保安器
【課題】ジャック盤に対するSPDプラグの挿入及び引き抜きを容易にして、作業者の負担を軽減する。
【解決手段】保安器1は、SPDプラグ40及びジャック盤10により構成されている。SPDプラグ40とジャック盤10とは、SPDプラグ40側のプラグ端子49−1,49−2を、ジャック盤10側のジャックコンタクト34−1,34−2に嵌入することにより、電気的に接続される。SPDプラグ40をジャック盤10に挿着した状態では、SPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2と、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2とが、係合してそのSPDプラグ40が固定されるので、その係合によるストッパ機能の働きにより、SPDプラグ40における安定した装着状態を保持することができる。
【解決手段】保安器1は、SPDプラグ40及びジャック盤10により構成されている。SPDプラグ40とジャック盤10とは、SPDプラグ40側のプラグ端子49−1,49−2を、ジャック盤10側のジャックコンタクト34−1,34−2に嵌入することにより、電気的に接続される。SPDプラグ40をジャック盤10に挿着した状態では、SPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2と、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2とが、係合してそのSPDプラグ40が固定されるので、その係合によるストッパ機能の働きにより、SPDプラグ40における安定した装着状態を保持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄道等で使用される交流380V電源回路に誘起される雷、サージ等の異常電圧や異常電流から、電源機器等を保護するためのサージ防護デバイス(Surge Protective Device、以下「SPD」という。)である電源用等の保安器に係り、特に、SPDプラグとジャック盤との接続部のコネクタ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電源用の保安器は、例えば、下記の特許文献1に記載されているように、電源線及び接地線に接続される端子等を有するジャック盤と、保護素子が収納されたSPDプラグとを備え、そのSPDプラグがジャック盤に対して挿入及び離脱可能な構成になっている。SPDプラグに収納された保護素子は、電源線から侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流を接地線側へ流すためのバリスタ(varistor)により構成されている。
【0003】
SPDプラグには、例えば、金属片からなるプラグ端子が突設されている。ジャック盤には、そのプラグ端子に対向する位置に、一対の金属片からなるジャックコンタクトが設けられている。SPDプラグ側のプラグ端子を、ジャック盤側のジャックコンタクトに挿入すれば、そのジャックコンタクトを構成している一対の金属片によりプラグ端子が挟持され、プラグ端子とジャックコンタクトとが電気的に接続される。
【0004】
この種の電源用の保安器では、電源線からの異常電圧や異常電流の侵入により動作して電源機器を保護する。そして、SPDプラグ内の保護素子が劣化すると、その劣化したSPDプラグをジャック盤から抜き取り、新しいSPDプラグをジャック盤に挿入することにより、メンテナンス等を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−283065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の保安器では、次のような課題があった。
プラグ端子とジャックコンタクトとの接触箇所は、大きなインパルス電流を流す必要があり、その接触箇所の接触状態が不十分な場合、インパルス電流通電時にその接触箇所でスパークして溶着してしまうことがある。そのようなことが起きないように、従来の保安器では、金属片からなるプラグ端子を、一対の金属片からなるジャックコンタクトにより、両側から強く挟持する構造になっている。
【0007】
そのため、SPDプラグを交換する場合は、手でSPDプラグを持ってジャック盤から引き抜く。その際、通常は保安器が複数個並べて配置されているため、SPDプラグを手で持つ箇所が限られている。しかも、小型化を図るために、保安器の寸法をできるだけ小さくしているので、指を掛ける箇所が狭く、SPDプラグを大きく掴むことができない。このような理由から、メンテナンス時等に、ジャック盤からSPDプラグを取り外す作業に苦労し、相当困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保安器では、線路に接続されるジャック盤と、前記ジャック盤に対して挿入及び離脱可能に挿着され、前記線路に伝播する異常電圧及び異常電流を抑制するプラグと、を備えている。
【0009】
前記ジャック盤は、前記プラグを挿入及び離脱可能に収容するためのプラグ収容部を有するジャックケースと、前記プラグ収容部の底面に設けられ、前記線路に接続されるジャックコンタクトと、前記プラグ収容部の側面に設けられた第1の係合部と、を有している。
【0010】
前記プラグは、前記プラグ収容部に対して挿入及び離脱可能に装着されるプラグケースと、前記プラグケースの側面に設けられ、前記第1の係合部に対して装着及び離脱可能に係合する第2の係合部と、前記プラグケースの底面に設けられ、前記ジャックコンタクトに対して挿入及び離脱可能に嵌入されるプラグ端子と、前記プラグケース内において前記プラグ端子に接続され、前記ジャックコンタクト及び前記プラグ端子から侵入する前記異常電圧及び異常電流を抑制する保護素子と、を有している。
【0011】
前記ジャックコンタクトは、一端が開口され、他端が閉塞されたばね性を有する円筒部と、前記円筒部の前記他端から延設された第1の取り付け部と、前記円筒部の前記一端から前記他端側へ延びる複数の割溝と、を有している。
【0012】
更に、前記プラグ端子は、前記円筒部内に挿入及び離脱可能に嵌入される円柱部と、前記円柱部から延設された第2の取り付け部と、を有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保安器によれば、次の(1)、(2)のような効果がある。
(1) プラグとジャック盤とは、プラグ側のプラグ端子をジャック盤側のジャックコンタクトに嵌入することにより、電気的に接続する構成になっている。プラグ端子側の円柱部と、ジャックコンタクト側の円筒部とは、嵌合によって電気的に接続されているので、高周波特性を有するインパルス電流に対する表面電流経路が大きい。そのため、円柱部と円筒部との接触個所が軽く触る程度でも、インパルス電流をスムーズに流すことができ、従来のような接触不良による溶断が発生せずに、ジャック盤に対するプラグの挿入及び引き抜きが容易になる。
【0014】
特に、プラグ端子とジャックコンタクトとの接触個所が、軽く触る程度となったため、プラグを手で引き抜くことが容易になり、作業者の負担を軽減できる。
【0015】
しかも、プラグをジャック盤に挿着した状態では、プラグ側の第2の係合部と、ジャック盤側の第1の係合部とが、係合してそのプラグが固定されるので、その係合によるストッパ機能の働きにより、プラグの安定した装着状態を保持することができる。
【0016】
(2) プラグとジャック盤とは、プラグ端子とジャックコンタクトとの嵌合により、電気的に接続する構成になっているので、プラグ端子及びジャックコンタクトを小さくすることにより、保安器の小型化が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施例1における保安器の全体の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は図1の保安器1においてジャック盤10とSPDプラグ40との分離状態を示す斜視図である。
【図3】図3は図2中のSPDプラグ40を底面から見た斜視図である。
【図4A】図4Aは図1の保安器1の正面図である。
【図4B】図4Bは図1の保安器1の平面図である。
【図4C】図4Cは図1の保安器1の左側面図である。
【図4D】図4Dは図1の保安器1の右側面図である。
【図4E】図4Eは図1の保安器1の底面図である。
【図5A】図5Aは図2中のジャック盤10の正面図である。
【図5B】図5Bは図2中のジャック盤10の平面図である。
【図5C】図5Cは図2中のジャック盤10の左側面図である。
【図5D】図5Dは図2中のジャック盤10の右側面図である。
【図5E】図5Eは図2中のジャック盤10の底面図である。
【図6A】図6Aは図2中のSPDプラグ40の正面図である。
【図6B】図6Bは図2中のSPDプラグ40の平面図である。
【図6C】図6Cは図2中のSPDプラグ40の左側面図である。
【図6D】図6Dは図2中のSPDプラグ40の右側面図である。
【図6E】図6Eは図2中のSPDプラグ40の底面図である。
【図7A】図7Aはプラグ端子49−1とジャックコンタクト34−1との分離状態を示す斜視図である。
【図7B】図7Bは図7Aのプラグ端子49−1とジャックコンタクト34−1との接合状態を示す断面図である。
【図8】図8は図1の保安器1の回路図である。
【図9】図9は図1の保安器1の使用例を示す概略の回路図である。
【図10A】図10Aは本発明の実施例2におけるSPDプラグ側のプラグ端子149とジャック盤側のジャックコンタクト134とを示す斜視図である。
【図10B】図10Bは図10Aのプラグ端子149とジャックコンタクト134との接合状態を示す断面図である。
【図11A】図11Aは本発明の実施例3におけるSPDプラグ側のプラグ端子149とジャック盤側のジャックコンタクト134Aとを示す斜視図である。
【図11B】図11Bは図11Aのプラグ端子149とジャックコンタクト134Aとの接合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0019】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における保安器の全体の外観を示す斜視図である。更に、図2は、図1の保安器1においてジャック盤10とSPDプラグ40との分離状態を示す斜視図である。
【0020】
この保安器1は、線路(例えば、電源線)に侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流を抑制して電源機器を保護するための電源用保安器であり、ジャック盤10と、プラグ(例えば、SPDプラグ)40とを備え、図2中の矢印で示すように、そのSPDプラグ40がジャック盤10に対して挿入及び離脱可能に挿着される構造になっている。
【0021】
図3は、図2中のSPDプラグ40を底面から見た斜視図である。図4A〜図4Eは、図1に示す保安器1の5面図である。図4A〜図4Eの5面図の内、図4Aは保安器1の正面図、図4Bは保安器1の平面図、図4Cは保安器1の左側面図、図4Dは保安器1の右側面図、及び、図4Eは保安器1の底面図である。図5A〜図5Eは、図2中に示すジャック盤10の5面図である。図5A〜図5Eの5面図の内、図5Aはジャック盤10の正面図、図5Bはジャック盤10の平面図、図5Cはジャック盤10の左側面図、図5Dはジャック盤10の右側面図、及び、図5Eはジャック盤10の底面図である。図6A〜図6Eは、図2中のSPDプラグ40の5面図である。図6A〜図6Eの5面図の内、図6AはSPDプラグ40の正面図、図6BはSPDプラグ40の平面図、図6CはSPDプラグ40の左側面図、図6DはSPDプラグ40の右側面図、及び、図6EはSPDプラグ40の底面図である。
【0022】
図2、図4A〜図4E、及び図5A〜図5Eに示すように、ジャック盤10は、SPDプラグ40を挿入及び離脱可能に収容するためのプラグ収容部20aを有するジャックケース20を有している。ジャックケース20は、略箱形の基台部21と、この基台部21の両側面から上方向に延設された一対の側壁部22−1,22−2とにより構成されている。これらの基台部21及び側壁部22−1,22−2により囲まれた領域により、プラグ収容部20aが形成されている。図5A及び図5Eに示すように、基台部21の底面には、固定爪23とレールストッパである移動爪24とが、一定距離離れて対向して設けられている。移動爪24は、図示しないばねにより、固定爪23の方向へ付勢(to be spring biased)されている。これらの固定爪23と移動爪24とにより、例えば、図示しないDINレールを挟持し、そのDINレールに対してジャック盤10を取り外し可能に固定する構造になっている。DINレールとは、DIN規格で定められた例えば35mm幅の機器取り付け金具である。
【0023】
図5Cに示すように、一方の側壁部22−1の外側面には、例えば4つのケーブル導入孔25−11〜25−14が設けられている。図5Bに示すように、一方の側壁部22−1の上面には、2つの螺子用開口孔26−11,26−12が形成されている。各螺子用開口孔26−11,26−12内には、端子螺子27−11,27−12がそれぞれ取り付けられている。ケーブル導入孔25−11又は25−12に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−11により固定されるようになっている。同様に、ケーブル導入孔25−13又は25−14に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−12により固定されるようになっている。
【0024】
図5Dに示すように、他方の側壁部22−2の外側面には、例えば4つのケーブル導入孔25−21〜25−24が設けられている。図5Bに示すように、他方の側壁部22−2の上面には、2つの螺子用開口孔26−21,26−22が形成されている。各螺子用開口孔26−21,26−22内には、端子螺子27−21,27−22がそれぞれ取り付けられている。ケーブル導入孔25−21又は25−22に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−22により固定されるようになっている。同様に、ケーブル導入孔25−23又は25−24に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−21により固定されるようになっている。
【0025】
図5A、図5B、図5D、図5Eに示すように、他方の側壁部22−2の外側面において、ケーブル導入孔25−24の下方向の位置には、交換識別用端子28が突設されている。
【0026】
図2及び図5Bに示すように、プラグ収容部20aの一方の側面(即ち、一方の側壁部22−1の内側面)において、中央の上部の位置には、第1の係合部(例えば、係合凸部)29−1が突設されている。係合凸部29−1の両側には、縦方向に延びる断面凸状の案内レール30−11,30−12が突設されている。同様に、プラグ収容部20aの他方の側面(即ち、他方の側壁部22−2の内側面)において、中央の上部の位置には、第1の係合部(例えば、係合凸部)29−2が突設されている。係合凸部29−2の一方の側には、縦方向に延びる断面凸状の案内レール30−21が突設されている。
【0027】
プラグ収容部20aの底面(即ち、基台部21の上面)には、2つの円形のジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2が一定距離離れて対向して形成されている。基台部21の上面の中央には、方形の切り離し連結部材用挿入孔32が形成されている。更に、ジャックコンタクト用挿入孔31−1及び切り離し部材用挿入孔32の近傍には、方形の誤挿入防止用挿入孔33が形成されている。
【0028】
図2、図3、及び図6A〜図6Eに示すように、SPDプラグ40は、略立方体状のプラグケース41を有している。プラグケース41の上面及び4側面は閉塞され、底面に開口部41aが設けられている。プラグケース41の側面の下部には、複数の嵌合孔42が形成されている。開口部41aは、略方形の基板43により閉じられている。基板43の側面には、図示しない複数の突起部が形成され、その突起部が嵌合孔42に嵌入することにより、基板43が開口部41aに対して取り外し可能に固定されている。
【0029】
プラグケース41の上面には、内部回路の劣化状態を表示するための表示窓44が形成されている。
【0030】
図6Cに示すように、プラグケース41の左側面は、ジャックケース20における一方の側壁部22−1の内側面に対応している。このプラグケース41の左側面の上半部において、略U字形状の切り欠き溝45−1が形成され、この切り欠き溝45−1により、側面に対して略垂直方向に移動可能な弾力性を有する可動部46−1が形成されている。可動部46−1の下部には、第2の係合部(例えば、係合凹部)47−1が設けられている。係合凹部47−1は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿着時において、ジャックケース20側の係合凸部29−1を受け入れ、その係合凸部29−1に対して嵌合及び離脱可能に係合するものである。
【0031】
プラグケース41の左側面の下半部において、中央の縦方向には案内溝48−1が形成されている。案内溝48−1は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の係合凸部29−1を受け入れて案内するものである。案内溝48−1の両側には、一対の案内溝48−11,48−12が縦方向に形成されている。案内溝48−11,48−12は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の案内レール30−11,30−12を受け入れて案内するものである。
【0032】
図6Dに示すように、プラグケース41の右側面は、ジャックケース20における他方の側壁部22−2の内側面に対応している。このプラグケース41の右側面の上半部において、略U字形状の切り欠き溝45−2が形成され、この切り欠き溝45−2により、側面に対して略垂直方向に移動可能な弾力性を有する可動部46−2が形成されている。可動部46−2の下部には、第2の係合部(例えば、係合凹部)47−2が設けられている。係合凹部47−2は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿着時において、ジャックケース20側の係合凸部29−2を受け入れ、その係合凸部29−2に対して嵌合及び離脱可能に係合するものである。
【0033】
プラグケース41の右側面の下半部において、中央の縦方向には案内溝48−2が形成されている。案内溝48−2は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の係合凸部29−2を受け入れて案内するものである。案内溝48−2の片側には、案内溝48−21が縦方向に形成されている。案内溝48−21は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の案内レール30−21を受け入れて案内するものである。
【0034】
図3及び図6Eに示すように、プラグケース41の底面の基板43は、ジャックケース20における基台部21の上面に対応している。基板43には、2つのプラグ端子49−1,49−2が一定距離離れて対向して突設されている。プラグ端子49−1,49−2は、ジャックケース20側のジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2に挿入されるものである。基板43の中央には、方形の貫通孔50が形成されている。貫通孔50には、切り離し用連結部材の下端部51bが突出及び後退可能に挿入されている。切り離し用連結部材の下端部51bは、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の切り離し連結部材用挿入孔32に挿入されるものである。
【0035】
プラグ端子49−1及び貫通孔50の近傍には、誤挿入防止片52が突設されている。誤挿入防止片52は、ジャック盤10に適合するSPDプラグ40の型式毎に、異なる形状や異なる色に着色されており、ジャック盤10への適合した型式のSPDプラグ40の挿入時において、ジャック盤10側の誤挿入防止用挿入孔33に嵌入されるものである。誤挿入防止片52が挿入孔33に挿入されて、その誤挿入防止片52と挿入孔33とが嵌合すれば、ジャック盤10の型式とSPDプラグ40の型式とが適合する。これにより、型式の異なるジャック盤10とSPDプラグ40との誤装着を防止できる構造になっている。
【0036】
貫通孔50の近傍には、測定用端子53が取り付けられている。測定用端子53は、内部回路の良否等を測定するために使用する端子である。
【0037】
図7Aは、図3、図6A及び図6C〜図6E中のプラグ端子49−1と、図2中の挿入孔31−1内に設けられるジャックコンタクトとの分離状態を示す斜視図である。図7Bは、図7Aにおいてプラグ端子49−1とジャックコンタクトとの接合状態を示す断面図である。
【0038】
図3、図6A及び図6C〜図6E中の2つのプラグ端子49−1,49−2は、同一構造であるため、一方のプラグ端子49−1とこれに対応するジャックコンタクトとの構造を説明する。
【0039】
ジャックコンタクト34−1は、ばね性を有する円筒部34aと、この円筒部34aに形成された複数の割溝34cと、第1の取り付け部(例えば、第1の螺子部)34dとにより構成され、金属部材により形成されている。
【0040】
円筒部34aは、一端が開口され、他端が閉塞された部材であり、その開口個所が、ジャックケース20側の挿入孔31−1から露出するように、その挿入孔31−1内に装着されている。円筒部34aにおける開口個所の外径は、閉塞個所の外径よりも小さくなっている。円筒部34aにおける開口個所の先端の内側には、テーパ34bが形成されている。複数の割溝34cは、円筒部34aの一端の開口個所から他端の閉塞個所へ延びる細長い溝である。この複数の割溝34cにより、円筒部34aの口径方向に対する弾力性を持たせてばね性を発揮させている。螺子部34dは、円筒部34aにおける他端の閉塞個所から延設された部材であり、ジャックケース20内の図示しない金具にねじ込んで固定されている。
【0041】
プラグ端子49−1は、円柱部49aと、この円柱部49aから延設された第2の取り付け部(例えば、フランジ49b及び第2の螺子部49c)とにより構成され、金属部材により形成されている。
【0042】
円柱部49aは、円筒部34aの内径と略同一の外径を有し、図7A中の矢印で示すように、その円筒部34a内に挿入及び離脱可能に嵌入される部材である。フランジ49bは、円柱部49aに延設された部材である。螺子部49cは、フランジ49bから延設された部材であり、基板43に形成された貫通孔に挿入されてその基板43の内側に設けられた図示しない金具にねじ込んで固定されている。
【0043】
図8は、図1に示す保安器1の回路図である。
ジャックケース20の基台部21内には、マイクロスイッチ等の切り替えスイッチ35が設けられている。切り替えスイッチ35は、切り離し連結部材用挿入孔32の真下に配置され、常時閉路端子35aと、常時開路端子35bと、共通端子35cと、可動ばね片35dとにより構成されている。可動ばね片35dは、一端が共通端子35cに接続され、他端に接点が設けられている。可動ばね片35dは、連結部材51の下端部51bにより押し下げられると、他端側の接点が常時開路端子35b側の接点に接触し、連結部材51が上昇すると、図8中の矢印で示すように、その他端側の接点がばね力により上昇して常時閉路端子35a側の接点に接触する構造になっている。この切り替えスイッチ35は、交換識別用端子28に接続されている。
【0044】
交換識別用端子28は、3つの端子28−1〜28−3を有し、この端子28−1が常時開路端子35bに接続され、端子28−2が共通端子35cに接続され、端子28−3が常時閉路端子35aに接続されている。そのため、切り替えスイッチ35における接続状態の電気信号を、端子28−1〜28−3から外部へ送信することが可能になっている。
【0045】
プラグケース41内には、線路(例えば、電源線)に接続されたケーブルから、ライン(L/N)側の端子螺子27−11,27−12、ジャックコンタクト34−1、及びプラグ端子49−1を介して侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流を抑制あるいは吸収するための保護素子が設けられている。保護素子としては、例えば、避雷管(即ち、アレスタ(Ar))60とバリスタ部61とを有し、これらのアレスタ60及びバリスタ部61が、ライン(L/N)側プラグ端子49−1と接地(PE)側プラグ端子49−2との間に直列に接続されている。ライン(L/N)側プラグ端子49−1は、ジャックコンタクト34−1及びライン(L/N)側の端子螺子27−11,27−12を介して、電源線側に接続される。接地(PE)側プラグ端子49−2は、ジャックコンタクト34−2及び接地(PE)側の端子螺子27−21,27−22を介して、グランドGND側に接続される。
【0046】
アレスタ60は、ジャックコンタクト34−1及びプラグ端子49−1から侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流によって放電するものである。バリスタ部61は、例えば、2つのバリスタ(Va)61−1,61−2を有し、これらのバリスタ61−1,61−2が並列に接続されている。バリスタ61−1,61−2は、異常電圧や異常電流が入力されると、入出力間の抵抗値が小さくなってその入出力間が短絡状態になり、異常電圧や異常電流の消滅後は、入出力間の抵抗値が大きくなってその入出力間が絶縁状態になる素子である。
【0047】
保護素子としてアレスタ60及びバリスタ61−1,61−2を組み合わせて使用している理由は、次の通りである。
【0048】
即ち、電源回路にアレスタ60のみを使用した場合、異常電流(即ち、インパルス電流)でアレスタ60が放電した後、そのインパルス電流消滅後も交流電流により放電が継続する続流現象が起こり、アレスタ60の寿命が短縮したり、あるいは焼損に至ることもある。このような続流の遮断のために、アレスタ60とバリスタ61−1,61−2とを直列に組み合わせている。又、バリスタ61−1,61−2のみを電源回路に使用した場合には、インパルス電流による動作回数の増加に伴って特性が劣化すると、漏れ電流が増加し、遂には、焼損に至ることも考えられるので、漏れ電流遮断のために、アレスタ60をバリスタ61−1,61−2と直列に接続している。バリスタ61−1,61−2の数は、インパルス電流の大きさに応じて設定される。
【0049】
アレスタ60とバリスタ部61との間には、測定用端子53及び切り離し部62が接続されている。切り離し部62は、バリスタ部61が劣化等によって発熱して焼損する前に、図8中の矢印で示すように、そのバリスタ部61を回路から切り離して発煙発火を防止するために設けられている。切り離し部62は、金具によってバリスタ部61に接続された雌形コンタクト62aと、金具によってアレスタ60に接続された雄形コンタクト62bとにより構成されている。雌形コンタクト62aは、例えば、円筒部を有し、この円筒部の開口個所に、長手方向に沿って複数の割溝が形成されている。雄形コンタクト62bは、例えば、円柱部を有し、この円柱部が、雌形コンタクト62aの円筒部内に挿入及び離脱可能に嵌入される構造になっている。雌形コンタクト62aと雄形コンタクト62bとの接合個所は、加熱によって溶融する接合材(例えば、半田材)により固定されている。
【0050】
雄形コンタクト62bは、切り離し用連結部材51に連結されている。連結部材51は、略細長い板状をなし、上端部51a及び下端部51bを有している。この連結部材51は、垂直方向に上下動可能に配置され、図8中の矢印で示すように、コイルばね63によって上方向に付勢されている。劣化等によってバリスタ部61が発熱すると、この熱が金具を介して、雌形コンタクト62aと雄形コンタクト62bとの接合個所へ伝播し、その接合個所の半田材が溶融する。半田材が溶融すると、コイルばね63によって連結部材51が上昇し、雄形コンタクト62bが雌形コンタクト62aから抜け出す。これにより、アレスタ60とバリスタ部61との間が電気的に遮断され、バリスタ部61が回路から切り離される。
【0051】
バリスタ部61において劣化等の異常が発生すると、連結部材51の下端部51bが上昇するので、切り替えスイッチ35の接続状態が切り替わり、その接続状態の電気信号が、交換識別用端子28から外部へ送信される。
【0052】
連結部材51の上端部51aの真上には、表示器64が設けられている。表示器64は、例えば、連結部材51の上端部51aが上昇すると、これに連動して着色部材等が移動して着色個所の色が変化し、この色変化を表示窓44から露出させる構造になっている。
【0053】
図9は、図8の保安器1の使用例を示す概略の回路図である。
例えば、接地相無しの三相3線式の交流400V用の電源線70−1〜70−3に、電源機器等の被保護機器71が接続されている。雷、サージ等の異常電圧や異常電流から被保護機器71を保護するために、図8に示す保安器1が3台使用されている。3台の保安器1−1〜1−3は、図示しないDINレールに取り付けられている。保安器1−1では、ライン(L/N)側の端子螺子27−11個所が、ケーブルを用いて電源線70−3に接続され、接地(PE)側の端子螺子27−22個所が、ケーブルを用いてグランドGNDに接続されている。同様に、他の保安器1−2,1−3も、電源線70−2,70−1とグランドGNDとの間に、それぞれ接続されている。
【0054】
(保安器の取り付け方法)
本実施例1の保安器1を図示しないDINレールに取り付ける方法を説明する。
【0055】
図5Aに示すように、ジャック盤10の底面の移動爪24を、図示しないばねの付勢力に抗して、手で右方向へ移動させ、固定爪23と移動爪24との間に、DINレールの上部を挿入する。移動爪24から手を離せば、図示しないばねの付勢力により、移動爪24が左方向へ移動する。これにより、固定爪23と移動爪24とにより、DINレールの上部が挟持され、ジャック盤10がDINレール上に固定される。
【0056】
図5C、図5D及び図9に示すように、ジャック盤10において、例えば、電源線70−3に接続した図示しないケーブルの端末部を、ライン(L/N)側のケーブル導入孔25−12に挿入し、端子螺子27−11を締め付けてそのケーブルを接続する。更に、グランドGNDに接続した図示しないケーブルの端末部を、接地(PE)側のケーブル導入孔25−22に挿入し、端子螺子27−22を締め付けてそのケーブルを接続する。
【0057】
SPDプラグ40をジャック盤10に挿着する方法を説明する。
図2、図5A、図5B、及び図6A〜図6Eに示すように、SPDプラグ40において、両側面の可動部46−1,46−2付近を手で把持し、ジャック盤10側の案内レール30−11,30−12,30−21を、SPDプラグ40側の案内溝48−11,48−12,48−21内に挿入し、SPDプラグ40を押し下げる。すると、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2が、SPDプラグ40側の案内溝48−1,48−2内を滑り、SPDプラグ40が降下していく。SPDプラグ40の底面が、ジャック盤10側の基台部21の上面まで降下すると、SPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2内に、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2が嵌入される。
【0058】
同時に、SPDプラグ40の底面から突出しているプラグ端子49−1,49−2、連結部材51の下端部51b、及び誤挿入防止片52が、ジャック盤10側のジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2、切り離し連結部材用挿入孔32、及び誤挿入防止用挿入孔33にそれぞれ挿入される。
【0059】
プラグ端子49−1,49−2がジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2に挿入されると、図7A及び図7Bに示すように、例えば、プラグ端子49−1の円柱部49aが、挿入孔31−1内に取り付けられたジャックコンタクト34−1における円筒部34a内に嵌入される。これにより、プラグ端子49−1,49−2と、挿入孔31−1,31−2内に取り付けられたジャックコンタクト34−1,34−2とが、電気的に接続される。
【0060】
次に、ジャック盤10に挿着したSPDプラグ40が劣化して、新品のSPDプラグ40に取り替える場合を説明する。
【0061】
図2、図5B、及び図6A〜図6Eに示すように、ジャック盤10に挿着されたSPDプラグ40において、両側面の可動部46−1,46−2を手で内側に押さえ、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2から、SPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2を離脱させる。そして、SPDプラグ40を上方へ引き抜くと、SPDプラグ40側の案内溝48−1,48−2,48−11,48−12,48−21が、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2、及び案内レール30−11,30−12,30−21に沿って上方に移動し、SPDプラグ40側の底面のプラグ端子49−1,49−2、連結部材51の下端部51b、及び誤挿入防止片52が、ジャック盤10側の挿入孔31−1,31−2,32,33からそれぞれ抜け出し、SPDプラグ40がジャック盤10から離脱する。
【0062】
その後、新品のSPDプラグ40をジャック盤10へ挿入する。
【0063】
(保安器の動作)
図9において、例えば、電源線70−3に雷、サージ等の異常電圧や異常電流が印加された場合、保安器1−1が動作してその異常電圧や異常電流が吸収され、被保護機器71が異常電圧や異常電流から保護される。この保護動作を図1〜図8に示す保安器1を参照しつつ説明する。
【0064】
図9の電源線70−3に雷、サージ等の異常電圧や異常電流が印加されると、図8に示す保安器1において、端子螺子27−11側からジャックコンタクト34−1及びプラグ端子49−1へ、その異常電圧や異常電流が侵入する。
【0065】
図7A及び図7Bに示すように、雄側であるプラグ端子49−1の円柱部49aと、雌側であるばね性を有するジャックコンタクト34−1の円筒部34aとは、同心円上に位置し、嵌合によって電気的に接続されているので、高周波電流の場合の表面電流経路が大きい。侵入する異常電流(即ち、インパルス電流)は、短時間で最大値に達して減衰し、そのパルスの時間幅が数十μと短いため、高周波特性となっている。高周波特性を有するインパルス電流は、表皮効果により、円筒部34a及び円柱部49aの表面付近を流れる。本実施例1の場合、円柱部49aと円筒部34aとの接触個所は、表面電流経路が大きいので、その接触個所が軽く触る程度でもインパルス電流をスムーズに流すことができる。そのため、従来のような接触不良による溶断が発生せず、インパルス電流をスムーズに流すことができる。
【0066】
ジャックコンタクト34−1及びプラグ端子49−1を流れるインパルス電流により、アレスタ60が放電すると共に、切り離し部62を介してバリスタ部61内のバリスタ61−1,61−2が導通し、そのインパルス電流が、プラグ端子49−2、ジャックコンタクト34−2及び端子螺子27−22を経由してグランドGND側へ流れる。これにより、電源線70−1〜70−3に接続された被保護機器71が保護される。
【0067】
バリスタ部61が、劣化や過大なインパルス電流等によって発熱すると、この熱が、切り離し部62における雌形コンタクト62aと雄形コンタクト62bとの接合個所へ伝わり、その接合個所の半田材が溶融する。半田材が溶融すると、コイルばね63によって連結部材51の上端部51a及び下端部51bが上昇し、この連結部材51に連結された雄形コンタクト62bが、雌形コンタクト62aから抜け出す。これにより、アレスタ60とバリスタ部61との間が電気的に遮断されて、バリスタ部61が回路から切り離され、発煙発火が防止される。
【0068】
連結部材51の上端部51a及び下端部51bが上昇すると、この連結部材51の下端部51bに連動して切り替えスイッチ35の接続状態が切り替わり、この接続状態の電気信号が、交換識別用端子28から外部へ送信される。更に、連結部材51の上端部51aの上昇に連動して、表示器64が動作し、この表示器64における着色部材等が移動して着色個所の色が変化する(例えば、正常時の緑色から劣化時の赤色に変化する。)。この表示器64の色変化は、表示窓44を通して外部から目視できるので、SPDプラグ40の交換時期を知ることができる。
【0069】
(実施例1の効果)
本実施例1の保安器1によれば、次の(1)、(2)のような効果がある。
【0070】
(1) SPDプラグ40とジャック盤10とは、SPDプラグ40側のプラグ端子49−1,49−2をジャック盤10側のジャックコンタクト34−1,34−2に嵌入することにより、電気的に接続する構成になっている。プラグ端子49−1の円柱部49aと、ばね性を有するジャックコンタクト34−1の円筒部34aとは、同心円上に位置し、嵌合によって電気的に接続されているので、高周波特性を有するインパルス電流に対する表面電流経路が大きい。そのため、円柱部49aと円筒部34aとの接触個所が軽く触る程度でも、インパルス電流をスムーズに流すことができ、従来のような接触不良による溶断が発生せずに、ジャック盤10に対するSPDプラグ40の挿入及び引き抜きが容易になる。
【0071】
特に、プラグ端子49−1,49−2とジャックコンタクト34−1,34−2との接触個所が、軽く触る程度となったため、SPDプラグ40を手で引き抜くことが容易になり、作業者の負担を軽減できる。
【0072】
しかも、SPDプラグ40をジャック盤10に挿着した状態では、SPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2と、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2とが、係合してそのSPDプラグ40が固定されるので、その係合によるストッパ機能の働きにより、SPDプラグ40の安定した装着状態を保持することができる。
【0073】
(2) SPDプラグ40とジャック盤10とは、プラグ端子49−1,49−2とジャックコンタクト34−1,34−2との嵌合により、電気的に接続する構成になっているので、プラグ端子49−1,49−2及びジャックコンタクト34−1,34−2を小さくすることにより、保安器1の小型化が容易になる。
【実施例2】
【0074】
図10Aは、本発明の実施例2におけるSPDプラグ側のプラグ端子とジャック盤側のジャックコンタクトとを示す斜視図である。更に、図10Bは、図10Aのプラグ端子とジャックコンタクトとの接合状態を示す断面図である。
【0075】
本実施例2におけるジャック盤側のジャックコンタクト134は、実施例1のジャックコンタクト34−1に対応しており、ばね性を有する円筒部134aと、この円筒部134aに形成された複数の割溝134cと、第1の取り付け部(例えば、第1の螺子部)134dとにより構成され、金属部材により形成されている。
【0076】
円筒部134aは、一端が開口され、他端が閉塞された部材であり、その開口個所が、図2に示すジャックケース20側の各挿入孔31−1,31−2から露出するように、その各挿入孔31−1,31−2内にそれぞれ装着されている。円筒部134aにおいて、開口個所の外径と閉塞個所の外径とは、同一である。円筒部134aにおける開口個所の先端の内側には、テーパ134bが形成されている。複数の割溝134cは、円筒部134aの一端の開口個所から他端の閉塞個所へ延びる細長い溝である。この複数の割溝134cにより、円筒部134aの口径方向に対する弾力性を持たせてばね性を発揮させている。螺子部134dは、円筒部134aにおける他端の閉塞個所から延設された部材であり、図2に示すジャックケース20内の図示しない金具にねじ込んで固定されている。
【0077】
本実施例2におけるSPDプラグ側のプラグ端子149は、円柱部149aと、この円柱部149aから延設された第2の取り付け部(例えば、フランジ149b及び第2の螺子部149c)とにより構成され、金属部材により形成されている。
【0078】
円柱部149aは、円筒部134aの内径と略同一の外径を有し、図10A中の矢印で示すように、その円筒部134a内に挿入及び離脱可能に嵌入される部材である。フランジ149bは、円柱部149aに延設された部材である。螺子部149cは、フランジ149bから延設された部材であり、図3に示す基板43に形成された貫通孔に挿入されてその基板43の内側に設けられた図示しない金具にねじ込んで固定されている。フランジ149bにおける円柱部149a側の端面には、環状凹部149dが形成されている。環状凹部149dは、図10Bに示すように、円筒部134aにおける開口箇所の先端部分を嵌め入れてその先端部分の矢印方向への開きを防止する溝である。
【0079】
本実施例2では、プラグ端子149がジャックコンタクト134に挿入されて電気的に接続される時、プラグ端子149側の円筒部149aが、ジャックコンタクト134側の円筒部134a内に嵌入される。この際、ジャックコンタクト134側の円筒部134aの先端部分が、プラグ端子149側の環状凹部149dに嵌入される。
【0080】
プラグ端子149がジャックコンタクト134に挿入された状態において、図9に示す電源線70−3から侵入する異常電流(即ち、インパルス電流)は、そのジャックコンタクト134及びプラグ端子149の表面電流経路を流れる。この際、ジャックコンタクト134側における円筒部134aの先端部分が、電磁反発力等により、図10B中の矢印方向へ開こうとする力が働き、接触不良になるおそれがある。しかし、円筒部134aの先端部分は、プラグ端子149側の環状凹部149d内に嵌入しているので、その円筒部134aの先端部分の矢印方向への開きが阻止されて接触不良を防止できる。従って、プラグ端子149とジャックコンタクト134との安定した接触状態を保持できる。
【実施例3】
【0081】
図11Aは、本発明の実施例3におけるSPDプラグ側のプラグ端子とジャック盤側のジャックコンタクトとを示す斜視図である。更に、図11Bは、図11Aのプラグ端子とジャックコンタクトとの接合状態を示す断面図である。
【0082】
この図11A及び図11Bにおいて、実施例2を示す図10A及び図10B中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0083】
本実施例3では、実施例2におけるジャック盤側のジャックコンタクト134と異なる形状のジャックコンタクト134Aと、実施例2と同様のプラグ端子側のプラグ端子149とを有している。本実施例3のジャックコンタクト134Aでは、実施例2の円筒部134aに代えて、段差部を有する2つの円筒部134a−1,134b−2を有している。
【0084】
一方の円筒部134a−1は、プラグ端子149側の環状凹部149d内に嵌入される部材である。他方の円筒部134a−2は、一方の円筒部134a−1に連結されており、その円筒部134a−1よりも外径が大きく、プラグ端子149側におけるフランジ149bの端面と接触する部材である。2つの円筒部134a−1,134a−2は、同一の内径を有している。一方の円筒部134a−1における先端の内側には、テーパ134bが形成されている。一方の円筒部134a−1の先端から他方の円筒部134a−2の方向へ、複数の割溝134cが形成されている。この複数の割溝134cにより、円筒部134a−1,134a−2の口径方向に対する弾力性を持たせてばね性を発揮させている。その他の構成は、実施例2のジャックコンタクト134と同一である。
【0085】
本実施例3では、図11A中の矢印で示すように、プラグ端子149がジャックコンタクト134Aに挿入されて電気的に接続される時、プラグ端子149側の円筒部149aが、ジャックコンタクト134A側の円筒部134a−1,134a−2内に嵌入される。この際、ジャックコンタクト134A側の円筒部134a−1が、プラグ端子149側の環状凹部149dに嵌入されると共に、円筒部134a−2の端面が、プラグ端子149側のフランジ149bの端面と接触する。
【0086】
プラグ端子149がジャックコンタクト134Aに挿入された状態において、図9に示す電源線70−3から侵入する異常電流(即ち、インパルス電流)は、そのジャックコンタクト134A及びプラグ端子149の表面電流経路を流れる。この際、ジャックコンタクト134A側の円筒部134a−2の端面が、プラグ端子149側のフランジ149bの端面と接触しているので、その表面電流経路が、実施例2よりも大きくなる。そのため、実施例2に比べて、インパルス電流をよりスムーズに流すことができ、従来のような接触不良による溶断をより的確に防止できる。
【0087】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(d)のようなものがある。
【0088】
(a) プラグ端子49,149及びジャックコンタクト34,134,134Aは、図示以外の他の形状、構造に変更してもよい。
【0089】
(b) ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2と、これと係合するSPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2とは、他の形状や構造に変更してもよい。例えば、ジャック盤10側に係合凹部47−1,47−2を設け、SPDプラグ40側に係合凸部29−1,29−を設けてもよい。
【0090】
(c) ジャック盤10及びSPDプラグ40は、図示以外の他の形状、構造、回路構成等に変更してもよい。例えば、図8に示す保安器1の回路において、アレスタ60をバリスタ部61の位置に接続し、バリスタ部61をアレスタ60の位置に接続してもよい。この際、プラグ端子49−1とバリスタ部61との間に、切り離し部62を接続してもよい。これにより、実施例1と同様の作用、効果を奏することができる。
【0091】
(d) 実施例では、電源用の保安器1について説明したが、本発明の保安器は、通信線等の他の線路に接続された通信機器等の他の被保護機器を保護する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0092】
1,1−1〜1−3 保安器
10 ジャック盤
20 ジャックケース
29−1,29−2 係合凸部
31−1,31−2 ジャックコンタクト用挿入孔
34−1,34−2,134,134A ジャックコンタクト
35 切り替えスイッチ
40 SPDプラグ
41 プラグケース
44 表示窓
47−1,47−2 係合凹部
49−1,49−2,149 プラグ端子
60 アレスタ
61 バリスタ部
61−1,61−2 バリスタ
62 切り離し部
64 表示器
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄道等で使用される交流380V電源回路に誘起される雷、サージ等の異常電圧や異常電流から、電源機器等を保護するためのサージ防護デバイス(Surge Protective Device、以下「SPD」という。)である電源用等の保安器に係り、特に、SPDプラグとジャック盤との接続部のコネクタ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電源用の保安器は、例えば、下記の特許文献1に記載されているように、電源線及び接地線に接続される端子等を有するジャック盤と、保護素子が収納されたSPDプラグとを備え、そのSPDプラグがジャック盤に対して挿入及び離脱可能な構成になっている。SPDプラグに収納された保護素子は、電源線から侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流を接地線側へ流すためのバリスタ(varistor)により構成されている。
【0003】
SPDプラグには、例えば、金属片からなるプラグ端子が突設されている。ジャック盤には、そのプラグ端子に対向する位置に、一対の金属片からなるジャックコンタクトが設けられている。SPDプラグ側のプラグ端子を、ジャック盤側のジャックコンタクトに挿入すれば、そのジャックコンタクトを構成している一対の金属片によりプラグ端子が挟持され、プラグ端子とジャックコンタクトとが電気的に接続される。
【0004】
この種の電源用の保安器では、電源線からの異常電圧や異常電流の侵入により動作して電源機器を保護する。そして、SPDプラグ内の保護素子が劣化すると、その劣化したSPDプラグをジャック盤から抜き取り、新しいSPDプラグをジャック盤に挿入することにより、メンテナンス等を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−283065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の保安器では、次のような課題があった。
プラグ端子とジャックコンタクトとの接触箇所は、大きなインパルス電流を流す必要があり、その接触箇所の接触状態が不十分な場合、インパルス電流通電時にその接触箇所でスパークして溶着してしまうことがある。そのようなことが起きないように、従来の保安器では、金属片からなるプラグ端子を、一対の金属片からなるジャックコンタクトにより、両側から強く挟持する構造になっている。
【0007】
そのため、SPDプラグを交換する場合は、手でSPDプラグを持ってジャック盤から引き抜く。その際、通常は保安器が複数個並べて配置されているため、SPDプラグを手で持つ箇所が限られている。しかも、小型化を図るために、保安器の寸法をできるだけ小さくしているので、指を掛ける箇所が狭く、SPDプラグを大きく掴むことができない。このような理由から、メンテナンス時等に、ジャック盤からSPDプラグを取り外す作業に苦労し、相当困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保安器では、線路に接続されるジャック盤と、前記ジャック盤に対して挿入及び離脱可能に挿着され、前記線路に伝播する異常電圧及び異常電流を抑制するプラグと、を備えている。
【0009】
前記ジャック盤は、前記プラグを挿入及び離脱可能に収容するためのプラグ収容部を有するジャックケースと、前記プラグ収容部の底面に設けられ、前記線路に接続されるジャックコンタクトと、前記プラグ収容部の側面に設けられた第1の係合部と、を有している。
【0010】
前記プラグは、前記プラグ収容部に対して挿入及び離脱可能に装着されるプラグケースと、前記プラグケースの側面に設けられ、前記第1の係合部に対して装着及び離脱可能に係合する第2の係合部と、前記プラグケースの底面に設けられ、前記ジャックコンタクトに対して挿入及び離脱可能に嵌入されるプラグ端子と、前記プラグケース内において前記プラグ端子に接続され、前記ジャックコンタクト及び前記プラグ端子から侵入する前記異常電圧及び異常電流を抑制する保護素子と、を有している。
【0011】
前記ジャックコンタクトは、一端が開口され、他端が閉塞されたばね性を有する円筒部と、前記円筒部の前記他端から延設された第1の取り付け部と、前記円筒部の前記一端から前記他端側へ延びる複数の割溝と、を有している。
【0012】
更に、前記プラグ端子は、前記円筒部内に挿入及び離脱可能に嵌入される円柱部と、前記円柱部から延設された第2の取り付け部と、を有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保安器によれば、次の(1)、(2)のような効果がある。
(1) プラグとジャック盤とは、プラグ側のプラグ端子をジャック盤側のジャックコンタクトに嵌入することにより、電気的に接続する構成になっている。プラグ端子側の円柱部と、ジャックコンタクト側の円筒部とは、嵌合によって電気的に接続されているので、高周波特性を有するインパルス電流に対する表面電流経路が大きい。そのため、円柱部と円筒部との接触個所が軽く触る程度でも、インパルス電流をスムーズに流すことができ、従来のような接触不良による溶断が発生せずに、ジャック盤に対するプラグの挿入及び引き抜きが容易になる。
【0014】
特に、プラグ端子とジャックコンタクトとの接触個所が、軽く触る程度となったため、プラグを手で引き抜くことが容易になり、作業者の負担を軽減できる。
【0015】
しかも、プラグをジャック盤に挿着した状態では、プラグ側の第2の係合部と、ジャック盤側の第1の係合部とが、係合してそのプラグが固定されるので、その係合によるストッパ機能の働きにより、プラグの安定した装着状態を保持することができる。
【0016】
(2) プラグとジャック盤とは、プラグ端子とジャックコンタクトとの嵌合により、電気的に接続する構成になっているので、プラグ端子及びジャックコンタクトを小さくすることにより、保安器の小型化が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施例1における保安器の全体の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は図1の保安器1においてジャック盤10とSPDプラグ40との分離状態を示す斜視図である。
【図3】図3は図2中のSPDプラグ40を底面から見た斜視図である。
【図4A】図4Aは図1の保安器1の正面図である。
【図4B】図4Bは図1の保安器1の平面図である。
【図4C】図4Cは図1の保安器1の左側面図である。
【図4D】図4Dは図1の保安器1の右側面図である。
【図4E】図4Eは図1の保安器1の底面図である。
【図5A】図5Aは図2中のジャック盤10の正面図である。
【図5B】図5Bは図2中のジャック盤10の平面図である。
【図5C】図5Cは図2中のジャック盤10の左側面図である。
【図5D】図5Dは図2中のジャック盤10の右側面図である。
【図5E】図5Eは図2中のジャック盤10の底面図である。
【図6A】図6Aは図2中のSPDプラグ40の正面図である。
【図6B】図6Bは図2中のSPDプラグ40の平面図である。
【図6C】図6Cは図2中のSPDプラグ40の左側面図である。
【図6D】図6Dは図2中のSPDプラグ40の右側面図である。
【図6E】図6Eは図2中のSPDプラグ40の底面図である。
【図7A】図7Aはプラグ端子49−1とジャックコンタクト34−1との分離状態を示す斜視図である。
【図7B】図7Bは図7Aのプラグ端子49−1とジャックコンタクト34−1との接合状態を示す断面図である。
【図8】図8は図1の保安器1の回路図である。
【図9】図9は図1の保安器1の使用例を示す概略の回路図である。
【図10A】図10Aは本発明の実施例2におけるSPDプラグ側のプラグ端子149とジャック盤側のジャックコンタクト134とを示す斜視図である。
【図10B】図10Bは図10Aのプラグ端子149とジャックコンタクト134との接合状態を示す断面図である。
【図11A】図11Aは本発明の実施例3におけるSPDプラグ側のプラグ端子149とジャック盤側のジャックコンタクト134Aとを示す斜視図である。
【図11B】図11Bは図11Aのプラグ端子149とジャックコンタクト134Aとの接合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0019】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における保安器の全体の外観を示す斜視図である。更に、図2は、図1の保安器1においてジャック盤10とSPDプラグ40との分離状態を示す斜視図である。
【0020】
この保安器1は、線路(例えば、電源線)に侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流を抑制して電源機器を保護するための電源用保安器であり、ジャック盤10と、プラグ(例えば、SPDプラグ)40とを備え、図2中の矢印で示すように、そのSPDプラグ40がジャック盤10に対して挿入及び離脱可能に挿着される構造になっている。
【0021】
図3は、図2中のSPDプラグ40を底面から見た斜視図である。図4A〜図4Eは、図1に示す保安器1の5面図である。図4A〜図4Eの5面図の内、図4Aは保安器1の正面図、図4Bは保安器1の平面図、図4Cは保安器1の左側面図、図4Dは保安器1の右側面図、及び、図4Eは保安器1の底面図である。図5A〜図5Eは、図2中に示すジャック盤10の5面図である。図5A〜図5Eの5面図の内、図5Aはジャック盤10の正面図、図5Bはジャック盤10の平面図、図5Cはジャック盤10の左側面図、図5Dはジャック盤10の右側面図、及び、図5Eはジャック盤10の底面図である。図6A〜図6Eは、図2中のSPDプラグ40の5面図である。図6A〜図6Eの5面図の内、図6AはSPDプラグ40の正面図、図6BはSPDプラグ40の平面図、図6CはSPDプラグ40の左側面図、図6DはSPDプラグ40の右側面図、及び、図6EはSPDプラグ40の底面図である。
【0022】
図2、図4A〜図4E、及び図5A〜図5Eに示すように、ジャック盤10は、SPDプラグ40を挿入及び離脱可能に収容するためのプラグ収容部20aを有するジャックケース20を有している。ジャックケース20は、略箱形の基台部21と、この基台部21の両側面から上方向に延設された一対の側壁部22−1,22−2とにより構成されている。これらの基台部21及び側壁部22−1,22−2により囲まれた領域により、プラグ収容部20aが形成されている。図5A及び図5Eに示すように、基台部21の底面には、固定爪23とレールストッパである移動爪24とが、一定距離離れて対向して設けられている。移動爪24は、図示しないばねにより、固定爪23の方向へ付勢(to be spring biased)されている。これらの固定爪23と移動爪24とにより、例えば、図示しないDINレールを挟持し、そのDINレールに対してジャック盤10を取り外し可能に固定する構造になっている。DINレールとは、DIN規格で定められた例えば35mm幅の機器取り付け金具である。
【0023】
図5Cに示すように、一方の側壁部22−1の外側面には、例えば4つのケーブル導入孔25−11〜25−14が設けられている。図5Bに示すように、一方の側壁部22−1の上面には、2つの螺子用開口孔26−11,26−12が形成されている。各螺子用開口孔26−11,26−12内には、端子螺子27−11,27−12がそれぞれ取り付けられている。ケーブル導入孔25−11又は25−12に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−11により固定されるようになっている。同様に、ケーブル導入孔25−13又は25−14に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−12により固定されるようになっている。
【0024】
図5Dに示すように、他方の側壁部22−2の外側面には、例えば4つのケーブル導入孔25−21〜25−24が設けられている。図5Bに示すように、他方の側壁部22−2の上面には、2つの螺子用開口孔26−21,26−22が形成されている。各螺子用開口孔26−21,26−22内には、端子螺子27−21,27−22がそれぞれ取り付けられている。ケーブル導入孔25−21又は25−22に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−22により固定されるようになっている。同様に、ケーブル導入孔25−23又は25−24に挿入された図示しないケーブルの端末部は、端子螺子27−21により固定されるようになっている。
【0025】
図5A、図5B、図5D、図5Eに示すように、他方の側壁部22−2の外側面において、ケーブル導入孔25−24の下方向の位置には、交換識別用端子28が突設されている。
【0026】
図2及び図5Bに示すように、プラグ収容部20aの一方の側面(即ち、一方の側壁部22−1の内側面)において、中央の上部の位置には、第1の係合部(例えば、係合凸部)29−1が突設されている。係合凸部29−1の両側には、縦方向に延びる断面凸状の案内レール30−11,30−12が突設されている。同様に、プラグ収容部20aの他方の側面(即ち、他方の側壁部22−2の内側面)において、中央の上部の位置には、第1の係合部(例えば、係合凸部)29−2が突設されている。係合凸部29−2の一方の側には、縦方向に延びる断面凸状の案内レール30−21が突設されている。
【0027】
プラグ収容部20aの底面(即ち、基台部21の上面)には、2つの円形のジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2が一定距離離れて対向して形成されている。基台部21の上面の中央には、方形の切り離し連結部材用挿入孔32が形成されている。更に、ジャックコンタクト用挿入孔31−1及び切り離し部材用挿入孔32の近傍には、方形の誤挿入防止用挿入孔33が形成されている。
【0028】
図2、図3、及び図6A〜図6Eに示すように、SPDプラグ40は、略立方体状のプラグケース41を有している。プラグケース41の上面及び4側面は閉塞され、底面に開口部41aが設けられている。プラグケース41の側面の下部には、複数の嵌合孔42が形成されている。開口部41aは、略方形の基板43により閉じられている。基板43の側面には、図示しない複数の突起部が形成され、その突起部が嵌合孔42に嵌入することにより、基板43が開口部41aに対して取り外し可能に固定されている。
【0029】
プラグケース41の上面には、内部回路の劣化状態を表示するための表示窓44が形成されている。
【0030】
図6Cに示すように、プラグケース41の左側面は、ジャックケース20における一方の側壁部22−1の内側面に対応している。このプラグケース41の左側面の上半部において、略U字形状の切り欠き溝45−1が形成され、この切り欠き溝45−1により、側面に対して略垂直方向に移動可能な弾力性を有する可動部46−1が形成されている。可動部46−1の下部には、第2の係合部(例えば、係合凹部)47−1が設けられている。係合凹部47−1は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿着時において、ジャックケース20側の係合凸部29−1を受け入れ、その係合凸部29−1に対して嵌合及び離脱可能に係合するものである。
【0031】
プラグケース41の左側面の下半部において、中央の縦方向には案内溝48−1が形成されている。案内溝48−1は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の係合凸部29−1を受け入れて案内するものである。案内溝48−1の両側には、一対の案内溝48−11,48−12が縦方向に形成されている。案内溝48−11,48−12は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の案内レール30−11,30−12を受け入れて案内するものである。
【0032】
図6Dに示すように、プラグケース41の右側面は、ジャックケース20における他方の側壁部22−2の内側面に対応している。このプラグケース41の右側面の上半部において、略U字形状の切り欠き溝45−2が形成され、この切り欠き溝45−2により、側面に対して略垂直方向に移動可能な弾力性を有する可動部46−2が形成されている。可動部46−2の下部には、第2の係合部(例えば、係合凹部)47−2が設けられている。係合凹部47−2は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿着時において、ジャックケース20側の係合凸部29−2を受け入れ、その係合凸部29−2に対して嵌合及び離脱可能に係合するものである。
【0033】
プラグケース41の右側面の下半部において、中央の縦方向には案内溝48−2が形成されている。案内溝48−2は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の係合凸部29−2を受け入れて案内するものである。案内溝48−2の片側には、案内溝48−21が縦方向に形成されている。案内溝48−21は、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の案内レール30−21を受け入れて案内するものである。
【0034】
図3及び図6Eに示すように、プラグケース41の底面の基板43は、ジャックケース20における基台部21の上面に対応している。基板43には、2つのプラグ端子49−1,49−2が一定距離離れて対向して突設されている。プラグ端子49−1,49−2は、ジャックケース20側のジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2に挿入されるものである。基板43の中央には、方形の貫通孔50が形成されている。貫通孔50には、切り離し用連結部材の下端部51bが突出及び後退可能に挿入されている。切り離し用連結部材の下端部51bは、ジャック盤10へのSPDプラグ40の挿入及び離脱時において、ジャックケース20側の切り離し連結部材用挿入孔32に挿入されるものである。
【0035】
プラグ端子49−1及び貫通孔50の近傍には、誤挿入防止片52が突設されている。誤挿入防止片52は、ジャック盤10に適合するSPDプラグ40の型式毎に、異なる形状や異なる色に着色されており、ジャック盤10への適合した型式のSPDプラグ40の挿入時において、ジャック盤10側の誤挿入防止用挿入孔33に嵌入されるものである。誤挿入防止片52が挿入孔33に挿入されて、その誤挿入防止片52と挿入孔33とが嵌合すれば、ジャック盤10の型式とSPDプラグ40の型式とが適合する。これにより、型式の異なるジャック盤10とSPDプラグ40との誤装着を防止できる構造になっている。
【0036】
貫通孔50の近傍には、測定用端子53が取り付けられている。測定用端子53は、内部回路の良否等を測定するために使用する端子である。
【0037】
図7Aは、図3、図6A及び図6C〜図6E中のプラグ端子49−1と、図2中の挿入孔31−1内に設けられるジャックコンタクトとの分離状態を示す斜視図である。図7Bは、図7Aにおいてプラグ端子49−1とジャックコンタクトとの接合状態を示す断面図である。
【0038】
図3、図6A及び図6C〜図6E中の2つのプラグ端子49−1,49−2は、同一構造であるため、一方のプラグ端子49−1とこれに対応するジャックコンタクトとの構造を説明する。
【0039】
ジャックコンタクト34−1は、ばね性を有する円筒部34aと、この円筒部34aに形成された複数の割溝34cと、第1の取り付け部(例えば、第1の螺子部)34dとにより構成され、金属部材により形成されている。
【0040】
円筒部34aは、一端が開口され、他端が閉塞された部材であり、その開口個所が、ジャックケース20側の挿入孔31−1から露出するように、その挿入孔31−1内に装着されている。円筒部34aにおける開口個所の外径は、閉塞個所の外径よりも小さくなっている。円筒部34aにおける開口個所の先端の内側には、テーパ34bが形成されている。複数の割溝34cは、円筒部34aの一端の開口個所から他端の閉塞個所へ延びる細長い溝である。この複数の割溝34cにより、円筒部34aの口径方向に対する弾力性を持たせてばね性を発揮させている。螺子部34dは、円筒部34aにおける他端の閉塞個所から延設された部材であり、ジャックケース20内の図示しない金具にねじ込んで固定されている。
【0041】
プラグ端子49−1は、円柱部49aと、この円柱部49aから延設された第2の取り付け部(例えば、フランジ49b及び第2の螺子部49c)とにより構成され、金属部材により形成されている。
【0042】
円柱部49aは、円筒部34aの内径と略同一の外径を有し、図7A中の矢印で示すように、その円筒部34a内に挿入及び離脱可能に嵌入される部材である。フランジ49bは、円柱部49aに延設された部材である。螺子部49cは、フランジ49bから延設された部材であり、基板43に形成された貫通孔に挿入されてその基板43の内側に設けられた図示しない金具にねじ込んで固定されている。
【0043】
図8は、図1に示す保安器1の回路図である。
ジャックケース20の基台部21内には、マイクロスイッチ等の切り替えスイッチ35が設けられている。切り替えスイッチ35は、切り離し連結部材用挿入孔32の真下に配置され、常時閉路端子35aと、常時開路端子35bと、共通端子35cと、可動ばね片35dとにより構成されている。可動ばね片35dは、一端が共通端子35cに接続され、他端に接点が設けられている。可動ばね片35dは、連結部材51の下端部51bにより押し下げられると、他端側の接点が常時開路端子35b側の接点に接触し、連結部材51が上昇すると、図8中の矢印で示すように、その他端側の接点がばね力により上昇して常時閉路端子35a側の接点に接触する構造になっている。この切り替えスイッチ35は、交換識別用端子28に接続されている。
【0044】
交換識別用端子28は、3つの端子28−1〜28−3を有し、この端子28−1が常時開路端子35bに接続され、端子28−2が共通端子35cに接続され、端子28−3が常時閉路端子35aに接続されている。そのため、切り替えスイッチ35における接続状態の電気信号を、端子28−1〜28−3から外部へ送信することが可能になっている。
【0045】
プラグケース41内には、線路(例えば、電源線)に接続されたケーブルから、ライン(L/N)側の端子螺子27−11,27−12、ジャックコンタクト34−1、及びプラグ端子49−1を介して侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流を抑制あるいは吸収するための保護素子が設けられている。保護素子としては、例えば、避雷管(即ち、アレスタ(Ar))60とバリスタ部61とを有し、これらのアレスタ60及びバリスタ部61が、ライン(L/N)側プラグ端子49−1と接地(PE)側プラグ端子49−2との間に直列に接続されている。ライン(L/N)側プラグ端子49−1は、ジャックコンタクト34−1及びライン(L/N)側の端子螺子27−11,27−12を介して、電源線側に接続される。接地(PE)側プラグ端子49−2は、ジャックコンタクト34−2及び接地(PE)側の端子螺子27−21,27−22を介して、グランドGND側に接続される。
【0046】
アレスタ60は、ジャックコンタクト34−1及びプラグ端子49−1から侵入する雷、サージ等の異常電圧や異常電流によって放電するものである。バリスタ部61は、例えば、2つのバリスタ(Va)61−1,61−2を有し、これらのバリスタ61−1,61−2が並列に接続されている。バリスタ61−1,61−2は、異常電圧や異常電流が入力されると、入出力間の抵抗値が小さくなってその入出力間が短絡状態になり、異常電圧や異常電流の消滅後は、入出力間の抵抗値が大きくなってその入出力間が絶縁状態になる素子である。
【0047】
保護素子としてアレスタ60及びバリスタ61−1,61−2を組み合わせて使用している理由は、次の通りである。
【0048】
即ち、電源回路にアレスタ60のみを使用した場合、異常電流(即ち、インパルス電流)でアレスタ60が放電した後、そのインパルス電流消滅後も交流電流により放電が継続する続流現象が起こり、アレスタ60の寿命が短縮したり、あるいは焼損に至ることもある。このような続流の遮断のために、アレスタ60とバリスタ61−1,61−2とを直列に組み合わせている。又、バリスタ61−1,61−2のみを電源回路に使用した場合には、インパルス電流による動作回数の増加に伴って特性が劣化すると、漏れ電流が増加し、遂には、焼損に至ることも考えられるので、漏れ電流遮断のために、アレスタ60をバリスタ61−1,61−2と直列に接続している。バリスタ61−1,61−2の数は、インパルス電流の大きさに応じて設定される。
【0049】
アレスタ60とバリスタ部61との間には、測定用端子53及び切り離し部62が接続されている。切り離し部62は、バリスタ部61が劣化等によって発熱して焼損する前に、図8中の矢印で示すように、そのバリスタ部61を回路から切り離して発煙発火を防止するために設けられている。切り離し部62は、金具によってバリスタ部61に接続された雌形コンタクト62aと、金具によってアレスタ60に接続された雄形コンタクト62bとにより構成されている。雌形コンタクト62aは、例えば、円筒部を有し、この円筒部の開口個所に、長手方向に沿って複数の割溝が形成されている。雄形コンタクト62bは、例えば、円柱部を有し、この円柱部が、雌形コンタクト62aの円筒部内に挿入及び離脱可能に嵌入される構造になっている。雌形コンタクト62aと雄形コンタクト62bとの接合個所は、加熱によって溶融する接合材(例えば、半田材)により固定されている。
【0050】
雄形コンタクト62bは、切り離し用連結部材51に連結されている。連結部材51は、略細長い板状をなし、上端部51a及び下端部51bを有している。この連結部材51は、垂直方向に上下動可能に配置され、図8中の矢印で示すように、コイルばね63によって上方向に付勢されている。劣化等によってバリスタ部61が発熱すると、この熱が金具を介して、雌形コンタクト62aと雄形コンタクト62bとの接合個所へ伝播し、その接合個所の半田材が溶融する。半田材が溶融すると、コイルばね63によって連結部材51が上昇し、雄形コンタクト62bが雌形コンタクト62aから抜け出す。これにより、アレスタ60とバリスタ部61との間が電気的に遮断され、バリスタ部61が回路から切り離される。
【0051】
バリスタ部61において劣化等の異常が発生すると、連結部材51の下端部51bが上昇するので、切り替えスイッチ35の接続状態が切り替わり、その接続状態の電気信号が、交換識別用端子28から外部へ送信される。
【0052】
連結部材51の上端部51aの真上には、表示器64が設けられている。表示器64は、例えば、連結部材51の上端部51aが上昇すると、これに連動して着色部材等が移動して着色個所の色が変化し、この色変化を表示窓44から露出させる構造になっている。
【0053】
図9は、図8の保安器1の使用例を示す概略の回路図である。
例えば、接地相無しの三相3線式の交流400V用の電源線70−1〜70−3に、電源機器等の被保護機器71が接続されている。雷、サージ等の異常電圧や異常電流から被保護機器71を保護するために、図8に示す保安器1が3台使用されている。3台の保安器1−1〜1−3は、図示しないDINレールに取り付けられている。保安器1−1では、ライン(L/N)側の端子螺子27−11個所が、ケーブルを用いて電源線70−3に接続され、接地(PE)側の端子螺子27−22個所が、ケーブルを用いてグランドGNDに接続されている。同様に、他の保安器1−2,1−3も、電源線70−2,70−1とグランドGNDとの間に、それぞれ接続されている。
【0054】
(保安器の取り付け方法)
本実施例1の保安器1を図示しないDINレールに取り付ける方法を説明する。
【0055】
図5Aに示すように、ジャック盤10の底面の移動爪24を、図示しないばねの付勢力に抗して、手で右方向へ移動させ、固定爪23と移動爪24との間に、DINレールの上部を挿入する。移動爪24から手を離せば、図示しないばねの付勢力により、移動爪24が左方向へ移動する。これにより、固定爪23と移動爪24とにより、DINレールの上部が挟持され、ジャック盤10がDINレール上に固定される。
【0056】
図5C、図5D及び図9に示すように、ジャック盤10において、例えば、電源線70−3に接続した図示しないケーブルの端末部を、ライン(L/N)側のケーブル導入孔25−12に挿入し、端子螺子27−11を締め付けてそのケーブルを接続する。更に、グランドGNDに接続した図示しないケーブルの端末部を、接地(PE)側のケーブル導入孔25−22に挿入し、端子螺子27−22を締め付けてそのケーブルを接続する。
【0057】
SPDプラグ40をジャック盤10に挿着する方法を説明する。
図2、図5A、図5B、及び図6A〜図6Eに示すように、SPDプラグ40において、両側面の可動部46−1,46−2付近を手で把持し、ジャック盤10側の案内レール30−11,30−12,30−21を、SPDプラグ40側の案内溝48−11,48−12,48−21内に挿入し、SPDプラグ40を押し下げる。すると、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2が、SPDプラグ40側の案内溝48−1,48−2内を滑り、SPDプラグ40が降下していく。SPDプラグ40の底面が、ジャック盤10側の基台部21の上面まで降下すると、SPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2内に、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2が嵌入される。
【0058】
同時に、SPDプラグ40の底面から突出しているプラグ端子49−1,49−2、連結部材51の下端部51b、及び誤挿入防止片52が、ジャック盤10側のジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2、切り離し連結部材用挿入孔32、及び誤挿入防止用挿入孔33にそれぞれ挿入される。
【0059】
プラグ端子49−1,49−2がジャックコンタクト用挿入孔31−1,31−2に挿入されると、図7A及び図7Bに示すように、例えば、プラグ端子49−1の円柱部49aが、挿入孔31−1内に取り付けられたジャックコンタクト34−1における円筒部34a内に嵌入される。これにより、プラグ端子49−1,49−2と、挿入孔31−1,31−2内に取り付けられたジャックコンタクト34−1,34−2とが、電気的に接続される。
【0060】
次に、ジャック盤10に挿着したSPDプラグ40が劣化して、新品のSPDプラグ40に取り替える場合を説明する。
【0061】
図2、図5B、及び図6A〜図6Eに示すように、ジャック盤10に挿着されたSPDプラグ40において、両側面の可動部46−1,46−2を手で内側に押さえ、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2から、SPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2を離脱させる。そして、SPDプラグ40を上方へ引き抜くと、SPDプラグ40側の案内溝48−1,48−2,48−11,48−12,48−21が、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2、及び案内レール30−11,30−12,30−21に沿って上方に移動し、SPDプラグ40側の底面のプラグ端子49−1,49−2、連結部材51の下端部51b、及び誤挿入防止片52が、ジャック盤10側の挿入孔31−1,31−2,32,33からそれぞれ抜け出し、SPDプラグ40がジャック盤10から離脱する。
【0062】
その後、新品のSPDプラグ40をジャック盤10へ挿入する。
【0063】
(保安器の動作)
図9において、例えば、電源線70−3に雷、サージ等の異常電圧や異常電流が印加された場合、保安器1−1が動作してその異常電圧や異常電流が吸収され、被保護機器71が異常電圧や異常電流から保護される。この保護動作を図1〜図8に示す保安器1を参照しつつ説明する。
【0064】
図9の電源線70−3に雷、サージ等の異常電圧や異常電流が印加されると、図8に示す保安器1において、端子螺子27−11側からジャックコンタクト34−1及びプラグ端子49−1へ、その異常電圧や異常電流が侵入する。
【0065】
図7A及び図7Bに示すように、雄側であるプラグ端子49−1の円柱部49aと、雌側であるばね性を有するジャックコンタクト34−1の円筒部34aとは、同心円上に位置し、嵌合によって電気的に接続されているので、高周波電流の場合の表面電流経路が大きい。侵入する異常電流(即ち、インパルス電流)は、短時間で最大値に達して減衰し、そのパルスの時間幅が数十μと短いため、高周波特性となっている。高周波特性を有するインパルス電流は、表皮効果により、円筒部34a及び円柱部49aの表面付近を流れる。本実施例1の場合、円柱部49aと円筒部34aとの接触個所は、表面電流経路が大きいので、その接触個所が軽く触る程度でもインパルス電流をスムーズに流すことができる。そのため、従来のような接触不良による溶断が発生せず、インパルス電流をスムーズに流すことができる。
【0066】
ジャックコンタクト34−1及びプラグ端子49−1を流れるインパルス電流により、アレスタ60が放電すると共に、切り離し部62を介してバリスタ部61内のバリスタ61−1,61−2が導通し、そのインパルス電流が、プラグ端子49−2、ジャックコンタクト34−2及び端子螺子27−22を経由してグランドGND側へ流れる。これにより、電源線70−1〜70−3に接続された被保護機器71が保護される。
【0067】
バリスタ部61が、劣化や過大なインパルス電流等によって発熱すると、この熱が、切り離し部62における雌形コンタクト62aと雄形コンタクト62bとの接合個所へ伝わり、その接合個所の半田材が溶融する。半田材が溶融すると、コイルばね63によって連結部材51の上端部51a及び下端部51bが上昇し、この連結部材51に連結された雄形コンタクト62bが、雌形コンタクト62aから抜け出す。これにより、アレスタ60とバリスタ部61との間が電気的に遮断されて、バリスタ部61が回路から切り離され、発煙発火が防止される。
【0068】
連結部材51の上端部51a及び下端部51bが上昇すると、この連結部材51の下端部51bに連動して切り替えスイッチ35の接続状態が切り替わり、この接続状態の電気信号が、交換識別用端子28から外部へ送信される。更に、連結部材51の上端部51aの上昇に連動して、表示器64が動作し、この表示器64における着色部材等が移動して着色個所の色が変化する(例えば、正常時の緑色から劣化時の赤色に変化する。)。この表示器64の色変化は、表示窓44を通して外部から目視できるので、SPDプラグ40の交換時期を知ることができる。
【0069】
(実施例1の効果)
本実施例1の保安器1によれば、次の(1)、(2)のような効果がある。
【0070】
(1) SPDプラグ40とジャック盤10とは、SPDプラグ40側のプラグ端子49−1,49−2をジャック盤10側のジャックコンタクト34−1,34−2に嵌入することにより、電気的に接続する構成になっている。プラグ端子49−1の円柱部49aと、ばね性を有するジャックコンタクト34−1の円筒部34aとは、同心円上に位置し、嵌合によって電気的に接続されているので、高周波特性を有するインパルス電流に対する表面電流経路が大きい。そのため、円柱部49aと円筒部34aとの接触個所が軽く触る程度でも、インパルス電流をスムーズに流すことができ、従来のような接触不良による溶断が発生せずに、ジャック盤10に対するSPDプラグ40の挿入及び引き抜きが容易になる。
【0071】
特に、プラグ端子49−1,49−2とジャックコンタクト34−1,34−2との接触個所が、軽く触る程度となったため、SPDプラグ40を手で引き抜くことが容易になり、作業者の負担を軽減できる。
【0072】
しかも、SPDプラグ40をジャック盤10に挿着した状態では、SPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2と、ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2とが、係合してそのSPDプラグ40が固定されるので、その係合によるストッパ機能の働きにより、SPDプラグ40の安定した装着状態を保持することができる。
【0073】
(2) SPDプラグ40とジャック盤10とは、プラグ端子49−1,49−2とジャックコンタクト34−1,34−2との嵌合により、電気的に接続する構成になっているので、プラグ端子49−1,49−2及びジャックコンタクト34−1,34−2を小さくすることにより、保安器1の小型化が容易になる。
【実施例2】
【0074】
図10Aは、本発明の実施例2におけるSPDプラグ側のプラグ端子とジャック盤側のジャックコンタクトとを示す斜視図である。更に、図10Bは、図10Aのプラグ端子とジャックコンタクトとの接合状態を示す断面図である。
【0075】
本実施例2におけるジャック盤側のジャックコンタクト134は、実施例1のジャックコンタクト34−1に対応しており、ばね性を有する円筒部134aと、この円筒部134aに形成された複数の割溝134cと、第1の取り付け部(例えば、第1の螺子部)134dとにより構成され、金属部材により形成されている。
【0076】
円筒部134aは、一端が開口され、他端が閉塞された部材であり、その開口個所が、図2に示すジャックケース20側の各挿入孔31−1,31−2から露出するように、その各挿入孔31−1,31−2内にそれぞれ装着されている。円筒部134aにおいて、開口個所の外径と閉塞個所の外径とは、同一である。円筒部134aにおける開口個所の先端の内側には、テーパ134bが形成されている。複数の割溝134cは、円筒部134aの一端の開口個所から他端の閉塞個所へ延びる細長い溝である。この複数の割溝134cにより、円筒部134aの口径方向に対する弾力性を持たせてばね性を発揮させている。螺子部134dは、円筒部134aにおける他端の閉塞個所から延設された部材であり、図2に示すジャックケース20内の図示しない金具にねじ込んで固定されている。
【0077】
本実施例2におけるSPDプラグ側のプラグ端子149は、円柱部149aと、この円柱部149aから延設された第2の取り付け部(例えば、フランジ149b及び第2の螺子部149c)とにより構成され、金属部材により形成されている。
【0078】
円柱部149aは、円筒部134aの内径と略同一の外径を有し、図10A中の矢印で示すように、その円筒部134a内に挿入及び離脱可能に嵌入される部材である。フランジ149bは、円柱部149aに延設された部材である。螺子部149cは、フランジ149bから延設された部材であり、図3に示す基板43に形成された貫通孔に挿入されてその基板43の内側に設けられた図示しない金具にねじ込んで固定されている。フランジ149bにおける円柱部149a側の端面には、環状凹部149dが形成されている。環状凹部149dは、図10Bに示すように、円筒部134aにおける開口箇所の先端部分を嵌め入れてその先端部分の矢印方向への開きを防止する溝である。
【0079】
本実施例2では、プラグ端子149がジャックコンタクト134に挿入されて電気的に接続される時、プラグ端子149側の円筒部149aが、ジャックコンタクト134側の円筒部134a内に嵌入される。この際、ジャックコンタクト134側の円筒部134aの先端部分が、プラグ端子149側の環状凹部149dに嵌入される。
【0080】
プラグ端子149がジャックコンタクト134に挿入された状態において、図9に示す電源線70−3から侵入する異常電流(即ち、インパルス電流)は、そのジャックコンタクト134及びプラグ端子149の表面電流経路を流れる。この際、ジャックコンタクト134側における円筒部134aの先端部分が、電磁反発力等により、図10B中の矢印方向へ開こうとする力が働き、接触不良になるおそれがある。しかし、円筒部134aの先端部分は、プラグ端子149側の環状凹部149d内に嵌入しているので、その円筒部134aの先端部分の矢印方向への開きが阻止されて接触不良を防止できる。従って、プラグ端子149とジャックコンタクト134との安定した接触状態を保持できる。
【実施例3】
【0081】
図11Aは、本発明の実施例3におけるSPDプラグ側のプラグ端子とジャック盤側のジャックコンタクトとを示す斜視図である。更に、図11Bは、図11Aのプラグ端子とジャックコンタクトとの接合状態を示す断面図である。
【0082】
この図11A及び図11Bにおいて、実施例2を示す図10A及び図10B中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0083】
本実施例3では、実施例2におけるジャック盤側のジャックコンタクト134と異なる形状のジャックコンタクト134Aと、実施例2と同様のプラグ端子側のプラグ端子149とを有している。本実施例3のジャックコンタクト134Aでは、実施例2の円筒部134aに代えて、段差部を有する2つの円筒部134a−1,134b−2を有している。
【0084】
一方の円筒部134a−1は、プラグ端子149側の環状凹部149d内に嵌入される部材である。他方の円筒部134a−2は、一方の円筒部134a−1に連結されており、その円筒部134a−1よりも外径が大きく、プラグ端子149側におけるフランジ149bの端面と接触する部材である。2つの円筒部134a−1,134a−2は、同一の内径を有している。一方の円筒部134a−1における先端の内側には、テーパ134bが形成されている。一方の円筒部134a−1の先端から他方の円筒部134a−2の方向へ、複数の割溝134cが形成されている。この複数の割溝134cにより、円筒部134a−1,134a−2の口径方向に対する弾力性を持たせてばね性を発揮させている。その他の構成は、実施例2のジャックコンタクト134と同一である。
【0085】
本実施例3では、図11A中の矢印で示すように、プラグ端子149がジャックコンタクト134Aに挿入されて電気的に接続される時、プラグ端子149側の円筒部149aが、ジャックコンタクト134A側の円筒部134a−1,134a−2内に嵌入される。この際、ジャックコンタクト134A側の円筒部134a−1が、プラグ端子149側の環状凹部149dに嵌入されると共に、円筒部134a−2の端面が、プラグ端子149側のフランジ149bの端面と接触する。
【0086】
プラグ端子149がジャックコンタクト134Aに挿入された状態において、図9に示す電源線70−3から侵入する異常電流(即ち、インパルス電流)は、そのジャックコンタクト134A及びプラグ端子149の表面電流経路を流れる。この際、ジャックコンタクト134A側の円筒部134a−2の端面が、プラグ端子149側のフランジ149bの端面と接触しているので、その表面電流経路が、実施例2よりも大きくなる。そのため、実施例2に比べて、インパルス電流をよりスムーズに流すことができ、従来のような接触不良による溶断をより的確に防止できる。
【0087】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(d)のようなものがある。
【0088】
(a) プラグ端子49,149及びジャックコンタクト34,134,134Aは、図示以外の他の形状、構造に変更してもよい。
【0089】
(b) ジャック盤10側の係合凸部29−1,29−2と、これと係合するSPDプラグ40側の係合凹部47−1,47−2とは、他の形状や構造に変更してもよい。例えば、ジャック盤10側に係合凹部47−1,47−2を設け、SPDプラグ40側に係合凸部29−1,29−を設けてもよい。
【0090】
(c) ジャック盤10及びSPDプラグ40は、図示以外の他の形状、構造、回路構成等に変更してもよい。例えば、図8に示す保安器1の回路において、アレスタ60をバリスタ部61の位置に接続し、バリスタ部61をアレスタ60の位置に接続してもよい。この際、プラグ端子49−1とバリスタ部61との間に、切り離し部62を接続してもよい。これにより、実施例1と同様の作用、効果を奏することができる。
【0091】
(d) 実施例では、電源用の保安器1について説明したが、本発明の保安器は、通信線等の他の線路に接続された通信機器等の他の被保護機器を保護する場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0092】
1,1−1〜1−3 保安器
10 ジャック盤
20 ジャックケース
29−1,29−2 係合凸部
31−1,31−2 ジャックコンタクト用挿入孔
34−1,34−2,134,134A ジャックコンタクト
35 切り替えスイッチ
40 SPDプラグ
41 プラグケース
44 表示窓
47−1,47−2 係合凹部
49−1,49−2,149 プラグ端子
60 アレスタ
61 バリスタ部
61−1,61−2 バリスタ
62 切り離し部
64 表示器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路に接続されるジャック盤と、
前記ジャック盤に対して挿入及び離脱可能に挿着され、前記線路に伝播する異常電圧及び異常電流を抑制するプラグと、
を備えた保安器において、
前記ジャック盤は、
前記プラグを挿入及び離脱可能に収容するためのプラグ収容部を有するジャックケースと、
前記プラグ収容部の底面に設けられ、前記線路に接続されるジャックコンタクトと、
前記プラグ収容部の側面に設けられた第1の係合部とを有し、
前記プラグは、
前記プラグ収容部に対して挿入及び離脱可能に装着されるプラグケースと、
前記プラグケースの側面に設けられ、前記第1の係合部に対して装着及び離脱可能に係合する第2の係合部と、
前記プラグケースの底面に設けられ、前記ジャックコンタクトに対して挿入及び離脱可能に嵌入されるプラグ端子と、
前記プラグケース内において前記プラグ端子に接続され、前記ジャックコンタクト及び前記プラグ端子から侵入する前記異常電圧及び前記異常電流を抑制する保護素子とを有し、
前記ジャックコンタクトは、
一端が開口され、他端が閉塞されたばね性を有する円筒部と、
前記円筒部の前記他端から延設された第1の取り付け部と、
前記円筒部の前記一端から前記他端側へ延びる複数の割溝とを有し、
前記プラグ端子は、
前記円筒部内に挿入及び離脱可能に嵌入される円柱部と、
前記円柱部から延設された第2の取り付け部とを有することを特徴とする保安器。
【請求項2】
前記第1の取り付け部には、
第1の螺子部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の保安器。
【請求項3】
前記第2の取り付け部には、
第2の螺子部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の保安器。
【請求項4】
前記プラグケースの側面には、
前記側面に対して略垂直方向に移動可能な弾力性を有する可動部が形成され、
前記可動部に、前記第2の係合部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の保安器。
【請求項5】
前記線路は、電源線又は通信線であり、
前記保護素子は、単数又は複数のアレスタと、単数又は複数のバリスタと、アレスタ及びバリスタの組み合わせと、のいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の保安器。
【請求項6】
前記第1の係合部は、係合凸部又は係合凹部であり、
前記第2の係合部は、前記第1の係合部に嵌合する係合凹部又は係合凸部であることを特徴とする請求項4記載の保安器。
【請求項1】
線路に接続されるジャック盤と、
前記ジャック盤に対して挿入及び離脱可能に挿着され、前記線路に伝播する異常電圧及び異常電流を抑制するプラグと、
を備えた保安器において、
前記ジャック盤は、
前記プラグを挿入及び離脱可能に収容するためのプラグ収容部を有するジャックケースと、
前記プラグ収容部の底面に設けられ、前記線路に接続されるジャックコンタクトと、
前記プラグ収容部の側面に設けられた第1の係合部とを有し、
前記プラグは、
前記プラグ収容部に対して挿入及び離脱可能に装着されるプラグケースと、
前記プラグケースの側面に設けられ、前記第1の係合部に対して装着及び離脱可能に係合する第2の係合部と、
前記プラグケースの底面に設けられ、前記ジャックコンタクトに対して挿入及び離脱可能に嵌入されるプラグ端子と、
前記プラグケース内において前記プラグ端子に接続され、前記ジャックコンタクト及び前記プラグ端子から侵入する前記異常電圧及び前記異常電流を抑制する保護素子とを有し、
前記ジャックコンタクトは、
一端が開口され、他端が閉塞されたばね性を有する円筒部と、
前記円筒部の前記他端から延設された第1の取り付け部と、
前記円筒部の前記一端から前記他端側へ延びる複数の割溝とを有し、
前記プラグ端子は、
前記円筒部内に挿入及び離脱可能に嵌入される円柱部と、
前記円柱部から延設された第2の取り付け部とを有することを特徴とする保安器。
【請求項2】
前記第1の取り付け部には、
第1の螺子部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の保安器。
【請求項3】
前記第2の取り付け部には、
第2の螺子部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の保安器。
【請求項4】
前記プラグケースの側面には、
前記側面に対して略垂直方向に移動可能な弾力性を有する可動部が形成され、
前記可動部に、前記第2の係合部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の保安器。
【請求項5】
前記線路は、電源線又は通信線であり、
前記保護素子は、単数又は複数のアレスタと、単数又は複数のバリスタと、アレスタ及びバリスタの組み合わせと、のいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の保安器。
【請求項6】
前記第1の係合部は、係合凸部又は係合凹部であり、
前記第2の係合部は、前記第1の係合部に嵌合する係合凹部又は係合凸部であることを特徴とする請求項4記載の保安器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【公開番号】特開2012−84321(P2012−84321A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228577(P2010−228577)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000130835)株式会社サンコーシヤ (64)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000130835)株式会社サンコーシヤ (64)
【Fターム(参考)】
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