説明

作業車両のボンネット

【課題】ボンネットの内側に弾性体と緩衝体をコンパクトに配置して開閉操作力の軽減を図れる作業車両のボンネットを提供する。
【解決手段】 エンジン5を覆うボンネット31の前後一側に回動支点軸32を左右方向に設け、該回動支点軸32を中心に開閉可能とする作業車両のボンネット31において、ボンネット31側に設けた第一支持体43と機体側に設けた第二支持体34との間に、閉じ側に付勢する引っ張りバネ35と急速な回動を緩衝させるガススプリング36を一体的に組み付けて介装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両のボンネットに関し、詳しくは、トラクタの前部に配置したエンジンを覆うボンネットの前下部に回動支点軸を設けて、ボンネットを前上方に開けることを可能とし、該ボンネットが急激に回動することを防止するとともに、ボンネットの回動支持部材をボンネット内にコンパクトに配置できるようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来トラクタ等の作業車両においては、エンジンルーム内の点検やメンテナンスを行うためにボンネットを開閉する時に、ボンネットが急激に開閉しないように、ボンネットと機体側との間にガススプリングを介装したり、ボンネットを開けた状態に保持するために支持部材を配置したりする技術が公知となっている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−320963号公報
【特許文献2】特開2006−290121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1及び特許文献2の技術では、ボンネットと機体との間にガススプリングを介装してガススプリングにより開ける方向に付勢しているだけであり、開ける操作力は軽減されても、閉める時には逆方向の力が必要となる。また、ボンネット開けた時に、機体側の支持部材が邪魔になり、作業性が悪くなっていた。また、特許文献1のように、ボンネットを上方に開けた状態を保持するための支持ロッドにバネを外嵌する構成の場合には、ボンネットを閉じる時にはその保持を解除する操作が必要であり、また、ロッド及びバネはボンネットの開閉する時の回動範囲に合わせた比較的長い部材となり、エンジンルーム内で比較的大きなスペースを必要としていた。
【0004】
本発明は上記の課題を解決するために、ボンネットの内側に弾性体と緩衝体をコンパクトに配置して開閉操作力の軽減を図れる作業車両のボンネットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、エンジンを覆うボンネットの前後一側に回動支点軸を左右方向に設け、該回動支点軸を中心に開閉可能とする作業車両のボンネットにおいて、ボンネット側に設けた第一支持体と機体側に設けた第二支持体との間に、弾性体と急速な回動を緩衝させる緩衝体を一体的に組み付けて介装したものである。
【0007】
請求項2においては、エンジンを覆うボンネットの前後一側に回動支点軸を左右方向に設け、該回動支点軸を中心に開閉可能とする作業車両のボンネットにおいて、ボンネット側に設けた第一支持体と機体側に設けた第二支持体との間に、閉じ側に付勢する弾性体と開け側に付勢して急速な回動を緩衝させる緩衝体を一体的に組み付けて介装したものである。
【0008】
請求項3においては、前記弾性体は引っ張りバネで構成し、前記緩衝体はガススプリングで構成し、該ガススプリングに前記引っ張りバネを外嵌して、該引っ張りバネの両端とガススプリングの両端を、それぞれ前記第一支持体と第二支持体に取り付けるものである。
【0009】
請求項4においては、前記引っ張りバネとガススプリングは、ボンネット側に設けた第一支持体に配置した開口部を貫通して配置したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1の如く構成することで、ボンネットを開閉する時に、急激に回動することがなく、また、弾性体により開ける時又は閉じる時の力を軽減することができる。また、弾性体と緩衝体をコンパクトに配置でき、ボンネット内の必要スペースは小さくて済む。
【0011】
請求項2の如く構成することで、特に、ボンネットを開ける時に、急激に回動することがなく、閉じる時の力も小さくて済む。また、弾性体と緩衝体をコンパクトに配置でき、ボンネット内の必要スペースは小さくて済む。
【0012】
請求項3の如く構成することで、ガススプリングが引っ張りバネ内に収納される構成となるため、ボンネット内での収容スペースを小さくでき、簡単な構成でボンネット内に収納配置できる。また、ガススプリングと引っ張りバネの両側は同じ前記第一支持体と第二支持体に取り付けるため組み立てが容易にでき、取付部の構成も簡単に構成できる。
【0013】
請求項4の如く構成することで、ガススプリングと引っ張りバネは開閉時に第一支持体と干渉することなく、ボンネット内に省スペースでコンパクトに配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の技術的範囲は実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる、本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に広く及ぶものである。
図1は作業車両(トラクタ)の全体的な構成を示した側面図、図2はボンネットを開いた状態の作業車両前部の側面図、図3はボンネットを閉じた状態の作業車両前部の拡大側面図、図4は同じくボンネットを開いた状態の拡大図側面図、図5はボンネットを開いた状態のボンネット回動支点部分の斜視図である。
【0015】
まず、本発明に係る作業車両の一実施の形態としてのトラクタ1の全体構成について説明する。なお、本実施例では進行方向に向かって前後左右を決定している。
トラクタ1は、図1に示すように、左右一対の前後方向に配置した機体フレーム8の前後に前輪2・2および後輪3・3を支承する。該機体フレーム8の前部上にエンジン5を載置し、該エンジン5やラジエータやバッテリ等がボンネット31に覆われて、該ボンネット31内をエンジンルームとしている。ボンネット31の後方にはダッシュボード23が配置され、該ダッシュボード23の上部よりアシストグリップ38とステアリングハンドル6を上方に突出している。該ステアリングハンドル6の後方には座席シート7を配設し、該座席シート7の側部には図示しない主変速レバーや作業機昇降レバーやPTO変速レバー等が配設されている。
【0016】
前記ダッシュボード23上には計器パネルやキースイッチ、前後進切換レバー22等が配置されている。該ダッシュボード23と座席シート7の間の下方にはステップ25が形成され、該ステップ25上にはクラッチペダルやブレーキペダル等を配設している。
【0017】
前記エンジン5は、機体フレーム8上に防振支持されており、該エンジン5のクランク軸の前部にはフライホィールが固設され、該フライホィールの前部及び外周は図2に示すようにフライホィールカバー12により覆われて保護されている。該クランク軸の後部にはクラッチが配置され、機体フレーム8の後部にはミッションケース11が配設されて、該クラッチとミッションケース11の入力軸との間にドライブシャフト9やユニバーサルジョイント等を配置して、エンジン5の駆動力が、ミッションケース11へ伝達される構成としている。該ミッションケース11内には変速装置が収容され、エンジン5からの動力が変速されて後輪3・3を駆動し、さらにミッションケース11から図示しない前輪駆動軸を介して前輪2・2にも駆動力を伝達できるようにしている。また、ミッションケース11後部から突出したPTO軸にも動力を伝達可能に構成している。
【0018】
前記ボンネット31は下方と後方を開放した箱状に構成し、該ボンネット31の前下部を回動支点として前上方に回動して開けられるように構成している。
即ち、ボンネット31の回動支点部分の構成は、図2から図5に示すように、回動支点軸32が左右の機体フレーム8・8の前部にステー33・33を介して取り付けられている。具体的には、回動支点軸32の両側にステー33・33が直交して固定され、該ステー33・33は左右の機体フレーム8・8の前上部側面にボルト等の固定手段によって固定される。但し、回動支点軸32の位置は機体フレーム8の上方であっても、機体フレーム8に直接取り付けられる構成であってもよい。なお、ステー33・33はボンネット31の前下部に位置し、その機体フレーム8への固定部はボンネット31から露出した位置に配置しているため、容易にボルトを外すことができ、このボルトを外すことで、ボンネット31と回動支点部分を一体的に取り外すことが可能となる。また、ステー33のボルトを挿入するボルト孔は長孔33aに構成して位置調整可能に固定できるようにし、組み立てが容易にでき、ボンネット31の固体差等の誤差を吸収できるようにしている。
【0019】
前記回動支点軸32の左右中央から後斜め上方に第二支持体34が突設されて、弾性体となる引っ張りバネ35の一端と、緩衝体となるガススプリング36の一端を該第二支持体34の先端に取り付けている。具体的には、前記第二支持体34はプレートを断面視「コ」字状に折り曲げ形成して、一端側に左右方向に開口した軸孔に前記回動支点軸32を挿通して、該回動支点軸32の略左右中央位置で後上方に突出した状態で溶接等により固設する。該第二支持体34の他端側にはピン孔を左右方向に開口して、該ピン孔に支持ピン40を左右方向に挿入してスナップピンやCリング等の固定手段により固定する。そして、該第二支持体34の左右のプレート間の支持ピン40にガススプリング36の一端を回動自在に枢支し、引っ張りバネ35の一端を支持ピン40に係止するのである。このようにして、弾性体と緩衝体の一端を機体側となる第二支持体34に取り付けるのである。
【0020】
なお、前記弾性体は本実施例ではコイルスプリングからなる引っ張りバネ35で構成し、コイル部分35bの両側から直線状に棒部分35aを構成して、該棒部分35aの先端部に係止部を形成している。また、緩衝体は本実施例ではガススプリング36で構成しているが、油圧式のダンパー等で構成することも可能である。該ガススプリング36は伸長方向に付勢する構成としているが、両ロッド式として伸長方向及び縮小方向に付勢する構成とすることも可能である。また、該ガススプリング36はシリンダ内にガスを充填し、該シリンダの外側に引っ張りバネ35のコイル部分35bを外嵌する構成としている。
【0021】
このように引っ張りバネ35とガススプリング36を一体的に構成することで、引っ張りバネ35とガススプリング36を平行に並べて配置する構成とするよりも、配置スペースを小さくすることができる。また、引っ張りバネ35とガススプリング36の両端の取付部分を接近させて配置できるので、前記支持ピン40を介して第二支持体34に取り付けることができ、組み立てが容易にできるようになる。
【0022】
また、引っ張りバネ35は、ボンネット31を閉じる方向に付勢するもので、ボンネット31を開ける方向に回動したときに、ボンネット31の重心が回動支点軸32の上方を越える近傍から引っ張りバネ35のバネ力が大きく作用するように構成している。このように作用する構成とすることで、ボンネット31を開けるときには、ガススプリング36の付勢力により軽い操作力で開けることができ、ボンネット31の重心が死点(回動支点軸32)を越えると、引っ張りバネ35の付勢力により、開ける方向に付勢されて、開けた状態を維持することができ、不意に閉まることがなくなるようにできる。
【0023】
また、前記第二支持体34の左右両側方の回転支点軸32上でボンネット31を支持する第一支持体43を枢支して、ボンネット31を回動自在に支持している。即ち、第一支持体43はボンネット31の前部の内側に固定されており、該第一支持体43は、アーム部43aと水平固定部43bと縦固定部43c等を備えて、機体フレーム8に対して回動可能にボンネット31を支持する構成としている。
【0024】
前記アーム部43aは水平固定部43bの下面より複数(本実施例では左右二つ)下方に平行に突設され、該アーム部43a・43aの先端に枢支孔を開口して回動支点軸32を挿入して枢支される構成としている。なお、アーム部43aを位置決めするために図示しない係止リングが回動支点軸32上に所定の位置で係止されている。
【0025】
水平固定部43bは、ボンネット31の前下部に形成した縁部31aの形状に合わせて左右方向に延びるプレートにより構成し、複数のボルト等の固定手段により縁部31aと水平固定部43bを固定している。なお、該水平固定部43bの左右中央部の後部には切欠43fを形成して、ボンネット31を開けた時に前記第二支持体34と干渉しないように構成している。
【0026】
前記縦固定部43cは前記水平固定部43bの左右中央上面よりプレートが立設され、該縦固定部43cの上部が、ボンネット31の前上部の裏面にボルト等の固定手段により固定する構成としている。そして、該縦固定部43cの上下左右中央部には開口部43dが設けられて、該開口部43dに前記引っ張りバネ35とガススプリング36を貫通自在に配置している。但し、開口部43dは切欠により構成することも可能である。更に、該縦固定部43cの上下中途部前面より前方に支持ステー43eが突設され、前記引っ張りバネ35とガススプリング36の上端部を支持する構成としている。即ち、支持ステー43eの先端に支持ピン44を横架し、該支持ピン44に引っ張りバネ35上端を係止し、ガススプリング36の上端を枢支している。
【0027】
こうして前記引っ張りバネ35とガススプリング36は、開口部43dを貫通して、縦固定部43cを斜めに横切るように配置することで、前記引っ張りバネ35とガススプリング36と縦固定部43cは、ボンネット31の前面の裏面に沿って配置されることとなり、ボンネット31の前部内側の小さなスペース内に納まる配置とすることができる。
なお、ボンネット31の後部左右中央には、図示しないロック部材が配置されて、ボンネット31を閉じた時に、機体フレーム8より上方に延設した支持部材に固定できるようにしている。
【0028】
以上のように、エンジン5を覆うボンネット31の前後一側に回動支点軸32を左右方向に設け、該回動支点軸32を中心に開閉可能とする作業車両のボンネット31において、ボンネット31側に設けた第一支持体43と機体側に設けた第二支持体34との間に、弾性体と急速な回動を緩衝させる緩衝体を一体的に組み付けて介装したので、ボンネット31を開閉する時に、急激に回動することがなく、また、弾性体により開ける時又は閉じる時の力を軽減することができる。また、弾性体と緩衝体をコンパクトに配置でき、ボンネット31内の必要スペースは小さくて済む。
【0029】
また、前記弾性体は引っ張りバネ35で構成し、前記緩衝体はガススプリング36で構成し、該ガススプリング36に前記引っ張りバネ35を外嵌して、該引っ張りバネ35の両端とガススプリング36の両端を、それぞれ前記第一支持体43と第二支持体34に取り付けたので、ガススプリング36が引っ張りバネ35内に収納される構成となるため、簡単な構成でボンネット31内に収納配置できる。また、ガススプリング36と引っ張りバネ35の両側は同じ前記第一支持体43と第二支持体34に取り付けるため組み立てが容易にでき、取付部の構成も簡単に構成できる。
【0030】
また、前記引っ張りバネ35とガススプリング36は、ボンネット31側に設けた第一支持体43の中央部に配置した開口部43dを貫通して配置したので、ガススプリング36と引っ張りバネ35は開閉時に第一支持体43と干渉することなく、ボンネット31内に省スペースでコンパクトに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】作業車両の全体的な構成を示した側面図。
【図2】ボンネットを開いた状態の作業車両前部の側面図。
【図3】ボンネットを閉じた状態の作業車両前部の拡大側面図。
【図4】同じくボンネットを開いた状態の拡大図側面図。
【図5】ボンネットを開いた状態のボンネット回動支点部分の斜視図。
【符号の説明】
【0032】
5 エンジン
31 ボンネット
32 回動支点軸
34 第二支持体
35 引っ張りバネ
36 ガススプリング
43 第一支持体
43d 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを覆うボンネットの前後一側に回動支点軸を左右方向に設け、該回動支点軸を中心に開閉可能とする作業車両のボンネットにおいて、ボンネット側に設けた第一支持体と機体側に設けた第二支持体との間に、弾性体と急速な回動を緩衝させる緩衝体を一体的に組み付けて介装したことを特徴とする作業車両のボンネット。
【請求項2】
エンジンを覆うボンネットの前後一側に回動支点軸を左右方向に設け、該回動支点軸を中心に開閉可能とする作業車両のボンネットにおいて、ボンネット側に設けた第一支持体と機体側に設けた第二支持体との間に、閉じ側に付勢する弾性体と開け側に付勢して急速な回動を緩衝させる緩衝体を一体的に組み付けて介装したことを特徴とする作業車両のボンネット。
【請求項3】
前記弾性体は引っ張りバネで構成し、前記緩衝体はガススプリングで構成し、該ガススプリングに前記引っ張りバネを外嵌して、該引っ張りバネの両端とガススプリングの両端を、それぞれ前記第一支持体と第二支持体に取り付ける、請求項1または請求項2に記載の作業車両のボンネット。
【請求項4】
前記引っ張りバネとガススプリングは、ボンネット側に設けた第一支持体に配置した開口部を貫通して配置したことを特徴とする、請求項3に記載の作業車両のボンネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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