りと、
前記第1油圧検知部が検知した油圧と前記第2油圧検知部が検知した油圧とに基づいて前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部と、
を備える作業機械。
【請求項3】
前記アクチュエータ制御部は、前記第1油圧検知部が検知した油圧又は前記第2油圧検知部が検知した油圧が所定の閾値以下の場合は、検知された前記油圧を前記アクチュエータの制御に使用しない、
請求項1または請求項2に記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−79728(P2013−79728A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−8278(P2013−8278)
【出願日】平成25年1月21日(2013.1.21)
【分割の表示】特願2009−131142(P2009−131142)の分割
【原出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】