説明

作業車の走行制御装置

【課題】 直進走行及び旋回走行を良好に行うことができ、しかも、直進走行時において一時的に大きな走行駆動力が必要となる場合に良好な直進走行を行うことが可能となる作業車の走行制御装置を提供する。
【解決手段】 直進が指令されると直進用の無段変速装置7の出力を左右一対の走行装置1R,1Lの夫々に伝達し、右旋回が指令されると直進用の無段変速装置7の出力を左側の走行装置1Lに伝達し且つ旋回用の無段変速装置8の出力を右側の走行装置1Rに伝達し、左旋回が指令されると直進用の無段変速装置7の出力を右側の走行装置1Rに伝達し且つ旋回用の無段変速装置8の出力を左側の走行装置1Lに伝達し、走行駆動力の増大が指令されると、直進用の無段変速装置7の出力及び旋回用の無段変速装置8の出力を左右一対の走行装置1R,1Lの夫々に伝達して、旋回用の無段変速装置8を直進用の無段変速装置7と同じ又は略同じ速度になるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達する直進用伝動状態、前記直進用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達し且つ旋回用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達する左旋回用伝動状態、及び、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達し且つ前記旋回用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達する右旋回用伝動状態に切り換え自在な伝動状態切換手段と、前記旋回用の無段変速装置を変速操作するアクチュエータと、前記直進用の無段変速装置を手動操作にて変速するための手動操作式の変速操作具と、直進、右旋回、及び、左旋回を指令する旋回指令手段と、前記伝動状態切換手段及び前記アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられ、前記制御手段が、前記旋回指令手段にて直進が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記直進用伝動状態に切り換えるように制御し、前記旋回指令手段にて右旋回が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記右旋回用伝動状態に切り換えて前記旋回用の無段変速装置が旋回用の目標速度になるように前記アクチュエータの作動を制御し、且つ、前記旋回指令手段にて左旋回が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記左旋回用伝動状態に切り換えて前記旋回用の無段変速装置が旋回用の目標速度になるように前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている作業車の走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したような構成の作業車の走行制御装置は、直進状態で走行するときにおいては、手動操作式の変速操作具の操作に応じて変速される直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達することで左右の走行装置を同じ速度で駆動することによって、車体を適切に直進走行することができるようにしながら、旋回走行を行うときには、左右一対の走行装置のうちの旋回側に位置する走行装置を旋回用の無段変速装置にて駆動し、反対側に位置する走行装置を直進用の無段変速装置にて駆動するようにし、且つ、前記アクチュエータの作動を制御して直進用の無段変速装置と旋回用の無段変速装置との速度比率を変更することにより、左右一対の走行装置の速度差によって所望の旋回状態により滑らかに旋回走行を行えるようにしたものであるが、このような作業車の走行制御装置において、従来では、作業車の一例としてのコンバインに適用したものとして、次のように構成したものがあった。
【0003】
すなわち、前記旋回指令手段にて直進が指令されて、前記伝動状態切換手段が前記直進用伝動状態に切り換えられると、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達するが、旋回用の無段変速装置の変速出力は左右一対の走行装置に対して遮断される状態となっていた。つまり、直進用の無段変速装置だけの走行駆動力により、左右一対の走行装置を同速度で駆動する構成となっていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−247154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、作業車の一例であるコンバインは、圃場等において植立茎稈を刈り取る作業を行うものであり、作業が終了した後に圃場の内部から畦を乗り越えて圃場の外部に脱出する場合や、路上から歩み板を用いて運転車両の荷台上に乗り上げる場合、あるいは、走行装置が泥土内に埋り込み空周りしている場合等、一時的に大きな走行駆動力が必要となるような場合があり、このような場合に走行駆動力が不足すると良好な直進走行が行えないものになることがある。
【0006】
上記従来構成は、直進走行時においては、直進用の無段変速装置により左右一対の走行装置を同速度で駆動する構成とすることによって適切に直進走行することができ、しかも、旋回走行時には、左右一対の走行装置を直進用の無段変速装置と旋回用の無段変速装置により各別に駆動して、夫々の無段変速装置の速度差によって所望の旋回状態にて滑らかに旋回走行を行うことができるという利点を有するものであるが、上述したような一時的に大きな走行駆動力が必要となるような場合に、直進用の無段変速装置の駆動力だけでは走行駆動力が不足する場合に、良好な直進走行が行えないものになるおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、直進走行を適切に行うことができ、しかも、所望の旋回状態により滑らかに旋回走行を行うことができる利点を有するものでありながら、直進走行時において一時的に大きな走行駆動力が必要となる場合に、駆動力不足を解消して良好な直進走行を行うことが可能となる作業車の走行制御装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車の走行制御装置は、直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達する直進用伝動状態、前記直進用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達し且つ旋回用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達する左旋回用伝動状態、及び、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達し且つ前記旋回用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達する右旋回用伝動状態に切り換え自在な伝動状態切換手段と、前記旋回用の無段変速装置を変速操作するアクチュエータと、前記直進用の無段変速装置を手動操作にて変速するための手動操作式の変速操作具と、直進、右旋回、及び、左旋回を指令する旋回指令手段と、前記伝動状態切換手段及び前記アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられ、前記制御手段が、前記旋回指令手段にて直進が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記直進用伝動状態に切り換えるように制御し、前記旋回指令手段にて右旋回が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記右旋回用伝動状態に切り換えて前記旋回用の無段変速装置が旋回用の目標速度になるように前記アクチュエータの作動を制御し、且つ、前記旋回指令手段にて左旋回が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記左旋回用伝動状態に切り換えて前記旋回用の無段変速装置が旋回用の目標速度になるように前記アクチュエータの作動を制御するように構成されているものであって、その第1特徴構成は、走行駆動力の増大を指令する駆動力増大指令手段が備えられ、前記伝動状態切換手段が、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達し、且つ、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達する直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換え自在に構成され、前記制御手段が、前記旋回指令手段にて直進が指令されている状態において、前記駆動力増大指令手段にて走行駆動力の増大が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記駆動力増大用の伝動状態に切り換え、且つ、前記旋回用の無段変速装置が前記直進用の無段変速装置と同じ又は略同じ速度になるように前記アクチュエータの作動を制御する駆動力増大型の直進走行制御を実行するように構成されている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、前記旋回指令手段にて直進が指令されている状態において、前記駆動力増大指令手段にて走行駆動力の増大が指令されると、制御手段は、伝動状態切換手段を前記駆動力増大用の伝動状態に切り換える。つまり、直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達し、且つ、旋回用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達する状態に切り換えられる。そして、制御手段は、旋回用の無段変速装置が直進用の無段変速装置と同じ又は略同じ速度になるようにアクチュエータの作動を制御するのである。
【0010】
つまり、直進用の無段変速装置及び旋回用の無段変速装置の夫々の変速出力が、左右一対の走行装置の夫々に伝達されるから、左右一対の走行装置に対して、直進用の無段変速装置の変速出力に加えて、旋回用の無段変速装置の変速出力も合わせて伝達されることになる。
【0011】
その結果、直進用の無段変速装置の変速出力だけで駆動されるものに比べて、大きな走行駆動力にて左右一対の走行装置を駆動することができ、例えば、圃場の内部から畦を乗り越えて圃場の外部に脱出する場合等のように一時的に大きな走行駆動力が必要となるような場合であっても、良好な直進走行を行うことが可能となる。説明を加えると、直進用の無段変速装置の変速出力及び旋回用の無段変速装置の変速出力の夫々を左右一対の走行装置に伝達するから、左右一対の走行装置が確実に同じ速度で駆動されることになり、良好な直進走行を行えるのである。
【0012】
ところで、直進用の無段変速装置と旋回用の無段変速装置とは、それらが同じ速度になるようにアクチュエータの作動を制御しても、無段変速装置同士の個体差等に起因して、それらが全く同じ回転速度にならない場合が多く、上記したような駆動力増大型の直進走行制御を実行しているときには、各無段変速装置の速度の違いを伝動機構中における部材同士の摩擦によって吸収する必要があるから、そのような伝動状態を長時間継続することは耐久性の面で好ましくないが、上述したような一時的に大きな走行駆動力が必要となるような場合に短時間だけ実行することは可能である。
【0013】
また、駆動力増大指令手段にて走行駆動力の増大が指令されていないときには、直進走行時においては、直進用の無段変速装置により左右一対の走行装置を同速度で駆動する構成とすることによって適切に直進走行することができ、しかも、旋回走行時には、左右一対の走行装置を直進用の無段変速装置と旋回用の無段変速装置により各別に駆動して、夫々の無段変速装置の速度差によって所望の旋回状態にて滑らかに旋回走行を行うことができる。
【0014】
従って、直進走行を適切に行うことができ、しかも、所望の旋回状態により滑らかに旋回走行を行うことができる利点を有するものでありながら、直進走行時において一時的に大きな走行駆動力が必要となる場合に、駆動力不足を解消して良好な直進走行を行うことが可能となる作業車の走行制御装置を提供できるに至った。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達する直進用伝動状態、前記直進用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達し且つ旋回用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達する左旋回用伝動状態、及び、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達し且つ前記旋回用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達する右旋回用伝動状態に切り換え自在な伝動状態切換手段と、前記旋回用の無段変速装置を変速操作するアクチュエータと、 前記直進用の無段変速装置を手動操作にて変速するための手動操作式の変速操作具と、直進、右旋回、及び、左旋回を指令する旋回指令手段と、前記伝動状態切換手段及び前記アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられ、前記制御手段が、前記旋回指令手段にて直進が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記直進用伝動状態に切り換えるように制御し、前記旋回指令手段にて右旋回が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記右旋回用伝動状態に切り換えて前記旋回用の無段変速装置が旋回用の目標速度になるように前記アクチュエータの作動を制御し、且つ、前記旋回指令手段にて左旋回が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記左旋回用伝動状態に切り換えて前記旋回用の無段変速装置が旋回用の目標速度になるように前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている作業車の走行制御装置であって、走行駆動力の増大を指令する駆動力増大指令手段が備えられ、前記伝動状態切換手段が、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置のうちのいずれか一方に伝達し、且つ、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置のうちの他方に伝達する直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換え自在に構成され、前記制御手段が、前記旋回指令手段にて直進が指令されている状態において、前記駆動力増大指令手段にて駆動力の増大が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換え、且つ、前記旋回用の無段変速装置が前記直進用の無段変速装置と同じ又は略同じ速度になるように前記アクチュエータの作動を制御する駆動力増大型の直進走行制御を実行するように構成されている点にある。
【0016】
第2特徴構成によれば、前記旋回指令手段にて直進が指令されている状態において、前記駆動力増大指令手段にて走行駆動力の増大が指令されると、制御手段は、伝動状態切換手段を前記駆動力増大用の伝動状態に切り換える。つまり、直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置のうちのいずれか一方に伝達し、且つ、旋回用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置のうちの他方に伝達する状態に切り換えられる。そして、制御手段は、旋回用の無段変速装置が直進用の無段変速装置と同じ又は略同じ速度になるようにアクチュエータの作動を制御するのである。
【0017】
直進用の無段変速装置の変速出力が左右一対の走行装置のうちのいずれか一方に伝達され、旋回用の無段変速装置の変速出力も左右一対の走行装置のうちの他方に伝達され、しかも、旋回用の無段変速装置と直進用の無段変速装置とは同じ又は略同じ速度であるから、左右一対の走行装置が前記各無段変速装置の夫々によって駆動されることになる。従って、直進用の無段変速装置の変速出力に加えて旋回用の無段変速装置の変速出力が走行駆動力として利用されることになる。
【0018】
その結果、直進用の無段変速装置の変速出力だけで駆動されるものに比べて、大きな走行駆動力にて左右一対の走行装置を駆動することができ、例えば、圃場の内部から畦を乗り越えて圃場の外部に脱出する場合等のように一時的に大きな走行駆動力が必要となるような場合であっても直進走行を行うことが可能となる。
【0019】
又、直進用の無段変速装置の変速出力が左右一対の走行装置のうちのいずれか一方に伝達され、旋回用の無段変速装置の変速出力も左右一対の走行装置のうちの他方に伝達される構成であるから、直進性は低いものになるおそれはあるものの、直進用の無段変速装置の変速出力と旋回用の無段変速装置の変速出力を夫々左右一対の走行装置に伝達する構成のように速度差を伝動機構中において部材同士の摩擦にて吸収するような無理な負担はかからないから、長期間にわたって駆動力増大型の直進走行制御を実行することが可能となる。
【0020】
また、駆動力増大指令手段にて走行駆動力の増大が指令されていないときには、直進走行時においては、直進用の無段変速装置により左右一対の走行装置を同速度で駆動する構成とすることによって適切に直進走行することができ、しかも、旋回走行時には、左右一対の走行装置を直進用の無段変速装置と旋回用の無段変速装置により各別に駆動して、夫々の無段変速装置の速度差によって所望の旋回状態にて滑らかに旋回走行を行うことができる。
【0021】
従って、直進走行を適切に行うことができ、しかも、所望の旋回状態により滑らかに旋回走行を行うことができる利点を有するものでありながら、直進走行時において一時的に大きな走行駆動力が必要となる場合に、駆動力不足を解消して良好な直進走行を行うことが可能となる作業車の走行制御装置を提供できるに至った。
【0022】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記伝動状態切換手段が、前記直進用の無段変速装置の変速出力及び前記旋回用の無段変速装置の変速出力の夫々を、前記左右一対の走行装置のうちの旋回方向と反対側に位置する一方の走行装置に伝達し、他方の走行装置を伝動遮断状態にする旋回用の駆動力増大型伝動状態に切り換え自在に構成され、前記制御手段が、前記旋回指令手段にて右旋回及び左旋回のうちのいずれかが指令されている状態において、駆動力増大指令手段にて駆動力の増大が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記旋回用の駆動力増大型伝動状態に切り換え、且つ、前記旋回用の無段変速装置が前記直進用の無段変速装置と同じ又は略同じ速度になるように前記アクチュエータの作動を制御する駆動力増大型の旋回走行制御を実行するように構成されている点にある。
【0023】
第3特徴構成によれば、前記旋回指令手段にて右旋回及び左旋回のうちのいずれかが指令されている状態において、駆動力増大指令手段にて駆動力の増大が指令されると、制御手段は、伝動状態切換手段を前記旋回用の駆動力増大用の伝動状態に切り換える。つまり、前記直進用の無段変速装置の変速出力及び前記旋回用の無段変速装置の変速出力の夫々を、左右一対の走行装置のうちの旋回方向と反対側に位置する一方の走行装置に伝達し、他方の走行装置が伝動遮断状態に切り換えられる。そして、制御手段は、旋回用の無段変速装置が直進用の無段変速装置と同じ又は略同じ速度になるようにアクチュエータの作動を制御するのである。
【0024】
直進用の無段変速装置の変速出力及び前記旋回用の無段変速装置の変速出力の夫々が旋回方向と反対側に位置する一方の走行装置に伝達されるから、その走行装置は前記各無段変速装置の夫々によって駆動されることになる。従って、直進用の無段変速装置の変速出力に加えて旋回用の無段変速装置の変速出力が走行駆動力として利用されることになる。
【0025】
従って、1つの無段変速装置にて駆動する場合に比べて、大きな走行駆動力にて前記一方の走行装置を駆動することができ、例えば、走行装置が泥土に埋って脱出することができずに旋回が行えないような場合であっても、大きな走行駆動力によって旋回走行を行うことが可能となる。
【0026】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成に加えて、前記駆動力増大指令手段が、人為操作式の切換操作具にて構成されている点にある。
【0027】
第4特徴構成によれば、直進走行している場合又は旋回走行している場合において、作業者が駆動力が不足していると感じたときには、作業者の意思により人為操作式の切換操作具を操作することにより駆動力増大を指令することができる。従って、作業者の判断によって、大きな駆動力が必要とされることが予測されるときに、予め駆動力増大を指令することにより、走行途中で駆動力不足により例えばエンストする等の不利を未然に回避させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、本発明に係る作業車の走行制御装置の第1実施形態を作業車の一例であるコンバインに適用した場合について図面に基づいて説明する。
図1に作業車の一例であるコンバインの全体側面が示されており、このコンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1R、1Lの駆動で走行する走行機体2の前部に、植立穀稈を刈り取って後方に向けて搬送する刈取搬送装置3を昇降可能に連結し、走行機体2に、刈取搬送装置3からの刈取穀稈を受け取って脱穀・選別処理を実行する脱穀装置4と、脱穀装置4からの穀粒を貯留する穀粒タンク5とを搭載するとともに、穀粒タンク5の前方箇所に搭乗運転部6を備えて構成されている。
【0029】
次に、このコンバインの伝動構造について説明する。
図2に示すように、直進走行状態における走行速度を高低変速自在な直進用の無段変速装置7と、旋回走行時において旋回中心側に位置する走行装置の走行速度を高低変速自在な旋回用の無段変速装置8と、それらの無段変速装置7、8からの動力が入力され、左右の走行装置1R、1Lへの動力が出力されるミッションケース9とを備えて伝動系が構成されている。前記直進用の無段変速装置7と旋回用の無段変速装置8は夫々、コンバインの車体に搭載されているエンジンから伝動ベルト10及び伝動プーリ11を介して駆動される伝動軸12によって駆動される可変油圧ポンプ7A、8Aと、その可変油圧ポンプ7A、8Aからの供給油で回転駆動される油圧モータ7B、8Bとの対で構成された周知構造の静油圧式無段変速装置(HST)によって構成されている。
【0030】
そして、このコンバインでは、直進用の無段変速装置7の変速出力を左右一対の走行装置1R,1Lの夫々に伝達する直進用伝動状態、前記直進用の無段変速装置7の変速出力を右側の走行装置1Rに伝達し且つ旋回用の無段変速装置8の変速出力を左側の走行装置1Lに伝達する左旋回用伝動状態、及び、前記直進用の無段変速装置7の変速出力を左側の走行装置1Lに伝達し且つ前記旋回用の無段変速装置8の変速出力を右側の走行装置1Rに伝達する右旋回用伝動状態に切り換え自在な伝動状態切換手段としての伝動状態切換機構Aが備えられている。
【0031】
具体的に説明すると、前記ミッションケース9は、その内部に、前記直進用の無段変速装置7の出力軸20と、前記旋回用の無段変速装置8の出力軸21との夫々が内挿され、これら両出力軸20、21からの動力が左右一対の走行装置1R、1Lに伝達される一方、直進用の無段変速装置7の動力が刈取搬送装置3に伝達される構成となっている。前記直進用の無段変速装置7の出力軸20には、副変速用の大小一対の出力ギヤ20a、20b及び刈取部駆動用の出力ギア20cが固着されている。
副変速軸22には、前記出力ギヤ20a、20bが常時噛合する副変速用の小径ギヤ22aと大径ギヤ22bとが相対回転自在に支持され、その両ギヤ22a、22bの中間位置に、副変速軸22と一体回転する副変速用シフトギヤ22dが軸芯方向で摺動自在に外嵌されている。この副変速用シフトギヤ22dを摺動操作することで高低二段に変速操作自在な副変速装置が構成されている。又、副変速軸22には出力ギア22eが固着されており、この出力ギア22eに対して、支持軸23に一体に設けたセンターギヤ24が常時噛合する状態で設けられている。
【0032】
前記支持軸23には、センターギヤ24を挾む両側に、そのセンターギヤ24を通して伝えられる動力を前記各無段変速装置7、8のうちの何れの駆動系から入力させるかを左右各別に切り換え自在な前記伝動状態切換機構Aが設けられている。この伝動状態切り換え機構Aは、外周部に旋回用の無段変速装置8の伝動系に連係された外周ギヤ部25aを備える左右一対の多板式の摩擦クラッチ25、25と、前記センターギヤ24の両側面とこれに対向するシフトギア26との間に形成された左右一対の噛み合いクラッチ27、27とで構成されている。
【0033】
前記左右のシフトギア26は、夫々、センターギヤ24に噛み合う状態と噛み合わない状態とに回転軸芯方向にシフト操作自在であって、左側のシフトギア26がセンターギア24に噛み合うと左側の噛み合いクラッチ27が入り状態となり、右側のシフトギア26がセンターギア24に噛み合うと右側の噛み合いクラッチ27が入り状態となるように切り換え自在に構成されており、噛み合いクラッチ27、27が夫々入り状態に切り換えられると左右のシフトギア26は共にセンターギヤ24に係合している状態となり、シフトギア26を介して、左右の走行装置1R、1Lが同方向に同速駆動される機体直進状態となる。
【0034】
さらに説明を加えると、前記左右のシフトギヤ26、26は夫々、押圧スプリング29、29による押圧力にて噛み合いクラッチ27、27が噛み合う入り状態に付勢されており、左右のシフトギヤ26、26の夫々を押圧スプリング29、29による押圧力に抗して単動型の油圧シリンダからなる遮断用油圧シリンダ31L、31Rに圧油を供給してシフト操作することにより、噛み合いクラッチ27、27を切り状態に切り換え操作可能に構成されている。この遮断用油圧シリンダ31L、31Rの操作は、図3に示すように、遮断用電磁弁63、64を圧油供給状態と排油状態に切り換え操作することにより行うように構成されている。
【0035】
又、単動型の油圧シリンダからなる左右一対の操向用油圧シリンダ30L、30Rのうちの左側の操向用油圧シリンダ30Lに圧油供給してシフトギヤ26における摩擦板をシフト操作することにより、左側の摩擦クラッチ25が圧接する伝動入り状態に切り換え操作可能に構成され、一方、右側の操向用油圧シリンダ30Rに圧油供給してシフトギヤ26における摩擦板をシフト操作することにより、右側の摩擦クラッチ25が圧接する伝動入り状態に切り換え操作可能に構成されている。一対の操向用油圧シリンダ30L、30Rの操作は、図3に示すように、遮断用電磁弁32、33を圧油供給状態と排油状態に切り換え操作することにより行うように構成されている。
【0036】
シフトギヤ26からの動力はファイナルギア35を介して左右一対の走行装置1R,1Lに伝達されるが、このシフトギヤ26は、噛み合いクラッチ27が噛み合いしているときも噛み合いしていないときも常時走行装置への伝動系の中継ギヤ34に噛合するように構成されている。
【0037】
つまり、左右の噛み合いクラッチ27、27を夫々入り状態として、左右の摩擦クラッチ25、25を夫々切り状態にすると直進用伝動状態となり、その直進用伝動状態から左側の噛み合いクラッチ27を切り状態にして左側の摩擦クラッチ25を入り状態にすると左旋回用伝動状態となり、前記直進用伝動状態から右側の噛み合いクラッチ27を切り状態にして右側の摩擦クラッチ25を入り状態にすると右旋回用伝動状態となる。
【0038】
説明を加えると、前記旋回用の無段変速装置8の出力軸21には、その両端部に伝動ギヤ21a、21bが固着され、両伝動ギヤ21a、21bのそれぞれに前記各摩擦クラッチ25、25の外周ギヤ部25a、25aが噛合されている。そして、前記左右のシフトギア26、26のうちの一方を遮断用油圧シリンダ31L、31Rのいずれか一方を作動してシフト操作することにより、センターギヤ24との噛み合いを外す側にシフト操作し、操向用油圧シリンダ30L、30Rのうちのいずれか一方により、シフトギヤ26における摩擦板をシフト操作することにより、そのシフトギア26の移動した側の摩擦クラッチ25が圧接されて入り状態となり、その摩擦クラッチ25を介して旋回用の無段変速装置8の動力がシフトギア26に伝達され、シフトギア26から中継ギア34及びファイナルギア35を介して一方の走行装置に伝達され、機体旋回状態となる。又、シフトギア26はセンターギヤ24に噛合しているとき、及び、摩擦クラッチ25のクラッチ入り側に操作されているときのいずれのときにおいても、走行装置への伝動系の中継ギヤ34に噛合するように構成されている。
【0039】
前記直進用の無段変速装置7は、中立位置から正転方向並びに逆転方向夫々について無段階に変速操作可能な構成となっており、又、搭乗運転部6には前後方向に沿って所定の前後操作範囲にわたり手動操作によって揺動可能な変速操作具としての主変速レバー14が設けられている。そして、図3に示すように、可変油圧ポンプ7Aの斜板13が油圧サーボ機構SVを介して主変速レバー14に連係され、主変速レバー14の操作指令に基づいて斜板13の角度を変更することにより油圧モータ7B側の出力状態を無段階に変更するように構成されている。つまり、主変速レバー14が手動操作にて操作されると、その操作に対して油圧サーボ機構SVの作用により油圧操作力にてアシスト操作を行うことにより変速操作を軽く操作することができる構成となっている。尚、油圧サーボ機構SVは周知構成のものであるから詳細な説明はここでは省略する。
【0040】
次に、直進用の無段変速装置7の変速操作構成について説明する。
図4に示すように、主変速レバー14が中立域にあり中立状態が指令されていると、前記斜板13が中立状態となり油圧モータ7Bは回転せず停止状態に維持され、主変速レバー14からの指令が前進増速側もしくは後進増速側への変速指令であると、主変速レバー14の操作指令に応じて上述したような油圧サーボ機構SVによって斜板13の角度が正転方向(前進増速方向)もしく逆転方向(後進増速方向)に油圧操作力のアシスト力によって操作され、油圧モータ7Bが指令位置に応じた速度で正転方向又は逆転方向に回転駆動されるように変速操作される構成となっている。
【0041】
一方、旋回用の無段変速装置8も直進用の無段変速装置7と同様に、正転方向並びに逆転方向夫々について無段階に変速操作可能な構成となっている。しかし、この旋回用の無段変速装置8は手動操作で変速を行うのではなく、可変油圧ポンプ8Aの斜板15が油圧式の旋回用操作機構16に連係され、この旋回用操作機構16により斜板角を変更することにより油圧モータ8B側の出力状態を変更するように構成されている。この旋回用操作機構16は、図3に示すように、旋回用の無段変速装置8における斜板15に連動連結された複動型の変速用油圧シリンダ17(アクチュエータの一例)と、この変速用油圧シリンダ17に対する油圧制御を行う油圧制御ユニットVUとを備えて構成されている。前記変速用油圧シリンダ17は、内装される左右一対のバネ17a、17bの付勢力により中立位置に復帰付勢される構成となっている。
【0042】
前記油圧制御ユニットVUは、詳述はしないが、制御装置Hからの制御指令に基づいて、旋回用の無段変速装置8における斜板15を前進側増速方向並びに後進側増速方向夫々に移動操作し、且つ、任意の変速位置で斜板15を位置保持するように変速用油圧シリンダ17を制御するように構成されている。
【0043】
上記したような無段変速装置7、8の変速動作について説明を加えると、図4に示すように、斜板13、15の変速位置が中立位置Nを含む所定幅を有する中立域にあれば変速出力(出力回転速度)は零となり、斜板13、15の変速位置がその中立域から所定方向に回動操作されると前進方向への変速出力が無段階に増速操作され、斜板13、15が中立域から所定方向と反対方向に操作されると後進方向への変速出力が無段階に増速操作される構成となっている。
【0044】
そして、搭乗運転部6には、主変速レバー14にて指令された変速指令位置を直接する変速指令位置検出手段として、主変速レバー14の揺動操作量を直接検出することにより変速指令位置を検出するポテンショメータ式の変速レバー検出センサ65が設けられている。又、主変速レバー14の他に、中立位置Nを含む所定幅を有する直進指令用の中立操作域、その中立操作域から正方向に操作される左旋回指令用の左旋回操作域、及び、前記中立操作域から逆方向に操作される右旋回指令用の右旋回操作域の夫々にわたり移動操作自在な旋回指令手段としての旋回レバー56が備えられ、この旋回レバー56が、前記左旋回用操作域及び前記右旋回用操作域の夫々において所定の操作領域の全範囲にわたり移動操作自在で、且つ、前記中立操作域から離れる方向への移動量が大きいほど小となるように前記指令情報としての旋回用の目標速度比率を指令するように構成されている。説明を加えると、前記旋回レバー56の操作位置を検出する回転式のポテンショメータからなる旋回レバーセンサ57が設けられて、旋回指令操作領域において中立域から離れる方向への移動量が大きいほど、言い換えると、中立位置Nからの左右いずれかへの倒し角が大きいほど、大きな旋回力となるような指令情報を指令する構成となっている。
【0045】
前記サーボ機構SVによって操作される直進用の無段変速装置7における変速用の被操作体としての斜板13の操作位置を検出する直進用の変速位置検出センサ60が設けられ、前記旋回用の無段変速装置8における変速用の被操作体としての斜板15の操作位置を検出する旋回用の変速位置検出手段としてポテンショメータ式の旋回用の変速位置検出センサ61が設けられている。一方、前記直進用の無段変速装置7の出力回転速度を前記出力ギア22eの歯数をカウントすることにより検出する回転センサ58と、前記旋回用の無段変速装置8の出力回転速度を前記伝動ギア21aの歯数をカウントすることにより検出する回転センサ59が設けられている。
【0046】
そして、上記したような各種のセンサ類の入力情報に基づいて、変速用油圧シリンダ17の作動を制御することにより旋回用の無段変速装置8を変速制御するとともに、操向用油圧シリンダ30R、30L、遮断用油圧シリンダ31L、31Rの作動を制御することにより伝動状態切換機構Aの伝動状態を切り換える制御手段としてのマイクロコンピュータ利用の制御装置Hが備えられている。
【0047】
前記制御装置Hは、旋回レバー56の操作にて直進が指令されると、伝動状態切換機構Aを前記直進用伝動状態に切り換えて、前記旋回用の無段変速装置8が直進用の変速状態になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する直進用変速制御を実行し、旋回レバー56にて右旋回が指令されると伝動状態切換機構Aを右旋回用伝動状態に切り換え、旋回レバー56にて左旋回が指令されると伝動状態切換機構Aを左旋回用伝動状態に切り換えて、旋回用の無段変速装置8が旋回用の変速状態になるように油圧シリンダ17の作動を制御する旋回用変速制御を実行するように構成されている。
【0048】
そして、制御装置Hが、前記旋回用変速制御として、旋回用の無段変速装置8の出力回転速度が、旋回レバー56の指令情報並びに直進用の無段変速装置7の出力回転速度に基づいて設定された目標出力回転速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する回転速度制御、及び、旋回用の無段変速装置8における斜板15の操作位置が、旋回レバー56の指令情報並びに直進用の無段変速装置7における斜板13の操作位置の情報に基づいて設定された目標変速位置になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する変速位置制御を夫々実行するように構成されている。
【0049】
そして、このコンバインでは、例えば畦越え等のように一時的に大きな走行駆動力が必要となるような場合に、走行駆動力の増大を駆動力増大指令手段としての人為操作式の切換指令具70が備えられ、一時的に大きな走行駆動力を出力することができる構成となっている。
【0050】
説明を加えると、前記伝動状態切換機構Aが、直進用の無段変速装置7の変速出力を左右一対の走行装置1R,1Lの夫々に伝達し、且つ、旋回用の無段変速装置8の変速出力を左右一対の走行装置1R,1Lの夫々に伝達する直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換え自在に構成され、さらに、伝動状態切換機構Aが、直進用の無段変速装置7の変速出力及び旋回用の無段変速装置8の変速出力の夫々を、左右一対の走行装置1R,1Lのうちの旋回方向と反対側に位置する一方の走行装置に伝達し、他方の走行装置を伝動遮断状態にする旋回用の駆動力増大型伝動状態に切り換え自在に構成されている。
【0051】
そして、制御装置Hは、旋回レバー56にて直進が指令されている状態において、切換指令具70にて走行駆動力の増大が指令されると、伝動状態切換機構Aを直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換え、且つ、旋回用の無段変速装置8が直進用の無段変速装置7と同じ又は略同じ速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する駆動力増大型の直進走行制御を実行するように構成されている。
【0052】
又、旋回レバー56にて右旋回及び左旋回のうちのいずれかが指令されている状態において、切換指令具70にて駆動力の増大が指令されると、伝動状態切換機構Aを旋回用の駆動力増大型伝動状態に切り換え、且つ、旋回用の無段変速装置8が直進用の無段変速装置7と同じ又は略同じ速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する駆動力増大型の旋回走行制御を実行するように構成されている。
【0053】
前記切換指令具70は、搭乗運転部6の操作パネルに備えられ、通常の運転操作で誤って操作しないように隠し板で隠れた箇所に備えられ、作業者が畦越え等、特に大きな走行駆動力を必要とするときにだけ操作するように構成されている。
【0054】
次に、図6及び図7のフローチャートに基づいて制御装置Hによる制御について説明する。
旋回レバー56が中立操作域に操作されていると、後述するような直進用制御を実行し(ステップ1、2)、旋回レバー56が中立操作域から離れて旋回用操作域又は右旋回用操作域に操作されているときに、前記切換指令具70により駆動力増大が指令されているか否かを判別する(ステップ3)。
【0055】
そのとき、駆動力増大が指令されていない状態で、旋回レバー56が右旋回用操作域に操作されると、左側の操向用油圧シリンダ30L及び左側の遮断用油圧シリンダ31Lを夫々排油状態にして、右側の操向用油圧シリンダ30R及び右側の遮断用油圧シリンダ31Rに圧油を供給して作動させて、伝動状態切換機構Aを右旋回用伝動状態に切り換える(ステップ4、5)。すなわち、左側の噛み合いクラッチ27を入り状態に切り換え、右側の噛み合いクラッチ27を切り状態に切り換える。又、左側の摩擦クラッチ25を切り状態に切り換え、右側の摩擦クラッチ25を入り状態に切り換える。
【0056】
一方、旋回レバー56が左旋回用操作域に操作されると、右側の操向用油圧シリンダ30R及び右側の遮断用油圧シリンダ31Rを夫々排油状態にし、左側の操向用油圧シリンダ30L及び左側の遮断用油圧シリンダ31Lに圧油を供給して作動させて、伝動状態切換機構Aを左旋回用伝動状態に切り換える(ステップ6)。すなわち、左側の噛み合いクラッチ27を切り状態に切り換え、右側の噛み合いクラッチ27を入り状態に切り換える。又、左側の摩擦クラッチ25を入り状態に切り換え、右側の摩擦クラッチ25を切り状態に切り換える。
つまり、旋回側の走行装置が旋回用の無段変速装置8にて駆動され、旋回側とは反対側の走行装置が直進用の無段変速装置7にて駆動される伝動状態に切り換わる。
【0057】
次に、前記直進用の変速位置検出センサ60の検出値が設定単位時間あたりに設定量以上変化した否かによって主変速レバー14の操作により増減速が指令された否かを判断し、主変速レバー14の操作により増減速が指令されていると判断した場合には、次のような変速位置制御を実行する(ステップ7)。
【0058】
左右の走行装置1R、1Lが回転方向が同じであって、旋回用の無段変速装置8の変速出力と直進用の無段変速装置7の変速出力の速度比率が旋回レバー56にて指令される旋回半径に対応する速度比率となるように、旋回用の無段変速装置8における斜板15の目標変速位置を演算にて求める(ステップ8)。
【0059】
その目標変速位置を求める処理について説明を加えると、旋回レバー56の右旋回用操作域又は左旋回用操作域における中立操作域から離れる方向への移動量と旋回半径に対応する速度比率との関係が図5に示すように二次関数に対応する関係として定めて記憶されている。一方、直進用の変速位置センサ60によって検出される直進用の無段変速装置7の変速位置と、図5に示すような関係の関数とから、旋回用の無段変速装置8の目標変速位置を求めるのである。
【0060】
そして、旋回用の変速位置検出センサ61によって検出される旋回用の無段変速装置8の変速位置が目標変速位置になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御して変速操作を行う(ステップ9、10,11)。ちなみに、直進用の無段変速装置7は変速レバー14に対する手動操作にて変速位置が調整されることになる。
【0061】
図5に示す関係について説明を加えると、図5のラインL1は基準となる直進側の無段変速装置の速度を示している。ラインL2は緩旋回モードにおける目標回転速度の変化を示し、ラインL3は信地旋回モードにおける目標回転速度の変化を示し、ラインL4は超信地旋回モードにおける目標回転速度の変化を示しており、ダイヤル操作により旋回モードを3段階に切り換える旋回モード切換え具62にて指定された旋回モードが選択されることになる。ラインL2にて示す緩旋回モードでは、旋回レバー56が最大操作位置にまで操作されると、旋回側の走行装置が反対側の走行装置の走行速度Vの約1/3の速度にまで減速されるように、旋回レバー56の操作位置に対する、左右の走行装置1R、1Lの速度比率の変化特性が予め設定されている。ラインL3で示す信地旋回モードにおいては、旋回レバー56が最大操作位置にまで操作されると、旋回側の走行装置の走行速度が零となるまで減速されるように、旋回レバー56の操作位置に対する左右の走行装置1R、1Lの速度比率が予め設定されている。又、ラインL4に示す超信地旋回モードにおいては、旋回レバー56が最大操作位置にまで操作されると、旋回側の走行装置の走行速度が反対側の走行装置の駆動回転方向とは逆回転方向で、反対側の走行装置の速度と同速度になるように、旋回レバー56の操作位置に対する左右の走行装置1R、1Lの速度比率が予め設定されている。
【0062】
前記旋回レバー56にて旋回が指令されており、主変速レバー14の操作により増減速が指令されていない場合、言い換えると、主変速レバー14にて同じ速度が指令されている場合には、左右の走行装置1R、1Lが回転方向が同じであって、旋回用の無段変速装置8の出力回転速度と直進用の無段変速装置7の出力回転速度の速度比率が旋回レバー56にて指令される旋回半径に対応する目標速度比率となるように、旋回用の無段変速装置8に対する目標回転速度を演算にて求める(ステップ12)。
【0063】
前記目標回転速度を演算にて求める処理について説明を加えると、前記回転センサ58によって検出される直進用の無段変速装置7の出力回転速度と、上述した如く図5に示すように二次関数に対応する関係として定められている関数とから、旋回用の無段変速装置8の目標回転速度を求めるのである。次に、前記回転センサ59にて検出される出力回転速度が前記目標回転速度になるように、変速用油圧シリンダ17を制御する回転速度制御を実行する(ステップ13)。
【0064】
この回転速度制御について簡単に説明すると、前記回転センサ59にて検出される出力回転速度と前記目標回転速度との偏差を求め、その偏差に基づいて斜板15を操作すべき目標操作量を算出する。更に、そして、その目標操作量と変速位置センサ61により検出される現在の斜板15の変速位置とから斜板15の目標変速位置を求めて、斜板15の変速位置が目標変速位置になるように変速用油圧シリンダ17を変速操作して、斜板15の変速位置が目標変速位置になると変速用油圧シリンダ17の操作を停止する。このような処理を単位時間毎に繰り返し実行することで、出力回転速度が前記目標回転速度になるように制御されることになる。
【0065】
そして、ステップ3において、駆動力増大が指令されていることを判別すると、旋回レバー56が右旋回用操作域に操作されていれば、左側の操向用油圧シリンダ30L及び右側の遮断用油圧シリンダ31Rに圧油を供給して作動させ、右側の操向用油圧シリンダ30R及び左側の遮断用油圧シリンダ31Lを夫々排油状態にして、伝動状態切換機構Aを右旋回操作のための旋回用の駆動力増大型伝動状態に切り換える。すなわち、左側の噛み合いクラッチ27を入り状態に切り換え、右側の噛み合いクラッチ27を切り状態に切り換える。又、左側の摩擦クラッチ25を入り状態に切り換え、右側の摩擦クラッチ25を切り状態に切り換える(ステップ14、15)。
【0066】
一方、旋回レバー56が左旋回用操作域に操作されていると、左側の操向用油圧シリンダ30L及び右側の遮断用油圧シリンダ31Rを夫々排油状態にして、右側の操向用油圧シリンダ30R及び左側の遮断用油圧シリンダ31Lに圧油を供給して作動させ、伝動状態切換機構Aを左旋回操作のための旋回用の駆動力増大型伝動状態に切り換える。すなわち、左側の噛み合いクラッチ27を切り状態に切り換え、右側の噛み合いクラッチ27を入り状態に切り換える。又、左側の摩擦クラッチを切り状態に切り換え、右側の摩擦クラッチを入り状態に切り換える(ステップ16)。
【0067】
つまり、直進用の無段変速装置7の変速出力及び旋回用の無段変速装置8の変速出力の夫々を、左右一対の走行装置1R,1Lのうちの旋回方向と反対側に位置する一方の走行装置に伝達し、他方の走行装置を伝動遮断状態にするのである。
【0068】
そして、回転センサ58にて検出される直進用の無段変速装置7の出力回転速度と同じ値を、旋回用の無段変速装置8の目標回転速度として設定し(ステップ17)、ステップ13と同様にして、回転センサ59にて検出される旋回用の無段変速装置8の出力回転速度が前記目標回転速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する回転速度制御を実行する(ステップ18)。
【0069】
このように制御することで、直進用の無段変速装置7の変速出力及び旋回用の無段変速装置8の変速出力の夫々が旋回方向と反対側に位置する一方の走行装置に伝達されるから、その走行装置は前記各無段変速装置7、8の夫々によって駆動されることになる。
【0070】
前記旋回レバー56が中立位置にあるときは直進用制御を実行する。この直進用制御では、図7に示すように、前記切換指令具70により駆動力増大が指令されているか否かを判別する(ステップ19)。そのとき、駆動力増大が指令されていない状態であれば、一対の操向用油圧シリンダ30L、30R及び遮断用油圧シリンダ31L,31Rを夫々排油状態にして伝動状態切換機構Aを直進用伝動状態に切り換える。すなわち、左右の噛み合いクラッチ27、27を共に入り状態に切り換え、左右の摩擦クラッチ25、25を共に切り状態に切り換える(ステップ20)。
【0071】
そして、直進用の変速位置検出センサ60の検出値に基づいて直進用の無段変速装置7に対する増減速が指令されているか否かが判別され(ステップ21)、主変速レバー14により増減速が指令されているときは、直進用の無段変速装置7における斜板13の変速位置を直進用の変速状態に対応する目標変速位置として設定する(ステップ22)。次に、旋回用の無段変速装置8における斜板15の変速位置が上記したようにして設定された目標変速位置になるように、変速用油圧シリンダ17の作動を制御する(ステップ23、24、25)。
【0072】
ステップ21において、直進用の無段変速装置7に対する増減速が指令されていないことが判別されると、回転センサ58にて検出される直進用の無段変速装置7の出力回転速度と同じ値を、旋回用の無段変速装置8の目標回転速度として設定する(ステップ26)。そして、回転センサ59にて検出される旋回用の無段変速装置8の出力回転速度が前記目標出力回転速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御するステップ13と同様な回転速度制御を実行する(ステップ27)。
【0073】
前記ステップ19において、駆動力増大が指令されていることを判別すると、左右の遮断用油圧シリンダ31R,31Lを夫々排油状態にして、左右の操向用油圧シリンダ30R、30Lに圧油を供給して作動させて、伝動状態切換機構Aを直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換える。すなわち、左右の噛み合いクラッチ27を共に入り状態に切り換え、左右の摩擦クラッチ25を共に入り状態に切り換える(ステップ28)。そして、回転センサ58にて検出される直進用の無段変速装置7の出力回転速度と同じ値を、旋回用の無段変速装置8の目標回転速度として設定して、回転センサ59にて検出される旋回用の無段変速装置8の出力回転速度が前記目標回転速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する回転速度制御を実行する(ステップ26、27)。
【0074】
このように制御することで、直進用の無段変速装置7及び旋回用の無段変速装置8の夫々の変速出力が、左右一対の走行装置1R、1Lの夫々に伝達されるから、左右一対の走行装置1R、1Lに対して、直進用の無段変速装置7の変速出力に加えて、旋回用の無段変速装置8の変速出力も合わせて伝達されることになり、大きな走行駆動力を得ることができて畦越え等を良好に行えるものとなる。
【0075】
尚、直進用制御を実行するときは、旋回用の無段変速装置8はいずれの走行装置にも動力を伝動しないので走行装置の走行速度を自動制御によって変速させる機能はないが、手動の変速操作によって変速される直進用の無段変速装置7の回転方向と同じ方向に向けて上記したような目標変速位置又は目標出力回転速度になるように回転させることにより、旋回レバー56により旋回操作が指令されて旋回用伝動状態に切り換わったときに、直進用の無段変速装置7と旋回用の無段変速装置8の速度差に起因したショックが発生しないようにしている。しかも、増減速操作が行われているときには、変速位置制御を実行することにより回転速度制御による追従遅れに起因した左右の走行装置の速度差を少なくしながら、定速又はほぼ定速で走行しているときには、回転速度制御を実行することにより走行負荷の違いに起因した左右の走行装置1R,1Lの速度差を少なくするようにしている。
【0076】
〔第2実施形態〕
以下、本発明に係る作業車の走行制御装置の第2実施形態について説明する。
この第2実施形態では、直進用制御における駆動力増大が指令されているときの制御の仕方が異なる他は、第1実施形態と同じ構成であるから、ここでは異なる点についてのみ説明し、同じ構成については説明は省略する。
【0077】
すなわち、この実施形態では、前記伝動状態切換機構Aが、前記直進用の無段変速装置7の変速出力を左右一対の走行装置1R,1Lのうちのいずれか一方に伝達し、且つ、旋回用の無段変速装置8の変速出力を左右一対の走行装置1R,1Lのうちの他方に伝達する直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換え自在に構成され、前記制御手段としての制御装置Hが、旋回指令手段としての旋回レバー56にて直進が指令されている状態において、駆動力増大指令手段としての切換指令具70にて駆動力の増大が指令されると、伝動状態切換機構Aを前記直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換え、且つ、旋回用の無段変速装置8が直進用の無段変速装置7と同じ又は略同じ速度になるようにアクチュエータとしての変速用油圧シリンダ17の作動を制御する駆動力増大型の直進走行制御を実行するように構成されている。
【0078】
図8に示すフローチャートを用いて具体的に説明すると、前記旋回レバー56が中立位置にあり、前記直進用制御を実行するときに、前記切換指令具70により駆動力増大が指令されているか否かを判別し(ステップ30)、そのとき、駆動力増大が指令されていないときには、第1実施形態のときと同様な制御を実行する(ステップ31〜38)。そして、前記切換指令具70により駆動力増大が指令されていれば、左側の操向用油圧シリンダ30L及び左側の遮断用油圧シリンダ31Lを夫々排油状態にして、右側の操向用油圧シリンダ30R及び右側の遮断用油圧シリンダ31Rに圧油を供給して作動させて、伝動状態切換機構Aを前記直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換える。すなわち、左側の噛み合いクラッチ27をクラッチ入り状態に切り換え、右側の噛み合いクラッチ27をクラッチ切り状態に切り換える。又、左側の摩擦クラッチ25をクラッチ切り状態に切り換え、右側の摩擦クラッチ25をクラッチ入り状態に切り換える(ステップ39)。そして、回転センサ58にて検出される直進用の無段変速装置7の出力回転速度と同じ値を、旋回用の無段変速装置8の目標回転速度として設定して、回転センサ59にて検出される旋回用の無段変速装置8の出力回転速度が前記目標回転速度になるように変速用油圧シリンダ17の作動を制御する回転速度制御を実行する(ステップ37、38)。
【0079】
このように制御することで、直進用の無段変速装置7の変速出力が左側の走行装置1Lに伝達され、旋回用の無段変速装置8の変速出力が右側の走行装置1Rに伝達され、旋回用の無段変速装置8が直進用の無段変速装置7と同じ又は略同じ速度になるように制御されるから、直進走行する場合において、直進用の無段変速装置7の変速出力及び旋回用の無段変速装置8の変速出力により大きな走行駆動力を得ることができ、畦越え等を良好に行えるものとなる。
【0080】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0081】
(1)上記各実施形態では、前記旋回指令手段にて右旋回及び左旋回のうちのいずれかが指令されている状態において、駆動力増大指令手段にて駆動力の増大が指令されると、制御手段が前記駆動力増大型の旋回走行制御を実行するように構成されるものを例示したが、このような駆動力増大型の旋回走行制御を実行しない構成としてもよい。
【0082】
(2)上記第2実施形態では、前記駆動力増大型の直進走行制御を実行するときに、直進用の無段変速装置7の変速出力が左側の走行装置1Lに伝達され、旋回用の無段変速装置8の変速出力が左側の走行装置1Rに伝達される構成に切り換える構成としたが、このような構成に代えて、直進用の無段変速装置7の変速出力が右側の走行装置1Rに伝達され、旋回用の無段変速装置8の変速出力が左側の走行装置1Lに伝達される構成に切り換える構成としてもよい。
【0083】
(3)上記各実施形態では、前記駆動力増大指令手段が人為操作式の切換操作具にて構成され、手動操作にて切り換えるものを例示したが、手動操作式に代えて、足踏み操作式に構成されるものでもよい。又、このような人為操作式の切換操作具にて構成されるものに代えて、次のように構成するものでもよい。
【0084】
例えば、前記伝動状態切換機構Aを前記直進用伝動状態に切り換えて直進走行を行っている途中において、走行駆動力が不足している状態を制御装置が自動的に判別して、制御装置がそのような状態を判別すると、自動的に前記駆動力増大型の直進走行制御を実行するように構成するものでもよい。走行駆動力が不足している状態を自動的に判別する構成としては、非作業状態で直進走行しているときに、例えば、エンジン回転速度が予め設定した許容下限値以下にまで低下したような場合やエンジン負荷が予め設定した許容上限値以上の過大な値になっていることを判別したような場合があるが、それ以外にも各種の形態で走行駆動力の不足を判別することが可能である。
【0085】
(4)上記実施形態では、旋回指令手段として、左右の揺動操作自在な旋回レバーを備えて、その操作位置を検出するポテンショメータ式の旋回レバーセンサとを備える構成としたが、このような構成に限らず、例えば、旋回レバーの操作位置を検出する複数のスイッチを備える構成としたり、又、旋回レバーに代えて左右のスイッチを押し操作する時間で旋回半径を異ならせるように指令する構成等、各種の形態で実施してもよい。
【0086】
(5)上記各実施形態では、前記旋回用の無段変速装置を変速操作するアクチュエータとして、油圧シリンダを例示したが、油圧モータや電動モータ等他のアクチュエータを用いてもよい。
【0087】
(6)上記各実施形態では、前記直進用の無段変速装置及び前記旋回用の無段変速装置の夫々として靜油圧式無段変速装置を用いる構成としたが、ベルト式無段変速装置やテーパコーン型の無段変速装置等、各種の形式の無段変速装置を用いることができる。
【0088】
(7)上記各実施形態では、作業車としてコンバインを例示したが、コンバインに限らずトラクターやその他の農作業機でもよく建設用作業車等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】伝動構造を示す概略構成図
【図3】制御ブロック図
【図4】変速位置と変速出力との関係を示す図
【図5】旋回レバーの操作位置と速度比率との関係を示す図
【図6】制御動作のフローチャート
【図7】制御動作のフローチャート
【図8】制御動作のフローチャート
【符号の説明】
【0090】
1R,1L 走行装置
7 直進用の無段変速装置
8 旋回用の無段変速装置
14 変速操作具
17 アクチュエータ
56 旋回指令手段
70 駆動力増大指令手段
A 伝動状態切換手段
H 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達する直進用伝動状態、前記直進用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達し且つ旋回用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達する左旋回用伝動状態、及び、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達し且つ前記旋回用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達する右旋回用伝動状態に切り換え自在な伝動状態切換手段と、
前記旋回用の無段変速装置を変速操作するアクチュエータと、
前記直進用の無段変速装置を手動操作にて変速するための手動操作式の変速操作具と、
直進、右旋回、及び、左旋回を指令する旋回指令手段と、
前記伝動状態切換手段及び前記アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記旋回指令手段にて直進が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記直進用伝動状態に切り換えるように制御し、
前記旋回指令手段にて右旋回が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記右旋回用伝動状態に切り換えて前記旋回用の無段変速装置が旋回用の目標速度になるように前記アクチュエータの作動を制御し、且つ、前記旋回指令手段にて左旋回が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記左旋回用伝動状態に切り換えて前記旋回用の無段変速装置が旋回用の目標速度になるように前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている作業車の走行制御装置であって、
走行駆動力の増大を指令する駆動力増大指令手段が備えられ、
前記伝動状態切換手段が、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達し、且つ、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達する直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換え自在に構成され、
前記制御手段が、前記旋回指令手段にて直進が指令されている状態において、前記駆動力増大指令手段にて走行駆動力の増大が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換え、且つ、前記旋回用の無段変速装置が前記直進用の無段変速装置と同じ又は略同じ速度になるように前記アクチュエータの作動を制御する駆動力増大型の直進走行制御を実行するように構成されている作業車の走行制御装置。
【請求項2】
直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置の夫々に伝達する直進用伝動状態、前記直進用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達し且つ旋回用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達する左旋回用伝動状態、及び、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左側の走行装置に伝達し且つ前記旋回用の無段変速装置の変速出力を右側の走行装置に伝達する右旋回用伝動状態に切り換え自在な伝動状態切換手段と、
前記旋回用の無段変速装置を変速操作するアクチュエータと、
前記直進用の無段変速装置を手動操作にて変速するための手動操作式の変速操作具と、
直進、右旋回、及び、左旋回を指令する旋回指令手段と、
前記伝動状態切換手段及び前記アクチュエータの作動を制御する制御手段とが備えられ、
前記制御手段が、
前記旋回指令手段にて直進が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記直進用伝動状態に切り換えるように制御し、
前記旋回指令手段にて右旋回が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記右旋回用伝動状態に切り換えて前記旋回用の無段変速装置が旋回用の目標速度になるように前記アクチュエータの作動を制御し、且つ、前記旋回指令手段にて左旋回が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記左旋回用伝動状態に切り換えて前記旋回用の無段変速装置が旋回用の目標速度になるように前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている作業車の走行制御装置であって、
走行駆動力の増大を指令する駆動力増大指令手段が備えられ、
前記伝動状態切換手段が、前記直進用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置のうちのいずれか一方に伝達し、且つ、前記旋回用の無段変速装置の変速出力を左右一対の走行装置のうちの他方に伝達する直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換え自在に構成され、
前記制御手段が、前記旋回指令手段にて直進が指令されている状態において、前記駆動力増大指令手段にて駆動力の増大が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記直進用の駆動力増大型伝動状態に切り換え、且つ、前記旋回用の無段変速装置が前記直進用の無段変速装置と同じ又は略同じ速度になるように前記アクチュエータの作動を制御する駆動力増大型の直進走行制御を実行するように構成されている作業車の走行制御装置。
【請求項3】
前記伝動状態切換手段が、前記直進用の無段変速装置の変速出力及び前記旋回用の無段変速装置の変速出力の夫々を、前記左右一対の走行装置のうちの旋回方向と反対側に位置する一方の走行装置に伝達し、他方の走行装置を伝動遮断状態にする旋回用の駆動力増大型伝動状態に切り換え自在に構成され、
前記制御手段が、前記旋回指令手段にて右旋回及び左旋回のうちのいずれかが指令されている状態において、駆動力増大指令手段にて駆動力の増大が指令されると、前記伝動状態切換手段を前記旋回用の駆動力増大型伝動状態に切り換え、且つ、前記旋回用の無段変速装置が前記直進用の無段変速装置と同じ又は略同じ速度になるように前記アクチュエータの作動を制御する駆動力増大型の旋回走行制御を実行するように構成されている請求項1又は2記載の作業車の走行制御装置。
【請求項4】
前記駆動力増大指令手段が、人為操作式の切換操作具にて構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車の走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−91090(P2007−91090A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284399(P2005−284399)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】