説明

保水性ブロックの製造方法

【課題】焼成工程を経ることなく、真空押出し成形によって製造される保水性ブロックの製造方法において、フライアッシュを添加しても、真空押出し成型の際に、ひび割れや割れが発生することなく、十分な強度と保水性とを満足し得る保水性ブロックを得る。
【解決手段】採石廃土等の粘土系材料、セメントを主とする固化材系材料、クリンカーアッシュ又は石炭灰固化砕石を主とする骨材系材料、及びフライアッシュからなり、前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量を全重量に対して30〜39重量%とするとともに、前記フライアッシュを前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量に対して50重量%以下の割合で配合し、前記固化材系材料を全重量に対して15〜38重量%、前記骨材系材料を全重量に対して32〜46重量%の配合で混練し、これらの混合物を真空吸引によって脱気しつつ、押出し成形した後、焼成することなく乾燥させてブロック体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水をブロック内に保水しておき、晴天時に保水した雨水を蒸発させて気化熱を奪うことにより路面を冷却し、ヒートアイランド現象の緩和に資する保水性ブロックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部や建築物が密集している地域では、アスファルト舗装又はコンクリート建築物からの放熱、照り返しによる輻射熱、ビル等の空調による排熱などによる熱によって気温が上昇するヒートアイランド現象が問題視されている。
【0003】
このヒートアイランド現象の緩和策として、近年、保水性を有するブロックを道路面に敷き詰め、雨水をブロック内に保水しておき、晴天時に水分が蒸発する際の気化熱によって路面の熱を奪い、温度上昇を抑制する提案が種々なされている。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、セメントと、骨材と、水と、保水材とを含む保水性ブロックであって、上記保水材が、オートクレーブ養生した気泡コンクリートの粒体、パーライトの粉粒体、ロックウールの粉粒体の中から選ばれる1種以上を含む保水性ブロックが提案されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、骨材とセメントとを主成分とする舗装用ブロックにおいて、骨材は陶器瓦の破砕屑を含み、破砕屑の重量比をセメント1に対し0.5以上6以下とする舗装用ブロックが提案されている。
【0006】
下記特許文献3では、骨材とフライアッシュなどの不溶性無機物質の粉体とセメントを混合し、この混合物に水を加えて混練した後、圧縮成形した舗装用ブロックが提案されている。
【0007】
更に、下記特許文献4では、骨材として耐火度の高いフライアッシュ、結合材として300μm以下に粉砕した廃ガラス粉末、成形助剤や骨材と結合材との結合促進剤として低級粘土あるいは砕石廃泥からなる原料を混合し、成形後に焼成することにより得られた、見掛け気孔率20〜30%、曲げ強さ8MPa以上、圧縮強さが40N/mm以上で、直径が1〜20μmの気孔で構成される多孔質の保水、透水性セラミックブロックが提案されている。
【0008】
一方で、保水性ブロックではないが、下記特許文献5では、産業廃棄物や副産物を有効活用し、エネルギーの低減化と二酸化炭素ガスの排出を抑制し得るとともに、経済的で地球環境に優れたブロック体の製造方法が提案されている。このブロック体製造方法は、廃棄粘性土及び必要に応じて廃棄塊並びに廃棄部分を主原料とし、これとセメント及び水分を混合、混練し、この混合物を真空吸引によって脱気しつつ押出し成形して、焼成することなく、乾燥してブロック体を得るものである。前記廃棄粘性土は建設発生土、採石廃土、窯業廃土又はケイソウ廃土のいずれかを含み、前記廃棄塊は石炭脈石(ぼた)、高炉スラグ、転炉スラグ、電炉スラグ、キュポラ水滓スラグ、ボトムアッシュ、コンクリートがら、レンガ破片、ブロック破片又は瓦破片のいずれかを含み、廃棄微粉はフライアッシュ又は下水道汚泥焼却灰のいずれかを含むものである。上記製法で製造されたブロックは、商品名「アーザンブリックス」として市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−252673号公報
【特許文献2】特開2004−19406号公報
【特許文献3】特開2004−285608号公報
【特許文献4】特開2005−60159号公報
【特許文献5】特開2004−90585号公報
【特許文献6】特開2008−247728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1〜3記載のブロック体は、セメントを硬化材とし、クリンカー鉱物の水和反応によって固化体に成形するものであるが、このようなブロック体はセメント質の質感が表出してしまい、意匠性に乏しいなどの問題がある。
【0011】
一方、上記特許文献4記載のブロック体のように、焼成工程を経て製造されるものは、レンガ風の風合いを持ち、意匠性も高く、好まれる傾向にある。しかし、焼成設備が嵩む、多大なエネルギーを必要とする、二酸化炭素の排出が抑制できない、産業廃棄物の有効利用度が低いなどの問題を有する。
【0012】
これに対して、上記特許文献5記載のブロック製造方法は、焼成工程を経ないにも拘わらず、レンガ風の風合いを出すことができ、かつ環境的に時代の要請に対応し、将来的な発展が大いに期待されるものである。
【0013】
そこで本出願人は、近時上記特許文献6において、採石廃土、石砕スラッジ、窯業廃土、ケイソウ廃土および浄水汚泥の群から選ばれた1種以上を主とする粘土系材料、セメントを主とする粉体系材料およびクリンカーアッシュ又は石炭灰固化砕石を主とする骨材系材料からなり、前記粘土系材料を30〜39重量%、前記粉体系材料を15〜38重量%、前記骨材系材料を32〜46重量%の配合で混練し、これらの混合物を真空吸引によって脱気しつつ、押出し成形した後、焼成することなく乾燥させてブロック体を得る保水性ブロックの製造方法を提案した。
【0014】
上記特許文献6記載の保水性ブロックの製造方法では、焼成工程を有しないという特殊性から、一般的に保水性材料として用いられているフライアッシュを混合すると、真空押出し成型の際に、ひび割れや割れが発生するといった問題点が生じることが判明したため、フライアッシュを添加しないことを条件としたが、火力発電所から排出される石炭灰の量は年間1000トンを超え、これらの石炭灰の内、クリンカアッシュとフライアッシュの排出量の比率は、概ね1:9程度であり、フライアッシュの有効利用の途が強く求められている。
【0015】
さらに、フライアッシュは管理状態によって含水比がばらつき、ブロックの強度や保水性に対する影響が大きいため、品質管理が非常に煩雑化するなどの問題があった。
【0016】
そこで本発明の第1の課題は、焼成工程を経ることなく、真空押出し成形によって製造される保水性ブロックの製造方法において、フライアッシュを添加しても、真空押出し成型の際に、ひび割れや割れが発生することなく、十分な強度と保水性とを満足し得る保水性ブロックを製造することにある。
【0017】
また、第2の課題は、ブロックの強度や保水性を満足し得る品質管理指標値を設定することにより、製造時における品質管理の煩雑さを解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、採石廃土、石砕スラッジ、窯業廃土、ケイソウ廃土および浄水汚泥の群から選ばれた1種以上を主とする粘土系材料、セメントを主とする固化材系材料、クリンカーアッシュ又は石炭灰固化砕石を主とする骨材系材料、及びフライアッシュからなり、
前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量を全重量に対して30〜39重量%とするとともに、前記フライアッシュを前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量に対して50重量%以下の割合で配合し、前記固化材系材料を全重量に対して15〜38重量%、前記骨材系材料を全重量に対して32〜46重量%の配合で混練し、これらの混合物を真空吸引によって脱気しつつ、押出し成形した後、焼成することなく乾燥させてブロック体を得ることを特徴とする保水性ブロックの製造方法が提供される。
【0019】
上記請求項1記載の発明では、前記特許文献6に係る発明と対比すると、本発明はフライアッシュを含有し、粘土系材料とフライアッシュの合計重量を30〜39重量%とするとともに、前記フライアッシュを前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量に対して50重量%以下の割合で配合する点にある。特許文献6の開発時に、フライアッシュを配合することで保水性を持たせるように設計を試みたが、真空押出し成型を採用する特殊性から、押出し成形時に粘性不足からひび割れや割れが多く発生し、型抜き時に水が浮き出るなどの問題が露見した。
【0020】
しかし、その後の検討において、フライアッシュを添加する際に、その分減量する材料として、クリンカアッシュを選択していたため、ブロック材料中の骨格を形成する骨材量が少なかった事が原因していることが判明した。
【0021】
そこで本発明では、クリンカーアッシュ又は石炭灰固化砕石を主とする骨材系材料は32〜46重量%の配合とするとともに、セメントを主とする固化系材料は15〜38重量%として維持し、フライアッシュを混入する分、採石廃土、石砕スラッジ、窯業廃土、ケイソウ廃土および浄水汚泥の群から選ばれた1種以上を主とする粘土系材料の混入量を減量するようにすれば、フライアッシュを添加しても、真空押出し成型時に、ひび割れや割れが発生することなく、製造し得ることが判明した。具体的には、前記フライアッシュの添加量は、粘土系材料とフライアッシュの合計重量を30〜39重量%とするとともに、前記フライアッシュを前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量に対して50重量%以下の割合で配合するようにすれば、十分な圧縮強度特性と保水性とを満足した保水性ブロックを得ることが可能となる。
【0022】
前記第2課題を解決するために請求項2に係る本発明として、得られる保水性ブロックの乾燥密度が1.55〜1.65g/cmとなるように配合量を調整する請求項1記載の保水性ブロックの製造方法が提供される。
【0023】
上記請求項2記載の発明では、製造時に得られる保水性ブロックの乾燥密度が1.55〜1.65g/cmとなるように配合量を調整するものであり、前記乾燥密度を品質管理指標値とすることで、圧縮強度及び保水性の要求性能を満足するブロックを容易に得ることができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり請求項1に係る本発明によれば、焼成工程を経ることなく、真空押出し成形によって製造される保水性ブロックの製造方法において、フライアッシュを添加しても、真空押出し成型の際に、ひび割れや割れが発生することなく、十分な強度と保水性とを満足し得る保水性ブロックを得ることが可能となる。
【0025】
また、請求項2に係る本発明によれば、ブロックの強度や保水性を満足し得る品質管理指標値として、乾燥密度を所定の範囲に設定することにより、製造時における品質管理の煩雑さを解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】圧縮強さとフライアッシュ添加量との関係を示したグラフである。
【図2】保水量とフライアッシュ添加量との関係を示したグラフである。
【図3】圧縮強さと乾燥密度との関係を示したグラフである。
【図4】保水量と乾燥密度との関係を示したグラフである。
【図5】骨材系材料(%)と曲げ強度/圧縮強度(強度比)との相関グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0028】
本発明に係る保水性ブロックの製造方法は、採石廃土、石砕スラッジ、窯業廃土、ケイソウ廃土および浄水汚泥の群から選ばれた1種以上を主とする粘土系材料、セメントを主とする固化材系材料、クリンカーアッシュ又は石炭灰固化砕石を主とする骨材系材料、及びフライアッシュからなり、
前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量を全重量に対して30〜39重量%とするとともに、前記フライアッシュを前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量に対して50重量%以下の割合で配合し、前記固化材系材料を全重量に対して15〜38重量%、前記骨材系材料を全重量に対して32〜46重量%の配合で混練し、これらの混合物を真空吸引によって脱気しつつ、押出し成形した後、焼成することなく乾燥させてブロック体を得るものである。
【0029】
本製造方法では、セメント以外はすべて廃棄物を使用しており、産業廃棄物の有効利用度が高いことも特徴点の1つである。
【0030】
前記混練は、前記粘土系材料と、フライアッシュと、骨材系材料とを自然含水の状態で一次混練し、その後に固化材系材料を加えて二次混練し、混合物のコンシステンシーに応じて水分を補充するようにするのが望ましい。
【0031】
前記粘土系材料としては、採石廃土、石砕スラッジ、窯業廃土、ケイソウ廃土および浄水汚泥の群から選ばれた1種以上が主として使用される。前記粘土系材料としては、もちろん焼き物用粘土を使用することもできるが、本ブロック体は、リサイクル資源の活用の観点から代替粘性材料を使用するものであるため、砂利採取工程で排出され、凝集沈殿汚泥として分類される採石廃土又は石砕スラッジ、窯業で粘土くずとして分類される窯業廃土、廃土として分類されるケイソウ廃土、浄水場から排出される浄水汚泥などが粘土系材料として好適に使用される。
【0032】
前記粘土系材料及びフライアッシュは、それらの合計重量が全重量に対して30〜39重量%とするとともに、前記フライアッシュを前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量に対して50重量%以下の割合で配合するようにする。
【0033】
前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量に対するフライアッシュの割合が50重量%を超える場合は、後述の実施例に示されるように、圧縮強度は増加傾向を示すものの、保水性が極端に低下するようになり、所要の保水性能を満足できなくなる。また、レンガ調の風合いが表出し難くなる。
【0034】
前記粘土系材料として、浄水場から排出される浄水汚泥のリサイクルの観点から、浄水汚泥を含む1種以上の材料が選択される場合は、二水石膏を前記固化材系材料100重量部に対して5〜15重量部、好ましくは8〜13重量部の割合で配合するのが望ましい。前記浄水汚泥を混合した場合には、含有される有機物、活性炭、高含水比などの影響等により、初期の強度発現が低下する傾向が見られるため、二水石膏を配合することで強度低下の影響を抑制する。配合量が5重量部未満の場合は、強度低下抑制効果が小さく、15重量部を超える場合は、押出し成形が困難になる。最適値は10重量部前後である。前記浄水汚泥を混合する場合、粘土系材料内での配合割合は25〜50重量%とし、含水比(変動幅は概ね80〜170%)に応じて配合割合を調整するのが望ましい。なお、前記浄水汚泥は、フィルタープレス、ベルトプレス、ロールプレスなどの各種脱水装置により脱水を図りケーキ状としたものや天日乾燥したものなどが好適に使用される。
【0035】
次いで、前記固化材系材料としては、セメントを主として使用する。前記セメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉セメントのいずれを使用することも可能であるが、これらセメント種類の内、クリンカーアッシュに含まれる重金属類(ホウ素、フッ素等)の溶出を押さえる意味で高炉セメントが望ましい。
【0036】
前記固化材系材料には、セメント由来の六価クロムの溶出を防止するために、高炉スラグ微粉末を固化材系材料100重量部に対して30重量部以下の割合で配合するようにしてもよい。
【0037】
前記固化材系材料は、全重量に対して15〜38重量%の割合で配合される。配合が15重量%未満の場合は、舗装用ブロックとして強度低下が問題となる。また、38重量%を超える場合は、セメント質の質感が出過ぎて、レンガ調の風合いが低下するようになる。
【0038】
一方、前記骨材系材料としては、クリンカーアッシュ又は石炭灰固化砕石を主として使用する。クリンカーアッシュは、周知のように、ボイラ内で燃焼によって石炭灰の粒子が相互に凝集し、多孔質の塊となってボイラ底部に落下体積したものを粉砕機で砂状に粉砕したものである。このクリンカーアッシュとしては、4.75mmふるいを通過させて粒度調整したものを使用するのが望ましい。
【0039】
前記クリンカーアッシュは、全重量に対して32〜46重量%の配合とする。クリンカーアッシュを主とする骨材系材料を32重量%以上の割合で配合すると、圧縮強度は同等程度か低下する傾向が見られたものの、曲げ強度は大幅に増加する傾向を示した。図5は、横軸を骨材系材料(%)とし、縦軸を曲げ強度/圧縮強度(強度比)として、グラフで示したものであるが、骨材系材料の添加率が32重量%を境界点として、下側領域の勾配と、上側領域の勾配とが明らかに相違する現象が知見されたため、本ブロックでは、上記知見に基づき、前記クリンカーアッシュを主とする骨材系材料を32〜46重量%の割合で配合するようにする(特許文献6参照)。クリンカアッシュは高いせん断強度(φ≧30°)を有しており、上記重量割合で配合することにより、フライアッシュを配合しても押出し成形時にひび割れや割れが発生しなくなる。
【0040】
前記クリンカーアッシュの代替として、石炭灰固化砕石を使用することでもよい。石炭灰固化砕石は、石炭灰に石灰及び石膏を添加材として加え、水で混練した後成形し、次いで混練物の養生を行った後、養生固化体を破砕して得た砕石状固化体である。なお、材料となる石炭灰は、石炭灰特性の変動などで品質がかなり変動するため、特許第3455184号公報に示されるように、上記変動に対応しながら安定品質の固化体を得るために、混練機のフルード数、混練物温度、成形体の嵩比重、養生における固化体の圧縮強度及び粒状固化体の粗粒率の制御・管理を行って製造されたものを好適に使用することができる。
【0041】
前記骨材系材料中には、破砕屑のリサイクルの観点から、コンクリートがら、レンガ破片、ブロック破片、瓦破片の群から選ばれたB級品破砕屑が前記骨材系材料100重量部に対して10重量部以下の割合で配合するようにしてもよい。
【0042】
本ブロックでは、上記粘土系材料、固化材系材料、骨材系材料及びフライアッシュに加えて、EMセラミック(石粉や粘土とEM(有用微生物群)を混ぜて600℃-1000℃の低温で焼き上げて粉末にしたもの)、顔料、硬化促進剤、硬化剤、白華防止剤の少量づつ添加するのが望ましい。
【0043】
前記粘土系材料、固化材系材料、骨材系材料及びフライアッシュは、先ず前記粘土系材料、骨材系材料及びフライアッシュを自然含水の状態で一次混練し、その後に前記固化材系材料を加え、混合物のコンシステンシーに応じて水分を補充しながら二次混練した後、真空押出し機に導入され、ここで真空吸引により脱気しつつ押出し成型され、所定長さで切断された後、それぞれが型抜きによってブロック形状に成型される。前記真空押出し機としては、例えば高浜工業株式会社の商品名「カジセキ SSE−330」を好適に用いることができる。
【0044】
前記真空押出しの工程は、混合物の密度の高い圧縮強度の大きい固形物とするために重要である。真空押出し機によって真空吸引を行い脱気しつつ押出し成型することにより、真空吸引による脱気を行うことなく押出し成型したものに対して、圧縮強度を3倍程度増大させることができる。型抜きされた各ブロックは、焼成することなく、次の乾燥工程で乾燥されて、製品としての保水性ブロックとなる。
【実施例】
【0045】
粘土系材料とフライアッシュの配合割合を種々変化させてブロックを製造し、圧縮強度(28日)、保水量及び乾燥密度を測定した。試験は、粘土系材料+フライアッシュの添加量を32重量%で固定するとともに、固化材系材料を25重量%、骨材系材料を43%で固定し、フライアッシュの添加量を、粘土系材料+フライアッシュの全重量に対して、25重量%(実施例1)、50重量%(実施例2)、75重量%(比較例1)、100重量%(比較例2)とした各ケースについて行った。
【0046】
なお、参考例としてフライアッシュを添加しないケースについても同様の試験を行った。以上の結果を下表1に示す。
【表1】

【0047】
上記表1の結果を図1〜図4に示すように整理した。
【0048】
図1は、圧縮強さとフライアッシュ添加量との関係を示し、図2は保水量とフライアッシュ添加量との関係を示す。なお、フライアッシュの添加量を示すパラメータとして、全重量に対するフライアッシュ添加率(%)及びフライアッシュ置換率(%)〔粘土系材料+フライアッシュの全重量に対する比率〕を併記している。
【0049】
図1より、全てのケースにおいて、圧縮強度性能(25N/mm2以上)を満足する結果となっている。また、フライアッシュの添加量を上げていくと、圧縮強さが増加する傾向にあることが判明している。
【0050】
図2より、フライアッシュの添加量を大きくすると、添加率16%(置換率50%)を超えると急激に保水性が低下し、フライアッシュ添加率32%(置換率100%)では要求される保水性能(0.15g/cm3以上)を満足しなくなっている。
【0051】
以上より、粘土系材料及びフライアッシュは、それらの合計重量が全重量に対して30〜39重量%とした上で、フライアッシュを前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量に対して50重量%以下の割合で配合し得ることが判明した。また、特にフライアッシュ置換率が25〜50%の範囲では、フライアッシュを添加しない参考例よりも、保水量が増加しており、フライアッシュ置換率を25〜50%の割合で配合するのがより望ましいことが判明している。
【0052】
次いで、図3は圧縮強さと乾燥密度との関係を示し、図4は保水量と乾燥密度との関係を示したものである。なお、プロット点の実1、実2、比1、比2は夫々、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2に対応している。
【0053】
図3及び図4のグラフから、本発明の実施例1,2の性能を有するブロック体を得るには、乾燥密度が1.55〜1.65g/cmになるように配合量を管理するようにすればよいことが判明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採石廃土、石砕スラッジ、窯業廃土、ケイソウ廃土および浄水汚泥の群から選ばれた1種以上を主とする粘土系材料、セメントを主とする固化材系材料、クリンカーアッシュ又は石炭灰固化砕石を主とする骨材系材料、及びフライアッシュからなり、
前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量を全重量に対して30〜39重量%とするとともに、前記フライアッシュを前記粘土系材料とフライアッシュの合計重量に対して50重量%以下の割合で配合し、前記固化材系材料を全重量に対して15〜38重量%、前記骨材系材料を全重量に対して32〜46重量%の配合で混練し、これらの混合物を真空吸引によって脱気しつつ、押出し成形した後、焼成することなく乾燥させてブロック体を得ることを特徴とする保水性ブロックの製造方法。
【請求項2】
得られる保水性ブロックの乾燥密度が1.55〜1.65g/cmとなるように配合量を調整する請求項1記載の保水性ブロックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−180094(P2010−180094A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24652(P2009−24652)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】