説明

作業車両

【課題】簡易な構造によりサイドカバーとタイヤとの干渉を抑えることができる作業車両を提供する。
【解決手段】作業車両において、車両本体2の側面には開口が設けられている。タイヤ4bは、車両本体2の側方に配置される。サイドカバー15は、車両本体2の側面において開口を開閉可能に設けられ、閉状態において下端部の少なくとも一部がタイヤ4bの側方に配置される。第1後リンク部材22と第2リンク部材23とは、サイドカバー15の開動作のうち初期の第1動作において、第1支点と第2支点とを通る第1仮想線A1と、第3支点と第4支点を通る第2仮想線A2との交点P1が、サイドカバー15の外側に位置するように、サイドカバー15を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両には、車両本体の側面に開口が設けられ、この開口を開閉可能なサイドカバーが設けられるものがある。このような作業車両では、サイドカバーの上端部がヒンジにより車両本体に接続されており、サイドカバーは上端部を通る回転軸を中心に回動することにより車両本体の開口を開閉することができる。
【0003】
一方、上記のような作業車両では、サイドカバーが開かれる際、サイドカバーの下端部が側方に大きく突出するように移動する。このため、サイドカバーの側方にタイヤが位置している場合、タイヤがサイドカバーに干渉する恐れがある。このため、従来の作業車両では、タイヤがサイドカバーに干渉しないように、サイドカバーの一部を切り欠いた形状としている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−23508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにサイドカバーの一部に切り欠きが設けられる場合、切り欠きの形状に合致する側壁部材が車両本体の側面に設けられる。開口のうち切り欠きに相当する部分を閉じるためである。しかし、この側壁部材によって開口が狭められる結果、作業者の作業性が低下する恐れがある。
【0005】
上記のような作業性の低下は、側壁部材がサイドカバーとは別に開閉可能に設けられることにより解決可能である。しかし、この場合、サイドカバーを開閉するための構造とは別に、側壁部材を開閉するための構造が別途、必要となり、製造コストが増大してしまう。
【0006】
本発明の課題は、簡易な構造によりサイドカバーとタイヤとの干渉を抑えることができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る作業車両は、車両本体と、タイヤと、サイドカバーと、第1リンク部材と、第2リンク部材とを備える。車両本体の側面には開口が設けられている。タイヤは、車両本体の側方に配置される。サイドカバーは、車両本体の側面において開口を開閉可能に設けられ、閉状態において下端部の少なくとも一部がタイヤの側方に配置される。また、サイドカバーは、下端部が閉状態における位置から上方且つ外方に移動することにより開口を開く。第1リンク部材は、車両本体に回動可能に取り付けられる第1支点と、サイドカバーに回動可能に取り付けられる第2支点とを有する。第2リンク部材は、車両本体に回動可能に取り付けられる第3支点と、サイドカバーに回動可能に取り付けられる第4支点とを有する。そして、第1リンク部材と第2リンク部材とは、サイドカバーの開動作のうち初期の第1動作において、第1支点と第2支点とを通る第1仮想線と、第3支点と第4支点を通る第2仮想線との交点が、サイドカバーの外側に位置するように、サイドカバーを支持する。
【0008】
この作業車両では、サイドカバーは、第1動作において、従来のヒンジ構造が採用された場合よりも外側への突出を抑えながら上方に移動する。このため、サイドカバーの下端部はタイヤを避けるように移動することができる。これにより、この作業車両では、簡易な構造によりサイドカバーとタイヤとの干渉を抑えることができる。
【0009】
第2発明に係る作業車両は、第1発明の作業車両であって、第1リンク部材と第2リンク部材とは、サイドカバーの開動作のうち第1動作の後の第2動作において、第1仮想線と第2仮想線との交点がサイドカバーの内側に位置するようにサイドカバーを支持する。
【0010】
この作業車両では、第2動作において、サイドカバーの下端部は、第1動作よりも外側に大きく突出しながら上方に移動する。これにより、サイドカバー全体を過度に上昇させずに、サイドカバーを開くことができる。
【0011】
第3発明に係る作業車両は、第1発明または第2発明の作業車両であって、サイドカバーが閉状態である場合、第1仮想線と第2仮想線との交点はサイドカバーの下端部と同じ高さに位置する。
【0012】
この作業車両では、サイドカバーが開かれる際に、サイドカバーの下端部が閉状態の位置から車両本体の内側に移動することを抑えることができる。これにより、サイドカバーの下端部が車両本体と干渉することを抑えることができる。
【0013】
第4発明に係る作業車両は、車両本体と、タイヤと、サイドカバーと、支持構造とを備える。車両本体の側面には開口が設けられている。タイヤは、車両本体の側方に配置される。サイドカバーは、車両本体の側面において開口を開閉可能に設けられ、閉状態において下端部の少なくとも一部がタイヤの側方に配置される。また、サイドカバーは、下端部が閉状態における位置から上方且つ外方に移動することにより開口を開く。支持構造は、サイドカバーと車両本体とに取り付けられ、サイドカバーを開閉動作可能に支持する。そして、サイドカバーの開動作のうち少なくとも第1動作において、サイドカバーの下端部の軌跡は、上側且つ外側ほど軌跡の接線の傾きが小さくなるように湾曲している。
【0014】
この作業車両では、第1動作において、従来のヒンジ構造が採用された場合よりも、外側への突出を抑えながら上方に移動する。このため、サイドカバーの下端部はタイヤを避けるように移動することができる。これにより、この作業車両では、簡易な構造によりサイドカバーとタイヤとの干渉を抑えることができる。
【0015】
第5発明に係る作業車両は、第4発明の作業車両であって、サイドカバーの開動作のうち第1動作の後の第2動作において、サイドカバーの下端部は、上側且つ外側ほど接線の傾きが大きくなるように湾曲した軌跡を通るように移動する。
【0016】
この作業車両では、第2動作において、サイドカバーの下端部は、第1動作よりも外側に大きく突出しながら上方に移動する。これにより、サイドカバー全体を過度に上昇させずに、サイドカバーを開くことができる。
【0017】
第6発明に係る作業車両は、第1発明から第5発明のいずれかの作業車両であって、サイドカバーの上端部は、全開状態において車両本体の上方に乗り上げた状態となる。
【0018】
この作業車両では、全開状態において、外側へのサイドカバーの突出量を抑えることができる。
【0019】
第7発明に係る作業車両は、第1発明から第6発明のいずれかの作業車両であって、ストラップと、ガイド部材とをさらに備える。ストラップは、車両本体の開口の上縁部から吊り下げられ、開口の上縁部から開口の下縁部までの長さ以下の全長を有する。ガイド部材は、サイドカバーの内面に設けられ、ストラップが挿通される孔を有する。
【0020】
この作業車両では、サイドカバーが開かれると、ストラップは、車両本体の開口の上縁部からガイド部材を通り、ガイド部材から下方に吊り下げられた状態となる。この状態において、作業者は、ストラップおよびガイド部材を介してサイドカバーを下方に引き下ろすことができる。これにより、作業者は容易にサイドカバーを閉じることができる。また、ストラップの全長は開口の上縁部から開口の下縁部までの長さ以下であるため、サイドカバーを閉じる際に、ストラップがサイドカバーと開口の縁部との間に挟まれることが防止される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る作業車両では、サイドカバーの開動作のうち第1動作において、従来のヒンジ構造が採用された場合よりも、外側への突出を抑えながら上方に移動する。このため、サイドカバーの下端部はタイヤを避けるように移動することができる。これにより、この作業車両では、簡易な構造によりサイドカバーとタイヤとの干渉を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係るホイールローダ1を図1に示す。このホイールローダ1は、タイヤ4a,4bが回転駆動されることにより自走可能である。また、ホイールローダ1は、作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。なお、図1は、ホイールローダ1の側面図である。
【0023】
<全体構造>
このホイールローダ1は、車両本体2、作業機3、タイヤ4a,4bを備えている。
【0024】
車両本体2の前部には、作業機3および一対のフロントタイヤ4aが取り付けられている。作業機3は、油圧ポンプ(図示せず)からの圧油によって駆動される装置であり、車両本体2の前部に装着されたリフトアーム6と、リフトアーム6の先端に取り付けられたバケット7と、これらを駆動する作業機シリンダ8とを有する。
【0025】
車両本体2の中央にはキャブ5が載置されている。キャブ5の内部には、オペレータが着座するシートや各種の操作装置が設けられている。
【0026】
車両本体2の後部は、タンク10、エンジンフード11、背面グリル12、車体フレーム13などによって構成されている。また、車両本体2の後部の内部には、図示しないエンジンやラジエータなどを収納する動力室が設けられている。
【0027】
タンク10は、キャブ5の後方に配置されており、作業機3を駆動するための作動油を内部に貯留する。
【0028】
エンジンフード11は、タンク10の後方に配置されており、動力室の上方および両側方を覆う部材である。エンジンフード11の上面からは、エアクリーナー17や排気管18が上方へ突出している。また、図2に示すように、エンジンフード11の両側面には、内部の動力室に連通する開口14が設けられている。なお、図2においては、左側面の開口14のみ図示されているが、右側面にも同様の開口が設けられている。また、図2および図3に示すように、エンジンフード11の両側面には、サイドカバー15が設けられている。サイドカバー15は、車両本体2の側面において開口14を開閉可能に設けられている。サイドカバー15は、下端部が閉状態における位置から上方且つ外方にはね上げられることによって開かれる(図3において二点鎖線で示すサイドカバー15’,15”参照)。なお、サイドカバー15の表面は、後側ほど車体の幅方向における外側に広がった形状を有している(図6参照)。図3において、サイドカバー15”は、全開状態におけるサイドカバー15を示している。サイドカバー15’は、閉状態と全開状態との間の中間状態におけるサイドカバー15を示している。サイドカバー15を開閉動作させるための支持構造については後に詳細に説明する。なお、図2および図3においては、理解の容易のために、車両本体2のうちタンク10より前側の部分を省略して記載している。
【0029】
図1に示すように、背面グリル12は、エンジンフード11の後方に設けられており、動力室の後方を覆う部材である。
【0030】
車体フレーム13は、タンク10、エンジンフード11、背面グリル12などを支持しており、動力室の下方を覆っている。車体フレーム13の両側方には、リアタイヤ4bがそれぞれ設けられている。
【0031】
なお、車体フレーム13には、図示しないオシレート機構が設けられている。オシレート機構は、ホイールローダ1が車幅方向に勾配のある路面に位置する場合において、車両本体2を水平に保つための機構である。すなわち、オシレート機構は、一対のタイヤ4bを互いに連結する車軸を車幅方向に対して傾斜させることにより、勾配のある路面上において車両本体2を水平に維持することができる。なお、図3において、二点鎖線で示すタイヤ4b’は、オシレート状態のタイヤ4bを示している。
【0032】
<サイドカバー15の支持構造>
サイドカバー15は、図4〜図6に示す支持構造21によって支持されている。図4〜図6は、それぞれサイドカバー15が閉状態である場合の支持構造21を示す斜視図、側面図、平面図である。なお、図4〜図6では、理解の容易のために、構造の一部を省略して記載している。支持構造21は、サイドカバー15と車両本体2とに取り付けられており、サイドカバー15を開閉動作可能に支持する。支持構造21は、第1後リンク部材22と、第1前リンク部材28と、第2リンク部材23とを有する。第1後リンク部材22は、エンジンフード11内に配置されたフレーム部材19に取り付けられている。第2リンク部材23は、フレーム部材19のうち第1後リンク部材22が取り付けられた面の反対側の面に取り付けられている。具体的には、第1後リンク部材22は、フレーム部材19の後面に取り付けられており、第2リンク部材23は、フレーム部材19の前面に取り付けられている。第1前リンク部材28は、タンク10の後面にブラケット35を介して取り付けられている。
【0033】
支持構造21の詳細な構造を示す拡大図を図7および図8に示す。図7は閉状態におけるサイドカバー15および支持構造21を示している。図8は全開状態におけるサイドカバー15および支持構造21を示している。なお、図7,8においては、第1前リンク部材28を省略しているが、第1前リンク部材28は、第1後リンク部材22と同様の構造を有しており、第1後リンク部材22と同様に動作する。また、図7,8においては、理解の容易のためにフレーム部材19を省略している。
【0034】
第1後リンク部材22は、第1支点24と第2支点25とを有する。第1支点24は、第1後リンク部材22の一端に設けられており、第2支点25は、第1後リンク部材22の他端に設けられている。第1支点24は、車両本体2の上部に回動可能に取り付けられている。第2支点25は、サイドカバー15の内面に回動可能に取り付けられている。
【0035】
第2リンク部材23は、第3支点26と第4支点27とを有する。第3支点26は、第2リンク部材23の一端に設けられており、第4支点27は、第2リンク部材23の他端に設けられている。第3支点26は、車両本体2の上部に回動可能に取り付けられている。また、第3支点26は、第1支点24よりも外側に位置している。第4支点27は、サイドカバー15の内面に回動可能に取り付けられている。また、第4支点27は、第2支点25よりも上側に位置している。
【0036】
第1後リンク部材22は、第1支点24と第2支点25との間で屈曲した形状を有している。また、第2リンク部材23は、第3支点26と第4支点27との間で屈曲した形状を有している。このため、図8に示すように、全開状態において、第1後リンク部材22と第2リンク部材23とが車両本体2の上部に干渉することが回避される。また、全開状態において、第1後リンク部材22の第2支点25と第2リンク部材23の第4支点27とは、開口14から車両本体2の外部に突出しており、第4支点27は車両本体2の上方に位置している。
【0037】
なお、第1後リンク部材22には、ダンパー32の一端が連結されている。ダンパー32の他端は車両本体2に取り付けられている。ダンパー32は、第1後リンク部材22を支持することにより、サイドカバー15を開状態に保持することができる。
【0038】
支持構造21は、サイドカバー15の開閉動作において、サイドカバー15が以下のように動作するようにサイドカバー15を支持する。
【0039】
まず、図1に示すように、閉状態では、サイドカバー15の下端部のうち前側の部分は、タイヤ4bの側方に位置しており、タイヤ4bと側面視において重なるように配置されている。この閉状態から全開状態まで移動するサイドカバー15とタイヤ4bとの位置関係を模式的に表した正面図を図9および図10に示す。図9および図10において、ハッチングを施した部分は、サイドカバー15の前端部30である。図9及び図10に示すように、閉状態では、サイドカバー15の前端部30の下端部(以下、単に「サイドカバー15の下端部」と呼ぶ)は、車体側面視において水平状態のタイヤ4bおよびオシレート状態のタイヤ4b’のいずれに対しても重なって配置されている。
【0040】
ここで、図9(a)に示すように、サイドカバー15が閉状態である場合、第1仮想線A1と第2仮想線A2との交点P1は、サイドカバー15の外側であって、サイドカバー15の下端部と同じ高さに位置している。第1仮想線A1は、第1後リンク部材22の第1支点24と第2支点25とを通る直線である。第2仮想線A2は、第2リンク部材23の第3支点26と第4支点27とを通る直線である。
【0041】
次に、サイドカバー15の開動作のうち初期の第1動作においては、第1仮想線A1と第2仮想線A2との交点P1がサイドカバー15の外側に位置した状態のまま、サイドカバー15が移動する。第1仮想線A1と第2仮想線A2との交点P1は、サイドカバー15が移動する際の回転中心となる。このため、図9(b)に示すように、第1動作の開始直後には、サイドカバー15の上端部が車両本体2から外側に離れるように移動すると共に、サイドカバー15の下端部が上方へ移動する。このため、サイドカバー15は上端部側が外側に位置し下端部側が内側に位置するように傾斜した状態となる。なお、サイドカバー15が図9(a)の状態から図9(b)の状態に移行する第1動作の間、第1仮想線A1と第2仮想線A2との交点P1はサイドカバー15の外側に位置しているが、一定の位置に留まっているのではなく、サイドカバー15の移動に伴って移動する。
【0042】
そして、サイドカバー15がさらに開かれると、図9(c)に示すように、サイドカバー15の下端部が上方に移動すると共に外側へと移動する。
【0043】
次に、第1動作の後、サイドカバー15は第2動作にて移動する。第2動作においては、第1仮想線A1と第2仮想線A2との交点P1はサイドカバー15の内側に位置している。このため、サイドカバー15は、上端部が車両本体2の内側に向けて移動すると共に、下端部が車両本体2の外側に向けて移動する。その結果、サイドカバー15は、図9(c)から図10(a)の状態に移行して上下方向に沿った状態となる。
【0044】
サイドカバー15がさらに開かれると、サイドカバー15の上端部が車両本体2の内側に向けてさらに移動すると共に、下端部が車両本体2の外側に向けて移動する。その結果、図10(b)に示すように、サイドカバー15は上端部側が内側に位置し下端部側が外側に位置するように傾斜した状態となる。また、この状態では、サイドカバー15の下端部は、タイヤ4bよりも上方に位置している。
【0045】
そして、サイドカバー15がさらに開かれると、サイドカバー15の下端部はタイヤの上方の空間において、車両本体2の外側且つ上方に向かって移動する。これにより、サイドカバー15は、図10(c)に示す全開状態となる。この全開状態では、サイドカバー15の上端部は、車両本体2の上方に乗り上げた状態となる。
【0046】
以上説明した閉状態から全開状態までのサイドカバー15の下端部の軌跡を図示すると図3の破線矢印A3のようになる。図3に示すように、第1動作では、サイドカバー15の下端部の軌跡は、上側且つ外側ほど水平方向に対する軌跡の接線の傾きθが小さくなるように湾曲している。また、第2動作では、サイドカバー15の下端部は、上側且つ外側ほど水平方向に対する軌跡の接線の傾きθが大きくなるように湾曲した軌跡を通るように移動する。
【0047】
なお、サイドカバー15が閉じられる際には、上記の開動作とは逆に移動する。
【0048】
また、このホイールローダ1には、図11に示すように、ストラップ33とガイド部材34とが設けられている。ストラップ33は、車両本体2の開口14の上縁部から吊り下げられた柔軟な部材である。ストラップ33の一端は車両本体2の開口14の上縁部に固定されており、ストラップ33の他端は開放されている。ストラップ33は、開口14の上縁部から開口14の下縁部までの長さ以下の全長を有する(二点鎖線で示すストラップ33’参照)。ガイド部材34は、サイドカバー15の内面に設けられている。図12に示すように、ガイド部材34は、両端部が屈曲した形状を有している。ガイド部材34の両端部は、サイドカバー15の内面に取り付けられており、ガイド部材34は、サイドカバー15の内面との間に、孔を形成している。この孔に上述したストラップ33が通されている。図11に示すように、サイドカバー15が開状態となると、ストラップ33はガイド部材34から下方に吊り下げられた状態となる。このため、作業者は、ストラップ33の下端部を把持して下方に引くことにより、サイドカバー15を容易に引き寄せることができる。また、サイドカバー15が閉じられる場合には、ストラップ33は上下方向に沿った状態となる(図11のストラップ33’参照)。ストラップ33の全長は開口14の上縁部から下縁部までの長さ以下であるため、閉状態では、ストラップ33の下端はサイドカバー15の下端部以上の高さに位置する。このため、サイドカバー15が閉じられる際に、ストラップ33がサイドカバー15と開口14の下縁部との間に挟まれることが防止される。
【0049】
<特徴>
以上のように、このホイールローダ1では、サイドカバー15の下端部がタイヤを避けるような軌跡を通るように、サイドカバー15が支持構造21によって支持されている。これにより、簡易な構造によりサイドカバー15とタイヤとの干渉を抑えることができる。
【0050】
<他の実施形態>
(a)
上記の実施形態では、作業車両としてホイールローダが例示されているが、これに限らず他の作業車両に対しても本発明の適用が可能である。
【0051】
(b)
上記の実施形態では、閉状態における第1仮想線A1と第2仮想線A2との交点P1は、サイドカバー15の外側であって、サイドカバー15の下端部と同じ高さに位置している。しかし、厳密に同じ高さであることに限らず、上下方向に多少ずれていてもよい。例えば、交点P1がサイドカバー15の下端部より僅かに上方に位置している場合、開動作の開始直後には、サイドカバー15の下端部は車両本体2の内側に向かって移動する。しかし、一般的に、閉状態のサイドカバー15と車両本体2との間には遊びが設けられる。従って、サイドカバー15の下端部が、車両本体2の内側に向かって移動しても、サイドカバー15の下端部が車両本体2に干渉することが防止される。
【0052】
なお、第2リンク部材23は、図13に示すように、第1部品41と第2部品42と連結部品43とを有している。第1部品41の一端は車両本体2に取り付けられ、第1部品41の他端には雄ネジ部44が形成されている。第2部品42の一端はサイドカバー15に取り付けられ、第2部品42の他端には雄ネジ部45が設けられている。連結部品43は、第1部品41及び第2部品42よりも大径であり、第1部品41と第2部品42とを連結する。連結部品43には、内周面に雌ネジ部46が設けられた孔47が形成されている。連結部品43の一端側から第1部品41の雄ネジ44が連結部品43の孔47にねじ込まれ、連結部品43の他端側から第2部品42の雄ネジ45が連結部品43の孔47にねじ込まれる。なお、第1部品41と第2部品42とは、それぞれボルト48,49によって連結部品43に対して回り止めされる。上記のような構造により、第2リンク部材23の長さは可変となっており、第2リンク部材23の長さを調整することによって、サイドカバー15と車両本体2との隙間を調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、簡易な構造によりサイドカバーとタイヤとの干渉を抑えることができる効果を有し、作業車両として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ホイールローダの側面図。
【図2】全開状態のサイドカバーを示す斜視図。
【図3】サイドカバーの開閉動作を示す正面図。
【図4】支持構造を示す斜視図。
【図5】支持構造を示す側面図。
【図6】支持構造を示す平面図。
【図7】閉状態における支持構造の拡大図。
【図8】全開状態における支持構造の拡大図。
【図9】開閉動作におけるサイドカバーとタイヤとの位置関係を示す模式図。
【図10】開閉動作におけるサイドカバーとタイヤとの位置関係を示す模式図。
【図11】開状態および閉状態におけるストラップの配置を示す正面図。
【図12】ガイド部材の拡大図。
【図13】第2リンク部材の構造を示す拡大図。
【符号の説明】
【0055】
1 ホイールローダ(作業車両)
2 車両本体
4b タイヤ
14 開口
15 サイドカバー
21 支持構造
22 第1後リンク部材(第1リンク部材)
23 第2リンク部材
28 第1前リンク部材(第1リンク部材)
24 第1支点
25 第2支点
26 第3支点
27 第4支点
33 ストラップ
34 ガイド部材
A1 第1仮想線
A2 第2仮想線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に開口が設けられた車両本体と、
前記車両本体の側方に配置されるタイヤと、
前記車両本体の側面において前記開口を開閉可能に設けられ、閉状態において下端部の少なくとも一部が前記タイヤの側方に配置され、前記下端部が前記閉状態における位置から上方且つ外方に移動することにより前記開口を開くサイドカバーと、
前記車両本体に回動可能に取り付けられる第1支点と前記サイドカバーに回動可能に取り付けられる第2支点とを有する第1リンク部材と、
前記車両本体に回動可能に取り付けられる第3支点と前記サイドカバーに回動可能に取り付けられる第4支点とを有する第2リンク部材と、
を備え、
前記第1リンク部材と前記第2リンク部材とは、前記サイドカバーの開動作のうち初期の第1動作において、前記第1支点と前記第2支点とを通る第1仮想線と、前記第3支点と前記第4支点を通る第2仮想線との交点が前記サイドカバーの外側に位置するように前記サイドカバーを支持する、
作業車両。
【請求項2】
前記第1リンク部材と前記第2リンク部材とは、前記サイドカバーの開動作のうち前記第1動作の後の第2動作において、前記第1仮想線と前記第2仮想線との交点が前記サイドカバーの内側に位置するように前記サイドカバーを支持する、
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記サイドカバーが閉状態である場合、前記第1仮想線と前記第2仮想線との交点は前記サイドカバーの下端部と同じ高さに位置する、
請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
側面に開口が設けられた車両本体と、
前記車両本体の側方に配置されるタイヤと、
前記車両本体の側面において前記開口を開閉可能に設けられ、閉状態において下端部の少なくとも一部が前記タイヤの側方に配置され、前記下端部が前記閉状態における位置から上方且つ外方に移動することにより前記開口を開くサイドカバーと、
前記サイドカバーと前記車両本体とに取り付けられ、前記サイドカバーを開閉動作可能に支持する支持構造と、
を備え、
前記サイドカバーの開動作のうち初期の第1動作において、前記サイドカバーの下端部の軌跡は、上側且つ外側ほど前記軌跡の接線の傾きが小さくなるように湾曲している、
作業車両。
【請求項5】
前記サイドカバーの開動作のうち前記第1動作の後の第2動作において、前記サイドカバーの下端部は、上側且つ外側ほど接線の傾きが大きくなるように湾曲した軌跡を通るように移動する、
請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記サイドカバーの上端部は、全開状態において前記車両本体の上方に乗り上げた状態となる、
請求項1から5のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
前記車両本体の前記開口の上縁部から吊り下げられ、前記開口の上縁部から前記開口の下縁部までの長さ以下の全長を有するストラップと、
前記サイドカバーの内面に設けられ、前記ストラップが挿通される孔を有するガイド部材と、
をさらに備える請求項1から6のいずれかに記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−58765(P2010−58765A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229176(P2008−229176)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】