説明

侵入検知センサー

【課題】 フェンスのよじ登りや飛び越えの侵入を検知でき、しかも大掛かりな設備構成を不要にして広い範囲での侵入を検知する。
【解決手段】 光ファイバー12、13A、13Bの長さ方向に一定間隔でファイバーガラスの屈折率が異なる複数種類のFBG(グレーティング部)を設け、この光ファイバーをフェンス10の上部支柱間またはフェンス面に敷設し、光検出装置14、15A、15Bで光ファイバーへの光入力に対して各FBGからの反射波を導出し、波長シフト検出装置16にはフェンスに加えられた応力による光ファイバーの揺れによって、波長シフトを呈したFBGの位置を検出する。パターン認識装置19は、波長シフトした各FBGの位置をそれぞれパルス信号のタイミングの違いとして取り込み、パルス信号の出力パターンを基に、侵入によるフェンスの揺れと風などの他の要因によるフェンスの揺れを識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバー検知センサーによって建物や敷地内への侵入を検知する侵入検知センサーに係り、特にFBG方式の光ファイバー検知センサーをフェンス面やフェンス上部に敷設して侵入を検知する方式に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空港、港湾、防衛施設やその他の重要施設におけるテロや不法侵入に対するセキュリティに関心がもたれており、建物や敷地内への侵入を検知する侵入検知装置や侵入検知システムが種々提案され、実施もされている。
【0003】
この種の装置、システムに使用される検知センサーには、振動センサー、赤外線遮断センサー、電界センサー、機械的なテンションセンサー、監視モニタによる監視画像の状態変異センサーが知られている。さらに、光ファイバーを利用した光ファイバー式センサーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
検知センサーと連携させる監視システムとしては、ITVカメラによる画像での記録と遠隔モニタ、さらには画像解析を行う方式、警報器による警報発生と無線通報する方式などが知られている。
【0004】
光ファイバーを利用した他の検知センサーとして、FBG(ファイバー・ブラッグ・グレーティング)方式による光ファイバー検知センサー、およびOTDR(オプティカル・タイム・ドメイン・レフレクトメトリー)方式のものがある。
【0005】
図3は、FBG方式による光ファイバー式検知センサーを原理的に説明するものである。同図に示すように、光ファイバー100の長さ方向に一定間隔でファイバーガラスの屈折率が異なるグレーティング部(FBG)101を設ける。グレーティング部101は、光信号発生器102から入射されたパルス光のうち、間隔λLの2倍の波長成分のみを共振反射させる。このときの反射光は、グレーティング部101の伸び歪み量に比例して波長がシフトすることを利用し、この反射光をハーフミラー103で導出し、さらに狭帯域可変フィルタ104を通して光検出器105で検知することで、波長シフト(周波数シフト)の度合いから光ファイバーの伸び歪み量が一定値を越えたか否かを検知することができる。この検知がなされたときは、当該グレーティング部101の位置を侵入箇所として識別することができる。
【0006】
図4は、OTDR方式による光ファイバー式検知センサーを原理的に説明するものである。光ファイバーは、その内部に光屈折率の異なる部分が存在し、この部分を光が通過するときに屈折率の違いにより光が屈折、散乱され、入射光と同じ波長の光が入射端に反射されてくる。OTDR方式の検知センサーは、このレーリ散乱光を利用し、光パルス発生器106から光ファイバー107に入射し、レーリ散乱光をハーフミラー108で導出し、光検出器109で受光し、この光の量や反射時間から光ファイバーの歪みや変位さらには断線位置を検知することができる。
【0007】
上記のFBG方式による光ファイバー検知センサーやOTDR方式による光ファイバー検知センサーを利用した侵入検知装置では、光ファイバーを検知対象とする敷地や施設のフェンスや塀に沿って敷設しておくことで侵入検知が可能となる。特に、FBG方式による光ファイバー検知センサーでは、反射波長の異なる複数のFBGを1本の光ファイバーのコア部に組み込んでおくことで、多数箇所の同時侵入検知が可能となる。
【0008】
この構成は、図5に例を示すように、光ファイバー110のコア部に適当な間隔でFBG(グレーティング部)110A〜110Nを組み込み、これら各FBG110A〜110Nの反射波長をλ1、λ2、λ3、…と互いに異なるものにした構造としておく。光信号発生器111は、光ファイバー110に組み込まれた各FBGがもつ反射波長を包含する帯域の光信号を連続的または間欠的(パルス的)に発生する。ハーフミラー112は、光信号発生器111からの光信号を光ファイバー110への光入力とし、これら光ファイバー110の各FBGからの反射光を狭帯域可変フィルタ113に光導出する。狭帯域可変フィルタ113は、各FBGからの各反射波を一括して透過させ、これら反射波を光検出器114に出力する。光検出器114は、フィルタ113を透過した光入力を、同じ周波数またはそれを1/nに逓倍した低い周波数をもつ電気信号に一括して変換する。波長シフト検出器115は、光検出器114に得る周波数信号と基準周波数発生器116からの基準周波数信号との周波数比較を行い、周波数シフトが発生した反射波長別のタイミングをもつパルス信号を得る。侵入位置判定部117は、パルス信号のタイミングを基に反射波長がシフトしたFBGの位置、つまり侵入位置を判定し、その出力を得る。
【特許文献1】特開2001−296111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のFBG方式やOTDR方式による光ファイバー検知センサーを利用した侵入検知装置やシステムの場合、フェンス面またはフェンス上部の忍び返し部位に沿って検知センサーの光ファイバーを敷設しておくことで、これら光ファイバーに侵入者が触れたり、フェンス切断や破壊で光ファイバーに歪発生や切断されることで侵入発生として検知することができる。また、これら光ファイバー検知センサーは、耐EMI、耐候性、メンテナンスフリーなどで他の検知センサーに比べて優れており、侵入検知および監視のためのセンサーとして好適となる。
【0010】
しかし、侵入者が光ファイバーに触れることなくフェンスをよじ登った場合やフェンスに梯子をかけて登りその忍び返し部位を飛び越えた場合、光ファイバーでの侵入検知ができない場合がある。
このような問題を解消する方式として、フェンスに人がよじ登ったり、梯子で登るときのフェンスの揺れを振動センサーで検知することができる。また、フェンス直近に赤外線のビームを飛ばしておき、侵入者が赤外線ビームを遮ることで検知することができる。また、フェンス直近に電界センサーを設けておき、侵入者が電界センサーに近づいたことを検知することができる。
【0011】
しかしながら、これら検知方式では、1つの検知センサーによる検知可能なエリアが小さく(数メートル程度)、広い範囲に張られたフェンス全域での検知には多数の検知センサーを設置する必要があるし、それらの多数の検出信号を監視室まで多数の信号ケーブルで引き込まなければならないという問題が残る。
【0012】
本発明の目的は、FBG方式の検知センサーを利用して、フェンスのよじ登りや飛び越えの侵入を検知でき、しかも大掛かりな設備構成を不要にして広い範囲での侵入を検知できる侵入検知センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の原理的な説明)
一般的に、フェンスはコンクリート塀などに比べて機械的な強度が弱く、人がフェンスによじ登ったり、梯子をかけて登るときにフェンスに揺れが起きる。このフェンスの揺れによって、フェンスに敷設した光ファイバーに起きる揺れを利用して、光ファイバーのFBG(グレーティング部)部位に伸び歪みを起こさせ、その反射波長のシフトとして弁別できれば、光ファイバーに触れることなくフェンスをよじ登った場合などにもその侵入を検知することができる。
このことに着目し、本発明は、フェンスの揺れに伴う光ファイバーの揺れを基に侵入を検知する侵入検知センサーとするものである。
【0014】
上記の光ファイバーの揺れを基に侵入検知を可能とするには、検知センサーの感度を高くしておくこと、すなわちフェンスの揺れ量に対して光ファイバーのFBGに起きる伸び歪み量が大きくなる光ファイバーの敷設構造、または反射波の波長シフト検出の弁別性能を高めた構成、さらには両者を併用させた構成とすればよい。しかし、検知センサーの感度を高くすると、風雪による光ファイバーの揺れや人がいたずらでフェンスに接触したり揺り動かした場合の光ファイバーの揺れによって誤った侵入検知をしてしまうおそれがある。これら誤った侵入検知を回避するには、フェンス設置環境の違いに応じた検知センサーの感度調整や保守点検に多くの手間を必要とするし、確実な判別も難しくなると予測される。
【0015】
本発明は、侵入者がフェンスによじ登ったり、梯子をかけて登ることによる光ファイバーの揺れと、風雪など他の要因による光ファイバーの揺れには、検出される反射波の波長シフト量の大きさや発生周期などで異なる様相(パターン)を呈することに着目し、波長シフトの発生パターン認識によって、侵入とその他の要因を高い確度で識別可能にし、さらにパターン認識のためのパターンデータの値を自動学習機能で調整するようにした侵入検知センサーとするものである。以上のことから、本発明は、以下の構成を特徴とする。
【0016】
(1)光ファイバーの長さ方向に一定間隔でファイバーガラスの屈折率が異なる複数種類のFBG(グレーティング部)を設け、この光ファイバーを検知対象範囲に沿って設置されるフェンスの上部またはフェンス面の少なくとも一方に敷設し、前記光ファイバーへの光入力に対して前記各FBGからの反射波を導出し、この反射波のうち波長シフトを呈したFBGの位置を侵入箇所として検知するFBG方式による侵入検知センサーであって、
前記フェンスに加えられた応力による前記光ファイバーの揺れに伴う前記FBGからの反射波長シフトを検出し、該波長シフトの様相で侵入を検知する検知手段を設けたことを特徴とする。
【0017】
(2)前記検知手段は、前記各FBGからの各反射波長シフトを電気信号の周波数変化として検出する光検出手段と、各周波数信号と基準周波数信号との周波数比較によって波長シフトした各FBGの位置をそれぞれパルス信号のタイミングの違いとして検出する波長シフト検出手段と、前記パルス信号の出力パターン(様相)を基に、前記フェンスからの侵入によるフェンスの揺れと他の要因によるフェンスの揺れを識別するパターン認識手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
(3)前記パターン認識手段は、前記フェンスからの侵入形態の違い別にした項目と前記他の要因の違い別にした項目と、前記パルス信号の出力パターンの違い別にした項目の組み合わせをテーブルデータとしたパターンテーブルを設け、このパターンテーブルと前記パルス信号の出力パターンとの突き合わせによって侵入によるフェンスの揺れと他の要因によるフェンスの揺れを識別することを特徴とする。
【0019】
(4)前記パターン認識手段は、学習機能によって前記パターンテーブルの値を自動調整する手段を設けたことを特徴とする。
【0020】
(5)前記検知手段は、前記各FBGからの反射波の検出を複数回の平均値演算で求める構成にしたことを特徴とする。
【0021】
(6)前記検知手段は、複数回の侵入検知で最終的な判定を得る構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上のとおり、本発明による侵入検知センサーによれば、フェンスの揺れに伴う光ファイバーの揺れを基に侵入を検知するため、FBG方式の検知センサーを利用して、フェンスのよじ登りや梯子を使ったフェンス飛び越えの侵入を検知でき、しかも大掛かりな設備構成を不要にして広い範囲での侵入を検知できる。
【0023】
また、FBG方式の光ファイバーの波長シフトの発生パターン認識手段を設けるため、侵入とその他の要因を高い確度で識別することができる。
【0024】
また、パターン認識に自動学習機能を持たせるため、検知センサーの設置環境やその変化に応じた的確な認識ができるし、パターンデータの調整等の手間を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明の実施形態を示す侵入検知センサーの構成図である。敷地の外郭に沿って設置されるフェンス10は、多数のフェンスユニットの連接構造とする。フェンス10の上部の支柱間に必要によっては有刺線11を張り、それに平行させてFBG方式の光ファイバー12を敷設しておく。また、フェンス10の面にはFBG方式の光ファイバー(1本または複数本)を直線状または蛇行させて敷設しておく。同図の場合は2本のFBG方式の光ファイバー13A、13Bを敷設する場合を示す。
【0026】
各光ファイバー12、13A,13Bの一端部には光検出装置14、15A,15Bを設け、光ファイバーからの反射波を周波数信号として検出する。これら光検出装置14、15A、15Bは、図5と同様に、光信号発生器111、ハーフミラー112、フィルタ113および光検出器114で実現される。各光検出装置14、15A、15Bの検出信号を取り込む波長シフト検出装置16は、図5と同様に、基準周波数発生器116と波長シフト検出器115で構成し、各光ファイバーからの反射波の波長シフト発生量が一定の閾値以上のものをパルス信号のタイミングとして得る。
【0027】
但し、光検出装置14、15A、15Bおよび波長シフト検出装置16による検出感度は、従来のものよりも高くなる調整をしておき、フェンスへのよじ登りや風雪によるフェンスの小さい揺れにも光ファイバーの反射波の波長シフト発生として抽出および弁別できるようにしておく。さらに、検出感度を向上させる方法として、フェンスの揺れで光ファイバー12と13A、13Bに大きな伸び歪みを加えることができる機械的な手段を設けるのが好ましい。この手段は、例えば、フェンスの支柱の中間位置で光ファイバー12に適当な大きさの重りを取り付けておくこと、光ファイバー13A、13Bに係合させてフェンス面に重りを取り付けておくこと、光ファイバーの長手方向に沿って合成樹脂製または金属製の刺部材を適当な間隔で取り付けた有刺線構成とすることなどで実現される。
次に、インターフェース17は、波長シフト検出装置16の検出パルス信号を監視室までパラレル伝送(もしくはシリアル伝送)し、これらパルス信号を監視室側のインターフェース18に取り込み、その復調したパルス信号を得る。
【0028】
パターン認識処理装置19は、インターフェース18で取り込んだパルス信号が呈する様相(パルスパターン)とパターンテーブル19Aとの突き合わせによって、風など他の要因と識別して侵入の有無を判定する。このパルスパターンによる侵入の有無判定方式を詳細に説明する。
【0029】
(A)フェンスへ加えられる応力の分類
フェンスに加えられる応力は場所および強さが異なり、それに伴う光ファイバーの反射波の波長シフト位置および量も異なる。また、応力の発生様相は、風や何かがぶつかった場合と、侵入者がフェンスによじ登った場合で異なる。例えば、風の場合は、フェンスへ加わる応力の振動数(振動周期)が高いが、変位量は少ないうえ、フェンス面全般にほぼ均一に加えられる。一方、フェンスへの衝突による応力は、加えられる部分が限定され、振動数が低く、変化量が大きい。また、フェンスへのよじ登りによる応力は、加えられる場所の移動があり、振動数が風よりは低く、変化量は大きい。また、いたずらによるフェンスの揺り動かしは、応力の加えられる場所が限定される。
以上の例のように、フェンスに加えられる応力は、以下の表に示すように、その要因によってさまざまな様相を呈し、これに伴う光ファイバーの伸び歪み量、すなわち反射波のシフト量とその発生パターンが異なる。
【0030】
【表1】

【0031】
なお、上記の表は、一定時間での比較であり、変位箇所についてはフェンス支柱間のフェンス面での移動の有無とする。
(B)応力により発生するパルスパターンの様相
【0032】
図2は、フェンス10に加えられる応力によって光ファイバー12と13A、13Bに発生する反射波の波長シフトの様相、つまり波長シフト検出装置で検出されるパルス信号列の例を示す。パルス信号Aは、光ファイバー12に加えられた応力による反射波シフト量が一定の閾値を越えたときに出力されたものである。同様に、パルス信号B、Cは、光ファイバー13A、13Bに加えられた応力による反射波シフト量が一定の閾値を越えたときに出力されたものである。
【0033】
これらパルス信号A,B,Cに示されるように、フェンスの揺れ発生要因によって、パルス信号A,B,Cに発生周期の長短および発生頻度の高低があり、またパルス信号A,B,C間の発生タイミングに時間的なずれを伴う場合がある。
【0034】
例えば、パルス信号Aの発生時刻t1とパルス信号Bの発生時刻t2のように同じフェンス位置で揺れが発生しても時間的にずれΔTがある場合と、時刻t6のように同じタイミングで両パルス信号A,Bが発生する場合がある。同様に、光ファイバー13Aと13Bに発生する反射波の波長シフトの様相の違いで、パルス信号B,Cのように発生周期の長短および発生頻度の高低、発生タイミングに時間的なずれを伴う場合がある。
【0035】
(C)パターンテーブルのデータ構成
上記のように、フェンスへ加えられる応力には種々の要因があり、これら応力要因によって発生するパルスパターンの様相も種々異なる。パターンテーブル19Aは、フェンスからの侵入形態の違い別にした項目と他の要因の違い別にした項目と、パルス信号の出力パターンの違い別にした項目の組み合わせをテーブルデータとしてもつものであり、このテーブルデータ例を下記の表に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
この表の場合、光ファイバー13A,13Bに加えられる応力内訳として、フェンスに対する「風」、「よじ登り」、「衝突」、「破断」および「揺り動かし」の項を設け、これら要因におけるパルス信号B,Cの発生時間遅れΔTの大小と、パルス信号B,Cの数の多少(発生頻度)の項を設ける。なお、各項の組み合わせになるパターンテーブルの値は「大小」や「多少」で示すが、実用上は数値として設定する。
また、光ファイバー12に加えられる応力内訳としては、例えば、表1に対応するテーブルデータを構成する。
【0038】
(D)パターンテーブルを使用した応力要因の判定
パターン認識処理装置19は、波長シフト検出装置16から伝送されるパルス信号A,B,Cの様相について、上記の表1や表2に相当するテーブルデータ19Aをもち、例えば表2のパターンテーブルの時間遅れΔTと発生頻度についてパルス信号B,Cと突き合わせ、これらが全て一致またはほぼ一致する応力要因を決定し、この応力要因からフェンスの揺れが「風」によるものか、フェンスへの「よじ登り」によるものかなどの識別をする。
【0039】
具体的には、光ファイバー12に発生するFBG部位の変化量を基にした侵入判定は、光ファイバー12ではフェンスの乗り越えによる行為を検知するため、乗り越えに際してのフェンスへの「つかまり」、「ひっかけ」、「引き込み」、「踏ん張り」などによる応力発生を、風などの他の要因と弁別した判定を得る。また、光ファイバー13A,13Bに発生するFBG部位の変化量を基にした侵入判定は、光ファイバー13A,13Bではフェンスの破断やよじ登り行為を検知するため、フェンスに加えられる応力部位とそれぞれの部位の変化量と、それぞれの部位の応力の加わり方の時間差から、風などの他の要因と弁別した判定を得る。
【0040】
以上のように、本実施形態になる侵入検知センサーによれば、フェンスの揺れ発生要因の違いを波長シフトの発生頻度やシフト量の違いからパターン認識することで、侵入者がフェンスによじ登ったり、梯子をかけて登ることによる光ファイバーの揺れと、風雪など他の要因による光ファイバーの揺れとを高い確度で識別した侵入検知が可能となる。しかも、センサー構成としては、2本(または3本以上)の光ファイバーを敷設した従来設備をそのまま利用することができる。換言すれば、従来設備の検知機能をフェンスへのよじ登りや飛び越え検知まで拡張できる。
【0041】
なお、本実施形態は、3本の光ファイバーからそれぞれ検出するパルス信号について、その発生頻度と両信号の時間遅れをパラメータとするパターンテーブルを使用して侵入検知をするセンサー構成を示すが、これらは適宜設計変更できる。例えば、光ファイバー12のみでフェンスの揺れによる侵入検知を行う構成、また、光ファイバー12、13A、13Bをそれぞれ複数本構成として適当に離間させてフェンスに配置し、各光ファイバーからの反射波で検出するパルス信号A〜Nについてそれらの発生頻度と時間遅れの組み合わせで侵入を検知する構成にできる。また、パルスパターンのパラメータにはパルス信号の発生周期(振動数)を含ませ、この周期要素も含めた判定を行う。
【0042】
また、パターンテーブルの値は、固定のものでなく、侵入検知センサーが設置される地域環境に応じて適宜変更されるものである。例えば、強い風が吹くことの多い地域に設置される場合と、逆に風の弱い地域に設置される場合でテーブル値が調整される。また、住宅密集地の近くで人通りの多い場所に設置される場合は、フェンスが揺り動かされることが多くなるため、テーブル値を高めに調整する。
【0043】
また、パターン認識処理装置19は、自動学習機能を持たせることで、他の要因によるフェンスの揺れと侵入によるフェンスの揺れを高い確度で識別できるようになるし、頻繁な感度調整を不要にする。例えば、パターン認識は、パルス信号の発生頻度等をパラメータ(特徴量)とするニューラルネットワーク方式で行い、教師データを使用した学習機能によってセンサー設置環境や季節等の変化に対して、各パラメータ値を適宜変更する(パラメータの重み付け調整)。
【0044】
また、パターン認識処理の判定は、1回のパターン認識で侵入を判定する構成に限らず、複数回の侵入検知で最終的な判定を得ることで、侵入検知の信頼性を高めることができる。同様に、光検出装置と波長シフト検出装置は、各FBGからの反射波の検出と波長シフト検出を複数回の平均値演算で求めることで、侵入検知の信頼性を高めることできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態を示す侵入検知センサーの構成図。
【図2】図1の波長シフト検出装置で検出されるパルス信号列の例。
【図3】FBG方式の検知センサーの原理的な説明図。
【図4】OTDR方式の検知センサーの原理的な説明図。
【図5】FBG方式における波長と侵入位置検出関係の説明図。
【符号の説明】
【0046】
10 フェンス
11 有刺線
12、13A、13B 光ファイバー
14、15A,15B 光検出装置
16 波長シフト検出装置
17、18 インタフェース
19 パターン認識処理装置
19A パターンテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーの長さ方向に一定間隔でファイバーガラスの屈折率が異なる複数種類のFBG(グレーティング部)を設け、この光ファイバーを検知対象範囲に沿って設置されるフェンスの上部またはフェンス面の少なくとも一方に敷設し、前記光ファイバーへの光入力に対して前記各FBGからの反射波を導出し、この反射波のうち波長シフトを呈したFBGの位置を侵入箇所として検知するFBG方式による侵入検知センサーであって、
前記フェンスに加えられた応力による前記光ファイバーの揺れに伴う前記FBGからの反射波長シフトを検出し、該波長シフトの様相で侵入を検知する検知手段を設けたことを特徴とする侵入検知センサー。
【請求項2】
前記検知手段は、前記各FBGからの各反射波長シフトを電気信号の周波数変化として検出する光検出手段と、各周波数信号と基準周波数信号との周波数比較によって波長シフトした各FBGの位置をそれぞれパルス信号のタイミングの違いとして検出する波長シフト検出手段と、前記パルス信号の出力パターン(様相)を基に、前記フェンスからの侵入によるフェンスの揺れと他の要因によるフェンスの揺れを識別するパターン認識手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の侵入検知センサー。
【請求項3】
前記パターン認識手段は、前記フェンスからの侵入形態の違い別にした項目と前記他の要因の違い別にした項目と、前記パルス信号の出力パターンの違い別にした項目の組み合わせをテーブルデータとしたパターンテーブルを設け、このパターンテーブルと前記パルス信号の出力パターンとの突き合わせによって侵入によるフェンスの揺れと他の要因によるフェンスの揺れを識別することを特徴とする請求項2に記載の侵入検知センサー。
【請求項4】
前記パターン認識手段は、学習機能によって前記パターンテーブルの値を自動調整する手段を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の侵入検知センサー。
【請求項5】
前記検知手段は、前記各FBGからの反射波の検出を複数回の平均値演算で求める構成にしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の侵入検知センサー。
【請求項6】
前記検知手段は、複数回の侵入検知で最終的な判定を得る構成にしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の侵入検知センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−208061(P2006−208061A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17600(P2005−17600)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(503219330)株式会社コムセック (2)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】