説明

侵入検知装置

【課題】低消費電力化を図りつつ人以外の移動物体の誤検知を抑制する。
【解決手段】本実施形態の侵入検知装置では、ドップラ信号の信号レベルが所定の閾値(窓ガラス破壊検知の閾値)を超えるまでは判定部6が送波部1の超音波の送波を停止させ、ドップラ信号の信号レベルが前記閾値を超えたら判定部6が送波部1に超音波を送波させるようにしている。このため、窓ガラスの破壊が検知されなければ送波部1が送波を停止することで低消費電力化を図ることができる。しかも、窓ガラスの破壊が検知された後に侵入検知の処理が実行されるため、人以外の物体の移動(例えば、立て掛けられた書類や日除け<サンシェード>などの倒れ)による侵入者の誤検知が抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車内に侵入する不審者を検知する侵入検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車両盗難並びに車上盗難が増加しているため、駐車中の車両に不審者が侵入した場合に警報音を鳴動する車載用盗難警報装置が普及してきている。かかる車載用盗難警報装置には監視空間(車内)への不審者(人)の侵入(存在)を検知するために侵入検知装置が搭載されている。この種の侵入検知装置は、所定周波数の超音波を車内に放射しておき、車内に存在する人の移動に伴ってドップラ効果として生じる反射波の周波数偏移を検出するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上述のような侵入検知装置は、自動車の駐車中(エンジンを切った状態)に動作させる必要があるが、自動車に搭載されているバッテリから電源供給を受けている関係上、バッテリ上がりを防止するために消費電力の低いことが要求される。そこで、従来は超音波の送受波を間欠的に行うことで低消費電力化が図られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−183828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように間欠的に超音波を送受波した場合、消費電力を下げるために間欠時間を長くすると検知精度が低下してしまう虞がある。また、従来の侵入検知装置では、車内の人以外の物体の移動(例えば、立て掛けられた書類や日除け<サンシェード>などの倒れ)が超音波を反射し、当該人以外の移動物体を侵入者(人)と誤検知してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、低消費電力化を図りつつ人以外の移動物体の誤検知を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の侵入検知装置は、自動車の車内への人の侵入を検知する侵入検知装置であって、所定周波数の発振信号が入力されると当該周波数の超音波を前記車内に送波する送波部と、前記車内に伝搬する超音波を受波して電気信号に変換する受波部と、当該受波部から出力される電気信号と前記発振信号を混合する混合部と、当該混合部から出力されるドップラ信号に基づいて前記車内の人の存否を判定する判定部とを備え、前記判定部は、前記ドップラ信号の信号レベルが所定の閾値を超えるまでは前記送波部に超音波の送波を停止させ、前記信号レベルが前記閾値を超えたら前記送波部に超音波を送波させることを特徴とする。
【0008】
この侵入検知装置に於いて、前記判定部は、前記送波部に超音波を送波させてから所定時間が経過しても人が存在すると判定しない場合、前記送波部に超音波の送波を停止させた状態で前記ドップラ信号の信号レベルが前記閾値を超えるか否かの判定を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の侵入検知装置は、低消費電力化を図りつつ人以外の移動物体の誤検知を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る侵入検知装置の実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上の動作説明用のフローチャートである。
【図3】窓ガラスの破壊音の周波数特性図である。
【図4】(a)は窓ガラスの破壊音の時間軸上の波形図、(b)は窓ガラスの破壊音によるドップラ信号の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の侵入検知装置は、図1に示すように送波部1、受波部2、受波信号増幅部3、混合部4、ドップラ信号増幅部5、判定部6、スイッチ7などを備え、自動車の車内に設置される。
【0012】
判定部6は、マイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略す。)やメモリなどを主構成要素とし、専用のソフトウェア(プログラム)をマイコンで実行することによって、後述する判定処理などの種々の処理を実行する。また、判定部6はクロック回路(発振器)を具備しており、所定の周波数(例えば、40±αキロヘルツ)の発振信号を出力することができる。
【0013】
送波部1は、圧電素子を用いた超音波マイクロホンからなり、スイッチ7を介して入力される発振信号に等しい周波数の超音波を送波する。スイッチ7は判定部6から出力される発振信号を送波部1に入力する状態(オン状態)と、発振信号を送波部1に入力しない状態(オフ状態)とを択一的に切り換えるものである。但し、スイッチ7は判定部6から出力される制御信号によってオン状態とオフ状態に切り換えられる。
【0014】
受波部2は、送波部1と同じく圧電素子を用いた超音波マイクロホンからなり、車内を伝搬する超音波を受波し、電気信号に変換して出力する。受波信号増幅部3は、受波部2で変換された電気信号のなかで所定の周波数帯(例えば、40±β(ただし、β>α)キロヘルツの周波数帯)の周波数成分のみを選択的に増幅する。なお、以下では受波信号増幅部3で増幅されて出力される信号を受波信号と呼ぶ。
【0015】
混合部4は、受波信号増幅部3で増幅される受波信号と判定部6から出力される発振信号とを混合(ミキシング)し、2つの信号の周波数差に等しい周波数成分を持った信号(ドップラ信号)を出力する。そして、混合部4から出力されるドップラ信号は、ドップラ信号増幅部5で増幅された後に判定部6に入力される。
【0016】
判定部6によってスイッチ7がオンされているとき、送波部1から送波される超音波が車内に存在する物体(例えば、シートやドア、ドアの窓ガラスなど)に反射し、反射した超音波が受波部2で受波される。このとき、前記物体がシートやドアなどの静止物であれば、混合部4に入力される受波信号の周波数と発振信号の周波数が一致するため、混合部4から出力されるドップラ信号の信号レベルがゼロとなる。しかしながら、車内に侵入した不審者(人)に超音波が反射した場合、その反射波が受波部2で受波されたときの受波信号は、人の移動速度に応じた分だけ発振信号の周波数よりも高い(あるいは低い)周波数となる。故に、混合部4から出力されるドップラ信号の信号レベルがゼロとはならず、人の移動速度に比例した信号レベルとなる。判定部6は、ドップラ信号の信号レベルを所定の閾値(侵入検知の閾値)と比較し、侵入検知の閾値を超えれば、車内に人が侵入したと判定して外部(例えば、車載用盗難警報装置)に侵入検知信号を出力する。
【0017】
ところで、自動車のドアロック装置が改良され、以前のように工具を用いても簡単に解錠することができなくなっている。そのため、近年ではドアの窓ガラスを破壊して侵入する手口が増えてきている。そこで、本発明者らは、ドアの窓ガラスが破壊されたときに車内に伝搬される音波をマイクロホンで集音し、当該音波を高速フーリエ変換して最大値と最小値を算出する実験を行った。図3は20ヘルツ〜80キロヘルツの範囲で算出された各周波数帯毎の信号パワーの最大値(max)と最小(min)を示している。この実験結果から、窓ガラスの破壊音は、送波部1から送波される超音波が含まれる周波数帯(40キロヘルツ帯)にもある程度の信号パワーを有する周波数成分を含んでいることが判明した。
【0018】
次に、本発明者らは、本実施形態の侵入検知装置の受波部2で窓ガラスの破壊音を受波したとき、ドップラ信号増幅部5からどのような信号が出力されるかという実験を行った。この実験において、受波部2から出力される電気信号は、図4(a)に示すような波形となった。一方、ドップラ信号増幅部5からは、図4(b)に示すような波形のドップラ信号が出力された(但し、図4(b)では周波数の和と差の両方の周波数成分の波形を図示している)。この実験結果から、送波部1による超音波の送波を停止し且つ受波部2が受波可能な状態において、ドップラ信号増幅部5から出力されるドップラ信号の信号レベルが所定の閾値(窓ガラス破壊検知の閾値)を超えれば、窓ガラスが破壊されたと判定することができると考えられる。
【0019】
したがって、本実施形態における判定部6は、前記実験結果を踏まえ、図2のフローチャートに示す処理を実行する。
【0020】
ここで、自動車に搭載されているECU(電子制御ユニット)から判定部6に対して、ドアロック装置(ドアロック)の状態(施錠又は解錠)が通知されている。したがって、判定部6では、ECUからの通知に基づいてドアロックの施錠、解錠を判定することができ、ドアロックが施錠されるまで(ドアロックが解錠状態のとき)はスタンバイ状態となって侵入検知装置を停止している(ステップ1)。
【0021】
そして、自動車のドアロック装置が施錠されると判定部6がスタンバイ状態から復帰して侵入検知装置が起動し、判定部6が侵入検知動作を開始する(ステップ2)。但し、この時点ではスイッチ7がオフになっていて送波部1の送波は停止している。起動後、判定部6は送波部1以外の各部を動作させ、ドップラ信号増幅部5から出力されるドップラ信号の信号レベルが窓ガラス破壊検知の閾値を超えるか否かを判定する(ステップ3)。そして、ドップラ信号の信号レベルが閾値を超えれば、判定部6はドアの窓ガラスが破壊された可能性があると判定し、制御信号を出力してスイッチ7をオンして送波部1に超音波の送波を開始させる(ステップ5)。一方、ドップラ信号の信号レベルが閾値を超えなければ、判定部6は、ドアロックが解錠されているか否かを判定し(ステップ4)、ドアロックが解されていなければステップ3の処理を繰り返し、ドアロックが解錠されていれば、スタンバイ状態に移行して侵入検知装置を停止した後にステップ1に戻る(ステップ9)。
【0022】
送波部1の送波を開始した後、判定部6はドップラ信号増幅部5から出力されるドップラ信号の信号レベルを侵入検知の閾値と比較することで侵入者の検知を行う(ステップ6)。そして、ドップラ信号の信号レベルが侵入検知の閾値を超えれば、判定部6は車内に侵入者が侵入していると判定して外部(例えば、車載用盗難警報装置)に侵入検知信号を出力する(ステップ7)。続いて、判定部6はドアロックが解錠されていなければステップ6に戻り、ドアロックが解錠されていればスタンバイ状態に移行して侵入検知装置を停止し、ステップ1に戻る(ステップ9)。
【0023】
ここで、窓ガラスが破壊された後に車内に不審者が侵入してこなかったり、あるいは、窓ガラスの破壊検知が誤検知であった場合、送波部1から超音波の送波を続けていると無駄に電力を消費してしまうことになる。そのために判定部6は、送波部1に超音波の送波を開始させてからドアロックが解除されることなく所定時間(例えば、数分)が経過するまではステップ6の処理を継続する(ステップ10,11)。一方、ドアロックが解除されることなく所定時間が経過しても侵入者が検知されなければ(ステップ11)、判定部6はスイッチ7をオフして送波部1の送波を停止し(ステップ12)、その後、ステップ3に戻って窓ガラスの破壊検知を再開する。これにより、送波部1の送波が無用に継続されて電力が無駄に消費されることを回避できる。
【0024】
上述のように本実施形態の侵入検知装置では、ドップラ信号の信号レベルが所定の閾値(窓ガラス破壊検知の閾値)を超えるまでは判定部6が送波部1の超音波の送波を停止させ、ドップラ信号の信号レベルが前記閾値を超えたら判定部6が送波部1に超音波を送波させるようにしている。このため、窓ガラスの破壊が検知されなければ送波部1が送波を停止することで低消費電力化を図ることができ、しかも、窓ガラスの破壊が検知された後に侵入検知の処理が実行されるため、人以外の物体の移動(例えば、立て掛けられた書類や日除け<サンシェード>などの倒れ)による侵入者の誤検知が抑制できる。また、窓ガラスの破壊検知のために新たな構成要素を追加する必要がないので、コスト上昇も抑えることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 送波部
2 受波部
4 混合部
6 判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車内への人の侵入を検知する侵入検知装置であって、所定周波数の発振信号が入力されると当該周波数の超音波を前記車内に送波する送波部と、前記車内に伝搬する超音波を受波して電気信号に変換する受波部と、当該受波部から出力される電気信号と前記発振信号を混合する混合部と、当該混合部から出力されるドップラ信号に基づいて前記車内の人の存否を判定する判定部とを備え、前記判定部は、前記ドップラ信号の信号レベルが所定の閾値を超えるまでは前記送波部に超音波の送波を停止させ、前記信号レベルが前記閾値を超えたら前記送波部に超音波を送波させることを特徴とする侵入検知装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記送波部に超音波を送波させてから所定時間が経過しても人が存在すると判定しない場合、前記送波部に超音波の送波を停止させた状態で前記ドップラ信号の信号レベルが前記閾値を超えるか否かの判定を行うことを特徴とする請求項1記載の侵入検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220253(P2012−220253A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83787(P2011−83787)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】