説明

保護粘着フィルム、スクリーンパネル及び携帯電子端末

【課題】 ガラス板等と粘着剤層を介して積層し、厚さの薄いパネルを形成した場合にも、高い表面硬度を保持できる保護粘着フィルムを提供すること、薄さと適度な弾性と高い表面硬度とを兼ね備えたスクリーンパネルを提供する。
【解決手段】 特定の弾性率を有する基材と硬質のハードコート層を特定厚さで組み合わせた硬質のハードコートフィルムに、特定厚さの粘着剤層を設けた保護粘着フィルムにより、粘着剤層を介して貼付対象に貼り付けられた状態であっても、保護粘着フィルム表面に衝撃等により局所的に圧力が加わった際に、薄い厚さであっても粘着剤層の存在に起因するフィルムの凹みを適切に緩和させて、粘着剤層がない場合におけるハードコートフィルムの特性を良好に発現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルやELディスプレイ等の表示装置の表面に設けられるスクリーンパネルを保護する保護粘着フィルム、保護粘着フィルムを有するスクリーンパネル及び当該スクリーンパネルを有する携帯電子端末に関する。
【背景技術】
【0002】
小型短小化が進む携帯電子端末の要請に伴い、画像表示装置(以下表示装置)の薄型化が進められている。液晶等の表示装置の破損を防止するため、保護用のスクリーンパネル(以下パネル)が設けられている。薄型化のためには、パネルの薄型化と、表示装置とパネルの間隙縮小が有効である。
【0003】
しかし、従来のアクリルやポリカーボネート等の樹脂製パネルでは、剛性が不足するため、パネル部分を指で押すと表示装置が変形し表示不良を起こしたり、湿熱条件等での長期耐久性試験時にパネルが画像表示パネルに部分的に貼り付くといった問題が発生する。
【0004】
そこで、従来の樹脂製のスクリーンパネルに代わる、高剛性のスクリーンパネルが求められており、例えば、ガラス板製のパネルが採用され始めている。しかし、ガラス製パネルは割れた場合の安全対策が必要となる。そのため、パネルの表面に、飛散防止機能を備えた保護粘着フィルムの貼付が検討されている。保護粘着フィルムとしては、液晶表示体における偏光板用、あるいは各種ディスプレイ保護用のハードコートフィルムが特許文献1に開示されている。開示のハードフィルムは、ベースフィルムに188μmPETフィルムを使用し表面鉛筆硬度4Hを発揮しているが、フィルム厚みが厚く、薄型化の目的に適さない。また、同一ハードコート剤を薄手のベースフィルムに設けると、粘着剤層を有さない構成であれば、3H等の高い表面鉛筆硬度を有するが、パネルに積層する際に粘着剤層を介すると、粘着剤層が変形しパネルとしての表面鉛筆硬度が大きく低下する問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−320522
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ガラス板等と粘着剤層を介して積層し、厚さの薄いパネルを形成した場合にも、高い表面硬度を保持できる保護粘着フィルムを提供すること、薄さと適度な弾性と高い表面硬度とを兼ね備えたスクリーンパネルを提供すること、および、パネル表面に傷つきが生じにくい携帯電子端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、特定の弾性率を有する基材と硬質のハードコート層を特定厚さで組み合わせた硬質のハードコートフィルムに、特定厚さの粘着剤層を設けた保護粘着フィルムにより、粘着剤層を介して貼付対象に貼り付けられた状態であっても、保護粘着フィルム表面に衝撃等により局所的に圧力が加わった際に、薄い厚さであっても粘着剤層の存在に起因するフィルムの凹みを適切に緩和させて、粘着剤層がない場合におけるハードコートフィルムの特性を良好に発現できる。
【0008】
すなわち本発明は、ハードコート層を有するフィルム基材からなるハードコートフィルムに粘着剤層が設けられた保護粘着フィルムであって、前記フィルム基材の弾性率が3〜7GPa、厚さが38〜100μmであり、前記ハードコート層の厚さが5〜25μmであり、前記ハードコートフィルムのハードコート層表面の鉛筆硬度が3H以上であり、前記粘着剤層の厚さが5〜20μmであり、総厚さが60〜150μmであることを特徴とする保護粘着フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保護粘着フィルムは、例えば、携帯電子端末の薄型ガラス製パネルの保護用に使用した場合、高い表面鉛筆硬度を有しているので、好適に用いることができる。あるいは各種ディスプレイの保護用として、好適に用いることができる。
【0010】
また、貼付対象がガラス等の割れを生じるものである場合には、貼付対象が割れた際に飛散を防止する飛散防止フィルムとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[フィルム基材]
本発明においては、弾性率が3〜7GPa、厚さが38〜100μmのフィルム基材を使用する。表示体表面等を保護する保護粘着フィルムとしては、外観上の問題や、エッジ部の引っかかりによる剥がれの問題から、少なくとも150μm以下の厚さとすることが望まれる。このため、基材フィルムが薄い基材であることが必要であり、他の層との積層が必要となる観点から、少なくとも100μm以下とする必要がある。この場合、弾性率が3GPa未満であると、保護粘着フィルムを形成した際にフィルム基材の変形が生じやすく、また、保護粘着フィルムを形成した際に表面硬度の低下が抑制できない。また、7GPa以上であると、フィルム基材が硬くなりすぎ、保護粘着フィルムの貼り付け時に緩やかな曲面に追従できなくなる。更に、厚さが38μm未満では、上記弾性率の範囲であっても、フィルム基材の変形が生じやすくなるため粘着剤層を設けた際に表面硬度の低下を抑制できなくなる。
【0012】
本発明に用いるフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0013】
また、ハードコート層や粘着剤層との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
【0014】
その他配合材料として帯電防止剤を添加し帯電防止機能を付与することができる。ノニオン系としてポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸グリセリンエステル、アルキルポリエチレンイミン等を挙げることができる。カチオン系としてアルキルアミン塩、アルキル第4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリン誘導体等を挙げることができる。またエチレンオキサイドを骨格に持つアクリレート化合物なども使用することができる。導電性高分子としてポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン及びこれらの誘導体を使用することができる。金属酸化物としてアンチモンドープ型酸化錫(ATO)、錫ドープ型酸化インジウム(ITO)、アルミニウムドープ型酸化亜鉛、アンチモン副酸化物などを使用することができる。またその他にリチウムイオンなどの金属イオンを混合するイオン伝導型の帯電防止剤も用いることができる。
【0015】
[ハードコート層]
本発明に使用するハードコート層は、上記フィルム基材と積層した際に3H以上の硬度を有するものであればよく、各種ハードコート剤の硬化物からなるものを使用できる。
【0016】
当該ハードコート剤としては、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が好適に使用でき、なかでも、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(a1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β−不飽和化合物(a2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)と、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)とを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、得られる硬化物に反りが生じにくく、また、該組成物の硬化物をハードコート層とするハードコートフィルムに粘着剤層を設けた際にも表面硬度の低下が生じにくいため特に好適である。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」及び「(メタ)アクリル酸」についても同様である。
【0017】
側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(A1)の反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等が好ましい。また、これらの反応性官能基と反応が可能なα,β−不飽和化合物(a2)が有する官能基としては、イソシアネート基、カルボキシル基、酸ハライド基、水酸基、エポキシ基等が好ましい。なお、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(A1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β−不飽和化合物(a2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)の製造方法は、特に限定はなく、従来の公知の方法で製造することができるが、例えば、下記の製造方法(1)〜(3)が挙げられる。
【0018】
製造方法(1) 前記(メタ)アクリレート系重合体(A1)として、側鎖に反応性官能基として水酸基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体を用いて、その水酸基の一部あるいは全部に、α,β−不飽和化合物(a2)として、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸クロライド等を反応させ、(メタ)アクリロイル基を導入する方法。
【0019】
製造方法(2) 前記(メタ)アクリレート系重合体(A1)として、側鎖に反応性官能基としてカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体を用いて、そのカルボキシル基の一部あるいは全部に、α,β−不飽和化合物(a2)として、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を含有するアクリレート、又はエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートを反応させ、(メタ)アクリロイル基を導入する方法。
【0020】
製造方法(3) 前記(メタ)アクリレート系重合体(A1)として、側鎖に反応性官能基としてエポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体を用いて、そのエポキシ基の一部あるいは全部に、α,β−不飽和化合物(a2)として、(メタ)アクリル酸又はカルボキシル基とアクリロイル基とを有するアクリレートを反応させ、(メタ)アクリロイル基を導入する方法。
【0021】
上記の製造方法(3)を例に、重合体(A)の製造方法を、より具体的に説明する。製造方法(3)では、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体に、α,β−不飽和カルボン酸を反応させることにより、重合体(A)を容易に得ることができる。ここで、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体は、原料としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業株式会社製「CYCLOMER M100」、「CYCLOMER a200」)、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する(メタ)アクリレートを用いて、これらを単独重合することにより得られる。
【0022】
また、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系共重合体は、前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレートに加え、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等のカルボキシル基を有しないα,β−不飽和単量体を原料として、2種以上の単量体を共重合することにより得られる。なお、前記カルボキシル基を有しないα,β−不飽和単量体の代わりにカルボキシル基を有するα,β−不飽和単量体を用いた場合は、グリシジル(メタ)アクリレートとの共重合反応の際、架橋反応を生じ、高粘度化やゲル化を起こすため好ましくない。
【0023】
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリレート系重合体又は共重合体と反応するα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシル基とアクリロイル基とを有する化合物(例えば、大阪有機化学株式会社製「ビスコート2100」)等が挙げられる。
【0024】
上記の製造方法で得られる重合体(A)の重量平均分子量は、5,000〜80,000が好ましく、5,000〜50,000がより好ましく、8,000〜35,000がさらに好ましい。重量平均分子量が、5,000以上で硬化収縮を小さくする効果が大きく、80,000以下で硬度が十分に高いものとなる。
【0025】
また、重合体(A)の(メタ)アクリロイル基当量は、100〜300g/eqが好ましく、さらに好ましくは、200〜300g/eqである。重合体(A)の(メタ)アクリロイル基当量がこの範囲であれば、硬化収縮を小さくでき、硬度も十分に高くすることができる。
【0026】
上記の製造方法(1)〜(3)で重合体(A)を製造する際には、上記の重合体(A)の重量平均分子量や(メタ)アクリロイル基当量を満たすように、使用する単量体や重合体の種類、これらの使用量等を適宜選択すると良い。
【0027】
前記の1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレンオキシド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリエチレンオキシド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリエピクロロヒドリン変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリアクロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリス(アクリロイロオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラエチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレンオキシド変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製「カヤラッドD−310」)、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製「カヤラッドD−320」)、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製「カヤラッドDPCA−20」)、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレンオキサイド変性ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサキス(メタクリロイルオキシエチル)シクロトリフォスファゼン(例えば、共栄社化学株式会社製「PPZ」)等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0028】
また、前記多官能(メタ)アクリレート(B)のなかでも、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを用いると、該組成物の硬化物をハードコート層とするハードコートフィルムに粘着剤層を設けた際にも表面硬度の低下が生じにくいため特に好適である。
【0029】
前記重合体(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)との配合比率は、質量基準で(A):(B)=10:90〜90:10の範囲が好ましく、(A):(B)=20:80〜80:20の範囲がより好ましく、(A):(B)=30:70〜70:30の範囲がさらに好ましい。前記重合体(A)と多官能(メタ)アクリレート(B)との配合比率がこの範囲であれば、得られる硬化物に反りが生じにくく、また、該組成物の硬化物をハードコート層とするハードコートフィルムに粘着剤層を設けた際にも表面硬度の低下が生じにくいため特に好適である。
【0030】
上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、上記の重合体(A)及び多官能(メタ)アクリレート(B)の他に、ラジカル重合性単量体(C)を配合することができる。このラジカル重合性単量体(C)としては、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチレンジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に、前記ラジカル重合性単量体(C)を配合する場合は、その配合量を前記重合体(A)及び多官能(メタ)アクリレート(B)の合計100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましく、1〜10質量部がさらに好ましい。
【0032】
また、前記多官能(メタ)アクリレート(B)又はラジカル重合性単量体(C)として、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸基を有する単量体、アミノ基を有する単量体、アルコキシシリル基、アルコキシチタニル基を有する単量体を用いると、基材との密着性を高めることができるので好ましい。一方、フルオロカーボン鎖、ジメチルシロキサン鎖、炭素原子数12以上のハイドロカーボン鎖を有する単量体は、保護層の表面滑り性、耐汚染性、耐指紋付着性等の表面性を高めることができるので好ましい。フルオロカーボン鎖、ジメチルシロキサン鎖、炭素原子数12以上のハイドロカーボン鎖を有する単量体の添加量は0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0033】
フルオロカーボン鎖を有する単量体は、耐汚染性や耐指紋付着性等の表面性に優れるが、なかでも、下記一般式(1)
【0034】
【化1】

〔式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xはヘテロ原子を有していても良いアルキレン鎖、又は下記一般式(2)
【0035】
【化2】

{式(2)中、Yは酸素原子又は硫黄原子であり、mとnは同一でも異なっていても良い1〜4の整数であり、Rfはフッ素化アルキル基である。}
で表される連結基であり、Rfはフッ素化アルキル基である。〕
で表される末端にフッ素化アルキル基を有する官能基と、2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有するフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートが、表面性の向上に加え、表面硬度の向上にも寄与するため、特に好ましく使用できる。
【0036】
前記一般式(1)で表される構造は、エステル結合中のカルボニル炭素とフッ素化アルキル基との間にアルキレン鎖等が介在するため、加水分解による劣化の問題が少なく、硬化物の性能の長期安定性に優れるものである。また、該構造中のフッ素化アルキル基は分子の末端に存在することにより、架橋した際の網目の一部として取り込まれることが無い。更に表面張力低下能に大きく寄与する−CF基を有する。このため、例えば、コーティング材料として用いた際にはその表面にフッ素原子を効果的に配置することができ、フッ素原子由来の表面特性を効率よく発現することが可能となる。
【0037】
更に本発明で用いるフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートは2個以上の(メタ)アクリロイル基を有することを必須とする。これは、硬化反応時の架橋点を1分子中に2個以上有することであり、強固な三次元網目構造を形成するために必要とするものである。
【0038】
更に1分子中のフッ素原子含有率が25重量%以上であることを必須とするが、これはフッ素原子由来の表面特性と光学特性を発現させるために必要とするものである。フッ素原子含有率が25重量%未満のものを使用した場合には、十分な表面特性・光学特性を発現させるために、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートの使用量を多くしたり、その他のフッ素原子含有率が高い反応性化合物、及び/又は非反応性化合物を併用したりすることが必要となり、経済的に不利であるとともに、光学特性を発現させるためには組成物としたときの相溶性を十分に検討したうえで詳細な配合比を決定しなければならないといった問題が生じる。
【0039】
又、更に該(メタ)アクリレートの分子量としては500〜4000であることを必須とする。分子量が4000より大きくなると、架橋密度が低下し、力学特性が不足するため好ましくなく、分子量が500より小さいものは十分にフッ素原子を導入することができないため好ましくない。
【0040】
以上の条件を満たしたフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを用いることによって、フッ素原子由来の性能である硬化物の優れた表面特性、光学特性を発揮すると共に、架橋密度が高く、より剛直な三次元網目構造を形成することが出来、力学特性(機械的強度)が向上し、結果として、これらの性能を兼備する硬化物を得ることができ、更に耐加水分解性にも優れる硬化物となる。
【0041】
これらの中でも特に、前記性能に優れる点から、フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートの1分子中のフッ素原子含有率が25重量%以上であることが好ましく、フッ素原子含有率が30〜65重量%であることが特に好ましい。また、分子量が500〜4000であることが好ましく、600〜3500であることが特に好ましい。
【0042】
また、更に前記官能基と前記2個以上の(メタ)アクリロイル基が、それぞれ独立に、同一又は異なる酸素原子を有していても良い炭素原子数1〜5個のアルキレン鎖を介して、4級炭素、シアヌレート環又はホスホリル基に結合し、且つ、前記官能基が前記アルキレン鎖を介して結合している該4級炭素、シアヌレート環又はホスホリル基には前記2個以上の(メタ)アクリロイル基中の少なくとも1個が前記アルキレン鎖を介して結合している構造であることが、三次元網目構造を形成した際に、架橋点同士を連結する部分に自由度の低い4級炭素、シアヌレート環又はホスホリル基を配置でき、三次元網目構造それ自身をより剛直にして硬化物の力学特性を発現させるとともに、架橋点の近傍にフッ素化アルキル基を配置することによって、硬化物の力学特性と光学特性とを兼備させられる点から好ましい。上記の理由から、前記アルキレン鎖としては短いものであることが好ましく、特に炭素数1〜3のアルキレン鎖又は炭素数1〜3のオキシアルキレン鎖であることが好ましい。
【0043】
前記一般式(1)中のXとしては下記一般式(3)
−(CH−Z−(CH− (3)
〔式(3)中、Zは水素原子若しくは炭素数1〜24のアルキル基を有する窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又は−NR−SO−(Rは水素原子、又は炭素数1〜24のアルキル基である。)であり、pは0〜4の整数であり、qは0又は1であり、rは0〜20の整数であり、且つ1≦p+r≦20である。〕
で表されるアルキレン鎖であることが、得られる硬化物の耐加水分解性に優れる点から好ましく、特に前記一般式(1)中のXが前記一般式(3)で表されるアルキレン鎖〔但し、Zが水素原子若しくは炭素数1〜24のアルキル基を有する窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又は−NR−SO−(Rは水素原子、又は炭素数1〜24のアルキル基である。)であり、pが1であり、qが1であり、rが0〜19の整数である。〕、或いは、前記一般式(2)で表される連結基〔但し、Rfが−C2n+1(nは1〜20の整数である。)である。〕であり、且つ前記一般式(1)中のRfがRf1と同一又は異なる−C2n+1(nは1〜20の整数である。)である化合物は、後述のマイケル付加反応によって製造可能である点から工業的生産に好適であり、また、フッ素化アルキル基がパーフルオロアルキル基であることから効果的にフッ素原子由来の性能を発現できる点から好ましいものである。なお、パーフルオロアルキル基以外のフッ素化アルキル基を用いた場合は、必要に応じて配合される後述するその他の成分との相溶性が向上し、ひいては透光性等が向上する効果を有するものであり、又、硬化物の柔軟強靭性や密着性が求められる用途等に用いる際に効果を有するものであり、必要とされる性能のレベルや用途等によってフッ素化アルキル基の構造や種類を選択することが好ましい。
【0044】
更に、前記一般式(3)中のZが水素原子若しくは炭素数1〜6のアルキル基を有する窒素原子、硫黄原子、又は−NR−SO−(Rは炭素数1〜6のアルキル基である。)である、或いは前記一般式(2)中のYが硫黄原子であり、Rfの炭素数nが4、6、又は8であり、且つ前記一般式(1)中のRfの炭素数nが4、6、又は8である化合物を用いる場合には、表面特性、光学特性、力学特性が特に優れたものになるため、最も好ましいものである。また、前記一般式(1)中のRとしては、原料の工業的入手容易性、及びマイケル付加反応によって製造可能である点から、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0045】
本発明で用いるフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記一般式(I)〜(X)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
【化3】

〔式(I)〜(III)中、Rは水酸基、炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基、CH=CHCOCH−、CH=C(CH)COCH−、又は炭素数1〜3のアルキロール基であり、Rは(メタ)アクリロイル基であり、mとnは同一でも異なっていても良い1〜4の整数であり、tは4、6、又は8であり、iは1又は2であり、jは2又は3であり、且つi+j=4である。〕
【0047】
【化4】

〔式(IV)中、R、Rは式(I)〜(III)中のそれと同じであり、Rは(メタ)アクリロイル基にHS(CH2t+1又はHN(C)(CH2t+1(式中tは4、6又は8を示す。)がマイケル付加した基である。〕
【0048】
【化5】

〔式(V)中、R、Rは式(I)〜(IV)中のそれと同じであり、mは1又は2であり、nは2又は3であり、且つm+n=4である。〕
【0049】
【化6】

〔式(VI)中、R、Rは式(I)〜(IV)中のそれと同じであり、pは1〜4の
整数であり、qは2〜5の整数であり、rは0〜3の整数であり、且つp+q+r=6で
ある。〕
【0050】
【化7】

〔式(VII)〜(VIII)中、R、Rは式(I)〜(IV)中のそれと同じであり、wは1〜4の整数であり、w’は2〜5の整数であり、且つw+w’=6であり、yは1〜8の整数であり、y’は2〜9の整数であり、且つy+y’=10である。〕
【0051】
【化8】

〔式(IX)中、R、Rは式(I)〜(IV)中のそれと同じである。〕
【0052】
【化9】

〔式(X)中、R、Rは式(I)〜(IV)中のそれと同じである。〕
【0053】
前記フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートの具体例としては、下記の化合物が挙げられる。尚、下記具体例はいずれもアクリレートの場合を示したものであり、式中のアクリロイル基は何れもメタクリロイル基に変更可能である。更に、下記具体例は前記一般式(1)中のRとして水素原子のもののみを記載しており、カルボニル炭素に結合するメチレン基中の水素原子の1つは何れもメチル基に変更可能である。
【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
【化12】

【0057】
【化13】

【0058】
【化14】

【0059】
前記フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートの製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば、3個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物とフッ素化アルキル基と活性水素とを有する化合物とのマイケル付加反応によって合成する方法や、フッ素化アルキル基を有するアルキルカルボン酸と多価アルコールと(メタ)アクリル酸とを原料として用い、ハイドロキノン等の重合禁止剤を添加して、塩酸、硫酸等の酸触媒の存在下で、80〜120℃で縮合反応により生成した水分を除去しながら3〜10時間反応させる方法等が挙げられる。
【0060】
特に前者のマイケル付加反応を利用した製造方法は、付加反応であるため、反応により副生する化合物はなく、後述するように温和な条件下で進行させることが可能であると共に、分子中のフッ素原子含有率や(メタ)アクリロイル基の官能基数等を容易に調整することが可能であるため、本発明の含フッ素光硬化性組成物に用いるフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを得る方法として好ましいものである。
【0061】
また、ジメチルシロキサン鎖を有する単量体は、表面の滑り性等に優れ、当該単量体としては、例えばジメチルシロキサン骨格に、エチレン基、ポリプロピレン基等のアルキレン基などからなるスペーサーを介して、(メタ)アクリロイル基が導入されたアクリレート等を好ましく使用できる。これらアクリレートとしては、ビックケミー社製BYK−UV3500やBYK−UV3570、ダイセル・ユーシービー株式会社製Ebecryl 1360等が挙げられる。
【0062】
さらに、上記の(A)〜(C)以外の成分として、ポリイソシアネート(d1)と1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(d2)との付加反応物であるウレタンアクリレート(D)を配合してもよい。
【0063】
ポリイソシアネート(d1)としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式炭化水素に結合したイソシアネート基を2個有する化合物(以下、脂環式ジイソシアネートと略す。);トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族炭化水素に結合したイソシアネート基を2個有する化合物(以下、脂肪族ジイソシアネートと略す。)などが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0064】
また、これらのポリイソシアネート(d1)のうち、脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートが好ましく、中でも、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添メチレンビスフェニレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。とりわけ、ノルボルナンジイソシアネートが最も好ましい。
【0065】
本発明に用いる1分子中に1つの水酸基及び2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート(d2)としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多価水酸基含有化合物のポリアクリレート類が挙げられ、これらのポリアクリレート類とε―カプロラクトンとの付加物、これらのポリアクリレート類とアルキレンオキサイドとの付加物、エポキシアクリレート類などが挙げられる。これらのアクリレート(d2)は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0066】
また、これらのアクリレート(d2)のうち、1分子中に1つの水酸基及び3〜5つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリレートが好ましい。このようなアクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられ、これらは高硬度の硬化被膜が得られるので特に好ましい。
【0067】
本発明に用いるウレタンアクリレート(D)は、前記ポリイソシアネート(d1)と前記アクリレート(d2)の2成分を付加反応させることにより得られる。前記アクリレート(d2)のポリイソシアネート(d1)中のイソシアネート1当量に対する比率は、水酸基当量として、通常、0.1〜50が好ましく、0.1〜10がより好ましく、0.9〜1.2がさらに好ましい。また、前記ポリイソシアネート(d1)と前記アクリレート(d2)との反応温度は、30〜150℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。なお、反応の終点は、例えば、イソシアネート基を示す2250cm−1の赤外線吸収スペクトルの消失や、JIS K 7301−1995に記載の方法でイソシアネート基含有率を求めることで確認することができる。
【0068】
さらに、上記の付加反応では反応時間を短くする目的で、触媒を用いることができる。触媒としては、例えば、塩基性触媒(ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、アンモニア等のアミン類、トリブチルフォスフィン、トリフェニルフォシフィン等のフォスフィン類)や酸性触媒(ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリブトキシアルミニウム、テトラブトキシトリチタニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類、塩化アルミニウム等のルイス酸類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート等の錫化合物)が挙げられる。これらの中でも、酸性触媒が好ましく、さらに錫化合物が最も好ましい。触媒は、ポリイソシアネート100質量部に対し、通常、0.1〜1質量部加える。必要に応じて、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の溶剤、あるいは、イソシアネートと反応する部位を持たないラジカル重合性単量体、例えば、上記のラジカル重合性単量体類(C)で水酸基又はアミノ基を有しないものを、溶媒として用いても良い。これらの溶剤、単量体は、単独で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0069】
前記ウレタンアクリレート(D)の分子量は、500〜1,500の範囲が好ましい。分子量がこの範囲であれば、十分に高い硬度の硬化被膜が得られ、硬化収縮が小さくなるので、この硬化被膜を有するハードコートフィルムのカールも小さくすることができる。
【0070】
上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に、前記ウレタンアクリレート(D)を配合する場合は、その配合量を前記重合体(A)及び多官能(メタ)アクリレート(B)の合計100質量部に対して、1〜100質量部が好ましい。
【0071】
本発明で、ハードコート剤として上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる場合、活性エネルギー線を照射することで硬化物を得る。この活性エネルギー線には、紫外線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線がある。また、該樹脂組成物を紫外線で硬化する場合には、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中に光重合開始剤を添加する。また、必要であればさらに光増感剤を添加する。一方、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するので、特にこれらを添加する必要はない。
【0072】
紫外線で硬化する場合、有効な光重合開始剤としては、分子内開裂型光重合開始剤と水素引き抜き型光重合開始剤に大別できる。分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ−(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル、メチルフェニルグリオキシエステル、オリゴ2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等の化合物が挙げられる。
【0073】
一方、水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニル グリオキシリック アシッド メチル エステル、オシキ−フェニル−アセチック アシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチック アシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルの混合物等の化合物が挙げられる。
【0074】
また、本発明に使用する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に好適に用いられる光増感剤としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン等のアミン類、o−トリルチオ尿素等の尿素類、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物等が挙げられる。
【0075】
これらの光重合開始剤及び光増感剤の使用量は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対し、各々0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0076】
また、本発明に使用する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を配合してもよく、所望により溶剤で希釈しても良い。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤、塗面改良剤(ぬれ性、スリップ性改良剤等)、可塑剤、着色剤、無機微粒子等が挙げられる。
【0077】
無機微粒子としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の金属酸化物が挙げられる。前記無機微粒子の平均粒径は1μm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下である。
【0078】
また、ハードコート層の各種のフィルム基材等に対する密着性を確保するために、適宜粘着付与樹脂(以下TFという)を配合してもよい。
【0079】
TFには変成ロジン、重合ロジン、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂等のフェノール系、クマロンインデン系、脂肪族炭化水素系、テルペン樹脂等の芳香族石油系等の樹脂が使用できる。カルボキシル変性や水酸基変性をさせたものも使用できる。
【0080】
希釈に用いる溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルソルブアセテート等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0081】
[ハードコートフィルムの製造方法]
本発明の保護粘着フィルムは、フィルム基材上に上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布して硬化させ、ハードコート層を形成してハードコートフィルムとした後、フィルム基材のハードコート層を有する面と逆の面に粘着剤層を形成することで製造できる。
【0082】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をフィルム基材に塗布する方法としては、例えば、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。また、オフセット印刷、活版印刷等の印刷方式でも良い。これらの中でも、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、ワイヤーバーコート、フローコートは、より厚さが一定な塗膜が得られるため好ましい。
【0083】
活性エネルギー線を照射する装置として、紫外線を用いる場合には、光発生源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LED等が挙げられる。また、本発明に使用する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をフィルム基材に塗布し、硬化被膜を形成する際には、閃光的に照射するキセノン−フラッシュランプを使用すると、フィルム基材への熱の影響を小さくできるので好ましい。
【0084】
本発明に用いるハードコート層の厚さは、総厚さが150μm以下の保護粘着フィルムを形成した際にも好適にハードコート機能を発現させるために、5〜25μmの厚さで調整する。好ましくは5〜20μm、更に好ましくは5〜10μmである。5μm未満では、表面鉛筆硬度が低下し、25μmを超えるとハードコート層の硬化収縮により、粘着塗工が困難となる。
【0085】
[ハードコートフィルム]
本発明に使用するハードコートフィルムは、少なくとも上記フィルム基材とハードコート層とを有し、モバイル用途として使用されるような画像表示装置の表示部等に粘着剤層を介して積層する場合に、実質的に傷つき防止効果を発揮させる観点から、ハードコート層表面の鉛筆硬度が少なくとも3H以上のものであり、4H以上のものであることが好ましい。3H未満では、ガラス製パネルと本発明のハードコートフィルムを粘着剤層を介して積層した場合に、表面鉛筆硬度が低下する。
【0086】
また、フィルム基材表面には、ハードコート層との密着性を向上させるために、総厚さが150μmを超えない範囲で薄いプライマー層を設けてもよい。
【0087】
[粘着剤層]
本発明に用いる粘着剤層としては、厚さが5〜20μmの粘着剤層を使用する。本発明においては、粘着剤層の厚さを当該厚さとすることで、被着対象との十分な粘着力を発現できると共に、保護粘着フィルムの表面で応力集中が生じた場合にも、保護粘着フィルム全体の弾性率を高く保持できるため、粘着フィルム表面に設けられたハードコート層の硬度の低下を抑制できると考えられる。
【0088】
本発明に用いる粘着剤層に使用される粘着剤には、公知のアクリル系、ゴム系、シリコーン系の粘着樹脂を使用することができる。そのなかでも、反復単位として炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸エステルに由来する反復単位を含有するアクリル系共重合体が、耐光性・耐熱性の点から好ましい。例えば、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルアクリレート等に由来する反復単位を含むアクリル系共重合体があげられる。
【0089】
さらに反復単位として、側鎖に水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの極性基を有するアクリル酸エステルやその他のビニル系単量体に由来する反復単位を0.01〜15質量%の範囲で含有するのが好ましい。アクリル系共重合体は、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、紫外線照射法、電子線照射法によって共重合させることにより得ることができる。アクリル系共重合体の平均分子量は、40万〜140万が好ましく、更に好ましくは、60万〜120万である。
【0090】
さらに粘着剤の凝集力をあげるために、架橋剤を添加するのが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤の添加量としては、粘着剤層のゲル分率25〜80%になるよう調整するのが好ましい。さらに好ましいゲル分率は、40〜75%である。そのなかでも50〜70%が最も好ましい。ゲル分率が25%未満であると、保護粘着フィルムをパネルに貼付したときの表面鉛筆硬度が低下する。一方、ゲル分率が80%を越えると接着性が低下する。ゲル分率は、養生後の粘着剤層をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対する百分率で表す。
【0091】
さらに粘着剤層の粘着力を向上させるため、粘着付与樹脂を添加しても良い。本発明の粘着テープの粘着剤層に添加する粘着付与樹脂は、ロジンやロジンのエステル化物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体やα−ピネン−フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)や芳香族系(C9)等の石油樹脂;その他、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。100℃14日放置後の粘着剤層のb*値を6以下にするためには、不飽和二重結合が少ない、水添ロジンや不均化ロジンのエステル化物や、脂肪族や芳香族系石油樹等を粘着剤層に添加することが好ましい。
【0092】
接着性と耐黄変性を両立させるには、高不均化ロジンエステルと重合ロジンエステルと石油樹脂を併用するのが好ましい。
【0093】
粘着付与樹脂の添加量としては、粘着剤樹脂がアクリル系共重合体である場合は、アクリル系共重合体100質量部に対して10〜60質量部を添加するのが好ましい。接着性を重視する場合は、20〜50質量部を添加するのが最も好ましい。また、粘着剤樹脂がゴム系の樹脂である場合は、ゴム系の樹脂100質量部に対して、粘着付与樹脂を80〜150質量部添加するのが好ましい。なお、一般的に粘着剤樹脂がシリコーン系樹脂である場合は、粘着付与樹脂を添加しない。
【0094】
粘着剤には、上記以外に公知慣用の添加剤を添加することができる。例えば、ガラスへの接着性を向上するために、0.001〜0.005の範囲でシランカップリング剤を添加することができる。その他、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、難燃剤等が添加できる。
【0095】
粘着剤層は、粘着シートの塗布に一般的に使用されている方法でフィルム基材上に形成することができる。粘着剤層の組成物を基材フィルムに直接塗布し、乾燥するか、或いは、いったんセパレータ(剥離シート)上に塗布し、乾燥後、基材フィルムに貼り合わせる。
【0096】
粘着剤層の貯蔵弾性率(20℃)は、1.0×10Pa以上が好ましく、さらに好ましくは、2.5×10Pa以上である。1.0×10Pa未満では、粘着剤が軟らかいため、保護フィルムの表面硬度が著しく低下する。
【0097】
[保護粘着フィルム]
本発明の保護粘着フィルムの構成は、上記ハードコートフィルムに粘着剤層が設けられた保護粘着フィルムであり、その総厚さが60〜150μm、好ましくは80〜120μmの保護フィルムである。
【0098】
本願発明の保護フィルムは、構成部材の物性値を特定範囲に調整して組み合わせた構成とすることにより、150μm以下という極めて薄いフィルムでありながら、傷つきや応力集中時の変形を防止するという相反する特性を両立できる。これにより、硬度や剛性の極めて高い特別なハードコート層やフィルム基材を設けなくとも、従来の保護フィルムでは得られなかった優れた表面硬度を実現したものである。更に、本発明の保護フィルムは、硬度や剛性の極めて高いハードコート層やフィルム基材を使用しなくとも良いため、貼付対象に貼り付けた場合であっても反発による剥がれが生じにくい。
【0099】
本発明の保護粘着フィルムは、粘着剤層を介して貼付対象に貼り付けた場合であっても高い表面硬度を実現でき、ガラス板と貼り付けた状態で好ましくは2H以上、より好ましくは3H以上の硬度を実現できる。携帯電子端末の薄型ガラス製パネルの保護フィルムや、各種ディスプレイの保護フィルムとして、好適に用いることができる。また、貼付対象がガラス等の割れを生じるものである場合には、貼付対象が割れた際に飛散を防止する飛散防止フィルムとして有用である。
【0100】
[スクリーンパネル]
本発明のスクリーンパネルは、ガラス板と本発明の保護粘着フィルムとの積層体からなるものである。当該スクリーンパネルは表層に傷が付きにくいため各種ディスプレイの画像表示部に有用に使用でき、なかでも、ガラス板と貼り付けた状態で3H以上の表面硬度を有する保護粘着フィルムとガラス板との積層体であるスクリーンパネルは、ガラス板の傷つきが特に低減されるため、当該スクリーンパネルを画像表示部表面に有する各種ディスプレイ用途として極めて有用である。
【0101】
ガラス板は、強化ガラス板であることが好ましい。ガラス板を強化する方法としては、物理的強化法と化学的強化法が挙げられる。特に、化学的強化法はイオン交換法と風冷強化法がある。該ガラス板の材質は、フロートガラス、アルカリガラス、無アルカリガラス、強化ガラスが挙げられる。
[携帯電子端末]
本発明の携帯電子端末は、LCDモジュールを有する筐体に、本発明の保護フィルムの積層体であるスクリーンパネルが、LCDモジュール表面と間隙を隔てて固定された構成のものである(図1)。当該構成においては、スクリーンパネル下部に空隙部を有するために、画像表示部表面のスクリーンパネルは、その表面に衝撃等が加わった際に湾曲する場合がある。湾曲が生じると、その凹部に応力が集中して傷がつきやすくなるが、このような場合であっても本願発明の保護粘着フィルムによれば好適に傷付を防止できる。このため、本願発明の保護粘着フィルムおよびスクリーンパネルは、当該構成の携帯電子端末に特に好適に使用できる。
【実施例】
【0102】
以下に実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0103】
(合成例1)
<重合体(A1)の合成>
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という。)250質量部、ラウリルメルカプタン1.6質量部、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。)1000質量部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」という。)7.5質量部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、1時間かけて90℃に昇温し、90℃で1時間反応させた。次いで、90℃で攪拌しながら、GMA750質量部、ラウリルメルカプタン4.4質量部、AIBN22.5質量部からなる混合液を2時間かけて滴下した後、100℃で3時間反応させた。その後、AIBN10質量部を仕込み、さらに100℃で1時間反応させた後、120℃付近に昇温し、2時間反応させた。60℃まで冷却し、窒素導入管を、空気導入管に付け替え、アクリル酸(以下、「AA」という。)507質量部、p−メトキシフェノール2質量部、トリフェニルホスフィン5.4質量部を加えて混合した後、空気で反応液をバブリングしながら、110℃まで昇温し、8時間反応させた。その後、p−メトキシフェノール1.4質量部を加え、室温まで冷却後、不揮発分が50質量%になるように、MIBKを加え、重合体(A1)(不揮発分50質量%のMIBK溶液)を得た。なお、得られた重合体(A1)の重量平均分子量は11,000(GPCによるポリスチレン換算による)で、(メタ)アクリロイル基当量は300g/eqであった。
【0104】
(合成例2)
<重合体(A2)の合成>
攪拌機、ガス導入管、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、GMA200質量部、n−ブチルメタクリレート(以下、「nBMA」という。)50質量部、ラウリルメルカプタン1.8質量部、「MIBK」1000質量部及びAIBN7.5質量部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、1時間かけて90℃に昇温し、90℃で1時間反応させた。次いで、90℃で攪拌しながら、GMA600質量部、nBMA150質量部、ラウリルメルカプタン4.8質量部、AIBN22.5質量部からなる混合液を2時間かけて滴下した後、100℃で3時間反応させた。その後、AIBN10質量部を仕込み、さらに100℃で1時間反応させた後、120℃付近に昇温し、2時間反応させた。60℃まで冷却し、窒素導入管を、空気導入管に付け替え、AA406質量部、p−メトキシフェノール2質量部、トリフェニルホスフィン5.4質量部を加えて混合した後、空気で反応液をバブリングしながら、110℃まで昇温し、8時間反応させた。その後、p−メトキシフェノール1.4質量部を加え、室温まで冷却後、不揮発分が50質量%になるように、MIBKを加え、重合体(A2)(不揮発分50質量%のMIBK溶液)を得た。なお、得られた重合体(A2)の重量平均分子量は8,800(GPCによるポリスチレン換算による)で、(メタ)アクリロイル基当量は240g/eqであった。
【0105】
(合成例3)
<フッ素化アルキル基含有アクリレートの合成(平均付加官能基数2)>
200ml反応フラスコにジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(大日本インキ化学工業株式会社製LUMICURE DPA−600)28.9g(0.05モル)、トリエチルアミン1.0g、メチルイソブチルケトン(MIBK)20g混合溶液に、室温で撹拌下、パーフルオロオクチルエチルメルカプタン48.2g(0.1モル)を滴下した。滴下終了後、さらに50℃で3時間撹拌し、エバポレーター(バス温50℃以下)で減圧下、MIBK、トリエチルアミンを留去することで前記構造式(xxi)で示されるフッ素化アルキル基含有アクリレートを含有し、アクリロイル基とパーフルオロオクチルエチルメルカプタンとの付加反応の位置が前記構造式(xxi)とは異なる化合物を更に含む混合物からなる生成物(A3)76.8gを得た。生成物の1H−NMRスペクトルのピーク及び積分値は、合成を支持するものであった。
1H−NMR:
δ
2.20−2.90(m,16H),
3.30−3.50(m,4H),
4.10−4.40(m,12H),
5.84(d,J=10.2Hz,4H),
6.10(dd,J=10.2,17.2Hz,4H),
6.42(d,J=17.2Hz,4H)
【0106】
(ハードコート剤(1)の調製)
合成例1において合成した重合体(A1)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)100質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、「PETA」という。)50質量部、シリコンヘキサアクリレート(ダイセル・ユーシービー株式会社製「Ebecryl 1360」;以下、「SiA」という。)1質量部、及び光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;以下、「HCPK」という。)4質量部を均一に混合した後、不揮発分が40質量%となるように酢酸エチルで希釈して、ハードコート剤(1)を得た。
【0107】
(ハードコート剤(2)の調製)
合成例2において合成した重合体(A2)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)100質量部、PETA50質量部、SiA1質量部、及びHCPK4質量部を均一に混合した後、不揮発分が40質量%となるように酢酸エチルで希釈して、ハードコート剤(2)を得た。
【0108】
(ハードコート剤(3)の調製)
合成例1において合成した重合体(A1)のMIBK溶液(不揮発分50質量%)100質量部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(以下、「PETA」という。)50質量部、上記で合成したA3(合成例3)1質量部、及びHCPK4質量部を均一に混合した後、不揮発分が40質量%となるように酢酸エチルで希釈して、ハードコート剤(3)を得た。
【0109】
(ハードコートフィルム(1)の作製)
弾性率4.5GPa、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面に、上記で調製したハードコート剤(1)を塗布して60℃で90秒間乾燥後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製「F450」、ランプ:120W/cm、Hバルブ)を用いて、照射光量0.5J/cmで紫外線を照射し、厚さが8μmのハードコート層を形成した。次いで、非ハードコート処理面を、コロナ処理装置により、表面張力55ダイン/cmになるよう表面処理してハードコートフィルム(1)を得た。
【0110】
(ハードコートフィルム(2)の作製)
上記のハードコートフィルム(1)の作製で用いたハードコート剤(1)に代え、上記で調製したハードコート剤(2)を用いた以外は同様にして、ハードコートフィルム(2)を得た。
【0111】
(ハードコートフィルム(3)の作製)
弾性率4.5GPa、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面に、上記で調製したハードコート剤(1)を塗布して60℃で90秒間乾燥後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製「F450」、ランプ:120W/cm、Hバルブ)を用いて、照射光量0.5J/cmで紫外線を照射し、厚さが15μmのハードコート層を形成した。次いで、非ハードコート処理面を、コロナ処理装置により、表面張力55ダイン/cmになるよう表面処理してハードコートフィルム(2)を得た。
【0112】
(ハードコートフィルム(4)の作製)
弾性率4.5GPa、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面に、ハードコート剤(1)を塗布して60℃で90秒間乾燥後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製「F450」、ランプ:120W/cm、Hバルブ)を用いて、照射光量0.5J/cmで紫外線を照射し、厚さが15μmのハードコート層を形成した。次いで、非ハードコート処理面を、コロナ処理装置により、表面張力55ダイン/cmになるよう表面処理してハードコートフィルム(4)を得た。
【0113】
(ハードコートフィルム(5)の作製)
弾性率4.5GPa、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面に、ハードコート剤(1)を塗布して60℃で90秒間乾燥後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製「F450」、ランプ:120W/cm、Hバルブ)を用いて、照射光量0.5J/cmで紫外線を照射し、厚さが3μmのハードコート層を形成した。次いで、非ハードコート処理面を、コロナ処理装置により、表面張力55ダイン/cmになるよう表面処理してハードコートフィルム(5)を得た。
【0114】
(ハードコートフィルム(6)の作製)
弾性率4.5GPa、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面に、厚さが2μmのハードコート層を有する東レフィルム加工株式会社製ハードコートフィルム(表面鉛筆硬度3H)の非ハードコート処理面を、コロナ処理装置により、表面張力55ダイン/cmになるよう表面処理してハードコートフィルム(6)を得た。
【0115】
(ハードコートフィルム(7)の作製)
弾性率4.5GPa、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面に、上記で調製したハードコート剤(3)を塗布して60℃で90秒間乾燥後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製「F450」、ランプ:120W/cm、Hバルブ)を用いて、照射光量0.5J/cmで紫外線を照射し、厚さが15μmのハードコート層を形成した。次いで、非ハードコート処理面を、コロナ処理装置により、表面張力55ダイン/cmになるよう表面処理してハードコートフィルム(7)を得た。
【0116】
(ハードコートフィルムの表面鉛筆硬度の測定)
上記で得られたハードコートフィルム(1)〜(7)の表面鉛筆硬度を、JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づき、株式会社井元製作所製の塗膜用鉛筆引掻き試験機(手動式)を用いて測定した。なお、測定した表面鉛筆硬度は表1に示す。
【0117】
(粘着剤層(1)の作製)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面にシリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーに、大日本インキ化学社製粘着剤SPS1030Bを塗工して90℃で90秒間乾燥し乾燥後の厚さが10μmの粘着剤層(1)を形成した。
【0118】
(粘着剤層(2)の作製)
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面にシリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーに、大日本インキ化学社製粘着剤SPS1030Bを塗工して90℃で90秒間乾燥し乾燥後の厚さが30μmの粘着剤層(2)を形成した。
【0119】
(実施例1)
ハードコートフィルム(1)のコロナ処理面に、粘着剤層(1)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ後、40℃で2日間養生後、厚さ93μmの保護粘着フィルムを得た。
【0120】
(実施例2)
ハードコートフィルム(2)のコロナ処理面に、粘着剤層(1)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ後、40℃で2日間養生後、厚さ93μmの保護粘着フィルムを得た。
【0121】
(実施例3)
ハードコートフィルム(3)のコロナ処理面に、粘着剤層(1)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ後、40℃で2日間養生後、厚さ100μmの保護粘着フィルムを得た。
【0122】
(実施例4)
ハードコートフィルム(4)のコロナ処理面に、粘着剤層(1)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ後、40℃で2日間養生後、厚さ75μmの保護粘着フィルムを得た。
(実施例5)
ハードコートフィルム(7)のコロナ処理面に、粘着剤層(1)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ後、40℃で2日間養生後、厚さ125μmの保護粘着フィルムを得た。
【0123】
(比較例1)
ハードコートフィルム(5)のコロナ処理面に、粘着剤層(1)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ、40℃で2日間養生後、厚さ88μmの保護粘着フィルムを得た。
【0124】
(比較例2)
ハードコートフィルム(1)のコロナ処理面に、粘着剤層(2)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ、40℃で2日間養生後、厚さ113μmの保護粘着フィルムを得た。
【0125】
(比較例3)
ハードコートフィルム(6)のコロナ処理面に、粘着剤層(1)を4kg/cmの加圧で貼り合わせ、40℃で2日間養生後、厚さ63μmの保護粘着フィルムを得た。
【0126】
(保護粘着フィルムの表面鉛筆硬度の測定)
上記の実施例及び比較例で得られた保護粘着フィルムをガラス板に貼り付け、その表面鉛筆硬度を、JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づき、株式会社井元製作所製の塗膜用鉛筆引掻き試験機(手動式)を用いて測定した。
【0127】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の携帯電子端末の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0129】
1:保護粘着フィルム
2:ガラス板
3:筐体
4:LCDモジュール
5:空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードコート層を有するフィルム基材からなるハードコートフィルムに粘着剤層が設けられた保護粘着フィルムであって、
前記フィルム基材の弾性率が3〜7GPa、厚さが38〜100μmであり、
前記ハードコート層の厚さが5〜25μmであり、
前記ハードコートフィルムのハードコート層表面の鉛筆硬度が3H以上であり、
前記粘着剤層の厚さが5〜20μmであり、
総厚さが60〜150μmであることを特徴とする保護粘着フィルム。
【請求項2】
前記粘着剤層の動的粘弾性スペクトルにおける20℃(1Hz)での貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上である請求項1に記載の保護粘着フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層が、側鎖に反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系重合体(a1)に前記反応性官能基と反応が可能な官能基を有するα,β−不飽和化合物(a2)を反応させた(メタ)アクリロイル基を有する重合体(A)と、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(B)とを含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる層である請求項1又は2に記載の保護粘着フィルム。
【請求項4】
前記重合体(A)が、グリシジル(メタ)アクリレート系重合体に、α,β−不飽和カルボン酸を反応させた反応生成物である請求項3に記載の保護粘着フィルム。
【請求項5】
前記重合体(A)の重量平均分子量が5,000〜80,000であり、かつ(メタ)アクリロイル基当量が100〜300g/eqである請求項3又は4に記載の保護粘着フィルム。
【請求項6】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が、下記一般式(1)
【化1】

〔式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Xはヘテロ原子を有していても良いアルキレン鎖、又は下記一般式(2)
【化2】

{式(2)中、Yは酸素原子又は硫黄原子であり、mとnは同一でも異なっていても良い1〜4の整数であり、Rfはフッ素化アルキル基である。}
で表される連結基であり、Rfはフッ素化アルキル基である。〕
で表される末端にフッ素化アルキル基を有する官能基と、2個以上の(メタ)アクリロイル基とを有するフッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートを含有する請求項3〜5のいずれかに記載の保護粘着フィルム。
【請求項7】
前記フッ素化アルキル基含有(メタ)アクリレートが、1分子中のフッ素原子含有率が25重量%以上であり、分子量が500〜4000である請求項6に記載の保護粘着フィルム。
【請求項8】
光透過率が85%以上である請求項1〜7のいずれかに記載の保護粘着フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載された保護粘着フィルムと、厚さが0.1〜1mmのガラス板との積層体からなることを特徴とするスクリーンパネル。
【請求項10】
LCDモジュールを有する筐体に、請求項9に記載のスクリーンパネルが、LCDモジュール表面と間隙を隔てて固定されていることを特徴とする携帯電子端末。

【図1】
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【公開番号】特開2008−95064(P2008−95064A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112939(P2007−112939)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】