説明

作業車のバッテリ構造

【課題】複雑な立体形状に成形可能な作業車のバッテリ構造を提供する。
【解決手段】車体フレーム10の後部に設けられ、走行体7および作業装置20を作動させるための電力を供給するバッテリ50を備える作業車1のバッテリ構造であって、互いの電気的容量が等しく設定された複数のセル51を電気的に接続してバッテリ50を構成しているとともに、それぞれ平板状に形成されたこれら複数のセル51を前後左右に並べてバッテリを成形している。そして、複数のセル51(51a,51b,51c,…)を、互いの平面積および厚さを等しく形成するとともに、予め定められた複数の平面視形状のいずれかの形状に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行体の上部に取り付けられた車体フレームと、車体フレームに設けられた作業装置とを有して構成される作業車のバッテリ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車の一例として挙げられるバックホーは、走行体の上部に車体フレームを構成する水平旋回自在な旋回台を備え、旋回台の前部にパワーショベル装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。旋回台の後部には、旋回台の前部に設けたパワーショベル装置との重量バランスをとってパワーショベル装置や旋回台を安定して作動させるため、カウンタウェイトが設けられている。また、旋回台の周囲を覆ってカバーが設けられており、カウンタウェイトはこのカバーの内部空間に収容されている。
【0003】
この内部空間には、カウンタウェイトの他にも、パワーショベル装置の油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ポンプなど、多数の機器類が収容される。なお、この内部空間を機器類の収容空間として有効活用するためには、カウンタウェイトの後壁面をカバーの後端面に沿った形状に成形するなどして、カウンタウェイトを内部空間において可能な限り後側にオフセットして配置することが好ましい。また、これにより、前側との重量バランスをとる上で、カウンタウェイトの低重量化も図られる。
【0004】
なお、一般に作業車における走行駆動や油圧ポンプの駆動は内燃機関により行われるが、近年、内燃機関により発生される排気ガスや騒音が周囲環境に及ぼす影響を考慮し、電気モータを駆動源とする作業車も提案されている。このような電動式作業車の実用時には、商用電源や専用に設置された発電機等の電力供給源からの電力が電気ケーブルを介して電気モータに供給される。
【0005】
【特許文献1】特開2005−273145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただし、電気ケーブルを介して電力を供給する構成であると、電力供給源の設置箇所と電気ケーブルの有効長とにより作業範囲が規定されてしまい、作業性を悪化させるおそれがある。この問題の対策の一つとして、電気モータへの電力供給源に充電可能なバッテリを用い、このバッテリを作業車に搭載することが考えられる。このとき、電気モータを長時間稼動させるためにはバッテリの電気容量を大きくする必要があるが、電気容量が大型になると実体積や重量も大型になり、バッテリの搭載性を悪化させる。このように重量物となるバッテリをカウンタウェイトとして機能させることができれば、電気容量の大型化と搭載性の向上との両立が図られるとともに、作業車の総合重量の軽減も図られる。
【0007】
しかしながら、上記のようにカウンタウェイトはカバーの後端面に沿った形状に成形されることもあり、カバーの後端面が湾曲されているときには、バッテリの後壁面を曲面に形成し、バッテリを複雑な立体形状に成形しなければならない。このとき、バッテリをカバーの後端面に沿うような形状に成形できなければ、カバーの内部空間にデッドスペースが増加してしまい、他の機器類のレイアウトを難しくさせるおそれがある。
【0008】
このような課題に鑑み、本発明は、複雑な立体形状にも成形可能な作業車のバッテリ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、本発明に係る作業車のバッテリ構造は、走行体と、走行体の上部に取り付けられた車体フレームと、車体フレームの前部に設けられた作業装置と、車体フレームの後部に設けられ、走行体および作業装置を作動させるための電力を供給するバッテリとから構成された作業車のバッテリ構造であって、互いの電気的容量が等しく設定された複数のセルを電気的に接続してバッテリを構成しているとともに、それぞれ平板状に形成されたこれら複数のセルを前後左右に並べてバッテリを成形している。そして、複数のセルを、互いの平面積および厚さを等しく形成するとともに、予め定められた複数の平面視形状のいずれかの形状に形成している。
【0010】
このとき、前後左右に並べられた複数のセルのそれぞれに対して同じ平面視形状のセルを積み重ねることにより、バッテリを立体成形してもよい。
【0011】
また、車体フレームの上部を構成して旋回自在に設けられた旋回台と、旋回台の周囲を覆って設けられたカバー部材と、カバー部材の内部空間において旋回台の後部に配置され、バッテリを下壁面により支持させて内部の収容空間に収容させる収容部材とを備え、作業装置を旋回台の前部に取り付け、カバー部材の後端面を湾曲して形成し、収容部材をこの後端面に対向して配置し、収容部材の後壁面を湾曲して形成しており、複数のセルを収容部材の後壁面に沿って下壁面に前後左右に並べて配置してもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成される本発明に係る作業車のバッテリ構造によると、バッテリが互いに電気的容量の等しいセルを電気接続して構成されていることから、バッテリの充電時に各セルを均一に充電させることができ、バッテリを安定して実用に供することができる。また、各セルは、互いの平面積および厚さが等しく成形されているため、互いの電気的容量を容易に等しく設定できる。一方で、各セルの平面視形状は、複数の平面視形状のいずれかになっており、互いに相違するものもある。このようなセルを前後左右に並べるときには、その配置パターンが多様化するため、バッテリ全体としての平面視形状を様々な複雑形状に形成できるようになり、作業車への搭載性を向上することができる。
【0013】
また、前後左右に並べられた複数のセルのそれぞれに対して同じ平面視形状のセルを積み重ねることにより、バッテリを複雑な立体形状に形成できるようになる。なお、セルは平板状に形成されているため、バッテリの上下方向(すなわち、セルの厚さ方向、セルを積み重ねる方向)の長さの設定自由度も高い。
【0014】
また、旋回台の周囲をカバー部材で覆い、このカバー部材の内部空間において旋回台の後部にバッテリを収容する収容部材を配置し、さらに、湾曲するカバー部材の後端面に対向して配置するため収容部材の後壁面を湾曲させて形成した場合においても、収容部材の下壁面にセルを前後左右に並べるときに、セルを最適配置することで、湾曲する収容部材の後壁面に簡単に近似させることができる。このため、収容部材にバッテリを収容するにあたって、下壁面上に形成されるデッドスペースを小さくでき、バッテリをコンパクトに成形できる。したがって、湾曲されたカバー部材の後壁面にバッテリをできる限り近づけて配置でき、また、カバー部材の内部空間におけるバッテリの占有体積(占有平面積)を小さくできるため、カバー部材の内部空間の有効活用が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。なお、図中の矢印Uの方向を上方とし、矢印Fの方向を前方とし、矢印Rの方向を右方としており、これらの方向は、水平面上にある作業車の旋回台11が基準位置にあるとき(旋回していないとき)における作業者が見る方向に対応している。
【0016】
図1には、本発明に係るバッテリが設けられた作業車の例としてバックホー1を示している。バックホー1は、地盤の掘削時や掘削で生じた土砂の移動時に使用される作業車であり、左右一対の履帯3,3を有して構成される走行体7と、走行体7の上部に設けられて車体フレーム10を構成する旋回台11と、旋回台11の前部に設けられたパワーショベル装置20と、旋回台11の上部に設けられたオペレータキャビン15とを有して構成される。
【0017】
旋回台11は、旋回モータ37により駆動されて水平旋回可能になっており、周囲がカバー40により覆われている。
【0018】
パワーショベル装置20は、旋回台11の前端下部に基端部が枢結されて上下に揺動自在なブーム25と、このブーム25の先端部に基端部が枢結されて上下に揺動自在なアーム27と、アーム27の先端部に基部が枢結されたバケット29とから構成されており、旋回台11の旋回動に合わせて旋回される。ブーム25は、旋回台11の前端下部とブーム25の下面との間に枢結されたブームシリンダ31により駆動されて起伏可能になっており、アーム27は、ブーム25の上面とアーム27の基端部との間に枢結されたアームシリンダ33により駆動されて屈伸可能になっており、バケット29は、アーム27の上面とバケット29の基部との間に枢結されたバケットシリンダ35により駆動されて揺動可能になっている。
【0019】
オペレータキャビン15も、旋回台11の旋回動に合わせて旋回される。オペレータキャビン15の内部には、作業者をパワーショベル装置20に対向させて着座させるオペレータシート17が設けられている。また、オペレータキャビン15の内部には、オペレータシート17の前方に左右一対の履帯3,3を作動操作するための一対の走行操作レバー8,8が設けられており、オペレータシート17の左右にパワーショベル装置20を作動操作するための操作装置21が設けられている。操作装置21は、オペレータシート17の左側に設けられた左操作レバー21aと、オペレータシート17の右側に設けられた右操作レバー21bとからなる。両操作レバー21a,21bは、前後左右に傾動可能になっており、基部にポテンショメータやリミットスイッチ等の検出器(図示略)を備えている。この検出器は、操作レバー21a,21bが傾動操作されると、傾動方向を示す操作検出信号をコントローラ90(図2)に出力する。
【0020】
バックホー1には、図2に示すように、パワーショベル装置20や走行体7を作動制御するコントローラ90と、油圧アクチュエータに作動油を給排する油圧装置70とが設けられている。この油圧アクチュエータには、パワーショベル装置20のブームシリンダ31、アームシリンダ33およびバケットシリンダ35と、旋回台11の旋回モータ37とが含まれるとともに、履帯3,3を駆動する油圧モータ(図示略)が含まれる。
【0021】
油圧装置70は、作動油を蓄えるオイルタンク73と、バッテリ50から電力供給される電気モータ13により駆動される油圧ポンプ14と、油圧アクチュエータに個別対応して設けられ、対応する油圧アクチュエータへの作動油の給排制御を行う電磁駆動式の油圧制御バルブ80とを有して構成されており、油圧ポンプ14が駆動されるとオイルタンク73に蓄えられた作動油が油圧制御バルブ80を介して油圧アクチュエータに供給される。油圧制御バルブ80は、ブームシリンダ31に対応したブーム制御バルブ81と、アームシリンダ33に対応したアーム制御バルブ83と、バケットシリンダ35に対応したバケット制御バルブ85と、旋回モータ37に対応した旋回制御バルブ87と、履帯3,3を駆動する油圧モータに対応した走行制御バルブ(図示略)とから構成される。なお、油圧装置70は、オイルクーラ71(図3)を備え、油温の管理を行うことができるように構成されている。
【0022】
コントローラ90は、基板上にCPUや入出力インタフェース等が実装されたマイクロコンピュータであり、両操作レバー21a,21bの検出器からの操作検出信号が入力され、入力された操作検出信号に基づいて油圧制御バルブ80に作動制御信号を出力して油圧制御バルブ80の作動制御を行うように構成されている。これにより、操作装置21の操作(両操作レバー21a,21bの傾動操作)に応じてブームシリンダ31、アームシリンダ33およびバケットシリンダ35の伸縮作動や旋回モータ37の作動が制御され、操作装置21の操作に応じて操作ブーム25、アーム27、バケット29および旋回台11が作動する。また、コントローラ90からモータ可変速制御装置115に向けて制御信号が出力されると、これにより電気モータ13の回転数を可変したり電気モータ13が適性なトルクを出力するように制御される。
【0023】
このように、バックホー1は、走行体7の駆動とパワーショベル装置20の駆動とが、バッテリ50から電力供給される電気モータ13により行われる電動式作業車である。
【0024】
図3,図4に示すように、旋回台11は、本体ベースプレート19とカバー40とを有して構成されている。本体ベースプレート19には、バックホー1の構成機器類が配置されており、これら構成機器類がカバー40の内部に形成された内部空間に40aに収容される。カバー40は、メインカバー41と、側部カバー42と、下部カバー43とから構成されている。
【0025】
側部カバー42は、本体ベースプレート19の前端縁から上方にオペレータキャビン15の底面16まで延び、オペレータキャビン15の前下部を覆う前面42aと、前面42aの左右縁から後方に延びてオペレータキャビン15の左右前方下部を覆う左右一対の側面42bとからなる。
【0026】
下部カバー43は、側部カバー42の側面42bの後端縁から連続するように後方に延びて設けられてオペレータキャビン15の左右後方下部を覆う左右一対の側面43bと、左右一対の側面43bを繋いでオペレータキャビン15の下部後方を覆う後面43aとからなる。
【0027】
メインカバー41は、オペレータシート17の背面中央部から後方に延びる上面41bと、上面41bから下方に屈曲されて成形され、側部カバー42および下部カバー43の側面42b,43bの上方を前後に延びる左右一対の側面41cと、上面41bおよび左右一対の側面41cを繋いでオペレータシート17の後方を覆う後面41aとからなる。メインカバー41の後面41aは、湾曲形成されている。
【0028】
このように、メインカバー41によりオペレータシート17の後方(旋回台11の後上部)が覆われ、側部カバー42によりオペレータシート17の前下方(旋回台11の前下部)が覆われ、下部カバー43によりオペレータシート17の後下方(旋回台11の後下部)が覆われる。図4に示すように、これらカバー40が周囲に設けられた旋回台11の平面視外形は、各カバーの側面41b,42b,43bにより形成される左右側面40b,40bが直線的に前後に延び、メインカバー41の後面41aにより形成される後端面40cが湾曲して延びており、略U字状になっている。このように、後端面40cが湾曲しているため、旋回半径がコンパクトになって作業性の向上が図られる。
【0029】
また、本体ベースプレート19は、走行体7の上部に旋回ベアリング18を介して上下に延びる旋回軸Xを中心に水平旋回可能に支持されている。旋回ベアリング18の中心部には、走行体7に支持されたロータリジョイント18aが配置されている。側部カバー42の内部には、油圧制御バルブ80が配置されている。この油圧制御バルブ80からは、ロータリジョイント18aを経由させて履帯3,3を駆動する油圧モータに作動油を供給可能になっている。
【0030】
下部カバー43の内部には、後端部であって左右中央部にオイルクーラ71が配置され、冷却ファン72がオイルクーラ71の前面に対向して設けられている。また、下部カバー43の内部には、オイルクーラ71の前方に、バッテリ50から電力供給されて駆動される電気モータ13がスピンドルの軸を左右に向けて配置されており、電気モータ13の左側に、電気モータ13により駆動される油圧ポンプ14が配置されている。なお、側部カバー42の内部には、右側の側面42bに沿ってオイルタンク73が配置され、後右部に旋回モータ37が配置されている。
【0031】
メインカバー41の内部には、バッテリ格納部12が設けられている。バッテリ格納部12は、バッテリ50を格納収容する引出部45と、引出部45を前後にスライドさせるスライド機構60とから構成される。
【0032】
図5に示すように、メインカバー41の後面41aには、開口44が形成されている。開口44の上部開口縁にはヒンジ機構49,49が左右に併設されており、このヒンジ機構49,49を介して蓋48がメインカバー41に連結されている。蓋48は、上下に揺動して開口44を開閉する。なお、蓋48は、開口44を閉塞しているときにメインカバー41の後面41aとほぼ均一の面を形成するように、メインカバー41の後面41aの曲率に合わせて湾曲して形成されている。これにより、蓋48は、開口44を閉塞しているときにおいて、カバー40の後端面40cをメインカバー41とともに形成する。
【0033】
引出部45は、前壁面45a、後壁面45b、下壁面45cおよび左右側面45d,45dを有して上方が開放された箱状に形成されている。前壁面45aおよび後壁面45bは、メインカバー41の後面41aの曲率に合わせて平面視略円弧状の曲面に成形されている。
【0034】
また、引出部45の後壁面45bには左右一対の取手46,46が設けられている。また、引出部45の前壁面45aの左右両端にはバッテリ格納部12に設けられた図示しないレバー係止部に係合可能な鉤状のロックレバー47,47が前後に延びて取り付けられている。ロックレバー47は、取手46,46に設けられた図示しない解除操作部の操作に応じて揺動し、操作時にレバー係止部との係合を解除可能になっている。
【0035】
スライド機構60は、引出部45の前面45aから梁状に延びる左右一対のレール61,61と、レール61,61の下面に当接するローラ62,62と、レール61,61の上面に当接するローラ65,65と、レール61,61の後端部に上下に延びるように設けられたストッパ63,63と、レール61,61の前端部に上下に延びるように設けられたストッパ64,64とから構成される。
【0036】
このように構成されるバッテリ格納部12においては、開口44を開放して解除操作部を操作すると、レール61,61が延びる後方に向けて引出部45を引き出すことができる。このため、バッテリ50のメンテナンスを容易に行わせることができる。このとき、ストッパ64,64により後方への移動が規制され、引出部45の引出限界位置が規定される。引き出された引出部45は、レール61,61が延びる前方に向けて引出部45を移動させてメインカバー41の内部に格納することができる。このとき、ストッパ63,63により前方への移動が規制され、引出部45の格納限界位置が規定される。引出部45が格納限界位置にあって開口44が閉塞されると、引出部45の後壁面45bが蓋48の内壁面に近接対向する。
【0037】
バッテリ50は、リチウムイオンバッテリであり、複数のセル51,51,…を電気的に直列および並列に接続して構成されている。セル51は、図6に示すように薄型のアルミパックの内部51Aに電解液が封入されて構成され、平板状に成形されている。
【0038】
セル51,51,…は、互いの平面積および厚さが等しく設定されており、これにより、各セル51,51,…に封入される電解液を同量に管理でき、容易に互いの電気容量を等しく設定できる。一方で、セル51の平面視形状は、予め定められた複数の平面視形状のいずれかの形状に形成されている。本構成例においては、図6(a)〜(c)に示すように、3つの平面視形状が定められている。図6(a)には、平面視正方形状のセル51aを示しており、図6(b)には平面視長方形状のセル51bを示しており、図6(c)には、図6(b)よりも長手方向の辺が長く短手方向の辺が短い平面視長方形状のセル51cを示している。バッテリ50を構成するため、図6(a)〜(c)に示す平面視形状のセル51a,51b,51cがそれぞれ複数設けられている。
【0039】
バッテリ50は、図7に一部を示すように、セル51,51,…を引出部45の下壁面45cの上面に前後左右に並べるとともに、上下に積み重ねることにより立体成形され、下壁面45cに支持されて引出部45の内部に格納収容される。
【0040】
なお、これらセル51,51,…から構成されるバッテリ50の充電時においては、各セル51,51,…の電気容量が等しくなるように設定されているため、セル間で充電のムラがなく、均一に充電させることができる。また、このようにアルミパックの内部51Aに電解液を封入して平板状に成形されたセル51においては、充電時に厚さ方向にアルミパックが膨張変形することが確認されている。このため、セル51,51,…を引出部45の内部に縦置きする場合、充電時の膨張変形を逃がすためのスペースを確保しなければならなくなる。したがって、上方が開放された引出部45にバッテリ50を収容するにあたっては、上下に積み重ねてバッテリ50を立体成形することにより、充電時の膨張変形に対する影響を低減あるいは無視できる。
【0041】
図7には、このように3つの平面視形状が定められたセル51,51,…からバッテリ50を立体成形するときにおけるセル51の前後左右方向への配置例を示している。図示するように、各セル51a,51b,51c,…の配置の組み合わせを考慮することで、湾曲する前壁面45aおよび後壁面45bに沿わせるようにして下壁面45cの上面に前後左右に並べることができ、下壁面45cに形成されるデッドスペースが小さくなる。
【0042】
このように前後左右にセル51a,51b,51c,…が並べられてバッテリ50の平面視形状が成形される。そして、このように並べられたセル51a,51b,51c,…には、同じ形状のセルが上方に積み重ねられる。これにより、引出部45の内部には、ほとんどデッドスペースがない状態でバッテリ50が格納収容される。
【0043】
このようにバッテリ50が引出部45の内部に収容されて引出部45が格納限界位置にあるときには、バッテリ50が旋回台11の後部に位置し、旋回台11の前部に設けられたパワーショベル装置20に対するカウンタウェイトとして機能させることができる。このため、バッテリ50とカウンタウェイトを別体で設ける必要がなくなり、カバー40の内部空間にスペースが確保されるとともに、バックホー1の総合重量の軽減にも繋がる。
【0044】
ここで、メインカバー41の後面41aは、湾曲して形成されている。カウンタウェイトは、メインカバー41の内部に収容されているが、できる限り後方にオフセットしてメインカバー41の後面41aに近接対向させることで、カバー40の内部空間に、より大きなスペースを確保できる。このため、バッテリ50を収容する引出部45の少なくとも後壁面45bは、メインカバー41の後面41aの曲率に合わせて形成されることが好ましいが、その一方で、バッテリ50の形状を複雑に成形する必要が生じる。
【0045】
上記構成例においては、平板状のセル51,51,…を前後左右に並べるとともに上下に積み重ねてバッテリ50を立体成形しているが、セル51,51,…の平面視形状が予め定めた3つの形状のいずれかになっている。このため、引出部45の後壁面45bの曲面に沿わせてバッテリ50の平面視形状を成形でき、引出部45の下壁面45cのデッドスペースを小さくできる。これにより、カバー40の内部空間におけるバッテリ50の占有容積が小さくなるとともに、バッテリ50を収容した引出部45をできる限りメインカバー41の後面41aに近づけて配置できる。したがって、カバー40の内部空間に大きなスペースが確保され、他の機器類のレイアウトも簡単に行わせることができる。
【0046】
これまで本発明にかかる作業車のバッテリ構造を説明したが、必ずしも上記構成に限られない。予め定める平面視形状は図6に示す3つの形態に限られず、曲線を有したものであってもよい。また、予め定める平面視形状の個数についても、3つに限られず、複数設定されていればよい。また、収容部45の下壁面45cに前後左右にどのように並べるのかについても、図7に示す配置例に限られず、適宜変更可能である。
【0047】
また、同じ平面視形状のセルを上方に積み重ねるとしたが、積み重ねるセル51の個数はいくつであってもよい。なお、セル51は薄型の平板状に形成されているため、上下に積み重ねて立体成形する上で、バッテリ50の高さの設定自由度が高くなる。また、下壁面45cに並べられた各セルに対して必ずしも同じ個数のセルを積み上げる必要もない。さらには、必要とされる電気容量とバッテリの配置が許容される面積の大きさによっては、上下に積み重ねず前後左右に並べるだけであってもよい。いずれの場合であっても、バッテリを複雑な形状に成形でき、バッテリをコンパクトに成形することができる。
【0048】
また、上記構成例では、作業車としてバックホーを例示したが、本発明のバッテリ構造は他の作業車にも適用可能であり、例えばローダなど旋回台を有していない作業車であっても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る作業車のバッテリ構造が設けられたバックホーの斜視図である。
【図2】上記バックホーのコントローラに係る構成を示すブロック図である。
【図3】上記バックホーに設けられた旋回台の平面図である。
【図4】上記バックホーに設けられた旋回台の側面図である。
【図5】上記バックホーのバッテリ格納部の周辺を示すバックホーの後方斜視図である。
【図6】セルの平面図である。
【図7】バッテリと引出部の部分平面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 バックホー(作業車)
7 走行体
11 旋回台
12 バッテリ格納部
20 パワーショベル装置(作業装置)
40 カバー(カバー部材)
41 メインカバー
42 側部カバー
43 下部カバー
45 引出部(収容部材)
50 バッテリ
51 セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
前記走行体の上部に取り付けられた車体フレームと、
前記車体フレームの前部に設けられた作業装置と、
前記車体フレームの後部に設けられ、前記走行体および前記作業装置を作動させるための電力を供給するバッテリとから構成された作業車のバッテリ構造であって、
前記バッテリは、互いの電気的容量が等しい複数のセルを電気的に接続して構成されるとともに、それぞれ平板状に形成された前記複数のセルを前後左右に並べて成形されており、
前記複数のセルは、互いの平面積および厚さが等しく形成されているとともに、予め定められた複数の平面視形状のいずれかの形状に形成されていることを特徴とする特徴とする作業車のバッテリ構造。
【請求項2】
前記バッテリは、前後左右に並べられた前記複数のセルのそれぞれに対し、同じ平面視形状のセルを積み重ねて立体成形されることを特徴とする請求項1に記載の作業車のバッテリ構造。
【請求項3】
前記車体フレームの上部を構成して旋回自在に設けられた旋回台と、
前記旋回台の周囲を覆って設けられたカバー部材と、
前記カバー部材の内部空間において前記旋回台の後部に配置され、下壁面により前記バッテリを支持して内部の収容空間に前記バッテリを収容させる収容部材とを備え、
前記作業装置が、前記旋回台の前部に取り付けられており、
前記カバー部材の後端面が湾曲して形成され、前記収容部材が前記カバー部材の前記後端面に対向して配置され、前記収容部材の後壁面が湾曲して形成されており、
前記複数のセルが、前記収容部材の前記後壁面に沿って前記下壁面に前後左右に並べて配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の作業車のバッテリ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−261543(P2007−261543A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93049(P2006−93049)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000150154)株式会社竹内製作所 (50)
【Fターム(参考)】