説明

作業車両及び作業車両のエンジン再始動制御方法

作業車両において、エンジンのアイドリングストップ後、オペレータによる操作レバーの操作に応答して、作業車両が不意に動き出さないようにしてエンジンを自動的に再始動する制御が行われる。エンジンのアイドリングストップ(S4)の後、ロックレバーがロック位置にされる(S5、YES)と、作業車両が動かないよう油圧回路が作動不能状態に制御され(S6)、その後に操作レバーに特定の操作が行われる(S7、YES)と、エンジン16が再始動される(S8)。エンジン再始動後、全操作レバーがニュートラル位置にある場合にのみ(S9、YES)、ロックレバーがロック解除される(S10、YES)と、油圧回路が漸次に通常の作動可能状態に回復して作業車両が動けるようになる(S11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイドリングストップ機能とエンジン再始動機能とを備える作業車両、及びそのような作業車両におけるエンジン再始動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、省エネルギーや環境保護のために、作業車両のような作業車両にアイドリングストップ制御機能を搭載することが要求されている。アイドリングストップ制御機能とは、作業車両のアイドル状態、すなわちエンジンが作動したままで作業車両が待機する状態、が発生したとき、自動的にエンジンを停止させる機能である。アイドリングストップ機能を備える作業車両が例えば特許文献1及び2に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−65097号公報
【特許文献2】特開2000−96627号公報
【0004】
特許文献1に開示された作業車両では、操作レバーの操作されない状態が設定時間を超えたとき、もしくは操作レバーに付設のスイッチがON操作されたときに、エンジンのアイドリング運転が自動的に停止される。このエンジン自動停止の後に操作レバーが操作されると、エンジンが自動的に始動される。
【0005】
特許文献2に開示された建設機械は、油圧回路に指令して建設機械を操作するための操作レバーの他に、油圧回路の作動を禁止するロック位置と前記油圧回路の作動を許可するロック解除位置とを切り換えるロックレバーを備える。そのロックレバーがロック位置に切り換えられた時点から所定時間経過したときに、エンジンの運転が自動的に停止される。このエンジン自動停止の後に、前記ロックレバーがロック解除位置に切り換えられると、油圧回路が作動可能な状態になるとともに、エンジンが自動的に始動される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された作業車両では、操作レバーの操作でエンジンが自動的に再始動した時、その操作レバーに応答して作業車両が不意に動きだす虞があるという問題点がある。特許文献2に開示された建設機械では、オペレータが操作レバーを操作しながらロックレバーのロック解除操作を行った場合、ロック解除操作によりエンジンが再始動したとき、同時に油圧回路が作動を開始して、操作レバーに応答して建設機械を不意に動かす虞があるという問題点がある。
【0007】
従って、本発明の目的は、アイドリングストップ制御機能を備える作業車両において、アイドリングストップ制御によるエンジン自動停止の後にエンジンを再始動する際、作業車両が不意に動きだすことを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従う作業車両は、エンジンと、前記エンジンにより駆動される油圧回路と、前記油圧回路により駆動される油圧作動部と、前記油圧作動部を動かすための操作指令信号を出力する操作装置と、前記エンジン、前記油圧回路及び前記操作装置に接続され、前記エンジンがアイドリング運転状態にあるときに前記エンジンを停止させるアイドリングストップ制御と、前記アイドリングストップ制御により前記エンジンを停止させた後に前記エンジンを再始動するエンジン再始動制御とを行う制御装置とを備える。前記制御装置は、前記アイドリングストップ制御により前記エンジンを停止させた後に前記エンジン再始動制御を行う場合、前記エンジンを再始動する前に前記油圧回路を作動不能な状態にし、その後、前記油圧回路が作動不能な状態にあるとき、所定のトリガ信号を受けて前記エンジンを再始動し、前記エンジンを再始動した後、前記操作装置から前記操作指令信号が入力されていないときに、前記油圧回路を作動可能な状態に復帰させる。
【0009】
エンジンが停止した後、油圧回路が作動不能な状態にされ、その後にエンジンが再始動され、その後に油圧回路が作動可能な状態に回復される。そのため、エンジンが再始動されるときには、油圧回路は作動不能であり、油圧作動部が動くことができないから、作業機械の不意に動き出す虞がない。
【0010】
好適な実施形態では、作業機械には、前記油圧回路についてのロック指示信号とロック解除指示信号を出力するロック装置が設けられる。そして、前記制御装置は、前記アイドリングストップ制御により前記エンジンを停止させた後、前記エンジンを再始動する前に、前記ロック装置からの前記ロック指示信号に応答して前記油圧回路を作動不能な状態にする。また、前記制御装置は、前記エンジンを再始動した後、前記操作装置から前記操作指令信号が入力されていないときに、前記ロック装置からの前記ロック解除指示信号に応答して前記油圧回路の作動可能な状態に復帰させる。したがって、エンジンが停止した後、ロック装置により油圧回路をロックして作動不能状態にしない限り、エンジンの再始動が行われない。また、エンジンが再始動した後は、油圧作動部を動かすための何らかの操作指令信号が操作装置から出力されている限り、ロック装置でロック解除を指示しても、油圧回路は作動可能な状態に復帰しない。
【0011】
好適な実施形態では、前記所定のトリガ信号として、前記操作装置からの所定の操作指令信号が用いられる。したがって、前記エンジンを停止した後、操作装置からの所定の操作指令信号が出力されると、エンジンが自動的に再起動する。
【0012】
好適な実施形態では、作業車両は、前記油圧回路を制御するためのパイロット圧油の圧力を制御するパイロット圧制御装置を備える。そして、前記制御装置は、前記パイロット圧制御装置を制御して、前記パイロット圧油の圧力を所定の作動閾値より下げることにより前記油圧回路を作動不能な状態にし、また、前記パイロット圧油の圧力を前記作動閾値より上げることにより前記油圧回路を作動可能な状態に復帰させる。さらに、前記制御装置は、前記油圧回路を作動可能な状態に復帰させる場合には、前記パイロット圧油の圧力を漸次に上昇させる。この漸次の増圧制御により、前記油圧回路が作動可能な状態に復帰するとき、油圧作動部が急激に動作を開始することが回避される。
【0013】
好適な実施形態では、作業車両には、警音又は警報を前記作業車両の外部へ出力する警報装置が備えられる。そして、前記制御装置は、前記油圧回路が作動不能な状態にあるときに前記トリガ信号を受けた場合、前記警報装置から警音又は警報が出力された後に、前記エンジンを再始動する。したがって、エンジンがこれから再始動することを、作業車両の外部の人々に知らせて、それらの人々に安全確保のための注意を喚起することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アイドリングストップ制御によるエンジン自動停止の後にエンジンを再始動する際、作業車両が不意に動きだすことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの側面図。
【図2】第1の実施形態に係る油圧ショベルの駆動制御システムの全体的な概略構成を示す図。
【図3】第1の実施形態におけるアイドリングストップ制御とエンジン再始動制御の処理手順を説明するフローチャート。
【図4】第1の実施形態におけるエンジン再起動直後のパイロット元圧の昇圧カーブを示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る油圧ショベルの駆動制御システムの全体的な概略構成を示す図。
【図6】第2の実施形態におけるアイドリングストップ制御とエンジン再始動制御の処理手順を説明するフローチャート。
【図7】第2の実施形態におけるエンジン再起動直後のパイロット元圧の昇圧カーブを示す図。
【符号の説明】
【0016】
1 油圧ショベル
2a 走行用油圧モータ
3a 旋回用油圧モータ
10 ブームシリンダ
11 アームシリンダ
12 バケットシリンダ
13,14 作業機操作レバー
15 走行操作レバー
16 エンジン
17 油圧ポンプ
18,61 操作弁集合体
19 油圧作動部
20 油圧回路
21 コントローラ
21a 第1のレバー操作判別部
21c 第2のレバー操作判別部
21d ロックレバー操作位置判別部
27 エンジン制御装置
28 エンジン始動装置
33 パイロットポンプ
35,36,39,55,56,59 操作部
37,38,40 減圧弁
42,51,52,53,54,57,58 ポテンショメータ
43 ロックレバー
46 電磁比例圧力制御弁
60 レバー操作判別部
62a 比例電磁操作部
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明による作業車両の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態は、作業車両として油圧ショベルに本発明が適用された例であるが、本発明が他の種々の作業車両、例えばブルドーザ、ダンプトラック、クレーン、フォークリフトなどにも適用できることは言うまでもない。
【0018】
〔第1の実施形態〕
図1には、本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルの側面図が示されている。また、図2には、この油圧ショベルの駆動制御システムの全体的な概略構成が示されている。
【0019】
本実施形態の油圧ショベル1は、図1に示されるように、走行用油圧モータ2aにより駆動される走行装置2bを有する下部走行体2と、旋回用油圧モータ3aにより駆動される旋回装置3と、この旋回装置3を介して前記下部走行体2上に配される上部旋回体4と、この上部旋回体4の前部中央位置に取着される作業機5と、その上部旋回体4の前部左方位置に設けられる運転室6を備える。ここで、作業機5は、上部旋回体4に揺動可能に連結されたブーム7、ブーム7に揺動可能に連結されたアーム8、およびアーム8に揺動可能に連結されたバケット9を有する。作業機5は、さらに、ブーム7、アーム8およびバケット9をそれぞれ動かすための油圧シリンダ、すなわちブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12を有する。また、運転室6内の運転席(図示省略)の両側には、上部旋回体4の旋回動作および作業機5の屈伸及び上げ下げ動作を操作する作業機操作レバー13,14(図2参照)が配置されるとともに、同運転席の前方には、下部走行体2の走行動作を操作する一対の走行操作レバー15,15(図2参照)が配置されている。
【0020】
この油圧ショベル1の駆動制御システムは、図2に示されるように、油圧回路20を有し、そこでは、エンジン16により駆動される油圧ポンプ17から吐出される作動圧油が操作弁集合体18を通じて油圧作動部19に供給される。ここで、油圧作動部19は、上述したブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、走行用油圧モータ2a及び旋回用油圧モータ3aなどの各種の油圧アクチュエータを、纏めて1ブロックで図示したものである。操作弁集合体18は、それら油圧アクチュエータにそれぞれ対応した油圧パイロット操作式方向制御弁34,・・,34の集合体である。この油圧回路20が作動することにより、作業機5の屈伸及び上げ下げ動作、上部旋回体4の旋回動作、および下部走行体2の走行動作がそれぞれ行われるようになっている。また、この駆動制御システムは、コントローラ21を有し、このコントローラ21は例えばコンピュータであって、図示は省略するが、所定の制御プログラムを実行することによりアイドリングストップ制御やエンジン再始動制御やその他の制御のための演算処理を行う中央演算処理部、前記制御プログラム並びに演算処理に使用される各種テーブルや設定条件データ等を記憶する記憶装置、及び以下に説明される各種の信号を入出力する入出力装置などを有する。
【0021】
エンジン16は例えばディーゼル式のエンジンであり、このエンジン16には、燃料噴射ポンプ22とガバナ23とが併設される。ガバナ23の燃料コントロールレバー23aが、ガバナ駆動モータ24にて駆動されるようになっている。燃料コントロールレバー23aの駆動位置は、ポテンショメータ25により検出され、その検出信号がコントローラ21に入力されるようになっている。さらに、エンジン16のスロットル位置(エンジン回転数)を設定するために図示省略される燃料ダイヤルが設けられ、この燃料ダイヤルに付設されるポテンショメータ(図示省略)からのスロットル信号(設定回転数信号)が、コントローラ21に入力されるようになっている。また、エンジン16の実回転数は回転数センサ26にて検出され、その検出信号もコントローラ21に入力されるようになっている。
【0022】
本実施形態においては、主にコントローラ21、ガバナ23、ガバナ駆動モータ24、ポテンショメータ25および燃料ダイヤルから、エンジン制御装置27が構成されている。このエンジン制御装置27において、コントローラ21は、上述した燃料ダイヤルにより入力されるスロットル信号(設定回転数信号)と、回転数センサ26にて検出されるエンジン16の実際の回転数信号との間の偏差信号を生成し、その偏差信号に対し所定の関数関係を満足する電圧レベルをもつ駆動信号を発生し、この駆動信号に基づきガバナ駆動モータ24を駆動する。
【0023】
ここで、一例として、燃料ダイヤルが最大位置(FULL位置)にセットされているとすると、その燃料ダイヤルに付設のポテンショメータから出力されるスロットル信号は最大設定回転数を示しており、コントローラ21はその最大設定回転数に対応するモータ駆動信号をガバナ駆動モータ24に加える。これにより、ガバナ駆動モータ24は、最高速レギュレーションラインが設定されるように燃料コントロールレバー23aを作動させ、その結果、エンジン16の出力馬力およびエンジン回転数が自動設定される。別の例として、コントローラ21からガバナ駆動モータ24に対してエンジン停止指令に対応するモータ駆動信号が加えられたとすると、ガバナ駆動モータ24は、燃料噴射ポンプ22による燃料噴射が無噴射となるように、燃料コントロールレバー23aを作動させ、これによりエンジン16の運転が停止される。
【0024】
さらに、エンジン16には、そのエンジン16を始動するためのエンジン始動装置28が付設されている。このエンジン始動装置28は、スタータ29、スタータスイッチ30、バッテリ31、バッテリリレー32、それら機器を接続する配線等をから構成されている。このエンジン始動装置28においては、オペレータがスタータスイッチ30を操作してこれを始動位置にすると、スタータ29へ始動信号が流れるとともに、バッテリ31からの電力がバッテリリレー32を介してスタータ29に供給され、これによりスタータ29がエンジン16を駆動してエンジン16が始動されるようになっている。また、コントローラ21からスタータ29へ向けて始動信号が流れた場合にも同様に、スタータ29がエンジン16を駆動してエンジン16が始動されるようになっている。
【0025】
前記油圧ポンプ17は例えば可変容量型の油圧ポンプであり、この油圧ポンプ17には、前記エンジン16により駆動されてパイロット圧油を吐出するパイロットポンプ(パイロット圧油発生装置)33が連設されている。一方、前記操作弁集合体18は、前記したように、油圧作動部19に含まれる種々の油圧アクチュエータ(走行用油圧モータ2a、旋回用油圧モータ3a、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12など)に対応して設けられる油圧パイロット操作式方向制御弁34,…,34の集合体である。後述する減圧弁37,38,40から出力される種々のパイロット圧油が上記方向制御弁34,…,34へ供給されることにより、作業機5、上部旋回体4及び下部走行体2を動かすための各種の油路切換動作が行われるようになっている。
【0026】
前記作業機操作レバー13,14には、各種レバー操作に対応する各種操作指令を出力する操作部35,36を介して、減圧弁(パイロット圧油調圧出力装置)37,38が付設されている。前記走行操作レバー15,15にも同様に、各種レバー操作に対応する各種操作指令を出力する操作部39を介して、減圧弁(パイロット圧油調圧出力装置)40が付設されている。減圧弁37,38,40には、前記パイロットポンプ33から吐出されるパイロット圧油が、後述する電磁比例圧力制御弁46を介して供給される。減圧弁37,38,40は、供給されたパイロット圧油を操作部35,36,15,15からの各種操作指令に基づいて調圧し、調圧された各種のパイロット圧油を操作弁集合体18に向けて出力する。そして、減圧弁37,38,40から出力された各種のパイロット圧油は、前記操作弁集合体18における対応するパイロット圧油入力ポートに入力され、これによって、上述した各種の油路切換動作が行われる。その結果、作業機操作レバー13,14の操作により、上部旋回体4の旋回動作と作業機5の屈伸及び上げ下げ動作とが行われ、また、走行操作レバー15,15の操作により、下部走行体2の走行動作が行われることになる。
【0027】
また、作業機操作レバー13,14および走行操作レバー15,15のそれぞれの操作状態を示す操作信号が、減圧弁37,38,40に付設される油圧スイッチ41,・・・,41を介して、コントローラ21に入力されるようになっている。本実施形態において、コントローラ21に入力される上記操作信号には、例えば以下に述べる12種類がある。
(1)上部旋回体4の右旋回動作に対応する右旋回操作信号
(2)上部旋回体4の左旋回動作に対応する左旋回操作信号
(3)ブーム7の上げ動作に対応するブーム上げ操作信号
(4)ブーム7の下げ動作に対応するブーム下げ操作信号
(5)アーム8を前方に送り出す動作に対応するアームダンプ操作信号
(6)アーム8を手前に引き込む動作に対応するアーム掘削操作信号
(7)バケット9を前方に送り出す動作に対応するバケットダンプ操作信号
(8)バケット9を手前に引き込む動作に対応するバケット掘削操作信号
(9)下部走行体2の右前進走行動作に対応する右前進走行操作信号
(10)下部走行体2の右後進走行動作に対応する右後進走行操作信号
(11)下部走行体2の左前進走行動作に対応する左前進走行操作信号
(12)下部走行体2の左後進走行動作に対応する左後進走行操作信号
【0028】
コントローラ21は、一つの機能として、第1のレバー操作判別部21aを有する。第1のレバー操作判別部21aは、入力された上記(1)〜(12)の操作信号に基づいて、どのレバー操作が行われているかを判別する。コントローラ21は、エンジン16が動作している間、第1のレバー操作判別部21aにより、何らかのレバー操作の有無を判別する。コントローラ21は、別の機能として、所定の時間長をカウントするタイマー21bを有する。タイマー21bによってカウントされる時間長には、運転室内に配置されたコントロールパネル(図示省略)から、オペレータが任意の時間長を設定することができるようになっている。コントローラ21は、アイドリングストップ制御において、エンジン16がアイドリング運転状態にある間、タイマー21bにより上記所定時間長をカウントする。
【0029】
作業機操作レバー13に結合された操作部35には、作業機操作レバー13の各種レバー操作のうち特定のレバー操作、例えばブーム上げ操作、が行われたか否かを示す電気信号つまりブーム上げ操作信号を出力するポテンショメータ42が付設されている。このポテンショメータ42からのブーム上げ操作信号がコントローラ21に入力される。コントローラ21は、また別の機能として、第2のレバー操作判別部21cを有し、これは、ポテンショメータ42から入力されるブーム上げ操作信号に基づいて、ブーム上げ操作が行われているか否かを判別する。コントローラ21は、アイドリングストップ制御によりエンジン16が停止された後のエンジン再始動制御において、第2のレバー操作判別部21cにより、ブーム上げ操作の有無を判別する。なお、本実施形態では、「ブーム上げ操作」が前記特定のレバー操作として採用されているが、これは単なる例示であり、「ブーム上げ操作」以外のレバー操作が採用されても良い。
【0030】
運転室6内には、油圧回路20の作動を禁止するロック位置と油圧回路20の作動を許可するロック解除位置とを切り換えるロックレバー43が設けられている。ロックレバー43がロック解除位置にあるとき、ロックレバー43により押されるリミットスイッチ44からのON信号(ロック解除位置信号)が、コントローラ21に入力されるようになっている。コントローラ21は、さらにまた別の機能として、ロックレバー操作位置判別部21dを有し、これは、リミットスイッチ44から入力されるロック解除位置信号に基づいて、ロックレバー44がロック位置又はロック解除位置のいずれにあるかを判別する。コントローラ21は、アイドリングストップ制御によりエンジン16が停止された後のエンジン再始動制御において、ロックレバー操作位置判別部21dにより、ロックレバー44の位置を判別する。
【0031】
前記パイロットポンプ33と減圧弁37,38,40とを接続するパイロット圧油供給管路45には、電磁比例圧力制御弁(圧力制御装置)46が設けられている。コントローラ21から電磁比例圧力制御弁46に入力される制御電流の大きさに比例して、パイロットポンプ33から各減圧弁37,38,40に供給されるパイロット圧油の圧力が制御される。
【0032】
圧力センサ47が油圧ポンプ17の吐出圧を検出する。圧力センサ47からの圧力検出信号は、コントローラ21に入力される。また、圧力センサ48が、電磁比例圧力制御弁46を経て減圧弁37,38,40に供給されるパイロット圧油の圧力を検出する。圧力センサ48からの圧力検出信号は、コントローラ21に入力されて、後述されるパイロット元圧の制御においてフィードバック信号として用いられる。
【0033】
次に、コントローラ21が制御プログラムを実行されることにより行なう、アイドリングストップ制御とエンジン再始動制御の処理手順について、図3のフローチャートを参照しつつ以下に説明する。図3において、ステップS1〜S4の制御はアイドリングストップ制御に相当し、ステップS5〜S11の制御はエンジン再始動制御に対応する。
【0034】
図3に示すように、ステップS1で、コントローラ21は、エンジン16がアイドリング運転状態であるか否かを判断する。すなわち、コントローラ21に対して前記(1)〜(12)の操作信号のいずれかが入力されているとき、すなわち、作業機5、上部旋回体4及び下部走行体2のいずれかが動作しているときには、コントローラ21は、エンジン16がアイドリング運転状態でないと判断し、エンジン16の運転を継続する(ステップS2)。一方、コントローラ21に対して前記(1)〜(12)の操作信号のいずれもが入力されていないとき、すなわち、作業機5、上部旋回体4及び下部走行体2のいずれもが動作していないときには、エンジン16がアイドリング運転状態にあると判断される。
【0035】
前記ステップS1において、エンジン16がアイドリング運転状態に入った判断したとき、コントローラ21は、タイマー21bによる所定時間(例えば数十秒程度)のカウントを開始し、以後、アイドリング運転状態が上記所定時間にわたり継続したか否かを判断する(S3)。その結果、アイドリング運転状態の継続時間が前記所定時間に達した場合、コントローラ21は、ガバナ駆動モータ24に対しエンジン停止指令に対応するモータ駆動信号を送信して、エンジン16を停止させる(S4)。
【0036】
前記ステップS4にてエンジン16が停止された後、コントローラ21は、ロックレバー操作位置判別部21dにより、リミットスイッチ44からのロック解除位置信号の入力の有無に基づいて、ロックレバー43の位置がロック位置又はロック解除位置のいずれにあるかを判別する(S5)。ステップS5において、ロックレバー43の位置がロック解除位置にあると判別された場合には、コントローラ21は待機する。他方、ステップS5において、ロックレバー43の位置がロック位置にあると判別された場合には、コントローラ21は、電磁比例圧力制御弁46を通じて減圧弁37,38,40に供給されるパイロット圧油の圧力(以下、「パイロット元圧」という)(Pc)が、操作弁集合体18で各種の油路切換動作が行われ得る最低油圧(以下、操作弁集合体18の「作動閾値」という)(Pt)よりも小さい所定値(Pa)になるように、電磁比例圧力制御弁46に制御電流を出力する(S6)。その結果、操作レバー13,14,15が操作されても作業機5、上部旋回体4及び下部走行体2が駆動されなくなる。換言すれば、油圧回路20の作動が禁止される。ただし、このときのパイロット元圧(Pc)の値(Pa)は、減圧弁37,38,40の出力に接続された油圧スイッチ41,…,41が作動可能な最低油圧(以下、油圧スイッチ41,…,41の「作動閾値」という)(Ps)よりも高い値であり、よって、操作レバー13,14,15に対して行われる各種操作は、油圧スイッチ41,…,41により検出されてコントローラ21に認識される。
【0037】
上述したステップS5及びS6でロックレバー43のロック位置に応答して油圧回路20の作動が禁止された場合にのみ、制御はステップS7へ進む。ステップS7で、コントローラ21は、第2のレバー操作判別21cにより、ポテンショメータ42からのブーム上げ操作信号に基づいて、特定のレバー操作、すなわちブーム上げ操作に関わるレバー操作、が行われているか否かを判別する(S7)。ステップS7において、その特定のレバー操作が行われていると判別された場合には、コントローラ21は、スタータ29に対し始動信号を送信してエンジン16を始動させる(S8)。このように特定のレバー操作に応答してエンジン16が再始動されるとき、上述したステップS6により既に油圧回路20の作動が禁止されている(Pc<Pt)ので、特定のレバー操作に応答して操作弁集合体18で対応する油路切換動作が行われることはない。したがって、エンジン再始動の際に油圧ショベル1が不意に動きだす虞がない。また、このとき、パイロット元圧(Pc)は油圧スイッチ41,…,41の作動閾値(Ps)よりは高い(Pc=Pa>Ps)ので、コントローラ21は、第1のレバー操作判別部21aにより、エンジン始動後における各種のレバー操作の有無を判別することができる。
【0038】
前記ステップS8にてエンジン16を再始動した後、コントローラ21は、第1のレバー操作判別部21aにより、油圧スイッチ41,…,41からの前記(1)〜(12)の操作信号の有無に基づいて、全ての操作レバー13,14,15,15がニュートラルの位置にある(油圧ショベル1を動かすためのレバー操作は何も行われていない)か否かを判別する(S9)。ステップS9において、いずれかの操作レバー13,14,15,15がニュートラルの位置にない(油圧ショベル1を動かすための何らかのレバー操作が行われている)ことが判別された場合には、コントローラ21は待機する。他方、ステップS9において、全ての操作レバー13,14,15,15がニュートラルの位置にあることが判別された場合には、コントローラ21は、ロックレバー操作位置判別部21dにより、リミットスイッチ44からのロック解除位置信号の入力の有無に基づいて、ロックレバー43がロック位置又はロック解除位置のいずれにあるかを判別する(S10)。ステップS10において、ロックレバー43がロック位置にあると判別された場合には、コントローラ21による制御はステップS9へ戻る。他方、ステップS10において、ロックレバー43がロック解除位置にあると判別された場合には、コントローラ21は、電磁比例圧力制御弁46に対して制御電流を出力して(S11)、パイロット元圧(Pc)を図4に示されるようなカーブで上昇させる。これにより、図4に示されるように、パイロット元圧(Pc)は、上記所定値(Pa)から操作弁集合体18の作動閾値(Pt)にまで急上昇し、しかる後、その作動閾値(Pt)より高い最大設定圧値(Pe)にまでゆっくり漸次に上昇する。なお、このパイロット元圧(Pc)の昇圧動作は、エンジン16の回転数が一定回転数以上で、かつパイロットポンプ33の吐出圧が必要十分なレベルまで立ち上がった状態で行われる。このようなパイロット元圧(Pc)の上昇に伴い、操作弁集合体18の状態は油路切換動作を行ない得る状態に移行する(つまり、油圧回路20の状態が作動可能な状態に移行する)。よって、操作レバー13,14,15,15が操作されると、油圧ショベル1(油圧作動部19)の動作が開始する。
【0039】
このように、エンジン再始動後は、全ての操作レバーがニュートラル位置にある(つまり、油圧ショベル1を動かすためのレバー操作は何も行われていない)場合にのみ、コントローラ21は、ロックレバー43のロック解除に応答して、パイロット元圧(Pc)を操作弁集合体18の作動閾値(Pt)よりも高い最大設定圧値(Pe)にまで昇圧して、油圧回路20を作動可能な状態に移行させる。従って、特定のレバー操作に応答してエンジン16が再始動する時に油圧ショベル1(油圧作動部19)が不意に動きだす虞はない。また、パイロット元圧(Pc)の前記作動閾値(Pt)から最大設定圧値(Pe)までの昇圧はゆっくり漸次に行われるので、ロック解除直後にどのようなレバー操作が行われても、油圧ショベル1(油圧作動部19)は低速に動作を開始することになり、動作開始時における急激な高速動作が回避される。
【0040】
〔第2の実施形態〕
図5には、本発明の第2の実施形態に係る油圧ショベルの駆動制御システムの全体的な概略構成が示されている。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一または同様の要素については同一参照符号を付して、それについての重複した説明を省略し、以下においては、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。油圧ショベルの基本構成は、図1を参照して既に説明したとおりである。
【0041】
本実施形態においては、操作部55、56が、作業機操作レバー13,14の各種レバー操作に対応する各種操作指令を、ポテンショメータ51,52,53,54により電気信号(操作信号)に変換して、コントローラ21に出力する。また、操作部59が、走行操作レバー15、15の各種レバー操作に対応する各種操作指令を、ポテンショメータ57、58により電気信号(操作信号)に変換して、コントローラ21に出力する。コントローラ21は、レバー操作判別部60を有し、これは、入力された各種の操作信号に基づいて、各種レバー操作が行われているか否かを判別する。コントローラ21に入力される操作信号の種類としては、例えば上述した(1)〜(12)の操作信号がある。
【0042】
また、操作弁集合体61が、油圧ポンプ17から吐出される作動圧油の油圧作動部19への供給を制御する。操作弁集合体61が、油圧作動部19のそれぞれの油圧アクチュエータ(走行用油圧モータ2a、旋回用油圧モータ3a、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12)に対応して設けられる複数の電磁・油圧パイロット操作式方向制御弁62の集合体である。各電磁・油圧パイロット操作式方向制御弁62は、比例電磁操作部62aと油圧パイロット操作部62bとを備える。上述したポテンショメータ51,52,53,54,57,58からの何れかの操作信号がコントローラ21に入力されたとき、コントローラ21は、その入力された操作信号に基づく操作用電流を、対応する方向制御弁62の比例電磁操作部62aに出力する。また、各操作弁62では、比例電磁操作部62aが、パイロットポンプ33から供給されるパイロット圧油をコントローラ21からの操作用電流に比例して調圧し、調圧されたパイロット圧油が油圧パイロット操作部62bに出力され、そして、その油圧パイロット操作部62bに出力されたるパイロット圧油に応じて、対応する油圧アクチュエータを制御するための所定の油路切換動作が行われる。
【0043】
次に、コントローラ21により行われるアイドリングストップ制御とエンジン再始動制御の処理手順について、図6のフローチャートを参照しつつ説明する。図6において、ステップR1〜R4がアイドリングストップ制御に相当し、ステップR5〜R11がエンジン再始動制御に相当する。
【0044】
図6に示すように、ステップR1で、コントローラ21は、前記(1)〜(12)の各種操作信号の有無に基づいて、エンジン16がアイドリング運転状態であるか否かを判断する。コントローラ21は、前記(1)〜(12)の各種操作信号のいずれかが入力されているときには、エンジン16がアイドリング運転状態にないと判断し、ステップR2でエンジン16の運転を継続する。一方、コントローラ21は、前記(1)〜(12)の各種操作信号のいずれもが入力されていないときには、エンジン16がアイドリング運転状態にあると判断する。
【0045】
前記ステップR1において、エンジン16がアイドリング運転状態に入ったとき、コントローラ21は、ステップR3で、タイマー21bにより所定時間(例えば数十秒程度)のカウントを開始して、以後、アイドリング運転状態が所定時間にわたり継続したたか否かを判断する。タイマー21bによるカウント値が前記所定時間を超えていない場合には、コントローラ21は、エンジン16の運転を継続する(R2)。一方、タイマー21bによるカウント値前記所定時間に達したとき、コントローラ21は、ステップR4で、ガバナ駆動モータ24に対しエンジン停止指令に対応するモータ駆動信号を送信し、エンジン16を停止させる。
【0046】
前記ステップR4にてエンジン16が停止された後、コントローラ21は、ロックレバー操作位置判別部21dにより、リミットスイッチ44からのロック解除位置信号の入力の有無に基づいて、ロックレバー43がロック位置又はロック解除位置のいずれにあるかを判別する(R5)。ステップR5において、ロックレバー43がロック解除位置にあると判別された場合には、コントローラ21は待機する。他方、ステップR5において、ロックレバー43がロック位置にあると判別された場合には、コントローラ21は、電磁比例圧力制御弁46に出力される制御電流の値をゼロにする(R6)。ステップR6により、パイロットポンプ33から電磁比例圧力制御弁46を通じて各電磁・油圧パイロット操作式方向制御弁62に供給されるパイロット圧油の圧力(以下、「パイロット元圧」という)(Pc)がゼロになり、よって、油圧回路20は油圧作動部19のいずれの油圧アクチュエータも駆動することができなくなる。
【0047】
その後、コントローラ21は、ポテンショメータ51,52,53,54,57,58からの操作信号の有無に基づいて、油圧ショベル1を動かすための各種レバー操作のうちのいずれかが行われているか否かを判別する(R7)。ステップR7において、いずれかのレバー操作が行われていると判別された場合には、コントローラ21は、スタータ29に対し始動信号を送信してエンジン16を始動させる(R8)。このように、アイドリングストップ制御によりエンジン16が自動的に停止した後、作業機操作レバー13,14又は走行操作レバー15、15に何らかの操作が行われると、エンジンが自動的に再始動される。しかし、このとき前述のステップR6により既に、パイロット元圧(Pc)がゼロに制御されて、操作弁集合体61の油路切換動作が行ない得ないようになっている。したがって、エンジン16が再始動しても、油圧ショベル1(油圧作動部19)が不意に動きだす虞がない。
【0048】
前記ステップR8にてエンジン16が再始動された後、コントローラ21は、ポテンショメータ51,52,53,54,57,58からの前記(1)〜(12)の操作信号の有無に基づいて、作業機操作レバー13,14及び走行操作レバー15、15の全てがニュートラル位置にある(つまり、油圧ショベル1を動かすためのレバー操作は何も行われていない)か否かを判別する(R9)。ステップR9において、操作レバー13,14,15、15の何れかがニュートラル位置にない(つまり、油圧ショベル1を動かすための何らかのレバー操作が行われている)と判別された場合、コントローラ21は待機する。このとき、上述したとおり、パイロット元圧(Pc)がゼロに制御されているので、如何なるレバー操作が行われても油圧ショベル1は静止したままである。ステップR9において、全ての操作レバー13,14,15、15がニュートラル位置にあることが判別された場合、コントローラ21は、リミットスイッチ44からのロック解除位置信号の入力の有無に基づいて、ロックレバー操作位置判別部21dにより、ロックレバー43がロック位置又はロック解除位置のいずれにあるかを判別する(R10)。ステップR10において、ロックレバー43がロック位置にあると判別された場合には、コントローラ21による制御はステップR9へ戻る。他方、ステップR10において、ロックレバー43がロック解除位置の状態にあると判別された場合には、コントローラ21は、パイロット元圧(Pc)が図7に示されるカーブに沿って上昇するよう、制御電流を電磁比例圧力制御弁46に対して出力する(R11)。これにより、図7に示すように、パイロット元圧(Pc)はゼロから、操作弁集合体18の油路切換動作が行われ得る最低油圧(以下、操作弁集合体18の「作動閾値」という)(Pt)にまで短時間で上昇し、しかる後その作動閾値(Pt)よりも高い最大設定圧値(Pe)にまでゆっくり漸増する。なお、このパイロット元圧の昇圧動作は、エンジン16の回転数が一定回転数以上で、かつパイロットポンプの吐出圧が必要十分に立ち上がった状態で行われる。このパイロット元圧(Pc)の上昇の結果、操作弁集合体61の油路切換動作が行われ得るようになり、よって、油圧ショベル1(油圧作動部19)が動くことができるようになる。
【0049】
このように、エンジン再始動後は、全ての操作レバー13,14,15、15がニュートラル位置操作にある(つまり、油圧ショベル1を動かすためのレバー操作が全く行われていない)場合にのみ、コントローラ21は、ロックレバー43のロック解除操作に応答して、油圧回路20を作動不能な状態から作動可能な状態へ移行させる。したがって、ロック解除操作により油圧回路20が作動可能状態になったとき、油圧ショベル1(油圧作動部19)が不意に動きだす虞がない。また、パイロット元圧(Pc)は前記作動閾値(Pt)から最大設定圧値(Pe)にまでゆっくり漸次に昇圧されるので、ロック解除直後にどのようなレバー操作が行われても、油圧ショベル1(油圧作動部19)は低速に動作を開始することになり、動作開始時における急激な高速動作が回避される。操作レバー13,14,15、15がどのように操作されても、油圧作動部19は低速で動作を開始し、動作開始時における急激な高速動作が回避される。
【0050】
なお、変形例として、前述の第1の実施形態において、図3のフローチャートに示されるステップS6とステップS7との間に、或いは、上述の第2の実施形態において、図6のフローチャートに示されるステップR6とステップR7との間に、オペレータが油圧ショベル1の警音器(図示せず)を鳴らしたか否かをチェックするステップを行ない、警音器が事前に鳴らされない限りエンジン16を再始動しないように制御してもよい。或いは、別法として、エンジン再始動前に自動的に警音器を鳴らすか又はその他の適当な警報方法を用いて、油圧ショベル1の外部の近くに居る人々や油圧ショベル1に搭乗しているオペレータに、これからエンジン再始動動作が行われることを自動的に通知するようにしてもよい。これらの変形例によれば、エンジン再起動の直前に油圧ショベル1の内外に警音又は警報を出力することで、油圧ショベル1の近くに居る人々又は油圧ショベル1に搭乗しているオペレータにエンジン再起動に備えて安全確保のための注意を喚起することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(17)と、前記エンジンにより駆動される油圧回路(20)と、前記油圧回路により駆動される油圧作動部(19)と、前記油圧作動部を動かすための操作指令信号を出力する操作装置(13,14,15)と、前記エンジン、前記油圧回路及び前記操作装置に接続され、前記エンジンがアイドリング運転状態にあるときに前記エンジンを停止させるアイドリングストップ制御と、前記アイドリングストップ制御により前記エンジンを停止させた後に前記エンジンを再始動するエンジン再始動制御とを行う制御装置(21)とを備えた作業車両において、
前記制御装置は、前記アイドリングストップ制御により前記エンジンを停止させた後に前記エンジン再始動制御を行う場合、
前記エンジンを再始動する前に前記油圧回路を作動不能な状態にし(S6,R6)、
前記油圧回路が作動不能な状態にあるとき、所定のトリガ信号を受けて前記エンジンを再始動し(S7,S8,R7,R8)、
前記エンジンを再始動した後、前記操作装置から前記操作指令信号が入力されていないときに、前記油圧回路を作動可能な状態に復帰させる(S9、S11,R9,R11)ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記油圧回路についてのロック指示信号とロック解除指示信号を出力するロック装置(43)を更に備え、
前記制御装置は、
前記アイドリングストップ制御により前記エンジンを停止させた後、前記エンジンを再始動する前に、前記ロック装置(43)からの前記ロック指示信号に応答して前記油圧回路を作動不能な状態にし(S5,S6,R5,R6)、
前記エンジンを再始動した後、前記操作装置から前記操作指令信号が入力されていないときに、前記ロック装置(43)からの前記ロック解除指示信号に応答して前記油圧回路の作動可能な状態に復帰させる(S9、S10,S11,R9,R10,R11)ことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記所定のトリガ信号が、前記操作装置からの所定の操作指令信号であることを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項4】
前記油圧回路を制御するためのパイロット圧油の圧力を制御するパイロット圧制御装置(46)を更に備え、
前記制御装置は、前記パイロット圧制御装置(46)を制御して、前記パイロット圧油の圧力を所定の作動閾値より下げることにより前記油圧回路を作動不能な状態にし、前記パイロット圧油の圧力を前記作動閾値より上げることにより前記油圧回路を作動可能な状態に復帰させることを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項5】
前記制御装置は、前記油圧回路を作動可能な状態に復帰させる場合、前記パイロット圧油の圧力を漸次に上昇させることを特徴とする請求項4記載の作業車両。
【請求項6】
警音又は警報を出力する警報装置を更に備え、
前記制御装置は、前記油圧回路が作動不能な状態にあるときに前記トリガ信号を受けた場合、前記警報装置から前記警音又は警報が出力された後に、前記エンジンを再始動することを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項7】
エンジン(17)と、前記エンジンにより駆動される油圧回路(20)と、前記油圧回路により駆動される油圧作動部(19)と、前記油圧作動部を動かすための操作指令信号を出力する操作装置(13,14,15)と備えた作業車両において、アイドリングストップ制御により前記エンジンを停止させた後に前記エンジンを再始動するための制御方法において、
前記エンジンを再始動する前に前記油圧回路を作動不能な状態にするステップ(S6,R6)と、
前記油圧回路が作動不能な状態にあるとき、所定のトリガ信号を受けて前記エンジンを再始動するステップ(S7,S8,R7,R8)と、
前記エンジンを再始動した後、前記操作装置から何の操作指令信号も入力されていないときに、前記油圧回路を作動可能な状態に復帰させるステップ(S9、S11,R9,R11)と
を有することを特徴とするエンジン再始動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/064170
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516644(P2005−516644)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019351
【国際出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】