説明

作業車両用走行装置

【課題】オペレータによる操向操作とは別途のアクセル操作を不要とし得る作業車両用走行装置を提供する。
【解決手段】この走行装置は、左右一対のクローラを駆動して走行する作業車両に用いられ、一対の走行レバー6の操作に応じて作動する一対の走行用切換弁20には、差動トランス22がそれぞれ付設されている。各差動トランス22は、各走行用切換弁20の各スプールの作動量を検出する。そして、各スプールの作動量の検出値はコントローラ24に入力される。コントローラ24は、検出された各スプールの作動量に応じて、油圧ポンプを駆動するエンジン32のアクセル開度を制御する指令をスロットルセンサ30に送り、エンジンのアクセル開度を制御するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のクローラを駆動して走行する作業車両に係り、特に、この種の作業車両の走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車両としては、例えばクローラクレーンがある(例えば特許文献1参照)。
クローラクレーンは、その機体の下部に左右一対のクローラを有し、また、これら一対のクローラをそれぞれ駆動する一対の油圧モータが機体側に装備されている。これら一対の油圧モータそれぞれは、油圧ポンプからの圧油を給排する一対の走行用切換弁によってその駆動が制御される。そして、各走行用切換弁は、図4に例示する走行用切換弁20のように、運転席(不図示)からオペレータが操作する走行レバー6の操作量に応じて各スプールの作動量が決定されるようになっている。また、前記油圧ポンプは、エンジン(内燃機関)によって駆動され、このエンジンの回転数は、前記走行レバーとは別個に設けられたアクセル機構のアクセルペダルやアクセルレバーをオペレータが操作することによって上げ下げされるようになっている。
【0003】
これにより、この種の作業車両は、オペレータが一対の走行レバーを操作することにより、油圧ポンプからの圧油が一対の油圧モータに適宜給排されて左右一対のクローラで走行可能であり、また、オペレータがアクセルペダルやアクセルレバーを操作することにより、オペレータの意図した速度で自在に走行することができる。
【特許文献1】特開平11−180677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したクローラクレーンは、操向操作のための一対の走行レバーと、走行速度を上げるためのアクセル機構とが別個に操作されるようになっている。
つまり、この種の作業車両を操向するためには、一対の走行レバーで各走行用切換弁を開閉し、その操作量に応じて走行用の左右の油圧モータに供給する圧油の流量を制御し、これにより、それぞれの油圧モータの回転数を変化させ、左右のクローラを駆動させてオペレータの意図した方向にクローラを操作している。一方、走行速度を上げるためには、手動もしくは足踏み式のアクセル機構をオペレータが操作することによってエンジンの回転数を上げ、これに連動して油圧ポンプの回転数を上げて圧油の吐出流量を多くし、これにより、走行用の油圧モータへの圧油の供給量を増やして走行速度を上げている。このように、従来は、走行速度を変化させるためには、走行レバーとは別途にアクセル操作を行うことが余儀なくされている。
【0005】
特に、例えばアクセル機構が手動式の場合には、一対の走行レバーでの操向操作と同時に走行速度を変える操作は困難である。そのため、この場合、走行時にアクセルを予め全開とし、エンジンをその状態に保ったままで走行レバーを操作して走行させていた。しかし、エンジン回転数を高くしたまま、左右どちらかに旋回させようとすると、車両内側のクローラと外側のクローラとの駆動回転数に大きな差が生じることで、急激な操向操作を行ったように機体が暴れることも起き得るので、スムーズに走行させることが困難となる。そのため、操向方向を変えるときは、一旦、エンジンの回転数を落とす必要があり、走行速度を調節する操作が煩わしいものとなる。また、エンジンを全開にして走行しているので、短時間ではあるものの、何ら走行のための操作がされていないときでもエンジンだけが全開で回ってしまっているという状態も生じる。そのため、燃費も悪くなり、周囲への騒音や排気ガス等の環境上の面からも問題がある。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、オペレータによる操向操作とは別途のアクセル操作を不要とし得る作業車両用走行装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、機体下部に装備された左右一対のクローラと、該一対のクローラをそれぞれ駆動する一対の油圧モータと、該一対の油圧モータそれぞれを、一対の走行レバーの操作に応じて駆動させるように油圧ポンプからの圧油を給排する一対の走行用切換弁と、を備える作業車両に用いられる走行装置であって、前記一対の走行用切換弁の各スプールの作動量を検出する作動量検出手段と、該作動量検出手段で検出された各スプールの作動量に応じて、前記油圧ポンプを駆動するエンジンのアクセル開度を制御するアクセル開度制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明に係る作業車両用走行装置によれば、作動量検出手段およびアクセル開度制御手段を備えており、作動量検出手段は、一対の走行用切換弁のスプールの作動量を検出するので、一対の走行レバー操作の有無およびその操作量の大きさの程度を検出することができる。そして、アクセル開度制御手段は、作動量検出手段で検出されたスプールの作動量に応じて、油圧ポンプを駆動するエンジンのアクセル開度を制御するので、一対の走行レバー操作の有無およびその操作量の大きさの程度に連動させて、エンジンのアクセル開度を変えることができる。したがって、オペレータによる操向操作とは別途のアクセル操作を不要とすることができる。
【0008】
ここで、本発明に係る作業車両用走行装置において、前記アクセル開度制御手段について、前記一対の走行用切換弁の各スプールの作動方向が同じ方向のときに、且つその作動量がともに一定値を超えたときに、その作動量が大きいときには小さいときに比べて前記エンジンのアクセル開度を大きくすることは好ましい。このような構成であれば、アクセル開度制御手段は、スプールの作動量がともに一定値を超えて大きいときには小さいときに比べてエンジンのアクセル開度を大きくするので、前進および後退時において、一対の走行レバー操作の大きさに合わせて、エンジン回転数をコントロールし得るので、操向操作量が大きいときには小さいときに比べて走行速度を大きくする上で好適である。
【0009】
さらに、一対の走行用切替弁の互いのスプールの作動量が一定量乖離した場合には、エンジンのアクセル開度を制限するように制御すれば、急激な操向操作を行ったように機体が暴れることを防止する上でより好適である。
また、本発明に係る作業車両用走行装置において、前記アクセル開度制御手段について、一方のスプール作動量のみ一定値を超えた場合や、前記一対の走行用切換弁の各スプールの作動方向が異なる方向の場合に、ともに一定値を超えていても、また、どちらか一方のみ作動量が一定値を超えたときでも、前記エンジンのアクセル開度が制限されるように制御することは好ましい。このような構成であれば、操向方向を変えるときは、相互のスプールの作動量に応じてエンジンのアクセル開度が制限されるように制御されるので、急激な操向操作を行ったように機体が暴れることを防止する上で好適である。
【発明の効果】
【0010】
上述のように、本発明に係る作業車両用走行装置によれば、オペレータによる操向操作とは別途のアクセル操作を不要とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、本実施形態は、左右一対のクローラを駆動して走行する作業車両として、小型のクローラクレーン(ミニクローラクレーン)に、本発明に係る作業車両用走行装置を適用した例である。
図1に示すように、このクローラクレーン1は、機体3の下部の左右に一対のクローラ2を有し、機体3側には、一対のクローラ2をそれぞれ駆動する一対の油圧モータ(不図示)が装備されている。また、機体3上には、アウトリガ5、クレーン4、および運転席10を備えている。機体3上のクレーン4は、機体3に対して旋回自在なコラム7と、そのコラム7に起伏自在に枢支された伸縮ブーム8とを有し、伸縮ブーム8の先端にはフック9が設けられている。また、運転席10の正面には、一対の走行レバー6(同図では一方のみを図示)が設けられている。なお、この運転席10には、クレーンを「走行モード」および「クレーンモード」のいずれかに切り換えるモード切換スイッチ(不図示)が装備されており、相互が択一的に選択されるようになっている。
【0012】
そして、図2に示すように、上記一対の走行レバー6(図2では一方のみを図示)には、各走行レバー6に対応する一対の走行用切換弁20(同図では一方のみを図示)がリンク6aを介して連結されている。各走行レバー6に対応する走行用切換弁20は、各走行レバー6を中立位置M、前進位置Fまたは後退位置Rの3位置に操作すると、内部のスプール(不図示)が切り換えられて、対応する各油圧モータを駆動させるように油圧ポンプからの圧油を給排する。
【0013】
つまり、各走行レバー6を操作して各走行用切換弁20を前進位置へ切り換えることにより、各スプールの作動量に応じて走行用の各油圧モータが正転して各クローラ2が前進回転する。また、各走行用切換弁20を後退位置へ切り換えることにより、各スプールの作動量に応じて走行用の各油圧モータが逆転して各クローラ2が後退回転する。これにより、オペレータは、運転席10の一対の走行レバー6を適宜操作してクローラクレーン1を必要な作業位置まで走行させることが可能になっている。
【0014】
ここで、上記一対の走行用切換弁20には、図2に示すように、差動トランス22がそれぞれ付設されている。この差動トランス22は、一対の走行用切換弁20の各スプールの作動量を検出する作動量検出手段であり、各スプールの作動量の検出値はコントローラ24に入力されるようになっている。そして、このコントローラ24では、クレーンが「走行モード」のときに、所定の走行制御処理が実行されて、上記差動トランス22で検出された各スプールの作動量に応じて、油圧ポンプを駆動するエンジン32のアクセル開度を、所望の状態に制御する指令をスロットルセンサ30に送るようになっている。なお、上記走行制御処理では、操向操作を微速で実施したい場合に、運転席10に設けられた微速操作用のスイッチ(不図示)を操作することによって、「微速モード」を選択できるようになっている。そして、この「微速モード」においては、一対の走行レバー6の操作に関わらず、エンジン32の回転数を常にアイドリング回転数に保つようになっている。
【0015】
詳しくは、コントローラ24は、以下不図示の、所定の制御プログラムに基づいて演算およびシステム全体を制御するCPUと、所定領域にあらかじめCPUの制御プログラム等を格納しているROMと、このROMから読み出したデータやCPUの演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAMと、上記差動トランス22およびスロットルセンサ30を含む外部装置に対してデータの入出力を媒介するインターフェースとを含んで構成されており、これらは、データを転送するための信号線であるバスで相互にかつデータ授受可能に接続されている。
そして、CPUは、ROMの所定領域に格納されている所定のプログラムを起動させ、図3のフローチャートに示す走行制御処理を実行し、そのプログラムに従って上記スロットルセンサ30を制御するようになっている。
【0016】
次に、上記走行制御処理の一例について説明する。なお、図3は、この走行制御処理の流れを示すフローチャートである。
この走行制御処理は、CPUにおいて実行されると、図3に示すようにステップS1に移行し、クレーンが「走行モード」および「クレーンモード」のいずれであるかを判定する。そして、「走行モード」が選択されていれば(Yes)ステップS2に移行し、「クレーンモード」が選択されていれば(No)処理を戻す。ステップS2では一対の走行レバー6が操作されているか否かを差動トランス22からの信号に基づいて監視し、操作されていれば(Yes)ステップS3に移行し、そうでなければ(No)処理を戻す。
【0017】
ステップS3では「微速モード」か「通常モード」かを判定する。そして、「微速モード」が選択されていれば(Yes)ステップS4に移行する。ステップS4では、アイドリング制御処理が実行されて、一対の走行レバー6の操作に関わらず、エンジン32の回転数を常にアイドリング回転数に保つようする指令をスロットルセンサ30に送る。一方、「通常モード」が選択されていれば(No)ステップS5に移行する。
ステップS5では、一対の走行用切換弁20のどちらか一方のスプールの作動量が、全操作量のうち、予め設定された小さい作動量の範囲に属しているかを、差動トランス22からの信号に基づいて監視する。どちらか一方のスプールがこの範囲に属していればステップS4に移行し、属していなければステップS6に移行する。
【0018】
具体的に図5において説明する。図5の右側のグラフ(図5(b))は、右走行レバー操作時の操作量による右走行用スプール作動量(%)、エンジン回転数(rpm)、アクセル開度(%)の相関関係を表している。また、左側のグラフ(図5(a))では、左走行レバー操作時の操作量による相関関係を表している。なお、左右のグラフにおいては、各スプール作動量の作動率による領域を、説明の便宜上、以下のように呼ぶ。
スプール作動量が40%〜100%のとき、右を「A領域」、左を「α領域」
スプール作動量が20%〜40%、および−20%〜−40%のとき、右を「C領域」、左を「γ領域」
スプール作動量が±20%のとき、右を「D領域」、左を「δ領域」
スプール作動量が−100%〜−40%のとき、右を「B領域」、左を「β領域」
【0019】
なお、走行レバーの操作量とスプールの作動量は相関関係にあり、レバー操作量がそのままスプール作動量となる。また、走行レバーは、車両前進時がプラス(+)、後退時がマイナス(−)表記で表し、未操作中立時を基準(0(零))とする。エンジン回転数は、例として、アイドリング時を500(rpm)、走行レバーを最大に倒伏させた最大回転数を2000(rpm)と仮定する。これらの一覧を図6にまとめる。
【0020】
ステップS5では、両方またはどちらか一方の走行レバーを僅かしか操作していない場合、エンジンは常にアイドリング状態であり、回転数上昇は行わない。
これは、例えば右側の走行レバーを僅かしか倒さない、即ち、スプール作動量が図5におけるD領域の場合、相対する左側の作動がスプール作動量が小さいδ領域のときは、車両の低速走行においては取り扱い易く、また、左側の作動が大きいとき、クローラが仮にゴム製のクローラであれば、左右の回転差が大きいことによる右側ゴムクローラの摩耗減りが抑えられる。
ステップS6では、一対の走行用切換弁20のどちらか一方のスプール作動量が、予め設定された中間域、つまりC領域またはγ領域の範囲に属しているか否かを、差動トランス22からの信号に基づき監視する。どちらか一方のスプールがこの範囲に属していれば、ステップS7に移行する。属していなければステップS8に移行する。
【0021】
ステップS7では、アクセル開度を中レベル程度の回転数(例えば図5における1000rpm)に保持するように行う指令をスロットルセンサ30に出力する、という制御処理を行う。ステップS8では、各スプールの作動量が、予め設定された中間域を超えて共に大きいと、差動トランス22からの信号がコントローラ24に入力されたとき、この信号が互いのスプール作動方向が同じ方向か否かを判断し、互いのスプール作動方向が同じ方向(つまり、右がA領域で左がα領域、または右がB領域で左がβ領域、の範囲に属している場合)であれば、ステップS9に移行し、異なる方向(つまり、右がA領域で左がβ領域、または右がB領域で左がα領域、の範囲に属している場合)であればステップS7に移行する。
【0022】
ステップS9では、互いのスプール作動方向が同じ方向で、且つ共に中間域、つまりD領域、δ領域以上であることを前提として差動トランス22からの信号に基づき、互いのスプール作動量の差を求める。その差が、予め設定されている乖離率(ここでは、例えばその差を30%とする)以内であればステップS10に移行する。その差が乖離率から外れた場合、ステップS11に移行する。
【0023】
ステップS10では、コントローラ24において第一アクセル制御処理を実行して処理を戻す。この第一アクセル制御処理では、互いのスプール作動量を比較し、作動量の大きい方を選択し、そのスプール作動量に基づいてアクセル開度を算出し、スロットルセンサ30に出力する処理を行う。一方、ステップS11では、第二アクセル制御処理を実行して処理を戻す。この第二アクセル制御処理では、互いのスプール作動量を比較し、作動量の小さい方を選択し、そのスプール作動量に基づいてアクセル開度を算出し、スロットルセンサ30に出力する処理を行う。
ここで、上記課題を解決するための手段に記載の「アクセル開度制御手段」は、コントローラ24および上述した走行制御処理が対応する。
【0024】
次に、このクローラクレーンの走行装置の作用・効果について説明する。
上述のように、このクローラクレーンの走行装置は、一対の走行用切換弁20の各スプールの作動方向および作動量を、差動トランス22で検出しているので、一対の走行レバー6での操向操作の有無およびその操作量の大きさの程度を検出することができる。そして、コントローラ24は、差動トランス22で検出されたスプールの作動量および作動方向に応じて、油圧ポンプを駆動するエンジン32のアクセル開度を制御する指令をスロットルセンサ30に送り、アクセル開度を制御することができるので、一対の走行レバー6での操向操作の有無およびその操作量の大きさの程度に連動させて、エンジン32のアクセル開度を変えることができる。したがって、オペレータによる操向操作とは別途のアクセル操作を不要とすることができる。
【0025】
特に、このコントローラ24での走行制御処理によれば、第一アクセル制御処理、第二アクセル制御処理とも、各スプール作動量がコントローラ24に予め設定された中間域を超えたときのアクセル開度については、スプール作動量に合わせて比例した開度がコントローラ24によって演算出力されるので、高速域での車両の操向コントロールは常に行い易く安全であり且つ燃費等の無駄もない。
【0026】
また、各スプール作動量が、コントローラ24に予め設定された中間域以上のときでも、相互のスプール作動量の乖離率を監視することで、スプール作動量が大きく離れてしまったときは、アクセル開度をそれまでのスプール作動量の大きい方から小さい方へ移行することで自動的にアクセル開度を抑え、クローラの回転左右差の開きによって発生する車両のばたつきを抑えることが可能である。
【0027】
また、どちらか一方のスプール作動量が中間域のときは、もう片方の走行レバーがたとえ最大速まで操作されていたとしても、常にアクセル開度は中レベルに抑えられているため、安全である。そして、どちらか一方のスプール作動量が中間域未満(絶対値)と小さければ、もう一方の走行レバーがたとえ最大速まで操作されていたとしても、常にエンジン回転数はアイドリング状態に抑えられているので、車両の初速時は常に微速であるため、取り扱い易さや無駄なエンジンの高回転をなくし、燃費向上に貢献できる。
【0028】
さらに、このコントローラ24での走行制御処理によれば、「微速モード」が選択されていれば、一対の走行レバー6の操作に関わらず、エンジン32の回転数を常にアイドリング回転数に保つようする指令をスロットルセンサ30に送るので(アイドリング制御処理)、操向操作を微速で実施したい場合に好適である。
以上説明したように、このクローラクレーン1の走行装置によれば、オペレータによる操向操作とは別途のアクセル操作を不要とすることができる。
【0029】
なお、本発明に係る作業車両用走行装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、作業車両として、小型のクローラクレーン(ミニクローラクレーン)に、本発明に係る作業車両用走行装置を適用した例で説明したが、これに限定されず、左右一対のクローラを駆動して走行する作業車両であれば、種々の作業車両に、本発明に係る作業車両用走行装置を適用することができる。
【0030】
また、例えば上記実施形態では、コントローラ24での走行制御処理において、第一アクセル制御処理、第二アクセル制御処理、アクセル開度中間域制御処理およびアイドリング制御処理を含む例で説明したが、これに限定されず、一対のスプールの作動量に応じて、油圧ポンプを駆動するエンジンのアクセル開度を制御する処理であれば、種々の処理を採用することができる。しかし、一対の走行用切換弁の各スプールの作動量に応じた走行状態に応じて、つまり、前進、後退および左右への操向状態に応じて、さらには特定の微速運転を行いたいような場合に対し、より好適にエンジン32の回転数を制御する上では、上記実施形態に例示したように、第一アクセル制御処理、第二アクセル制御処理、アクセル開度中間域制御処理およびアイドリング制御処理を適宜含む構成とすることは好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る作業車両用走行装置を備える作業車両の一実施形態であるクローラクレーンを説明する図である。
【図2】本発明に係る作業車両用走行装置の一実施形態の要部を説明する図である。
【図3】本発明に係る作業車両用走行装置のコントローラで実行される走行制御処理のフローチャートである。
【図4】従来の作業車両用走行装置の一例の要部を説明する図である。
【図5】本発明に係る作業車両用走行装置における、左右のスプール作動量、アクセル開度およびエンジン回転数の関係を説明する図である。
【図6】本発明に係る作業車両用走行装置における、左右のスプール作動量に応じた所定の制御を説明する図である。
【符号の説明】
【0032】
1 クローラクレーン(作業車両)
2 クローラ
3 機体
4 クレーン
5 アウトリガ
6 走行レバー
7 コラム
8 伸縮ブーム
9 フック
10 運転席
20 走行用切換弁
22 差動トランス(作動量検出手段)
24 コントローラ(アクセル開度制御手段)
30 スロットルセンサ
32 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体下部に装備された左右一対のクローラと、該一対のクローラをそれぞれ駆動する一対の油圧モータと、該一対の油圧モータそれぞれを、一対の走行レバーの操作に応じて駆動させるように油圧ポンプからの圧油を給排する一対の走行用切換弁と、を備える作業車両に用いられる走行装置であって、
前記一対の走行用切換弁の各スプールの作動量を検出する作動量検出手段と、該作動量検出手段で検出された各スプールの作動量に応じて、前記油圧ポンプを駆動するエンジンのアクセル開度を制御するアクセル開度制御手段とを備えていることを特徴とする作業車両用走行装置。
【請求項2】
前記アクセル開度制御手段は、前記一対の走行用切換弁の少なくとも一方のスプールの作動量が予め設定された小さい作動量の範囲内のときには、前記エンジンのアクセル開度をアイドリング状態に制限するように制御することを特徴とする請求項1に記載の作業車両用走行装置。
【請求項3】
前記アクセル開度制御手段は、前記一対の走行用切換弁の各スプールの作動量がともに予め設定された小さい作動量の範囲を超え且つ一方のスプールの作動量のみが予め設定された中間域作動量の範囲内のときには、前記エンジンのアクセル開度を一定値に保持するように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両用走行装置。
【請求項4】
前記アクセル開度制御手段は、前記一対の走行用切換弁の一方のスプールの作動量のみが予め設定された中間域作動量を超え且つ前記一対の走行用切換弁の各スプールの作動方向が異なる方向のときには、前記エンジンのアクセル開度が制限されるように制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業車両用走行装置。
【請求項5】
前記アクセル開度制御手段は、前記一対の走行用切換弁の各スプールの作動方向が同じ方向のときに且つその作動量がともに前記中間域作動量を超えたときに、前記エンジンのアクセル開度を大きくすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の作業車両用走行装置。
【請求項6】
前記アクセル開度制御手段は、前記一対の走行用切換弁の各スプールの作動方向が同じ方向のときに且つその作動量がともに前記中間域作動量を超えたときに、前記作動量検出手段からの互いのスプールの作動量の差を演算することを特徴とする請求項1または5に記載の作業車両用走行装置。
【請求項7】
前記アクセル開度制御手段は、前記作動量検出手段からの互いのスプールの作動量の差が予め設定した乖離率以内のときは、その作動量の大きい方を前記エンジンのアクセル開度として選択することを特徴とする請求項1、5または6に記載の作業車両用走行装置。
【請求項8】
前記アクセル開度制御手段は、前記作動量検出手段からの互いのスプールの作動量の差が予め設定した乖離率から外れたときは、その作動量の小さい方を前記エンジンのアクセル開度として選択することを特徴とする請求項1、5または6に記載の作業車両用走行装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−7497(P2010−7497A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164985(P2008−164985)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(506002823)古河ユニック株式会社 (54)
【Fターム(参考)】