説明

作業用テント

【課題】 取扱い性に優れ、簡易に設置することができるとともに、様々な設置現場に適切に対応することができる作業用テントにて、風雨時でも作業を確保する。
【解決手段】 作業用テント10は、屋上、バルコニー等の構造物1に着脱自在に取り付けられる支持部材12と、この支持部材12に支持されるフレーム14と、このフレーム14を覆うように設置されるシート16とを備えている。フレーム14は、相互に着脱自在に連結される複数の支柱材18を組み付けて形成される。作業用テント10は、複数の支柱材18に跨って設置されて複数の支柱材18間の距離を調整してフレーム14を湾曲させる湾曲手段26を更に備えている。この湾曲手段26は、複数の支柱材18に跨って架けられて複数の支柱材18が相互に接近するように締め付ける締め付けベルト28から成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ビル等の屋上等の構造物に防水シートを敷設する等して防水工事作業をする際に、雨天時等においても工事作業を円滑に行うための作業用テントの改良に関し、特に、様々な作業箇所に適切に、かつ、簡易に対応して作業を確保することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、オフィスビルや学校、住宅等の屋上、バルコニー、ベランダ等の風雨に曝される構造物には、当該構造物の躯体や断熱材等の上に防水シートを敷設して、防水工事をすることが一般的である。この場合、防水シートの敷設箇所は、風雨に曝される箇所である結果、工事の作業中に降雨等があった場合には、雨中での作業を避けるために、工事を中断しなければならず、工事日程が天候に大きく左右されるという問題があった。
【0003】
この場合、作業員が、風雨を気にせずに作業を行うこと自体は困難ではないとしても、防水工事という作業の性質上、設置箇所の防水性を確保するためには、また、施工面の良好な仕上がりを確保するためには、設置対象が乾燥した状態で作業を行う必要があるため、設置箇所が水に濡れた状態では作業自体を行うことができない。
【0004】
このような事態を回避するため、ベランダやバルコニー内等に、風雨が侵入しないように、雨除けのための手段が種々提案されている。その一つとして、ベランダの床面から天井にかけて支持体を設置し、当該支持体にシート又はカーテンを取り付けることが提案されている(例えば、特許文献1、2等参照)。しかし、防水工事は、床面を対象に行われるのが一般的であるため、このように床面に支持体を設置すると、当該箇所については防水作業を行うことができないと同時に、床面を損傷するおそれがある。
【0005】
この点、構造物側に設置されている係止部や物干し竿等を利用して、シートやカーテンを設置することも提案されている(例えば、特許文献3、4等参照)。この手段によれば、確かに、床面への作業には支障がないが、係止部や物干し竿等が存在しない構造物には適用することができず、様々な箇所への防水工事に対応することができない問題がある。
【0006】
更には、防水工事の施工箇所は、一律ではなく、現場によって形状や寸法が異なるため、様々な現場に適切に対応できることが肝要となる。加えて、防水工事は、通常、作業者が、現場に赴いて行うため、雨除けのための手段の収納や運搬が困難であったり、設置に手間を要すると、適切に対応することができない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−76689号公報
【特許文献2】特開2001−262801号公報
【特許文献3】特開平6−146513号
【特許文献4】実用新案登録第3054909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、取扱い性に優れ、簡易に設置することができるとともに、様々な設置現場に適切に対応して、風雨時でも作業を確保することができる作業用テントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、屋上、バルコニー等の構造物に着脱自在に取り付けられる支持部材と、この支持部材に支持されるフレームと、このフレームを覆うように設置されるシートとを備えた作業用テントであって、フレームは、相互に着脱自在に連結される複数の支柱材を組み付けて形成され、作業用テントは、複数の支柱材に跨って設置されて複数の支柱材間の距離を調整してフレームを湾曲させる湾曲手段を更に備えていることを特徴とする作業用テントを提供するものである。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、支持部材は、構造物への防水工事等の工事作業において工事作業の対象面以外の箇所に取り付けられることを特徴とする作業用テントを提供するものである。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1又は第2のいずれかの解決手段において、湾曲手段は、複数の支柱材に跨って架けられて複数の支柱材が相互に接近するように締め付ける紐状部材から成っていることを特徴とする作業用テントを提供するものである。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第3の解決手段において、紐状部材は、締め付け長さが調整可能であることを特徴とする作業用テントを提供するものである。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第1乃至第4のいずれかの解決手段において、フレームは、湾曲させるべき両端支柱材の間にも少なくとも単数又は複数の中間支柱材も湾曲して配置して格子状に形成されていることを特徴とする作業用テントを提供するものである。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するための第6の手段として、上記第1乃至第5のいずれかの解決手段において、フレームのうち、少なくとも湾曲手段により湾曲させるべき支柱材は可撓性を有することを特徴とする作業用テントを提供するものである。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するための第7の手段として、上記第1乃至第6のいずれかの解決手段において、フレームは、湾曲させるべき支柱材に交差する方向に配置された複数の交差方向支柱材も有し、複数の交差方向支柱材のうち湾曲方向の中間に配置された交差方向支柱材を湾曲手段により変位させてフレームの一部を湾曲させた後、湾曲方向の終端部に配置された交差方向支柱材を湾曲手段により変位させてフレームの他の一部を湾曲させて形成されていることを特徴とする作業用テントを提供するものである。
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するための第8の手段として、上記第7の解決手段において、フレームは、湾曲方向の端部に配置された交差方向支柱材を湾曲させた後に、湾曲方向の中間に配置された交差方向支柱材を変位させている湾曲手段を解除して形成されていることを特徴とする作業用テントを提供するものである。
【0017】
本発明は、上記の課題を解決するための第9の手段として、上記第1乃至第8のいずれかの解決手段において、複数の支柱材は、十字状の連結材を介して連結されていることを特徴とする作業用テントを提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、可撓性を有し相互に着脱自在に連結される複数の支柱材を格子状に組み付けてフレームを形成しているため、分解して容易に収納・運搬することができる一方、現場で簡易に組み付けることができる実益がある上に、特に、連結個数を調整することにより、また、湾曲手段により複数の支柱材間の距離を調整してフレームを湾曲させることができるため、様々な寸法の現場に適切に対応することができるとともに、湾曲して設置されたフレームにシートを取り付けることで雨水がシートに溜まらずに効率的に除水することができる実益がある。
【0019】
本発明によれば、上記のように、支持部材を構造物への防水工事等の工事作業において工事作業の対象面以外の箇所に取り付けているため、依頼者の所有物である作業対象面を損傷させることがないと同時に、作業用テントが防水工事の支障となることがなく、風雨を除けつつ、円滑に工事作業を行うことができる実益がある。
【0020】
本発明によれば、上記のように、湾曲させるべき両端支柱材の間にも中間支柱材を湾曲して配置しているため、この中間支柱材によりシート中央部に雨溜まりが発生することを防止することができ、適切に雨除けをすることができると同時に、雨溜まりによりシートに不必要な荷重が負荷されて作業用テントの信頼性を損ねることがない実益がある。
【0021】
本発明によれば、上記のように、複数の交差方向支柱材のうち湾曲方向の中間に配置された交差方向支柱材を湾曲手段により変位させてフレームの一部を湾曲させた後、湾曲方向の終端部に配置された交差方向支柱材を湾曲手段により変位させてフレームの他の一部を湾曲させてフレームを形成しているため、湾曲作業を容易に行うことができるとともに、フレーム全体の曲率を適切に設定することが容易となる実益がある。
【0022】
本発明によれば、上記のように、十字状の連結材を介して複数の支柱材を連結しているため、簡易に組み付け作業を行うことができる実益がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の作業用テントの概略斜視図である。
【図2】本発明に用いられる支持部材を対象物に取り付ける状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に用いられる支持部材の拡大断面図である。
【図4】本発明に用いられる連結材に支柱材を連結する状態を示し、同図(A)は、その概略斜視図、同図(B)はその正面図、同図(C)はその断面図である。
【図5】本発明に用いられる横方向第1支柱材を支持部材に取り付けられたベースパイプに連結する状態、同図(A)は横方向第1支柱材をベースパイプに差し込む状態の概略斜視図、同図(B)は横方向第1支柱材を支持部材に固定する状態の斜視図である。
【図6】本発明に用いられる支柱材を連結する状態を示し、同図(A)は横方向第1支柱材に縦方向第1支柱材を連結する状態の斜視図、同図(B)は縦方向第1支柱材に横方向第2支柱材を連結する状態の斜視図である。
【図7】本発明に用いられる湾曲手段である締め付けベルトを示し、同図(A)はその概略斜視図、同図(B)は締め付けベルトの支柱材への取付部の拡大斜視図である。
【図8】本発明に用いられる湾曲手段である締め付けベルトにより、横方向中間支柱材を変位させて縦方向第1支柱材を湾曲させる状態の斜視図である。
【図9】本発明に用いられる横方向中間支柱材に縦方向第2支柱材及び横方向第2支柱材を連結する状態の斜視図である。
【図10】本発明に用いられる湾曲手段である締め付けベルトにより、横方向第2支柱材を変位させて縦方向支柱材を湾曲させる状態の斜視図である。
【図11】本発明に用いられるフレームにシートを被せる状態の概略斜視宇図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明すると、図1は、本発明の作業用テント10を示し、この作業用テント10は、図1に示すように、例えば、マンションやアパート、戸建て等の居住用、また学校の校舎等の事業用のベランダやバルコニー等の構造物1に使用するのに特に適し、これらの床面への防水工事の対象となる構造物1を風雨から保護して、特に雨中等での防水工事を円滑に行う目的で使用されるものである。但し、その設置箇所には、特に限定はなく、バルコニーやベランダ以外の、例えば、屋根や、また、防水工事以外の工事の対象となる構造物1に使用することもでき、更には、必ずしも作業目的以外の目的で使用することを妨げるものではない。
【0025】
この作業用テント10は、図1及び図11に示すように、屋上、バルコニー等の構造物1に着脱自在に取り付けられる支持部材12と、この支持部材12に支持されるフレーム14と、このフレーム14を覆うように設置されるシート16とを備えている。
【0026】
(1.支持部材)
支持部材12は、図示の実施の形態では、特に図2及び図3に示すように、相互に着脱自在に連結される面ファスナー12Aに取り付けられた一対の養生材12Bと、この養生材12Bを設置対象に締め付けるクランプ12Cとを備えている。
【0027】
この支持部材12は、構造物1への防水工事等の工事作業において工事作業の対象面以外の箇所に取り付けられる。具体的には、ベランダやバルコニー等の防水工事は、その床面を対象に行われるため、支持部材12は、図2に示すように、バルコニーやベランダの腰壁1aやパラペットに跨って設置される。これにより作業対象である床面には、雨除けのための部材が存在することがなく、作業用テント10が防水工事の支障となるのを回避することができる。
【0028】
この場合、支持部材12の取付対象となる腰壁1aやパラペットの肉厚や幅は必ずしも一定ではなく、設置現場毎に異なる。従って、特に図3に示すように、一対の養生材12Bを腰壁1aの表裏両面にあてがった後、壁面に沿って養生材12Bに連結している面ファスナー12Aを設置して相互に密着させることにより、養生材12Bを様々な肉厚や幅を有する腰壁1aやパラペットに適切に密接させて配置することができる。
【0029】
このようにして設置された1対の養生材12Bは、図2に示すように、更に、クランプ12Cにより、腰壁1aに締め付けられて固定される。この場合、クランプ12Cは、腰壁1a等に固定されるため、依頼者の所有物である作業対象面(床面)を損傷させることがなく、養生材12Bを介しているため、腰壁1aも損傷させることがない。なお、この養生材12Bとしては、樹脂製のパッド等を使用することができる。
【0030】
また、このクランプ12Cには、図2に示すように、フレーム14が差し込まれるパイプ状の支持受け12Dが設置されている。支持部材12は、この支持受け12Dにより、フレーム14を支持する。なお、この支持部材12は、少なくとも2カ所に、好ましくは3カ所以上に、より具体的には、設置現場の幅等に応じて設定される後述の縦方向支柱材18A、縦方向中間支柱材18B、ひいては、湾曲手段26を設置すべき箇所及び個数に対応した箇所及び個数に設置する。なお、支持部材12間の間隔は、フレーム14全体の強度を考慮すると1m前後に設定することが好ましい。
【0031】
この場合、図1及び図11に示すように、次に述べるフレーム14(縦方向支柱材18A)は、一般的にはバルコニーやベランダのうち、構造物1と平行に設置された長手方向の腰壁1a(コの字状の腰壁1aのうち、相対向する面がない腰壁1a)から軒下に向けて設置されるため、支持部材12も、当該長手方向の腰壁1aに設置することになる。但し、必ずしも、図1及び図11に示す形態には限られず、支持部材12は、長手方向及び横手方向の双方の腰壁1aに取り付けることもできるし、相対向する横手方向の腰壁1aにのみ支持部材12を取り付けて作業用テント10を横手方向の腰壁1a間にアーチ状に設置することもできる。
【0032】
(2.フレーム)
フレーム14は、図4乃至図10に示すように、相互に着脱自在に連結される複数の支柱材18から成り、これらの複数の支柱材18を組み付けて形成される。従って、その連結個数や、各支柱材18の長さを様々な値に設定することにより、フレーム14の幅や高さ等を設置現場の寸法に応じて調整することができ、これにより種々の寸法の設置現場に適切に対応することができる。
【0033】
これらの支柱材18のうち、少なくとも後述する両端の縦方向支柱材18Aと縦方向中間支柱材18Bは、同じく後述する湾曲手段26により締め付けられて湾曲させる必要があるため、可撓性を有する一方、シート16を確実に支持することができる程度の強度を有する必要がある。このような支柱材18として、図示の実施の形態では、図4乃至図10に示すように、塩化ビニル樹脂等から形成された中空の連結パイプを使用しているのが示されている。この連結パイプとしては、硬質塩化ビニル管を使用した場合、直径が20mm程度、肉厚が3mm程度のものを使用すると、可撓性と強度をバランスよく実現することができるとともに、重量も嵩張らず、運搬や連結等の際の取扱い性も高まる。
【0034】
また、これらの支柱材18である複数の連結パイプは、図4乃至図10に示すように、十字状の連結材20を介して連結されている。具体的には、図4乃至図10に示すように、十字状の連結材20を支柱材18である連結パイプの中空部に挿入した上で、支柱材18である連結パイプと十字状の連結材20とに跨って貫通する抜け止めピン22を装着することにより、支柱材18である複数の連結パイプを格子状に連結することができる。
【0035】
なお、支柱材18は、必ずしも、中空の連結パイプには限定されず、充分な可撓性及び強度を有すれば、他に、図示しない中実のステッィクを使用することもできる。この場合には、例えば、十字状の連結材20を中空として、中実のスティックを連結材20の中空部に挿入することにより、相互に連結してフレーム14とすることができる。また、後述する横方向支柱材18X及び横方向中間支柱材18Yは、湾曲させる対象とはならないため、必ずしも可撓性を有する必要はないが、両端の縦方向支柱材18A及び縦方向中間支柱材18Bと同様の部材、即ち、中空のパイプ、中実のスティックのいずれの形態の支柱材18とすることもできる。この場合、後述する横方向支柱材18X、横方向中間支柱材18Yとしては、硬質塩化ビニル管を使用した場合、直径が20mm程度、肉厚が3mm程度のものを使用することができる。
【0036】
また、図1及び図11に示す軒下側の端部のフレーム部分等、支柱材18を必ずしも十字状に連結する必要がない箇所においては、図示しないT字状の連結材を使用することもできる。いずれにしろ、支柱材18は、このように、連結材20への抜き差し及び抜け止めピン22の装着によって相互に連結されているだけであるため、フレーム14を各支柱材18毎に容易に分解して簡易に収納・運搬することができる一方、現場で簡易に組み付けることができる。
【0037】
このフレーム14は、図1及び図11に示すように、少なくとも、構造物1の床面に交差する方向(縦方向)に湾曲して配置された両端の縦方向支柱材18Aと、この湾曲されるべき両端の縦方向支柱材18Aの上下端に連結されて両端の縦方向支柱材18Aに交差する方向(横方向)に配置された2つの横方向支柱材18Xとを有し、これらの4つの支柱材18により四角枠状の外形を有する。
【0038】
また、このフレーム14は、図示の実施の形態では、図1及び図11に示すように、後述する湾曲手段26により湾曲させるべき両端の縦方向支柱材18Aの間にも、少なくとも単数又は複数の、図示の実施の形態では、3つの縦方向中間支柱材18Bをも有し、この縦方向中間支柱材18Bの上下端にも2つの横方向支柱材18Xを連結することにより、格子状に形成されている。この縦方向中間支柱材18Bにより、シート16の中央部が弛んでシート16の中央部に雨溜まりが発生することを防止することができ、適切に雨除けをすることができると同時に、雨溜まりによりシート16に不必要な荷重が負荷されて作業用テント10の信頼性を損ねることを回避することができる。なお、この縦方向中間支柱材18Bの設置個数は、作業用テント10の設置対象となるバルコニー等の幅に合わせて、現場で適宜設定することができる。
【0039】
一方、図示の実施の形態では、フレーム14は、これらの両端の縦方向支柱材18A及び縦方向中間支柱材18Bの上下端に連結される上下端の横方向支柱材18Xの間にも横方向中間支柱材18Yを有している。この横方向中間支柱材18Yは、図1及び図11に示すように、湾曲方向(縦方向)の途中に配置されて、後述する湾曲手段26により両端の縦方向支柱材18A及び縦方向中間支柱材18Bを湾曲させる際に、湾曲手段26により横方向支柱材18Xに近接するように変位して、湾曲作業を補助する役割を有する。なお、この横方向中間支柱材18Yは、作業用テント10の縦方向の設置寸法が小さい場合には、必ずしも設置する必要はない一方、当該縦方向の寸法が大きい場合には、図示の実施の形態と異なり、2つ以上設置することもできる。
【0040】
上記のフレーム14は、支柱材18及び連結材20を使用して、次のようにして構築することができる。即ち、図5に示すように、支持部材12の支持受け12Dに比較的短いベースパイプ18aを連結する。設置対象の軒高さが低い場合には、このベースパイプ18aを用いることなく、支柱材18を支持部材12の支持受け12Dに直接連結することもできるが、特に、軒高さが高く縦方向支柱材18A、縦方向中間支柱材18Bの長さを長く設定する必要がある場合には、ベースパイプ18aを使用することにより、後述する湾曲手段26により湾曲されるフレーム14の根元の強度や安定度を高めることができる。
【0041】
一方、図5(A)に示すように、複数の支柱材18を十字状の連結材20に同一軸線方向に連結して、複数の支持部材12を結んだ線と平行な方向に配置される横方向第1支柱材18X1を形成し、支柱材18に挿入されていない側の連結材20の突出部を上記ベースパイプ18aに差し込んで、横方向第1支柱材18X1を支持部材12に取り付ける。更に、図5(B)に示すように、この横方向第1支柱材18X1と支持部材12のクランプ12Cとに跨って固定部材24を取り付け、この固定部材24を締め付けることにより、横方向第1支柱材18X1を支持部材12に強固に固定する。これにより、フレーム14やシート16等の支持部材12からの飛散や揺れ等を防止することができる。なお、この固定部材24としては、例えば、面ファスナー、ゴムバンド、紐等を使用することができる。
【0042】
次に、図6(A)に示すように、横方向第1支柱材18X1における十字状の連結材20のうち残りの突出部(ベースパイプ18aに挿入された突出部とは反対側の突出部)に、連結パイプ18を差し込んで、横方向第1支柱材18X1に交差する方向(縦方向)に複数の(図1に示す実施の形態では、5つの)連結材18を連結して、両端の縦方向第1支柱材18A1と、縦方向第1中間支柱材18B1を構築していく。
【0043】
このようにして設置された両端の縦方向第1支柱材18A1及び縦方向第1中間支柱材18B1に、更に、図6(B)に示すように、横方向第1支柱材18X1と同様にして組み付けられた横方向中間支柱材18Yの連結材20を差し込んで、両端の縦方向第1支柱材18A1及び縦方向第1中間支柱材18B1に、横方向中間支柱材18Yを連結する。
【0044】
(3.湾曲手段)
ここに、本発明の作業用テント10は、図7乃至図10に示すように、フレーム14を湾曲させる湾曲手段26を更に備えている。この湾曲手段26は、図7乃至図10に示すように、複数の支柱材18に跨って設置されて複数の支柱材18間の距離を調整してフレーム14を湾曲させる。具体的には、この湾曲手段26は、図示の実施の形態では、図7乃至図10に示すように、複数の支柱材18に跨って架けられて複数の支柱材18が相互に接近するように締め付ける紐状部材、より具体的には、締め付けベルト28から成っている。この締め付けベルト28は、図7乃至図10に示すように、締め付けベルト28を任意の位置で固定することができるストッパー28aを有し、このストッパー28aにて締め付けベルト28を所長の締め付け長さに調整、保持することができる。但し、湾曲手段26は、締め付けベルト28に限定されるものではなく、2つの支柱材18間の距離を調整することができれば、他に、例えば、紐やテープ等の紐状部材を使用することもできる。
【0045】
この場合、必要な全ての支柱材18を組み付けてフレーム14を構築した後に、この湾曲手段26によりフレーム14全体を湾曲させることもできるが、図示の実施の形態では、図6に示す横方向中間支柱材18Yを設置した段階で、図7に示すように、まずは、腰壁1a側の横方向第1支柱材18X1と横方向中間支柱材18Yとに跨って第1の締め付けベルト28Aを巻き付け、次いで、図8に示すように第1の締め付けベルト28Aの長さを調整して、横方向中間支柱材18Yを、支持部材12に固定されている横方向第1支柱材18X1側へ変位させることにより、横方向第1支柱材18X1と横方向中間支柱材18Yとの間に配置された両端の縦方向第1支柱材18A1及び縦方向第1中間支柱材18B1を湾曲させる。この締め付けベルト28Aの締め付け長さを調整することにより、両端の縦方向第1支柱材18A1及び縦方向第1中間支柱材18B1の湾曲の曲率を設置箇所に合わせて適切に設定することができる。
【0046】
なお、この場合、第1の締め付けベルト28Aは、図7乃至図10に示すように、両端の縦方向第1支柱材18A1及び縦方向第1中間支柱材18B1の近傍において、より具体的には、連結材20と抜け止めピン22との間において、横方向第1支柱材18X1と横方向中間支柱材18Yに跨って架けることが好ましい。両端の縦方向第1支柱材18A1及び縦方向第1中間支柱材18B1との中間において跨らせると、横方向第1支柱材18X1と横方向中間支柱材18Yに不必要な負荷がかかり破損するおそれがある一方、両端の縦方向第1支柱材18A1及び縦方向第1中間支柱材18B1の近傍であれば両端の縦方向第1支柱材18A1及び縦方向第1中間支柱材18B1に適切に湾曲のための負荷をかけることができるからである。
【0047】
このようにして、両端の縦方向第1支柱材18A1及び縦方向第1中間支柱材18B1を湾曲させた後は、図9に示すように、更に、横方向第2支柱材18X2が連結された両端の縦方向第2支柱材18A2及び縦方向第2中間支柱材18B2を、連結材20に連結し、フレーム14全体を構築する。その上で、図10(A)に示すように、湾曲方向(縦方向)の始端部に配置された横方向第1支柱材18X1と湾曲方向(縦方向)の終端部に配置された横方向第2支柱材18X2とに跨って、別途、第2の締め付けベルト28Bを架けて締め付け長さを調整し、両端の縦方向支柱材18A(縦方向第1支柱材18A1及び縦方向第2支柱材18A2)及び縦方向中間支柱材18B(縦方向中間支柱材18B1及び縦方向第2中間支柱材18B2)とを湾曲させて、フレーム14全体の湾曲の曲率を調整する。
【0048】
即ち、図示の実施の形態では、複数の横方向支柱材18X、18Yのうち湾曲方向の中間に配置された横方向中間支柱材18Yを変位させてフレーム14の一部を湾曲させた後、湾曲方向の終端部に配置された横方向支柱材18Xを変位させてフレーム14の他の一部を湾曲させてフレーム14を形成する。これにより、フレーム14全体を組み付けてから湾曲させる場合に比べ、湾曲作業が簡易になるとともに、様々な寸法の現場に対応した曲率に適切に調整することが容易となる。
【0049】
この場合、図10(B)に示すように、横方向第1支柱材18X1と横方向中間支柱材18Yとに跨って架けられた第1の締め付けベルト28Aは、湾曲方向(縦方向)の終端部に位置する横方向第2支柱材18X2を変位させてフレーム14全体を湾曲させた段階で初めて取り外す。即ち、湾曲方向の中間に配置された横方向中間支柱材18Yを変位させている第1の締め付けベルト28Aは、図10(A)に示すように、フレーム14全体を湾曲させるまで解除せず、それまでは2つの締め付けベルト28により湾曲状態を保持され、最終的に、湾曲方向(縦方向)の始端部に配置された横方向第1支柱材18X1と湾曲方向(縦方向)の終端部に配置された横方向第2支柱材18X2との間に跨って設置された第2の締め付けベルト28Bにより湾曲方向(縦方向)の始端部に配置された横方向第1支柱材18X1と湾曲方向(縦方向)の終端部に配置された横方向第2支柱材18X2との間の距離を調整してフレーム14全体の湾曲状態を保持する。
【0050】
従って、フレーム14全体を湾曲させた後は、横方向中間支柱材18Yは、第1の締め付けベルト28Aと同様に、その使命を終えるため、図1に示すように、連結材20から取り外すことができる。なお、図示の実施の形態では、1つの横方向中間支柱材18Yのみを使用したが、湾曲方向の長さに応じて、2つ以上の横方向中間支柱材18Yを使用することもできる。また、締め付けベルト28による湾曲作業のタイミングを除いては、支柱材18の組み付け順位には、特に限定はなく、例えば、両端の縦方向第2支柱材18A2及び縦方向第2中間支柱材18B2を連結材20に連結した後に、終端の横方向第2支柱材18X2を連結材20に連結させることもできる。
【0051】
(4.シート)
フレーム14を形成した後は、図1及び図11に示すように、このフレーム14にシート16を覆うように設置する。このシート16は、雨除けのため、防水性を有することが望ましい。具体的には、このシート16としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等の軟質の合成樹脂や、合成ゴム系の材料等から形成された防水性を有する樹脂製のシートを使用することができ、その中でも、特に、ポリ塩化ビニル樹脂から成るシート16が好適といえる。
【0052】
また、このシート16は、図11に示すように、支持部材12よりも外側に配置し、風圧等により飛ばないように、面ファスナー30等の適宜な手段により、フレーム14やバルコニーの手摺り等に固定する。これにより、作業用テント10が完成する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば、マンションやアパート、戸建て等の居住用、また学校の校舎等の事業用のベランダやバルコニー等の防水工事の対象となる構造物において、防水工事作業を行う場合に広く適用することができるほか、作業目的以外の雨除けとして使用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 構造物
1a 構造物の腰壁
10 作業用テント
12 支持部材
12A 面ファスナー
12B 養生材
12C クランプ
12D 支持受け
14 フレーム
16 シート
18 支柱材
18A 縦方向支柱材
18A1 縦方向第1支柱材
18A2 縦方向第2支柱材
18B 縦方向中間支柱材
18B1 縦方向第1中間支柱材
18B2 縦方向第2中間支柱材
18X 横方向支柱材
18X1 横方向第1支柱材
18X2 横方向第2支柱材
18Y 横方向中間支柱材
18a ベースパイプ
20 連結材
22 抜け止めピン
24 固定部材
26 湾曲手段
28 締め付けベルト
28A 第1の締め付けベルト
28B 第2の締め付けベルト
30 面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上、バルコニー等の構造物に着脱自在に取り付けられる支持部材と、前記支持部材に支持されるフレームと、前記フレームを覆うように設置されるシートとを備えた作業用テントであって、前記フレームは、相互に着脱自在に連結される複数の支柱材を組み付けて形成され、前記作業用テントは、前記複数の支柱材に跨って設置されて前記複数の支柱材間の距離を調整して前記フレームを湾曲させる湾曲手段を更に備えていることを特徴とする作業用テント。
【請求項2】
請求項1に記載された作業用テントであって、前記支持部材は、前記構造物への防水工事等の工事作業において前記工事作業の対象面以外の箇所に取り付けられることを特徴とする作業用テント。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された作業用テントであって、前記湾曲手段は、前記複数の支柱材に跨って架けられて前記複数の支柱材が相互に接近するように締め付ける紐状部材から成っていることを特徴とする作業用テント。
【請求項4】
請求項3に記載された作業用テントであって、前記紐状部材は、前記締め付け長さが調整可能であることを特徴とする作業用テント。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された作業用テントであって、前記フレームは、湾曲させるべき両端支柱材の間にも少なくとも単数又は複数の中間支柱材も湾曲して配置して格子状に形成されていることを特徴とする作業用テント。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載された作業用テントであって、前記フレームのうち、少なくとも前記湾曲手段により湾曲させるべき支柱材は可撓性を有することを特徴とする作業用テント。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載された作業用テントであって、前記フレームは、前記湾曲させるべき支柱材に交差する方向に配置された複数の交差方向支柱材も有し、前記複数の交差方向支柱材のうち前記湾曲方向の中間に配置された交差方向支柱材を前記湾曲手段により変位させて前記フレームの一部を湾曲させた後、前記湾曲方向の終端部に配置された交差方向支柱材を前記湾曲手段により変位させて前記フレームの他の一部を湾曲させて形成されていることを特徴とする作業用テント。
【請求項8】
請求項7に記載された作業用テントであって、前記フレームは、前記湾曲方向の端部に配置された交差方向支柱材を湾曲させた後に、前記湾曲方向の中間に配置された交差方向支柱材を変位させている湾曲手段を解除して形成されていることを特徴とする作業用テント。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載された作業用テントであって、前記複数の支柱材は、十字状の連結材を介して連結されていることを特徴とする作業用テント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−84875(P2011−84875A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236512(P2009−236512)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】