説明

作業車両

【課題】簡単な構造でフロントガードおよびフロントガードを連結でき、部品点数を減少することができる作業車両を提供する。
【解決手段】エンジン14を収納するボンネット15の前方にフロントガード45を設ける作業車両1において、ボンネット15の回動支点とフロントガード45の回動支点を共用する回動支点である回動支点軸51を設け、フロントガード45とボンネット15の間に連結部材53を介装して、ボンネット15の開閉回動に連動してフロントガード45を開閉回動する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンネットの前方に具備されるフロントガードを開閉させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボンネットの前面のグリル部を保護するためのフロントガードを具備した作業車両の技術は公知となっている。
このような作業車両はエンジンルーム等のメンテナンスの際に、フロントガードおよびボンネットを開閉させる必要があるため、容易に開閉させることを可能にする技術、すなわち、メンテナンス性を向上させることが可能な作業車両の技術が求められている。
【0003】
上記のような問題を解消する作業車両として、以下に示す特許文献1のような技術が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された技術は、メンテナンス性を向上させることが可能な作業車両の技術であり、フロントガード、フロントガードヒンジ部、ボンネット、ボンネットヒンジ部、およびリンク連結体により構成される。
前記フロントガードは、前記ボンネットの前方に具備され、下端部に前記フロントガードヒンジ部が具備される。
前記フロントガードヒンジ部は、ボルトおよび筒カラーによって構成され、前記筒カラー、前記フロントガード、およびブレイスに前記ボルトを嵌めることで前記フロントガードに具備される。また、前記フロントガードヒンジ部は、左右一対に前記フロントガードに具備される。これにより、前記フロントガードは、前記フロントガードヒンジ部を支点にして前後方向に回動可能に構成される。
前記ボンネットは、作業車両の前部に具備される。ボンネットは、前下部に前記ボンネットヒンジ部が具備される。
前記ボンネットヒンジ部は、前記フロントガードヒンジ部と略同一の形状を有するボルトおよび筒カラーによって構成され、前記筒カラーおよび前記ボンネットに前記ボルトを嵌めることで前記ボンネットに具備される。また、前記ボンネットヒンジ部は、左右一対に前記ボンネットに具備される。これにより、前記ボンネットは、前記ボンネットヒンジ部を支点に前後方向に回動可能に構成される。
前記リンク連結体は、一端部が前記フロントガードに固設され、他端部が前記ボンネットに固設される。つまり、前記フロントガードおよび前記ボンネットは、前記リンク連結体によって連結される。
【0005】
特許文献1に記載の技術によれば、フロントガードが前後方向に回動されると、リンク連結体を介して、ボンネットも前後方向に回動されるため、容易にボンネットを開閉できる。つまり、メンテナンス性を向上させることができる。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ボンネットおよびフロントガードにそれぞれボンネットヒンジ部およびフロントガードヒンジ部が具備されて回動される。言い換えれば、ボンネットヒンジ部およびフロントガードヒンジ部は、それぞれ別部材であり、かつ、それぞれ左右一対に作業車両に具備されるため、部品点数が増加するという点で不利であった。
【特許文献1】特許3595626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、部品点数を減少させることが可能な作業車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1においては、エンジンを収納するボンネットの前方にフロントガードを設ける作業車両において、前記ボンネットの回動支点と前記フロントガードの回動支点を共用する回動支点を設け、前記フロントガードとボンネットの間に連結部材を介装して、前記ボンネットの開閉回動に連動して前記フロントガードを開閉回動する構成としたものである。
【0008】
請求項2においては、前記連結部材の一端を連結する前記ボンネットの支持部材に、エンジンフレームとの当接部を形成したものである。
【0009】
請求項3においては、前記回動支点を支持するブラケットに前記ボンネットを開いたときのストッパを設けたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1に記載の作業車両によれば、簡単な構造でフロントガードおよびフロントガードを連結でき、部品点数を減少することができる。また、ボンネットおよびフロントガードを別々に開閉操作する必要がなく、容易に開閉操作することができる。
【0012】
請求項2に記載の作業車両によれば、支持部材がストッパを兼用でき、ストッパを別部品で取り付ける必要がなく、部品点数を減少できる。
【0013】
請求項3に記載の作業車両によれば、ブラケットがストッパを兼用でき、ストッパを別部品で取り付ける必要がなく、部品点数を減少できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明に係る作業車両を適用した作業車両の実施の一形態である作業車両1の全体的な構成について、図1を参照して説明する。
なお、本実施形態にかかる作業車両1は、フロントローダを具備するトラクタに適用されたものとして説明を行うが、本発明にかかる作業車両は、これに限るものでない。
また、本実施形態において、図1における矢印A方向を前方向と規定し、図1における矢印A方向と水平方向に直交する方向を左右方向と規定する。
【0015】
作業車両1は、主として走行部10、操作部20、掘削部30、ロータ部40等を具備する。
【0016】
走行部10は、作業車両1を走行させるものである。
走行部10は、主として、エンジンフレーム11、前輪12、後輪13、エンジン14、およびボンネット15等によって構成される。
【0017】
エンジンフレーム11は、走行部10の主たる構造をなす部材であり、長手方向を前後方向として、複数の板材により構成される略箱状の部材である。エンジンフレーム11の前部には前輪12が懸架され、エンジンフレーム11の後部には後輪13が懸架されている。
【0018】
エンジン14は、エンジンフレーム11の前上部に具備され、エンジン14によって作業車両1が駆動するための動力が発生する。
【0019】
ボンネット15は、エンジンフレーム11の前上部に具備されるエンジン14等を覆うように作業車両1に具備される。また、ボンネット15は、後述する回動装置50によって回動可能に構成される。
【0020】
操作部20は、作業車両1の走行や操向操作、ローダ部40による作業操作等を行うものである。
操作部20は、主としてステアリングハンドル21、運転席22、操作ペダル23(アクセルペダルやブレーキペダル)、および操作レバー24(変速レバーや作業レバー)等によって構成される。
【0021】
ステアリングハンドル21は、エンジンフレーム11の中途部上に取り付けられ、ステアリングハンドル21を回動することにより、油圧シリンダを作動させてエンジンフレーム11を中心に左または右に回動して作業車両1を操向可能に構成される。
【0022】
運転席22は、エンジンフレーム11の後上方に具備される。運転席22は、作業者が着座して、操作ペダル23や操作レバー24を操作して、作業車両1の移動等を行う。
【0023】
操作ペダル23は、アクセルペダルやクラッチペダルやブレーキペダルや変速ペダルやデフロックペダル等よりなる。
【0024】
操作レバー24は、走行部10、掘削部30およびローダ部40を操作するものである。
【0025】
掘削部30は、土砂等の掘削を行う作業装置である。掘削部30は、操作部20の後方に具備される。
なお、掘削部30を操作する際、運転席22は回動され、後方向に向けられる。
【0026】
ローダ部40は、土砂等を掬いあげて運搬等の作業を行うものである。
ローダ部40は、主として、支持フレーム41、アーム42、ステー43、バケット44等で構成される。
【0027】
支持フレーム41は、側面視において後辺が垂直である台形状に形成され、その上端部には枢支軸41aが枢支される。支持フレーム41は、下端部がエンジンフレーム11の上部と連結され、上端部がアーム42と連結される。
【0028】
アーム42は、バケット44と前輪12とが干渉しないような湾曲形状に形成される。アーム42の一端部は、枢支軸41aを介して支持フレーム41の上端部と連結され、アーム42の他端部は、ステー43を介してバケット44と連結される。
【0029】
次に、フロントガード45とボンネット15について説明する。
ボンネット15は、ボンネット15内に具備されるエンジン14やラジエータ等種々の機器を覆い保護するものである。
フロントガード45は、ローダ部40による作業時にボンネット15の前部を保護するものである。フロントガード45は、下端部がエンジンフレーム11の前側面に支持され、中途部において前方向に向かって湾曲するように上方に延設される。フロントガード45の下部とエンジンフレーム11の前部とボンネット15の前下部に具備される回動装置50によって回動可能に構成される。
【0030】
補強部材52は、ボンネット15の前内部に固定され変形を防止するとともに、ボンネット15の前内部に配設されるヘッドライトや作業灯等を支持するものである。
補強部材52は、金属製の板状部材をその上部において左側面視略逆L字形状に折り曲げ形成されることによって構成される。補強部材52の上部は、ボンネット15の内面に沿うように形成され、ヘッドライトやグリル等を支持できるようにしている。補強部材52の下端部には、後述する回動支点軸51に枢支されるように孔部を設けている。
【0031】
次に、図2を参照して本発明に係る回動装置の実施の一形態である回動装置50について説明する。
【0032】
回動装置50は、ボンネット15とフロントガード45を連動して回動させるものである。
回動装置50は、回動支点軸51、ブラケット55、支持部材54、および連結部材53によって構成される。
【0033】
回動支点軸51は、フロントガード45およびボンネット15を前後方向に回動させるときの支点となる。フロントガード45の下端部には後述する枢支軸53aを軸支するための孔部45aと、該孔部45aの上側に回動支点軸51を軸支するための孔部45bが開口されている。
回動支点軸51は、フロントガード45の孔部45bおよびブラケット55に設けた孔部55aを貫通するように具備される。フロントガード45は、回動支点軸51を支点として前後方向に回動される。つまり、フロントガード45は、回動支点軸51に枢支され、回動支点軸51はブラケット55に枢支さている。
このように、本実施形態における回動支点軸51は、本発明にかかる「フロントガードの回動支点」として機能する。
【0034】
ブラケット55は、回動支点軸51を介してボンネット15とフロントガード45とを連結して支持するものである。
ブラケット55は、エンジンフレーム11の前側面の外側に具備され、その上部に孔部55aが形成される。孔部55aには、回動支点軸51が挿通されて枢支される。また、ブラケット55は、その下部にボルト等の固定部材55bが具備されることで、エンジンフレーム11に固設される。
また、ブラケット55は、エンジンフレーム11の側面に左右一対に具備される。
【0035】
支持部材54は、前記回動支点軸51よりも後方のボンネット15の下部に固設して、連結部材53と連結可能とするとともに、ボンネット15が閉じられた状態(以下、ボンネット閉鎖状態とする。)において、エンジンフレーム11に当接してストッパとなって当該ボンネット15を支持するものである。
支持部材54は、金属製の板状部材により構成され、下辺が当接部54aとして形成される。支持部材54の上部は、ボンネット15の下部に固設され、前記補強部材52とも連結されて補強される。また、支持部材54の下部には孔部を設けて、枢支軸53bを軸支できるようにしている。
【0036】
連結部材53は、フロントガード45と支持部材54とを連結するものである。
連結部材53は、金属製の板状部材により構成される。連結部材53の前部は、枢支軸53aとを貫通させる孔部が形成され、該枢支軸53aを連結部材53の孔部とフロントガード45の孔部45aとに貫通させることで、フロントガード45と連結部材53とが連結される。
また、連結部材53の後部は、枢支軸53bを貫通させる孔部が形成され、該枢支軸53bを連結部材53の孔部と支持部材54の孔部とに貫通させることで、連結部材53と支持部材54とが連結される。
【0037】
次に、図2および図3を参照して、フロントガード45およびボンネット15の開閉操作時の動作態様について詳細に説明する。
【0038】
ボンネット閉鎖状態から、フロントガード45が矢印F方向に回動される(開かれる)と、図2および図3に示すように、回動支点軸51を支点(中心)にしてフロントガード45は、矢印F方向に回動される。
このとき、連結部材53が後方に押されて、支持部材54は上方に回動され、ボンネット15が矢印F方向に回動される。そして、固定部材55bがフロントガード45の下部に当接して回動が停止されてボンネット15は開かれるのである。
【0039】
このように、フロントガード45を開くことで、ボンネット15を開くことができる。つまり、ボンネット15およびフロントガード45を別々に開く必要がなく、容易にボンネット15およびフロントガード45を開くことができる。
【0040】
また、ボンネット閉鎖状態において、ボンネット15が矢印F方向に回動されると、回動支点軸51を支点にしてボンネット15は、矢印F方向に回動される。
このとき、支持部材54を介して連結部材53が上方に引き上げられ、該連結部材53に連結されたフロントガード45も矢印F方向に回動される。そして、固定部材55bがフロントガード45の下部に当接して回動が停止されてボンネット15は開かれるのである。
つまり、ボンネット15およびフロントガード45は、どちらか一方を開くことで、他方も開くことができる。
【0041】
逆に、フロントガード45およびボンネット15が開かれた状態(以下、ボンネット開放状態とする。)において、フロントガード45が矢印B方向に回動される(閉じられる)と、回動支点軸51を支点(中心)にしてフロントガード45は、矢印B方向に回動される。
このとき、連結部材53が前方に引っ張られて、ボンネット15は回動支点軸51を支点にして矢印B方向に回動される。そして、支持部材54も矢印B方向に回動されて、当接部54aがエンジンフレーム11上面に当接して回動が停止されてボンネット15は閉じられるのである。
【0042】
このように、フロントガード45を閉じることで、ボンネット15を閉じることができる。つまり、ボンネット15およびフロントガード45を別々に閉じる必要がなく、容易にボンネット15およびフロントガード45を閉じることができる。
【0043】
また、ボンネット開放状態において、ボンネット15が矢印B方向に回動されると、回動支点軸51を支点にしてボンネット15は、矢印B方向に回動する。
このとき、支持部材54を介して連結部材53が後方に押されて、該連結部材53に連結されたフロントガード45も矢印B方向に回動される。そして、当接部54aがエンジンフレーム11上面に当接して回動が停止されてボンネット15は閉じられるのである。
つまり、ボンネット15およびフロントガード45は、どちらか一方を閉じることで、他方も閉じることができる。
【0044】
本実施形態における回動支点軸51は、本発明にかかる「ボンネットの回動支点」として機能するとともに、「フロントガードの回動支点」としても機能する。つまり、本発明にかかる「ボンネットの回動支点とフロントガードの回動支点を共有する回動支点」として機能する。
また、ボンネット15およびフロントガード45は、どちらか一方を開閉操作することで、他方も同様に開閉操作することができる。
【0045】
このように構成される回動装置50を具備する作業車両1は、ボンネット15およびフロントガード45を回動させる支点が共に回動支点軸51であるため、ボンネット15およびフロントガード45にそれぞれ支点を具備する必要がない。つまり、回動支点軸51は、複数の支点となる構成であるため、ボンネット15およびフロントガード45を回動させるために必要な部品の点数を削減することができる。
【0046】
支持部材54は、ボンネット15およびフロントガード45を閉じる際にその回動を停止させるとともに、ボンネット15を確実に閉じた状態で固定するため、別途ストッパを具備する必要がない。
【0047】
固定部材55bは、ブラケット55を固定するとともに、ボンネット15およびフロントガード45を開く際にその回動を停止させるため、別途ストッパを具備する必要がない。
【0048】
ボンネット15およびフロントガード45は、それぞれの回動に連動して同一方向に回動するため、ボンネット15またはフロントガード45を別々に回動させる必要がなく、エンジンルーム等のメンテナンス性を向上させることができる。
【0049】
以上の如く、本発明に係る作業車両1の実施の一形態である作業車両1は、エンジン14を収納するボンネット15の前方にフロントガード45を設ける作業車両1において、ボンネット15の回動支点とフロントガード45の回動支点を共用する回動支点である回動支点軸51を設け、フロントガード45とボンネット15の間に連結部材53を介装して、ボンネット15の開閉回動に連動してフロントガード45を開閉回動する構成とするものである。
このように構成することにより、簡単な構造でフロントガード45およびフロントガード45を連結でき、部品点数を減少することができる。また、ボンネット15およびフロントガード45を別々に開閉操作する必要がなく、容易に開閉操作することができる。
【0050】
また、連結部材53の一端を連結するボンネット15の支持部材54に、エンジンフレーム11との当接部54aを形成するものである。
このように構成することにより、支持部材54がストッパを兼用でき、ストッパを別部品で取り付ける必要がなく、部品点数を減少できる。
【0051】
さらに、回動支点である回動支点軸51を支持するブラケット55にボンネット15を開いたときのストッパを設けたものである。
このように構成することにより、ブラケット55がストッパを兼用でき、ストッパを別部品で取り付ける必要がなく、部品点数を減少できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態における作業車両の全体の構成を示す左側面図。
【図2】ボンネットおよびフロントガードが閉じられた状態を示す左側面図。
【図3】ボンネットおよびフロントガードが開かれた状態を示す左側面図。
【符号の説明】
【0053】
1 作業車両
11 エンジンフレーム
14 エンジン
15 ボンネット
45 フロントガード
50 回動装置
51 回動支点軸(回動支点)
53 連結部材
54 支持部材
55 ブラケット
55b 固定部材(ストッパ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを収納するボンネットの前方にフロントガードを設ける作業車両において、前記ボンネットの回動支点と前記フロントガードの回動支点を共用する回動支点を設け、前記フロントガードとボンネットの間に連結部材を介装して、前記ボンネットの開閉回動に連動して前記フロントガードを開閉回動する構成とした、ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記連結部材の一端を連結する前記ボンネットの支持部材に、エンジンフレームとの当接部を形成した、ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記回動支点を支持するブラケットに前記ボンネットを開いたときのストッパを設けた、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−70167(P2010−70167A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242938(P2008−242938)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】