説明

作業車のアクセル制御構造

【課題】停車中の指令手段の操作によるエンジン回転数の不必要な上昇を防止する。
【解決手段】定回転制御の実行中に、センサ32の出力に対応するエンジン回転数が記憶手段21Dに記憶したエンジン回転数よりも高くなると、制御手段36が、定回転制御に優先してアクセル制御を実行し、そのアクセル制御の実行中に、センサ32の出力に対応するエンジン回転数が記憶手段21Dに記憶したエンジン回転数よりも低くなると、制御手段36が、アクセル制御を終了して定回転制御を再開するように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダルの操作位置を検出するペダルセンサの出力に基づいて、前記ペダルセンサの出力に対応するエンジン回転数がエンジンの出力回転数として得られるように前記出力回転数を制御するフットアクセル制御を実行し、アクセルレバーの操作位置を検出するレバーセンサの出力に基づいて、前記レバーセンサの出力に対応するエンジン回転数が前記出力回転数として得られるように前記出力回転数を制御するハンドアクセル制御を実行し、記憶手段に記憶したエンジン回転数の読み出しを指令する人為操作式の指令手段の操作に基づいて、前記記憶手段に記憶したエンジン回転数が前記出力回転数として得られるように前記出力回転数を制御する定回転制御を実行する制御手段を備えた作業車のアクセル制御構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車のアクセル制御構造としては、指令手段となるスイッチのオン操作によって、ハンドアクセル制御に優先して定回転制御を実行するように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−195933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成によると、エンジンからの伝動を遮断し、かつ、アクセルレバーをアイドリング位置に位置させた停車状態において、指令手段の操作が行なわれると、その操作に伴って、制御手段がハンドアクセル制御に優先して定回転制御を実行することにより、エンジンの出力回転数が記憶手段に記憶したエンジン回転数まで上昇することになる。つまり、停車状態であるにもかかわらず、指令手段の操作によってエンジンの出力回転数が不必要に上昇するようになっていた。
【0005】
本発明の目的は、アクセルレバーをアイドリング位置に位置させた停車状態において、指令手段の操作によってエンジンの出力回転数が不必要に上昇することのないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
アクセルペダルの操作位置を検出するペダルセンサの出力に基づいて、前記ペダルセンサの出力に対応するエンジン回転数がエンジンの出力回転数として得られるように前記出力回転数を制御するフットアクセル制御と、
アクセルレバーの操作位置を検出するレバーセンサの出力に基づいて、前記レバーセンサの出力に対応するエンジン回転数が前記出力回転数として得られるように前記出力回転数を制御するハンドアクセル制御と、
記憶手段に記憶したエンジン回転数の読み出しを指令する人為操作式の指令手段の操作に基づいて、前記記憶手段に記憶したエンジン回転数が前記出力回転数として得られるように前記出力回転数を制御する定回転制御との何れかを実行する制御手段を備えた作業車のアクセル制御構造であって、
前記定回転制御を実行しておらず且つ前記レバーセンサの出力に対応するエンジン回転数がアイドリング回転数よりも高い場合に前記指令手段が操作されると、前記制御手段が前記定回転制御を実行し、
前記定回転制御を実行しておらず且つ前記レバーセンサの出力に対応するエンジン回転数がアイドリング回転数以下の場合に前記指令手段が操作されると、前記制御手段が前記定回転制御を実行しないように構成してあることを特徴とする。
【0007】
この特徴構成によると、制御手段は、定回転制御を実行しておらず且つエンジンの出力回転数がアイドリング回転数よりも高くなる操作位置にアクセルレバーを操作した場合にのみ、指令手段の操作に基づいて定回転制御を実行することができる。
【0008】
これにより、エンジンからの伝動を遮断し、かつ、アクセルレバーをアイドリング位置に位置させた停車状態において、指令手段の操作が行なわれても、制御手段が定回転制御を実行することを回避することができる。
【0009】
従って、アクセルレバーをアイドリング位置に位置させた停車状態において、指令手段の操作によってエンジンの出力回転数が不必要に上昇することがない。
【0010】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
前記定回転制御の実行中に前記指令手段が操作されると、その操作に基づいて、前記制御手段が、前記定回転制御を終了するとともに、前記フットアクセル制御と前記ハンドアクセル制御のうち、制御目標とするエンジン回転数が高い側のアクセル制御を実行するように構成してあることを特徴とする。
【0011】
この特徴構成によると、指令手段の操作により、車体の走行状態を、記憶手段に記憶したエンジン回転数(以下、記憶回転数と称する)をエンジンの出力回転数とする定速状態(以下、記憶定速状態と称する)と、レバーセンサの出力に対応するエンジン回転数(以下、レバー設定回転数と称する)をエンジンの出力回転数とする定速状態(以下、レバー定速状態と称する)とに簡単に切り替えることが可能になる。
【0012】
また、レバー定速状態においては、ペダルセンサの出力に対応するエンジン回転数(以下、ペダル設定回転数と称する)がレバー設定回転数よりも高くなるようにアクセルペダルを操作することにより、その操作を行なっている間、エンジンの出力回転数をレバー設定回転数からペダル設定回転数に上昇させたペダル増速状態で車体を走行させることができる。そして、このペダル増速状態においてアクセルペダルの操作を解除することにより、レバー定速状態に簡単に復帰させることができる。
【0013】
これにより、例えば、レバー定速状態を作業用とし、記憶定速状態を枕地旋回用とすることにより、作業用の定速状態と枕地旋回用の定速状態とを指令手段の操作によって簡単に得ることができる。そして、作業用の定速状態においては、アクセルペダルの操作によるペダル増速状態を必要に応じて容易に得ることができる。
【0014】
従って、作業用の定速状態と枕地旋回用の定速状態との切り替えを簡便に行なうことができる上に、必要に応じたレバー定速状態からペダル増速状態への移行を容易に行えるようにすることができる。
【0015】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1または2に記載の発明において、
前記定回転制御の実行中に、前記ペダルセンサの出力に対応するエンジン回転数が前記記憶手段に記憶したエンジン回転数よりも高くなると、前記制御手段が、前記定回転制御に優先して前記フットアクセル制御を実行し、その前記フットアクセル制御の優先実行中に、前記ペダルセンサの出力に対応するエンジン回転数が前記記憶手段に記憶したエンジン回転数よりも低くなると、前記制御手段が、前記フットアクセル制御を終了して前記定回転制御を再開するように構成してあることを特徴とする。
【0016】
この特徴構成によると、記憶定速状態においては、ペダル設定回転数が記憶回転数よりも高くなるようにアクセルペダルを操作することにより、その操作を行なっている間、エンジンの出力回転数を記憶回転数からペダル設定回転数に上昇させたペダル増速状態で車体を走行させることができる。そして、このペダル増速状態においてアクセルペダルの操作を解除することにより、記憶定速状態に簡単に復帰させることができる。
【0017】
従って、記憶定速状態においても、アクセルペダルの操作によるペダル増速状態を必要に応じて容易に得ることができる。
【0018】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、
前記定回転制御の実行中に、エンジン回転数が低くなる方向への前記アクセルレバーの操作を前記レバーセンサにより検出し、かつ、その操作後の前記レバーセンサの出力に対応するエンジン回転数が前記記憶手段に記憶したエンジン回転数よりも低くなる場合には、前記制御手段が、前記定回転制御を終了するとともに、前記フットアクセル制御と前記ハンドアクセル制御のうち、制御目標とするエンジン回転数が高い側のアクセル制御を実行するように構成してあることを特徴とする。
【0019】
この特徴構成によると、記憶定速状態において、レバー設定回転数が記憶回転数よりも低くなるようにアクセルレバーを操作することにより、アクセルペダルを操作していない限り、エンジンの出力回転数を記憶回転数よりも低いレバー設定回転数まで低下させた減速状態で車体を走行させることができるとともに、その減速後の速度で車体を定速走行させることができる。
【0020】
つまり、記憶定速状態において、減速する必要が生じた場合には、レバー定速状態での減速操作と同様に、アクセルレバーを減速方向に操作する、といった慣れた操作で車速を低下させて維持することができる。
【0021】
従って、アクセルレバーによる手馴れた操作で記憶定速状態からレバー減速状態への移行を容易に行うことができる。
【0022】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項1〜4のいずれか一つに記載の発明において、
前記定回転制御の実行中に、前記レバーセンサの出力に対応するエンジン回転数がアイドリング回転数以下になるように前記アクセルレバーが操作された場合には、前記制御手段が前記定回転制御を終了するように構成してあることを特徴とする。
【0023】
この特徴構成によると、記憶定速状態においては、レバー設定回転数がアイドリング回転数以下になるようにアクセルレバーを操作することにより、アクセルペダルを操作していない限り、エンジンの出力回転数をアイドリング回転数以下に低下させた減速状態を得ることができる。
【0024】
つまり、記憶定速状態において、減速する必要が生じた場合には、レバー定速状態での減速操作と同様に、アクセルレバーを減速方向に操作する、といった慣れた操作で車速を低下させることができる。
【0025】
従って、アクセルレバーによる手馴れた操作で記憶定速状態からレバー減速状態への移行を容易かつ確実に行うことができる。
【0026】
本発明のうちの請求項6に記載の発明では、上記請求項1〜5のいずれか一つに記載の発明において、
前記定回転制御の実行中に、エンジン回転数が高くなる方向への前記アクセルレバーの操作を前記レバーセンサにより検出し、かつ、その操作後の前記レバーセンサの出力に対応するエンジン回転数が前記記憶手段に記憶したエンジン回転数よりも高くなる場合には、前記制御手段が、前記定回転制御を終了するとともに、前記フットアクセル制御と前記ハンドアクセル制御のうち、制御目標とするエンジン回転数が高い側のアクセル制御を実行するように構成してあることを特徴とする。
【0027】
この特徴構成によると、記憶定速状態において、レバー設定回転数が記憶回転数よりも高くなるようにアクセルレバーを操作することにより、エンジンの出力回転数を記憶回転数よりも高いレバー設定回転数まで上昇させた増速状態で車体を走行させることができるとともに、その増速後の速度で車体を定速走行させることができる。
【0028】
つまり、記憶定速状態において、増速する必要が生じた場合には、レバー定速状態での増速操作と同様に、アクセルレバーを増速方向に操作する、といった慣れた操作で車速を上昇させて維持することができる。
【0029】
従って、アクセルレバーによる手馴れた操作で記憶定速状態からレバー増速状態への移行を容易に行うことができる。
【0030】
本発明のうちの請求項7に記載の発明では、上記請求項1〜6のいずれか一つに記載の発明において、
前記出力回転数の上限を設定する人為操作式の上限設定手段を備え、
前記定回転制御の実行中に、前記上限設定手段により設定した上限回転数が前記記憶手段に記憶したエンジン回転数よりも低くなると、前記制御手段が、前記定回転制御に優先して、前記出力回転数を前記上限回転数に制限する上限回転制御を実行し、
その前記上限回転制御の優先実行中に、前記上限回転数が前記記憶手段に記憶したエンジン回転数よりも高くなると、前記制御手段が、前記上限回転制御を終了して前記定回転制御を再開するように構成してあることを特徴とする。
【0031】
この特徴構成によると、記憶定速状態において、記憶回転数よりも上限回転数が低くなるように、人為操作式の上限設定手段としての上限設定器を操作することにより、記憶定速状態よりも回転数が低い上限定速状態で車体を走行させることができる。そして、この上限定速状態において、記憶回転数よりも上限回転数が高くなるように上限設定器を操作することにより、記憶定速状態に簡単に復帰させることができる。
【0032】
つまり、記憶回転数を基準にした上限設定器の操作による定速回転数の微調整を行うことができ、これにより、記憶定速状態を作業用とする場合には、圃場の状況などに応じた定速回転数の微調整を上限設定器の操作によって容易に行うことができる。
【0033】
また、記憶定速状態においてスリップが発生した場合には、上限回転数が記憶回転数よりも低くなるように上限設定器を操作することにより、スリップの度合いを弱めてグリップ力を上げることができ、スリップ状態から容易に脱出することができる。そして、スリップ状態からの脱出後に、上限回転数が記憶回転数よりも高くなるように上限設定器を操作することにより、記憶定速状態に簡単に復帰させることができる。
【0034】
従って、記憶定速状態での走行中にスリップが発生した場合の脱出操作と、スリップ状態脱出後の定速状態への復帰操作とを簡便に行えるとともに、記憶定速状態での圃場の状況などに応じた定速回転数の微調整を容易に行うことができる。
【0035】
本発明のうちの請求項8に記載の発明では、上記請求項7に記載の発明において、
前記定回転制御の終了時に、前記ペダルセンサの出力に対応する回転数と前記レバーセンサの出力に対応する回転数との双方が、前記上限回転数よりも低い場合には、前記制御手段が、前記フットアクセル制御と前記ハンドアクセル制御のうち、制御目標とするエンジン回転数が高い側のアクセル制御を実行し、
前記定回転制御の終了時に、前記ペダルセンサの出力に対応する回転数と前記レバーセンサの出力に対応する回転数とのいずれか一方が、前記上限回転数よりも高い場合には、前記制御手段が、前記上限回転制御を実行するように構成してあることを特徴とする。
【0036】
この特徴構成によると、記憶定速状態において、レバー設定回転数よりも上限回転数が高くなるように上限設定器を操作すれば、指令手段を操作することにより、記憶定速状態からレバー定速状態に移行させることができる。また、記憶定速状態において、レバー設定回転数よりも上限回転数が低くなるように上限設定器を操作すれば、指令手段を操作することにより、記憶定速状態からレバー定速状態よりもエンジン回転数の低い上限定速状態に移行させることができる。
【0037】
つまり、指令手段の操作により記憶定速状態から移行させる定速状態でのエンジン回転数を、上限設定器の操作により、レバー設定回転数を基準にして微調整することができる。
【0038】
また、レバー定速状態においてスリップが発生した場合には、上限回転数がレバー回転数よりも低くなるように上限設定器を操作することにより、スリップの度合いを弱めてグリップ力を上げることができ、スリップ状態から容易に脱出することができる。そして、スリップ状態からの脱出後に、上限回転数がレバー回転数よりも高くなるように上限設定器を操作することにより、レバー定速状態に簡単に復帰させることができる。
【0039】
従って、レバー定速状態での圃場の状況などに応じた定速回転数の微調整を容易に行えるとともに、レバー定速状態での走行中にスリップが発生した場合の脱出操作と、スリップ状態脱出後の定速状態への復帰操作とを簡便に行うことができる。
【0040】
本発明のうちの請求項9に記載の発明では、上記請求項1〜8のいずれか一つに記載の発明において、
前記記憶手段に第1記憶回転数と第2記憶回転数との2種類のエンジン回転数を記憶し、
前記指令手段を、前記記憶手段に記憶した前記第1記憶回転数の読み出しを指令する第1スイッチと前記記憶手段に記憶した前記第2記憶回転数の読み出しを指令する第2スイッチで構成し、
前記制御手段が、前記定回転制御として、前記第1記憶回転数が前記出力回転数として得られるように前記出力回転数を制御する第1定回転制御と前記第2記憶回転数が前記出力回転数として得られるように前記出力回転数を制御する第2定回転制御との何れかを実行可能であり、
前記第1定回転制御を実行しておらず且つ前記レバーセンサの出力に対応するエンジン回転数がアイドリング回転数よりも高い場合に、前記第1スイッチが操作されると、前記第1定回転制御を実行し、前記第2定回転制御を実行しておらず且つ前記レバーセンサの出力に対応するエンジン回転数がアイドリング回転数よりも高い場合に、前記第2スイッチが操作されると、前記第2定回転制御を実行することを特徴とする。
【0041】
この特徴構成によると、第1スイッチを操作して記憶手段に記憶した一方のエンジン回転数(以下、第1記憶回転数と称する)を選択することにより、第1記憶回転数による定速状態(以下、第1記憶定速状態と称する)で車体を走行させることができる。
【0042】
また、他方のエンジン回転数(以下、第2記憶回転数と称する)を選択することにより、第2記憶回転数による定速状態(以下、第2記憶定速状態と称する)で車体を走行させることができる。
【0043】
つまり、第1記憶定速状態と第2記憶定速状態との2種類の定速状態を得ることができる。そのため、例えば、第1記憶定速状態を代掻き作業用とし、第2記憶定速状態を耕耘作業用とすれば、代掻き作業用の定速状態と耕耘作業用の定速状態とをスイッチの操作によって簡単に得ることができる。また、第1記憶定速状態を作業用とし、第2記憶定速状態を枕地旋回用とすれば、作業用の定速状態と枕地旋回用の定速状態とをスイッチの操作によって簡単に得ることができる。
【0044】
従って、行う作業などに応じた第1記憶定速状態と第2記憶定速状態との切り替えを可能にしながら、その切り替えをスイッチ操作によって簡便に行なうことができる。
【0045】
本発明のうちの請求項10に記載の発明では、上記請求項9に記載の発明において、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチは、モーメンタリスイッチにて構成されていることを特徴とする。
【0046】
この特徴構成によると、一方のモーメンタリスイッチを操作することにより、第1記憶回転数による第1記憶定速状態で車体を走行させることができる。また、他方のモーメンタリスイッチを操作することにより、第2記憶回転数による第2記憶定速状態で車体を走行させることができる。
【0047】
つまり、第1記憶定速状態を選択する専用のモーメンタリスイッチと、第2記憶定速状態を選択する専用のモーメンタリスイッチとを備えることから、単一のスイッチで第1記憶定速状態と第2記憶定速状態とを選択する場合に比較して、選択ミスの発生を抑制することができる。
【0048】
従って、第1記憶定速状態と第2記憶定速状態とを間違えて選択する虞を抑制することができる。
【0049】
本発明のうちの請求項11に記載の発明では、上記請求項2〜10のいずれか一つに記載の発明において、
前記制御手段が、前記定回転制御を終了することにより前記エンジンの出力回転数が上昇する場合には、前記指令手段の操作に基づいて前記エンジンの出力回転数を低下させる場合よりも、エンジン回転数の変化速度が小さくなるように、前記エンジンの出力回転数を制御することを特徴とする。
【0050】
この特徴構成によると、エンジンの出力回転数が上昇する場合の出力回転数の変化が、エンジンの出力回転数が低下する場合よりも穏やかになる。
【0051】
従って、エンジンの出力回転数を上昇させる増速走行時の速度の変化を、エンジンの出力回転数を低下させる減速走行時よりも滑らかにすることができ、結果、増速走行時の乗り心地をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】制御構成を示すブロック図
【図3】液晶表示部での表示内容の切り替えを示す図
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例として、本発明に係る作業車のアクセル制御構造を、作業車の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0054】
図1はトラクタの全体側面図である。このトラクタは、その前部にエンジン1を搭載してある。エンジン1が出力する回転動力は、その回転動力を断続するクラッチ(図示せず)や、フレーム兼用のトランスミッションケース2に内蔵した変速装置(図示せず)などを介して左右一対の前輪3と後輪4、および、トランスミッションケース2の後部から後方に向けて突設した動力取出軸5に伝達する。トラクタの後部には、前輪操舵用のステアリングホイール6や運転座席7などを配備して搭乗運転部8を形成し、搭乗運転部8を覆うキャビン9を装備してある。
【0055】
図2に示すように、エンジン1には、燃料の噴射量や噴射タイミングを電子制御するコモンレール式の燃料噴射装置10を備えている。燃料噴射装置10は、燃料タンク11に貯留した燃料を圧送するサプライポンプ12、圧送した燃料を蓄圧するコモンレール13、蓄圧した燃料を燃料室(図示せず)に噴射する複数のインジェクタ14、コモンレール13の内圧を検出する圧力センサ15、および、圧力センサ15などの出力に基づいてサプライポンプ12や各インジェクタ14などの作動を制御するエンジンコントロールユニット(以下、ECUと略称する)16、などを備えて構成してある。
【0056】
図1に示すように、トランスミッションケース2の後部には、左右一対のリフトアーム17と作業装置連結用のリンク機構18、および、左右のリフトアーム17を上下方向に揺動駆動する左右一対のリフトシリンダ19、などを装備してある。これにより、ロータリ耕耘装置やプラウなどの各種の作業装置(図示せず)を、作業内容に応じて、昇降可能または昇降可能かつローリング可能に付け替え装備することができる。
【0057】
左右のリフトシリンダ19には単動型の油圧シリンダを採用してある。左右のリフトシリンダ19は、それらに対する作動油の流れが電磁制御弁20の作動で制御されることにより伸縮作動する。
【0058】
図2に示すように、このトラクタにはマイクロコンピュータからなる制御装置21を搭載してある。制御装置21には、作業装置の昇降を制御する昇降制御手段21Aを制御プログラムとして備えてある。
【0059】
昇降制御手段21Aは、作業装置を任意の高さ位置に位置させるポジション制御や、作業装置を上限位置まで強制上昇させる強制上昇制御、などを実行するように構成してある。
【0060】
ポジション制御では、第1昇降レバー22の操作位置を検出する第1レバーセンサ23の出力と、リフトアーム17の上下揺動角度を検出するリフトアームセンサ24の出力と、それらの出力を対応させた昇降用のマップデータとに基づいて、リフトアームセンサ24の出力が第1レバーセンサ23の出力に対応する(第1レバーセンサ23の出力の不感帯幅内に収まる)ように、電磁制御弁20の作動を制御して左右のリフトシリンダ19を伸縮作動させる。
【0061】
強制上昇制御は、第2昇降レバー25の操作を検出する第2レバーセンサ26が、第2昇降レバー25の中立位置から上方への操作を検出した場合に、他の昇降制御に優先して実行する。強制上昇制御では、リフトアームセンサ24の出力と予め設定した昇降上限値とに基づいて、リフトアームセンサ24の出力が昇降上限値に対応する(昇降上限値の不感帯幅内に収まる)ように、電磁制御弁20の作動を制御して左右のリフトシリンダ19を伸長作動させる。この強制上昇後に第2レバーセンサ26が第2昇降レバー25の中立位置から下方への操作を検出すると、第1レバーセンサ23の出力と、リフトアームセンサ24の出力と、昇降用のマップデータとに基づいて、リフトアームセンサ24の出力が第1レバーセンサ23の出力に対応する(第1レバーセンサ23の出力の不感帯幅内に収まる)ように、電磁制御弁20の作動を制御して左右のリフトシリンダ19を収縮作動させ、その後、強制上昇制御を終了する。
【0062】
昇降用のマップデータは、第1レバーセンサ23の出力を作業装置の目標高さ位置とし、リフトアームセンサ24の出力を作業装置の実高さ位置として、それらの出力を対応させてある。
【0063】
つまり、第1昇降レバー22の操作に基づいて昇降制御手段21Aが任意昇降制御を実行することにより、第1昇降レバー22の操作位置に対応する任意の高さ位置まで作業装置を昇降させることができる。
【0064】
また、第2昇降レバー25の操作に基づいて昇降制御手段21Aが強制上昇制御を実行することにより、予め設定した昇降上限値に対応する昇降上限位置まで作業装置を自動上昇させることができるとともに、第1昇降レバー22の操作位置に対応する任意の高さ位置まで作業装置を自動下降させることができる。
【0065】
これにより、例えば、トラクタの後部にロータリ耕耘装置などの作業装置を連結して耕耘作業を行う場合には、第1昇降レバー22の操作により、所望の耕深が得られるように作業装置の高さ位置を任意に設定して耕耘作業を行い、この耕耘作業中に畦際で車体を方向転換させる枕地旋回を開始する際には、第2昇降レバー25を上方に向けて操作することにより、作業装置を上限位置まで簡単に上昇させることができる。その結果、作業装置が接地しながら旋回することに起因して旋回内側が掘れる、といった不都合の発生を容易に回避することができる。また、枕地旋回の終了直前に第2昇降レバー25を下方に向けて操作することにより、第1昇降レバー22の操作で設定した任意の作業高さ位置まで作業装置を簡単に下降させることができる。その結果、枕地旋回の終了とともに耕耘作業を再開させることができる。
【0066】
第1昇降レバー22は、前後揺動式の位置保持型で運転座席7の右側方に配備してある。第2昇降レバー25は、上下揺動式の中立復帰型でステアリングホイール6の右下方に配備してある。第1レバーセンサ23およびリフトアームセンサ24には回転式のポテンショメータを採用してある。第2レバーセンサ26には、第2昇降レバー25の上方への操作に連動して閉操作される第1接点と、第2昇降レバー25の下方への操作に連動して閉操作される第2接点とを備えたスイッチを採用してある。
【0067】
制御装置21には、エンジン1の出力回転数を検出する電磁ピックアップ式の回転センサ27などの出力に基づいて、エンジン1の出力回転数などの情報を、搭乗運転部8に備えた表示パネル28のタコメータ(図示せず)などにより表示させる表示制御手段21Bを制御プログラムとして備えてある。表示制御手段21Bは、表示パネル28の近傍に配備した表示切替スイッチ29の操作などに基づいて、表示パネル28に備えた液晶表示部30の表示状態を、アワーメータや燃料の残量などを表示する状態や、変速段数や車速などの車速に関する情報を表示する状態、などに切り替える。
【0068】
制御装置21には、エンジン1の目標回転数を設定する目標回転数設定手段21Cを制御プログラムとして備えてある。また、アクセルペダル31の操作位置を検出するペダルセンサ32の出力とエンジン回転数とを対応させた第1マップデータ、アクセルレバー33の操作位置を検出するレバーセンサ34の出力とエンジン回転数とを対応させた第2マップデータ、および、エンジン回転数の上限を設定する上限設定器(上限設定手段の一例)35の出力とエンジン回転数とを対応させた第3マップデータ、などを備えてある。
【0069】
目標回転数設定手段21Cは、ペダルセンサ32の出力と第1マップデータとに基づいてペダルセンサ32の出力に対応するエンジン回転数(以下、ペダル設定回転数と称する)を選定する。レバーセンサ34の出力と第2マップデータとに基づいてレバーセンサ34の出力に対応するエンジン回転数(以下、レバー設定回転数と称する)を選定する。上限設定器35の出力と第3マップデータとに基づいて上限設定器35の出力に対応するエンジン回転数(以下、上限回転数と称する)を選定する。
【0070】
そして、選定したそれらの回転数を比較し、ペダル設定回転数およびレバー設定回転数が上限回転数よりも低い場合には、ペダル設定回転数とレバー設定回転数のうちの高い側の回転数を目標回転数に設定する。ペダル設定回転数およびレバー設定回転数のうちのいずれか一方が上限回転数よりも高い場合には、上限回転数を目標回転数に設定する。
【0071】
アクセルペダル31は、踏み込み操作式の初期位置復帰型で搭乗運転部8の右足元部に配備してある。アクセルレバー33は、前後揺動式の位置保持型で運転座席7の右側方に配備してある。上限設定器35は、回転式のポテンショメータなどによりダイヤル式に構成してある。
【0072】
ECU16には、制御装置21の目標回転数設定手段21Cにより設定した目標回転数や、制御装置21を経由して入力された回転センサ27の出力などに基づいて、目標回転数がエンジン1の出力回転数として得られるようにサプライポンプ12や各インジェクタ14などの作動を制御する燃料噴射制御手段16Aを制御プログラムとして備えてある。
【0073】
そして、制御装置21の目標回転数設定手段21CとECU16の燃料噴射制御手段16Aにより、エンジン1の出力回転数を制御するエンジン回転数制御手段(制御手段の一例)36を構成してある。
【0074】
エンジン回転数制御手段36は、ペダル設定回転数およびレバー設定回転数が上限回転数よりも低い状態において、ペダル設定回転数がレバー設定回転数よりも高い場合には、ペダル設定回転数を目標回転数に設定し、そのペダル設定回転数がエンジン1の出力回転数として得られるようにエンジン1の出力回転数を制御するフットアクセル制御を実行する。逆に、レバー設定回転数がペダル設定回転数よりも高い場合には、レバー設定回転数を目標回転数に設定し、そのレバー設定回転数がエンジン1の出力回転数として得られるようにエンジン1の出力回転数を制御するハンドアクセル制御を実行する。また、ペダル設定回転数およびレバー設定回転数のうちのいずれか一方が上限回転数よりも高い場合には、上限回転数を目標回転数に設定し、その上限回転数がエンジン1の出力回転数として得られるようにエンジン1の出力回転数を制御する上限回転制御を実行する。
【0075】
この構成により、例えば、アクセルレバー33を任意の操作位置に操作し、かつ、レバー設定回転数よりも上限回転数が低くならないように上限設定器35を操作することにより、エンジン1の出力回転数をレバー設定回転数に維持するレバー定速状態で車体を走行させることができる。このレバー定速状態において、ペダル設定回転数がレバー設定回転数よりも高くなるようにアクセルペダル31を操作することにより、その操作を行なっている間、エンジン1の出力回転数をレバー設定回転数からペダル設定回転数に上昇させたペダル増速状態で車体を走行させることができる。このペダル増速状態において、ペダル設定回転数が上限回転数よりも高くなると、エンジン1の出力回転数を上限回転数に制限する上限定速状態で車体を走行させることができる。そして、アクセルペダル31の操作を解除することによりレバー定速状態に簡単に復帰させることができる。
【0076】
つまり、レバー定速状態と上限定速状態との高低2段の定速状態を得ることができるとともに、レバー定速状態と上限定速状態とにわたる任意の変速操作を行うことができる。
【0077】
また、レバー定速状態において、レバー設定回転数よりも上限回転数が低くなるように上限設定器35を操作することにより、レバー定速状態よりも回転数の低い上限定速状態で車体を走行させることができる。そして、この上限定速状態において、レバー設定回転数よりも上限回転数が高くなるように上限設定器35を操作することにより、レバー定速状態に簡単に復帰させることができる。
【0078】
つまり、レバー設定回転数を基準にした上限設定器35の操作による定速回転数の微調整を行うことができる。その結果、圃場の状況などに応じた定速回転数の設定変更を容易に行える。
【0079】
さらに、例えば、アクセルレバー33をアイドリング位置に操作し、かつ、上限回転数が作業に適したエンジン回転数になるように上限設定器35を操作すれば、アクセルペダル31を操作限界位置まで操作することにより、エンジン1の出力回転数を作業に適した上限回転数に維持する上限定速状態で車体を走行させることができる。この上限定速状態において、ペダル設定回転数が上限回転数よりも低くなるようにアクセルペダル31の操作を緩めることにより、エンジン1の出力回転数を上限回転数よりも低くしたペダル減速状態で車体を走行させることができる。このペダル減速状態において、再びアクセルペダル31を操作限界位置まで操作することにより上限定速状態に復帰させることができる。
【0080】
このように、上限回転数が作業に適したエンジン回転数になるように上限設定器35を操作すれば、作業中の直進走行時には、アクセルペダル31を操作限界位置まで操作することにより、圃場の荒れ具合などに起因した車体の揺れに関係なく、アクセルペダル31の操作による作業に適した定速状態を安定して得ることができる。そして、枕地旋回を行なう場合には、枕地旋回を開始する前にアクセルペダル31の操作を緩めることにより、枕地旋回に適した減速状態を容易に得ることができる。また、定速状態においてスリップが発生した場合には、アクセルペダル31の操作を緩めてエンジン回転数を低下させることにより、スリップの度合いを弱めてグリップ力を上げることができ、スリップ状態から容易に脱出することができる。そして、枕地旋回後またはスリップ状態からの脱出後にアクセルペダル31を操作限界位置まで操作することにより、作業に適した定速状態を容易に再現することができる。
【0081】
つまり、直進走行と枕地旋回とを繰り返す往復作業に適した走行状態や、スリップが発生しやすいプラウやサブソイラなどの作業装置を連結した重牽引作業に適した走行状態を簡単に得ることができる。
【0082】
制御装置21には、運転座席7の右側方に配備したモーメンタリスイッチからなる第1スイッチ37の操作に基づいて読み出される第1記憶回転数と、第1スイッチ37に隣接配備したモーメンタリスイッチからなる第2スイッチ38の操作に基づいて読み出される第2記憶回転数とを備えてある。
【0083】
目標回転数設定手段21Cは、基本的には、エンジン1の出力回転数がアイドリング回転数よりも高くなる操作位置にアクセルレバー33を操作したレバー定速状態において、第1スイッチ37が操作されると、第1スイッチ37の出力に基づいて第1記憶回転数を目標回転数に設定する。第1記憶回転数を目標回転数に設定した状態において、第1スイッチ37が操作されると、第1スイッチ37が初期位置に復帰するまでの時間を計測し、その計測時間が設定時間以内(例えば3秒以内)であれば、そのときの第1スイッチ37の出力に基づいて、ペダル設定回転数とレバー設定回転数と上限回転数とを比較し、ペダル設定回転数およびレバー設定回転数が上限回転数よりも低い場合には、ペダル設定回転数とレバー設定回転数のうちの高い側の回転数を目標回転数に設定する。ペダル設定回転数およびレバー設定回転数のうちのいずれか一方が上限回転数よりも高い場合には、上限回転数を目標回転数に設定する。
【0084】
また、エンジン1の出力回転数がアイドリング回転数よりも高くなる操作位置にアクセルレバー33を操作したレバー定速状態において、第2スイッチ38が操作されると、第2スイッチ38の出力に基づいて第2記憶回転数を目標回転数に設定する。第2記憶回転数を目標回転数に設定した状態において、第2スイッチ38が操作されると、第2スイッチ38が初期位置に復帰するまでの時間を計測し、その計測時間が設定時間以内(例えば3秒以内)であれば、そのときの第2スイッチ38の出力に基づいて、ペダル設定回転数とレバー設定回転数と上限回転数とを比較し、ペダル設定回転数およびレバー設定回転数が上限回転数よりも低い場合には、ペダル設定回転数とレバー設定回転数のうちの高い側の回転数を目標回転数に設定する。ペダル設定回転数およびレバー設定回転数のうちのいずれか一方が上限回転数よりも高い場合には、上限回転数を目標回転数に設定する。
【0085】
つまり、エンジン回転数制御手段36は、レバー定速状態において第1スイッチ37が操作されると、第1記憶回転数を目標回転数に設定し、その第1記憶回転数がエンジン1の出力回転数として得られるようにエンジン1の出力回転数を制御する第1定回転制御を実行する。レバー定速状態において第2スイッチ38が操作されると、第2記憶回転数を目標回転数に設定し、その第2記憶回転数がエンジン1の出力回転数として得られるようにエンジン1の出力回転数を制御する第2定回転制御を実行する。
【0086】
また、第1定回転制御の実行中に、第1スイッチ37が初期位置に復帰するまでの計測時間が設定時間以内となる第1スイッチ37の短押し操作が行われた場合には、第1定回転制御を終了するとともに、そのときの操作状態に応じて設定した目標回転数に基づいてフットアクセル制御とハンドアクセル制御と上限回転制御のいずれかを実行する。第2定回転制御の実行中に、第2スイッチ38が初期位置に復帰するまでの計測時間が設定時間以内となる第2スイッチ38の短押し操作が行われた場合には、第2定回転制御を終了するとともに、そのときの操作状態に応じて設定した目標回転数に基づいてフットアクセル制御とハンドアクセル制御と上限回転制御のいずれかを実行する。
【0087】
この構成により、例えば、第1記憶回転数を耕耘作業に適したエンジン回転数に設定し、第2記憶回転数を代掻き作業に適したエンジン回転数に設定すれば、エンジン1の出力回転数がアイドリング回転数よりも高くなる操作位置にアクセルレバー33を操作した後に、第1スイッチ37を操作することにより、エンジン1の出力回転数を耕耘作業に適した第1記憶回転数に維持する定速状態(以下、第1記憶定速状態と称する)で車体を走行させることができる。また、エンジン1の出力回転数がアイドリング回転数よりも高くなる操作位置にアクセルレバー33を操作した後に、第2スイッチ38を操作することにより、エンジン1の出力回転数を代掻き作業に適した第2記憶回転数に維持する定速状態(以下、第2記憶定速状態と称する)で車体を走行させることができる。
【0088】
そして、レバー設定回転数が枕地旋回に適したエンジン回転数になるようにアクセルレバー33を操作しておけば、第1記憶定速状態においては、枕地旋回を開始する前に第1スイッチ37を短押し操作することにより、枕地旋回に適したアクセルレバー33による減速状態(以下、レバー減速状態と称する)を容易に得ることができ、枕地旋回の終了直前または枕地旋回の終了後に第1スイッチ37を操作することにより、耕耘作業に適した第1記憶定速状態を容易に再現することができる。また、第2記憶定速状態においては、枕地旋回を開始する前に第2スイッチ38を短押し操作することにより、レバー減速状態を容易に得ることができ、枕地旋回の終了直前または枕地旋回の終了後に第2スイッチ38を操作することにより、代掻き作業に適した第2記憶定速状態を容易に再現することができる。
【0089】
しかも、エンジン1の出力回転数がアイドリング回転数よりも高くなる操作位置にアクセルレバー33を操作した場合にのみ、第1スイッチ37または第2スイッチ38の操作に基づいて定回転制御を実行するように構成していることにより、エンジン1からの伝動を遮断し、かつ、アクセルレバー33をアイドリング位置に位置させた停車状態において、第1スイッチ37または第2スイッチ38の操作が行なわれても、その操作によってエンジン回転数制御手段36が定回転制御を実行することはなく、これにより、その停車状態において、第1スイッチ37または第2スイッチ38の操作によってエンジン1の出力回転数が不必要に上昇することはない。
【0090】
エンジン回転数制御手段36は、第1定回転制御の実行中に第2スイッチ38が操作されると、第1定回転制御から第2定回転制御に移行する。また、第2定回転制御の実行中に第1スイッチ37が操作されると、第2定回転制御から第1定回転制御に移行する。
【0091】
この構成により、例えば、第1記憶回転数を作業に適したエンジン回転数に設定し、第2記憶回転数を枕地旋回に適したエンジン回転数に設定すれば、エンジン1の出力回転数がアイドリング回転数よりも高くなる操作位置にアクセルレバー33を操作した後に、第1スイッチ37を操作することにより、作業に適した第1記憶定速状態で車体を走行させることができる。そして、枕地旋回を開始する前に第2スイッチ38を操作することにより、枕地旋回に適した第2記憶定速状態を容易に得ることができ、枕地旋回の終了直前または枕地旋回の終了後に第1スイッチ37を操作することにより、作業に適した第1記憶定速状態を容易に再現することができる。
【0092】
エンジン回転数制御手段36は、第1定回転制御の実行中にペダル設定回転数が第1記憶回転数よりも高くなると、第1定回転制御に優先してフットアクセル制御を実行する。そのフットアクセル制御の優先実行中に、ペダル設定回転数が第1記憶回転数よりも低くなると、フットアクセル制御を終了して第1定回転制御を再開する。また、第2定回転制御の実行中に、ペダル設定回転数が第2記憶回転数よりも高くなると、第2定回転制御に優先してフットアクセル制御を実行する。そのフットアクセル制御の優先実行中に、ペダル設定回転数が第2記憶回転数よりも低くなると、フットアクセル制御を終了して第2定回転制御を再開する。
【0093】
この構成により、第1記憶定速状態において、ペダル設定回転数が第1記憶回転数よりも高くなるようにアクセルペダル31を操作することにより、その操作を行なっている間、エンジン1の出力回転数を第1記憶回転数からペダル設定回転数に上昇させたペダル増速状態で車体を走行させることができる。このペダル増速状態において、ペダル設定回転数が上限回転数よりも高くなると、エンジン1の出力回転数を上限回転数に制限する上限定速状態で車体を走行させることができる。そして、アクセルペダル31の操作を解除することにより第1記憶定速状態に復帰させることができる。
【0094】
また、第2記憶定速状態において、ペダル設定回転数が第2記憶回転数よりも高くなるようにアクセルペダル31を操作することにより、その操作を行なっている間、エンジン1の出力回転数を第2記憶回転数からペダル設定回転数に上昇させたペダル増速状態で車体を走行させることができる。このペダル増速状態において、ペダル設定回転数が上限回転数よりも高くなると、エンジン1の出力回転数を上限回転数に制限する上限定速状態で車体を走行させることができる。そして、アクセルペダル31の操作を解除することにより第2記憶定速状態に復帰させることができる。
【0095】
エンジン回転数制御手段36は、第1定回転制御の実行中にレバー設定回転数がアイドリング回転数以下に低下すると、第1定回転制御を終了するとともに、そのときの操作状態に応じて設定した目標回転数に基づいてフットアクセル制御とハンドアクセル制御と上限回転制御のいずれかを実行する。また、第2定回転制御の実行中にレバー設定回転数がアイドリング回転数以下に低下すると、第2定回転制御を終了するとともに、そのときの操作状態に応じて設定した目標回転数に基づいてフットアクセル制御とハンドアクセル制御と上限回転制御のいずれかを実行する。
【0096】
この構成により、エンジン1の出力回転数を第1記憶回転数または第2記憶回転数に維持する定速状態においては、レバー設定回転数がアイドリング回転数以下になるようにアクセルレバー33を操作することにより、アクセルペダル31を操作していない限り、エンジン1の出力回転数をアイドリング回転数以下に低下させた減速状態を得ることができる。
【0097】
つまり、エンジン1の出力回転数を第1記憶回転数または第2記憶回転数に維持する記憶定速状態において、減速する必要が生じた場合には、レバー定速状態での減速操作と同様に、アクセルレバー33を減速方向に操作する、といった慣れた操作で車速を低下させることができる。
【0098】
エンジン回転数制御手段36は、第1定回転制御の実行中にレバー設定回転数が第1記憶回転数よりも高くなると、第1定回転制御を終了するとともに、そのときの操作状態に応じて設定した目標回転数に基づいてフットアクセル制御とハンドアクセル制御と上限回転制御のいずれかを実行する。また、第2定回転制御の実行中にレバー設定回転数が第2記憶回転数よりも高くなると、第2定回転制御を終了するとともに、そのときの操作状態に応じて設定した目標回転数に基づいてフットアクセル制御とハンドアクセル制御と上限回転制御のいずれかを実行する。
【0099】
この構成により、第1記憶定速状態において、レバー設定回転数が第1記憶回転数以下である場合には、レバー設定回転数が第1記憶回転数よりも高くなるようにアクセルレバー33を操作することにより、エンジン1の出力回転数を第1記憶回転数よりも高いレバー設定回転数または上限回転数まで上昇させた増速状態で車体を走行させることができるとともに、その増速後の速度で車体を定速走行させることができる。
【0100】
また、第2記憶定速状態において、レバー設定回転数が第2記憶回転数以下である場合には、レバー設定回転数が第2記憶回転数よりも高くなるようにアクセルレバー33を操作することにより、エンジン1の出力回転数を第2記憶回転数よりも高いレバー設定回転数または上限回転数まで上昇させた増速状態で車体を走行させることができるとともに、その増速後の速度で車体を定速走行させることができる。
【0101】
つまり、エンジン1の出力回転数を第1記憶回転数または第2記憶回転数に維持する定速状態において、増速する必要が生じた場合には、レバー定速状態での増速操作と同様に、アクセルレバー33を増速方向に操作する、といった慣れた操作で車速を上昇させて維持することができる。
【0102】
エンジン回転数制御手段36は、第1定回転制御の実行中に上限回転数が第1記憶回転数よりも低くなると、第1定回転制御に優先して上限回転制御を実行する。その上限回転制御の優先実行中に、上限回転数が第1記憶回転数よりも高くなると、上限回転制御を終了して第1定回転制御を再開する。また、第2定回転制御の実行中に上限回転数が第2記憶回転数よりも低くなると、第2定回転制御に優先して上限回転制御を実行する。その上限回転制御の優先実行中に、上限回転数が第2記憶回転数よりも高くなると、上限回転制御を終了して第2定回転制御を再開する。
【0103】
つまり、第1記憶定速状態において、第1記憶回転数よりも上限回転数が低くなるように上限設定器35を操作することにより、第1記憶定速状態よりも回転数の低い上限定速状態で車体を走行させることができる。そして、この上限定速状態において、第1記憶回転数よりも上限回転数が高くなるように上限設定器35を操作することにより、第1記憶定速状態に簡単に復帰させることができる。
【0104】
また、第2記憶定速状態において、第2記憶回転数よりも上限回転数が低くなるように上限設定器35を操作することにより、第2記憶定速状態よりも回転数の低い上限定速状態で車体を走行させることができる。そして、この上限定速状態において、第2記憶回転数よりも上限回転数が高くなるように上限設定器35を操作することにより、第2記憶定速状態に簡単に復帰させることができる。
【0105】
この構成により、第1記憶回転数または第2記憶回転数を基準にした上限設定器35の操作による定速回転数の微調整を行うことができる。その結果、圃場の状況などに応じた第1記憶回転数または第2記憶回転数の設定変更を容易に行える。
【0106】
しかも、第1記憶定速状態においてスリップが発生した場合には、上限回転数が第1記憶回転数よりも低くなるように上限設定器35を操作することにより、また、第2記憶定速状態においてスリップが発生した場合には、上限回転数が第2記憶回転数よりも低くなるように上限設定器35を操作することにより、スリップの度合いを弱めてグリップ力を上げることができ、スリップ状態から容易に脱出することができる。そして、スリップ状態からの脱出後に、第1記憶定速状態においては上限回転数が第1記憶回転数よりも高くなるように、また、第2記憶定速状態においては上限回転数が第2記憶回転数よりも高くなるように、上限設定器35を操作することにより、エンジン1の出力回転数を第1記憶回転数または第2記憶回転数に維持する第1記憶定速状態または第2記憶定速状態に復帰させることができる。
【0107】
エンジン回転数制御手段36は、第1スイッチ37または第2スイッチ38の操作に基づいて、第1定回転制御または第2定回転制御からフットアクセル制御とハンドアクセル制御と上限回転制御のいずれかに移行することにより、エンジン1の出力回転数が上昇する場合には、第1スイッチ37または第2スイッチ38の操作に基づいてエンジン1の出力回転数を低下させる場合よりも、エンジン回転数の変化速度が小さくなるようにエンジン1の出力回転数を制御する。
【0108】
これにより、エンジン1の出力回転数が上昇する場合の出力回転数の変化が、エンジン1の出力回転数が低下する場合よりも穏やかになる。その結果、エンジンの出力回転数を上昇させる増速走行時の速度の変化を、エンジンの出力回転数を低下させる減速走行時よりも滑らかにすることができ、増速走行時の乗り心地をさらに向上させることができる。
【0109】
エンジン回転数制御手段36は、第1定回転制御の実行中に、第1スイッチ37が初期位置に復帰するまでの計測時間が設定時間を超える第1スイッチ37の長押し操作が行われた場合には、そのときの第1スイッチ37の出力に基づいて、第1定回転制御から第1記憶回転数の設定変更を可能にする第1記憶回転数変更制御に移行する。また、第2定回転制御の実行中に、第2スイッチ38が初期位置に復帰するまでの計測時間が設定時間を超える第2スイッチ38の長押し操作が行われた場合には、そのときの第2スイッチ38の出力に基づいて、第2定回転制御から第2記憶回転数の設定変更を可能にする第2記憶回転数変更制御に移行する。
【0110】
第1記憶回転数変更制御においては、第1スイッチ37の短押し操作が行われると、そのときの第1スイッチ37の出力に基づいて第1記憶回転数を一定回転数(例えば10rpm)だけ上昇させる。第2スイッチ38の短押し操作が行われると、そのときの第2スイッチ38の出力に基づいて第1記憶回転数を一定回転数(例えば10rpm)だけ低下させる。第1スイッチ37の長押し操作が行われると、そのときの第1スイッチ37の出力に基づいて、その出力が継続されている間(第1スイッチ37の長押し操作が行われている間)、第1記憶回転数を連続して上昇させる。第2スイッチ38の長押し操作が行われると、そのときの第2スイッチ17の出力に基づいて、その出力が継続されている間(第2スイッチ38の長押し操作が行われている間)、第1記憶回転数を連続して低下させる。そして、設定時間(例えば3秒間)の間、第1スイッチ37の操作と第2スイッチ38の操作のいずれも行われなかった場合には、その段階での回転数を第1記憶回転数として確定し、第1記憶回転数変更制御から第1定回転制御に移行する。
【0111】
第2記憶回転数変更制御においては、第1スイッチ37の短押し操作が行われると、そのときの第1スイッチ37の出力に基づいて第2記憶回転数を一定回転数(例えば10rpm)だけ上昇させる。第2スイッチ38の短押し操作が行われると、そのときの第2スイッチ38の出力に基づいて第2記憶回転数を一定回転数(例えば10rpm)だけ低下させる。第1スイッチ37の長押し操作が行われると、そのときの第1スイッチ37の出力に基づいて、その出力が継続されている間(第1スイッチ37の長押し操作が行われている間)、第2記憶回転数を連続して上昇させる。第2スイッチ38の長押し操作が行われると、そのときの第2スイッチ17の出力に基づいて、その出力が継続されている間(第2スイッチ38の長押し操作が行われている間)、第2記憶回転数を連続して低下させる。そして、設定時間(例えば3秒間)の間、第1スイッチ37の操作と第2スイッチ38の操作のいずれも行われなかった場合には、その段階での回転数を第2記憶回転数として確定し、第2記憶回転数変更制御から第2定回転制御に移行する。
【0112】
つまり、第1スイッチ37および第2スイッチ38を、第1定回転制御または第2定回転制御の実行を指令する指令手段、第1定回転制御から第1記憶回転数変更制御への移行、または、第2定回転制御から第2記憶回転数変更制御への移行を指令する指令手段、および、第1記憶回転数または第2記憶回転数を設定変更する設定器として機能させることができる。これにより、それぞれに対応する操作具を設ける場合に比較して、コストの削減や設置スペースの縮小を図ることができる。
【0113】
エンジン回転数制御手段36は、キースイッチ39をオン位置に操作した電源投入段階において、第1スイッチ37の長押し操作が行われた場合には第1記憶回転数変更制御を実行し、第2スイッチ38の長押し操作が行われた場合には第2記憶回転数変更制御を実行する。これにより、作業の開始前に第1記憶回転数および第2記憶回転数を作業などに応じて変更することができる。
【0114】
図2および図3に示すように、エンジン回転数制御手段36は、第1定回転制御の実行が可能な状態において第1スイッチ37が操作されると、そのときの押し操作に伴って、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、第1記憶回転数(ここでは「1800」を例示してある)と、第1記憶回転数であることを示す第1識別記号40(ここでは「A」を例示してある)と、第1定回転制御または第2定回転制御の実行を示す第2識別記号41(ここでは「AUTO」を例示してある)とを連続表示させる〔図3の(A)参照〕。そして、第1スイッチ37の初期位置への復帰に伴って第1定回転制御を開始する。
【0115】
また、第2定回転制御の実行が可能な状態において第2スイッチ38が操作されると、そのときの押し操作に伴って、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、第2記憶回転数(ここでは「1000」を例示してある)と、第2記憶回転数であることを示す第1識別記号40(ここでは「B」を例示してある)と、第1定回転制御または第2定回転制御の実行を示す第2識別記号41(ここでは「AUTO」)とを連続表示させる〔図3の(B)参照〕。そして、第2スイッチ38の初期位置への復帰に伴って第2定回転制御を開始する。
【0116】
つまり、第1記憶回転数や第2記憶回転数などを表示する専用の表示部を設けることなく、第1定回転制御または第2定回転制御の開始に伴ってエンジン1の出力回転数が変更される前の段階で、それらの定回転制御での目標回転数などを液晶表示部30に表示して運転者に視認させることができる。また、第1スイッチ37または第2スイッチ38の操作に伴って、液晶表示部30の表示状態が、第1定回転制御または第2定回転制御での目標回転数などを表示する状態に切り替わることから、第1定回転制御または第2定回転制御での目標回転数などを常時表示する場合に比較して、運転者に視認させやすくすることができる。
【0117】
エンジン回転数制御手段36は、エンジン1の出力回転数がアイドリング回転数以下になる操作位置にアクセルレバー33が位置する状態において、第1スイッチ37が操作されると、液晶表示部30において、第1記憶回転数(ここでは「1800」)と第1識別記号40(ここでは「A」)と第2識別記号41(ここでは「AUTO」)とを間歇表示させる〔図3の(C)参照〕。
【0118】
また、エンジン1の出力回転数がアイドリング回転数以下になる操作位置にアクセルレバー33が位置する状態において、第2スイッチ38が操作されると、液晶表示部30において、第2記憶回転数(ここでは「1000」)と第1識別記号40(ここでは「B」)と第2識別記号41(ここでは「AUTO」)とを間歇表示させる〔図3の(D)参照〕。
【0119】
これにより、エンジン1の出力回転数がアイドリング回転数以下になる操作位置にアクセルレバー33が位置することにより、第1スイッチ37または第2スイッチ38の操作にかかわらず、第1定回転制御または第2定回転制御が実行されないことを運転者に視認させることができる。
【0120】
エンジン回転数制御手段36は、第1記憶回転数を目標回転数に設定した第1定回転制御の実行中に第1スイッチ37が短押し操作されると、そのときの押し操作に伴って、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、第1記憶回転数に代えて、第1定回転制御終了後の操作状態に応じて設定する目標回転数(ここでは「1500」を例示してある)を連続表示させるとともに、第1識別記号40の表示を終了させる〔図3の(A)および(E)参照〕。そして、第1スイッチ37の初期位置への復帰に伴って第1定回転制御を終了し、そのときの操作状態に応じたフットアクセル制御とハンドアクセル制御と上限回転制御のうちのいずれかを開始する。
【0121】
また、第2記憶回転数を目標回転数に設定した第2定回転制御の実行中に第2スイッチ38が短押し操作されると、そのときの押し操作に伴って、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、第2記憶回転数に代えて、第2定回転制御終了後の操作状態に応じて設定する目標回転数(ここでは「1500」)を連続表示させるとともに、第1識別記号40の表示を終了させる〔図3の(B)および(E)参照〕。そして、第2スイッチ37の初期位置への復帰に伴って第2定回転制御を終了し、そのときの操作状態に応じたフットアクセル制御とハンドアクセル制御と上限回転制御のうちのいずれかを開始する。
【0122】
つまり、第1定回転制御または第2定回転制御からフットアクセル制御とハンドアクセル制御と上限回転制御とのいずれかへの移行に伴ってエンジン1の出力回転数が変更される前の段階で、第1定回転制御または第2定回転制御の終了後の目標回転数を液晶表示部30に表示して運転者に視認させることができる。
【0123】
エンジン回転数制御手段36は、第1定回転制御の実行中に第2スイッチ38が操作されると、そのときの押し操作に伴って、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、第1記憶回転数(ここでは「1800」)に代えて第2記憶回転数(ここでは「1000」)を連続表示させ、第1識別記号40を、第1記憶回転数を示すもの(ここでは「A」)から第2記憶回転数を示すもの(ここでは「B」)に変更させる〔図3の(A)および(B)参照〕。そして、第2スイッチ38の初期位置への復帰に伴って第1定回転制御から第2定回転制御に移行する。
【0124】
また、第2定回転制御の実行中に第1スイッチ37が操作されると、そのときの押し操作に伴って、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、第2記憶回転数(ここでは「1000」)に代えて第1記憶回転数(ここでは「1800」)を連続表示させ、第1識別記号40を、第2記憶回転数を示すもの(ここでは「B」)から第1記憶回転数を示すもの(ここでは「A」)に変更させる〔図3の(B)および(A)参照〕。そして、第1スイッチ37の初期位置への復帰に伴って第2定回転制御から第1定回転制御に移行する。
【0125】
つまり、第1定回転制御から第2定回転制御または第2定回転制御から第1定回転制御への移行に伴ってエンジン1の出力回転数が変更される前の段階で、移行後の第1定回転制御または第2定回転制御での目標回転数を液晶表示部30に表示して運転者に視認させることができる。
【0126】
エンジン回転数制御手段36は、第1定回転制御の実行中にペダル設定回転数が第1記憶回転数よりも高くなると、第1定回転制御に優先してフットアクセル制御を実行するとともに、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30における第2識別記号41(ここでは「AUTO」)の表示を連続表示から間歇表示に変更させる〔図3の(A)および(F)参照〕。
【0127】
このフットアクセル制御の優先実行中にペダル設定回転数が第1記憶回転数よりも低くなると、フットアクセル制御を終了して第1定回転制御を再開するとともに、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30における第2識別記号41(ここでは「AUTO」)の表示を間歇表示から連続表示に変更させる〔図3の(F)および(A)参照〕。
【0128】
また、第2定回転制御の実行中にペダル設定回転数が第2記憶回転数よりも高くなると、第2定回転制御に優先してフットアクセル制御を実行するとともに、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30における第2識別記号41(ここでは「AUTO」)の表示を連続表示から間歇表示に変更させる〔図3の(B)および(G)参照〕。
【0129】
このフットアクセル制御の優先実行中にペダル設定回転数が第2記憶回転数よりも低くなると、フットアクセル制御を終了して第2定回転制御を再開するとともに、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30における第2識別記号41(ここでは「AUTO」)の表示を間歇表示から連続表示に変更させる〔図3の(G)および(B)参照〕。
【0130】
つまり、第1定回転制御または第2定回転制御の実行中におけるアクセルペダル31の操作により第1定回転制御または第2定回転制御からフットアクセル制御に移行する場合には、液晶表示部30において、第1記憶回転数または第2記憶回転数とそれを示す第1識別記号40とを連続表示させながら、第2識別記号41を間歇表示させることにより、第1定回転制御または第2定回転制御からフットアクセル制御への移行を運転者に視認させることができる。また、フットアクセル制御の優先実行中におけるアクセルペダル31の操作により第1定回転制御または第2定回転制御を再開する場合には、液晶表示部30において、第1記憶回転数または第2記憶回転数とそれらに対応する第1識別記号40と第2識別記号41とを連続表示させることにより、第1定回転制御または第2定回転制御の再開と、再開する第1定回転制御または第2定回転制御での目標回転数とを運転者に視認させることができる。
【0131】
なお、フットアクセル制御への移行後のエンジン回転数はタコメータによって視認することができる。
【0132】
エンジン回転数制御手段36は、第1定回転制御の実行中に上限回転数が第1記憶回転数よりも低くなると、第1定回転制御に優先して上限回転制御を実行するとともに、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、第1記憶回転数(ここでは「1800」)に代えて上限回転数(ここでは「1700」を例示してある)を連続表示させ、第1識別記号40を、第1記憶回転数を示すもの(ここでは「A」)から上限回転数を示すもの(ここでは「L」を例示してある)に変更させ、第2識別記号41を、第1定回転制御または第2定回転制御の実行を示すもの(ここでは「AUTO」)から上限回転制御の優先実行を示すもの(ここでは「↑AUTO」を例示してある)に変更させる〔図3の(A)および(H)参照〕。
【0133】
この上限回転制御の優先実行中に上限回転数が第1記憶回転数よりも高くなると、上限回転制御を終了して第1定回転制御を再開するとともに、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、上限回転数(ここでは「1700」)に代えて第1記憶回転数(ここでは「1800」)を連続表示させ、第1識別記号40を、上限回転数を示すもの(ここでは「L」)から第1記憶回転数を示すもの(ここでは「A」)に変更させ、第2識別記号41を、上限回転制御の優先実行を示すもの(ここでは「↑AUTO」)から第1定回転制御または第2定回転制御の実行を示すもの(ここでは「AUTO」)に変更させる〔図3の(H)および(A)参照〕。
【0134】
また、第2定回転制御の実行中に上限回転数が第2記憶回転数よりも低くなると、第2定回転制御に優先して上限回転制御を実行するとともに、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、第2記憶回転数(ここでは「1000」)に代えて上限回転数(ここでは「900」を例示してある)を連続表示させ、第1識別記号40を、第2記憶回転数を示すもの(ここでは「B」)から上限回転数を示すもの(ここでは「L」)に変更させ、第2識別記号41を、第1定回転制御または第2定回転制御の実行を示すもの(ここでは「AUTO」)から上限回転制御の優先実行を示すもの(ここでは「↑AUTO」)に変更させる〔図3の(B)および(I)参照〕。
【0135】
この上限回転制御の優先実行中に上限回転数が第2記憶回転数よりも高くなると、上限回転制御を終了して第2定回転制御を再開するとともに、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、上限回転数(ここでは「900」)に代えて第2記憶回転数(ここでは「1000」)を連続表示させ、第1識別記号40を、上限回転数を示すもの(ここでは「L」)から第2記憶回転数を示すもの(ここでは「B」)に変更させ、第2識別記号41を、上限回転制御の優先実行を示すもの(ここでは「↑AUTO」)から第1定回転制御または第2定回転制御の実行を示すもの(ここでは「AUTO」)に変更させる〔図3の(I)および(B)参照〕。
【0136】
つまり、第1定回転制御または第2定回転制御の実行中における上限設定器35の操作により第1定回転制御または第2定回転制御から上限回転制御に移行する場合には、液晶表示部30において、上限回転数とそれを示す第1識別記号40と上限回転制御の優先実行を示す第2識別記号41とを連続表示することにより、上限回転制御への移行と、そのときのエンジン1の出力回転数とを運転者に視認させることができる。また、上限回転制御の優先実行中における上限設定器35の操作により第1定回転制御または第2定回転制御を再開する場合には、液晶表示部30において、第1記憶回転数または第2記憶回転数とそれを示す第1識別記号40と第1定回転制御または第2定回転制御の実行を示す第2識別記号41とを連続表示することにより、第1定回転制御または第2定回転制御の再開と、再開する第1定回転制御または第2定回転制御での目標回転数とを運転者に視認させることができる。
【0137】
エンジン回転数制御手段36は、上限回転数が第1記憶回転数よりも低い場合やペダル設定回転数が第1記憶回転数よりも高い場合に第1スイッチ37が操作されると、その操作に伴って、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、第1記憶回転数(ここでは「1800」)を間歇表示させ、第1識別記号40(ここでは「A」)と第2識別記号41(ここでは「AUTO」)とを連続表示させる〔図3の(J)参照〕。
【0138】
また、上限回転数が第2記憶回転数よりも低い場合やペダル設定回転数が第2記憶回転数よりも高い場合に第2スイッチ38が操作されると、その操作に伴って、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において、第2記憶回転数(ここでは「1000」)を間歇表示させ、第1識別記号40(ここでは「B」)と第2識別記号41(ここでは「AUTO」)とを連続表示させる〔図3の(K)参照〕。
【0139】
これにより、アクセルペダル31や上限設定器35の操作位置に起因して、第1スイッチ37または第2スイッチ38の操作にかかわらず、第1定回転制御または第2定回転制御が実行されていないことを運転者に視認させることができる。
【0140】
エンジン回転数制御手段36は、第1定回転制御の実行中に第1スイッチ37が長押し操作されると、第1定回転制御から第1記憶回転数変更制御に移行するとともに、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30における第1識別記号40(ここでは「A」)および第2識別記号41(ここでは「AUTO」)の表示を連続表示から間歇表示に変更させる〔図3の(A)および(L)参照〕。
【0141】
また、第2定回転制御の実行中に第2スイッチ38が長押し操作されると、第2定回転制御から第2記憶回転数変更制御に移行するとともに、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30における第1識別記号40(ここでは「B」)および第2識別記号41(ここでは「AUTO」)の表示を連続表示から間歇表示に変更させる〔図3の(B)および(M)参照〕。
【0142】
これにより、第1スイッチ37または第2スイッチ38の操作により、第1定回転制御または第2定回転制御から第1記憶回転数変更制御または第2記憶回転数変更制御に移行して、第1記憶回転数または第2記憶回転数の設定変更が可能になっていることを運転者に視認させることができる。
【0143】
エンジン回転数制御手段36は、第1記憶回転数変更制御または第2記憶回転数変更制御の実行中に第1スイッチ37または第2スイッチ38が操作されると、そのときの操作に基づいて、第1記憶回転数または第2記憶回転数を変更するとともに、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30において変更後の第1記憶回転数または第2記憶回転数を連続表示させる。
【0144】
これにより、第1スイッチ37または第2スイッチ38の操作による第1記憶回転数または第2記憶回転数の設定変更を視認しながら行なうことができる。
【0145】
エンジン回転数制御手段36は、搭乗運転部8に配備した表示スイッチ42が操作されると、表示制御手段21Bに表示情報を送信し、液晶表示部30での表示を、第1記憶回転数(ここでは「1800」)と第1識別記号40(ここでは「A」)と第2識別記号41(ここでは「AUTO」)とを連続表示する状態と、第2記憶回転数(ここでは「1000」)と第1識別記号40(ここでは「B」)と第2識別記号41(ここでは「AUTO」)とを連続表示する状態とに、設定時間(例えば1秒)ごとに切り替える。
【0146】
なお、各種の制御プログラムやマップデータ、第1記憶回転数、および第2記憶回転数などは、制御装置21に備えたEEPROMやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリからなる記憶手段21Dに記憶させてある。
【0147】
〔別実施形態〕
【0148】
〔1〕作業車としては、乗用草刈機、乗用田植機、コンバイン、またはホイールドーザ、などであってもよい。
【0149】
〔2〕トラクタに装備する作業装置としては、フロントローダ、溝切り装置、または畦塗り装置、などであってもよい。
【0150】
〔3〕エンジン1としては、ディーゼルエンジンであってもよく、また、ガソリンエンジンであってもよい。
【0151】
〔4〕制御手段36を、制御装置21に備えるようにしてもよく、また、ECU16に備えるようにしてもよい。制御装置21とECU16とを一体構成するようにしてもよい。
【0152】
〔5〕指令手段37,38を、第1接点と第2接点とを備えた中立復帰型の単一のスイッチで構成してもよい。
【0153】
〔6〕記憶手段21Dに、単一の記憶回転数を記憶するようにしてもよく、また、3種類以上の記憶回転数を記憶するようにしてもよい。なお、記憶手段21Dに単一の記憶回転数を記憶する場合には、単一の指令手段37を備えるだけでよい。
【0154】
〔7〕第1定回転制御の実行中に、エンジン回転数が低くなる方向へのアクセルレバー33の操作をレバーセンサ34により検出し、かつ、その操作後のレバー設定回転数が第1記憶回転数よりも低くなる場合には、制御手段36が、第1定回転制御を終了するとともに、フットアクセル制御とハンドアクセル制御のうち、制御目標とするエンジン回転数が高い側のアクセル制御を実行し、第2定回転制御の実行中に、エンジン回転数が低くなる方向へのアクセルレバー33の操作をレバーセンサ34により検出し、かつ、その操作後のレバー設定回転数が第2記憶回転数よりも低くなる場合には、制御手段36が、第2定回転制御を終了するとともに、フットアクセル制御とハンドアクセル制御のうち、制御目標とするエンジン回転数が高い側のアクセル制御を実行するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0155】
1 エンジン
21D 記憶手段
31 アクセルペダル
32 ペダルセンサ
33 アクセルレバー
34 レバーセンサ
35 上限設定手段
36 制御手段
37 指令手段
38 指令手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル操作具の操作位置を検出するセンサの出力に基づいて、前記センサの出力に対応するエンジン回転数がエンジンの出力回転数として得られるように前記出力回転数を制御するアクセル制御と、
記憶手段に記憶したエンジン回転数の読み出しを指令する人為操作式の指令手段の操作に基づいて、前記記憶手段に記憶したエンジン回転数が前記出力回転数として得られるように前記出力回転数を制御する定回転制御との何れかを実行する制御手段を備えた作業車のアクセル制御構造であって、
前記定回転制御の実行中に、前記センサの出力に対応するエンジン回転数が前記記憶手段に記憶したエンジン回転数よりも高くなると、前記制御手段が、前記定回転制御に優先して前記アクセル制御を実行し、そのアクセル制御の実行中に、前記センサの出力に対応するエンジン回転数が前記記憶手段に記憶したエンジン回転数よりも低くなると、前記制御手段が、前記アクセル制御を終了して前記定回転制御を再開するように構成してあることを特徴とする作業車のアクセル制御構造。
【請求項2】
前記アクセル操作具は、アクセルペダルを含めて構成されている請求項1に記載の作業車のアクセル制御構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−132471(P2012−132471A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−87829(P2012−87829)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【分割の表示】特願2008−141217(P2008−141217)の分割
【原出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】