説明

作業車のボンネットロック装置

【課題】抜止係止体の抜け止め解除に伴う持ち上げ手段を省略しながら、その抜け止め解除の操作をやめても抜止係止体の解除操作状態を維持できるようにした。
【解決手段】一方側に被係止体30を備え、他方側に固定用ブラケット4と、抜止係止体5と、抜け止め作用姿勢側へ付勢する付勢バネ31とを備え、固定用ブラケット4には、被係止体30を上下方向で係脱可能な係合凹部40を形成し、抜止係止体5は、係合凹部40に係入した被係止体30の上下方向での抜け出しを規制、及び係合凹部40の上下方向位置から退去する抜け止め解除姿勢とに姿勢切り換え自在な抜止突部51を備え、かつ抜け止め解除姿勢で被係止体30が係合する解除位置保持部54を備えて、ボンネット側の重量で付勢バネ31の付勢力に抗して抜止係止体5の抜け止め作用姿勢側への復帰を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側の揺動支点周りで上下揺動自在に構成されたボンネットを、前記揺動支点とは反対側の車体部分に対して係脱自在に構成してある作業車のボンネットロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、ボンネットの揺動端側を係脱自在に構成してある作業車のボンネットロック装置としては、下記[1]又は[2]に記載のものが知られている。
【0003】
[1] 車体側に取り付けられた固定用ブラケットと、ボンネット側の被係止体を係止可能な抜止係止体とを備え、その抜止係止体を抜け止め作用姿勢側へ付勢する付勢バネや、抜止係止体を抜け止め解除側へ操作する操作具を備え、さらに、抜け止め解除に伴ってボンネットを少し持ち上げ操作する弾性体を備えたもの(特許文献1参照)。
[2] ボンネット側に取り付けられた固定用ブラケットと、車体側の被係止体を係止可能な抜止係止体とを備え、その抜止係止体を抜け止め作用姿勢側へ付勢する付勢バネや、抜止係止体を抜け止め解除側へ操作する操作具を備え、さらに、抜け止め解除に伴ってボンネットを少し持ち上げ操作する操作体及び弾性体を備えたもの(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−26140号公報(段落番号〔0013〕、〔0014〕、〔0015〕、図1、図2、図3参照)
【特許文献2】実開平6−35557号公報(段落番号〔0008〕、〔0009〕、図1、図2、図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記[1]及び[2]に記載した従来のものでは、抜け止め解除操作を行うに伴ってボンネットを少し持ち上げ操作するための手段を設けてあるので、少し浮き上がったボンネットの下側に手を入れて持ち上げ操作する際には便利に用いることができる点で有用なものである。
しかしながら、作業車の場合、ボンネットを持ち上げて車体との間に十分な隙間を形成しなければボンネットの持ち上げ操作を行うことができないものであるとは限らず、ボンネット側や車体側に存在する凹凸部分などを利用してボンネットの開閉操作を行うことができる構造のものもある。
【0006】
この場合、前記ボンネットを少し持ち上げ操作するための手段を省けば、さらに構造の簡素化を図り得る利点があるが、上記の従来構造のものにおいてボンネットを少し持ち上げ操作するための手段を省略すると、ボンネットの係合を解除する操作を行ってもボンネット側の被係止体の位置が変化しないので、係合解除操作をやめると再び係合状態となってしまう。
このため、ボンネットを少し持ち上げ操作するための手段を省略すると、その係合解除操作を継続しながらボンネットの持ち上げ操作を行わなければならないという不便さがある。
【0007】
本発明の目的は、抜止係止体の抜け止め解除に伴ってボンネットを少し持ち上げ操作するための手段を省略しながら、その抜け止め解除の操作をやめても抜止係止体の解除操作状態を維持できるようにして、操作性を改善できるようにした作業車のボンネットロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による作業車のボンネットロック装置では、下記の技術手段を講じたものである。
〔解決手段1〕
請求項1に記載のように、車体側の揺動支点周りで上下揺動自在に構成されたボンネットを、前記揺動支点とは反対側の車体部分に対して係脱自在に構成してある作業車のボンネットロック装置であって、
ボンネット側もしくは車体側の何れか一方側に被係止体を備えるとともに、他方側に固定用ブラケットと、前記被係止体を係止可能な抜止係止体と、その抜止係止体を抜け止め作用姿勢側へ付勢する付勢バネとを備え、
前記固定用ブラケットには、前記一方側に備えた被係止体を上下方向での前記一方側から係脱可能で、係入状態における被係止体の係脱方向に交差する水平方向への移動を規制する係合凹部を形成してあり、
前記抜止係止体は、抜け止め作用姿勢で前記固定用ブラケットの係合凹部に係入した被係止体の上下方向での抜け出しを規制する抜止突部を備えるとともに、その抜止突部を前記係合凹部の上下方向位置から退去させて前記被係止体の抜け出しを可能にする抜け止め解除姿勢に姿勢切り換え自在に構成してあり、
さらに、この抜止係止体には、抜け止め解除姿勢への姿勢切り換えに伴って前記被係止体が係合する解除位置保持部を備えてあり、この解除位置保持部では、前記被係止体と解除位置保持部との接当箇所に負荷されるボンネット側の重量によって、前記付勢バネの抜け止め作用姿勢側への付勢力に抗して抜止係止体の抜け止め作用姿勢側への復帰を阻止するように構成してあることを特徴とする。
【0009】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、抜止係止体には、抜け止め解除姿勢への姿勢切り換えに伴って被係止体が係合する解除位置保持部を備えている。そして、この解除位置保持部では、付勢バネの付勢力で抜け止め作用姿勢側へ付勢されている抜止係止体の動きを、被係止体と解除位置保持部との接当箇所にボンネット側の重量が負荷されるようにすることによって阻止している。
したがって、解除位置保持部で被係止体と解除位置保持部との接当箇所にボンネット側の重量が作用している状態では、抜止係止体に対する抜け止め解除操作をやめても、抜止係止体が抜け止め作用姿勢側へ復帰することがない。
そして、前記解除位置保持部に対するボンネット側の重量が取り除かれると、抜止係止体を抜け止め作用姿勢側へ付勢する付勢バネの作用で抜止係止体は抜け止め作用姿勢側へ復帰する。
【0010】
したがって、抜止係止体の抜け止め解除に伴ってボンネットを少し持ち上げ操作するための手段を省くことによってボンネットロック装置の構造の簡素化を図り得たものでありながら、ボンネットの持ち上げ操作を行う際に、抜止係止体に対する抜け止め解除操作を行いながらボンネットの持ち上げ操作を行うというような不便な操作は必要なく、単に、抜止係止体に対する抜け止め解除操作を行うだけで、その抜け止め解除操作をやめても抜止係止体に対する抜け止め解除状態が維持されるので、両手でボンネットを持ち上げ操作することが可能となる利点がある。
【0011】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、請求項2に記載のように、被係止体に対する係合凹部の接触位置と、抜止係止体の抜け止め解除姿勢における解除位置保持部に対する接触位置とは同一高さ位置である点に特徴がある。
【0012】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、被係止体に対する係合凹部の接触位置と、抜止係止体の抜け止め解除姿勢における解除位置保持部に対する接触位置とは同一高さ位置であることにより、抜止係止体の抜け止め解除操作を行うに際して、係合凹部に被係止体が位置する状態から、これら両者の上下位置関係を大きく変化させる操作は必要はなく、単に、係合凹部に被係止体を位置させた抜け止め作用姿勢から抜け止め係止体を抜け止め解除姿勢に操作して、解除位置保持部に被係止体を位置させるだけでよい。
このとき、被係止体に対する係合凹部の接触位置と、抜止係止体の抜け止め解除姿勢における解除位置保持部に対する接触位置とは同一高さ位置であるから、被係止体は、抜け止め作用姿勢側から解除位置保持部へ移行する際の上下移動量が僅かなもので済む。このため、ボンネットを持ち上げ方向に付勢する手段を用いなくとも、ボンネットの重量による影響が少なくて比較的軽快に抜け止め解除操作を行える利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】ボンネット部分の全体側面図である。
【図3】ボンネット部分の正面図である。
【図4】ボンネットロック装置の平面図である。
【図5】ボンネットロック装置の正面図である。
【図6】ボンネットロック装置を示し、(a)は前方左側方から見た斜視図、(b)は後方左側方から見た斜視図である。
【図7】ボンネットロック装置の分解斜視図である。
【図8】ボンネットロック装置の作用状態を示す説明図であり、(a)は抜け止め作用姿勢を示し、(b)は抜け止め解除姿勢を示し、(c)はボンネット開放状態を示している。
【図9】別実施形態におけるボンネットロック装置の作用状態を示す説明図であり、(a)は抜け止め作用姿勢を示し、(b)は抜け止め解除姿勢を示し、(c)はボンネット開放状態を示している。
【図10】別実施形態におけるボンネットロック装置を前方右側方から見た斜視図である。
【図11】別実施形態におけるボンネットロック装置を示す側面図であり、(a)は図10における別実施形態の構造を左側方から見た側面図であり、(b)は図10における別実施形態の構造の一部を変更して左側方から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔トラクタの全体構成〕
図1は、本発明による作業車のボンネットロック装置を適用したトラクタを示す。
このトラクタは、エンジン搭載フレーム10、中間伝動ケース11、及び後部ミッションケース12で構成される自走車体1を、前記エンジン搭載フレーム10側を支持する左右一対の操向操作自在な前車輪13と、後部ミッションケース12側を支持する後車輪14とで支持するように構成されている。
そして、前記自走車体1の前部側に原動部2を設けるとともに、原動部2の後部側にステアリングハンドル15を備えた操縦搭16、及び操縦座席17を配設してあり、自走車体1の後方にロータリ耕耘装置(図示せず)などの作業機を、リフトアーム18及びリンク機構19によって昇降操作可能に連結するように構成してある。
【0015】
〔原動部〕
原動部2では、エンジン搭載フレーム10に搭載されたエンジン20、及び図示しないが冷却用ラジエータやエヤクリーナ、バッテリーなどのエンジン付属機器を覆うようにボンネット21を設けている。エンジン搭載フレーム10の前部には下部カバー10Aが設けてあり、この下部カバー10Aによってエンジンボンネット21の前部の下側が覆われている。
このボンネット21は、操縦搭16との接続箇所に立設されている後部枠22に対して後端側を横軸芯x1(揺動支点に相当)周りで上下揺動自在に枢着してあり、天板部21aの前方側箇所にフロントグリル21bを備え、左右横側部に横壁部21cを備えて構成してある。前記フロントグリル21bの上部には、前方を照射するライトが備えられている。このフロントグリル21bは、天板部21aの前端部下面側から下側に延出された帯板状のステー21Aによって天板部21a側に支持されている。
【0016】
図2及び図3に示すように、ボンネット21の内部空間には、各種付属機器を取り付けるための門形の固定枠23がエンジン搭載フレーム10側の下部カバー10Aから立設されており、この固定枠23の左側上部(図3では右側)にストッパ金具24を取り付けてある。
このストッパ金具24は、ボンネット21を後端側の横軸芯x1周りで上方側へ揺動させて開放姿勢としたとき、そのボンネット21の閉塞側への戻りを阻止するための支持ステー25の下端側を係止及び係止解除可能にするためのものであり、クランク状に屈曲させた板状部材の上端部に係止孔24aを形成してある。
【0017】
一方、前記支持ステー25は、棒状部材で構成され、その上端側を左右方向に屈曲させて、ボンネット21内の上部側の取り付け片26に形成した枢支孔26aに挿入して取り付けてある。その枢支孔26aに挿入された左右方向に屈曲させた部位を左右向きの横軸芯x2として、この横軸芯x2周りで前後揺動自在に枢着してあり、下端側はフック状に屈曲形成して前記係止孔24aに対して係脱可能に構成してある。
尚、この支持ステー25のボンネット21への取付部では、前記左右向きの横軸芯x2となる左右方向の屈曲部分と、その左右向きの屈曲部分を挿入する枢支孔26aとの嵌合箇所を少し融通のある緩い嵌合とすることによって、下端側位置を左右方向にも多少位置変更できるように構成してある。
【0018】
〔ボンネットロック装置〕
前記ボンネット21の揺動支点となる横軸芯x1とは反対側の車体部分、すなわち自走車体1の前端側部分にボンネットロック装置3が設けられている。
このボンネットロック装置3は、図3乃至図7に示すように、自走車体1を構成するエンジン搭載フレーム10側の下部カバー10Aに取り付けられた固定用ブラケット4と、ボンネット21側に設けられた丸棒状の被係止体30と、前記被係止体30を係止可能な抜止係止体5と、その抜止係止体5を抜け止め作用姿勢側へ常時付勢する付勢バネ31とを備えて構成されている。
前記被係止体30は、天板部21a側から下側に延出された帯板状のステー21Aの下部に連結されてフロントグリル21bの下端部を支持する支持部材21Bに連結されている。
【0019】
前記固定用ブラケット4は、左右方向の中央部に、前記ボンネット21の被係止体30を上方側から係脱可能な係合凹部40を形成してある。この係合凹部40の左右両側には、係合凹部40から離れる側ほど高くなる傾斜面41を形成してあって、ボンネット21側の被係止体30が確実に係合凹部40内に案内されるように構成してある。
そして、この固定用ブラケット4の左右方向での一端側(図5における右側)には、後述する抜止係止体5に設けたストッパーピン53が接当する動作範囲規定用の切り欠き部42を設けてあって、抜止係止体5の抜け止め作用姿勢、及び抜け止め解除姿勢を、前記切り欠き部42の上端縁42u及び下端縁42dで位置決めできるように構成されている。
つまり、図5において、実線で示すように抜止係止体5に設けたストッパーピン53が前記切り欠き部42の上端縁42u側に接当している状態が抜け止め作用姿勢であり、仮想線に示すように抜止係止体5に設けたストッパーピン53が前記切り欠き部42の下端縁42d側に接当している状態が抜け止め解除姿勢である。
【0020】
抜止係止体5は、前記固定用ブラケット4に対して枢支軸50周りで揺動自在に枢支されており、前述したように抜け止め作用姿勢と抜け止め解除姿勢とに、姿勢変更自在に構成されている。
この抜止係止体5には、抜け止め作用姿勢で前記固定用ブラケット4の係合凹部40に係入した被係止体30の上方側に位置して上方側への抜け出しを規制するように形成された抜止突部51を設けてある。この抜止突部51の上側には、上方側から前記係合凹部40に向けて係入するように下降移動する被係止体30との接当によって、抜止係止体5自体を抜け止め解除姿勢側へ回動させるような分力を与えるための傾斜面52を形成してある。前述したストッパーピン53もこの抜止係止体5に一体に取り付けてあって、前記固定用ブラケット4の切り欠き部42内に突入した状態に設けられている。
【0021】
そして、この抜止係止体5には、抜け止め解除姿勢に姿勢変更した際に被係止体30が係合する解除位置保持部54を設けてある。
この解除位置保持部54は、前記被係止体30を介して負荷されるボンネット21側の重量によって、前記付勢バネ31による抜け止め作用姿勢側への付勢力に抗して抜止係止体5の抜け止め解除姿勢を維持し、抜け止め作用姿勢側への復帰を阻止するためのものである。
つまり、この解除位置保持部54の底部54b(最低位置に相当)は、図5に仮想線で示す抜け止め解除姿勢で前記係合凹部40の底部40a(最低位置に相当)と同一高さ位置にあり、その底部54bにボンネット21の重量が作用している状態で、前記底部54bの横脇(図5における右横脇)に存在する移動規制部54aとの協働により、付勢バネ31の抜け止め作用姿勢側へ付勢力に抗して抜止係止体5の抜け止め解除姿勢を維持し得るように構成されている。
【0022】
前記付勢バネ31は、両端側にフック部分を備え、一端側が下部カバー10A上に設けた固定金具10aに係止され、他端側が前記抜止係止体5に形成してある係止用長孔55に係止されている。
前記係止用長孔55は、その長手方向が、前記抜止係止体5を抜け止め作用姿勢としたときに付勢バネ31の掛張方向と合致する方向に沿わせてあり、付勢バネ31の付勢力が少ない状態で付勢バネ31のフック部分を係入し易いように構成してある。
そして、この付勢バネ31の両端部を結ぶ付勢力の作用する方向の仮想線分L1は、前記付勢バネ31の下部カバー10A上の固定金具10aに係止された一端側と前記抜止係止体5の揺動中心である枢支軸50の中心とを結ぶ仮想線分L0の上方側にのみ存在し、枢支軸50の中心を越えて下側にまで移動するものではないので、付勢バネ31の付勢力は常に抜止係止体5を前記枢支軸50回りで抜け止め作用姿勢側に作用するように構成されている。
【0023】
前記抜止係止体5の上端部には、人為操作用の操作具32を連結するための連結孔56を設けてある。前記下部カバー10Aには、左右向きの長穴10Bが形成されており、前記連結孔56に連結された操作具32の操作部32aが下部カバー10Aの下側に位置する状態で、操作具32が長穴10Bを介して正面視で斜め左方下方向き傾斜姿勢で下部カバー10Aの内外にわたって配備されている。
したがって、この連結孔56に操作具32を連結して押し引き操作することにより、操作具32の操作部32aを車体前部の横外側方から操作して、抜止係止体5を抜け止め作用姿勢と抜け止め解除姿勢とに簡易な操作で姿勢変更することができる。
【0024】
図8は、本発明のボンネットロック装置3を用いてボンネット21のロック及びロック解除を行う操作を示している。
すなわち、図8(a)は、ボンネット21側の被係止体30が固定用ブラケット4の係合凹部40に入り込み、その上方側に抜止係止体5の抜止突部51が位置し、この状態を付勢バネ31の引っ張り作用で維持している。つまり、抜け止め作用姿勢が維持されている状態を示している。
【0025】
図8(b)は、人為操作用の操作具32を付勢バネ31の付勢力に抗して引き操作し、抜止係止体5を抜け止め解除姿勢に切り換え操作した状態を示している。
この状態では、抜止係止体5に付勢バネ31の戻し側、つまり抜け止め作用姿勢側への復帰付勢力が作用しているが、ボンネット21側の被係止体30が解除位置保持部54に位置して、そのボンネット重量が作用している。この状態で被係止体30が移動規制部54aを越えるためには、ボンネット重量による移動抵抗に打ち勝って抜止係止体5を移動させ得る力を加える必要があるが、この力は前記付勢バネ31の復帰付勢力よりも大きいものとなるため、操作具32から手を離しても抜止係止体5は抜け止め解除姿勢のままに維持される。
【0026】
図8(b)に示す状態でボンネット21を上方へ持ち上げると、抜止係止体5は付勢バネ31の復帰付勢力で抜け止め作用姿勢側へ回動し、図8(c)に示す状態に復帰する。
この図8(c)に示す状態から、被係止体30を下方へ降ろすと、被係止体30が抜止係止体5の傾斜面52に接当して、ボンネット21の重量により付勢バネ31の付勢力に抗して抜止係止体5を枢支軸50周りで回動させ、被係止体30が固定用ブラケット4の係合凹部40に入り込んで、図8(a)に示す抜け止め作用姿勢となる。
【0027】
〔別実施形態の1〕
ボンネットロック装置3は、上記の実施形態に示した構造のものに限らず、例えば図9に示すように構成されたものであってもよい。
この構造では、固定用ブラケット4は、上記の実施形態に示した構造のものと同様であるが、抜止係止体5が固定用ブラケット4に対して左右方向でスライド移動自在に装着してあり、付勢バネ31は、抜止係止体5を抜け止め作用姿勢側へ操作するように付勢されている。
【0028】
前記抜止係止体5のスライド移動構造は、抜止係止体5に形成された一対の長孔57,57に、固定用ブラケット4に設けた一対のガイドピン43,43が係入して、スライド移動自在であるように構成されている。
個々の長孔57,57のスライド方向の長さは、図9(a)に示すように、抜止係止体5が付勢バネ31で一方向に引っ張り作用を受けている抜け止め作用姿勢に位置した状態で、ガイドピン43,43が長孔57,57の一方の端部に接当し、図9(b)に示すように、付勢バネ31の付勢力に抗して人為操作用の操作具32を引き操作して抜け止め解除姿勢に位置させた状態では、ガイドピン43,43が長孔57,57の他方の端部に接当するように長さ設定されている。この図9(b)に示す状態では、抜止係止体5に付勢バネ31の戻し側、つまり抜け止め作用姿勢側への復帰付勢力が作用しているが、ボンネット21側の被係止体30が解除位置保持部54に位置して、そのボンネット重量が作用している。この状態で被係止体30が移動規制部54aを越えるためには、ボンネット重量による移動抵抗に打ち勝って抜止係止体5を移動させ得る力を加える必要があるが、この力は前記付勢バネ31の復帰付勢力よりも大きいものとなるため、操作具32から手を離しても抜止係止体5は抜け止め解除姿勢のままに維持されることは、前述した実施形態のものと同様である。
また、この図9(b)に示す状態でボンネット21を上方へ持ち上げると、抜止係止体5は付勢バネ31の復帰付勢力で抜け止め作用姿勢側へ回動し、図9(c)に示す状態に復帰する点でも、前述した実施形態のものと同様である。
【0029】
この実施形態のものでは、固定用ブラケット4の前面側に対して抜止係止体5の後面側が摺接する状態で取り付けてあり、前記抜止係止体5の左右方向での一端側に設けた前方側への折り曲げ片5a部分に付勢バネ31の端部が係止され、抜止係止体5の他端側に設けた前方側への折り曲げ片5b部分に、人為操作用の操作具32が係止されている。
【0030】
〔別実施形態の2〕
さらにボンネットロック装置3としては、上記の実施形態に示した構造のものに限らず、例えば図10及び図11に示すように構成されたものであってもよい。
この構造では、固定用ブラケット4及び抜止係止体5を備えるとともに、その抜止係止体5を固定用ブラケット4に対して左右方向にスライド移動自在であるように案内するためのガイドレール6を備えている。
このガイドレール6は、図10及び図11(a)に示すように、凹溝状の横長レール部60と、その中央部で上方へ立設された立ち上がり片部61とを備えて構成され、横長レール部60の溝60A内に抜止係止体5の下端側の台座部5Aが嵌り込んで、溝長手方向にスライド移動自在に構成されている。
前記立ち上がり片部61には、ガイドピン62が固定され、このガイドピン62は前記抜止係止体5に形成された横長の長孔57に挿通されていて、抜止係止体5のスライド移動を許容する範囲を、このガイドピン62と長孔57の両端部との接当によって規定するように構成されている。
【0031】
この構造のものでは、図9(a)乃至図9(c)に示した前記〔別実施形態の1〕に記載の構造のものと同様な作用でボンネット21の開閉操作を行うことができる。
つまり、図10に示す状態は、図9(a)に示した場合と同様に、ボンネット21側の被係止体30が固定用ブラケット4の係合凹部40に入り込み、その上方側に抜止係止体5の抜止突部51が位置し、この状態を付勢バネ31の引っ張り作用で維持している状態である。
この状態から、付勢バネ31の付勢力に抗して人為操作用の操作具32を引き操作すると、図9(b)に示した場合と同様に、抜止係止体5が抜け止め解除姿勢に切り換え操作され、ボンネット21側の被係止体30は解除位置保持部54に位置する。
そして、その状態からボンネット21を上方へ持ち上げると、図9(c)に示した場合と同様に、抜止係止体5は付勢バネ31の復帰付勢力で抜け止め作用姿勢側へ復帰移動する。
【0032】
図11(b)は、上記図10及び図11(a)に示す構造のものに比べ、ガイドレール6の横長レール部60の形状が異なるだけで、その他の構造は同一のものである。
この構造では、横長レール部60の形状を、その溝60Aの開口側に、浮き上がり防止片64を備えた形状に構成してある。これによって、抜止係止体5の下端側の台座部5Aが上方側へ浮き上がる傾向を阻止できるようにしている。
尚、図11(a)、及び図11(b)中の符号63は、前記立ち上がり片部61との間で前記抜止係止体5を相対移動可能な状態に挟み込むための裏当て金である。
【0033】
〔別実施形態の3〕
上記各実施の形態では、解除位置保持部54の底部54b(接触位置に相当)を、抜止係止体5の抜け止め解除姿勢で係合凹部40の底部40a(接触位置に相当)と同一高さ位置に設定したものを示したが、これに限らず、解除位置保持部54の底部54bを、抜止係止体5の抜け止め解除姿勢で係合凹部40の底部40aよりも少し高く形成するなど、ボンネット21の重量が積極的に抜止阻止体5側に作用するように構成してもよい。
【0034】
〔別実施形態の4〕
上記各実施の形態では、ボンネット21側に被係止体30を備え、走行車体1側の下部カバー10Aに固定用ブラケット4と、前記被係止体30を係止可能な抜止係止体5と、その抜止係止体5を抜け止め作用姿勢側へ常時付勢する付勢バネ31とを備えた構造のものを示したが、本発明はこれに限られたものではない。
つまり、走行車体1側の下部カバー10A、もしくはその他の走行車体1側に被係止体30を備え、ボンネット21側に固定用ブラケット4と、前記被係止体30を係止可能な抜止係止体5と、その抜止係止体5を抜け止め作用姿勢側へ常時付勢する付勢バネ31とを備えた構造のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、実施形態で示したトラクタの他、コンバインや草刈り機、田植機、あるいは建設機械などの各種の作業機のボンネットロック装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
3 ボンネットロック装置
4 固定用ブラケット
5 抜止係止体
21 ボンネット
30 被係止体
31 付勢バネ
40 係合凹部
51 抜止突部
54 解除位置保持部
x1 揺動支点(横軸芯)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側の揺動支点周りで上下揺動自在に構成されたボンネットを、前記揺動支点とは反対側の車体部分に対して係脱自在に構成してある作業車のボンネットロック装置であって、
ボンネット側もしくは車体側の何れか一方側に被係止体を備えるとともに、他方側に固定用ブラケットと、前記被係止体を係止可能な抜止係止体と、その抜止係止体を抜け止め作用姿勢側へ付勢する付勢バネとを備え、
前記固定用ブラケットには、前記一方側に備えた被係止体を上下方向での前記一方側から係脱可能で、係入状態における被係止体の係脱方向に交差する水平方向への移動を規制する係合凹部を形成してあり、
前記抜止係止体は、抜け止め作用姿勢で前記固定用ブラケットの係合凹部に係入した被係止体の上下方向での抜け出しを規制する抜止突部を備えるとともに、その抜止突部を前記係合凹部の上下方向位置から退去させて前記被係止体の抜け出しを可能にする抜け止め解除姿勢に姿勢切り換え自在に構成してあり、
さらに、この抜止係止体には、抜け止め解除姿勢への姿勢切り換えに伴って前記被係止体が係合する解除位置保持部を備えてあり、この解除位置保持部では、前記被係止体と解除位置保持部との接当箇所に負荷されるボンネット側の重量によって、前記付勢バネの抜け止め作用姿勢側への付勢力に抗して抜止係止体の抜け止め作用姿勢側への復帰を阻止するように構成してあることを特徴とする作業車のボンネットロック装置。
【請求項2】
被係止体に対する係合凹部の接触位置と、抜止係止体の抜け止め解除姿勢における解除位置保持部に対する接触位置とは同一高さ位置である請求項1記載の作業車のボンネットロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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