説明

作業車輌の原動部構造

【課題】濾過体への藁屑、塵埃等の再付着を防止する。
【解決手段】インタークーラ(12)及びラジエータ(21)の外側に配置した外気濾過用の濾過体(16,24)を備え、ラジエータファン(26)の回転停止に対応させて排塵ファン(51)を逆転させると共に、該排塵ファン(51)の逆転に対応させてインタークーラ用ファン(14)を逆転させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インタークーラ及びラジエータの外側に設置された濾過体に付着する藁屑、塵埃を除去し、エンジンのオーバーヒートを防止する作業車輌の原動部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバイン等の作業車輌には水冷式エンジンが使用されている。エンジンの出力を高めるため、エンジンに吸気される混合気を冷却することで燃焼ガスの膨張率を高めるインタークーラが配置され、エンジンにより温度上昇した冷却水は、ラジエータを循環することにより冷却された後、再びエンジンを循環する。
【0003】
そして、インタークーラの熱交換効率を高めるために、エンジンカバーに設けられた濾過体を介してその外側から内側に外気を吸入してインタークーラを冷却している。
【0004】
コンバインは、穀稈の刈取、脱穀、選別、排藁処理を行うので、コンバイン前部の刈取装置から藁屑や塵埃が巻き上がったり、また、コンバインの後部から多量の藁屑を排出し、選別後の排塵風によって、排出された藁屑、塵埃等を巻き上げることが多い。この巻き上げられた藁屑等がエンジンカバーやラジエータカバーの濾過体に付着し、これらの濾過体が目詰まった場合、濾過体の外側から内側に十分な外気を吸入することができなくなり、インタークーラの熱交換効率の低下や冷却水の冷却効果が低下し、場合によってはエンジンがオーバーヒートする恐れがある。
【0005】
上記問題を解決するため、特許文献1には、刈取り作業中のコンバインの後進時に、エンジンの外側に設けた排塵ファンを逆転させ、エンジンカバーの濾過体に付着した藁屑、塵埃等の除去を行なう構成が開示されている。
また、特許文献2には、ラジエータカバーの濾過体の内側に設けた排塵ファンと、この排塵ファンとラジエータとの間に開閉自在なシャッタを設け、ラジエータカバーの濾過体に付着した藁屑、塵埃等を除去する場合、濾過体の外側から内側への外気の吸入を遮断するためシャッタを閉鎖し、排塵ファンを逆転させ濾過体の内側から外側に送風を行う手段が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008―253212号公報
【特許文献2】特開平9―125960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特に圃場のコーナ部分の刈取り作業時、コンバインの後進時に、ラジエータ側の排塵ファンを逆転させ、ラジエータカバーの濾過体に付着した藁屑、塵埃等を除去したとしても、その藁屑、塵埃等がエンジンカバーの濾過体に再付着し目詰まり発生させ、インタークーラの熱交換効率を低下させる恐れがある。
【0008】
そこで、本発明の主たる目的は、ラジエータカバーの濾過体から除去された藁屑、塵埃等がエンジンカバーの濾過体に再付着させない原動部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、エンジン(11)の吸気経路に設けたインタークーラ(12)と、前記エンジン(11)の冷却水を冷却するラジエータ(21)と、前記インタークーラ(12)及びラジエータ(21)の外側に配置した外気濾過用の濾過体(16,24)とを有し、前記インタークーラ(12)よりも機体内側に配置した正逆転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のインタークーラ用ファン(14)と、前記ラジエータ(21)よりも機体内側に配置した正転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン(26)と、前記ラジエータ(21)よりも機体外側であって前記濾過体(24)より機体内側に配置した逆転状態と回転停止状態とに切換可能な排塵ファン(51)とを備え、前記ラジエータファン(26)の回転停止に対応させて排塵ファン(51)を逆転させると共に、該排塵ファン(51)の逆転に対応させてインタークーラ用ファン(14)を逆転させる構成としたことを特徴とする作業車輌の原動部構造である。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記ラジエータファン(26)が回転停止する前に前記排塵ファン(51)が逆転を開始する構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の原動部構造である。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記排塵ファン(51)が逆転状態から回転停止状態に移行する前にラジエータファン(26)が正転を開始する構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の作業車輌の原動部構造である。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記ラジエータファン(26)の正転状態と回転停止状態との切換を行う電動モータ(45)を設け、前記電動モータ(45)は、脱穀クラッチ(104)が接続された後に作動する構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記電動モータ(45)は、刈取クラッチ(115)が接続された後に作動する構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記ラジエータ(21)と排塵ファン(51)との間に、前記濾過体(24)よりも濾過目合いの小さい補助濾過体(25)を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記ラジエータ(21)の外側にラジエータカバー(22)を設け、このラジエータカバー(22)に複数の外気濾過用の濾過体(24B,24C)を配置し、該濾過体(24B,24C)は、補強リブ(23)を境にして複数の濾過体に分割し、前記排塵ファン(51)の中心部と前記補強リブ(23)とを側面視で互いに重合する位置に配置したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【0016】
請求項8に係る発明は、前記ラジエータ(21)の外側に、該ラジエータ(21)の外側面の面積より大きい面積を有するラジエータカバー(22)を設け、該ラジエータカバー(22)に複数の外気濾過用の濾過体(24B,24C)を設け、該複数の濾過体(24B,24C)に対応する位置に排塵ファン(51,51)をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、ラジエータファン(26)の回転停止に対応させて排塵ファン(51)を逆転させると共に、該排塵ファン(51)の逆転に対応させてインタークーラ用ファン(14)を逆転させる構成としたことから、例えば、濾過体(16,24)のうちのラジエータ(21)外側に臨む部位から除去された藁屑、塵埃等が、濾過体(16、24)のうちのインタークーラ(12)外側に臨む部位に再付着することはなく、エンジン(11)の吸気経路に接続したインタークーラ(12)の熱交換効率を高くしてエンジンの出力を高めることができると共に、エンジン(11)がオーバーヒートしにくくなり作業車輌による作業能率を高めることができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、ラジエータファン(26)が回転停止する前に前記排塵ファン(51)が逆転を開始する構成としたことから、ラジエータファン(26)が回転停止する時点には、排塵ファン(51)による風量が安定し、その逆転による濾過体(24)に付着した藁屑、塵埃等の排塵効果が高まる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、排塵ファン(51)が逆転状態から回転停止状態へ移行する前にラジエータファン(26)が正転を開始する構成としたことから、ラジエータ(21)に風が当たらない時間がなくなり、ラジエータ(21)の冷却効果が高くなる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、ラジエータファン(26)の正転状態と回転停止状態との切換を行う電動モータ(45)は、脱穀クラッチ(104)が接続された後に作動する構成とした。すなわち、脱穀クラッチ(104)が接続されない通常の路上走行時等には藁屑、塵埃等の濾過体(16,24)への付着を考慮する必要がないのに対し、脱穀クラッチ(104)が接続された脱穀作業時には、藁屑、塵埃等の濾過体(16,24)への付着を考慮する必要がある。
請求項4記載の発明によれば、脱穀作業時にのみに、電動モータ(45)が作動するので、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、電動モータ(45)の耐久性が向上する。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、電動モータ(45)は、刈取クラッチ(115)が接続された後に作動する構成としたことから、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、刈取クラッチ(115)を遮断した路上走行時等には電動モータ(45)が作動しないので、該電動モータ(45)の耐久性が向上する。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、ラジエータ(21)と排塵ファン(51)との間に、濾過体(24)よりも濾過目合いの小さい補助濾過体(25)を設けたことから、濾過体(24)を通過し機体内側に入った藁屑、塵埃等のラジエータ(21)のフィンへの付着を防止することができる。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、排塵ファン(51)の中心部は送風効率が低く、外周部は送風効率が高いことを考慮し、濾過体(24B,24C)を、補強リブ(23)を境にして複数の濾過体に分割して、前記排塵ファン(51)の中心部を実質的に前記補強リブ(23)上に位置させたことから、送風効率が相対的に高くなり、排塵効果が向上する。
【0024】
請求項8記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、ラジエータ(21)の外側にその面積より大きい面積を有するラジエータカバー(22)を設け、該ラジエータカバー(22)に複数の外気濾過用の濾過体(24B,24C)を設け、濾過体(24B,24C)に対応する位置に排塵ファン(51,51)をそれぞれ設けたことから、濾過体(24B,24C)に付着した藁屑、塵埃等の排塵効果が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】コンバインの右面図である。
【図2】コンバインの左面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】コンバインの背面図である。
【図5】実施形態のラジエータ等の要部拡大正面図である。
【図6】実施形態のラジエータ等の要部拡大側面図である。
【図7】ラジエータファンの動作説明図である。
【図8】実施形態のラジエータカバーの拡大正面図である。
【図9】実施形態のラジエータ等の要部拡大断面図である。
【図10】他の実施形態のラジエータカバーの拡大正面図である。
【図11】他の実施形態のラジエータ等の要部拡大断面図である。
【図12】別の実施形態のラジエータカバーの拡大正面図である。
【図13】別の実施形態のラジエータ等の要部拡大断面図である。
【図14】コントローラのブロック線図である。
【図15】コントローラのフローチャートである。
【図16】第1制御例のタイムチャートである。
【図17】第1制御例のタイムチャートのフローチャートである。
【図18】第2制御例のタイムチャートである。
【図19】第2制御例のタイムチャートである。
【図20】参考制御例のタイムチャートである。
【図21】コンバインの動力図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の作業車輌の原動部構造の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。実施形態は、作業車輌としてコンバインを例示してあるがコンバインに限定されるものではなく、トラクター、田植機等の農業用作業車両等にも適用できるものである。
【0027】
以下の説明において、コンバイン1の機体内側を「内側」、機体外側を「外側」といい、操作席9に着座する操作者から見て右手側を「右側」、左手側を「左側」、上方側を「上方」、下方側を「下方」、コンバインの進行方向を「前側」と、後退方向を「後側」という。
【0028】
「正転」とは機体外側から機体内側に向かい外気を吸入するファンの回転方向をいい、「逆転」とは機体内側から機体外側に向かい内気を送風するファンの回転方向をいい、「停止」とはファンが正転及び逆転していないファンの休止状態をいうものとする。
【0029】
すなわち、後述するインタークーラ用ファン14における「正転」とは、図6のS1で示すとおり、エンジンカバー15の目抜き鉄板などからなる外気濾過用の濾過体16を介して機体外側からインタークーラ12に向かって外気を吸入するインタークーラ用ファン14の回転方向をいい、「逆転」とは、図6にS2で示すとおり、エンジンカバー15の濾過体16を介して機体内側から機体外側に向かい内気を送風するインタークーラ用ファン14の回転方向をいう。このインタークーラ用ファン14は、図14に示すコントローラ84により正転、逆転及び停止状態の切換が行なわれる。
【0030】
ラジエータファン26における「正転」とは、図6のS3で示すとおり、ラジエータカバー22の目抜き鉄板などからなる外気濾過用の濾過体24を介して機体外側からラジエータ21に向かって外気を吸入するラジエータファン26の回転方向をいう。ラジエータファン26は、コントローラ84により正転及び停止状態の切換が行なわれる。
【0031】
排塵ファン51における「逆転」とは、図6にS4で示すとおり、ラジエータカバー22の濾過体24を介して機体内側から機体外側に向かい内気を送風する排塵ファン51の回転方向をいう。排塵ファン51は、コントローラ84により逆転及び停止状態の切換が行なわれる。
【0032】
図1〜図4には、本発明の原動部構造を有するコンバイン1が示されている。コンバイン1の車台2の下方には土壌面を走行するための左右一対のクローラからなる走行装置3が設けられ、車台2の上方左側には脱穀及び選別をするための脱穀装置4が設けられ、脱穀装置4の前側には穀桿引起部6が設けられ、穀桿引起部6の前側にはリール5が設けられている。
リール5で刈り取られた刈稈は穀桿引起部6で引起され脱穀装置4に送られる。脱穀装置4で脱穀及び選別された穀粒は脱穀装置4の後側に設けられたグレンタンク7に貯留され、貯留された穀粒は穀粒排出筒8により外部が搬送される。
【0033】
車台2の上方右側には操作者が搭乗する操作席9が設けられ、操作席9の下方後側にはエンジンルーム10が設けられている。
【0034】
図5〜図9に示すように、エンジンルーム10の後側にはコンバイン1の駆動源であるエンジン11設けられ、エンジン11の前側にはラジエータ21が設けられている。エンジン11の外側にはインタークーラ12が設けられ、吸気経路であるマニホールド13によりエンジン11に接続されている。
【0035】
エンジン11とインタークーラ12との間には、図6を参照して説明したように正逆転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のインタークーラ用ファン14が設けられている。インタークーラ用ファン14は、インタークーラ用モータ14Aとインタークーラ用羽根14Bとにより構成され、インタークーラ用モータ14Aはモータ支持枠(図示省略)により支持され、エンジンカバー15の内側に取付けられている。
【0036】
エンジン11の駆動時にあっては、エンジン11及びインタークーラ12を冷却するため、インタークーラ用ファン14は正転し、インタークーラ12の外側に設けられたエンジンカバー15の濾過体16を介し、コンバイン1の外側から内側に外気を吸入する。一方、後述する排塵ファン51の逆転時には、ラジエータカバー22の濾過体24から除去された藁屑、塵埃等のエンジンカバー15の濾過体16への付着を防止するため、インタークーラ用ファン14は逆転し、コンバイン1の内側から外側に内気を送風する。
【0037】
ラジエータカバー22の内側にはラジエータ21が設けられ、さらにラジエータ21内側には、図6を参照して説明したように正転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン26が設けられている。
【0038】
ラジエータ21とラジエータカバー22との間には、図6が参照されるように逆転状態と回転停止状態とに切換可能な排塵ファン51が設けられている。排塵ファン51は、図8及び図9に示すように、排塵モータ51Aと排塵羽根51Bとにより構成され、排塵モータ51Aはモータ支持枠52により支持され、排塵ファン51の中心部はラジエータカバー22の中心部の補強リブ23と対向する位置に設けられている。
排塵ファン51とラジエータ21との間にはオイルクーラ57が設けられている。
【0039】
他方、図6及び図21に示すように、ラジエータファン26は回転軸26Aの片端部に軸支され回転軸26Aと一体に正転する。回転軸26Aはエンジン11のクランク軸31Aにプーリ31,32,33とベルト35,36とを介し接続されており、回転軸26Aにはエンジン11のクランク軸31Aの回転が伝動される。
【0040】
すなわち、エンジン11のクランク軸31Aの回転をラジエータファン26に伝動するため、エンジン11のクランク軸31Aに軸支されクランク軸31Aと一体となって回転するプーリ31と、プーリ31に対向する位置に設けられた中間軸(図示省略)に軸支され中間軸を中心に回転するプーリ33と、プーリ33に対向する位置に設けられた回転軸26Aに軸支され回転軸26Aと一体となって回転するプーリ32には、それぞれベルト35,36がベルト掛けされている。
【0041】
ラジエータファン26を正転する場合、図7に示すように、回転軸41に軸支され回転軸41を中心に回転するアーム42を時計方向に回転させ、アーム42の先端部に設けられたテンションローラ37をプーリ33とプーリ32にベルト掛けされたベルト36に押圧しベルト36のテンションを強める。なお、この際、アーム42の後端部に設けられているブレーキ板47は、プーリ32上のベルト36とは離間している。
【0042】
一方、ラジエータファン26を停止する場合、アーム42を反時計方向に回転させベルト36のテンションを弱め、ラジエータファン26の慣性による正転を強制的に停止するためブレーキ板47は、プーリ32上のベルト36に押圧される。
【0043】
アーム42には、コイルスプリング43の先端部が取付けられている。コイルスプリング43は、電動モータ45により回動する円板46の側面に取付けられた連結板44の先端に取付けられ、円板46の回動により直動し、アーム42を回転軸41を中心に時計方向または反時計方向に揺動させる。
電動モータ45はコントローラ84により制御されており、脱穀クラッチ104が接続されていない場合、または刈取クラッチ115が接続されていない場合、操作者が電動モータ45の操作レバーの切換えを行なっても電動モータ45は作動せず、インタークーラ用ファン14及びラジエータファン26は逆転しないように構成されている。
【0044】
エンジン11の駆動時にあっては、ラジエータ21を冷却するため、ラジエータファン26は正転し、ラジエータ21の外側に設けられたラジエータカバー22の目抜き鉄板などからなる、たとえば上下に分離した4枚の濾過体24(24A〜24D)を介し、コンバイン1の外側から内側に外気を吸入する。
一方、排塵ファン51の逆転時には、ラジエータファン26は停止し、排塵ファン51による送風を阻害することはない。
【0045】
ラジエータファン26の正転/停止状態の切換えは、ラジエータファン26が軸支された回転軸26Aのプーリ32と中間軸に軸支されたプーリ33とにベルト掛けされているベルト36のテンション変動により行なうことから、ラジエータファン26の正転/停止状態の切換えは短時間に行なうことができる。
また、ラジエータファン26の停止状態への切換え時にあっては、アーム42のブレーキ板47をプーリ32上のベルト36に押圧するため、ラジエータファン26の慣性による正転を強制的に停止するため、ラジエータファン26の慣性による正転により濾過体24の内側から外側に向かう排塵ファン51による送風が阻害されることもない。
さらに、コイルスプリング43、連結板44及び円板46を介し電動モータ45によりアーム42の時計方向及び反時計方向の回転を制御しているため周波数応答が高い。
【0046】
エンジン11の温度が上昇する、すなわち、ラジエータカバー22の濾過体24に多くの藁屑、塵埃等が付着し、ラジエータファン26による外気の吸入効率が低下することを防止するために、ラジエータカバー22の濾過体24に付着した藁屑、塵埃等を除去するために排塵ファン51を逆転させ、コンバイン1の内側から外側に内気を送風する。
【0047】
ラジエータファン26の停止時に、インタークーラ用ファン14と排塵ファン51とが共に逆転するため、エンジンカバー15の濾過体16に付着した藁屑、塵埃等とラジエータカバー22の濾過体24に付着した藁屑、塵埃等とを共に除去でき、濾過体16,24の目詰まりが防止され、エンジン11のオーバーヒートを防止することができる。
また、排塵ファン51の中心部を実質的に補強リブ23上に位置させたことから、送風効率が相対的に高くなり、排塵効果が向上する。
排塵ファン51は開閉自在なラジエータカバー22の内側に一体的に取付けられており、ラジエータカバー22を開放し容易にラジエータ21の保守・点検を行なうことができる。
【0048】
次に、ラジエータ側の濾過体24及び排塵ファン51についての他の実施形態を説明する。なお、既述の実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0049】
図10、図11に示すように、この他の実施形態は、排塵ファン51の中心部をラジエータカバー22の濾過体24Cの略中心部に設けている。なお、排塵ファン51の中心部をラジエータファン26を軸支する回転軸26Aの延長線上となる位置に設けることがより好ましい。
また、ラジエータカバー22の濾過体24を通過し、機体内側に浸入した藁屑、塵埃等がラジエータ21のフィンに付着することを防止するため、ラジエータ21と排塵ファン51との間に濾過体24よりも濾過目合いの小さい補助濾過体25を設けている。
【0050】
次に、ラジエータ側の濾過体24及び排塵ファン51についての別の実施形態を説明する。なお、既述の実施形態と同一部材には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0051】
図12、図13に示すように、この別の実施形態は、2個の排塵ファン51をラジエータカバー22の濾過体24B、24Cの中心部にそれぞれ設けている。
また、ラジエータカバー22の濾過体24A、24B、24C、24Dの空隙を同一にすることもできるが、排塵ファン51が設けられていない濾過体24A,24Dの目合いを大きくし、濾過体24B、24Cの目合いを小さくするのが好ましい。
さらに、この実施形態の排塵ファン51の外径は同一であるが、大小異なる外径の排塵ファン51を用いることもできる。
【0052】
次に、実施形態の電動系について説明する。図14、図15に示すように、コントローラ84の入力側には、図21が参照されるように、操作席9の周辺に設けられた操作レバーで切換えられる脱穀クラッチ104の出力端子と、刈取クラッチ115の出力端子と、電動モータ45の出力端子が接続され、コントローラ84の出力側には、ラジエータファン26(電動モータ45)の入力端子と、排塵ファン51(排塵モータ51A)の入力端子と、インタークーラ用ファン14(インタークーラ用モータ14A)の入力端子が接続されている。
【0053】
コントローラ84は、脱穀クラッチ104及び電動モータ45の出力端子が共に入力状態または脱穀クラッチ104、刈取クラッチ115及び電動モータ45の出力端子が共に入力状態になった場合、ラジエータファン26、排塵ファン51及びインタークーラ用ファン14の入力端子をON状態にし、ラジエータファン26が停止し、排塵ファン51及びインタークーラ用ファン14は逆転を開始する。
すなわち、脱穀クラッチ104、刈取クラッチ115が接続されていない場合、操作者が電動モータ45の操作レバーの切換えを行なってもラジエータファン26は正転状態を維持し、排塵ファン51及びインタークーラ用ファン14は逆転を開始することはない。
【0054】
(第1制御例)
図16、図17には、第1制御例に係るタイムチャートとフローチャートを示している。第1制御例に係るタイムチャートでは、コントローラ84がラジエータファン26の回転停止に対応させて排塵ファン51を逆転させると共に、排塵ファン51の逆転に対応させてインタークーラ用ファン14を逆転させるにしている。より具体的には、排塵ファン51の第2回目の逆転と、インタークーラ用ファン14の逆転とを同期させ、また、排塵ファン51の逆転時間とインタークーラ用ファン14の逆転時間を同一時間にする制御を示している。なお、インタークーラ用ファン14は正転から直ちに逆転に移行できないために、わずかな休止時間(たとえばそれぞれ2秒)を確保するようにしてある。
【0055】
ステップS1でラジエータファン26に対応するタイマT1、排塵ファン51に対応するタイマT2、インタークーラ用ファン14に対応するタイマT3の初期設定を行ない。ステップS2でタイマT1,T2,T3を起動する。またステップS3では、コンバイン1の通常稼働時であるラジエータファン26、排塵ファン51、インタークーラ用ファン14の初期状態の設定が行なわれる。
【0056】
コントローラ84は、ステップS4でタイマT1,T2が5分経過したか否かを判断し、5分経過した場合には、ステップS5でラジエータファン26を正転状態から停止状態に切換え、排塵ファン51を停止状態から逆転状態に切換える。なお、5分経過していない場合には、ステップS3の状態を保持する。
【0057】
コントローラ84は、ステップS6でタイマT1,T2が5分5秒経過したか否かを判断し、5分5秒経過した場合には、ステップS7でラジエータファン26を停止状態から正転状態に切換え、排塵ファン51を逆転状態から停止状態に切換える。なお、5分5秒経過していない場合には、ステップS5の状態を保持する。
【0058】
コントローラ84は、ステップS8でタイマT3が9分58秒経過したか否かを判断し、9分58秒経過した場合には、ステップS9でインタークーラ用ファン14を正転状態から停止状態に切換える。なお、9分58秒経過ししていない場合には、ステップS7の状態を保持する。
【0059】
コントローラ84は、ステップS10でタイマT1,T2,T3が10分経過したか否かを判断し、10分経過した場合には、ステップ11でラジエータファン26を正転状態から停止状態に切換え、排塵ファン51を停止状態から逆転状態に切換え、インタークーラ用ファン14を停止状態から逆転状態に切換える。なお、10分経過していない場合には、ステップ9の状態を保持する。
【0060】
コントローラ84は、ステップS12でタイマT1,T2,T3が10分10秒経過したか否かを判断し、10分10秒経過した場合には、ステップ13でラジエータファン26を停止状態から正転状態に切換え、排塵ファン51を逆転状態から停止状態に切換え、インタークーラ用ファン14を逆転状態から停止状態に切換える。なお、10分10秒経過していない場合には、ステップ11の状態を保持する。
【0061】
コントローラ84は、ステップ14でタイマT3が10分12秒経過したか否かを判断し、10分12秒経過した場合には、ステップ1から制御を再開し、ステップ3でラジエータファン26を正転状態に保持し、排塵ファン51を停止状態に保持し、インタークーラ用ファン14を停止状態から正転状態に切換える。なお、10分12秒経過ししていない場合には、ステップS13の状態を保持する。
【0062】
第1例のタイムチャートでは、排塵ファン51の第2回目の逆転する時期とインタークーラ用ファン14の逆転する時期とを同期させているが、本発明は第1例タイムチャートに限定されず、排塵ファン51の全ての逆転する時期とインタークーラ用ファン14の逆転する時期とを同期させてもよく、また、排塵ファン51の第3回目あるいは第4回目の逆転する時期とインタークーラ用ファン14の逆転する時期とを同期させることもできる。
排塵ファン51の第3回目あるいは第4回目の逆転する時期、すなわち、排塵ファン51の間欠した逆転する時期とインタークーラ用ファン14の逆転する時間とを同期させる場合には、フローチャートにカウンタ機能を用いることにより行なうことができる。
また、本発明は第1例のタイムチャートに限定されず、正転する時間、停止する時間、逆転する時間はコンバイン1の使用環境などにより任意に設定できる。
【0063】
第1制御例においては、排塵ファン51の逆転に対応させてインタークーラ用ファン14を逆転させる構成としたことから、濾過体16,24から除去された藁屑、塵埃等が他方の濾過体24,16に再付着することはなく、エンジン11のオーバーヒートを抑制することができる。
【0064】
(第2制御例)
図18にタイムチャートとして示す第2制御例では、コントローラ84が排塵ファン51の停止状態から逆転状態への切換えをラジエータファン26の正転状態から停止状態への切換えより先行して、たとえば5秒前にする制御を示している。
【0065】
排塵ファン51が安定した逆転状態になるには時間がかかるため、排塵ファン51の切換えをラジエータファン26の切換えに先行して行なうことにより、ラジエータファン26が停止状態に切換えられた直後には、排塵ファン51が安定した逆転状態になっており濾過体24に付着した藁屑、塵埃等の排塵効果が高く、また、ラジエータファン26の停止する時間も短縮できるため冷却水の温度上昇も抑制することができる。
【0066】
(第3制御例)
図19にタイムチャートとして示す第3制御例では、第1制御例及び第2制御例と異なり、コントローラ84が、ラジエータファン26の停止状態から正転状態への切換えを、排塵ファン51の逆転状態から停止状態への切換えより先行して、たとえば5秒前にする制御を示している。
【0067】
ラジエータファン26が安定した正転状態になるには時間がかかるため、ラジエータファン26の切換えを排塵ファン51の切換えに先行して、たとえば5秒前に行なうことにより、排塵ファン51が停止状態に切換えられた直後には、ラジエータファン26が安定した正転状態になっておりラジエータ21の冷却効果が高く冷却水の温度上昇も抑制することができる。
【0068】
(参考制御例)
図20にタイムチャートとして示す参考制御例では、コントローラ84が排塵ファン51とインタークーラ用ファン14との切換えを非同期とする制御を示している。
【0069】
他方、図21を参照しながら動力系について説明すると、エンジン11の動力はプーリ31,プーリ103を介し脱穀クラッチ104、ギヤボックス105、扱胴106に伝動され扱胴106を回転させる。また、ベルト109を介しコンベア111、オプションであるスプレッタ110またはセカンドモア112に伝動される。なお、スプレッタ110とセカンドモア112とはいずれか一方を選択し使用する。
【0070】
エンジン11の動力はプーリ31,プーリ33を介しラジエータファン26、コンプレッサ66に伝動され、ラジエータファン26、コンプレッサ66を稼働させる。また、プーリ33に伝動された動力は、中間軸107、ベルト108、プーリ101Aを介しランスミッション101、HST102に伝動され、さらに、中間軸107、プーリ113を介しギヤボックス114に伝動される。
【0071】
ギヤボックス114に伝動された動力は、刈取クラッチ115を介しフィーダチェン116、オーガドラム117、刈刃118、リール119に伝動され、オーガドラム117、刈刃118、リール119を回転させる。また、ギヤボックス114に伝動された動力は、ギヤボックス114に軸支された選別駆動第2軸121を介しプレファン122、塵埃ファン123、1番コンベア124、2番コンベア125、セカンドファン126に伝動され、1番コンベア124、2番コンベア125を稼働させる。
【0072】
1番コンベア124に伝動された動力は、パケット下軸131を介しレベリング軸132に伝動され、2番コンベア125に伝動された動力は、2番コンベア軸127を介し2番縦コンベア128、2番上コンベア129に伝動され、2番縦コンベア128、2番上コンベア129を稼働させる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、農業用作業車輌に適用できるものである。
【符号の説明】
【0074】
1 コンバイン
2 車台(機体)
11 エンジン
12 インタークーラ
14 インタークーラ用ファン
16 濾過体
21 ラジエータ
22 ラジエータカバー
23 補強リブ
24 濾過体
25 補助濾過体
26 ラジエータファン
26A 回転軸
31 プーリ
31A クランク軸
32 プーリ
33 プーリ
35 ベルト
36 ベルト
37 テンションローラ
41 回転軸
42 アーム
45 電動モータ
47 ブレーキ板
51 排塵ファン
84 コントローラ
104 脱穀クラッチ
115 刈取クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(11)の吸気経路に設けたインタークーラ(12)と、前記エンジン(11)の冷却水を冷却するラジエータ(21)と、前記インタークーラ(12)及びラジエータ(21)の外側に配置した外気濾過用の濾過体(16,24)とを有し、
前記インタークーラ(12)よりも機体内側に配置した正逆転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のインタークーラ用ファン(14)と、前記ラジエータ(21)よりも機体内側に配置した正転状態と回転停止状態とに切換可能な外気吸入用のラジエータファン(26)と、前記ラジエータ(21)よりも機体外側であって前記濾過体(24)より機体内側に配置した逆転状態と回転停止状態とに切換可能な排塵ファン(51)とを備え、
前記ラジエータファン(26)の回転停止に対応させて排塵ファン(51)を逆転させると共に、該排塵ファン(51)の逆転に対応させてインタークーラ用ファン(14)を逆転させる構成としたことを特徴とする作業車輌の原動部構造。
【請求項2】
前記ラジエータファン(26)が回転停止する前に前記排塵ファン(51)が逆転を開始する構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項3】
前記排塵ファン(51)が逆転状態から回転停止状態に移行する前にラジエータファン(26)が正転を開始する構成としたことを特徴とする請求項1または2記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項4】
前記ラジエータファン(26)の正転状態と回転停止状態との切換を行う電動モータ(45)を設け、前記電動モータ(45)は、脱穀クラッチ(104)が接続された後に作動する構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項5】
前記電動モータ(45)は、刈取クラッチ(115)が接続された後に作動する構成としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項6】
前記ラジエータ(21)と排塵ファン(51)との間に、前記濾過体(24)よりも濾過目合いの小さい補助濾過体(25)を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項7】
前記ラジエータ(21)の外側にラジエータカバー(22)を設け、このラジエータカバー(22)に複数の外気濾過用の濾過体(24B,24C)を配置し、該濾過体(24B,24C)は、補強リブ(23)を境にして複数の濾過体に分割し、前記排塵ファン(51)の中心部と前記補強リブ(23)とを側面視で互いに重合する位置に配置したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。
【請求項8】
前記ラジエータ(21)の外側に、該ラジエータ(21)の外側面の面積より大きい面積を有するラジエータカバー(22)を設け、該ラジエータカバー(22)に複数の外気濾過用の濾過体(24B,24C)を設け、該複数の濾過体(24B,24C)に対応する位置に排塵ファン(51,51)をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業車輌の原動部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−45991(P2012−45991A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187826(P2010−187826)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】