説明

作業補助装置

【課題】従来に比して、製造ラインでのレイアウト性及び生産効率を向上できる作業補助装置を提供すること。
【解決手段】ワークWを保持するアタッチメント5を有し、作業者Sが付加する操作力に基づいてワークWを搬送するアーム3と、アーム3を駆動させるエアシリンダ21と、エアシリンダ21に出力するエアの圧力を調整する電空レギュレータと、電空レギュレータと通信可能に設けられて、電空レギュレータの出力エア圧を制御する制御装置7と、を備えることを特徴とする作業補助装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの搬送作業を補助する作業補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場の製造ラインなどでは、比較的重量の重いワークの組み付けに伴う搬送作業などに、作業補助装置が使用されている。この作業補助装置は、ワークを保持したアームに作用する重力を相殺し、大きな負荷がかかる搬送作業を支援することで、作業者の労力を軽減するとともに作業の安全性を確保する。
【0003】
例えば、ワークを保持して昇降させる昇降機構と、エアの圧力によって昇降機構を駆動するエア式の駆動部と、駆動部に対して給排気するエアの流量及び圧力を制御するエア制御部と、エア制御部に対して無線で操作命令を与える無線式操作部と、を備える作業補助装置が開示されている(特許文献1参照)。この装置では、流量制御弁や方向切換弁などから構成されるエア回路をON/OFF制御することで、駆動部に給排気するエアの流量及び圧力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−91391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば自動車の製造ラインなどでは、搬送するワークは多種類に及ぶことが多く、これらのワークの重量は種類毎に異なる。このため、特許文献1の装置で多種類のワークに対応するためには、複数の専用エア回路を設ける必要があり、装置が大型化して製造ラインでのレイアウトの自由度が損なわれていた。
【0006】
また、特許文献1の装置では、ワークの種類の変更に伴うエア回路の切り換え制御は、基本的に作業者の操作に基づいて行われる。このため、複数のエア回路を設けたことによりエア回路の切り換え制御が複雑化すると、エア回路の切り換えに時間を要し、装置の稼働率が低下するとともに、多機種混流生産などの製造ラインの生産効率を阻害する要因となっていた。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来に比して、製造ラインでのレイアウト性及び生産効率を向上できる作業補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明に係る作業補助装置(例えば、後述の作業補助装置1)は、ワーク(例えば、後述のワークW)を保持するワーク保持手段(例えば、後述のアタッチメント5)を有し、作業者が付加する操作力に基づいて前記ワークを搬送するアーム(例えば、後述のアーム3)と、前記アームを駆動させるエア式の駆動手段(例えば、後述のエアシリンダ21)と、前記駆動手段に出力するエアの圧力を調整する電空レギュレータ(例えば、後述の第1電空レギュレータ)と、前記電空レギュレータと通信可能に設けられて、前記電空レギュレータの出力エア圧を制御する制御手段(例えば、後述の制御装置7)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、駆動手段に出力するエアの圧力を調整する手段として、電空レギュレータを設けた。これにより、電気信号に比例して出力エア圧を変更可能な電空レギュレータのみで、例えば種類毎に重量の異なるワーク及びワーク保持手段に対応した適切な出力エア圧を制御でき、アームに作用する重力が相殺されたバランス状態を確保できる。従って、本発明によれば、複数のエア回路を設ける必要がないため装置を小型化でき、製造ラインでのレイアウト性が向上する。また、出力エア圧の制御が容易となり、生産効率を向上できる。
【0010】
また、電空レギュレータの出力エア圧を制御する制御手段を、電空レギュレータと通信可能に設けた。これにより、例えば、作業補助装置の本体とは離間した製造ライン横などのスペースに制御手段を配置できる。従って、本発明によれば、作業補助装置の本体をより小型化でき、製造ラインでのレイアウト性がより向上する。
【0011】
また、前記制御手段は、種類毎に重量の異なるワーク保持手段の種類に応じて、前記電空レギュレータの出力エア圧を制御することが好ましい。
【0012】
この発明では、種類毎に重量の異なるワーク保持手段の種類に応じて、電空レギュレータの出力エア圧を制御する構成とした。
これにより、ワークを保持していない状態においても、種類毎に重量の異なるワーク保持手段の種類に応じて、適切な出力エア圧で電空レギュレータを制御でき、バランス状態を確保できる。従って、この発明によれば、より生産効率を向上できる。
【0013】
また、前記作業補助装置は、更に、種類毎に異なるワークの重量を検出する重量検出手段(例えば、後述の荷重センサ24)を備え、前記制御手段は、前記重量検出手段と通信可能に設けられて、前記重量検出手段で検出された重量データに基づいて、前記電空レギュレータの出力エア圧を制御することが好ましい。
【0014】
この発明では、種類毎に異なるワークの重量を検出する重量検出手段を設けるとともに、検出された重量データに基づいて、電空レギュレータの出力エア圧を制御する構成とした。
これにより、作業者の操作によらずに、ワークの種類に対応した適切な出力エア圧に自動制御できる。また、ワークを保持した負荷状態(即ち、アーム自身の重量、ワーク保持手段の重量及びワークの重量の総重量による重力がアームに作用している状態)と、ワークを保持していない無負荷状態(即ち、アーム自身の重量及びワーク保持手段の重量の総重量による重力がアームに作用している状態)のそれぞれに対応した適切な出力エア圧に自動で制御でき、より生産効率を向上できる。
【0015】
また、作業補助装置(例えば、後述の作業補助装置10)は、更に、作業者が付加する操作力の方向及び大きさを検出する操作力検出手段(例えば、後述の6軸力センサ125,126)を備え、制御手段(例えば、後述の制御装置17)は、前記操作力検出手段と通信可能に設けられて、前記操作力検出手段で検出された操作力の方向及び大きさに基づいて、電空レギュレータ(例えば、後述の第2電空レギュレータ252,第3電空レギュレータ253)の出力エア圧を制御することが好ましい。
【0016】
この発明では、作業者が付加する操作力の方向及び大きさを検出する操作力検出手段を設けた。また、操作力検出手段で検出された操作力の方向及び大きさに基づいて、電空レギュレータの出力エア圧を制御する構成とした。
これにより、例えばアームに作用する重力が相殺されたバランス状態から、作業者がアームを上昇または下降させる際に、操作力検出手段で検出された操作力の方向及び大きさに基づいて、電空レギュレータの出力エア圧を制御できる。従って、作業者の操作力に追従してアームを上昇または下降させることができるため、作業者の操作力を軽減でき、より生産効率が向上する。
【0017】
また、本発明の他の側面による作業補助装置(例えば、後述の作業補助装置10)は、ワーク(例えば、後述のワークW)を保持するワーク保持手段(例えば、後述のアタッチメント5)を有し、作業者が付加する操作力に基づいて前記ワークを搬送するアーム(例えば、後述のアーム13)と、前記アームを駆動させる駆動手段(例えば、後述のエアシリンダ21)と、前記駆動手段を制御する制御手段(例えば、後述の制御装置17)と、作業者が付加する操作力の方向及び大きさを検出する操作力検出手段(例えば、後述の6軸力センサ125,126)と、を備え、前記制御手段は、前記操作力検出手段で検出された操作力の方向及び大きさに応じた制御信号に基づいて、作業者の操作に追従して前記アームを駆動させることを特徴とする。
【0018】
この発明では、エアシリンダに限らず、サーボモータなどの電動モータを駆動手段として備えた作業補助装置において、作業者が付加する操作力の方向及び大きさを検出する操作力検出手段を設けるとともに、この操作力検出手段で検出された操作力の方向及び大きさに応じた制御信号に基づいて、作業者の操作に追従してアームを駆動させる構成とした。
これにより、作業者がアームを上昇または下降させる際に、操作力検出手段で検出された操作力の方向及び大きさに基づいて、作業者の操作力に追従してアームが上昇または下降するように、エアシリンダや電動モータを制御できる。従って、作業者の操作力に追従してアームを上昇または下降させることができるため、作業者の操作力を軽減でき、より生産効率が向上する。
【0019】
また、前記制御手段は、前記駆動手段による前記アームの駆動速度を切り換える切換手段(例えば、後述の切換部)を有することが好ましい。
【0020】
この発明では、エアシリンダや電動モータなどの駆動手段によるアームの駆動速度を切り換え可能な構成とした。
これにより、駆動手段によるアームの駆動速度を、作業者の熟練度に応じて切り換え設定できる。このため、作業者の熟練度を問わず、作業者の意図した操作が可能となり、より生産効率が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来に比して、製造ラインでのレイアウト性及び生産効率を向上できる作業補助装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る作業補助装置の構成を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る作業補助装置のエア圧制御のブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る作業補助装置を配置した自動車の後部シート組み付けラインの平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る作業補助装置でワークを保持するときの動作を説明するための斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る作業補助装置で保持したワークを組み付けするときの動作を説明するための斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る作業補助装置の構成を示す側面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る作業補助装置の6軸力センサグリップを説明するための図であり、(A)は6軸力センサグリップの斜視図であり、(B)は6軸力センサが検出可能な3軸方向の力及び3軸を中心とした回転方向の回転モーメントを示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る作業補助装置のエア圧制御のブロック図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る作業補助装置において、バランスモード時のエア圧制御を説明するための図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る作業補助装置において、バランス状態から作業者がアームを上昇させたときのエア圧制御を説明するための図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る作業補助装置において、バランス状態から作業者がアームを下降させたときのエア圧制御を説明するための図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る作業補助装置の第2電空レギュレータの出力エア圧の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、第2実施形態以降の説明において、第1実施形態と共通する構成については第1実施形態と同一の符号を付し、第1実施形態と共通する構成、動作及び効果についてはその説明を省略する。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る作業補助装置1の構成を示す側面図である。この作業補助装置1は、自動車の後部シート(以下、ワークWともいう)の組み付けラインに適用され、かかる組み付け作業を補助する装置である。
【0025】
図1に示すように、作業補助装置1は、上方に設置された搬送レールRに沿って移動可能に設けられたキャリアCに、棒状の吊下げ部材9を介して吊下げ支持されている。作業補助装置1は、本体2と、アーム3と、アタッチメント5と、制御装置7と、を備える。
【0026】
本体2は、吊下げ部材9を介して吊下げ支持されるとともに、吊下げ部材9の中心軸を中心として、水平方向に回動可能に設けられている。このような本体2に支持されたアーム3は、第1アーム31と、第2アーム32と、第3アーム33と、を備える。
【0027】
第1アーム31は、鉛直方向に回動可能に本体2に支持されている。具体的には、第1アーム31は、てこを構成するように本体2に支持されており、その基端側には、後述するエアシリンダの図示しないピストンロッドが連結されている。第1アーム31は、エアシリンダ内の圧力に応じてピストンロッドが上昇または下降することにより、鉛直方向に駆動する。
【0028】
第2アーム32は、第1アーム31の先端に関節部4を介して支持されている。この第2アーム32は、関節部4から鉛直下方に延びる鉛直部と、この鉛直部の先端から傾斜して下方に延びる傾斜部と、この傾斜部の先端から水平方向に延びる水平部と、から構成される。第2アーム32は、第1アーム31が鉛直方向に回動した場合であっても、水平部が常に水平状態を保つように関節部4に支持される。また、第2アーム32は、鉛直部の中心軸を中心として水平方向に回動可能に設けられている。
【0029】
第3アーム33は、水平方向に回動可能に第2アーム32の先端に支持されている。また、この第3アーム33の下部には、操作ボックス6が設けられている。
操作ボックス6には、アーム3を上昇させる上昇モード設定スイッチや、アーム3を下降させる下降モード設定スイッチの他、アーム3に作用する重力を相殺するバランスモード設定スイッチが設けられている。作業者がこれらの各スイッチをONすることにより、後述する制御装置7によって、アーム3の制御モードは、アーム3を上昇させる上昇モード、アーム3を下降させる下降モードまたはアーム3に作用する重力が相殺されたバランスモードのいずれかに切り換え設定される。
【0030】
また、第3アーム33の先端には、後述するエアシリンダから出力されたエアにより駆動するクランプ機構8が設けられている。このクランプ機構8は、クランプスイッチ及びアンクランプスイッチを備えている。作業者は、これらのスイッチをONすることにより、ワークWをクランプし、またはクランプを解除する。
【0031】
アタッチメント5は、水平方向に回動可能に第3アーム33の先端に支持されている。アタッチメント5は、保持するワークWの種類毎に重量及び形状の異なるものが用いられ、ワークWの種類に応じて、作業者によって交換される。
【0032】
ワークWは、後部シート搬送ライン11Aによって搬送される。作業補助装置1の近傍には、ワークWの種類に対応した複数の異なる交換用のアタッチメント51,52が配置された治具置き場50が設けられている。
【0033】
制御装置7は、本体2と離間して、生産ライン横のスペースに配置されている。制御装置7は、後述する電空レギュレータ部22が備える第1電空レギュレータの出力エア圧を制御(以下、「エア圧制御」という)することで、アーム3のバランス状態を確保したり、アーム3を上昇または下降させる。この制御装置7については、後段で詳述する。
【0034】
本実施形態に係るエア圧制御について説明する。
図2は、本実施形態に係る作業補助装置1のエア圧制御のブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係るエア圧制御は、制御装置7によって、エアシリンダ21、電空レギュレータ部22、エア源23及び荷重センサ24を動作させることにより実行される。
【0035】
エアシリンダ21は、本体2に設けられており、後述する電空レギュレータ部22を介してエア源23に接続されている。エアシリンダ21は、シリンダ及びピストンロッドを含んで構成されており、シリンダ内の圧力に応じてピストンロッドが上昇または下降することにより、ピストンロッドに連結された第1アーム31を鉛直方向に駆動させ、アーム3を鉛直方向に駆動させる。
【0036】
また、エアシリンダ21には、シリンダ内の圧力を検出する図示しないエア圧センサが設けられている。エア圧センサは、制御装置7に通信可能に設けられている。エア圧センサは、保持するワークW及びアタッチメント5の種類毎に、アーム3に作用する重力の相殺に必要なエア圧データを予め検出して制御装置7に出力する。出力されたエア圧データは、後述する制御装置7の記憶部に記憶される。
【0037】
電空レギュレータ部22は、第1電空レギュレータから構成されている。この第1電空レギュレータは、電気信号に比例して出力エア圧を変更可能なレギュレータであり、エアシリンダ21とエア源23との間に設けられている。第1電空レギュレータは、制御装置7と通信回線75により接続されている。第1電空レギュレータは、制御装置7からの制御信号に基づいて、エア源23から供給されるエアの圧力を調整し、圧力が調整されたエアをエアシリンダ21に出力する。なお、本実施形態の通信回線75としては、無線通信回線と有線通信回線のいずれであってもよい。
【0038】
エア源23は、エアコンプレッサを含んで構成されている。エアコンプレッサは、エアを吸引して加圧した後、加圧したエアを、電空レギュレータ部22の第1電空レギュレータを介して、エアシリンダ21に供給する。
【0039】
荷重センサ24は、例えば本体2に設けられ、保持するワークWの重量及びアタッチメント5の重量データを検出する。この荷重センサ24は、制御装置7と通信可能に設けられており、検出した重量データを制御装置7に出力する。
【0040】
制御装置7は、本体2と離間して、製造ライン横のスペースに配置されている。制御装置7は、アナログ信号をデジタル信号に変換するなどの機能を有する入力回路と、CPUと、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果などを記憶する記憶回路と、第1電空レギュレータなどに制御信号を出力する出力回路と、図示しないプログラマブル・コントローラ(以下、「PLC」という)などから構成されている。この制御装置7は、電空レギュレータ部22の第1電空レギュレータと通信回線75により接続されており、第1電空レギュレータの出力エア圧を制御する制御信号を、第1電空レギュレータに送信する。また、上記のようなハードウェア構成からなる制御装置7には、エア制御部71、記憶部72及びタッチパネル表示部73などの各モジュールが構成されている。
【0041】
エア制御部71は、荷重センサ24で検出されたワークW及びアタッチメント5の重量データと、エア圧センサで予め検出され、後述する記憶部72に記憶されたエア圧データに基づいて、第1電空レギュレータの出力エア圧を制御する。
具体的には、エア制御部71は、バランスモード時において、アーム3に作用する鉛直下方向の重力(アーム3自体の重量、ワークWの重量及びアタッチメント5の重量の総量による重力)によってピストンロッドの鉛直上方向に作用する力に対して、等しい大きさで鉛直下方向の力が発生するように、第1電空レギュレータの出力エア圧を制御する。
【0042】
また、エア制御部71は、上昇モード時において、アーム3に作用する上記鉛直下方向の重力によってピストンロッドの鉛直上方向に作用する力に対して、より大きい鉛直下方向の力が発生するように、第1電空レギュレータの出力エア圧を制御する。
また、エア制御部71は、下降モード時において、アーム3に作用する上記鉛直下方向の重力によってピストンロッドの鉛直上方向に作用する力に対して、より小さい鉛直下方向の力が発生するように、第1電空レギュレータの出力エア圧を制御する。
【0043】
記憶部72は、ワークWの種類毎に、アーム3に作用する重力の相殺に必要なエア圧データを記憶する。記憶されるエア圧データには、ワークWの種類毎に、ワークWを保持した負荷状態(即ち、アーム3自身の重量、アタッチメント5の重量及びワークWの重量の総重量による重力がアーム3に作用している状態)と、ワークWを保持していない無負荷状態(即ち、アーム3自身の重量及びアタッチメント5の重量の総重量による重力がアーム3に作用している状態)のそれぞれにおいて、アーム3に作用する重力の相殺に必要なエア圧データが含まれる。これらのエア圧データは、エアシリンダ21に設けられたエア圧センサで予め検出されて、記憶部72に記憶される。これにより、ワークWを保持した状態で、種類毎に重量の異なるワークWの種類に応じて、バランス状態を確保するのに適した出力エア圧への制御が可能となっている。また、ワークWを保持していない状態で、種類毎に重量の異なるアタッチメント5の種類に応じて、バランス状態を確保するのに適した出力エア圧への制御が可能となっている。
【0044】
タッチパネル表示部73は、例えば、エア圧データの追加や変更などの際に使用され、作業者が操作し易いようになっている。特に、制御装置7は図示しないPLCを備えているため、エア圧データの追加や変更が容易となっている。なお、本実施形態では、汎用のPLCが用いられる。
【0045】
次に、本実施形態に係る作業補助装置1の動作について、図3〜6を参照して説明する。図3は、作業補助装置1を配置した自動車の後部シート組み付けラインの平面図である。図3に示すように、作業補助装置1は、後部シートWが搬送される後部シート搬送ライン11Aと、自動車ボディBが搬送される自動車ボディ搬送ライン11Bとの間に配置されている。また、作業補助装置1は、上方に設置された搬送レールRに沿って移動可能に設けられたキャリアCに、棒状の吊下げ部材9を介して吊下げ支持されている。キャリアCは、略正方形の枠体であり、吊下げ部材9を介して吊下げ支持された作業補助装置1は、キャリアCの枠部に沿って移動可能となっている。
【0046】
作業補助装置1の近傍には、ワークWの種類に対応した複数の異なる交換用のアタッチメント51,52が配置された治具置き場50が設けられている。作業者Sは、ワークWの種類の変更に応じて、治具置き場50に配置されているアタッチメント51,52のうち、当該ワークWの種類に対応したアタッチメントへの交換を行う。
このとき、アタッチメント5の交換は、バランスモード下で行われる。作業者SがワークWの種類に対応したアタッチメント5を取り付けると、荷重センサ24で重量データが検出され、検出された重量データは制御装置7に送信される。すると、制御装置7は、送信された重量データと、予め記憶されたエア圧データに基づいて、第1電空レギュレータの出力エア圧を、無負荷状態のアーム3に作用する重力を相殺するのに適したエア圧に制御する。これにより、交換後のアタッチメント5の種類に対応して、無負荷状態のアーム3のバランス状態が自動的に確保される。
【0047】
図4は、作業補助装置1で後部シートWを保持するときの動作を示す斜視図である。図5は、保持した後部シートWを組み付けするときの動作を示す斜視図である。
先ず、図4に示すように、後部シート搬送ライン11A上を搬送されてきた後部シートWを、アーム3の先端に支持されたアタッチメント5により保持する。具体的には、作業者Sは、バランスモード下で、保持する後部シートWの種類に応じたアタッチメント5をアーム3の先端に取り付けた後、アタッチメント5の適切な位置に後部シートWをセットし、クランプスイッチ81をONする。これにより、後部シートWが保持される。
このとき、アタッチメント5に後部シートWを保持すると、荷重センサ24で検出された重量データが制御装置7に送信される。すると、制御装置7は、送信された重量データと、予め記憶されたエア圧データに基づいて、第1電空レギュレータの出力エア圧を、負荷状態のアーム3に作用する重力を相殺するのに適したエア圧に制御する。これにより、保持するワークWの種類に対応して、負荷状態のアーム3のバランス状態が自動的に確保される。
【0048】
次いで、アタッチメント5で保持した後部シートWを、自動車ボディ搬送ライン11B上を搬送されてきた自動車ボディBの後部座席まで搬送する。具体的には、作業者Sは、保持されている後部シートW、アタッチメント5、アーム3などを、直接手で掴み、力を付加して後部シートWを搬送する。このとき、アーム3に作用する重力は相殺されており、バランス状態が確保されているため、作業者Sは小さな操作力で後部シートWを搬送できる。
【0049】
次いで、図5に示すように、自動車ボディBの後部座席まで搬送した後部シートWを、後部座席に組み付けする。具体的には、作業者Sは、後部座席の適切な位置まで後部シートWを搬送した後、アンクランプスイッチ82をONすることにより、後部シートWのクランプを解除する。
このとき、クランプが解除されると、荷重センサ24で検出された重量データが制御装置7に送信される。すると、制御装置7は、送信された重量データと、予め記憶されたエア圧データとに基づいて、第1電空レギュレータの出力エア圧を、無負荷状態のアーム3に作用する重力を相殺するのに適したエア圧に制御する。これにより、アタッチメント5の種類に対応して、無負荷状態のアーム3のバランス状態が自動的に確保される。
【0050】
以上の動作により、作業者Sは、小さな操作力でワークWの搬送、組み付けが可能となっている。
【0051】
本実施形態に係る作業補助装置1によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、エアシリンダ21に出力するエアの圧力を調整する手段として、第1電空レギュレータを備える電空レギュレータ部22を設けた。これにより、電気信号に比例して出力エア圧を変更可能な第1電空レギュレータのみで、例えば種類毎に重量の異なるワークW及びアタッチメント5に対応した適切な出力エア圧を制御でき、アーム3に作用する重力が相殺されたバランス状態を確保できる。従って、本実施形態によれば、複数のエア回路を設ける必要がないため装置を小型化でき、製造ラインでのレイアウト性が向上するとともに、メンテナンス性も向上する。また、出力エア圧の制御が容易となり、生産効率を向上できる。
【0052】
また、アーム3に作用する重力の相殺に必要なエア圧として予め記憶されたエア圧データに基づいて、第1電空レギュレータの出力エア圧を制御する制御装置7を、本体2と離間した位置に第1電空レギュレータと通信可能に設けた。これにより、例えば製造ライン横などのスペースに、制御装置7を配置できる。従って、本実施形態によれば、作業補助装置1の本体2をより小型化でき、製造ラインでのレイアウト性がより向上するとともに、操作性も向上する。
【0053】
また、本実施形態では、種類毎に重量の異なるアタッチメント5の種類に応じて、第1電空レギュレータの出力エア圧を制御する構成とした。
これにより、ワークWを保持していない状態においても、種類毎に重量の異なるアタッチメント5の種類に応じて、適切な出力エア圧で第1電空レギュレータを制御でき、バランス状態を確保できる。従って、本実施形態によれば、より生産効率を向上できる。
【0054】
また、本実施形態では、種類毎に異なるワークW及びアタッチメント5の重量を検出する荷重センサ24を設けるとともに、検出された重量データと予め記憶されたエア圧データに基づいて、第1電空レギュレータの出力エア圧を制御する構成とした。
これにより、作業者Sの操作によらずに、ワークWの種類に対応した適切な出力エア圧に自動制御できる。また、ワークWを保持した負荷状態(即ち、アーム3自身の重量、アタッチメント5の重量及びワークWの重量の総重量による重力がアーム3に作用している状態)と、ワークWを保持していない無負荷状態(即ち、アーム3自身の重量及びアタッチメント5の重量の総重量による重力がアーム3に作用している状態)のそれぞれに対応した適切な出力エア圧に自動で制御でき、より生産効率を向上できる。
【0055】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る作業補助装置10は、第1実施形態に係る作業補助装置1と同様のエア圧制御を実行する他、バランス状態からの作業者Sによるアーム13の上昇操作または下降操作を支援するエア圧制御を実行する。より詳しくは、作業者Sがアーム13に付加する操作力に追従して、アーム13を上昇または下降させるエア圧制御を実行する。
【0056】
図6は、本実施形態に係る作業補助装置10の構成を示す側面図である。図6に示すように、本実施形態に係る作業補助装置10は、関節部4から鉛直下方に延びる鉛直部と、この鉛直部の先端から水平方向に延びる水平部と、から構成される第2アーム132に、第1の6軸力センサグリップG1及び第2の6軸力センサグリップG2を備えている。これらの6軸力センサグリップは、従来公知の6軸力センサグリップであり、同一種類の6軸力センサグリップである。作業者Sは、これらの6軸力センサグリップの少なくとも一方のグリップ部を握った状態で、力を付加してアーム13を操作する。
【0057】
図7は、6軸力センサグリップG1を説明するための図であり、(A)は6軸力センサグリップG1の斜視図であり、(B)は6軸力センサ125が検出可能な3軸方向の力及び3軸を中心とした回転方向の回転モーメントを示す図である。
図6及び図7(A)に示すように、第1の6軸力センサグリップG1は、円柱状の6軸力センサ125と、この6軸力センサ125の先端面から同軸上に延びる棒状のグリップ部133と、第2アーム132に取付けられ、かつ6軸力センサ125及びグリップ部133を支持する支持部134と、から構成されている。第1の6軸力センサグリップG1は、その軸方向を水平方向として、第2アーム132の鉛直部の本体12側に取り付けられている。
【0058】
また、図7(B)に示すように、6軸力センサ125は、X、Y、Z座標系におけるX軸方向の力Fx、Y軸方向の力Fy及びZ軸方向の力Fzを検出する。また、6軸力センサ125は、X軸を中心とした回転方向のモーメント(トルク)Mx、Y軸を中心とした回転方向のモーメントMy及びZ軸を中心とした回転方向のモーメントMzを検出する。これにより、作業者Sが各6軸力センサグリップに付加した操作力の方向及び大きさが検出可能となっている。
【0059】
同様に、図6に示すように、第2の6軸力センサグリップG2は、円柱状の6軸力センサ126と、この6軸力センサ126の先端面から同軸上に延びる棒状のグリップ部135と、第2アーム132に取付けられ、かつ6軸力センサ126及びグリップ部135を支持する支持部136と、から構成されている。第2の6軸力センサグリップG2は、その軸方向を鉛直方向として、第2アーム132の水平部の下側に取り付けられている。
また、6軸力センサ126は、6軸力センサ125と同様に、3軸方向の力と3軸を中心とした回転方向の回転モーメントを検出する。
【0060】
図8は、本実施形態に係る作業補助装置10のエア圧制御のブロック図である。図8に示すように、本実施形態に係るエア圧制御は、制御装置17によって、エアシリンダ21、エア源23、荷重センサ24、電空レギュレータ部25、6軸力センサ125、6軸力センサ126及びデジタル/アナログ(以下、「D/A」という)変換部127を動作させることにより実行される。
【0061】
電空レギュレータ部25は、第1電空レギュレータ、第2電空レギュレータ及び第3電空レギュレータを備えている。第1電空レギュレータは、第1実施形態と同様の構成である。第2電空レギュレータは、エアシリンダ21に出力されるエア圧を増圧し、第3電空レギュレータは、エアシリンダ21に出力されるエア圧を減圧する。電空レギュレータ部25については、後段で詳述する。
【0062】
6軸力センサグリップG1が備える6軸力センサ125及び6軸力センサグリップG2が備える6軸力センサ126は、それぞれ、上述したように作業者Sが各6軸力センサグリップに付加した操作力の方向及び大きさを検出する。これらの6軸力センサは、いずれも制御装置17と通信可能に設けられており、各検出信号を制御装置17に送信する。送信された各検出信号は、制御装置17の図示しない操作力算出部にて加算されて、作業者Sがアーム13に付加した操作力の方向及び大きさ(以下、「操作力データ」という)が算出される。
【0063】
D/A変換部127は、制御装置17からの制御信号をアナログ変換して、通信回線75を介して電空レギュレータ部25へ出力する。これにより、アナログ変換されたアナログ信号が、電空レギュレータ部25に無段階的に出力される。D/A変換部127としては、従来公知のD/A変換器が用いられる。
【0064】
制御装置17は、第1実施形態に係る制御装置7と比べて、エア制御部171と記憶部172の構成が異なり、図示しない切換部を更に備える以外は、同一の構成である。
【0065】
エア制御部171は、第1実施形態に係るエア制御部71と同様に、荷重センサ24で検出されたワークW及びアタッチメント5の重量データと、エア圧センサで予め検出されて記憶部172に記憶されたエア圧データに基づいて、第1電空レギュレータ251の出力エア圧を制御する。これにより、ワークW及びアタッチメント5の種類に応じて、アーム13に作用する重力の相殺に適したエア圧に制御でき、バランス状態が確保される。
【0066】
また、エア制御部171は、上記の操作力データに基づいて、作業者Sがバランス状態からアーム13を上昇させようとしていると判断される場合には、D/A変換部127を介したアナログ制御信号を第2電空レギュレータ252に送信し、第2電空レギュレータ252の出力エア圧を制御する。
【0067】
このとき、第2電空レギュレータ252の出力エア圧は、バランスモード下での第1電空レギュレータ251の出力エア圧毎に設定された、操作力データと第2電空レギュレータ252の出力エア圧との関係に基づいて設定される。ここで、後述するように、電空レギュレータ部25では、第1電空レギュレータ251及び第2電空レギュレータ252が駆動する場合には、出力エア圧の大きな方がエアシリンダ21と接続されるように構成されている。このため、第2電空レギュレータ252の出力エア圧は、バランスモード下での第1電空レギュレータ251の出力エア圧よりも大きく、作業者Sの操作力に追従してアーム13を上昇させるのに必要な出力エア圧に設定される。
また、上記の出力エア圧としては、作業者Sの熟練度に応じて複数のモードが準備されており、予め記憶部172に記憶されている。出力エア圧は、作業者Sの熟練度が高いほど、大きくなるように予め設定されている。後述する切換部により、上記の複数のモードのうちのいずれかに切り換え設定される。
【0068】
また、エア制御部171は、上記の操作力データに基づいて、作業者Sがバランス状態からアーム13を下降させようとしていると判断される場合には、D/A変換部127を介したアナログ制御信号を第3電空レギュレータ253に送信し、第3電空レギュレータ253の出力エア圧を制御する。
【0069】
このとき、第3電空レギュレータ253の出力エア圧は、バランスモード下での第1電空レギュレータ251の出力エア圧毎に設定された、操作力データと第3電空レギュレータ253の出力エア圧との関係に基づいて設定される。ここで、後述するように、電空レギュレータ部25では、第3電空レギュレータ253の入口側がエアシリンダ21側のエア経路と接続するように構成されている。このため、第3電空レギュレータ253の出力エア圧は、バランスモード下での第1電空レギュレータ251の出力エア圧を減圧し、アーム13を下降させるのに必要な出力エア圧に設定される。
なお、上記の出力エア圧としては、作業者Sの熟練度に応じて複数のモードが準備されており、予め記憶部172に記憶されている。出力エア圧は、作業者Sの熟練度が高いほど、大きくなるように予め設定されている。後述する切換部により、上記の複数のモードのうちのいずれかに切り換え設定される。
【0070】
記憶部172は、第1実施形態に係る記憶部72と同様に、ワークWの種類毎に、アーム13に作用する重力の相殺に必要なエア圧データを記憶する。
また、記憶部172は、上述したように、バランスモード下での第1電空レギュレータ251の出力エア圧毎に設定された、操作力データに応じた第2電空レギュレータ252の複数の出力エア圧を記憶する。
同様に、記憶部172は、上述したように、バランスモード下での第1電空レギュレータ251の出力エア圧毎に設定された、操作力データに応じた第3電空レギュレータ253の複数の出力エア圧を記憶する。
なお、これらのエア圧データは、エアシリンダ21に設けられたエア圧センサで予め検出されて、記憶部72に記憶される。
【0071】
図示しない切換部は、例えば作業者Sによるタッチパネル表示部73からの入力に応じて、第2電空レギュレータ252の複数の出力エア圧のモードのうちのいずれかへの切り換えを実行する。同様に、第3電空レギュレータ253の複数の出力エア圧のモードのうちのいずれかへの切り換えを実行する。これにより、作業者Sの熟練度に応じて、エアシリンダ21の駆動速度の切り換えが行われる。
【0072】
本実施形態のエア圧制御について説明する。
図9〜図11は、本実施形態のエア圧制御を説明するための電空レギュレータ部25のエア回路図である。具体的には、図9は、バランスモード時におけるエア圧制御を示す図であり、図10は、バランス状態から作業者Sがアーム13を上昇させたときのエア圧制御を示す図であり、図11は、バランス状態から作業者Sがアーム13を下降させたときのエア圧制御を示す図である。
【0073】
図9〜図11に示すように、電空レギュレータ部25は、第1電空レギュレータ251と、第2電空レギュレータ252と、第3電空レギュレータ253と、シャトル弁255と、を含んで構成されている。これらの図に示すように、入口側がエア源23に接続された第1電空レギュレータ251及び第2電空レギュレータ252は、その出口側がシャトル弁255の2つの入口ポートに接続されている。また、出口側に消音器254を備えた第3電空レギュレータ253は、その入口側がシャトル弁255とエアシリンダ21との間のエア経路に接続されている。
【0074】
図9に示すように、バランスモード時には、制御装置17からの制御信号は、第1電空レギュレータ251にのみ送信される。これにより、図9の実線矢印で示すように、エア源23、第1電空レギュレータ251及びシャトル弁255の経路で、エアシリンダ21にエアが出力される。これにより、ワークW及びアタッチメント5の種類に応じて、アーム13に作用する重力が相殺され、バランス状態が確保される。
【0075】
図10に示すように、バランス状態から作業者Sがアーム13を上昇させたときには、制御装置17からの制御信号が、第1電空レギュレータ251に加えて第2電空レギュレータ252にも送信される。このとき、第2電空レギュレータ252の出力エア圧は第1電空レギュレータ251よりも大きく設定されているため、シャトル弁255の出口は、第2電空レギュレータ252が接続された入口ポートに接続される。これにより、図10の実線矢印で示すように、エア源23、第2電空レギュレータ252及びシャトル弁255の経路で、エアシリンダ21にエアが出力される。これにより、作業者Sの操作力に追従してアーム13が上昇する。
【0076】
図11に示すように、バランス状態から作業者Sがアーム13を下降させたときには、制御装置17からの制御信号が、第1電空レギュレータ251に加えて第3電空レギュレータ253にも送信される。このとき、図11の実線矢印で示すように、第3電空レギュレータ253によって、エアシリンダ21への出力エア圧が減圧される。これにより、作業者Sの操作力に追従してアーム13が下降する。
【0077】
なお、本実施形態では、エアシリンダ21の駆動エアの増圧及び減圧を電空レギュレータで制御したが、エアシリンダ21の代わりに電動モータやサーボモータなどの駆動手段とすることも可能である。
【0078】
図12は、本実施形態に係る作業補助装置10の第2電空レギュレータ252の出力エア圧の例を示す図である。図12の横軸は、作業者Sがアーム13に付加した操作力を示しており、縦軸は第2電空レギュレータ252の出力エア圧を示している。図12に示した例では、第1電空レギュレータ251の出力エア圧は0.28Mpaに設定されている。このため、第2電空レギュレータ252の出力エア圧が0.28Mpaを超えると、シャトル弁255の出口が、第2電空レギュレータ252が接続された入口ポートに接続され、エアシリンダ21のシリンダが動き出すようになっている。
【0079】
図12に示すように、本実施形態の構成によれば、第2電空レギュレータ252の出力エア圧を、操作力に対してリニアに追従させ得ることが分かる。また、図12のモードAとは、操作力に対して第2電空レギュレータ252の出力エア圧を比較的大きく設定した熟練者用モードであり、モードBとは、操作力に対して第2電空レギュレータ252の出力エア圧を比較的小さく設定した初心者用モードである。
【0080】
即ち、図12に示すように、駆動手段の駆動速度を増加または減少させたい場合には、モードを切り換えることで可能となっている。このように本実施形態では、エアシリンダ21によるアーム13の駆動速度を、作業者Sの熟練度に応じて切り換えできるため、作業者Sの熟練度を問わずに作業者Sの意図した操作が可能となり、高い生産効率が得られる。
なお、本実施形態のように駆動手段がエアシリンダ21の場合に限られず、サーボモータなどの電動モータの場合においても、電動モータによるアーム13の駆動速度を切り換えることができる。
【0081】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態では、エアシリンダ21に出力されるエア圧を増圧する第2電空レギュレータ252と、エアシリンダ21に出力されるエア圧を減圧する第3電空レギュレータ253と、作業者Sが付加する操作力の方向及び大きさを検出する6軸力センサ125,126と、を設けた。また、6軸力センサ125,126で検出された操作力の方向及び大きさに基づいた制御信号を、アナログ変換して第2電空レギュレータ252または第3電空レギュレータ253に出力してこれら電空レギュレータの出力エア圧を制御することで、作業者Sの操作に追従してアーム13を上昇または下降させる構成とした。
これにより、アーム13に作用する重力が相殺されたバランス状態から、作業者Sがアーム13を上昇または下降させる際に、6軸力センサ125,126で検出された操作力の方向及び大きさに基づいて、第2電空レギュレータ252または第3電空レギュレータ253を制御できる。より詳しくは、アナログ変換された無段階の制御信号を、第2電空レギュレータ252または第3電空レギュレータ253に出力できる。このため、作業者Sの操作力にリニアに追従してアーム13を上昇または下降させることができるため、作業者Sの操作力を軽減でき、より生産効率が向上する。また、本実施形態によれば、6軸力センサとして例えば安価な力センサを用いた場合であっても、上記の効果が奏される。
【0082】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
上記実施形態では、本発明に係る作業補助装置を自動車の後部シート組み付け作業に適用したが、これに限定されない。他の比較的重量の重いワークの搬送、組み付け作業などに好ましく適用される。
【0083】
また、上記実施形態では、荷重センサで検出されたワーク及びアタッチメントの重量データに基づいて、第1電空レギュレータの出力エア圧の制御を行ったが、これに限定されない。例えば、制御装置に入力された生産計画データに基づいて、第1電空レギュレータの出力エア圧の制御を行ってもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、1台の作業補助装置を1台の制御装置により制御した例を挙げたが、これに限定されない。1台の制御装置で、複数台の作業補助装置を同時に制御することも可能である。
【0085】
また、上記実施形態では、第1から第3の3つの電空レギュレータを組み合わせて駆動力を制御する構成としたが、3つに限ることはなく、精密パイロットレギュレータを用いてもよい。また、レギュレータはエア用に限らず、電動モータやサーボモータ用の制御ユニットに適用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1,10…作業補助装置
3,13…アーム
5…アタッチメント(ワーク保持手段)
7,17…制御装置(制御手段)
21…エアシリンダ(駆動手段)
22,25…電空レギュレータ部
24…荷重センサ(重量検出手段)
125…6軸力センサ(操作力検出手段)
126…6軸力センサ(操作力検出手段)
127…D/A変換部(アナログ変換手段)
251…第1電空レギュレータ
252…第2電空レギュレータ
253…第3電空レギュレータ
W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するワーク保持手段を有し、作業者が付加する操作力に基づいて前記ワークを搬送するアームと、
前記アームを駆動させるエア式の駆動手段と、
前記駆動手段に出力するエアの圧力を調整する電空レギュレータと、
前記電空レギュレータと通信可能に設けられて、前記電空レギュレータの出力エア圧を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする作業補助装置。
【請求項2】
前記制御手段は、種類毎に重量の異なるワーク保持手段の種類に応じて、前記電空レギュレータの出力エア圧を制御することを特徴とする請求項1記載の作業補助装置。
【請求項3】
前記作業補助装置は、更に、種類毎に異なるワークの重量を検出する重量検出手段を備え、
前記制御手段は、前記重量検出手段と通信可能に設けられて、前記重量検出手段で検出された重量データに基づいて、前記電空レギュレータの出力エア圧を制御することを特徴とする請求項1または2記載の作業補助装置。
【請求項4】
前記作業補助装置は、更に、作業者が付加する操作力の方向及び大きさを検出する操作力検出手段を備え、
前記制御手段は、前記操作力検出手段と通信可能に設けられて、前記操作力検出手段で検出された操作力の方向及び大きさに基づいて、前記電空レギュレータの出力エア圧を制御することを特徴とする請求項1から3いずれか記載の作業補助装置。
【請求項5】
ワークを保持するワーク保持手段を有し、作業者が付加する操作力に基づいて前記ワークを搬送するアームと、
前記アームを駆動させる駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段と、
作業者が付加する操作力の方向及び大きさを検出する操作力検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記操作力検出手段で検出された操作力の方向及び大きさに応じた制御信号に基づいて、作業者の操作に追従して前記アームを駆動させることを特徴とする作業補助装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記駆動手段による前記アームの駆動速度を切り換える切換手段を有することを特徴とする請求項5記載の作業補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−51089(P2012−51089A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197773(P2010−197773)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】