説明

保管庫、保管庫セット及び保管庫付き搬送システム

【課題】例えば半導体素子製造用の各種基板を収容する荷を一時的に保管する保管庫を複数組み合わせてなる保管庫セットおいて、軌道に沿った小さいスペースにも配置可能であり、メンテナンスが容易であり、簡単な構成により効率良く荷を出入庫する。
【解決手段】保管庫セット10xを構成する複数の保管庫10は夫々、荷を水平一方向及び鉛直方向に往復移動可能な駆動手段と、該駆動手段により移動される荷を収容又は載置可能な棚部分を、鉛直方向に複数段に渡って段毎に水平一方向に一又は複数有する棚と、軌道に対する位置決めを行う位置決め手段とを備える。複数の保管庫は夫々、位置決めされることで水平一方向が揃うように相互に隣接して配列された状態をとり、該状態で相互から独立しての水平一方向への移動を相互に妨げない外形を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)等の荷を、軌道上で搬送する搬送システムにおいて、軌道に隣接した位置で荷を一時的に保管するストッカ(或いはスタッカ)等の保管庫、このような保管庫を複数組み合わせてなる保管庫セット、及びこのような保管庫セットを具備してなる保管庫付き搬送システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の保管庫は、例えばビークル等の搬送車が走行する軌道に隣接して敷設され、保管庫内には、搬送車により搬送される荷を多数個保管するように多数の棚部分が設けられる。更に、このような保管庫内と搬送車との間における荷の受け渡し或いは出し入れ(即ち、出入庫)を行うための“ポート”と指定の棚部分との間における荷の搬送(即ち、保管庫内搬送)を行うための、ストッカロボット、ストッカクレーン等と称される保管庫内搬送装置が設けられる。特にストッカロボット等により、縦横無尽に広がる多数の棚部分を含む保管庫内における搬送が可能とされており、例えば数十個から数百個といった多数個の荷の出入庫及び保管が可能とされており、数トンから十数トン級の重さの大型保管庫も実用化されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
他方、この種の保管庫には、鉛直方向に多数段並べられた棚部分の脇に沿って昇降可能な昇降台上に直接、天井吊り下げ型の搬送車から荷が移載される比較的小型の保管庫もある。この保管庫では、出庫の際には、昇降台上から直接、荷が搬送車へと移載される(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−049454号公報
【特許文献2】特開2003−182815号公報
【特許文献3】特開2004−238191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1及び2記載の保管庫によれば、保管庫のメンテナンスをするために、保管庫の周囲には1m程のスペースを確保しておく必要がある。このため、軌道に沿って配置される、保管庫同士の間や保管庫と製造装置等との間には、メンテナンスを行う時以外には無駄なスペースが空いてしまう。しかも、保管庫は、工場内における大型設備の一つとして、工場内に各種部品を持ち込み、組み立て、据え付ける必要がある。更に、ストッカロボット等の保管庫内搬送装置は、制御及び構造が基本的に複雑高度であり、高コストであると共にメンテナンスにも手間やコストがかかるという技術的問題点がある。
【0006】
他方、上述した特許文献3記載の保管庫によれば、昇降台そのものが出入庫用のポートとなり、入庫の際に搬送車から吊り下げて昇降台上まで位置決めしつつ荷を下ろす或いは出庫の際に搬送車により昇降台上から吊り上げるのに時間がかかる。特に、昇降台が上方にある受け渡し位置になければ、昇降台をその位置まで移動させる時間がかかり、下方にある昇降台で受け渡しするのも困難である。そして特に、このような小型の保管庫を軌道に対して正確に或いは安定的に位置決めすることは困難であり、位置決め作業に手間取りかねないという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、軌道に沿った小さいスペースにも配置可能であり、メンテナンスが容易であり、簡単な構成により効率良く荷を出入庫すること或いは効率良く保管庫内搬送することを可能ならしめる保管庫、特にこのような保管庫を複数組み合わせてなる保管庫セット、及びこのような保管庫セットを具備してなる保管庫付き搬送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保管庫は上記課題を解決するために、軌道上で荷を搬送する搬送車との間で前記荷の出入庫が夫々行われる保管庫であって、前記荷を水平一方向に往復移動可能であると共に鉛直方向に往復移動可能な駆動手段と、該駆動手段により移動される荷を収容又は載置可能な棚部分を、前記鉛直方向に複数段に渡って段毎に前記水平一方向に一又は複数有する棚と、前記軌道に対する位置決めを行う位置決め手段とを備える。
【0009】
本発明の保管庫の一態様では、前記保管庫は、前記位置決め手段により位置決めされた状態から前記水平一方向への移動を可能ならしめる走行手段を備える。
【0010】
本発明の保管庫の他の態様では、前記軌道が敷設される場所の床に、凹凸が形成されており、前記位置決め手段は、前記凹凸に係合可能な凹凸を有する。
【0011】
本発明の保管庫セットは上記課題を解決するために、軌道上で荷を搬送する搬送車との間で前記荷の出入庫が夫々行われる複数の保管庫が組み合わされてなる保管庫セットであって前記複数の保管庫は夫々、前記荷を水平一方向に往復移動可能であると共に鉛直方向に往復移動可能な駆動手段と、該駆動手段により移動される荷を収容又は載置可能な棚部分を、前記鉛直方向に複数段に渡って段毎に前記水平一方向に一又は複数有する棚と、前記軌道に対する位置決めを行う位置決め手段とを備え、前記複数の保管庫は夫々、前記位置決め手段により位置決めされることで前記水平一方向が揃うように相互に隣接して配列された状態をとり、該状態で相互から独立しての前記水平一方向への移動を相互に妨げない外形を有する。
【0012】
本発明の保管庫セットによれば、入庫時には、荷が、例えば、搬送車から当該保管庫セットを構成する個々の保管庫の出入庫用のポートへ移載されると、この荷は、例えば鉛直駆動部及び水平駆動部を備える駆動手段によって所望の棚部分へと移動される。即ち、保管庫内搬送される。出庫時には、荷が駆動手段によって、所望の棚部分から保管庫内搬送される。その後、当該保管庫セットのポートへ荷が移動されると、搬送車への移載が行われる。
【0013】
本発明では特に、棚は、棚部分を、鉛直方向に複数段に渡って段毎に水平一方向に一又は複数有し、駆動手段は、このような棚に対応して、荷を水平一方向に往復移動可能であると共に鉛直方向に往復移動可能である。従って、鉛直方向及び水平一方向という二軸運動によって、出入庫用のポート(又は他の棚部分)から、複数存在する棚部分のうち所望の棚部分へと、荷を保管庫内搬送可能となる。或いは、鉛直方向及び水平一方向という二軸運動によって、複数存在する棚部分のうち所望の棚部分から出入庫用のポート(又は他の棚部分)へと、荷を保管庫内搬送可能となる。
【0014】
個々の保管庫について言えば、例えば、棚は、鉛直方向にm(但し、mは2以上の自然数)段、水平一方向にn(但し、nは1以上の自然数)列、且つこれに垂直である残る水平一方向(以下単に「厚み方向」と称する)には1列のみといった具合に、薄い平板形状となるように、全体の骨格が構成される。
【0015】
ここで一般に軌道が敷設される半導体製造工場などの工場内では、限られたスペース内で各種工程を行うことや、軌道を短くして工程間移動のスピードアップを図ることなどの基本要請に沿うべく、軌道に沿って各種工程を受け持つ装置、当該保管庫とは異なるストッカなどが、所狭しと敷設されている場合がある。逆に言えば、軌道に沿って敷設すべき装置等の設計は、なるべく隙間がなくなるように行われる場合がある。他方で、ストッカ或いはスタッカなどと称される保管庫は、基本的に大型であり且つ設備の一部として工場内にて組み立てられるものであり、組み建て後の変更は、容易でなく、しかも、隙間をあけないようにとの当初の設計も困難きわまりない。或いは、伝統的な大型保管庫であれば、その周囲にメンテナンス用のスペースが、例えば軌道に沿って1mずつ程度空けられている。言い換えれば、このようなメンテナンス用のスペースも含めて、軌道に沿って隙間なく装置等が配置されている。このスペースは、メンテナンス時を除けば無駄なスペースとも呼べる。
【0016】
しかるに、本発明によれば、複数の保管庫は夫々、位置決め手段により位置決めされることで、水平一方向が揃うように相互に隣接して配列された状態をとる。即ち、複数の保管庫が、水平一方向が揃うように保管庫セットへと組み合わされており、この状態で全体として、軌道に対し極めて安定に位置決めされ、保管庫相互間についても安定に位置決めされる。従って、工場内に敷設された軌道に沿った方向における各種装置等間の隙間に合わせた数だけ保管庫を組み合わせて、本発明に係る保管庫セットを挿入する形で配置でき、実用上極めて便利である。言い換えれば、軌道に沿って敷設される装置等間の隙間が大きい設計でも、小さい設計でも、本発明の保管庫セットを利用すれば、十二分に許容範囲となり得る。しかも、個々の保管庫内における保管庫内搬送は、上述の如く厚み方向には薄く広がる、即ち複数段に渡って且つ各段に複数ある棚部分を有する棚に対する、二軸方向の運動によって、極めて効率的に行われる。特に、厚み方向には薄くとも、各段に複数ある棚部分間の移動については、鉛直方向の移動を停止した状態で、水平一方向の移動によって可能となる。
【0017】
同時に、厚み方向には薄くとも、複数段に渡る棚部分間の移動については、鉛直方向への移動が可能となる水平一方向位置まで荷を移動した後に、かかる水平一方向の移動を停止し、この状態で、鉛直方向の移動を行い、更に、その後における水平一方向の移動によって、可能となる。
【0018】
しかも、複数の保管庫は夫々、位置決め手段により相互に隣接して配列された状態で、相互から独立しての水平一方向への移動を相互に妨げない外形を有する。従って、保管庫のメンテナンス時には、このように所望数だけ組み合わせ可能な保管庫セットの中から、個々の保管庫としては薄型の保管庫を、他から独立して水平一方向に沿って引き出すことが可能である。よって、メンテナンス用のスペースを容易にして構築できる。伝統的な保管庫のように保管庫周囲に1m程度のメンテナンス用スペースを設ける必要がない。この際特に、薄型である個々の保管庫全体を移動可能に構成することも、その重量的には実践的な意味で十分に可能である。
【0019】
以上のように、搬送車の軌道に沿った比較的小さい隙間にも或いは比較的大きな隙間にも、当該保管庫セットを、軌道に対し或いは保管庫相互間で確実に位置決めしつつ、配置できる。特に、保管庫セットの中から所望の保管庫を、他から独立した形で引き出すことが可能であり、保管庫単位でのメンテナンスが容易となる。
【0020】
本発明の保管庫セットの一態様では、前記複数の保管庫は夫々、相互から独立して、前記水平一方向への移動を可能ならしめる走行手段を備える。
【0021】
この態様によれば、軌道に対して保管庫セットが設置された状態において、走行手段により所望の保管庫を引き出すことが極めて容易となる。ここに「走行手段」は、引き出す方向である水平一方向に沿った走行を可能ならしめる、例えば各保管庫の底側に配置された走行ローラ、走行キャタピラなどである。
【0022】
尚、このような走行手段は、各保管庫に常設されておらず、引き出す際に、一時的に取り付けられる構造のものでもよい。例えば、保管庫を一つずつ載置する或いは吊り上げることが可能な走行手段であってもよい。
【0023】
本発明の保管庫セットの他の態様では、前記軌道が敷設される場所の床に、凹凸が形成されており、前記位置決め手段は、前記凹凸に係合可能な凹凸を有する。
【0024】
この態様によれば、工場等の床に形成された凹凸に対して、位置決め手段が有する凹凸が係合することで、個々の保管庫の位置が、軌道に対して或いは保管庫相互間で決められる。複数の保管庫を保管庫セットへと組み合わせることは、このような位置決めにより極めて簡単に行うことができる。しかも、一度凹凸が係合すれば、極めて動き難い安定した状態を得ることも可能となる。特に、メンテナンス等の際に、各保管庫を他から独立して引き出す際に、凹凸による係合を外すことも簡単であるので、引き出すことは容易となり実用上極めて便利となる。
【0025】
本発明の保管庫セットの他の態様では、当該保管庫セットは、前記棚が前記軌道の下方に位置するように且つ前記一列が前記軌道に沿って並ぶように、前記軌道に対して配置される。
【0026】
この態様によれば、出入庫用のポートが、軌道にとって一列に並ぶので、一本の軌道上を走行する搬送車により、いずれの保管庫のポートに対しても、入庫作業(即ち、搬送車からポートへの移載)を行い、出庫作業(即ち、ポートから搬送車への移載)を行うことが可能となり、移載効率が顕著に向上し得る。しかも、この際、各々が厚み方向に薄いと共に二軸方向の移動により保管庫内搬送が可能である保管庫を軌道に沿って並べることにより得ある上述の利益が害されることもない。
【0027】
本発明の保管庫セットの他の態様では、当該保管庫セットは、前記軌道の方位に対して前記水平一方向の方位が直交するように、前記軌道に対して配置される。
【0028】
このように構成すれば、軌道に沿って存在するスペースを最も効率的に利用できる。尚、ここにいう「直交」とは理想的には文字通りの直交を意味するが、スペースを有効利用できる限りにおいて、直交と見做しえる程度、即ち実質的に直交である場合も含む意味である。更に、軌道が直線でない場合にも、各軌道上の地点において接線方向に直交している場合も含む意味である。
【0029】
本発明の保管庫セットの他の態様では、前記駆動手段は、前記荷をその底側から支持可能な第1載置面を有する載置部と、前記載置部を水平一方向に往復移動可能な水平駆動部と、前記載置部を鉛直方向に往復移動可能な鉛直駆動部とを備え、前記棚は、前記棚部分として、前記段毎に、前記水平駆動部により到達可能な水平位置に一又は複数設けられると共に、前記第1載置面との間で前記荷を相互に移載可能に夫々構成されている第2載置面を有する。
【0030】
この態様によれば、入庫時には、例えば、搬送車から出入庫用のポートとして機能する第2載置面上に荷が移載される。続いて、ポートとして機能する第2載置面上に移載された荷は、2軸方向に移動可能な載置部の第1載置面に載置される。例えば、第1及び第2載置面は、荷の底面における相異なる部分(典型的には、中央寄り部分と周辺寄り部分)を支持するように構成されており、どちらか一方で荷を支持することが可能である。載置部が、ポートとして機能する第2載置面が存在する鉛直位置且つ水平位置に移動された際に、ポートとして機能する第2載置面に代わって、第1載置面で支持することで、第2載置面から第1載置面への移載が行われる。典型的には、鉛直駆動部により第1載置面が第2載置面より高くなるまで移動されることで、荷は、第1載置面によって支持されることとなる。これにより、入庫時における保管庫内搬送が開始される。ここでは、鉛直駆動部及び水平駆動部による簡単な2軸動作によって、棚におけるいずれの第2載置面にも迅速に保管庫内搬送が可能である。
【0031】
続いて、載置部が、保管に使用しようとする第2載置面が存在する鉛直位置且つ水平位置に移動された際には、第1載置面に代わって、第2載置面で支持することで、第1載置面から第2載置面への移載が行われる。典型的には、鉛直駆動部により第1載置面が第2載置面より低くなるまで移動されることで、荷は、第2載置面によって支持されることとなる。これにより、入庫時における保管庫内搬送が終了され、棚での保管が開始される。
【0032】
他方、出庫時には、載置部が、出庫しようとする荷が載置されている第2載置面が存在する鉛直位置且つ水平位置に移動される。続いて、第2載置面に代わって、第1載置面で支持することで、第2載置面から第1載置面への移載が行われる。典型的には、鉛直駆動部により第1載置面が第2載置面より高くなるまで移動されることで、荷は、第1載置面によって支持されることとなる。これにより、出庫時における保管庫内搬送が開始される。続いて、載置部が、ポートとして機能する第2載置面が存在する鉛直位置且つ水平位置に移動される。ここでは、鉛直駆動部及び水平駆動部による簡単な2軸動作によって、いずれの第2載置面からでも迅速に保管庫内搬送が可能である。
【0033】
続いて、第1載置面に代わってポートとして機能する第2載置面で支持することで、第1載置面からポートとして機能する第2載置面への移載が行われる。典型的には、鉛直駆動部により第1載置面が第2載置面より低くなるまで移動されることで、荷は、第2載置面によって支持されることとなる。これにより出庫時における保管庫内搬送が終了され、ポートから搬送車への移載が可能な状態となる。
【0034】
その後、既に出入庫用のポートに対面する軌道上位置にて待機していた又は次にこの位置に到着する搬送車によって、このポートから搬送車への移載が行われる。
【0035】
以上の結果、駆動手段により2軸方向に動く載置部という比較的簡単な構成及び簡単な制御によって、保管庫内搬送を実行できる。しかも、搬送車及びポート間で移載を行っている最中に、駆動手段による保管庫内搬送も可能となるので、保管庫内における搬送効率についても飛躍的に向上される。
【0036】
本発明の保管庫セットの他の態様では、前記棚は、前記棚部分のうちの少なくとも一つが、前記出入庫用のポートとして機能する。
【0037】
本発明の保管庫セットの他の態様では、前記棚は、前記棚部分のうち前記棚の最上段にある少なくとも一つが、前記出入庫用のポートとして機能する。
【0038】
この態様によれば、搬送車が、保管庫の上側に敷設された軌道上を走行する場合に、この搬送車から荷をポートへ移載する作業が簡単となる。同様に、ポートから搬送車に荷を移載する作業も簡単となる。尚、最上段に、二つの棚部分が存在する場合には、両方を夫々ポートとして機能させることも可能であり、片方のみをポートとして機能させることも可能である。
【0039】
本発明の保管庫付き搬送システムは上記課題を解決するために、上述した本発明に係る保管庫セット(但し、その各種態様を含む)と、前記軌道と、前記搬送車とを備える。
【0040】
本発明の保管庫付き搬送システムによれば、上述した本発明に係る保管庫セットを有するので、軌道に沿って無駄なく或いは効率良く保管庫を配置可能となり、同時に、個々の保管庫内においては、収容効率は極めて高く、しかも搬送効率も極めて高い。特に、保管庫セットにおける他の保管庫から切り離して個々の保管庫を移動可能なので、メンテナンスが容易となる。
【0041】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0043】
<第1実施形態>
【0044】
先ず、第1実施形態に係る保管庫の構成について図1から図3を参照して説明する。ここに図1は、第1実施形態に係る保管庫を備える搬送システムの外観を示す斜視図であり、図2は、図1の保管庫の内部構造を模式的に示す断面図であり、図3は、第1実施形態に係る第1及び第2載置面の、荷に対する係合状態を示す断面図である。
【0045】
図1において、搬送システム100は、レール1、搬送車2、ストッカ10、及びコントローラ20を備える。搬送システム100は、搬送車2を駆動して、レール1上でFOUP3の搬送を行う。レール1は、本発明に係る「軌道」の一例として、搬送車2が走行するための軌道の役割を果たす。
【0046】
搬送車2は、例えばリニアモータにより駆動されるOHT(Overhead Hoist Transport)(天井走行車)であり、ストッカ10や図示しない製造装置、OHTバッファ、大型ストッカ等に、FOUP3を搬送する。搬送車2は、内部に、鉛直方向に移動するホイスト2aを有している。
【0047】
ホイスト2aは、搬送時に、搬送されるFOUP3のフランジ4を、例えば挟持機構により保持する。ホイスト2aは、搬送車2の本体に備えられた、例えば巻き取りベルト及び巻き出しベルト等の昇降機構により、レール1の下方にて鉛直方向に昇降可能に構成されている。ホイスト2aは、ストッカ10との間でFOUP3の出庫又は入庫を行う際に、ストッカ10の出入庫用のポートの上方位置まで移動し、更にポートまで下降した位置にて、フランジ4を保持又は解放する。この下降した位置では、FOUP3の底面が後述の第2載置面(即ちポートの床面)に接触する。
【0048】
図1及び図2に示すように、FOUP3は、本発明に係る「荷」の一例として、ストッカ10内で、搬送車2に対する出入庫、及び保管位置の調整等のために搬送(即ち保管内搬送)される。
【0049】
図3に示すように、FOUP3は、底面に、凹部5及び凹部6を有している。凹部5は、後述の棚15に設けられた凸部16に対応するサイズに形成されている。一方、凹部6は、後述の載置部11に設けられた凸部12に対応するサイズに形成されている。
【0050】
再び図1において、コントローラ20は、例えば半導体素子製造の工程スケジュールに基づいて、搬送車2及びストッカ10に対して、FOUP3の搬送及び出入庫(保管庫内搬送を含む)を指示する。この指示に応答して、搬送車2及びストッカ10が駆動され、搬送車2に搬送されるFOUP3に各種処理が施されることで、半導体素子が製造される。
【0051】
(保管庫単体)
【0052】
ストッカ10は、本発明に係る「保管庫」の一例として、レール1に隣接して敷設され、FOUP3を複数保管する。
【0053】
図2において、ストッカ10は、載置部11、水平駆動部13、及び鉛直駆動部14から構成される保管庫内搬送装置、並びに複数の棚15を備える。保管庫内搬送装置は、複数の棚15の間でFOUP3を移載する。この移載により、FOUP3が複数の棚15のうち特定の棚(即ち、保管用棚)に載置されることで、FOUP3がストッカ10内に保管される。或いは、後に詳述するように、出入庫用のポートとして機能する棚15まで移載される。
【0054】
載置部11は、複数の棚15の間でFOUP3を移載するために、水平駆動部13により水平一方向に、且つ鉛直駆動部14により鉛直方向に移動される。載置部11は、上面に第1載置面11aを有している。第1載置面11aは、移載時に、FOUP3の底面に接触し、FOUP3をその底側から支持する。第1載置面11aには、支持部材として、凸部12が形成されている。図3(b)に示すように、凸部12は、FOUP3の凹部6に対応するサイズに形成されており、移載時に、この凹部6に係合される。
【0055】
再び図2において、水平駆動部13は、本発明に係る「駆動手段」の一例として、例えば図示しないモータにより、水平一方向に延びる水平ガイド17上で、駆動される。水平駆動部13は、載置部11と連結されており、載置部11を水平ガイド17に沿って、水平一方向D1に往復移動させる。
【0056】
鉛直駆動部14は、本発明に係る「駆動手段」の一例として、例えば図示しないモータにより、鉛直方向に延びる鉛直ガイド18上で、駆動される。鉛直駆動部14には、水平ガイド17の中央部が固定されている。鉛直駆動部14は、この水平ガイド17を鉛直ガイド18に沿って、鉛直方向D2に往復移動させる。この往復移動時に、載置部11は、水平ガイド17の中央部に位置する。このように、載置部11は、水平駆動部13及び鉛直駆動部14により、鉛直方向及び水平一方向の2軸方向に移動される。
【0057】
複数の棚15は、鉛直方向に7段、水平一方向に2列、且つ厚み方向に1列として、合計14個の棚から構成されており、これら14個の棚15の間を載置部11が移動することで、FOUP3の移載が行われる。各棚15は、上面に第2載置面15aを有しており、この第2載置面15aに、FOUP3が載置される。第2載置面15aには、支持部材として、凸部16が形成されている。図3(a)に示すように、凸部16は、FOUP3の凹部5に対応するサイズに形成されており、載置(保管)時に、この凹部5に係合される。
【0058】
再び図2において、14個の棚15のうち1つの棚(言い換えれば、これが有する第2載置面15a)は、搬送車2との間でFOUP3を受け渡しするための、出入庫用のポートとして機能する。ポートに設定される棚15は、最上段に存在する2つの棚のうち一方の棚(図2では、二点鎖線で示されるエリアP1に位置する棚)であり、この上方及び側方に位置するストッカ本体10aは、FOUP3が出入庫可能に開放されている。
【0059】
尚、ポートに設定される棚15だけでなく、この棚15に加えて、エリアP1に移動される載置部11を、ポートとして機能させてもよいし、この載置部11のみを、ポートとして機能させてもよい。この場合、エリアP1に棚15を設置せずに、FOUP3を載置していない載置部11がエリアP1に配置されると、FOUP3が搬送車2から直接入庫される。又は、FOUP3を載置している載置部11がエリアP1に配置されると、FOUP3が搬送車2に直接出庫される。
【0060】
ストッカ10の配置について、ポートに設定される棚15が、レール1の下方に配置される。具体的に、載置部11が移動される水平一方向の方位が、レール1の方位に対して直角に交わる。
【0061】
次に、本実施形態に係る第1及び第2載置面の形体について図4(a)を参照して説明する。ここに図4(a)は、本実施形態に係る載置部の水平一方向への動作状態を示す、平面図である。図4(a)は、具体的には、図2におけるA1−A1断面に相当しており、ストッカ10の最上段に設置される、2列の棚15(第2載置面15a)を示している。
【0062】
図4(a)に示すように、ストッカ10の上面側から視て、第2載置面15aは、馬蹄のようにU字形に形成され、第1載置面11aは、そのU字形の中央を埋める島のように四角形に形成されている。従って、第1及び第2載置面11a,15aは、相互に相補の平面形状を有している。このような第1及び第2載置面11a,15aの間で、FOUP3の移載が行われる。
【0063】
尚、図3及び図4(a)に示した例では、平面的に見て、第1載置面11aの方が、第2載置面15aの内側に位置しており、外径が小さい。しかしながら、逆に、第1載置面11aの方が、第2載置面15aの外側に位置しており、外径が大きくなるように両者は、構成されてもよい。この場合、図4(a)に示される第1及び第2載置面の形体の変形例として、図4(b)に示すように、例えばストッカ30の上面側から視て、第1載置面31aが馬蹄のようにU字形に形成され、第2載置面35aが、そのU字形の中央を埋める島のように四角形に形成されている。このように、上下左右に移動される第1載置面31aを大きくした方が、FOUP3を載置部31に載せての保管庫内搬送の際における安定性が増し、FOUP3の落下防止やガタツキ防止に役立つ。
【0064】
(保管庫内搬送動作)
【0065】
次に、本実施形態に係る保管庫内の荷の移載、即ち保管庫内搬送の動作について、引き続き図2から図4を参照して説明する。
【0066】
図2及び図4において、搬送車2により入庫され、エリアP1の第2載置面15aに載置されているFOUP3を、同段のもう1つの第2載置面15a(図2及び図4では、エリアP2で示される)に移載する。この場合に、先ず、エリアP3の第2載置面15aへのFOUP3の移載を終えた載置部11(図2では、破線で示される)が、エリアP1の第2載置面15aの直下に移動される。この際、載置部11が、水平駆動部13により水平ガイド17の略中央に移動された後、鉛直駆動部14により鉛直ガイド18に沿って所定の鉛直位置に移動される。この所定の鉛直位置は、エリアP1の第2載置面15aよりも下方である。この後、所定の鉛直位置にある載置部11が、水平駆動部13により水平ガイド17に沿って所定の水平位置(図2では、実線で示される)に移動される。図3(a)に示すように、この所定の水平位置は、FOUP3の凹部6の鉛直下方向に、載置部11の凸部12が存在する位置である。
【0067】
所定の鉛直位置且つ水平位置に移動された載置部11は、鉛直駆動部14により上昇される。この上昇により、第1載置面11aが第2載置部15aの中央を通過して、図3(b)に示すように、第2載置面15aよりも高くなる。この時、エリアP1における凹部5及び凸部16の係合が外れ、第2載置面15aに代わって、第1載置面11aでFOUP3が支持されると共に、載置部11の凸部12及びFOUP3の凹部6が相互に係合されることで、FOUP3が第2載置面15aから第1載置面11aへ移載される。
【0068】
FOUP3が移載された載置部11は、エリアP2の第2載置面15aの直上に移動される。この際、載置部11が、水平駆動部13により水平一方向の所定の水平位置に移動される。この所定の水平位置は、エリアP2の第2載置面15aの凸部16の鉛直上方向に、FOUP3の凹部5が存在する位置である。所定の水平位置に移動された載置部11は、鉛直駆動部14により下降される。この下降により、第1載置面11aがエリアP2の第2載置部15aの中央を通過して、図3(a)に示すように、第2載置面15aよりも低くなる。この時、エリアP2における凸部12及び凹部6の係合が外れ、第1載置面11aに代わって、第2載置面15aでFOUP3が支持されると共に、FOUP3の凹部5及び第2載置面15aの凸部16が相互に係合されることで、FOUP3が第1載置面11aから、エリアP2の第2載置面15aへ移載される。これにより、ポートに設定されるエリアP1から、エリアP2へのFOUP3の移載動作が完了される。尚、この移載工程を逆の順序で行えば、エリアP2からエリアP1への移載動作となる。従って、上述のポートを介する移載動作は、搬送車2及びストッカ10の間でのFOUP3の出入庫動作でもある。
【0069】
このように、本実施形態のストッカ10によれば、鉛直方向及び水平一方向に広がりを持ち、厚み方向については、FOUP3の一個分の厚みに水平駆動部13及び鉛直駆動部14に必要なスペースを含めて、極めて薄く構成される。このため、レール1に沿った比較的小さい隙間にも、配置可能である。また、2軸方向に移動する載置部11が、ポート及び搬送車2の間の出入庫時に不要であり、その出入庫作業の妨げとならないので、簡単な構成により効率良くFOUP3を出入庫すること或いは効率良く保管庫内搬送することが可能である。
【0070】
次に、保管庫の配置について図5を参照して説明する。ここに図5は、第1実施形態に係る保管庫の実用上の配置状態を示す平面図である。
【0071】
図5に示すように、保管庫は、例えば半導体製造工場等の工場内で、軌道に沿って設置された製造装置等の装置間の隙間に、配置される。ストッカ10の厚み方向の寸法は、製造装置9間の隙間に対応するように、設計されている。製造装置9間には、メンテナンス用のスペースS1が設けられている。このスペースS1に、ストッカ10を挿入することで、メンテナンス時を除いて無駄なスペースとも呼べるスペースS1を有効活用する。複数の製造装置9、及びこれら製造装置9間に配置されるストッカ10は、レール1に対して、載置部が移動される水平一方向が直角に交わるように、配置される。
【0072】
尚、図5に示されるストッカ10は、単体で配置されるが、製造装置間の隙間に合せて、複数のストッカを組み合わせてなるストッカセットで配置されてもよい。
【0073】
<第2実施形態>
【0074】
次に、本発明の第2実施形態として、第1実施形態に係る保管庫を複数組み合わせてなる保管庫セットについて図6を参照して説明する。ここに図6は、本実施形態に係る保管庫セットを備える搬送システムの外観を示す、図1と同趣旨の斜視図である。尚、図6に示される搬送システムにおいて、図1に示される搬送システム100と同等に構成される要素について、同一の番号を付し、その説明を省略する。
【0075】
図6において、搬送システム500は、レール1、搬送車2、及び複数のストッカセット10xを備える。搬送システム500は、図1に示される搬送システム100と同様に、図示しないコントローラにより、搬送車2を駆動して、レール1上でFOUP3の搬送を行う。
【0076】
ストッカセット10xは、6つのストッカ10からなる。各ストッカ10は、図1に示されるストッカ10と同様にして、図示しない載置部を含む保管庫内搬送装置19、及び複数の棚15を備える。保管庫内搬送装置19は、駆動手段により載置部を水平一方向且つ鉛直方向の2軸方向に移動することで、複数の棚15の間でFOUP3を移載する。複数の棚15のうち最上段に位置する一方の棚15(図10では、FOUP3が載置されている棚)は、出入庫用のポートとして機能する。
【0077】
ストッカセット10xを構成する6つのストッカ10は、出入庫用ポートの棚15が、レール1の下方に、且つレール1に沿って一列に並ぶように、配列される。また、各ストッカ10は、載置部が移動される水平一方向の方位が、レール1の方位に対して直角に交わるように、配列される。
【0078】
(保管庫セットの出入庫動作)
【0079】
第2実施形態に係るストッカセット10x及び搬送車2の間の出入庫の動作について簡単に説明する。
【0080】
図6において、ストッカセット10xの6つのストッカ10が夫々、相異なるFOUP3を保管する場合に、ストッカセット10xに対応するレール1の狭いエリア内で、各FOUP3の搬送先の間を、搬送車2が移動することで、相異なる6種類のFOUP3の出入庫が可能である。また、この場合に、レール1の上流側に配置される第1ストッカ10に入庫を終えたばかりの搬送車2により、第1ストッカ10より下流側に配置される第2ストッカ10のFOUP3が出庫できる。更に、このストッカセット10xに対して、複数の搬送車2が走行される場合に、6つのストッカ10で同時に、6種類のFOUP2の出入庫作業が可能である。
【0081】
このように、第2実施形態によれば、レール1に沿った比較的小さい隙間にも或いは比較的大きな隙間にも、ストッカ10の数を調整したストッカセット10xが適宜配置されると共に、ポートがレール1に沿って一列に並ぶように、ストッカセット10xを構成する複数のストッカ10が配列される。このため、レール1上を走行する搬送車2により、いずれのポートに対しても、出入庫作業が可能となり、移載効率が顕著に向上する。
【0082】
(保管庫の位置決め)
【0083】
第2実施形態に係る保管庫セットを構成する複数の保管庫(第1実施形態に係る保管庫)は夫々、載置部が移動される水平一方向が、軌道に対して直角に交わるように、相互に隣接して配列される。この配列状態を保持するために、各保管庫は、底面に、位置決め手段を備える。
【0084】
次に、第1実施形態に係る保管庫の位置決め手段について図6に加えて、図7から図8を参照して説明する。ここに図7は、第1実施形態に係る保管庫を下方から視た底面図であり、図8は、図7の保管庫をB1−B1断面で切断した断面図である。
【0085】
図6に示すように、ストッカ10は、長方形状に形成されており、隣接するストッカ10により、水平一方向D4への移動を妨げられない。このため、ストッカセット10xを構成する複数のストッカ10が、個々に引き出し可能である。
【0086】
図7に示すように、ストッカ10は、底面に、4つの脚部51、及び一対の位置決め部52を備える。4つの脚部51は、この底面の四方端部に、取り付けられており、ストッカ本体10aを支持する。4つの脚部51は、図示しない固定手段により、ストッカ10の底面が昇降可能に、伸縮される。ストッカ10がストッカセット10xの一構成要素として配列される配列位置では、脚部51の全面が床面と接触され、ストッカ本体10aが安定する。
【0087】
図8に示すように、一対の位置決め部52は夫々、図7のB1−B1断面で切断した断面が凹形に形成されている。各位置決め部52は、支持部53及び固定部54を介して、ストッカ10の底面の中央両端部に、取り付けられている。支持部53は、棒状に形成されており、外周に雄ねじが切られている。支持部53の一端は、位置決め部52に固定されている。一方、支持部53の他端には、内周に雌ねじが切られた固定部54が螺合されている。固定部54は、図示しないコントローラにより、支持部53の中央部から他端の間で移動される。
【0088】
レール1に対応する床には、一対の係合部55が取り付けられている。一対の係合部55は夫々、位置決め部52の凹形に対応する凸形に形成されている。
【0089】
ストッカ10は、配列位置では、固定部54の移動により、位置決め部52が係合部55に係合する位置まで下降されることで、レール1に対して位置決めされる。この位置決めにより、相互に隣接して配列された複数のストッカ10の水平一方向が、平行に揃った状態になる。一方、ストッカ10がストッカセット10xから独立して引き出される際には、位置決め部52が係合部55に掛からない位置まで上昇されることで、ストッカ10の位置決めされた状態が解除される。
【0090】
尚、図8に示す位置決め部52は、凹形に限らず、凸形に形成してもよい。この位置決め部の例として、図9は、位置決め部52の代わりに、凸形に形成された位置決め部62を示す。この場合、一対の位置決め部62に係合される一対の係合部65は夫々、位置決め部62の凸形に対応する凹形に形成されている。また、位置決め部52及び62を、ストッカ10の底面の四隅に取り付けることが好ましい。この取り付けにより、位置決め精度がより向上する。
【0091】
(保管庫の走行)
【0092】
第2実施形態に係る保管庫セットを構成する複数の保管庫(第1実施形態に係る保管庫)は夫々、上述の位置決め手段により、位置決めされた上で配列されると共に、この配列位置から、後述の走行手段により、引き出し可能である。
【0093】
次に、第1実施形態に係る保管庫の走行手段について図10から図11を参照して説明する。ここに図10は、第1実施形態に係る保管庫の走行手段を上方から視た平面図であり、図11は、図10の走行手段を側方から視た側面図である。
【0094】
図10及び図11において、引き出し台車70は、本発明に係る「走行手段」の一例として、配列位置のストッカ10を、ストッカセット10xから独立して引き出すのに、使用される。引き出し台車70は、本体部70a、一対のフォーク71、一対の体勢保持部72、及び手すり73を備える。例えば不図示のオペレータや牽引用機械が、手すり73を保持しつつ、ストッカ10の載置部が移動される水平一方向と同じ方向に移動することで、ストッカ10がストッカセット10xから引き出される。
【0095】
本体部70aは、内部に、不図示の油圧機構を備えており、この油圧機構に、手すり73が連結されている。また、油圧機構には、後述の走行ローラ74が不図示のリンク機構を介して連結されている。ストッカ10を引き出す際に、手すり73は、オペレータや牽引用機械により、図11に矢印で示す方向に回動される。この回動により、油圧機構及びリンク機構が作動して、走行ローラ74が回動する。
【0096】
一対のフォーク71は夫々、底面に、走行ローラ74を備え、ストッカ10を支持する。一対のフォーク71は、引き出しの際に、図11に示すように、ストッカ10の底面と床との間に、且つ図10に示すように、ストッカ10の一対の位置決め部52より内側に挿入される。この挿入と並行して、一対のフォーク71は、ストッカ10の底面に設けられた一対のフォーク路76に嵌合される。一対のフォーク71が完全に嵌合された状態で、手すり73が回動されると、これに伴って、走行ローラ74が回動される。この回動により、一対のフォーク71が上方に上がり、図11に拡大して示すように、4つの脚部51が床から離れ、ストッカ10が宙に浮いた状態となる。この状態で、引き出し台車70が、水平一方向に移動されることで、ストッカ10がストッカセット10xから引き出される。
【0097】
一対の体勢保持部72は夫々、底面に、保持ローラ75を備える。この一対の保持ローラ75のトレッドは、未保持位置及び保持位置の2つの位置に切り替えられる。典型的に、保持位置の時にのみ、ストッカ10の引き出しが行われる。
【0098】
引き出し台車70において、図10に二点鎖線で示すように、未保持位置では、一対の体勢保持部72の長手方向が一対のフォーク71の長手方向と平行になり、ストッカ10が引き出される方向(以後、「引き出し方向」と称する)に対する、引き出し台車70の幅が、ストッカ10の幅以下である第1幅W1になる。
【0099】
一方、図10に実線で示すように、保持位置では、一対の体勢保持部72の長手方向がフォーク71の長手方向と直交して、引き出し台車70の幅が、ストッカ10の幅よりも広くなる第2幅W2になる。この時、引き出し台車70が全体としてT字の形体になるので、一対のフォーク71に載置されたストッカ10が水平に保持され、言い換えれば、ストッカ10の転倒が防止される。
【0100】
未保持位置から保持位置への切り替えの際には、一対の体勢保持部72が夫々、一端を軸にして、一対のフォーク71から離れる方向に90度回転される。
【0101】
尚、本実施形態の引き出し台車70は、第1幅W1になる未保持位置でも、ストッカ10を引き出し可能であるが、第1幅W1を1つのストッカ10の幅より広くすることで、未保持位置では、一対のフォーク71をストッカ10の下方に挿入不可能にして、ストッカ10の引き出しを禁止してもよい。
【0102】
尚、本実施形態では、走行手段として、引き出し台車70が使用されるが、引き出し台車70の代わりに、ストッカ10の底面に、複数の走行ローラを直接設けてもよい。この場合、例えば再び図7において、4つの脚部51の代わりに、4つの走行ローラが取り付けられると共に、位置決め部52が引き出し方向においても確実に位置決めされるように、係合部が形成される。ストッカ10の引き出しの際には、位置決め部52の上昇により、ストッカ10の位置決め状態が解除された後、走行ローラが引き出し方向に駆動可能とされる。
【0103】
また、ストッカ10に走行ローラを直接設ける場合、例えば図12(a)において、ストッカ110は、4つの脚部51の各々に対となる、4つの走行ローラ77を備える。各走行ローラ77は、形体を変化させることなく、ストッカ110の底面に固定される。これに対し、各脚部51は、ペダル状の形体を有する切り替え部78により配列位置及び引き出し位置に切り替えられることで、上下方向に移動される。4つの脚部51は、配列位置で、最長になり、各脚部51の底面が床と接触される。一方、これらの脚部51は、引き出し位置で、図12(a)に示すように、各脚部51の底面が、走行ローラ77の接地面よりも上方に位置するように、短縮されるので、脚部51の代わりに、走行ローラ77が床と接触される。ストッカ10の引き出しの際には、脚部51が引き出し位置に切り替えられた上で、走行ローラ77が引き出し方向に駆動可能とされる。
【0104】
尚、図12(a)に示す脚部51において、図8及び図9に示す位置決め手段と同様な手段により位置決めしてもよい。この位置決めの例として、図12(b)は、脚部51の代わりに、底面に凹部(鎖線で示す)を有する一対の脚部81を示す。この一対の脚部81に対応する床には、一対の係合部82が取り付けられており、各係合部82は、脚部81の凹部に対応する凸部を有している。この場合、ストッカ210は、切り替え部78による配列位置では、脚部81が係合部82に係合する位置まで下降されることで、レールに対して位置決めされる。一方、切り替え部78による引き出し位置では、脚部81が係合部82に掛からない位置まで上昇されることで、ストッカ210の位置決めされた状態が解除される。このように、脚部を位置決め可能とすることが好ましく、脚部が位置決めされた場合に、位置決め精度がより向上する。
【0105】
(複数の保管庫の配列及び引き出し動作)
【0106】
次に、第2実施形態に係る保管庫セットを構成する複数の保管庫の配列及び引き出しの動作について説明する。
【0107】
図6において、オペレータや牽引用機械は、引き出し台車70を使用して、所望のストッカ10をストッカセット10xへと組み合わせる。組み合わせられるストッカ10は既に、引き出し台車70に載置されている。この時、引き出し台車70は、転倒が防止される保持位置に切り替えられている。また、引き出し台車70のフォーク71がストッカ10のフォーク路76に嵌合されており、引き出し台車70は、ストッカ10と一体化されている。この場合に、引き出し台車70が、図10及び図11に示される水平一方向と同じ方向D5に移動され、2つのストッカ10の間に、組み合わせられるストッカ10が挿入される。
【0108】
ストッカ10の挿入が完了されると、図8に示すように、固定部54により、位置決め部52が下降され、係合部55に係合される。この係合により、ストッカ10が位置決めされることで、複数のストッカ10のポートが一列に揃えられる。この後、脚部51が延伸されて床と接触されると、ストッカ10が安定して配置(配列)される。言い換えれば、ストッカ10がストッカセット10xに組み合わせられる。この後、オペレータや牽引用機械により、引き出し台車70が引き出し方向へ移動されることで、引き出し台車70のフォーク71と、ストッカ10のフォーク路76との嵌合が外され、引き出し台車70がストッカ10から分離される。これにより、一連の配列動作が完了される。
【0109】
ストッカ10をストッカセット10xへと組み合わせるのとは逆に、オペレータや牽引用機械は、メンテナンスのために、ストッカ10をストッカセット10xから引き出す。この場合に、先ず、図10及び図11に点線で示すように、保持位置に切り替えられた引き出し台車70が、引き出されるストッカ10の下方に挿入される。この挿入に伴い、引き出し台車70のフォーク71と、ストッカ10のフォーク路76とが徐々に嵌合される。これらフォーク71とフォーク路76とが完全に嵌合されることで、引き出し台車70がストッカ10と一体化される。
【0110】
引き出し台車70とストッカ10とが一体化された状態で、脚部51が短縮されて床と離されると、走行ローラ74及び保持ローラ75が床と接触される。また、位置決め部52が係合部55に接触しない高さまで上昇され、係合部55との係合が外されると、引き出し台車70により、ストッカ10が引き出し可能になる。
【0111】
この後、オペレータや牽引用機械により、引き出し台車70が引き出し方向へ移動されることで、ストッカ10がストッカセット10xから引き出される。これにより、一連の引き出し動作が完了される。
【0112】
このように、本実施形態の位置決め手段及び走行手段によれば、走行手段により、複数のストッカ10を組み合わせてなるストッカセット10xの中から、個々の薄型のストッカ10が他から独立して引き出されたり、位置決め手段により、引き出されたストッカ10がストッカセット10xへ再び正確に配列される。従って、メンテナンス用スペースを有効活用すると共に、個々のストッカ10毎でのメンテナンスも容易となる。また、保管庫内搬送及び出入庫時に、レール1に対して或いは相互間でストッカ10が位置ずれするのを防止したり、メンテナンス等で引き出された個々のストッカ10を再度正確に位置決めすることができる。
【0113】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う保管庫、特にこのような保管庫を複数組み合わせてなる保管庫セット、及びこのような保管庫セットを具備してなる保管庫付き搬送システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。例えば上述した実施形態において、移載時に、FOUPを底側から支持するような構成を例にとって説明したが、当該保管庫に対して、FOUPの頂部に設けられたフランジを支持又は保持するような構成を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】第1実施形態に係る保管庫を備える搬送システムの外観を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る保管庫の内部構造を示す断面図である。
【図3】第1実施形態に係る第1及び第2載置面の係合状態を示す断面図である。
【図4】実施形態に係る載置部の水平一方向への動作状態を示す平面図である。
【図5】第1実施形態に係る保管庫の実用上の配置状態を示す平面図である。
【図6】第2実施形態に係る保管庫セットを備える搬送システムの外観を示す斜視図である。
【図7】第1実施形態に係る保管庫を下方から視た底面図である。
【図8】第1実施形態に係る保管庫の位置決め手段を示す断面図である。
【図9】第1実施形態に係る保管庫の位置決め手段の他の例を示す断面図である。
【図10】第1実施形態に係る保管庫の走行手段を上方から視た平面図である。
【図11】第1実施形態に係る保管庫の走行手段を側方から視た側面図である。
【図12】第1実施形態に係る保管庫の走行手段の他の例を側方から視た側面図である。
【符号の説明】
【0115】
1…レール、2…搬送車(天井走行車)、3…FOUP(荷)、10…ストッカ(保管庫)、10x…ストッカセット(保管庫セット)、11…載置部、13…水平駆動部、14…鉛直駆動部、15…棚、52…位置決め部、55…係合部、70…引き出し台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道上で荷を搬送する搬送車との間で前記荷の出入庫が夫々行われる保管庫であって、
前記荷を水平一方向に往復移動可能であると共に鉛直方向に往復移動可能な駆動手段と、
該駆動手段により移動される荷を収容又は載置可能な棚部分を、前記鉛直方向に複数段に渡って段毎に前記水平一方向に一又は複数有する棚と、
前記軌道に対する位置決めを行う位置決め手段と
を備えることを特徴とする保管庫。
【請求項2】
前記保管庫は、前記位置決め手段により位置決めされた状態から前記水平一方向への移動を可能ならしめる走行手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の保管庫。
【請求項3】
前記軌道が敷設される場所の床に、凹凸が形成されており、
前記位置決め手段は、前記凹凸に係合可能な凹凸を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の保管庫。
【請求項4】
軌道上で荷を搬送する搬送車との間で前記荷の出入庫が夫々行われる複数の保管庫が組み合わされてなる保管庫セットであって前記複数の保管庫は夫々、
前記荷を水平一方向に往復移動可能であると共に鉛直方向に往復移動可能な駆動手段と、
該駆動手段により移動される荷を収容又は載置可能な棚部分を、前記鉛直方向に複数段に渡って段毎に前記水平一方向に一又は複数有する棚と、
前記軌道に対する位置決めを行う位置決め手段と
を備え、
前記複数の保管庫は夫々、前記位置決め手段により位置決めされることで前記水平一方向が揃うように相互に隣接して配列された状態をとり、該状態で相互から独立しての前記水平一方向への移動を相互に妨げない外形を有する
ことを特徴とする保管庫セット。
【請求項5】
前記複数の保管庫は夫々、相互から独立して、前記水平一方向への移動を可能ならしめる走行手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の保管庫セット。
【請求項6】
前記軌道が敷設される場所の床に、凹凸が形成されており、
前記位置決め手段は、前記凹凸に係合可能な凹凸を有する
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の保管庫セット。
【請求項7】
当該保管庫セットは、前記棚が前記軌道の下方に位置するように且つ前記出入庫用のポートが一列に並ぶように配列されると共に、該一列が前記軌道に沿って並ぶように前記軌道に対して配置される
ことを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の保管庫セット。
【請求項8】
当該保管庫セットは、前記軌道の方位に対して前記水平一方向の方位が直交するように、前記軌道に対して配置される
ことを特徴とする請求項4から7のいずれか一項に記載の保管庫セット。
【請求項9】
前記駆動手段は、
前記荷をその底側から支持可能な第1載置面を有する載置部と、
前記載置部を水平一方向に往復移動可能な水平駆動部と、
前記載置部を鉛直方向に往復移動可能な鉛直駆動部と
を備え、
前記棚は、前記棚部分として、前記段毎に、前記水平駆動部により到達可能な水平位置に一又は複数設けられると共に、前記第1載置面との間で前記荷を相互に移載可能に夫々構成されている第2載置面を有する
ことを特徴とする請求項4から8のいずれか一項に記載の保管庫セット。
【請求項10】
前記棚は、前記棚部分のうちの少なくとも一つが、前記出入庫用のポートとして機能することを特徴とする請求項4から9のいずれか一項に記載の保管庫セット。
【請求項11】
前記棚は、前記棚部分のうち前記棚の最上段にある少なくとも一つが、前記出入庫用のポートとして機能することを特徴とする請求項4から9のいずれか一項に記載の保管庫セット。
【請求項12】
請求項4から11のいずれか一項に記載の保管庫セットと、
前記軌道と、
前記搬送車と
を備えることを特徴とする保管庫付き搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−96609(P2009−96609A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271374(P2007−271374)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】