説明

促進されたオルガノボランアミン錯体開始重合性組成物

本発明は、第一の部分の、フリーラジカル発生種アミン錯体を形成することができる有機ホウ素化合物並びに第二の部分の、1種又はそれ以上のフリーラジカル重合が可能な化合物並びにa)少なくとも1種のキノン構造を含有する化合物又はb)少なくとも1種の、少なくとも1個の芳香族環及び1個又はそれ以上の、好ましくは2個の、ヒドロキシル、エーテル及び両方から選択された、芳香族環上の置換基を含有する化合物(但し、2個の置換基が存在する場合、これらは互いにオルト又はパラに位置している)及び過酸化物含有化合物からなる硬化促進剤を含む二部分型重合性組成物である。第二の部分には、更に、2個の部分を接触させた際に、有機ホウ素化合物がフリーラジカル発生種を形成するようにすることができる試薬が含有されていてよい。第一の部分は、更に、フリーラジカル重合が可能な1種又はそれ以上の化合物からなっていてよい。これは、2個の部分の商業的に望ましい体積比を有する組成物を配合することを容易にする。本発明の配合の接着組成物は、低表面エネルギー基体、例えばプラスチックスへの優れた接着を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカル重合が可能な単位を含有する化合物及びフリーラジカル重合を開始することができるフリーラジカル発生種を形成することができる有機ホウ素化合物を含む促進された重合性組成物並びにこのような組成物をベースにする接着剤に関する。別の態様に於いて、本発明は、フリーラジカル重合が可能な部分を含有する化合物の重合方法及びこのような組成物を使用する基体の接着(又は接合)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低表面エネルギーオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン及びポリテトラフルオロエチレンは、種々の用途、例えば玩具、自動車部品、家具応用等に於いて、種々の魅力のある特性を有する。これらのプラスチック材料の低表面エネルギーのために、これらの材料に接着する接着組成物を見出すことは、非常に困難である。これらのプラスチックスのために使用される市販の接着剤は、接着剤を表面に接着させる前に、多くの時間を要するか又は長大な予備処理を表面に必要とする。このような予備処理には、コロナ処理、火炎処理、プライマーの適用等が含まれる。表面の長大な予備処理が必要なことは、自動車コンポーネント、玩具、家具等の設計に於ける著しい制限になる。
【0003】
Skoultchiに発行された一連の特許、即ち特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4及び特許文献5(全てを引用により本明細書に含める)並びにZharov等に発行された一連の特許、即ち特許文献6、特許文献7及び特許文献8(全てを引用により本明細書に含める)には、特に接着剤として有用であり、有機ホウ素アミン錯体が、硬化を開始するために使用される、重合性アクリル組成物が開示されている。これらの錯体は、低表面エネルギー基体に接着させる接着剤の重合を開始するために良好であることが開示されている。一連の特許、即ち特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13及び特許文献14(全てを引用により本明細書に含める)に於いてPociusは、有機ホウ素を錯化させるために使用される種々のアミン、例えばポリオキシアルキレンポリアミン及びジ第一級アミンと少なくとも2個の、第一級アミンと反応する基を有する化合物との反応生成物であるポリアミンとの、アミン有機ホウ素錯体を開示している。
【0004】
Sonnenschein等による一連の特許、即ち特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19及び特許文献20には、有機ホウ素がトリアルキルボランであり、そしてアミンが、アミジン構造成分を有するアミン;複素環内に少なくとも1個の窒素を有する脂肪族複素環;アミン部分を有する、環へ結合した置換基を有する脂環式化合物;更に1個又はそれ以上の水素結合受容基を有する第一級アミン(但し、第一級アミンと水素結合受容基との間に、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも3個の炭素原子が存在する)並びに共役イミンの群から選択される、アミン有機ホウ素錯体が開示されている。これらの特許文献には、アミン有機ホウ素錯体、フリーラジカル重合による重合が可能であるオレフィン不飽和を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーの1種又はそれ以上を含有する重合性組成物が開示されており、この重合性組成物が、接着剤、シーラント、被覆又はインク組成物として使用できることが開示されている。
【0005】
上記の文献の幾つかには、望まない重合に対して組成物を安定化するために、フェノール性化合物、例えばヒドロキノンを使用することが開示されている。Pociusの特許文献21の第18欄第45〜53行、Pociusの特許文献22の第13欄第17〜24行参照。Jennesの特許文献23には、アルキルボラン開始アクリレート系に於いて、安定剤としてヒドロキノン、フェナチアジン(phenathiazine)又はt−ブチルピロカテコールを使用することが開示されている。開示された組成物の多くは、工業的プロセスに於いて使用するために望まれるものよりも一層遅く重合する。これは、生産性の低い方法となる。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,106,928号明細書
【特許文献2】米国特許第5,143,884号明細書
【特許文献3】米国特許第5,286,821号明細書
【特許文献4】米国特許第5,310,835号明細書
【特許文献5】米国特許第5,376,746号明細書
【特許文献6】米国特許第5,539,070号明細書
【特許文献7】米国特許第5,690,780号明細書
【特許文献8】米国特許第5,691,065号明細書
【特許文献9】米国特許第5,616,796号明細書
【特許文献10】米国特許第5,621,143号明細書
【特許文献11】米国特許第5,681,910号明細書
【特許文献12】米国特許第5,686,544号明細書
【特許文献13】米国特許第5,718,977号明細書
【特許文献14】米国特許第5,795,657号明細書
【特許文献15】米国特許第6,806,330号明細書
【特許文献16】米国特許第6,730,759号明細書
【特許文献17】米国特許第6,706,831号明細書
【特許文献18】米国特許第6,713,578号明細書
【特許文献19】米国特許第6,713,579号明細書
【特許文献20】米国特許第6,710,145号明細書
【特許文献21】米国特許第5,684,102号明細書
【特許文献22】米国特許第5,861,910号明細書
【特許文献23】米国特許第3,236,823号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、低表面エネルギーの基体に接着させることができる接着システム及びこのような接着を容易に実施する開始剤システムについてのニーズが存在する。更に要求されるものは、周囲温度(ambient temperature)で又はその付近で熱的に安定であり、そしてユーザーが所望するとき重合を受ける、ポリマー組成物及び接着システムである。また、長大な又は多大の費用を要する前処理を必要とせずに、低表面エネルギー基体に接着させることができ、そして低表面エネルギー基体を他の基体に接着することができる接着組成物が要求されている。更に、4:1又はそれ以下の混合比で、現存する商業的装置内で使用することができる組成物が要求されている。高温度で安定性、強度及び接着力を有する組成物も望まれている。更に、多くの工業的プロセスが速いサイクル時間を必要としているので、急速に硬化する組成物が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第一の部分の、フリーラジカル発生種アミン錯体を形成することができる有機ホウ素化合物並びに第二の部分の、1種又はそれ以上のフリーラジカル重合が可能な化合物並びにa)少なくとも1種のキノン構造を含有する化合物又はb)少なくとも1種の、少なくとも1個の芳香族環及び1個又はそれ以上の、好ましくは2個の、ヒドロキシル、エーテル及び両方から選択された、芳香族環上の置換基を含有する化合物を含む硬化促進剤を含んでなる二部分型(two part)重合性組成物である。2個の置換基が存在する場合、これらは、お互い及び過酸化物含有化合物に対してオルト又はパラに位置している。第二の部分には、更に、2個の部分を接触させた際に、有機ホウ素化合物がフリーラジカル発生種を形成するようにすることができる試薬が含有されていてよい。第一の部分は、更に、フリーラジカル重合が可能な1種又はそれ以上の化合物からなっていてよい。これは、2個の部分の商業的に望ましい体積比を有する組成物を配合することを容易にする。本発明の配合の接着組成物は、低表面エネルギー基体、例えばプラスチックスへの優れた接着性を与える。
【0009】
本発明は、また、重合性組成物の成分を、重合性化合物が重合されるような条件下で接触させることを含む重合方法である。一つの態様に於いて、この接触は、周囲温度で又はその付近で起こる。別の態様に於いて、この方法は、更に、重合した組成物を、有機ホウ素化合物がフリーラジカル発生種を形成するような条件下で、高温度(elevated temperature)に加熱する工程からなる。
【0010】
更に別の態様に於いて、本発明は、2個又はそれ以上の基体を一緒に接合(bonding)する方法であって、重合性組成物の成分を、重合が開始するような条件下で、一緒に接触させる工程、重合性組成物を2個又はそれ以上の基体と接触させる工程、2個又はそれ以上の基体を、重合性組成物が2個又はそれ以上の基体の間に位置するように配置する工程及び重合性組成物を重合させ、そして2個又はそれ以上の基体を一緒に接合(又は接着)させる工程からなる方法である。更に別の態様に於いて、本発明は、基体の被覆方法であって、本発明に従った組成物を、基体の1個又はそれ以上の表面と接触させる工程及び本発明に従った組成物の重合を開始する工程を含む方法である。別の態様に於いて、本発明は、基体の間に配置され、そしてそれぞれの基体に接着された、本発明に従った組成物を有する、2個の基体からなる積層体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の重合性組成物は、周囲温度で又はその付近で安定であり、そして要求に応じて、組成物の2個の部分を接触させることにより又はその代わりに組成物の2個の部分を接触させ、その後この組成物を、有機ホウ素化合物がフリーラジカル発生種を形成する温度よりも高い温度に加熱することにより、硬化させることができる。更に、本発明の重合性組成物は、プライマー又は表面処理を必要とせずに、低表面エネルギー基体に対する良好な接着を形成することができる。本発明の重合性組成物は、商業的装置内で、4:1又はそれ以下の2個の部分の体積比で付与されるように配合することができる。重合した組成物は、上昇した温度で優れた凝集及び接着強度を示し、そうして高温度で優れた安定性を示す。本発明の重合性組成物は、急速な硬化を示し、そして好ましくは、適用して1時間後に、50psi又はそれ以上のASTM03165−91に従った重ね剪断強度(lap shear strength)を示す。好ましくは、この重合性組成物は、記載したような急速硬化と共に、基体に対する優れた接着を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
重合開始剤は、三価の有機ホウ素化合物を形成することができる有機ホウ素含有化合物である。好ましい態様に於いて、フリーラジカル発生種は、三価の有機ホウ素化合物フリーラジカル発生種である。好ましいホウ素含有化合物は、それらがホウ素との4個の結合を有する(その少なくとも3個は、共有結合であり、そして1個は共有結合又は錯化剤との電子会合の形であってよい)点で、四価である。フリーラジカル発生種、例えば三価のホウ素化合物は、ホウ素含有化合物を、本明細書に於いて脱錯化剤又は開始剤として参照される他の物質と接触させたとき形成される。フリーラジカル発生種は、環境酸素との反応によってフリーラジカルを発生する。ホウ素含有化合物が四価である態様に於いて、このような接触は、ホウ素原子に結合している又はホウ素原子に錯化されている配位子の1個の引き抜きを起こして、それを三価のボランに転化させる。フリーラジカル発生種は、重合条件下でフリーラジカルを含有する又は発生する化合物である。脱錯化剤又は開始剤は、錯化剤と反応する又はホウ素含有化合物からカチオンを引き抜く、どのような化合物であってもよい。好ましくは、ホウ素含有化合物は、有機ボレート又は有機ホウ素アミン錯体である。
【0013】
有機ボレートは、正カチオンとアニオン性四価ホウ素との塩である。脱錯化剤又は開始剤との接触によって有機ホウ素に転化させることができる任意の有機ボレートを使用することができる。好ましい有機ボレートの一種類(第四級ホウ素塩としても知られている)は、Kneafsey等の米国特許出願公開第2003/0226472号明細書及びKneafsey等の米国特許出願公開第2004/0068067号明細書(両方を引用して本明細書に含める)に開示されている。これらの2件の米国特許出願公開中に開示されている好ましい有機ボレートは、下記の式:
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R2はC1〜C10アルキルであり、R3は、それぞれ存在する場合に独立に、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキル、フェニル、フェニル置換C1〜C10アルキル又はフェニル置換C3〜C10シクロアルキルであるが、R2及び/又はR3のいずれか2個は、任意的に、炭素環式環の一部であってよく、そしてM+は金属イオン又は第四級アンモニウムイオンである)
によって記載される。有機ボレートの好ましい例には、ナトリウムテトラエチルボレート、リチウムテトラエチルボレート、リチウムフェニルトリエチルボレート及びテトラメチルアンモニウムフェニルトリエチルボレートが含まれる。
【0016】
別の態様に於いて、有機ボレートは、Kendall等の米国特許第6,630,555号明細書(引用により本明細書に含める)に開示されているような、内部的にブロックされたボレートである。この特許には、ホウ素原子が、オキサ又はチオ単位を更に含有する環構造の一部である、四配位の内部的にブロックされたボレートが開示されている。この内部的にブロックされた複素環式ボレートは、好ましくは、下記の構造:
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、Jは酸素又は硫黄であり、Jが酸素を表すとき、nは整数2、3、4又は5であり、Jが硫黄を表すとき、nは整数1、2、3、4又は5であり、R4、R5、R6及びR7は、独立に、炭素数1〜10の置換された若しくは非置換のアルキル若しくはアルキレン基、炭素数7〜12の置換されたアリール基又は非置換のアリール基であり、R5、R6及びR7は水素であってよく、R4は第二の非置換の又は置換された環式ボレートの一部であってよく、R4はスピロ環又はスピロ−エーテル環を含むことができ、R4はR5と一緒に結合して、シクロ脂肪族環を形成することができ又はR4はR5と一緒に環式エーテル環を含むことができ、そしてMは、任意の正に帯電した種であり、mは0よりも大きい数である)
を有する。
【0019】
本明細書に記載した有機ボレートに関連した、用語「内部的にブロックされた」は、四配位ホウ素原子が、4個のホウ素配位又は原子価の2個に渡って橋架けされた内部環構造の一部であることを意味する。内部ブロッキングには、ホウ素が単環又は多環構造の一部である、単一環又は多環構造が含まれる。
【0020】
有機ホウ素化合物がアミン錯体の形態である態様に於いて、本発明に於いて使用されるフリーラジカル発生種は、トリアルキルボラン又はアルキルシクロアルキルボランである。錯体中に使用される有機ホウ素は、トリアルキルボラン又はアルキルシクロアルキルボランである。好ましくは、このようなボランは、式:
B−(R13
(式中、Bはホウ素を表し、そしてR1は、それぞれ存在する場合に別々に、C1〜C10アルキル、C3〜C10シクロアルキルであり又はR1の2個若しくはそれ以上は、組合さって、シクロ脂肪族環を形成することができる)
に対応する。好ましくは、R1はC1〜C4アルキル、尚更に好ましくはC2〜C4アルキル、最も好ましくはC3〜C4アルキルである。好ましい有機ホウ素の中には、トリエチルボラン、トリイソプロピルボラン及びトリ−n−ブチルボランがある。
【0021】
有機ホウ素化合物が有機ホウ素アミン錯体である態様に於いて、有機ホウ素は三価の有機ホウ素であり、そしてアミンは、有機ホウ素と可逆的に錯化する任意のアミンであってよい。このような錯体は、式:
B−(R13−Am
(式中、R1は前記の通りであり、そしてAmはアミンである)
によって表される。
【0022】
有機ホウ素化合物を錯化するために使用されるアミンは、有機ホウ素を錯化し、そして脱錯化剤に曝露したとき脱錯化させることができる任意のアミン又はアミンの混合物であってよい。アミン/有機ホウ素錯体中の所定のアミンの使用の望ましさは、結合エネルギーとして知られている、ルイス酸−塩基錯体と、遊離されたルイス酸(有機ホウ素)及び塩基(アミン)のエネルギーの合計との間のエネルギー差から計算することができる。結合エネルギーが一層マイナスになるほど、錯体は一層安定になる。
【0023】
結合エネルギー=
−(錯体エネルギー−(ルイス酸のエネルギー+ルイス塩基のエネルギー))
【0024】
このような結合エネルギーは、理論的アブイニシオ(ab-initio)法、例えばハートリー−フォック(Hartree Fock)法及び3−21G基底関数系(basis set)を使用して計算することができる。これらの計算方法は、商業的ソフトウェア及びハードウェア、例えばスパルタン(SPARTAN)及びシリコン・グラフィックス(Silicon Graphics)ワークステーションと共にガウス98プログラムを使用して、商業的に利用可能である。1モル当たり10キロカロリー又はそれ以上のアミン/有機ホウ素結合エネルギーを有するアミンが好ましく、1モル当たり15キロカロリー又はそれ以上の結合エネルギーを有するアミンが更に好ましく、1モル当たり20キロカロリー又はそれ以上の結合エネルギーを有するアミンが最も好ましい。本発明の組成物の重合が、脱錯化剤の使用によって開始される態様に於いて、アミンの有機ホウ素に対する結合エネルギーは、好ましくは約50kcal/モル又はそれ以下、最も好ましくは約30kcal/モル又はそれ以下である。本発明の組成物の重合が、熱の使用によって開始される態様に於いて、アミンの結合エネルギーは、好ましくは約100kcal/モル又はそれ以下、更に好ましくは約80kcal/モル又はそれ以下、最も好ましくは約50kcal/モル又はそれ以下である。
【0025】
好ましいアミンには、Zharovの特許文献6の第5欄第41〜53行(引用により本明細書に含める)、Skoultchiの特許文献1の第2欄第29〜58行(引用により本明細書に含める)及びPociusの特許文献12の第7欄第29行〜第10欄第36行(引用により本明細書に含める)に開示されているような、第一級若しくは第二級アミン又は第一級若しくは第二級アミン基を含有するポリアミン又はアンモニア;エタノールアミン、第二級ジアルキルジアミン又はポリオキシアルキレンポリアミン;並びにDevinyの米国特許第5,883,208号明細書の第7欄第30行〜第8欄第56行(引用により本明細書に含める)に開示されているような、ジアミンと、2個又はそれ以上の、アミンと反応性である基を有する化合物との、アミン末端停止反応生成物が含まれる。Devinyに記載された反応生成物に関して、好ましいジ第一級アミンには、アルキルジ第一級アミン、アリールジ第一級アミン、アルカリールジ第一級アミン及びポリオキシアルキレンジアミンが含まれ、そしてアミンと反応性である化合物には、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ハライド、アルデヒド、エポキシド、アルコール及びアクリレート基の2個又はそれ以上の単位を含有する化合物が含まれる。Devinyに記載された好ましいアミンには、n−オクチルアミン、1,6−ジアミノヘキサン(1,6−ヘキサンジアミン)、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン(1,3−プロパンジアミン)、1,2−プロピレンジアミン、1,2−エタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリエチレンテトラアミン、ジエチレントリアミンが含まれる。好ましいポリオキシアルキレンポリアミンには、ポリエチレンオキシドジアミン、ポリプロピレンオキシドジアミン、トリエチレングリコールプロピレンジアミン、ポリテトラメチレンオキシドジアミン及びポリエチレンオキシドコポリプロピレンオキシドジアミンが含まれる。
【0026】
一つの好ましい態様に於いて、アミンは第一級アミン及び1個又はそれ以上の水素結合受容基を有する化合物(但し、第一級アミンと水素結合受容基との間に、少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも約3個の炭素原子が存在する)を含む。好ましくは、アルキレン単位は、第一級アミンと水素結合受容基との間に配置されている。水素結合受容基は、本明細書に於いて、ボラン錯化アミンの水素との分子間又は分子内相互作用により、ボランと錯化するアミン基の窒素の電子密度を増加させる官能基を意味する。好ましい水素結合受容基には、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、エーテル、ハロゲン、ポリエーテル、チオエーテル及びポリアミンが含まれる。第一級アミン及び1個又はそれ以上の水素結合受容基を有する好ましい化合物は、Sonnenschein等の、特許文献16(第4欄第60行〜第5欄第67行)、特許文献17、特許文献18、特許文献19及び特許文献20(関連する部分を引用により本明細書に含める)に記載されている。
【0027】
別の態様に於いて、アミンは、複素環内に少なくとも1個の窒素を有する脂肪族複素環である。この複素環式化合物には、また、1個又はそれ以上の窒素、酸素、硫黄又は二重結合が含有されていてよい。更に、この複素環は、複数の環(少なくとも1個の環は環内に窒素を有する)からなっていてよい。好ましい脂肪族複素環式アミンは、Sonnenschein等の、特許文献16(第6欄第1〜45行)、特許文献17、特許文献18、特許文献19及び特許文献20(関連する部分を引用することにより本明細書に含める)に記載されている。
【0028】
更に別の態様に於いて、有機ホウ素と錯化されるアミンはアミジンである。アミジンが前記のように有機ホウ素との十分な結合エネルギーを有しているアミジン構造を有する任意の化合物を使用することができる。好ましいアミジン化合物は、Sonnenschein等の、特許文献16(第6欄第4行〜第7欄第21行)、特許文献17、特許文献18、特許文献19及び特許文献20(関連する部分を引用により本明細書に含める)に記載されている。
【0029】
更に別の態様に於いて、有機ホウ素と錯化されるアミンは共役イミンである。イミンが前記のように有機ホウ素との十分な結合エネルギーを有している共役イミン構造を有する全ての化合物を使用することができる。この共役イミンは、直鎖若しくは分枝鎖イミン又は環式イミンであってよい。好ましいイミン化合物は、Sonnenschein等の、特許文献16(第7欄第22行〜第8欄第24行)、特許文献17、特許文献18、特許文献19及び特許文献20(関連する部分を引用により本明細書に含める)に記載されている。
【0030】
別の態様に於いて、このアミンは、脂環式環への結合を有し、置換基がアミン単位を含有する脂環式化合物であってよい。このアミン含有脂環式化合物は、1個又はそれ以上の窒素、酸素、硫黄原子又は二重結合を含有する第二の置換基を有していてよい。この脂環式環には、1個又は2個の二重結合が含有されていてよい。この脂環式化合物は、単一又は複数環構造であってよい。好ましくは、第一置換基上のアミンは第一級又は第二級である。好ましくは、脂環式環は5員又は6員環である。好ましくは、第二置換基上の官能基は、アミン、エーテル、チオエーテル又はハロゲンである。1個又はそれ以上のアミン含有置換基を有する好ましい脂環式化合物は、Sonnenschein等の、特許文献16(第8欄第25〜59行)、特許文献17、特許文献18、特許文献19及び特許文献20(関連する部分を引用により本明細書に含める)に記載されている。
【0031】
別の好ましい態様に於いて、このアミンには、更に、シロキサンが含有されており、これはアミノシロキサンである。アミン及びシロキサン単位の両方を有する任意の化合物(アミンは、前記のように有機ホウ素との十分な結合エネルギーを有している)を使用することができる。シロキサン単位を有する好ましいアミンは、米国特許第6,777,512号明細書、発明の名称「シロキサン重合性成分を含有する、アミンオルガノボラン錯体開始重合性組成物」(第10欄第14行〜第11欄第29行、引用により本明細書に含める)に、更に記載されている。
【0032】
有機ホウ素化合物が有機ホウ素アミン錯体である態様に於いて、錯体中のアミン化合物(群)のボラン化合物に対する当量比が比較的重要である。過剰のアミンが、錯体の安定性を増強し、そして脱錯化剤がイソシアネート官能性化合物である場合に、イソシアネート官能性化合物と反応し、それによって最終生成物中のポリウレアの存在になるために好ましい。ポリウレアの存在によって、組成物の高温度特性が改良される。
【0033】
本発明の重合性組成物中に使用することができる、フリーラジカル重合が可能な化合物には、フリーラジカル重合によって重合することができるオレフィン性不飽和を含有する、全てのモノマー、オリゴマー、ポリマー又はこれらの混合物が含まれる。このような化合物は当業者に公知である。Mottusの米国特許第3,275,611号明細書には、第2欄第46行〜第4欄第16行(引用により本明細書に含める)にこのような化合物の説明が示されている。オレフィン性不飽和を含有する化合物の好ましい種類は、Sonnenschein等の、特許文献16(第9欄第7〜54行)、特許文献17、特許文献18、特許文献19及び特許文献20(関連する部分を引用により本明細書に含める)に記載されている。
【0034】
好ましいアクリレート及びメタクリレートの例は、Skoultchiの特許文献3の第3欄第50行〜第6欄第12行(引用により本明細書に含める)及びPociusの特許文献11の第9欄第28行〜第12欄第25行(引用により本明細書に含める)に開示されている。これらの組成物中で、また、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールビスメタクリルオキシカーボナート、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジグリセロールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、イソボルニルメタクリレート及びテトラヒドロフルフリルメタクリレートを含むアクリレート架橋分子が有用である。
【0035】
組成物が接着剤として使用される態様に於いて、アクリレート及び/又はメタクリレート系化合物が、フリーラジカル重合が可能な化合物として好ましく使用される。最も好ましいアクリレート及びメタクリレート化合物には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシルメチルが含まれる。フリーラジカル重合が可能な化合物の好ましい量は、全配合重量基準で、好ましくは約10重量%以上、更に好ましくは約20重量%以上、最も好ましくは約30重量%以上である。フリーラジカル重合が可能な化合物の好ましい量は、全配合重量基準で、好ましくは約90重量%以下、更に好ましくは約85重量%以下、最も好ましくは約80重量%以下である。
【0036】
本発明の組成物には、第一の部分に於いて、有機ホウ素化合物及び1個又はそれ以上の開環複素環部分を含有する1種又はそれ以上の化合物を含み、そして第二の部分に於いて、フリーラジカル重合によって重合させることができる化合物、開環複素環部分を含有する化合物を重合させることができる触媒、本発明の硬化促進剤及び、任意的に、有機ホウ素化合物がフリーラジカル発生種を形成するようにする成分を含む、二部分型重合性組成物が含まれる。一つの態様に於いて、本発明は、フリーラジカル重合により重合する化合物から製造された1種又はそれ以上のポリマーを含有する第一の相及び開環複素環部分を含有する1種又はそれ以上の化合物から誘導された、重合した又は部分的に重合した化合物を含む第二の相からなる、二相系である。一つの態様に於いて、複素環開環部分を含有する化合物から製造されたポリマーは、フリーラジカル重合によって製造されたポリマーと混和性ではなく、従って、得られる重合した組成物は、それぞれ、形成された2種のポリマーの一方に富んでいる少なくとも2個の領域を有する。一つの態様に於いて、本発明の二部分型組成物には、重合した、フリーラジカル重合が可能な化合物からなる重合した部分及び重合していない又は部分的に重合した、開環複素環部分を有する化合物を含む第二の部分が含有されている。この二つの部分は、混和性、部分的に混和性又は非混和性であってよい。好ましい態様に於いて、重合した組成物は、2個の相、即ち、オレフィン結合によって重合する化合物をベースにするもの及び複素環部分の開環反応によって重合する第二のものを含む。本発明の硬化した組成物には、好ましくは、多くの場合に混和性ではない2個の領域が含まれている。或る態様に於いて、この2個の領域は、別個の相であるか又は2種の異なったポリマーの相互浸透したネットワークである。この2個の領域は、組成物に架橋化合物が含有されている場合、互いに化学的に結合することができる。
【0037】
複素環開環部分を含有する化合物は、開環及び重合が可能な複素環部分を含有する、任意のモノマー、オリゴマー又はプリポリマーであってよい。複素環部分中のヘテロ原子は、好ましくは窒素、酸素又は硫黄であり、窒素及び酸素が好ましく、酸素が最も好ましい。好ましくは、複素環部分は3員環である。好ましい複素環部分は、オキシラン部分及びアジリジン部分であり、オキシラン部分が最も好ましい。好ましい複素環式開環化合物は、Sonnenschein等の米国特許第6,762,260号明細書(第10欄第34行〜第11欄、第22行)(引用により本明細書に含める)に、更に記載されている。
【0038】
複素環式開環重合性化合物、例えばオキシラン及びアジリジンから誘導されたポリマーの存在によって、ナイロンのようなより高い表面エネルギープラスチックへの接着及び本発明の重合した又は部分的に重合した組成物の熱特性も改良される。より高い表面エネルギー基体への接着性(又は接合性)を改良し、そして重合した又は部分的に重合した組成物の高温度特性を改良するために十分な量の複素環式開環化合物が使用される。本明細書に於いて、熱特性は、重合した組成物のより高いガラス転移温度並びに高温、例えば125℃及び150℃でのより高い重ね剪断強度によって証明されるような、高温での改良された凝集強度を指す。ガラス転移温度の顕著な改良は5℃である。重ね剪断強度に於ける顕著な改良は、125℃で約50psi又はそれ以上である。全重合性配合物には、約2重量%又はそれ以上、更に好ましくは約5重量%又はそれ以上、最も好ましくは約10重量%又はそれ以上の複素環式重合性化合物が含有されていてよい。この重合性配合物には、約50重量%又はそれ以下、更に好ましくは約45重量%又はそれ以下、最も好ましくは約40重量%又はそれ以下の複素環式重合性化合物が含有されていてよい。
【0039】
或る場合に、Sonnenschein等の米国特許第6,762,260号明細書(第11欄第53行〜第1欄第11行)(引用により本明細書に含める)に記載されているように、フリーラジカル重合性化合物相を、複素環式開環重合性化合物誘導相に架橋させることが有用である。使用される架橋剤の量は、所望の特性、即ち125℃又はそれ以上で十分な重ね剪断強度を与え、尚、室温接着強度を所望の値よりも下にしない量である。架橋剤の好ましい量は、重合性配合物の重量基準で、約0重量%又はそれ以上、更に好ましくは約1重量%又はそれ以上、尚更に好ましくは約3重量%又はそれ以上、最も好ましくは約5重量%又はそれ以上である。好ましくは、使用する架橋剤の量は、全重合性配合物の、約20重量%又はそれ以下、尚更に好ましくは約15重量%又はそれ以下、最も好ましくは約12重量%又はそれ以下である。
【0040】
複素環式開環重合性化合物は、フリーラジカル重合が可能な部分を含有する化合物の重合速度と同様の速度で重合することが好ましい。1種の重合性成分の反応が遅すぎる場合、組成物は、両方の相のモノマーのポリマーへの許容できる転化を得る前に、ガラス化し得る。未反応成分は、可塑剤として作用し、そして接着、熱性能等のような特性を劣化させ得る。最終の重合した組成物の特性は、重合した組成物を後加熱して、複素環式重合性化合物の重合の完結を進めることによって増強させることができる。これは、重合した組成物を、不完全に重合したポリマー(群)のガラス転移温度よりも高い温度まで加熱することによって達成される。この態様に於いて、構造物の予想される使用温度で後硬化させることが好ましく、組成物の予想される使用温度よりも5℃上で更に好ましく、重合した組成物の予想される使用温度よりも10℃上での熱後硬化を与えることが最も好ましい。後硬化手順の例は、Briggs(米国特許第4,426,243号明細書)及びErsun−Hallsby等(米国特許第5,204,386号明細書)(引用により本明細書に含める)に開示されている。複素環式化合物の開環重合の好ましい態様は、Sonnenschein等の米国特許第6,762,260号明細書(第12欄、第24〜65行)(引用により本明細書に含める)に記載されている。
【0041】
フリーラジカル重合が可能な部分を有する化合物の重合のために有用な有機ホウ素化合物は、フリーラジカル発生種を形成することができる化合物、例えば三価のボラン化合物の形成を起こす脱錯化剤の適用により、例えばボランからアミンを追い出すことにより、フリーラジカル発生種を形成することができる化合物に転化させることができる。フリーラジカル発生種、例えば三価のボランを形成することができる化合物の形成。
【0042】
アルキルボランからのアミンの追い出しは、そのための交換エネルギーが有利である任意の化学薬品、例えば鉱酸、有機酸、ルイス酸、イソシアネート、酸クロリド、塩化スルホニル、アルデヒド等で起こり得る。好ましい脱錯化剤は、酸及びイソシアネートである。開環重合のための開始剤がルイス酸であるこれらの態様に於いて、ルイス酸は、また、脱錯化剤として機能し得るので、脱錯化剤を省略することができる。ルイス酸を、脱錯化剤及び複素環式開環重合開始剤として使用する場合、重合を開始するために必要な量を超える追加の量は必要ない。開始剤の選択は、重合性組成物の使用によって影響され得る。特に、重合性組成物が接着剤であり、そしてそれが接着する材料がポリプロピレンである場合、開始剤の好ましい種類はイソシアネート開始剤であり、そして基体がナイロンである場合、好ましい開始剤は酸である。重合は、また、熱的に開始することができる。重合を開始するために組成物を加熱する温度は、錯体の結合エネルギーによって指定される。一般的に、錯体を脱錯化することによって重合を開始するために使用される温度は、約30℃又はそれ以上、好ましくは約50℃又はそれ以上である。好ましくは、熱的開始重合を開始する温度は、約120℃又はそれ以下、更に好ましくは約100℃又はそれ以下である。熱源が、組成物の成分又はその機能に負の影響を与えない限り、組成物を所望の温度まで加熱する任意の熱源を使用することができる。この方式に於いて、組成物を熱に曝露する前又は後に、組成物を基体と接触させることができる。組成物を、基体と接触させる前に加熱する場合、組成物が基体にもはや接着できない点にまで、組成物が重合する前に、組成物を基体と接触させなくてはならない。熱的開始反応に於いて、ラジカル形成のために有利な条件を作るために適切であるが、重合を阻害するほど多くはない酸素が存在するように、酸素含有量を制御することが必要であろう。
【0043】
一つの態様に於いて、本発明の重合性組成物は、更に、米国特許第6,777,512号明細書、発明の名称「シロキサン重合性成分を含有する、アミンオルガノボラン錯体開始重合性組成物」(第12欄第66行〜第15欄第54行)(引用により本明細書に含める)に開示されているような、シロキサン主鎖及び重合が可能な反応性単位を有する、1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプリポリマー、シロキサン主鎖及び重合が可能な反応性部分を有する、1種又はそれ以上の化合物、オリゴマー又はプリポリマーの重合のための触媒からなっていてよい。
【0044】
本発明の組成物は、更に、安定化量のジヒドロカルビルヒドロキシルアミンを含有していてよい。本明細書で使用する用語安定化(stabilizing)は、所望するまで重合を防止することを指す。一般的に、これは、普通の貯蔵条件下で、重合が抑制されることを意味する。普通の貯蔵条件は、約0℃〜約40℃の温度での貯蔵を意味し、この場合、接着剤は密封した容器内に貯蔵される。安定な組成物は、規定された期間の間、所望しない粘度増加を受けないものである。粘度増加は、存在するモノマーの重合の証拠である。好ましい態様に於いて、組成物は、粘度が、40℃又はそれ以下の温度で貯蔵したとき30日間に亘って150%よりも大きく増加しない場合、更に好ましくは粘度増加が、30日間に亘って100%又はそれ以下、最も好ましくは30日間に亘って50%又はそれ以下である場合、安定である。
【0045】
本発明に於いて有用であるジヒドロカルビルヒドロキシルアミンには、本発明の組成物中に含有させたとき、本明細書に記載したように組成物の安定性を改良する、任意のこのような化合物が含まれる。好ましいジヒドロカルビルアミンは、式(R112N−OH(式中、R11は、それぞれの存在に於いて独立に、ヒドロカルビル単位である)に対応する。好ましくは、R13は、それぞれの存在に於いて独立に、C2〜C30アルキル、アルカリール又はアリール部分、更に好ましくはC10〜C20アルキル、アルカリール又はアリール部分であり、C10〜C20アルキル部分が尚一層好ましい。好ましいジヒドロカルビルヒドロキシルアミンの中には、BASF社からのヒドロキシルアミン遊離塩基、三井化学アメリカ社からのヒドロキシルアミン誘導体及びチバ・スペシャルティ・ケミカルス社(Ciba Specialty Chemicals)からのイルガスタブ(Irgastab)FS製品(ビス(N−ドデシル)N−ヒドロキシルアミンとしても記載される、酸化されたビス(水素化タロウアルキル)アミンを含む)がある。ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物を安定化させるために十分な量で使用される。好ましくは、ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物の約1ppm(100万当たりの部)又はそれ以上、更に好ましくは約2ppm又はそれ以上、最も好ましくは約5ppm又はそれ以上の量で使用される。好ましくは、ジヒドロカルビルヒドロキシルアミンは、本発明の組成物の約100,000ppm又はそれ以下、更に好ましくは約50,000ppm又はそれ以下、尚更に好ましくは約10,000ppm又はそれ以下、最も好ましくは約3,000ppm又はそれ以下の量で使用される。
【0046】
本発明の組成物は、更に、重合性組成物の硬化用の促進剤を含む。この促進剤は、少なくとも1種の、キノン構造を含有する化合物又は少なくとも1種の、少なくとも1個の芳香族環並びに1個又はそれ以上、好ましくは2個の、ヒドロキシル、エーテル及び両方から選択された、芳香族環上の置換基(2個の置換基が使用されるとき、これらは互いに、オルト又はパラ位に配置されている)を含有する化合物を含む。
【0047】
一つの態様に於いて、促進剤は、化合物が重合性組成物の硬化を促進する、キノン構造を含有する任意の化合物である。接着組成物のために、好ましいキノンは、また、重合性組成物の基体表面への接着を容易にする。好ましいキノン化合物には、下記の構造:
【0048】
【化3】

【0049】
が含有される。キノン化合物の好ましい種類は、置換又は非置換のキノン、ナフタキノン又はアントラキノンである。この置換基は、フリーラジカルの生成又は他の化合物とのフリーラジカルの反応を妨害しないどのような置換基であってもよい。好ましいキノン含有化合物は、構造:
【0050】
【化4】

【0051】
(式中、R8は、それぞれの存在に於いて別々に、フリーラジカル生成又は他の化合物とのフリーラジカル反応を妨害しない任意の置換基であり、そしてdは、それぞれの存在に於いて別々に、0〜4の整数である)
の1個に対応する化合物を含有する式の1個に対応する。好ましいキノン含有化合物は、キノン化合物である。キノン化合物は、好ましくは、式:
【0052】
【化5】

【0053】
に対応する。
【0054】
好ましくは、R8は、それぞれの存在に於いて別々に、R9、OR9又はSR9(式中、R9は、それぞれの存在に於いて別々に、置換又は非置換のヒドロカルビル、更に好ましくは置換又は非置換のアルキル、アリール、アラルキル、尚更に好ましくは置換又は非置換のC1〜C80アルキル、C6〜C60アリール、C6〜C90アラルキル、最も好ましくはC1〜C10アルキル及びC6〜C14アリールである)である。好ましくは、dは、0〜2、尚更に好ましくは0〜1、最も好ましくは0である。好ましいキノン構造含有化合物の中には、ベンゾキノン並びにオルト、メタ又はパラ置換ベンゾキノン並びにオルト及びパラキノンがある。好ましくは、R8は、R9又はOR9である。更に好ましいキノンには、アントラキノン、ベンゾキノン、2−フェニルベンゾキノン、オルトキノン及び置換ベンゾキノンが含まれる。最も好ましいキノン含有化合物には、ベンゾキノンが含まれる。
【0055】
使用されるキノンの量は、組成物の硬化を促進し、そして組成物の基体表面への接着を抑制しない量である。少なすぎる量を使用すると、硬化速度に於ける顕著な増加が存在しない。多すぎる量を使用すると、組成物は基体表面に接着しないであろう。好ましくは、キノンは、重合性組成物の、約0.01重量%又はそれ以上、更に好ましくは約0.02重量%又はそれ以上、最も好ましくは約0.04重量%又はそれ以上の量で使用される。好ましくは、キノンは、重合性組成物の約0.1重量%又はそれ以下、更に好ましくは約0.8重量%又はそれ以下、最も好ましくは約0.4重量%又はそれ以下の量で使用される。
【0056】
他の態様に於いて、促進剤は、少なくとも1種の、少なくとも1個の芳香族環並びに少なくとも1個、好ましくは2個の、ヒドロキシル、エーテル及び両方から選択された、芳香族環上の置換基(2個の置換基は、互いに、オルト又はパラ位に配置されている)を含有する化合物(以下、置換芳香族環含有化合物)及びペルオキシ部分を有する化合物からなる。置換芳香族化合物には、多環構造を有するものを含む、任意の芳香族部分が含有されてよい。この化合物は、好ましくは、2個又はそれ以上の、ヒドロキシ及びエーテルから選択された官能基が含有されている。好ましくは、置換芳香族化合物には、少なくとも1個のヒドロキシ及び他のヒドロキシ又はエーテル単位が含有されている。最も好ましくは、置換芳香族化合物には、少なくとも1個のヒドロキシ及び少なくとも1個のエーテル単位が含有されている。好ましくは、この置換化合物には、ベンゼン、アントラセン又はナフタレン芳香族環構造が含有されている。この置換芳香族化合物は、フリーラジカルの生成又は他の化合物とのフリーラジカルの反応を妨害しない任意の置換基によって置換されていてよい。好ましい置換基には、アルキル、アリール又はアラルキル基並びに酸素及び硫黄からなる基から選択されたヘテロ原子含有基が含まれる。最も好ましい置換基には、アリール基及びヘテロ原子含有基が含まれる。
【0057】
好ましくは、置換芳香族化合物は、式:
【0058】
【化6】

【0059】
(式中、R10は、それぞれの存在に於いて別々に、水素又はフリーラジカル生成若しくは他の化合物とのフリーラジカル反応を妨害しない任意の置換基であり、そしてR8及びdは、前記定義の通りである)
の1個に対応する。好ましくは、R10は、それぞれの存在に於いて別々に、置換又は非置換のヒドロカルビル、更に好ましくは置換又は非置換のアルキル、アリール又はアラルキル、尚更に好ましくは置換又は非置換のC1〜C100アルキル、C6〜C90アリール又はC6〜C90アラルキル、最も好ましくはC1〜C20アルキルである。eは、0又は1、好ましくは1である。
【0060】
更に好ましくは、置換芳香族含有化合物は、式:
【0061】
【化7】

【0062】
(式中、R8、R10、d及びeは、前記の通りである)
に対応する。
【0063】
最も好ましい置換芳香族環含有化合物の中には、アントラヒドロキノン、ナフタヒドロキノン、ヒドロキノンのメチルエーテル及びヒドロキノンのアルキルエーテルがある。使用される置換芳香族環含有化合物の量は、組成物の硬化を促進し、そして組成物の基体表面への接着を抑制しない量である。少なすぎる量を使用すると、硬化速度に於ける顕著な増加が存在しない。多すぎる量を使用すると、組成物は基体表面に接着しないであろう。好ましくは、置換芳香族環含有化合物は、重合性組成物の、約0.1重量%又はそれ以上、更に好ましくは約1重量%又はそれ以上、最も好ましくは約2重量%又はそれ以上の量で使用される。好ましくは、置換芳香族環含有化合物は、重合性組成物の約4重量%又はそれ以下、更に好ましくは約3重量%又はそれ以下、最も好ましくは約2.5重量%又はそれ以下の量で使用される。
【0064】
置換芳香族環含有化合物と連係して、ペルオキシ含有化合物が使用される。置換芳香族環含有化合物と反応してフリーラジカルを形成することができる任意のペルオキシ含有化合物を使用することができる。好ましいペルオキシ含有化合物には、過酸化ジアルキル、過酸化ジアリール、過酸化ジアシル、アルキルヒドロペルオキシド、アリールヒドロペルオキシド及びアリールヒドロペルオキシドが含まれる。更に好ましいペルオキシ含有化合物には、過酸化t−ブチル、過酸化ベンゾイル、過安息香酸t−ブチルが含まれる。最も好ましいペルオキシ含有化合物には、過酸化ベンゾイル及び過安息香酸t−ブチルが含まれる。
【0065】
使用されるペルオキシ含有化合物の量は、組成物の硬化を促進する量である。少なすぎる量を使用すると、硬化速度に於ける顕著な増加が存在しない。多すぎる量を使用すると、接着剤はポリオレフィンに結合しない。好ましくは、ペルオキシ含有化合物は、重合性組成物の、約0.1重量%又はそれ以上、更に好ましくは約1重量%又はそれ以上、最も好ましくは約2重量%又はそれ以上の量で使用される。好ましくは、ペルオキシ含有化合物は、重合性組成物の約4重量%又はそれ以下、更に好ましくは約3重量%又はそれ以下、最も好ましくは約2.5重量%又はそれ以下の量で使用される。
【0066】
好ましくは、ペルオキシ含有化合物の置換芳香族環含有化合物に対する相対量は、ペルオキシ化合物によって発生される得られるフリーラジカルの大部分が、置換芳香族環化合物と反応するように選択される。従って、ペルオキシ含有化合物の芳香族環化合物に対するモル比は、1又はそれ以下である。この比が高すぎる場合、ポリオレフィンに対する接着は観察されないであろう。この比が低すぎる場合、接着剤硬化速度は増加しない。好ましくは、ペルオキシ含有化合物の置換芳香族環含有化合物に対する比量は、約1:4又はそれ以上、最も好ましくは約2:3又はそれ以上である。好ましくは、ペルオキシ含有化合物の置換芳香族環含有化合物に対する比量は、約1:1又はそれ以下である。
【0067】
好ましくは、促進剤は、有機ホウ素化合物を含有しない部分中に配置される。しばしば、有機ホウ素化合物を含有する部分は、硬化剤側として参照され、そして他の部分は、重合性化合物の最大部分がこの部分中に存在しているので、樹脂側として参照される。本明細書で使用する、ヒドロカルビルは、炭素原子及び水素原子の両方を有する任意の部分(moiety)を意味し、そしてこれには、飽和及び不飽和の、枝分かれした及び枝分かれしていない、炭化水素鎖が含まれる。アルキルは、枝分かれした及び枝分かれしていない飽和炭化水素鎖を指す。アルケニルは、枝分かれした及び枝分かれしていない不飽和炭化水素を指す。アリールは、芳香族炭化水素単位を意味する。アルカリールは、結合した直鎖又は分枝鎖炭化水素鎖を有する芳香族炭化水素単位を意味する。アラルキルは、結合したアリール基を有する直鎖又は分枝鎖炭化水素鎖を意味する。アシルは、ヒドロカルビル及びカルボニル単位を意味する。他の方法で記載しない限り、これらの単位は、単位が結合している化合物の機能に於いて顕著に妨害しない任意の他の置換基で置換されていてよい。
【0068】
本発明の二部分型重合性組成物又は接着組成物は、二部分型組成物(又は二液型組成物)のための従来の市販の付与装置で使用するために、独特に適合されている。二部分を一緒にするとき、有用な可使時間(開放時間)は、モノマー混合物、錯体の量、触媒の量及び接着が実施される温度に依存して短いので、組成物を迅速に使用しなくてはならない。本発明の接着組成物を一方の基体又は両方の基体に適用し、次いで、好ましくは、接着ラインの外に過剰の組成物を押し出すような圧力で、基体を一緒に接着(接合)させる。一般的に、この接着は、組成物が適用された後、短時間内に、好ましくは、約10分以内に行わなくてはならない。典型的な接着ライン厚さは、約0.005インチ(0.13mm)〜約0.03インチ(0.76mm)である。隙間充填が必要な場合、本発明の組成物は接着剤及び隙間充填剤の両方として機能し得るので、接着ラインは、より厚くてもよい。接着工程は、室温で容易に実施することができ、そして接着の程度を改良するために、温度を約40℃より低い温度、好ましくは約30℃より低い温度、最も好ましくは約25℃より低い温度に保持することが望ましい。
【0069】
この組成物は、更に、種々の任意の添加剤を含んでいてよい。一つの特に有用な添加剤は、増粘剤、例えば中乃至高(約10,000〜約1,000,000)分子量ポリメタクリル酸メチルであり、これは、組成物の全重量基準で約10〜約60重量%の量で含有させることができる。増粘剤は、組成物の適用を容易にするために、組成物の粘度を上昇させるために使用することができる。
【0070】
他の特に有用な添加剤は、エラストマー性材料である。この材料は、それで製造された組成物の破壊靱性を改良することができ、これは、例えば軟質ポリマー基体のような他の材料のように容易に、エネルギーを機械的に吸収しない、金属基体のような堅い高降伏強度材料を接着させるとき有利であろう。このような添加物は、組成物の全重量基準で、約5重量%〜約35重量%の量で含有させることができる。有用なエラストマー性変性剤には、塩素化又はクロロスルホン化ポリエチレン、例えばハイパロン(HYPALON)30(デラウエア州ウィルミントン(Wilmington)のイー・アイ・デユポン・デ・ニモアス社(E.I.Dupont de Nemours & Co.)から市販されている)並びにスチレン及び共役ジエンのブロックコポリマー(デキスコ・ポリマーズ社(Dexco Polymers)から商標ベクター(VECTOR)で及びファイヤーストーン社(Firestone)から商標ステレオン(STEREON)で市販されている)が含まれる。ある種のグラフトコポリマー樹脂、例えば比較的硬質のシェルによって取り囲まれている、ゴム若しくはゴム様コア又はネットワークからなる粒子(この材料は、しばしば、「コア−シェル」ポリマーとして参照される)も有用であり、尚更に好ましい。ローム・アンド・ハース社(Rohm and Haas)から入手できる、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマーが、最も好ましい。組成物の破壊靱性を改良することに加えて、コア−シェルポリマーは、未硬化組成物に増強された塗布及び流れ特性を与えることができる。これらの増強された特性は、組成物について、注射器型アプリケーターから付与する際に望ましくない「すじ」又は垂直表面に適用した後のサグ(sag)若しくはスランプ(slump)を残す傾向の減少によって証明することができる。改良されたサグ−スランプ耐性を達成するために、約20%よりも多いコア−シェルポリマー添加物を使用することが望ましい。一般的に、使用される強化ポリマーの量は、製造されるポリマー又は接着剤に所望の靱性を与える量である。
【0071】
複素環式開環化合物が存在し、そしてオキシランである幾つかの態様に於いて、アジリジンが配合物の安定性を増強するので、配合物中にある種のアジリジン含有化合物を含有させることが望ましい。一般的に、配合物の安定性を改良するために十分なアジリジンが添加される。好ましくは、配合物の重量基準で約1重量%又はそれ以上、更に好ましくは約2重量%又はそれ以上のアジリジンが使用される。好ましくは、配合物の重量基準で約10重量%又はそれ以下、更に好ましくは約7重量%又はそれ以下のアジリジンが使用される。
【0072】
本発明に従った重合性組成物は、ポリマーの表面を変性するための接着剤、塗料、プライマーとして及び射出成形樹脂を含む、広範囲の種々の方法で使用することができる。これらは、また、ガラス及び金属繊維マットと連係して、例えば樹脂トランスファー成形操作に於いて、マトリックス樹脂として使用することができる。これらは、更に、例えば、電気コンポーネント、印刷回路基板等に於いて、封入剤及び注封材料として使用することができる。非常に望ましくは、これらは、ポリマー、木材、セラミックス、コンクリート、ガラス及び下塗りした金属を含む、広範囲の基体を接着(又は接合)させることができる、重合性接着組成物を提供する。他の望ましい関連応用は、低表面エネルギー基体、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド及びポリテトラフルオロエチレン並びにそれらのコポリマーへの、ペイントの接着を促進する際の、それらの使用である。この態様に於いて、この組成物は、基体の表面上に、基体を変性して、最終被膜の、基体の表面への接着を増強するために被覆される。
【0073】
本発明の組成物は、被覆(コーティング)用途に於いて使用することができる。このような応用に於いて、この組成物は、更に、溶媒のような担体からなっていてよい。この被覆には、更に、被覆に於いて使用するために当業者に公知である添加剤、例えば被覆を着色するための顔料、抑制剤及びUV安定剤が含有されていてよい。この組成物は、また、粉体被覆として適用することができ、そして粉体被覆に於いて使用するために当業者に公知である添加剤を含有していてよい。
【0074】
本発明の組成物は、また、ポリマー成形物品、押し出しフィルム又は異形物品の表面を変性するために使用することができる。本発明の組成物は、また、未変性プラスチック基体のポリマー鎖の表面グラフト化によって、ポリマー粒子の官能度を変化させるために使用することもできる。
【0075】
本発明の重合性組成物は、歴史的に、複雑な表面調製技術、下塗り等を使用しないでは、接着することが非常に困難であった、低表面エネルギープラスチック又はポリマー基体を、接着的に接合するために特に有用である。低表面エネルギー基体によって、約45mJ/m2又はそれ以下、更に好ましくは約40mJ/m2又はそれ以下、最も好ましくは約35mJ/m2又はそれ以下の表面エネルギーを有する材料が意味される。このような材料の中には、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリアミド、シンジオタクチックポリスチレン、オレフィン含有ブロックコポリマー及びフッ素化ポリマー、例えば約20mJ/m2未満の表面エネルギーを有するポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))が含まれる。(表現「表面エネルギー」は、しばしば、他のものによる「臨界濡れ張力」と同義語的に使用される)。本発明の組成物により有用に接着することができる、幾らか高い表面エネルギーの他のポリマーには、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル及びポリ塩化ビニルが含まれる。
【0076】
本発明の重合性組成物は、二部分型接着剤として容易に使用することができる。この重合性組成物の成分は、このような材料で作業するとき、通常行われるようにブレンドされる。有機ホウ素化合物のための脱錯化剤は、通常、オレフィン性重合性成分と共に含有され、それを有機ホウ素化合物から分離し、そうして二部分型組成物の第一の部分を与えるようにする。重合開始剤システムの有機ホウ素化合物は、組成物の第二の部分を与え、そして組成物を使用しようとする直前に、第一の部分に添加される。同様に、複素環式開環化合物重合のために使用されるルイス酸触媒は、複素環式開環化合物から分離して保存される。ルイス酸触媒は、第一の部分に直接添加することができ又はこれは、適切な担体、例えば反応性オレフィン性モノマー、即ちメタクリル酸メチル又はMMA/PMMA粘稠溶液中に、予め溶解させることができる。
【0077】
商業的及び工業的環境に於いて最も容易に使用されるべき、本発明のもののような二部分型接着剤のために、二部分を一緒にする体積比は、便利な自然数であるべきである。これは、従来の市販されているディスペンサーによる接着剤の適用を容易にする。このようなディスペンサーは、米国特許第4,538,920号明細書及び米国特許第5,082,147号明細書(引用により本明細書に含める)に示されており、コンプロテク社(Conprotec, Inc.)(ニュージャージー州セーレム(Salem))から、商品名ミックスパック(MIXPAC)で入手できる。典型的に、これらのディスペンサーでは、並べて配置された一対のチューブ型容器が使用されており、それぞれのチューブは、接着剤の二部分の一方を受け取るように意図されている。それぞれのチューブについて1個ある、2個のプランジャーが、(例えば、手動で又は手動ラチェット機構により)同時に前進して、チューブの内容物を、共通の中空の細長い混合チャンバー(これには、また、二部分のブレンドを容易にするためのスタティックミキサーが含有されていてよい)の中に排出する。ブレンドされた接着剤は、混合チャンバーから基体の上に押し出される。チューブが空になると、これを新しいチューブで取り替えることができ、そして適用プロセスが続けられる。接着剤の二部分を一緒にする比は、チューブの直径によって制御することができる。(それぞれのプランジャーは、固定された直径のチューブ内に受け入れられるようなサイズであり、そしてプランジャーは同じ速度でチューブの中に前進する)。単一のディスペンサーが、しばしば、種々の異なった二部分型接着剤で使用するために意図され、そしてプランジャーは接着剤の二部分を便利な混合比で付与するようなサイズで作られている。幾つかの共通混合比は、1:1、2:1、4:1及び10:1であるが、好ましくは、約10:1又はそれ以下、更に好ましくは4:1又はそれ以下である。
【0078】
好ましくは、本発明の混合した二部分型組成物は、滴り無しに適用することを可能にする適当な粘度を有する。好ましくは、2個の個々の成分の粘度は、同じオーダー又は大きさのものにすべきである。好ましくは、混合した組成物は、約100(0.1Pa・S)センチポアズ又はそれ以上、更に好ましくは約1,000(1.0Pa・S)センチポアズ又はそれ以上、最も好ましくは約5,000(5.0Pa・S)センチポアズ又はそれ以上の粘度を有する。好ましくは、接着組成物は、約150,000(150Pa・S)センチポアズ又はそれ以下、更に好ましくは約100,000(100Pa・S)センチポアズ又はそれ以下、最も好ましくは約50,000(50Pa・S)センチポアズ又はそれ以下の粘度を有する。
【実施例】
【0079】
下記の実施例は、例示目的のみのために含められ、特許請求の範囲の範囲を限定することを意図しない。他の方法で記載しない限り、全ての部及び%は、重量基準である。
【0080】
成分
下記の成分を、以下に示した例に於いて使用した。
【0081】
ローム・アンド・ハース社から入手可能なメタクリル酸メチル;
アルドリッチ社(Aldrich)から入手可能なポリ(メタクリル酸メチル)350,000mw;
アルドリッチ社(Aldrich)から入手可能なポリ(メタクリル酸メチル)996,000mw;
キャボット社(Cabot Corporation)から商標及び指定Cab−o−sil(登録商標)TS−720で入手可能なヒュームドシリカ;
シグマ・アルドリッチ社(Sigma Aldrich)から入手可能なアクリル酸;
デュポン−ダウ・エラストマース社(Dupont-Dow Elastomers)から入手可能なハイパロン(登録商標)20クロロスルホン化ポリエチレン;
3M社から入手可能なスコッチライト(Scotchlite)(登録商標)VS5500ガラスバブル;
シグマ・アルドリッチ社から入手可能なヒドロキノンのメチルエーテル(MEHQ);
アズテック・ペロキシドス社(Aztec Peroxides Inc.)から入手可能なペルオキシ安息香酸t−ブチル;
シグマ・アルドリッチ社から入手可能なメタクリル酸;
アルドリッチ社から入手可能なベンゾキノン及び
トリ−n−ブチルボランとメトキシプロピルアミンとの錯体。
【0082】
二部分型配合物は、それぞれの部分のための成分を混合し、次いで別個の容器内に入れることによって製造した。数種の異なった部分A(樹脂側)配合物を製造した。
【0083】
促進剤としてベンゾキノンを含有する樹脂側の製造方法
下記の成分を、1ガロン(3.79リットル)金属缶に添加し、そしてボールロールミルで24〜72時間ロール処理した。この成分は、150gのメタクリル酸メチル、45gのポリメタクリル酸メチル(350,000mw)、9gのポリメタクリル酸メチル(996,000mw)及び15gのクロロスルホン化ポリエチレンである。146gのブレンドした成分を、8オンス(236mL)プラスチックカップに添加し、これに33.99gのメタクリル酸メチル及び0.024gのヒドロキノンのメチルエーテルを添加する。成分を、舌圧子を使用し3分間、手によって完全に混合する。4gのガラスバブル及び4gのヒュームドシリカを添加し、そして成分を、舌圧子を使用し3分間、手によって完全に混合する。24gのアクリル酸を添加し、そして成分を、舌圧子を使用し3分間、手によって完全に混合する。0.096g以下のベンゾキノンを添加し、そして成分を、舌圧子を使用し3分間、手によって完全に混合する。得られる混合物を、8オンス(236mL)プラスチックカップ内に包装する。
【0084】
ヒドロキノンのメチルエーテルを含有する樹脂側の製造方法
下記の成分を、1ガロン金属缶に添加し、そしてボールロールミルで24〜72時間ロール処理する。この成分は、150gのメタクリル酸メチル、45gのポリメタクリル酸メチル(350,000mw)、9gのポリメタクリル酸メチル(996,000mw)及び15gのクロロスルホン化ポリエチレンである。146gのブレンドした成分を、8オンス(236mL)プラスチックカップに添加し、これに33.99gのメタクリル酸メチル及び4gのヒドロキノンのメチルエーテルを添加する。成分を、舌圧子を使用し3分間、手によって完全に混合する。
【0085】
4gのガラスバブル及び4gのヒュームドシリカを添加し、そして成分を、舌圧子を使用し3分間、手によって完全に混合する。28gのアクリル酸を添加し、そして成分を、舌圧子を使用し3分間、手によって完全に混合する。4gのペルオキシ安息香酸t−ブチルを添加し、そして成分を、舌圧子を使用し3分間、手によって完全に混合する。得られる混合物を、8オンス(236mL)プラスチックカップ内に包装する。
【0086】
部分B硬化剤
部分B(硬化剤側)は、15%のトリ−n−ブチルボラン−メトキシプロピルアミン錯体、8.0%のジェファミン(Jeffamine)T403アミン末端停止ポリエーテルポリオール、54%のメタクリル酸メチル、15%のポリ(メタクリル酸メチル)、7%のポリ(メタクリル酸メチル)ポリアクリレートコポリマー及び下記のような安定剤からなっていた。
【0087】
数種の部分A配合物を、上記の手順を使用して製造した。その配合を下記の表Iに記載する。
【0088】
【表1】

【0089】
上記のような接着剤を、下記の基体上で、下記のような適用から数回で、ASTM D3165−91に従って重ね剪断強度について試験した。表面領域を覆い、オーバーラッピングは、1インチ(2.54cm)幅×1/2インチ(1.27cm)長さであった。30ミル(0.76mm)のガラスビーズを使用して、30ミル(0.76mm)の結合厚さを維持した。このサンプルを、インストロン5500上で0.5インチ(1.27cm)/分の速度で、破壊まで引っ張り、そして破壊時応力をポンド/平方インチで記録した。その結果を、下記の表IIに纏めた。基体の表面は前処理しなかった。サンプルを硬化させ、室温(約23℃)で試験した。ポリプロピレン基体は、30%ガラス充填したポリプロピレンであった。破壊の様式に対する関連事項:凝集破壊は、破壊が接着剤内で起こったことを意味する。接着破壊は、接着剤が基体から引き離されたことを意味する。基体は、基体が破壊したことを意味する。
【0090】
【表2】

【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
【表5】

【0094】
【表6】

【0095】
実施例は、酸化されたビス(水素化タロウアルキル)アミンが、他の種類の安定剤の安定性を増強することを示す。この状況は、ブレンド又は単独で使用しても真実である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部分の、フリーラジカル発生種を形成することができる有機ホウ素化合物並びに第二の部分の、1種又はそれ以上のフリーラジカル重合が可能な化合物並びにa)少なくとも1種のキノン構造を含有する化合物又はb)少なくとも1種の、少なくとも1個の芳香族環及び1個又はそれ以上の、ヒドロキシル、エーテル及び両方から選択された、芳香族環上の置換基を含有する化合物及び過酸化物部分を有する化合物を含む硬化促進剤を含んでなる二部分型重合性組成物。
【請求項2】
第二の部分に、第一及び第二の部分を接触させた際に、有機ホウ素化合物を脱錯化させることができる脱錯化剤を更に含む請求項1に記載の二部分型組成物。
【請求項3】
芳香族化合物が2個又はそれ以上の、ヒドロキシル、エーテル又は両方の置換基を有し、これらの置換基が互いにオルト又はパラに位置している請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
有機ホウ素化合物が有機ボレート又は有機ホウ素アミン錯体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
過酸化物含有化合物が過酸化物及びヒドロペルオキシドの群から選択される請求項1〜4のいずれか1項に記載の二部分型組成物。
【請求項6】
前記促進剤が、1個又はそれ以上の、ヒドロキシル、エーテル又は両方の置換基を有する芳香族化合物であり、そして二部分型組成物の約0.1重量%〜約4重量%の量で存在し、そして過酸化物が、二部分型組成物の重量基準で、約0.5重量%〜約8重量%の量で存在する請求項1〜5のいずれか1項に記載の二部分型組成物。
【請求項7】
前記促進剤がキノン含有化合物であり、そして樹脂部分の組成物の約0.1重量%〜約4.0重量%の量で存在する請求項1〜5のいずれか1項に記載の二部分型組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の重合性組成物の成分を、フリーラジカル重合が可能な1種又はそれ以上のモノマーが重合されるような条件下で接触させることを含んでなる方法。
【請求項9】
更に、前記組成物を、高温度において、有機ホウ素アミン錯体が解離するような条件下で加熱する工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
2個又はそれ以上の基体を一緒に接着させる方法であって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物の成分を、重合が開始するような条件下で、一緒に接触させる工程、
接着組成物を2個又はそれ以上の基体と接触させる工程、
2個又はそれ以上の基体を、接着組成物が2個又はそれ以上の基体(これらは、互いに接触状態にある)の間に位置するように配置する工程及び
接着剤を硬化させ、そして2個又はそれ以上の基体を一緒に接着させる工程を含んでなる方法。
【請求項11】
低表面エネルギーポリマーの表面の変性方法であって、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物を、低表面エネルギーポリマーの表面の一部と接触させ、そして有機ホウ素アミン錯体を解離させ、それによってモノマー、オリゴマー、ポリマー又はこれらの混合物の重合を開始させ、そうして形成されたポリマーが、低表面エネルギーポリマーの表面上に存在するようにする変性方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物の成分を接触させる工程、接触させた組成物を、基体の1個又はそれ以上の表面と接触させる工程及び被覆組成物を硬化させる工程を含んでなる基体の被覆方法。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物を含んでなる被覆組成物。
【請求項14】
基体の間に配置され、そしてそれぞれの基体に接着された、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物を有する少なくとも2個の基体を含んでなる積層体。

【公表番号】特表2007−515547(P2007−515547A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547264(P2006−547264)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/042939
【国際公開番号】WO2005/063480
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】