説明

保守員派遣システム

【課題】保守員派遣システムにおいて、情報センタの監視員が、到着予定時刻より前に保守員の遅延を把握できるようにする。
【解決手段】情報センタ16は、GPSで携帯端末28から保守員の位置情報を検出する保守員の位置情報検出部30と、建物14の位置情報と保守員の動静情報と到着予定時刻を記憶する記憶部22とを有する。さらに、情報センタ16は、到着予定時刻よりも所定時間前になったことを判定する時間判定部32と、所定時間前になった場合、この所定時間と、保守員及び建物14の位置情報と、保守員の動静情報とに基づいて保守員が到着予定時刻より遅延するか否かを判断する遅延判断部34と、遅延判断部34により保守員が遅延すると判断された場合、その旨を監視員に報知する報知部36とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の設備機器に異常が発生したときに、建物に保守員を派遣する保守員派遣システムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の設備機器に異常が発生したときに、その建物から遠隔の情報センタに異常情報が報知され、報知された異常情報より情報センタに常駐する監視員が、その建物に保守員を派遣する保守員派遣システムが知られている。
【0003】
図3は、従来の保守員派遣システム110の構成の一例を示す図である。保守員派遣システム110は、保守対象となる設備機器112が設置された建物114と、設備機器112の情報を遠隔で取得する情報センタ116とを有する。建物114と情報センタ116とは、通信回線118を介して互いに接続されている。
【0004】
建物114は、設備機器112の異常を検出する異常検出部120を有する。異常検出部120は、設備機器112の異常状態を検出した場合、通信回線118を介して、異常情報を情報センタ116に送信する。なお、設備機器112の異常状態が検出されると、建物114の管理者が情報センタ116に通知する例もある。
【0005】
情報センタ116は、建物114からの異常情報のログを記憶する記憶部122と、その異常情報を表示する表示部124とを有する。記憶部122には、さらに、建物114の位置情報と、当日の保守員の作業情報とが予め記憶されている。作業情報は、保守員が作業する位置の情報と、保守員の移動手段を示す動静情報とを含む。
【0006】
情報センタ116の監視員は、表示部124に表示された異常情報により、建物114で設備機器112の異常が発生していることを把握し、記憶部122に記憶された情報に基づいて、この異常の対応に適任であろう保守員を複数の保守員の中から選出する。そして、監視員は、電話機126を用いて選出された保守員が所持する携帯端末128を呼び出し、保守員に口頭で出動指令を伝達し建物114へ派遣する。また、監視員は、建物114の管理者に対し保守員を派遣した旨とともに保守員の到着予定時刻を通知する。
【0007】
下記特許文献1においては、エレベータに異常が発生した場合、各保守員の移動手段と交通状況に基づいて、各保守員が現場に到着するまでの時間を予測し、その予測時間が早い保守員を優先して派遣するエレベータの保守管理システムが記載されている。
【0008】
下記特許文献2においては、保守員の作業完了時間が遅延する場合、その遅延時間を遠隔監視センタのオペレータに通知する保守点検管理システムが記載されている。このシステムにおいては、作業が遅延している場合でも、オペレータが、最新の作業完了時刻を顧客に知らせることができる。
【0009】
下記特許文献3においては、GPS(Global Positioning System)で検出された物件付近の保守員の位置を、オペレータが利用する地図上に反映させる保守管理システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−230745号公報
【特許文献2】特開2007−238202号公報
【特許文献3】特開2010−6575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の保守員派遣システムにおいては、当日の保守員の作業進捗状況または交通状況などにより、派遣された保守員が、到着予定時刻までに建物へ到着できない場合がある。この場合、その時刻に合わせて待機している管理者は、保守員がなぜ遅れているのか、またはいつ到着するのかが分からない。よって、管理者は、その間、どのような対応をとって良いのかわからず不安になってしまう可能性がある。一方で、監視員も、保守員の遅延状況を把握していないので、その旨に関して管理者から問い合わせを受けた場合、上手に対応することができないという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、到着予定時刻より前に保守員の遅延を、少なくとも情報センタの監視員が把握することができる保守員派遣システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、設備機器が設置された建物と、設備機器を保守する保守員が所持する携帯端末と、設備機器の異常状態により携帯端末に出動指令を発信する情報センタと、が通信回線を介して接続され、設備機器に異常が発生すると、建物に保守員を派遣する保守員派遣システムにおいて、情報センタは、GPSで携帯端末から保守員の位置情報を検出する保守員の位置情報検出部と、建物の位置情報と保守員の動静情報と到着予定時刻を記憶する記憶部と、到着予定時刻よりも所定時間前になったことを判定する時間判定部と、時間判定部により所定時間前になったと判定された場合、この所定時間と、保守員及び建物の位置情報と、保守員の動静情報とに基づいて保守員が到着予定時刻より遅延するか否かを判断する遅延判断部と、遅延判断部により保守員が遅延すると判断された場合、その旨を監視員に報知する報知部とを有することを特徴とする。
【0014】
また、遅延判断部は、前記各情報から算出される保守員の移動時間が前記所定時間より大きい場合、保守員が遅延すると判断することができる。
【0015】
また、時間判定部は、設備機器の異常の重要度に基づいて所定時間を設定することができる。
【0016】
また、時間判定部は、前記重要度が大きいほど、所定時間が大きくなるように設定することができる。
【0017】
また、報知部は、保守員の移動時間と所定時間の差分を遅延時間として監視員に報知することができる。
【0018】
また、報知部は、前記遅延時間を建物の管理者に報知することができる。
【0019】
また、報知部は、保守員の遅延を既に監視員に報知済みであることをその保守員に報知することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の保守員派遣システムによれば、到着予定時刻より前に保守員の遅延を、少なくとも情報センタの監視員が把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係る保守員派遣システムの構成を示す図である。
【図2】保守員派遣システムの制御動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】従来の保守員派遣システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る保守員派遣システムの実施形態について、図に従って説明する。一例として、一つの建物を挙げ、この建物に設置される設備機器の異常を遠隔で取得して保守員を派遣する保守員派遣システムについて説明する。なお、本発明は、一つの建物に限らず、複数の建物内の設備機器の異常を遠隔で取得して保守員を派遣する保守員派遣システムにも適用できる。
【0023】
まず、本実施形態に係る保守員派遣システム10の構成について、図1を用いて説明する。保守員派遣システム10は、保守対象となる設備機器12が設置された建物14と、設備機器12の異常を遠隔で取得する情報センタ16と、設備機器12を保守する保守員が所持する携帯端末28とを有する。建物14と情報センタ16と携帯端末28は、通信回線18を介して互いに接続されている。通信回線18は、公衆の便に供される共用通信回線であっても、独自の専用の通信回線であってもよく、両者を混用することも可能である。
【0024】
携帯端末28は、音声情報、文字情報、画像データ情報、またはそれらを組み合わせた情報などを通信可能な通信機器であり、例えば、携帯電話、スマートフォン、パソコンなどである。また、携帯端末28は、GPSの衛星測位システムを有し、現在の位置情報を取得することもできる。
【0025】
建物14に設置される設備機器12は、例えはエレベータ、エスカレータ、電気設備機器、空調設備機器または衛生設備機器である。
【0026】
建物14は、設備機器12の異常を検出する異常検出部20を有する。異常検出部20は、通信回線18に接続しており、検出した異常に関する情報を情報センタ16に送信する。本実施形態はこの構成に限定されず、情報センタ16が設備機器12の異常を取得できるのであれば、建物14を管理する管理者が、例えば電話により、設備機器12の異常を情報センタ16に通知することもできる。なお、建物14の管理者は、その建物14に常駐していても、非常駐であってもよい。
【0027】
情報センタ16は、各種情報を記憶する記憶部22と、各種情報を表示する表示部24と、情報センタ16に常駐する監視員が使用する電話機26とを有する。
【0028】
記憶部22は、建物14から通知される異常情報のログと、建物14の位置情報と、当日に予定される保守員の作業情報と、到着予定時刻とを記憶する。保守員の作業情報は、保守員の作業場所と、その作業場所における作業予定時刻と、保守員の移動手段、例えば自動車、電車を示す動静情報とを含む。到着予定時刻は、保守員が、設備機器12の異常発生時に派遣される建物14へ到着する予定の時刻であり、派遣指令時に監視員により記憶部22に入力される。この到着予定時刻は、派遣される保守員の意見を反映してもよい。
【0029】
また、情報センタ16は、位置情報検出部30と時間判定部32と遅延判断部34と報知部36とを有する。
【0030】
位置情報検出部30は、GPSで携帯端末28からの保守員の位置情報を検出する。本実施形態においては、位置情報検出部30は、派遣される保守員の位置情報を検出する。
【0031】
時間判定部32は、到着予定時刻よりも所定時間前になったことを判定する。つまり、時間判定部32はタイマなどの計時機能を有し、この計時機能が、記憶部22に記憶された到着予定時刻より所定時間前であるかを判定する。この判定結果により、遅延を判断する遅延判断部34が動作する。所定時間は例えば5分で設定される。しかし、本発明はこの時間5分に限定されるものではなく、その時間より長くても短くてもよい。
【0032】
また、時間判定部32は、設備機器12の異常の重要度に基づいて所定時間を設定することができる。設備機器12の異常の重要度とは、建物14の利用者にとってその異常が深刻なものであるかを示す度合いであり、例えばエレベータかご内の閉じ込め、建物内の断水、あるいは建物内の停電は、利用者にとって深刻であり、重要度が大きい異常と言える。このように重要度が大きい異常である場合、時間判定部32は所定時間が大きくなるように、例えば上述の5分から10分へと設定する。これにより、重要度が大きい異常に対しては、遅延の判断が早められる。その結果、仮に遅延しそうになっても、例えば建物14の近くにいる他の保守員に派遣を要請するといった対応を早めることができる。
【0033】
遅延判断部34は、時間判定部32により所定時間前になったと判定された場合、この所定時間と、保守員及び建物14の位置情報と、保守員の動静情報とに基づいて保守員が到着予定時刻より遅延するか否かを判断する。ここで、保守員の位置情報は、時間判定部32の判定動作時点において、位置情報検出部30によって検出された情報である。
【0034】
具体的には、遅延判断部34は、保守員及び建物14の位置情報と、保守員の動静情報とに基づいて保守員の移動時間を算出する。つまり、遅延判断部34は、保守員の移動手段によって、保守員が保守員と建物14との間の距離を移動するのにかかる時間を保守員の移動時間として算出する。そして、遅延判断部34は、保守員の移動時間が所定時間より大きい場合、保守員が遅延すると判断する。移動時間の算出においては、移動手段が道路を使用する場合には道路マップが使用され、移動手段が電車である場合には、路線マップが使用される。
【0035】
報知部36は、遅延判断部34により保守員が遅延すると判断された場合、その旨を監視員に報知する。また、報知部36は、保守員の移動時間と所定時間の差分を遅延時刻として監視員に報知することもできる。報知部36は、表示部24を介して視覚的に報知することも、スピーカなどを介して聴覚的に報知することもできる。これにより、監視員は、到着予定時刻より前に保守員の遅延を把握することができる。その結果、監視員は、電話機26でその旨を建物14の管理者に知らせることもできる、また、仮に、建物14の管理者から問い合わせを受けた場合でも、監視員は、遅延状況を把握しているので、慌てずに対応することができる。
【0036】
また、報知部36は、上述の遅延する旨と遅延時間を建物14の管理者に報知することができる。この場合、報知部36は、通信回線18を介して建物14の管理装置(図示せず)、または管理者の携帯端末(図示せず)に情報を送信する。これにより、管理者は、到着予定時刻より前に保守員の遅延を把握することができる。
【0037】
さらに、報知部36は、保守員の遅延を既に監視員に報知済みであることをその保守員に報知することもできる。この場合、報知部36は、通信回線18を介して保守員の携帯端末28に情報を送信する。また、監視員自らが、遅延しそうである状況を把握済みである旨を保守員に対して知らせることもできる。これにより、保守員は、遅延をできるだけ短くしようとして道中で急ぐあまり事故に遭遇してしまうことを防止することができる。
【0038】
次に、本実施形態の保守員派遣システム10の制御動作について、図2を用いて説明する。図2は、保守員派遣システムの制御動作の一例を示すフローチャートである。この制御動作は、建物14の設備機器12に異常が発生し、その建物14に派遣される保守員の選定と、その保守員が建物14に到着する到着予定時刻が決定された時点をスタートとする。
【0039】
まず、ステップS101において、情報センタ16から保守員に出動指令が発信される。そして、ステップS102で、時間判定部32により設備機器12の異常の重要度が判定される。重要度が大きい場合、ステップS103に進み、所定時間が、例えば5分から10分へ変更される。一方、重要度が大きくない場合、所定時間を例えば5分のまま変更せずに、ステップS104に進む。
【0040】
そして、ステップS104において、時間判定部32により現在の時刻が到着予定時刻より所定時間前になったか否かが判定される。現在の時刻が到着予定時刻より所定時間前である場合、ステップS105に進み、位置情報検出部30によりその時刻における保守員の位置情報が検出される。一方、現在の時刻が未だに所定時間前でない場合、再びステップS104に戻る。
【0041】
そして、ステップS106では、遅延判断部34により保守員が到着予定時刻より遅延するか否かが判断される。保守員が遅延すると判断された場合、ステップS107に進み、報知部36により、遅延する旨が監視員に報知される。この報知により、監視員が、保守員の遅延を把握することができ、建物14の管理者に連絡することができる。一方、保守員が遅延しないと判断された場合、そのまま制御動作が終了する。
【0042】
本実施形態の保守員派遣システム10によれば、保守員が到着予定時刻までに建物14に到着できない場合であっても、監視員がその状況を事前に把握することができる。その結果、監視員はその情報を建物14の管理者にも通知することもできるので、保守員の遅延による管理者の不安が低減される。また、仮に、建物14の管理者から情報センタ16に、保守員が到着していない旨の問い合わせがあったとしても、監視員は、その状況を事前に把握しているので冷静に対応することができる。
【0043】
また、本実施形態の保守員派遣システム10によれば、到着予定時刻の所定時間前にのみ遅延判断がなされる。このように、判断動作が1度であることにより、情報センタ16の判断動作負荷を軽減することもできるとともに、状況を把握しなければならない監視員の労働負荷も軽減することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 保守員派遣システム、12 設備機器、14 建物、16 情報センタ、18 通信回線、20 異常検出部、22 記憶部、24 表示部、26 電話機、28 携帯端末、30 位置情報検出部、32 時間判定部、34 遅延判断部、36 報知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備機器が設置された建物と、設備機器を保守する保守員が所持する携帯端末と、設備機器の異常状態により携帯端末に出動指令を発信する情報センタと、が通信回線を介して接続され、
設備機器に異常が発生すると、建物に保守員を派遣する保守員派遣システムにおいて、
情報センタは、
GPSで携帯端末から保守員の位置情報を検出する保守員の位置情報検出部と、
建物の位置情報と保守員の動静情報と到着予定時刻を記憶する記憶部と、
到着予定時刻よりも所定時間前になったことを判定する時間判定部と、
時間判定部により所定時間前になったと判定された場合、この所定時間と、保守員及び建物の位置情報と、保守員の動静情報とに基づいて保守員が到着予定時刻より遅延するか否かを判断する遅延判断部と、
遅延判断部により保守員が遅延すると判断された場合、その旨を監視員に報知する報知部と、
を有することを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項2】
請求項1に記載の保守員派遣システムにおいて、
遅延判断部は、前記各情報から算出される保守員の移動時間が前記所定時間より大きい場合、保守員が遅延すると判断する、
ことを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項3】
請求項2に記載の保守員派遣システムにおいて、
時間判定部は、設備機器の異常の重要度に基づいて所定時間を設定する、
ことを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項4】
請求項3に記載の保守員派遣システムにおいて、
時間判定部は、前記重要度が大きいほど、所定時間が大きくなるように設定する、
ことを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の保守員派遣システムにおいて、
報知部は、保守員の移動時間と所定時間の差分を遅延時間として監視員に報知する、
ことを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項6】
請求項5に記載の保守員派遣システムにおいて、
報知部は、前記遅延時間を建物の管理者に報知する、
ことを特徴とする保守員派遣システム。
【請求項7】
請求項5または6に記載の保守員派遣システムにおいて、
報知部は、保守員の遅延を既に監視員に報知済みであることをその保守員に報知する、
ことを特徴とする保守員派遣システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−247821(P2012−247821A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116535(P2011−116535)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】