説明

係合装置

【課題】ハイブリッド車両の動力伝達装置が軸方向に大きくなることを抑制する。
【解決手段】係合装置であって、フライホイールのギア歯と噛み合う第1ギア歯を有し、第1軸とは異なる第2軸上に配設される第1ギアと、ダンパのギア歯と噛み合う第2ギア歯を有する第2ギアと、第1ギアと第2ギアとのうちの一方のギアと接続されるシャフトであって、一方のギアから、第1ギアと第2ギアとのうちの他方のギアに向かう延長方向に他方のギアを越えた位置まで、延びる第1シャフトと、他方のギアと接続されるシャフトであって、第1シャフトの第2軸の外周側を、他方のギアから延長方向に延びる第2シャフトと、他方のギアよりも延長方向側に配設され、第1シャフトと第2シャフトとの接続と切り離しとを行うクラッチとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と回転電機とを駆動力源とするハイブリッド車両に搭載される動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関と回転電機とを駆動力源として用いるハイブリッド車両が知られている(特許文献1参照)。このハイブリッド車両は、動力伝達装置として、内燃機関と、フライホイールと、ダンパと、内燃機関の動力を車輪に伝達するか否かを切り替え可能な係合装置と、を備える。この動力伝達装置の各要素(フライホイール、ダンパ、係合装置など)は、動力伝達装置の入力部材の回転軸を中心に回転し、この回転軸に沿った方向(軸方向とも呼ぶ)に並んで配設され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−295140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、動力伝達装置では、複数の要素が、入力部材の回転軸に沿った軸方向に配設されるので、動力伝達装置が軸方向に大きくなる可能性がある。このように、動力伝達装置が軸方向に大きくなると、例えば、ハイブリッド車両が大型化したり、動力伝達装置以外の装置(例えば、バッテリや制御装置など)の配設に制約が生じたりする可能性がある。
【0005】
本発明は、ハイブリッド車両の動力伝達装置が軸方向に大きくなることを抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
内燃機関と回転電機とを駆動力源して利用するハイブリッド車両用の係合装置であって、前記内燃機関の出力部材に接続されて第1軸を回転軸として回転するフライホイールと、前記第1軸を回転軸として回転し、前記ハイブリッド車両の動力伝達装置の入力部材に接続されるダンパとの間の接続状態を切り替える係合装置であって、
前記フライホイールは、外周部にギア歯を備え、
前記ダンパは、外周部にギア歯を備え、
前記係合装置は、
前記フライホイールのギア歯と噛み合う第1ギア歯を有し、前記第1軸とは異なる第2軸を回転軸として回転する第1ギアと、
前記ダンパのギア歯と噛み合う第2ギア歯を有し、前記第2軸を回転軸として回転する第2ギアと、
前記第2軸を回転軸として回転し、前記第1ギアと前記第2ギアとのうちの一方のギアに接続されるシャフトであって、前記一方のギアから、前記第1ギアと前記第2ギアとのうちの他方のギアに向かう方向である延長方向に前記他方のギアを越えた位置まで、延びる第1シャフトと、
前記第2軸を回転軸として回転し、前記他方のギアに接続されるシャフトであって、前記第1シャフトの前記第2軸の外周側を、前記他方のギアから前記延長方向に延びる第2シャフトと、
前記他方のギアよりも前記延長方向側に配設され、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの接続と切り離しとを行うクラッチと、
を備える係合装置。
【0008】
上記構成の係合装置は、フライホイールとダンパの回転軸である第1軸上には配設されずに、第1軸とは別軸の第2軸に配設される。このようにすれば、動力伝達装置(フライホイールとダンパを含む)が、入力部材の回転軸に沿った方向(単に軸方向とも呼ぶ)に大きくなることを抑制することができる。また、クラッチが、第1ギアと第2ギアとの間ではなく、第1ギアと第2ギアとに対して軸方向の一方側に配設されるので、第1ギアと第2ギアとを隣接して配設することが可能である。この結果、動力伝達装置の軸方向の大きさが大きくなることを、更に抑制することができる。
【0009】
ところで、係合装置において、例えば、クラッチが、第1ギアおよび第2ギアの第2軸の外周側に配設される場合には、係合装置の第2軸の径方向の大きさが、大きくなる可能性がある。しかしながら、上記構成の係合装置によれば、クラッチは、前記他方のギアよりも前記延長方向側に配設される。従って、上記構成の係合装置によれば、係合装置の径方向の大きさを、クラッチが第1ギアおよび第2ギアの第2軸の外周側に配設される係合装置と比較して、小さくすることが可能である。
【0010】
[適用例2]
適用例1に記載の係合装置であって、
前記クラッチを収容するケースと、
前記一方のギアと前記他方のギアとの間、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの間、および、前記一方のギアと前記第2シャフトとの間、のいずれかをシールする第1シール部材と、
前記他方のギアおよび前記第2シャフトのどちらか一方と、前記ケースとの間をシールする第2シール部材と、
前記ケースに充填される潤滑剤と、
を備える、係合装置。
【0011】
上記構成の係合装置によれば、クラッチを潤滑剤で潤滑にすることが可能になり、その結果、クラッチの動作を滑らかにすることが可能となる。
【0012】
上記構成の係合装置によれば、第1シール部材および第2シール部材を用いてケースに充填された潤滑剤がケース外部に流出することを抑制することができるので、ケースに潤滑剤を新たに供給することなく、ケースに潤滑剤が充填された状態を保つことができる。その結果、例えば、潤滑剤をケース内部に供給するための潤滑剤供給装置などを用いることなく、クラッチの動作を滑らかにすることが可能となる。
【0013】
また、上記構成の係合装置によれば、クラッチが他方のギアよりも延長方向側に配設される。この構成により、クラッチが、第1ギアおよび第2ギアの第2軸の外周側に配設される場合と比較して、上記シール部材によるシールを容易に行うことができ、ケースから潤滑剤が流出することを抑制することができる。
【0014】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の係合装置であって、
前記クラッチが係合されて、前記第2ギアが前記内燃機関によって回転する場合の回転方向を第1回転方向と呼ぶ時に、
前記係合装置は、
前記第2ギアが、前記第1回転方向とは逆回転である第2回転方向に回転することを阻止するワンウェイクラッチを備える、係合装置。
【0015】
上記構成の係合装置によれば、ワンウェイクラッチによって、第2ギア(入力部材)が、内燃機関によって回転する第1回転方向とは逆回転の第2回転方向に回転することを阻止することができる。このようにすれば、例えば、ハイブリッド車両が、2つの回転電機と内燃機関とを駆動力として利用可能な、いわゆるスプリット方式のハイブリッド車両である場合であって、2つの回転電機をモータとして作動させることによって第2ギア(入力部材)を第2回転方向に回転させる駆動力が生じた場合に、第2ギアを回転させることなく、動力伝達装置の出力部材に駆動力を伝達することが可能となる。
【0016】
[適用例4]
適用例1または適用例2に記載の係合装置であって、
ケースと、
前記第2ギアと前記ケースとを接続することによって前記第2ギアの回転を阻止し、前記第2ギアと前記ケースとを切り離すことによって前記第2ギアの回転を許容する、固定装置と、
を備える、係合装置。
【0017】
上記構成の係合装置によれば、固定装置によって、第2ギア(入力部材)の回転が阻止される。すなわち、第2ギアが、内燃機関によって回転する第1回転方向とは逆回転の第2回転方向に回転することを阻止することができる。このようにすれば、例えば、ハイブリッド車両が、2つの回転電機と内燃機関とを駆動力として利用可能な、いわゆるスプリット方式のハイブリッド車両である場合であって、2つの回転電機をモータとして作動させることによって第2ギア(入力部材)を第2回転方向に回転させる駆動力が生じた場合に、第2ギアを回転させることなく、動力伝達装置の出力部材に駆動力を伝達することが可能となる。
【0018】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれかに記載の係合装置であって、
前記クラッチは、
前記第1シャフトに接続され、第3ギア歯を有し、前記第2軸上に配設される第3ギアと、
前記第2シャフトに接続され、第4ギア歯を有し、前記第2軸上に配設される第4ギアと、
前記第2軸を回転軸として回転しつつ前記第2軸に沿った軸沿方向に移動可能な移動部材であって、前記第3ギア歯と前記第4ギア歯のそれぞれと係合することで、前記第1シャフトと前記第2シャフトとを接続し、前記第3ギア歯と前記第4ギア歯との少なくとも一方と係合しないことで、前記第1シャフトと前記第2シャフトとを切り離す移動部材と、
を備える、係合装置。
【0019】
上記構成の係合装置によれば、移動部材は、第1シャフト、第2シャフト、第3ギア、および、第4ギアと同じく第2軸を回転軸として回転移動する。このようにすれば、移動部材が、第2軸とは異なる軸を回転軸として回転する場合と比較して、係合装置を小型化することが可能となる。なお、第3ギアは、特定のギアの介して第1シャフトと接続されてもよい。また、第4ギアは、特定のギアを介して第2シャフトと接続されてもよい。
【0020】
なお、本発明は、例えば、動力伝達装置、および、ハイブリッド車両等、種々の装置形態で実現することができる。また、係合装置を製造する製造方法など種々の方法形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例としての駆動ユニット10を示す概略図である。
【図2】動力伝達装置1000の概略断面図である。
【図3】係合装置100の概略構成を示す図である。
【図4】第2実施例としての動力伝達装置1000nを示す概略図である。
【図5】係合装置100nの概略構成を示す図である。
【図6】第3実施例としての係合装置100mを示す概略構成である。
【図7】第4実施例としての係合装置100pを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.第1実施例:
A1.駆動ユニット10の概略構成:
図1は、本発明の一実施例としての駆動ユニット10を示す概略図である。駆動ユニット10は、内燃機関Eと動力伝達装置1000とを有している。図1では、内燃機関Eが、簡略化して示されている。また、車両の横から見た動力伝達装置1000の側面図が示されている。図2は、動力伝達装置1000の概略断面図である。図2の断面図は、図1のC−C断面と、図1のD−D断面とを示している。C−C断面は、第2軸A2、第3軸A3、第1軸A1、および、第5軸A5を含む断面であって、これら軸をこの順に通る合成断面である。D−D断面は、第4軸A4を含む断面であり、図2では、四角形の点線内部に示されている。C−C断面の一部およびD−D断面は、スケルトン図で示されている。軸A1〜A5の詳細については、後述する。
【0023】
本実施例の動力伝達装置1000は、内燃機関(エンジン)E、第1回転電機MG1、および、第2回転電機MG2を動力源として利用可能な、いわゆるスプリット式のハイブリッド車両に搭載される。本明細書の図において、図1に示すように、駆動装置に対して、X軸、Y軸、Z軸を規定する。X軸に沿った方向(X軸方向とも呼ぶ)は、車両の前後方向を示し、Z軸に沿った方向(Z軸方向とも呼ぶ)は、鉛直方向を示し、Y軸に沿った方向(Y軸方向とも呼ぶ)は、X軸方向とZ軸方向とに直交する水平方向を示している。X軸方向のうち、+X方向(図1では右方向)は、車両の前方向であり、−X方向(図1では左方向)は、車両の後方向である。ハイブリッド車両の車幅は、Y軸方向に沿った車両の長さを表す。従って、Y軸方向を車幅方向とも呼ぶ。
【0024】
動力伝達装置1000は、5つの軸A1〜A5に構成要素が配設された5軸構成を有している。動力伝達装置1000は、上記ハイブリッド車両において、各軸A1〜A5が、車幅方向(Y軸方向)と平行となるように配設される。
【0025】
図2に示すように、動力伝達装置1000は、内燃機関出力シャフトOeと、入力シャフトIと、フライホイールFWと、ダンパDAと、遊星歯車機構PGSと、第1回転電機MG1と、第2回転電機MG2と、オイルポンプOPと、デファレンシャル装置DFと、2つの出力シャフトOと、カウンタドライブギア22と、モータ出力ギア23と、カウンタドリブンギア24と、ピニオンギア26と、係合装置100と、を備える。図2では、2つの出力シャフトOのうち、1つの出力シャフトOが示され、もう一つの出力シャフトOは省略している。これらの構成要素のうち、遊星歯車機構PGSと、第1回転電機MG1と、第2回転電機MG2と、デファレンシャル装置DFと、カウンタドライブギア22と、モータ出力ギア23と、カウンタドリブンギア24と、ピニオンギア26とを総称してトランスアクスルTAとも呼ぶ。このトランスアクスルTAは、動力伝達装置1000のケース4に収容される。
【0026】
内燃機関出力シャフトOeと、入力シャフトIと、フライホイールFWと、ダンパDAと、カウンタドライブギア22と、遊星歯車機構PGSと、第1回転電機MG1とは、第1軸A1上に配設されている。第2回転電機MG2とモータ出力ギア23とは、第2軸A2上に配設されている。カウンタドリブンギア24とピニオンギア26とは、第3軸A3上に配設されている。デファレンシャル装置DFは、第4軸A4上に配設されている。係合装置100は、第5軸A5上に配設されている。
【0027】
内燃機関出力シャフトOeは、内燃機関EとフライホイールFWとに連結されている。フライホイールFWは、外周部(第1軸A1に対して径方向外側部分)にギア歯FWaを備えている。なお、内燃機関Eは、内燃機関出力シャフトOeを所定の方向(第1回転方向とも呼ぶ)に回転させる。
【0028】
入力シャフトIは、ダンパDAと遊星歯車機構PGSのキャリアcaとに連結されている。ダンパDAは、外周部(第1軸A1に対して径方向外側部分)にギア歯DAaを備えている。
【0029】
係合装置100は、フライホイールFWとダンパDAに連結される。係合装置100は、フライホイールFWとダンパDAとの接続を確立する第1状態と、フライホイールFWとダンパDAとの接続を不確立とする第2状態とを形成し得る。この係合装置100についての詳細は、後述する。
【0030】
第1回転電機MG1は、第1ステータSt1と第1ロータRo1とを有している。第1ステータSt1は、動力伝達装置1000のケース4に固定されている。第1ロータRo1は、遊星歯車機構PGSのサンギアsに、一体となって回転するように、連結されている。
【0031】
第2回転電機MG2は、第2ステータSt2と第2ロータRo2とを有している。第2ステータSt2は、ケース4に固定されている。第2ロータRo2は、モータ出力ギア23に、一体となって回転するように、連結されている。
【0032】
第1回転電機MG1と第2回転電機MG2とは、パワーコントロール回路(図示せず)に、電気的に接続されている。パワーコントロール回路は、バッテリ(図示せず)に、電気的に接続されている。パワーコントロール回路は、第1回転電機MG1および第2回転電機MG2を電気的に制御するインバータ回路(図示せず)と、電圧を昇降するコンバータ回路(図示せず)とを有している。パワーコントロール回路の制御の下で、第1回転電機MG1は、モータおよびジェネレータとして動作可能であり、第2回転電機MG2も、モータおよびジェネレータとして動作可能である。
【0033】
遊星歯車機構PGSは、複数のピニオンギアpgと、複数のピニオンギアpgを支持するキャリアcaと、ピニオンギアpgと噛み合うサンギアsと、ピニオンギアpgと噛み合うリングギアrと、を有している。上述したように、キャリアcaは、入力シャフトIに連結され、サンギアsは、第1回転電機MG1の第1ロータRo1に連結されている。また、リングギアrは、カウンタドライブギア22に、一体となって回転するように、連結されている。
【0034】
遊星歯車機構PGSは、動力分配装置として機能する。例えば、遊星歯車機構PGSは、キャリアcaに伝達された内燃機関Eからの回転駆動力を、第1回転電機MG1(サンギアs)およびカウンタドライブギア22(リングギアr)に伝達する。この場合、第1回転電機MG1は、ジェネレータとして動作することによって、バッテリを充電可能である。また、第1回転電機MG1は、モータとして動作することによって、サンギアsに逆向きの回転駆動力を印加することもできる。これにより、遊星歯車機構PGSは、より大きな回転駆動力をカウンタドライブギア22に伝達することができる。
【0035】
カウンタドライブギア22は、カウンタドリブンギア24と噛み合っている。カウンタドリブンギア24は、ピニオンギア26に、一体となって回転するように、連結されている。カウンタドリブンギア24とピニオンギア26とは、共通のカウンタシャフト25に、設けられている。
【0036】
デファレンシャル装置DFは、ピニオンギア26と噛み合うリングギア27などを含む複数の回転部材を有している。デファレンシャル装置DFは、リングギア27に伝達された回転駆動力を、2つの出力シャフトOにそれぞれ伝達すると共に、2つの出力シャフトOに生じる回転速度差を調整する。各出力シャフトOには、それぞれ、駆動輪Wが連結される。
【0037】
また、カウンタドリブンギア24は、さらに、モータ出力ギア23と噛み合っている。第2回転電機MG2は、モータ出力ギア23と、カウンタドリブンギア24と、ピニオンギア26と、デファレンシャル装置DFとを通じて、回転駆動力を駆動輪Wに伝達可能である。このように、第2回転電機MG2は、車両の走行用の駆動力を補助することができる。また、車両の減速時には、駆動輪Wからの駆動力によって駆動される第2回転電機MG2が、ジェネレータとして動作することによって、バッテリを充電可能である。なお、内燃機関Eと、第1回転電機MG1と、第2回転電機MG2との制御は、周知の制御であってよい。
【0038】
オイルポンプOPは、入力シャフトIに接続され、入力シャフトIの回転駆動力によって、トランスアクスルTA内の特定の構成要素(例えば、遊星歯車機構PGSなど)に潤滑剤を供給するための潤滑剤圧を生成する。
【0039】
A2.係合装置100の概略構成:
図3は、係合装置100の概略構成を示す図である。具体的には、図3は、係合装置100の第5軸A5を通る断面図である。図3に示すように、係合装置100は、ケース104と、第1係合要素110と、第2係合要素120と、移動部材130と、ワンウェイクラッチ140と、2つのボールベアリング150と、ボールベアリング160と、3つのニードルベアリング165と、第1シール部材170と、第2シール部材180と、潤滑剤JKZと、を備えている。係合装置100において、ケース104を除くこれら構成要素は、ケース104に収容される。各ニードルベアリング165は、それぞれ第1係合要素110と第2係合要素120との間に配設されている。以下では、第5軸A5に沿った方向(Y軸方向)を、第5軸沿方向とも呼ぶ。第5軸A5の径方向を、第5軸径方向とも呼ぶ。
【0040】
第1係合要素110、第2係合要素120、および、移動部材130は、第5軸沿方向から見た断面が円状に形成される。
【0041】
第1係合要素110は、ケース104に固定された2つのボールベアリング150に支持され、第5軸A5上に配設される。第1係合要素110は、第1ギア110aと、第3ギア110bと、第1シャフト110cと、を備えている。
【0042】
第1ギア110aは、第5軸A5を回転軸として回転する。第1ギア110aは、ギア歯110a1を備えている。ギア歯110a1は、第1ギア110aの外周(第5軸A5に対して径方向外側)に配設される。ギア歯110a1は、フライホイールFWのギア歯FWaと噛み合う。
【0043】
第1シャフト110cは、第5軸A5を回転軸として回転し、第1ギア110aに接続される。第1シャフト110cは、第1ギア110aから、第5軸沿方向に沿ってトランスアクスルTA(第1回転電機MG1)側に、後述する第2係合要素120の第2ギア120aを越えた位置まで延びて形成される。第1シャフト110cは、第2ギア120aの第5軸沿方向に延びる中空部を貫通している。第1シャフト110cは、貫通孔110c1と、貫通孔110c2と、を備えている。貫通孔110c1は、第5軸沿方向に沿って形成され、貫通孔110c2は、第5軸径方向に沿って形成される。貫通孔110c1および貫通孔110c2は、潤滑剤JKZ(後述)を潤滑剤充填空間KK(後述)内で循環させるための孔である。本実施例では、潤滑剤としては、潤滑油を用いている。なお、これに限られず、潤滑剤として、グリースなどを用いてもよい。
【0044】
第3ギア110bは、第5軸A5を回転軸として回転し、第1シャフト110cのトランスアクスルTA側の外周に設けられる。第3ギア110bは、その外周にギア歯110b1を備えている。ギア歯110b1は、移動部材130の第1内歯130a(後述)と噛み合う。ギア歯110b1についての詳細は、後述する。
【0045】
第1係合要素110の以上の構成により、フライホイールFWが内燃機関Eから回転駆動力を受けると、その回転駆動力が第1係合要素110に伝達され、その結果、第1係合要素110は、回転する。
【0046】
第2係合要素120は、ケース104に固定されたボールベアリング160と、第1係合要素110に支持されたニードルベアリング165とに支持され、第5軸A5上に配設される。第2係合要素120は、第2ギア120aと、第4ギア120bと、第2シャフト120cと、を備えている。第2係合要素120は、第1係合要素110の外周(第5軸A5に対して径方向外側)に配設されるパイプ状の部材である。
【0047】
第2ギア120aは、第5軸A5を回転軸として回転し、第1ギア110aのトランスアクスルTA側に配設される。第2ギア120aは、ギア歯120a1を備えている。ギア歯120a1は、第2ギア120aの外周(第5軸A5に対して径方向外側)に配設される。ギア歯120a1は、ダンパDAのギア歯DAaと噛み合う。
【0048】
第2シャフト120cは、第5軸A5を回転軸として回転し、第2ギア120aに接続され、第2ギア120aから第5軸沿方向に沿ってトランスアクスルTA(第1回転電機MG1)側に延びて形成される。第2シャフト120cは、第3ギア110bのギア歯110b1手前まで延びている。第2シャフト120cは、貫通孔120c1を備えている。貫通孔120c1は、第5軸径方向に沿って形成される。貫通孔120c1は、潤滑剤JKZ(後述)を潤滑剤充填空間KK(後述)内で循環させるための孔である。
【0049】
第4ギア120bは、第5軸A5を回転軸として回転し、第2シャフト120cのトランスアクスルTA側の外周に設けられる。第4ギア120bは、ギア歯120b1を備えている。ギア歯120b1は、第4ギア120bの外周(第5軸A5に対して径方向外側)に配設される。ギア歯120b1は、移動部材130の第2内歯130b(後述)と噛み合う。ギア歯110b1についての詳細は、後述する。
【0050】
移動部材130は、第5軸A5を中心とする環状部材であり、第3ギア110b(第1係合要素110)の外周に配設される。移動部材130は、第1内歯130aと第2内歯130bとを備えている。移動部材130は、所定の制御機構(図示せず)によって第5軸沿方向に平行移動され得る。
【0051】
移動部材130の第1内歯130aは、第3ギア110bのギア歯110b1と常に噛み合っている。従って、第3ギア110b(第1係合要素110)と、移動部材130とは常に一体に回転する。移動部材130は、ギア歯110b1の第5軸沿方向に沿った範囲内で移動可能である。
【0052】
第2内歯130bは、移動部材130が第5軸沿方向における内燃機関E側に位置する場合には、第4ギア120bのギア歯120b1と噛み合う。この結果、移動部材130は、第1係合要素110(第3ギア110b)と第2係合要素120(第4ギア120b)とを接続し、上記第1状態を形成する。第1状態では、第1係合要素110、第2係合要素120、および、移動部材130は、第5軸A5を回転軸として一体に回転し、フライホイールFWとダンパDAとの間で回転駆動力を伝達する。また、第2内歯130bは、移動部材130が第5軸沿方向のトランスアクスルTA側に位置する場合には、第4ギア120b(第2係合要素120)から離れて、ギア歯120b1と噛み合わない。この結果、移動部材130は、第1係合要素110(第3ギア110b)と第2係合要素120(第4ギア120b)との切り離しを行い、上記第2状態を形成する。第2状態では、フライホイールFWとダンパDAとの間での回転駆動力の伝達は行われない。
【0053】
以上の構成のように、移動部材130と、第1係合要素110の第3ギア110bと、第2係合要素120の第4ギア120bとは、第1係合要素110(第3ギア110b)と第2係合要素120(第4ギア120b)との接続と切り離しとを行うクラッチとして機能する。従って、移動部材130と、第1係合要素110の第3ギア110bと、第2係合要素120の第4ギア120bとを総称して、クラッチCT(図3)とも呼ぶ。このクラッチCTは、いわゆるドグクラッチである。
【0054】
ケース104は、開口部104aを有している。第1ギア110aのギア歯110a1および第2ギア120aのギア歯120a1は、それぞれ、フライホイールFWおよびダンパDAと係合するため、ケース104の開口部104aから露出して配設されている。第1ギア110aのギア歯110a1および第2ギア120aのギア歯120a1以外の係合装置100の各構成要素は、ケース104の内部に配設されている。
【0055】
ケース104と、第1係合要素110の一部と、第2係合要素120の一部とは、クラッチCT(移動部材130、第1係合要素110の第3ギア110b、および、第2係合要素120の第4ギア120b)を囲む空間KKを形成する。この空間KKには、潤滑剤JKZ(図3)が充填される。従って、この空間を潤滑剤充填空間KKとも呼ぶ。第1シール部材170、および、第2シール部材180は、潤滑剤充填空間KKを気密にし、潤滑剤充填空間KKからケース104外部に潤滑剤が漏れることを防止する。
【0056】
具体的には、第1シール部材170は、第1係合要素110の第1シャフト110cの外周面と第2係合要素120の第2ギア120aの内周面との間に配設された第5軸A5を囲む環状のシール部材であり、これらの間を全周に亘ってシールしている。第2シール部材180は、第2係合要素120の第2シャフト120cの外周面と、ケース104の内面との間に配設された第5軸A5を囲む環状のシール部材であり、これらの間を全周に亘ってシールしている。なお、第1シール部材170は、第1ギア110aと第2ギア120aとの間に配設され、これらの間をシールするようにしてもよい。また、第1シール部材170は、第1シャフト110cと第2シャフト120cとの間に配設され、これらの間をシールするようにしてもよい。第2シール部材180は、第2係合要素120の第2ギア120aとケース104との間に配設され、これらの間をシールするようにしてもよい。
【0057】
ワンウェイクラッチ140は、第2係合要素120(第2シャフト120c)の外周(第5軸A5に対して径方向外側)に配設され、第2係合要素120が内燃機関Eによって回転する第1回転方向とは逆向きの第2回転方向に回転することを阻止する。ワンウェイクラッチ140は、潤滑剤充填空間KK内に配置される。
【0058】
本実施例の係合装置100は、フライホイールFWとダンパDAの回転軸である第1軸A1には配設されずに、第5軸A5に配設される。このようにすれば、動力伝達装置1000が、入力シャフトIの回転軸に沿った方向(車幅方向)に大きくなることを抑制することができる。その結果、動力伝達装置を搭載するハイブリッド車両が大型化したり、動力伝達装置以外の装置(例えば、バッテリや制御装置)の配設に制約が生じたりすることを抑制することができる。また、係合装置100は、クラッチCTが、第1ギア110aと第2ギア120aとの間ではなく、第1ギア110aと第2ギア120aとに対して第5軸沿方向の一方側(トランスアクスルTA側)に配設されるので、第1ギア110aと第2ギア120aとを隣接して配設することが可能である。この結果、動力伝達装置1000の入力シャフトIの回転軸に沿った方向(車幅方向)の大きさが大きくなることを、更に抑制することができる。
【0059】
ところで、係合装置において、例えば、クラッチが、第1係合要素110の第1ギア110aおよび第2係合要素120の第2ギア120aの第5軸A5の外周側に配設される場合には、係合装置の第5軸径方向の大きさが、大きくなる可能性がある。しかしながら、本実施例の係合装置100によれば、クラッチCTは、第2係合要素120の第2ギア120aよりも第5軸沿方向のトランスアクスルTA側に配設される。従って、本実施例の係合装置100によれば、係合装置の第5軸径方向の大きさを、クラッチが第1ギア110aおよび第2ギア120aの第5軸A5の外周側に配設される係合装置と比較して、小さくすることが可能である。
【0060】
本実施例の係合装置100では、第1シール部材170、および、第2シール部材180によって、クラッチCTおよびワンウェイクラッチ140が配設されるケース104内部の潤滑剤充填空間KKが気密にされ、潤滑剤充填空間KKに潤滑剤が充填されている。このようにすれば、クラッチCTおよびワンウェイクラッチ140を潤滑剤JKZで潤滑にすることが可能となり、その結果、クラッチCTおよびワンウェイクラッチ140の動作を滑らかにすることが可能となる。
【0061】
本実施例の係合装置によれば、第1シール部材170および第2シール部材180を用いてケース104に充填された潤滑剤JKZがケース104外部に流出することを抑制することができるので、ケース104に潤滑剤JKZを新たに供給することなく、ケース104に潤滑剤JKZが充填された状態を保つことができる。その結果、例えば、潤滑剤JKZをケース104内部に供給するための潤滑剤供給装置などを用いることなく、クラッチCTの動作を滑らかにすることが可能となる。
【0062】
また、係合装置100は、フライホイールFWおよびダンパDAと接続するために、第1係合要素110の第1ギア110aと第2係合要素120の第2ギア120aがケース104から露出した構成となっている。そのため、例えば、係合装置において、クラッチが、第1係合要素110の第1ギア110aおよび第2係合要素120の第2ギア120aの第5軸A5の外周側に配設される場合には、クラッチを囲む空間をシール部材によって密閉することが難しい。しかしながら、本実施例の係合装置100によれば、クラッチCTが、第2係合要素120の第2ギア120aよりも第5軸沿方向のトランスアクスルTA側に配設されるので、クラッチが第1係合要素110の第1ギア110aおよび第2係合要素120の第2ギア120aの第5軸A5の外周側に配設される場合と比較して、第1シール部材170および第2シール部材180によるシールを容易に行うことができ、ケース104からの潤滑剤JKZ流出を容易に阻止することができる。
【0063】
本実施例の係合装置100では、第2係合要素120が内燃機関Eによって回転する第1回転方向とは逆向きの第2回転方向に回転することを抑制するワンウェイクラッチ140を備えている。このようにすれば、例えば、上記動力伝達装置1000において、2つの回転電機MG1、MG2をモータとして作動させることによって第2係合要素120(入力シャフトI)を第2回転方向に回転させる駆動力が生じた場合に、入力シャフトI(第2係合要素120の第2ギア120a)を回転させることなく、動力伝達装置1000の出力シャフトOに駆動力を伝達することが可能となる。
【0064】
本実施例の係合装置100によれば、クラッチCTの移動部材130は、第1シャフト110c、第2シャフト120c、第3ギア110b、および、第4ギア120bと同じく、第5軸A5を軸として回転移動する。このようにすれば、移動部材が、第5軸A5とは異なる軸を回転軸として回転する場合と比較して、係合装置を小型化することができる。
【0065】
本実施例の係合装置100では、フライホイールFWおよびダンパDAよりも第5軸沿方向のトランスアクスルTA側にクラッチCTが配設される構成となっている。このようにすれば、係合装置が第5軸沿方向の内燃機関E側に延びて形成されることを抑制することができ、係合装置に対して第5軸沿方向の内燃機関E側の空間を有効利用することができる。
【0066】
本実施例において、内燃機関出力シャフトOeは、特許請求の範囲における内燃機関の出力部材の例である。入力シャフトIは、入力部材の例である。第1係合要素110の第1ギア110aは、特許請求の範囲における第1ギアの例である。第3ギア110bは、特許請求の範囲における第3ギアの例である。第2係合要素120の第2ギア120aは、特許請求の範囲における第2ギアの例である。第4ギア120bは、特許請求の範囲における第4ギアの例である。第1シャフト110cは、特許請求の範囲における第1シャフトの例である。第2シャフト120cは、特許請求の範囲における第2シャフトの例である。第5軸A5は、特許請求の範囲における第2軸の例であり、第5軸沿方向のトランスアクスル側の方向は、特許請求の範囲における延長方向の例である。第1シール部材170は、特許請求の範囲における第1シール部材の例であり、第2シール部材180は、特許請求の範囲における第2シール部材の例である。
【0067】
B.第2実施例:
図4は、第2実施例としての動力伝達装置1000nを示す概略図である。第2実施例の動力伝達装置1000nは、第1実施例の動力伝達装置1000と比較して、図4に示すように、係合装置およびトランスアクスルの構成が異なる。本実施例の動力伝達装置1000nは、1つの回転電機と内燃機関とを動力源として利用可能な、いわゆるパラレル方式のハイブリッド車両に搭載される。本実施例の動力伝達装置1000nにおいて、動力伝達装置1000と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0068】
第2実施例のトランスアクスルTAnは、入力シャフトInと、回転電機MGnと、オイルポンプOPnと、自動変速機TMnと、デファレンシャル装置DFnとを備えている。第1軸A1は、フライホイールFW、ダンパDA、および、入力シャフトInの回転軸である。第5軸A5は、本実施例の係合装置100nの回転軸である。第1軸A1および第5軸A5は、車幅方向と平行である。
【0069】
回転電機MGnは、ステータStnとロータRonとを有している。ステータStnは、動力伝達装置1000nのケース4に固定されている。ロータRonは、入力シャフトIと一体となって回転するように、連結されている。自動変速機TMnは、入力シャフトInに連結されており、潤滑油圧制御装置(図示せず)と、複数の歯車機構や複数のクラッチ等を有する変速機構(図示せず)とを備え、変速比を切り替え可能である。オイルポンプOPnは、入力シャフトInの回転駆動力によって、自動変速機TMnなどに潤滑油を供給するための油圧を生成する。デファレンシャル装置DFnは、自動変速機TMnから伝達された回転駆動力を、2つの出力シャフトOにそれぞれ伝達すると共に、2つの出力シャフトOに生じる回転速度差を調整する。図4では、2つの出力シャフトOのうち、1つの出力シャフトOが示され、もう一つの出力シャフトOは省略している。回転電機MGnと、自動変速機TMnとの制御は、周知の制御であってよい。
【0070】
図5は、係合装置100nの概略構成を示す図である。本実施例の係合装置100nは、第1実施例の係合装置100と比較して、図5に示すように、ワンウェイクラッチ140の代わりにボールベアリング140nを備えている。係合装置100nにおいてワンウェイクラッチ140の代わりにボールベアリング140nを用いることが可能なのは、パラレル方式のハイブリッド車両では、回転電機MGnが内燃機関Eによって生じる回転駆動力の逆回転駆動力を入力シャフトIに印加することがないからである。
【0071】
本実施例の動力伝達装置1000nにおいて、係合装置100nは、以下の場合に、第1状態および第2状態を形成する。すなわち、係合装置100nは、内燃機関Eと回転電機MGnとを併用してハイブリッド車両の動力源として利用する場合(通常走行時など)に、フライホイールFWとダンパDAとの接続を確立する第1状態を形成するように制御される。また、係合装置100nは、内燃機関Eを用いずに回転電機MGnのみを駆動力源として利用する場合(例えば、ハイブリッド車両が発進する際など)や、ハイブリッド車両の減速時に回転電機MGnを回生ブレーキとして利用する場合に、フライホイールFWとダンパDAとの接続を不確立とする第2状態を形成するように制御される。
【0072】
本実施例の動力伝達装置1000n(係合装置100n)は、第1実施例の動力伝達装置1000(係合装置100)と同様の作用・効果を奏することができる。また、上述したように、本実施例の動力伝達装置1000n(係合装置100n)は、パラレル方式のハイブリッド車両に搭載される。このようにすれば、パラレル方式のハイブリッド車両において、動力伝達装置が、入力シャフトInの延びる方向(車幅方向)に大きくなることを抑制することができる。
【0073】
さらに、本実施例の動力伝達装置1000nにおける係合装置100nは、ワンウェイクラッチ140の代わりにボールベアリング140nを用いている。このように、係合装置100nは、構造が複雑で配設にスペースが必要なワンウェイクラッチを用いずに比較的構造が簡易で省スペースでも配設可能なボールベアリングを用いているので、係合装置の構造を簡易にし、係合装置をコンパクトにすることが可能となる。
【0074】
C.第3実施例:
図6は、第3実施例としての係合装置100mを示す概略構成である。第1実施例の係合装置100では、クラッチがフライホイールFWおよびダンパDAよりも第5軸沿方向のトランスアクスル側に配設されていた。第3実施例の係合装置100mは、クラッチがフライホイールFWおよびダンパDAよりも第5軸沿方向の内燃機関側に配設されている点で第1実施例の係合装置100と相違する。本実施例の係合装置100mにおいて、第1実施例の係合装置100と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。また、図6では、本実施例の係合装置100mおいて第1実施例の係合装置100と相違しつつも対応する構成を、係合装置100の対応する部材の符号の末尾に「m」を付加して示している。例えば、本実施例の係合装置100mにおける第1係合要素は、「110m」で示される。これら符号の末尾に「m」が付加された構成要素について、第1実施例の係合装置100と異なる点を以下に説明する。
【0075】
第2係合要素120mは、第5軸A5上に配設される。第2係合要素120mは、第6ギア120amと、第7ギア120bmと、第3シャフト120cmと、を備えている。
【0076】
第6ギア120amは、第5軸A5を回転軸として回転する。第6ギア120amは、ギア歯120a1mを備えている。ギア歯120a1mは、第6ギア120amの外周(第5軸A5に対して径方向外側)に配設される。ギア歯120a1mは、ダンパDAのギア歯DAaと噛み合う。
【0077】
第3シャフト120cmは、第5軸A5を回転軸として回転し、第6ギア120amに接続される。第3シャフト120cmは、第6ギア120amから、第5軸沿方向に沿って内燃機関E側に、後述する第1係合要素110mの第5ギア110amを越えた位置まで延びて形成される。第3シャフト120cmは、第5ギア110amの第5軸A5に沿って延びる中空部を貫通している。第3シャフト120cmは、貫通孔120cm1と、貫通孔120cm2と、を備えている。貫通孔120cm1は、第5軸沿方向に沿って形成され、貫通孔120cm2は、第5軸径方向に沿って形成される。貫通孔120cm1および貫通孔120cm2は、潤滑剤JKZを潤滑剤充填空間KKm(後述)内で循環させるための孔である。
【0078】
第7ギア120bmは、第5軸A5を回転軸として回転し、第3シャフト120cmの外周に配設される。第7ギア120bmは、その外周にギア歯120b1mを備えている。ギア歯120b1mは、移動部材130mの第1内歯130am(後述)と噛み合う。ギア歯110b1mについての詳細は、後述する。
【0079】
第1係合要素110mは、第5軸A5上に配設される。第1係合要素110mは、第5ギア110amと、第8ギア110bmと、第4シャフト110cmと、を備えている。第1係合要素110mは、第2係合要素120mの外周(第5軸A5に対して径方向外側)に配設されるパイプ状の部材である。
【0080】
第5ギア110amは、第6ギア120amの内燃機関E側に配設されており、第5軸A5を回転軸として回転する。第5ギア110amは、ギア歯110a1mを備えている。ギア歯110a1mは、第5ギア110amの外周(第5軸A5に対して径方向外側)に配設される。ギア歯110a1mは、フライホイールFWのギア歯FWaと噛み合う。
【0081】
第4シャフト110cmは、第5軸A5を回転軸として回転し、第5ギア110amに接続され、第5ギア110amから第5軸沿方向に沿って内燃機関E側に延びて形成される。第4シャフト110cmは、ギア120bのギア歯120b1mの手前まで延びている。第4シャフト110cmは、貫通孔110cm1を備えている。貫通孔110cm1は、第5軸径方向に沿って形成される。貫通孔110cm1は、潤滑剤JKZを潤滑剤充填空間KKm(後述)内で循環させるための孔である。
【0082】
第8ギア110bmは、第5軸A5を回転軸として回転し、第4シャフト110cmの内燃機関E側の外周に配設される。第8ギア110bmは、その外周にギア歯110b1mを備えている。ギア歯110b1mは、第8ギア110bmの外周(第5軸A5に対して径方向外側)に配設される。ギア歯110b1mは、移動部材130mの第2内歯130bm(後述)と噛み合う。ギア歯110b1mについての詳細は、後述する。
【0083】
第1係合要素110mの以上の構成により、フライホイールFWが内燃機関Eから回転駆動力を受けると、その回転駆動力が第1係合要素110mに伝達され、その結果、第1係合要素110mは、回転する。
【0084】
第1係合要素110mと第2係合要素120mとの間には、3つのニードルベアリング165mが配設されている。各ニードルベアリング165mは、第1係合要素110mを支持している。
【0085】
移動部材130mは、第7ギア120bm(第2係合要素120m)の外周(第5軸A5に対して径方向外側)に配設され、第1内歯130amと第2内歯130bmとを備えている。移動部材130mは、所定の制御機構(図示せず)によって第5軸沿方向に平行移動され得る。
【0086】
移動部材130mの第1内歯130amは、第7ギア120bmのギア歯120b1mと常に噛み合っている。従って、第7ギア120bm(第2係合要素110m)と、移動部材130mとは常に一体に回転する。移動部材130mは、ギア歯120b1mの第5軸沿方向に沿った範囲内で移動可能である。
【0087】
第2内歯130bmは、移動部材130mが第5軸沿方向におけるトランスアクスルTA側に位置する場合には、第8ギア110bmのギア歯110b1mと噛み合う。この結果、移動部材130mは、第1係合要素110m(第8ギア110bm)と第2係合要素120m(第7ギア120bm)とを接続し、上記第1状態を形成する。第1状態では、第1係合要素110m、第2係合要素120m、および、移動部材130mは、第5軸A5を回転軸として一体に回転し、フライホイールFWとダンパDAとの間で回転駆動力を伝達する。また、第2内歯130bmは、移動部材130mが第5軸沿方向の内燃機関E側に位置する場合には、第8ギア110bmのギア歯110b1mから離れて噛み合わない。この結果、移動部材130mは、第1係合要素110m(第8ギア110bm)と第2係合要素120m(第7ギア120bm)との切り離しを行い、上記第2状態を形成する。第2状態では、フライホイールFWとダンパDAとの間での回転駆動力の伝達は行われない。
【0088】
以上の構成のように、移動部材130mと、第1係合要素110mの第8ギア110bmと、第2係合要素120mの第7ギア120bmとは、第1係合要素110m(第8ギア110bm)と第2係合要素120m(第7ギア120bm)との接続と切り離しとを行うクラッチとして機能する。従って、移動部材130mと、第1係合要素110mの第8ギア110bmと、第2係合要素120mの第7ギア120bmとを総称して、クラッチCTm(図6)とも呼ぶ。
【0089】
第1シール部材170m、および、第2シール部材180mは、潤滑剤充填空間KKmを気密にし、潤滑剤充填空間KKmからケース104外部に潤滑剤が漏れることを防止する。具体的には、第1シール部材170mは、第2係合要素120mの第3シャフト120cmの外周面と第1係合要素110mの第5ギア110amの内周面との間に配設された第5軸A5を囲む環状のシール部材であり、これらの間を全周に亘ってシールしている。第2シール部材180mは、第1係合要素110mの第4シャフト110cmの外周面とケース104の内面との間に配設され、これらの間を全周に亘ってシールしている。なお、第1シール部材170mは、第6ギア120amと第5ギア110amとの間に配設され、これらの間をシールするようにしてもよい。第1シール部材170mは、第3シャフト120cmと第4シャフト110cmとの間に配設され、これらの間をシールするようにしてもよい。また、第2シール部材180mは、第1係合要素110mの第5ギア110amとケース104との間に配設され、これらの間をシールするようにしてもよい。
【0090】
ワンウェイクラッチ140mは、第2係合要素120mの第7ギア120bmの内燃機関E側の外周に配設され、第2係合要素120mが上記第1回転方向とは逆向きの上記第2回転方向に回転することを抑制する。ワンウェイクラッチ140mは、潤滑剤充填空間KKm内に配設される。
【0091】
本実施例の係合装置100mによれば、第1実施例の係合装置100と同様の作用・効果に加え、以下の作用・効果を奏することが可能となる。本実施例の係合装置100mによれば、クラッチCTmは、第1係合要素110mの第5ギア110amよりも第5軸沿方向の内燃機関E側に配設される。従って、本実施例の係合装置100mによれば、係合装置の径方向の大きさを、クラッチが第5ギア110amおよび第6ギア120amの第5軸A5の外周側に配設される係合装置と比較して、小さくすることが可能である。
【0092】
また、係合装置100mでは、フライホイールFWおよびダンパDAよりも第5軸沿方向の内燃機関E側にクラッチCTmが配設される構成となっている。このようにすれば、係合装置が第5軸沿方向のトランスアクスルTA側に延びて形成されることを抑制することができ、係合装置に対して第5軸沿方向のトランスアクスルTA側の空間を有効利用することができる。
【0093】
本実施例において第1係合要素110mの第5ギア110amは、特許請求の範囲における第1ギアの例である。第8ギア110bmは、特許請求の範囲における第4ギアの例である。第2係合要素120mの第6ギア120amは、特許請求の範囲における第2ギアの例である。第7ギア120bmは、特許請求の範囲における第3ギアの例である。第3シャフト120cmは、特許請求の範囲における第1シャフトの例である。第4シャフト110cmは、特許請求の範囲における第2シャフトの例である。第5軸沿方向の内燃機関E側の方向は、特許請求の範囲における延長方向の例である。第1シール部材170mは、特許請求の範囲における第1シール部材の例であり、第2シール部材180mは、特許請求の範囲における第2シール部材の例である。
【0094】
D.第4実施例:
図7は、第4実施例としての係合装置100pを示す概略図である。図中には、係合装置100pの第5軸A5を通る断面が示されている。本実施例の係合装置100pでは、第1実施例の係合装置100(図3)とは異なり、ワンウェイクラッチ140が省略され、この代わりに、ケース104pに設けられたギア歯104ptと噛み合う位置に移動した移動部材130pが、第2係合要素120の回転を阻止する。また、本実施例の係合装置100pでは、移動部材130pは、直接ではなく、中継ギア190を介して、第1係合要素110pに接続する。さらに、本実施例の係合装置100pは、ワンウェイクラッチ140の省略に伴いボールベアリング160pを備える。本実施例の係合装置100pは、第1実施例の係合装置100(図3)の代わりに利用可能である。本実施例の係合装置100pにおいて、第1実施例の係合装置100と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。また、図7では、本実施例の係合装置100pにおいて第1実施例の係合装置100と相違しつつも対応する構成を、係合装置100の対応する部材の符号の末尾に「p」を付して示している。例えば、係合装置100pにおける第1係合要素は、「110p」で示される。以下、本実施例の係合装置100pと図3の係合装置100との間の差異を説明する。
【0095】
本実施例の係合装置100pは、ケース104pと、第1係合要素110pと、第2係合要素120pと、移動部材130pと、中継ギア190と、ボールベアリング160pと、を含む。第1係合要素110pの一部分と、第2係合要素120pの一部分と、移動部材130pと、のそれぞれの構成は、図3の実施例と異なっている。
【0096】
第1係合要素110pは、図3の第1係合要素110と同様に、ケース104pに固定された2つのボールベアリング150に両端が支持されて、第5軸A5上に配設されている。この第1係合要素110pは、第1シャフト110cおよび第1ギア110aに加えて、第9ギア110bp、を備えている。第9ギア110bpは、図3の第3ギア110bと同様に、第1シャフト110cのトランスアクスルTA側の外周に設けられている。第9ギア110bpにおいて、第9ギア110bpのギア歯110b1pの幅(第5軸沿方向の長さ)は、図3の第3ギア110bのギア歯110b1の幅と比べて、狭い。
【0097】
中継ギア190は、第1係合要素110pの第9ギア110bpの外周側に配設されている。この中継ギア190は、第5軸A5を中心とする環状の部材であり、内周側に形成された内歯190aと、外周側に形成された外歯190bと、を含む。中継ギア190は、第1係合要素110pの第9ギア110bpに、嵌め込まれている(中継ギア190の内歯190aは、第9ギア110bpのギア歯110b1pと、常に噛み合っている)。中継ギア190は、第1係合要素110pと常に一体となって、第5軸A5を回転軸として回転する。第9ギア110bpのギア歯110b1pの幅は、中継ギア190の内歯190aの幅と同程度まで、狭められている。従って、中継ギア190は、図3の移動部材130とは異なり、第5軸沿方向に移動しない。なお、本実施例では、第1係合要素110pと中継ギア190とが別体として構成されているが、第1係合要素110pと中継ギア190とが一体に構成されていてもよい。すなわち、第9ギア110bpが、外歯190bを有するギアとして、構成されてもよい。
【0098】
第2係合要素120pは、ボールベアリング160pと、ボールベアリング160と、第1係合要素110pに支持された3つのニードルベアリング165と、によって支持されて、第5軸A5上に配設されている。ボールベアリング160pは、ワンウェイクラッチ140の代わりに、本実施例において追加されたベアリングであり、ケース104pに固定されている。
【0099】
この第2係合要素120pは、第2ギア120aおよび第2シャフト120cに加え、第10ギア120bpを備えている。第2係合要素120pの第2シャフト120cは、第2ギア120aから、第1係合要素110pの第9ギア110bpのギア歯110b1pの手前まで延びている。第10ギア120bpは、図3の第4ギア120bと同様に、第2シャフト120cのトランスアクスルTA側の外周に設けられている。第10ギア120bpにおいて、第10ギア120bpのギア歯120b1pの幅は、図3の第4ギア120bのギア歯120b1の幅と比べて広い。
【0100】
第1ギア110aのギア歯110a1および第2ギア120aのギア歯120a1は、それぞれ、フライホイールFWおよびダンパDAと係合するため、ケース104pの開口部104apから露出して配設されている。
【0101】
図3の移動部材130は、第1係合要素110の外周に配設されていたが、本実施例の移動部材130pは、第2係合要素120の第10ギア120bpの外周側に配設されている。移動部材130pは、第5軸A5を中心とする環状の部材であり、第1内歯130apと、第2内歯130bpと、外歯130cpと、を備えている。第2内歯130bpは、第2係合要素120pの第10ギア120bpのギア歯120b1pと、常に噛み合っている。従って、移動部材130pは、第2係合要素120pと、常に一体となって回転する。また、第10ギア120bpのギア歯120b1pの幅は、第2内歯130bpの幅と比べて、広い。従って、移動部材130pは、ギア歯120b1pの第5軸沿方向に沿った範囲内で(ギア歯120b1pの幅の範囲内で)、第5軸沿方向に移動可能である。
【0102】
移動部材130pの第1内歯130apは、第2内歯130bpよりも、トランスアクスルTA側に配設されている。この第1内歯130apは、移動部材130がトランスアクスルTA側に移動することによって、中継ギア190の外歯190bと噛み合う。
【0103】
移動部材130pの外歯130cpは、第2内歯130bpよりも、内燃機関E側に配設されている。この外歯130cpは、移動部材130pが内燃機関E側に移動することによって、ケース104pのギア歯104ptと噛み合う。ギア歯104ptは、ケース104pの内面に形成されている。ギア歯104ptは、ケース104pに固定されており、回転できない。従って、移動部材130pの外歯130cpがケース104pのギア歯104ptと噛み合った状態では、移動部材130p(すなわち、第2係合要素120p)は、ケース104pに固定されて、回転できない。この結果、第2ギア120aの回転が阻止される。
【0104】
移動部材130pにおいて、第1内歯130apの外歯190b側の端と、外歯130cpのギア歯104pt側の端との間の第5軸A5に沿った距離は、外歯190bと、ギア歯104ptとの間の第5軸A5に沿った距離よりも短い。
【0105】
移動部材130pは、制御機構(図示せず)によって第5軸沿方向に移動される。移動部材130pは、「第1位置」と、「第2位置」と、それらの間の「中間位置」と、の3つの位置の間で移動可能である。図7は、移動部材130pの位置が「中間位置」である状態を示している。この状態では、移動部材130pの第1内歯130apは、中継ギア190の外歯190bから離れている。すなわち、移動部材130pは、中継ギア190(すなわち第1係合要素110p)と、第2係合要素120pとを切り離す。この状態では、フライホイールFWとダンパDAとの間での回転駆動力の伝達は、行われない。また、この状態では、移動部材130pの外歯130cpは、ケース104pのギア歯104ptから離れている。従って、第2係合要素120p、すなわち、第2ギア120a(ダンパDA)の回転が許容される。このような「中間位置」は、例えば、内燃機関Eと第1回転電機MG1とを利用せずに第2回転電機MG2の駆動力を利用して車両が走行する際に、利用される。
【0106】
「第1位置」は、「中間位置(図7)」よりもトランスアクスルTA側の位置である(図示せず)。移動部材130pが「第1位置」にある状態では、移動部材130pの外歯130cpは、ケース104pのギア歯104ptから離れているので、第2係合要素120p、すなわち、第2ギア120a(ダンパDA)の回転が許容される。さらに、移動部材130pの第1内歯130apは、中継ギア190の外歯190bと噛み合っている。この結果、移動部材130pは、中継ギア190(すなわち、第1係合要素110p)と第2係合要素120pとを接続する。そして、第1係合要素110p、第2係合要素120p、および、移動部材130pは、第5軸A5を回転軸として一体に回転し、フライホイールFWとダンパDAとの間で回転駆動力を伝達する。このような「第1位置」は、例えば、内燃機関Eの駆動力を利用して車両が走行する際に、利用される。
【0107】
「第2位置」は、「中間位置(図7)」よりも内燃機関E側の位置である(図示せず)。移動部材130pが「第2位置」にある状態では、移動部材130pの第1内歯130apは、中継ギア190の外歯190bから離れている。従って、移動部材130pは、中継ギア190(すなわち、第1係合要素110p)と、第2係合要素120pとを切り離す。この状態では、フライホイールFWとダンパDAとの間での回転駆動力の伝達は行われない。また、移動部材130pの外歯130cpは、ケース104pのギア歯104ptと噛み合っている。このように、移動部材130pは、第2係合要素120pと、ケース104pとを接続する。すなわち、第2係合要素120p(第2ギア120a、および、ダンパDA)は、ケース104pに固定され、回転できない。このような「第2位置」は、例えば、2つの回転電機MG1、MG2の駆動力を利用して車両が走行する際に、利用される。
【0108】
以上の構成ように、移動部材130pの第1内歯130apと第2内歯130bpとを含む部分と、中継ギア190と、第1係合要素110pの第9ギア110bpと、第2係合要素120の第10ギア120bpとは、第1係合要素110pと第2係合要素120pとの接続と切り離しとを行うクラッチとして機能する。従って、移動部材130pの第1内歯130apと第2内歯130bpとを含む部分と、中継ギア190と、第1係合要素110pの第9ギア110bpと、第2係合要素120の第10ギア120bpとを総称して、クラッチCTp(図7)とも呼ぶ。このクラッチCTpは、いわゆるドグクラッチである。
【0109】
ケース104pの一部と、第1係合要素110pの一部と、第2係合要素120pの一部とは、クラッチCTpを囲む潤滑剤充填空間KKpを形成する。この潤滑剤充填空間KKpには、潤滑剤JKZが充填される。そして、第1シール部材170と第2シール部材180とが、潤滑剤充填空間KKpを気密にする。この結果、潤滑剤充填空間KKpから潤滑剤JKZが漏れることが抑制される。
【0110】
また、移動部材130pの第2内歯130bpと外歯130cpとを含む部分と、第2係合要素120pの第10ギア120bpと、ケース104pのギア歯104ptとは、第2係合要素120pとケース104pとを接続し、第2係合要素120pをギア歯104pt(ケース104p)に固定し得る。従って、移動部材130pの第2内歯130bpと外歯130cpとを含む部分と、第2係合要素120pの第10ギア120bpと、ケース104pのギア歯104ptとを総称して、固定装置LD(図7)とも呼ぶ。固定装置LDは、第2係合要素120p(第2ギア120a)とケース104p(ギア歯104pt)とを接続することによって、第2係合要素120p(第2ギア120a)の回転を阻止し、第2係合要素120p(第2ギア120a)とケース104p(ギア歯104pt)とを切り離すことによって、第2係合要素120p(第2ギア120a)の回転を許容する。この固定装置LDは、いわゆる、ドグクラッチである。固定装置LDは、潤滑剤充填空間KKp内に配設される。
【0111】
本実施例の係合装置100pは、第1実施例の係合装置100と同じ作用・効果に加え、以下の作用・効果を奏する。すなわち、本実施例の係合装置100pでは、固定装置LDによって、第2係合要素120p(第2ギア120a)の回転が阻止される。すなわち、第2係合要素120p(第2ギア120a)が、内燃機関Eによって回転する第1回転方向とは逆回転の第2回転方向に回転することを阻止することができる。従って、例えば、係合装置100pを含む動力伝達装置において、2つの回転電機MG1、MG2をモータとして作動させることによって第2係合要素120p(第2ギア120a)を第2回転方向に回転させる駆動力が生じた場合に、第2係合要素120p(第2ギア120a)を回転させることなく、動力伝達装置の出力シャフトOに駆動力を伝達することが可能となる。
【0112】
本実施例の係合装置100pでは、移動部材130pにおいて、第1内歯130apの外歯190b側の端と、外歯130cpののギア歯104pt側の端との間の第5軸A5に沿った距離は、外歯190bと、ギア歯104ptとの間の第5軸A5に沿った距離よりも短い。そして、移動部材130pは、第1係合要素110pに接続された中継ギア190の外歯190bと、ケース104pのギア歯104ptと、の間で、直線的に移動する。すなわち、中継ギア190の外歯190bと係合するように移動部材130pが移動すると、移動部材130pは、ケース104pのギア歯104ptから離れる。逆に、ケース104pのギア歯104ptと係合するように移動部材130pが移動すると、移動部材130pは、中継ギア190の外歯190bから離れる。このように、第1係合要素110pと第2係合要素120pとを接続する第1位置に移動部材130pがある状態では、第2係合要素120pとケース104pとは切り離され、逆に、第2係合要素120pとケース104pとを接続する第2位置に移動部材130pがある状態では、第1係合要素110pと第2係合要素120pとは切り離される。この結果、第1係合要素110pと第2係合要素120pとを接続させた状態で、第2係合要素120pとケース104pとを接続させてしまう誤接続を防止できる。ただし、クラッチCTpと固定装置LDとは、互いに分離して構成されていてもよい。
【0113】
また、本実施例の係合装置100では、第1シール部材170、および、第2シール部材180によって、クラッチCTpおよび固定装置LDが配設されるケース104p内部の潤滑剤充填空間KKpが気密にされ、潤滑剤充填空間KKpに潤滑剤が充填されている。このようにすれば、クラッチCTpおよび固定装置LDを潤滑剤JKZで潤滑にすることが可能となり、その結果、クラッチCTpおよび固定装置LDの動作を滑らかにすることが可能となる。
【0114】
なお、本実施例の係合装置の構成としては、図7に示す構成に限らず、種々の構成を採用可能である。例えば、クラッチCTpと固定装置LDとのそれぞれにおいて、係合に利用されるギア歯は、種々の種類のギア歯であってよい。例えば、移動部材130pに別の外歯を設け、中継ギア190に別の内歯を設け、それらのギア歯が係合してもよい。また、移動部材130pに別の内歯を設け、ケース104pに別の外歯を設け、それらのギア歯が係合してもよい。上述の各実施例の各ギア歯の構成においても、種々の種類のギア歯を採用可能である。
【0115】
また、係合装置の構成として、例えば、第3実施例(図6)に示すように、クラッチ(さらに、固定装置)が、フライホイールFWおよびダンパDAよりも第5軸沿方向の内燃機関E側に配設されてもよい。この場合も、移動部材が、3つの位置の間で移動することによって、第1係合要素と第2係合要素との接続と切り離しと、第2係合要素とケースとの接続と切り離しと、を実現すればよい。
【0116】
さらに、係合装置の構成として、移動部材130pと、第2係合要素120p(第2シャフト120c)との間に、特定のギア(例えば、中継ギア190と同様なギア)を設けるようにしてもよい。すなわち、移動部材130pは、特定のギアを介して、第2係合要素120p(第2シャフト120c)と接続されてもよい。この場合、特定のギアが、特許請求の範囲における第4ギアの例である。
【0117】
本実施例の中継ギア190は、特許請求の範囲における第3ギアの例である。第2係合要素120pの第10ギア120bpは、特許請求の範囲における第4ギアの例である。
【0118】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0119】
第1変形例:
上記実施例において動力伝達装置は、ハイブリッド車両において、各軸(第1実施例では軸A1〜A5。第2実施例では、軸A1および軸A5)が、車幅方向(Y軸方向)と平行となるように配設されているが、これに限られることはない。例えば、動力伝達装置は、ハイブリッド車両において、各軸が、ハイブリッド車両の前後方向(X軸方向)と平行となるように配設されてもよい。このようにすれば、ハイブリッド車両において、車両の前後方向のスペースに余裕を生じさせ得る。
【0120】
第2変形例:
上記実施例の係合装置のクラッチでは、移動部材のギアが、第1係合要素または第2係合要素のどちらか一方と常に噛み合う構成としていたが、これに限られるものではない。例えば、移動部材が、第1係合要素および第2係合要素と噛み合わない状態である非噛合状態を形成可能としてもよい。この場合、移動部材が、必要な時に第1係合要素と第2係合要素と係合して、第1係合要素と第2係合要素とを接続するようにしてもよい。
【0121】
第3変形例:
上記実施例の係合装置のクラッチは、移動部材とギヤ歯とが噛み合う噛み合い式のクラッチ(ドグクラッチ)を用いているが、これに限られるものでない。例えば、クラッチとして、湿式クラッチや乾式クラッチなどの摩擦クラッチを用いるようにしてもよい。また、クラッチとして、第1回転方向の回転駆動力をフライホイールFWからダンパDAに伝達するワンウェイクラッチを用いるようにしてもよい。固定装置としても、同様に、噛み合い式クラッチとは異なる種々のクラッチ(例えば、摩擦クラッチ)を用いても良い。
【符号の説明】
【0122】
10...駆動ユニット、20...エンジンマウント、22...カウンタドライブギア、23...モータ出力ギア24...カウンタドリブンギア、25...カウンタシャフト、26...ピニオンギア、27...リングギア、30...車体、100、100m、100n...係合装置、104...ケース、104a...開口部、110、110m...第1係合要素、110a、110b、110am、120a、120am、120bm、120b、110bm...ギア、DAa、FWa...ギア歯、120、120m...第2係合要素、130、130m...移動部材、140、140m...ワンウェイクラッチ、140n、150、160...ボールベアリング、165、165m...ニードルベアリング、170、170m、180、180m...シール部材、1000、1000n...動力伝達装置、E...内燃機関、O...出力シャフト、s...サンギア、r...リングギア、W...駆動輪、DF、DFn...デファレンシャル装置、I...入力シャフト、DA...ダンパ、TA、TAn...トランスアクスル、KK、KKn、KKp...潤滑剤充填空間、OP、OPn...オイルポンプ、FW...フライホイール、ca...キャリア、pg...ピニオンギア、MG1、MG2、MGn...回転電機、PGS...遊星歯車機構、TMn...自動変速機、LD...固定装置、CT、CTm、CTp...クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と回転電機とを駆動力源して利用するハイブリッド車両用の係合装置であって、前記内燃機関の出力部材に接続されて第1軸を回転軸として回転するフライホイールと、前記第1軸を回転軸として回転し、前記ハイブリッド車両の動力伝達装置の入力部材に接続されるダンパとの間の接続状態を切り替える係合装置であって、
前記フライホイールは、外周部にギア歯を備え、
前記ダンパは、外周部にギア歯を備え、
前記係合装置は、
前記フライホイールのギア歯と噛み合う第1ギア歯を有し、前記第1軸とは異なる第2軸を回転軸として回転する第1ギアと、
前記ダンパのギア歯と噛み合う第2ギア歯を有し、前記第2軸を回転軸として回転する第2ギアと、
前記第2軸を回転軸として回転し、前記第1ギアと前記第2ギアとのうちの一方のギアに接続されるシャフトであって、前記一方のギアから、前記第1ギアと前記第2ギアとのうちの他方のギアに向かう方向である延長方向に前記他方のギアを越えた位置まで、延びる第1シャフトと、
前記第2軸を回転軸として回転し、前記他方のギアに接続されるシャフトであって、前記第1シャフトの前記第2軸の外周側を、前記他方のギアから前記延長方向に延びる第2シャフトと、
前記他方のギアよりも前記延長方向側に配設され、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの接続と切り離しとを行うクラッチと、
を備える係合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の係合装置であって、
前記クラッチを収容するケースと、
前記一方のギアと前記他方のギアとの間、前記第1シャフトと前記第2シャフトとの間、および、前記一方のギアと前記第2シャフトとの間、のいずれかをシールする第1シール部材と、
前記他方のギアおよび前記第2シャフトのどちらか一方と、前記ケースとの間をシールする第2シール部材と、
前記ケースに充填される潤滑剤と、
を備える、係合装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の係合装置であって、
前記クラッチが係合されて、前記第2ギアが前記内燃機関によって回転する場合の回転方向を第1回転方向と呼ぶ時に、
前記係合装置は、
前記第2ギアが、前記第1回転方向とは逆回転である第2回転方向に回転することを阻止するワンウェイクラッチを備える、係合装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の係合装置であって、
ケースと、
前記第2ギアと前記ケースとを接続することによって前記第2ギアの回転を阻止し、前記第2ギアと前記ケースとを切り離すことによって前記第2ギアの回転を許容する、固定装置と、
を備える、係合装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の係合装置であって、
前記クラッチは、
前記第1シャフトに接続され、第3ギア歯を有し、前記第2軸上に配設される第3ギアと、
前記第2シャフトに接続され、第4ギア歯を有し、前記第2軸上に配設される第4ギアと、
前記第2軸を回転軸として回転しつつ前記第2軸に沿った軸沿方向に移動可能な移動部材であって、前記第3ギア歯と前記第4ギア歯のそれぞれと係合することで、前記第1シャフトと前記第2シャフトとを接続し、前記第3ギア歯と前記第4ギア歯との少なくとも一方と係合しないことで、前記第1シャフトと前記第2シャフトとを切り離す移動部材と、
を備える、係合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−35506(P2013−35506A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175230(P2011−175230)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】