説明

保護テープ装着方法および保護テープ装着装置

【課題】ウエーハの表面に貼着された保護テープをウエーハの外周より大きく、かつ、ウエーハの外周縁に沿って円弧状に切断することができる保護テープ装着方法および保護テープ装着装置を提供する。
【解決手段】ウエーハのW表面に保護テープ12を貼着し、該保護テープ12をウエーハWの外周縁に沿って切断する保護テープ装着方法であって、ウエーハWの表面に保護テープ12を貼着する保護テープ貼着工程と、一側面にウエーハWの外周縁と2点で接触する2点支持スペーサー35を装着したカッター刃331を用い、保護テープ12を介して2点支持スペーサー35をウエーハWの外周縁に当てがいつつカッター刃331をウエーハWの外周縁に沿って移動させ、保護テープ12をウエーハWの外周縁より外側で切断する保護テープ切断工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハの裏面に保護テープを貼着する保護テープ装着方法および保護テープ装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
当業者には周知の如く、半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等の回路を形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することにより回路が形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。また、サファイヤ基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
電気機器の小型化、軽量化を可能にするためにウエーハは、個々のチップに分割される前にその裏面が研削され、その厚さが例えば100μm以下に形成される。ウエーハの研削は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削手段とを備えた研削装置によって実施される。このような研削装置によってウエーハの裏面を研削するに際して、チャックテーブルに保持される側のウエーハの表面に傷がつかないように、ウエーハの表面には保護テープが装着される。
【0004】
ウエーハの表面への保護テープの装着は、シート状のテープをウエーハの表面に貼着した後に、シート状のテープをウエーハの外周縁に沿ってカッターによって切断する方法がとられている。従って、切断された保護テープとウエーハの大きさは略同一となる。しかるに、保護テープとウエーハの大きさは略同一であると、ウエーハの外周縁が断面円弧状に形成されている関係上、保護テープの外周部とウエーハの外周部の間に研削屑が侵入し、保護テープが部分的に剥離してウエーハの表面を損傷させるという問題がある。
【0005】
そこで、保護テープをウエーハの径より僅かに大きく形成すると、保護テープの外周部がウエーハの外周部を覆い保護するとともに、ウエーハの外周から僅かに外側に突出する保護テープの外周部が振動することにより、保護テープとウエーハとの間に切削屑の侵入を防止できることが本発明者の実験によって判った。また、保護テープをウエーハの径より僅かに大きく形成することにより、ウエーハの搬送時にウエーハの外周縁がガイドなどに接触することを回避でき、ウエーハの損傷を防止することができる。
【0006】
一方、ウエーハの搬送時における外周縁の接触を防止するために、ウエーハの表面に保護テープを貼着した後に、保護テープをウエーハの径より僅かに大きく切断するようにしてた保護テープ装着方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特許第3325646号公報
【0007】
特許第3325646号公報に開示された保護テープ装着方法は、一側面に隙間治具を固定したカッターを用い、ウエーハに貼着された保護テープを介して隙間治具をウエーハの外周縁に当てながらカッターをウエーハの外周縁に沿って移動させることにより、保護テープをウエーハの外周縁より外側で切断する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、特許第3325646号公報に開示された保護テープ装着方法においては、ウエーハの外周縁と隙間治具との接触は点接触であるため、カッターをウエーハの外周縁に沿って移動する際に、カッターが接触部を支点として揺動する。この結果、保護テープは波状に切断され、ウエーハの外周縁に沿って円弧状に形成することができない。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハの表面に貼着された保護テープをウエーハの外周より大きく、かつ、ウエーハの外周縁に沿って円弧状に切断することができる保護テープ装着方法および保護テープ装着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、ウエーハの表面に保護テープを貼着し、該保護テープをウエーハの外周縁に沿って切断する保護テープ装着方法であって、
ウエーハの表面に保護テープを貼着する保護テープ貼着工程と、
一側面にウエーハの外周縁と2点で接触する2点支持スペーサーを装着したカッター刃を用い、保護テープを介して2点支持スペーサーをウエーハの外周縁に当てがいつつカッター刃をウエーハの外周縁に沿って移動させ、保護テープをウエーハの外周縁より外側で切断する保護テープ切断工程と、を含む、
ことを特徴とする保護テープ装着方法が提供される。
【0011】
上記保護テープ切断工程は、保護テープをウエーハの外周縁より0.5〜1.0mm外側を切断することが望ましい。
【0012】
また、本発明によれば、ウエーハの表面に保護テープを貼着し、該保護テープをウエーハの外周縁に沿って切断する保護テープ装着装置において、
ウエーハの外径より小径の保持テーブルと、
該保持テーブルに保持されたウエーハに貼着された保護テープをウエーハの外周縁に沿って切断するカッター刃を備えた切断機構と、を具備し、
該カッター刃は、ウエーハの外周縁と接触する側面にウエーハの外周縁と2点で接触する2点支持スペーサーが装着されている、
ことを特徴とする保護テープ装着装置が提供される。
【0013】
上記2点支持スペーサーは、ウエーハの外周縁に接触する円弧面を備えた第1のスペーサーと第2のスペーサーとからなっており、第1のスペーサーおよび第2のスペーサーは金属線材によって形成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、カッター刃の一側面に装着された2点支持スペーサーをウエーハの外周縁に当てがいつつカッター刃をウエーハの外周縁に沿って移動させるので、カッター刃がウエーハの外周縁に沿って安定して移動することができる。従って、保護テープをウエーハの外周より大きく、かつ、ウエーハの外周縁に沿って円弧状に切断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明による保護テープ装着方法および保護テープ装着装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1には、本発明に従って構成された保護テープ装着装置が示されている。
図1に示す保護テープ装着装置は、ウエーハWを保持するための保持テーブル2と、該保持テーブル2の上方に配設された切断機構3を具備している。保持テーブル2は、ウエーハWの径より小径に形成されており、図示しない吸引手段によってウエーハWを上面である保持面上に吸引保持するようになっている。なお、保持テーブル2は、上下方向に移動可能に構成されており、図示しない昇降手段によって図1に示すウエーハ着脱位置と図1において2点鎖線で示す保護テープ貼着位置に位置付けられる。
【0017】
切断機構3は、保持テーブル2と同一軸線上に配設された回転軸31と、該回転軸31の下端に装着されたカッター支持部材32と、該カッター支持部材32に取り付けられたカッター33を具備している。回転軸31は、図示しない回転駆動手段に連結されているとともに、図示しない昇降手段によって図において上下方向に移動可能に構成されている。カッター支持部材32の外周部の一部には、カッター取り付け用の切り欠き溝321が形成されている。
【0018】
カッター33は、カッター刃331と該カッター刃331の図1において上側半分を覆うカバー部材332とからなっており、カバー部材332がカッター支持部材32に形成された切り欠き溝321に配設され、その中間部が支持ピン34によってカッター支持部材32に揺動可能に支持されている。カッター刃331の上記ウエーハWの外周縁と接触する側面(図1において右側の面)には、図2に示すように2点支持スペーサー35が装着されている。2点支持スペーサー35は、図示の実施形態においては、断面が円形で直径が0.5〜1.0mm程度の金属線材によってU字状に形成され所定の間隔を有する第1のスペーサー351と第2のスペーサー352を備えている。このように形成された2点支持スペーサー35は、粘着テープ36、36によってカッター刃331の一側面に装着される。なお、2点支持スペーサー35を構成する第1のスペーサー351と第2のスペーサー352は、ウエーハWの外周縁と接触する側が円弧面に形成されていることが望ましい。
【0019】
図1に戻って説明を続けると、上述したようにカッター支持部材32に取り付けられたカッター33の図1において支持ピン34より下側とカッター支持部材32との間には引っ張りコイルばね36が張設されており、カッター3を支持ピン34を中心として常に図1において反時計方向に揺動すべく附勢している。また、カッター33の図1において上端部には、カッター支持部材32に配設されたエアシリンダ37のピストンロッド371が連結されている。このエアシリンダ37は、カッター3を上記引っ張りコイルばね36のばね力に抗してカッター刃33を支持ピン34を中心として図1において時計方向に揺動せしめ、図1において2点鎖線で示す切断開始位置に位置付けることができる。
【0020】
図示の実施形態における保護テープ切断装置は、上記保持テーブル2の片側(図1において左側)上方に配設された保護テープ繰り出しロール5と、保持テーブル2の他側(図1において右側)上方に配設された不要テープ巻取りロール6と、保持テーブル2の片側および他側のやや上側にそれぞれ配設された案内ロール7、8と、該案内ロール7と8との間において保持テーブル2の上側を移動可能に配設された押圧ロール9と、保護テープ繰り出しロール5と案内ロール7との間に配設された剥離紙剥離ロール10と、該剥離紙剥離ロール10によって剥離された剥離紙を巻き取る剥離紙巻取りロール11を具備している。保護テープ繰り出しロール5にはシート状の保護テープ12が巻き付けられている。なお、保護テープ12は、例えば厚さが100μmの塩化ビニールシートからなっており、その表面に粘着層が形成され剥離紙13が貼着されている。保護テープ繰り出しロール5から繰り出された保護テープ12は、案内ロール7、案内ロール8を通して不要テープ巻取りロール6に巻き取られる。また、保護テープ繰り出しロール5から繰り出された保護テープ12に貼着されている剥離紙13は、剥離紙剥離ロール10を介して剥離紙巻取りロール11に巻き取られるようになっている。
【0021】
図示の実施形態における保護テープ装着装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
ウエーハWの表面に保護テープ12を貼着し、この保護テープ12をウエーハWの外周縁に沿って切断するに際しては、図1において実線で示すウエーハ着脱位置に位置付けられた保持テーブル2の上面である保持面上にウエーハWを載置する。このとき、ウエーハWは表面を上側にして載置される。そして、図示しない吸引手段を作動して保持テーブル2上にウエーハWを吸引保持する(ウエーハ保持工程)。保持テーブル2にウエーハWを吸引保持したならば、図示しない昇降手段を作動して保持テーブル2を図3に示すように所定量上昇せしめて保護テープ貼着位置に位置付ける。次に、押圧ロール9を図3において実線で示す位置から2点鎖線で示す位置まで往復移動する。この結果、保持テーブル2に保持されたウエーハWの上側に延在する保護テープ12は、押圧ロール9によってウエーハWの表面に押圧され貼着される(保護テープ貼着工程)。
【0022】
上述したように保護テープ貼着工程を実施したならば、ウエーハWの表面に貼着された保護テープ12をウエーハWの外周縁に沿って切断する保護テープ切断工程を実施する。
保護テープ切断工程を実施するに際しては、切断機構3のエアシリンダ37を作動してカッター33を引っ張りコイルばね36のばね力に抗して図1において2点鎖線で示す切断開始位置に位置付ける。次に、図示しない昇降手段を作動して切断機構3を下降せしめ、図4で示す切断位置に位置付ける。この切断位置に位置付けられた状態においてカッター33のカッター刃331は、ウエーハWの外周縁より外側で保護テープ12を突き刺す。
【0023】
そして、エアシリンダ37の作動を解除するとともに、図示しない回転駆動機構を作動して切断機構3の回転軸31を図4において矢印で示す方向に回動する。この結果カッター刃331は、回転軸31を中心として回動しつつ、引っ張りコイルばね36のばね力によって支持ピン34を中心として図4において反時計方向に揺動せしめられる。そして、切断機構3が所定量回動したところで、カッター刃33は保護テープ12を切断しつつ図5に示すように保護テープ12を介してウエーハWの外周縁に接触する。このとき、カッター刃331の一側面に装着された2点支持スペーサー35の第1のスペーサー351と第2のスペーサー352が、図5および図6に示すように保護テープ12を介してウエーハWの外周縁に接触する。そして、切断機構3の回動によりカッター刃331が保護テープ12を介してウエーハWの外周縁に沿って矢印で示す方向に移動することにより、保護テープ12はウエーハWの外周縁より外側で切断される。従って、保護テープ12の外周部には、ウエーハWの外周縁より外側にはみ出し部121が残される。なお、このはみ出し部121は0.5〜1.0mmが望ましい。従って、保護テープ切断工程においては、保護テープ12をウエーハWの外周縁より0.5〜1.0mm外側を切断することが望ましい。
【0024】
上述した保護テープ切断工程において、カッター刃331は保護テープ12を介してウエーハWの外周縁に沿って移動するが、2点支持スペーサー35の第1のスペーサー351と第2のスペーサー352が保護テープ12を介してウエーハWの外周縁に接触しているので、2点支持された状態となる。従って、カッター刃331はウエーハWの外周縁に沿って安定して移動することができ、保護テープ12をウエーハWの外周より大きく、かつ、ウエーハWの外周縁に沿って円弧状に確実に切断することができる。なお、図示の実施形態においては、2点支持スペーサー35の断面が円形の金属線材によって形成されているので、第1のスペーサー351と第2のスペーサー352におけるウエーハWの外周縁と接触する部分は円弧面となるため、カッター刃331のウエーハWの外周縁に沿った移動が円滑となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によって構成された保護テープ装着装置の正面図。
【図2】図1に示す保護テープ装着装置装備されるカッター刃の一側面に2点支持スペーサーを装着した状態を示す要部拡大図。
【図3】図1に示す保護テープ装着装置によって保護テープ貼着工程を実施している状態を示す説明図。
【図4】図1に示す保護テープ装着装置によって保護テープ切断工程を実施している状態を示す説明図。
【図5】本発明による保護テープ装着方法における保護テープ切断工程を実施している状態を示す要部平面図。
【図6】本発明による保護テープ装着方法における保護テープ切断工程を実施している状態を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0026】
2:保持テーブル
3:切断機構
31:回転軸
32:カッター支持部材
33:カッター
331:カッター刃
332:カバー部材
34:支持ピン
35:2点支持スペーサー
351:第1のスペーサー
352:第2のスペーサー
36:引っ張りコイルばね
37:エアシリンダ
5:保護テープ繰り出しロール
6:不要テープ巻取りロール
7:案内ロール
8:案内ロール
9:押圧ロール
10:剥離紙剥離ロール
11:剥離紙巻取りロール
12:保護テープ
13:剥離紙
W:ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの表面に保護テープを貼着し、該保護テープをウエーハの外周縁に沿って切断する保護テープ装着方法であって、
ウエーハの表面に保護テープを貼着する保護テープ貼着工程と、
一側面にウエーハの外周縁と2点で接触する2点支持スペーサーを装着したカッター刃を用い、保護テープを介して2点支持スペーサーをウエーハの外周縁に当てがいつつカッター刃をウエーハの外周縁に沿って移動させ、保護テープをウエーハの外周縁より外側で切断する保護テープ切断工程と、を含む、
ことを特徴とする保護テープ装着方法。
【請求項2】
該保護テープ切断工程は、保護テープをウエーハの外周縁より0.5〜1.0mm外側を切断する、請求項1記載の保護テープ装着方法。
【請求項3】
ウエーハの表面に保護テープを貼着し、該保護テープをウエーハの外周縁に沿って切断する保護テープ装着装置において、
ウエーハの外径より小径の保持テーブルと、
該保持テーブルに保持されたウエーハに貼着された保護テープをウエーハの外周縁に沿って切断するカッター刃を備えた切断機構と、を具備し、
該カッター刃は、ウエーハの外周縁と接触する側面にウエーハの外周縁と2点で接触する2点支持スペーサーが装着されている、
ことを特徴とする保護テープ装着装置。
【請求項4】
該2点支持スペーサーは、ウエーハの外周縁に接触する円弧面を備えた第1のスペーサーと第2のスペーサーとからなっている、請求項3記載の保護テープ装着装置。
【請求項5】
該第1のスペーサーおよび該第2のスペーサーは、金属線材によって形成されている、請求項4記載の保護テープ装着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−5131(P2006−5131A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179444(P2004−179444)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】