説明

信号伝送装置

【課題】クロック信号に生じるジッタを解消した信号伝送装置を提供する。
【解決手段】信号伝送装置10は、データ信号の送信部24を備えた送信側ICチップ22と、前記データ信号の受信部52を備えた受信側ICチップ50とを有し、前記送信部24と前記受信部52とをデータ信号伝送ライン40で接続し、クロック信号を前記送信部24に出力する発振器26を前記送信側ICチップ22に接続し、前記発振器26から出力された前記クロック信号を前記受信部52に導くクロック信号伝送ライン42を設け、前記クロック信号伝送ライン42にSAWフィルタ44を設けた構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号伝送装置に係り、特にICチップ間で信号を伝送する信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送信側から受信側へデータ信号を伝送する信号伝送装置には、クロック信号に同期させてデータ信号を送信側から受信側へ伝送し、受信側でクロック信号に基づいてデータ信号の「0」,「1」の判定を行う構成のものがある。このような信号伝送装置は、受信側でクロック信号に基づいてデータ信号を読み取っているので、クロック信号にノイズが入ってジッタが発生すると、データ信号を正確に読み取れない問題があった。
【0003】
そして高速で長距離の伝送を行う光通信では、クロック信号のジッタはデータ伝送エラーを発生させるため、クロック信号のジッタが十分小さいことが望まれている。このため光ネットワーク向けの光トランシーバ用モジュールでは、クロック信号のジッタを次のようにして解消している。すなわち光トランシーバ用モジュールは、電圧制御型弾性表面波発振器(VCSO)を用いた位相同期(PLL)回路でクロック変換回路を構成して、これを内部に設けた構成とする。そして光トランシーバ用モジュールは、クロック変換回路でジッタの多い低周波クロックをジッタが低減された高周波のクロック信号に変換し、これを複数個の送信データを1つの送信データに多重化するための基準クロック信号として用いている。なおクロック変換回路は、第1のバンドパスフィルタをVCSOのPLL帰還ループ用出力端子に接続するとともに、第2のバンドパスフィルタをVCSO内の帰還バッファ用差動増幅器の出力端子に接続することで、VCSOが出力する信号におけるジッタの発生を抑制している(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2004−120352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
送信側から受信側へデータ信号を伝送する信号伝送装置には、例えばコンピュータ等の電子機器に搭載される基板に実装された複数のICチップ間でデータ信号の伝送を行うものがある。この場合、送信側ICチップと受信側ICチップが基板に実装されており、これらのICチップにデータ信号が伝送されるデータ信号伝送ラインおよびクロック信号が伝送されるクロック信号伝送ラインが接続されている。
【0005】
ところで、データ信号伝送ラインおよびクロック信号伝送ラインが引き回されている基板上には、データ信号の伝送に関与している送信側ICチップおよび受信側ICチップの他にも高速で動作しているICチップ(他のICチップ)が多数実装されている。このため他のICチップで発生するノイズがクロック信号伝送ラインを伝送しているクロック信号に入ってしまい、クロック信号にジッタを発生してしまう。
【0006】
そして近年は、データの伝送速度が速くなっているので、ICチップで処理するデータ量が増え、また送信側ICチップから受信側ICチップへ伝送するデータ量も増えている。さらにクロック信号が高速化されているので、クロックパルスの周期がますます短くなっている。このため、信号の伝送距離が長くなったり、クロック信号が高速化するにつれて、ノイズに起因するジッタの影響が増大し、データ伝送に支障を来たすようになる。すなわち少しのノイズでもデータ信号の誤判定が発生してしまう問題が顕著化していた。
【0007】
また前述したPLL回路を用いてジッタを解消する装置はとても高価である。このため複数のICチップ間でデータを送受信する信号伝送装置では、PLL回路を用いてジッタを解消する装置を用いるとコストがかかりすぎるという問題があった。
本発明は、クロック信号に生じるジッタを解消した信号伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の或る実施形態では、信号伝送装置は、クロック信号が伝送されるクロック信号伝送ラインと、前記クロック信号に同期したデータ信号が伝送されるデータ信号伝送ラインとを有する信号伝送装置であって、前記クロック信号伝送ラインに帯域フィルタを設けたことを特徴とする。クロック信号伝送ラインを伝送するクロック信号には、外部からの影響によりノイズが入る場合があるが、帯域フィルタでクロック信号のみが通過され、クロック信号からノイズが除去される。このため信号伝送装置は、ノイズが除去されたクロック信号を伝送させることができる。結果として、データ信号の誤判定を防止できる。
【0009】
また本発明の或る実施形態では、前記帯域フィルタは、SAWフィルタであることを特徴とする。この場合、高周波数のクロック信号が用いられる信号伝送装置であっても、クロック信号からノイズを除去することができる。
【0010】
また本発明の或る実施形態では、前記クロック信号は、予め定められた周波数帯域に拡散されたスペクトラム拡散クロック信号であり、前記SAWフィルタは前記周波数帯域を通過させる帯域フィルタであることを特徴とする。これにより信号伝送装置は、スペクトラム拡散クロック信号を用いることができるので、信号伝送装置が搭載される電子機器に電磁障害(EMI)が発生するのを防止できる。
【0011】
そして本発明の或る実施形態では、信号伝送装置は、クロック信号を出力する発振器と、パラレルデータをシリアルデータに変換し、該シリアルデータを前記クロック信号に同期して出力する送信部と、前記シリアルデータを受信し、前記クロック信号に基づき前記シリアルデータをパラレルデータに変換する受信部とを有する信号伝送装置であって、前記受信部へ前記クロック信号を供給するクロック信号伝送ラインに帯域フィルタを設けたことを特徴とする。クロック信号伝送ラインを伝送するクロック信号には、外部からの影響によりノイズが入る場合があるが、帯域フィルタでクロック信号のみが通過され、クロック信号からノイズが除去される。このため信号伝送装置は、ノイズが除去されたクロック信号を受信部に入力させることができる。
【0012】
また本発明の或る実施形態では、前記帯域フィルタは、SAWフィルタであることを特徴とする。SAWフィルタを用いることにより、高周波数のクロック信号であっても通過させることができる。したがって信号伝送装置のクロック信号が高周波であっても、クロック信号のノイズを除去することができ、データ信号の誤判定を防止できる。
【0013】
また本発明の或る実施形態では、前記発振器から前記受信部へ伝送される前記クロック信号は、予め定められた周波数帯域に拡散されたスペクトラム拡散クロック信号であり、前記帯域フィルタは前記周波数帯域を通過させる帯域フィルタであることを特徴とする。これにより信号伝送装置は、スペクトラム拡散クロックを用いることができるので、信号伝送装置が搭載される電子機器に電磁障害(EMI)が発生するのを防止できる。
【0014】
また本発明の或る実施形態では、信号伝送装置は、クロック信号を出力する発振器と、前記発振器に接続され、前記クロック信号に同期してデータ信号を出力する送信部を備えた送信側ICチップと、前記データ信号の受信部を備えた受信側ICチップと、前記送信部と前記受信部とを接続し、前記データ信号を伝送するデータ信号伝送ラインと、前記発振器から出力された前記クロック信号を前記受信側ICチップに伝送するクロック信号伝送ラインを設け、前記クロック信号伝送ラインにSAWフィルタを設けたことを特徴とする。
【0015】
クロック信号伝送ラインを伝送するクロック信号にノイズが入ったとしても、クロック信号の周波数に対応した帯域のみを通過させるSAWフィルタによってノイズを除去することができる。このためクロック信号には、ノイズに起因するジッタが生じることはない。そして信号伝送装置は、ジッタのないクロック信号に基づいてデータ信号を受信部で読み取っているので、正確にデータ信号の「0」,「1」を判定することができる。またクロック信号からノイズを除去するのにSAWフィルタを用いているだけなので、小型で安価なシステム構成でノイズを除去することができる。
【0016】
また本発明の或る実施形態では、信号伝送装置は、前記送信側ICチップに複数の前記送信部を設けるとともに、前記受信側ICチップに複数の前記送信部と同じ数量の前記受信部を設け、前記送信部と前記受信部とを前記データ信号伝送ラインで1対1に接続したことを特徴とする。これにより送信側ICチップから受信側ICチップに複数のデータ信号を並行して伝送することができる。
【0017】
そして本発明の或る実施形態では、前記クロック信号伝送ラインは、前記送信側ICチップと前記受信側ICチップとの間を接続し、前記送信側ICチップに供給される前記クロック信号を前記クロック信号伝送ラインに供給することを特徴とする。また本発明の或る実施形態では、前記クロック信号伝送ラインは、前記発振器と前記受信側ICチップとを接続していることを特徴とする。これらの実施形態によれば、受信側ICチップは、送信側ICチップを介してまたは直接に発振器からクロック信号を供給されることができる。
【0018】
また本発明の或る実施形態では、信号伝送装置は、前記クロック信号の周波数を高くする位相同期回路を前記送信側ICチップに設け、前記位相同期回路の出力に前記クロック信号伝送ラインを接続したことを特徴とする。これによりクロック信号を高周波化することができ、送信側ICチップから受信側ICチップにデータ信号を高速に伝送することができる。また位相同期回路を送信側ICチップに設ければよいので、受信側ICチップの回路構成を簡略化できる。
【0019】
また本発明の或る実施形態では、信号伝送装置は、前記クロック信号の周波数を高くする位相同期回路を前記送信側ICチップおよび前記受信側ICチップに設けたことを特徴としている。これによりクロック信号を高周波化することができ、送信側ICチップから受信側ICチップにデータ信号を高速に伝送することができる。
【0020】
また本発明の或る実施形態では、前記SAWフィルタは、前記受信側ICチップに近接して設けられたことを特徴としている。すなわちSAWフィルタは、クロック信号伝送ラインにおける受信側ICチップの近くに設けられているので、SAWフィルタから受信側ICチップまでの距離が送信側ICチップからSAWフィルタまでの距離に比べて極めて短くなっている。このためクロック信号伝送ラインを伝送しているクロック信号にノイズが入るのを防止できるので、ノイズに起因するジッタが生じていないクロック信号を受信側ICチップに入力させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に係る信号伝送装置の最良の実施形態について説明する。まず第1の実施形態について説明する。図1は第1の実施形態に係る信号伝送装置のブロック図である。信号伝送装置10は、データ信号を送信する送信側集積回路(IC)チップ22を有している。送信側ICチップ22にクロック信号を出力する発振器26が接続されており、送信側ICチップ22および発振器26で送信段20が構成されている。そして送信側ICチップ22は、データ信号の送信部24およびクロック信号の周波数を高くする第1位相同期(PLL)回路30を備えている。
【0022】
図2に第1PLL回路のブロック図を示す。第1PLL回路30は、入力端子31を介して発振器26と接続されるとともに、帰還ループ32に接続された位相比較器33を有している。位相比較器33は、発振器26から入力したクロック信号と帰還ループ32から入力したクロック信号に基づいて差信号電圧を出力するものである。この位相比較器33の後段は、低域通過フィルタ(LPF)34に接続されている。LPF34は、差信号電圧の高調波成分等を取り除くものである。このLPF34の後段は、電圧制御型発振器(VCO)35に接続されている。VCO35は、LPF34から入力した差信号電圧に応じた周波数のクロック信号を出力するものである。このVCO35の後段は、帰還ループ32と第1PLL回路30の出力端子36に接続されている。この帰還ループ32には、VCO35から出力されたクロック信号を、設定されている分周比で分周する分周回路37が設けられている。
【0023】
そして図1に示される送信部24は、第1PLL回路30の出力に接続されている。すなわち送信部24は、出力端子36を介してVCO35と接続されている。送信部24の出力は、データ信号伝送ライン40に接続されている。この送信部24は、データ信号と、第1PLL回路30からクロック信号を入力し、このクロック信号に同期させて、データ信号をデータ信号伝送ライン40に伝送させるものである。
【0024】
また送信側ICチップ22にクロック信号伝送ライン42が接続されており、発振器26から出力されたクロック信号を第1PLL回路30の入力段の手前で分岐させて、クロック信号をクロック信号伝送ライン42に導くようになっている。なおクロック信号伝送ライン42は、データ信号伝送ライン40に並べて設けられていればよい。すなわちクロック信号伝送ライン42とデータ信号伝送ライン40を伝送する信号の伝送距離を同じにするのが好ましい。
【0025】
そして信号伝送装置10は、受信側ICチップ50を備えている。受信側ICチップ50は、受信部52および第2PLL回路54を備えている。第2PLL回路54は、送信側ICチップ22に設けられた第1PLL回路30と同構成であり、クロック信号伝送ライン42に接続されている。すなわち第2PLL回路54を構成している位相比較器の入力は、クロック信号伝送ライン42および帰還ループに接続されている。なおクロック信号伝送ライン42には、弾性表面波(SAW)フィルタ44が設けられている。このSAWフィルタ44は、受信側ICチップ50の近くに設けられるのが好ましい。すなわちSAWフィルタ44は、クロック信号伝送ライン42が受信側ICチップ50と接続している個所の直前に設けられるのが好ましい。
【0026】
また受信部52は、第2PLL回路54の出力に接続されるとともに、データ信号伝送ライン40に接続されている。この受信部52は、第2PLL回路54から入力したクロック信号に基づいて、データ信号伝送ライン40を介して送信部24から入力されたデータ信号の「0」または「1」の判定を行うものである。すなわち受信部52は、クロック信号に基づいてデータ信号を読み取るものである。そして受信部52は、読み取ったデータ信号を出力する。
【0027】
次に、信号伝送装置10の動作について説明する。まず発振器26は、送信側ICチップ22にクロック信号を出力する。そして送信側ICチップ22に入力されたクロック信号は、第1PLL回路30およびクロック信号伝送ライン42に供給される。第1PLL回路30は、クロック信号の周波数を高くして送信部24に出力する。そして送信部24は、パラレルデータ入力ライン45から入力したパラレルデータをクロック信号に同期させてシリアルデータに変換して、データ信号伝送ライン40を介して受信側ICチップ50にシリアルデータを伝送する。
【0028】
またクロック信号伝送ライン42に供給されたクロック信号は、SAWフィルタ44に入力される。このSAWフィルタ44の中心周波数は、クロック信号の周波数とほぼ一致している。よってこのSAWフィルタ44は、クロック信号伝送ライン42を伝送している間に入ったノイズをクロック信号から除去する。すなわち、クロック信号がクロック信号伝送ライン42を伝送している間に様々な周波数のノイズがクロック信号に重畳してしまうが、中心周波数がクロック信号の周波数とほぼ一致しているSAWフィルタ44をクロック信号伝送ライン42の途中に設けることによって、クロック信号の周波数に応じた周波数の信号のノイズ成分が除去される。このノイズの除去により、クロック信号にジッタが生じるのを防いでいる。また、SAWフィルタ44の周波数通過帯域の幅は狭く、且つSAWフィルタ44は通過帯域の外では顕著に信号を減衰させる特性を持っているため、クロック信号の周波数に近い周波数を持ったノイズによるジッタの発生を抑制できる。さらに伝送距離が長くなるとクロック信号にノイズが入る可能性が高くなるが、SAWフィルタ44は受信側ICチップ50に近接して設けられているので、SAWフィルタ44の出力から受信側ICチップ50までのクロック信号伝送ライン42の距離は極めて短く、この間にノイズが入ることがない。したがって受信側ICチップ50に設けられた第2PLL回路54には、ジッタが生じていないクロック信号が入力される。
【0029】
そして第2PLL回路54は、クロック信号の周波数を高くして受信部52に出力する。受信部52は、データ信号伝送ライン40を介して入力したシリアルデータを第2PLL回路54から出力されたクロック信号に基づいてパラレルデータに変換し、パラレルデータ出力ライン46から出力する。なおデータ信号伝送ライン40とクロック信号伝送ライン42の距離を同様にして、クロック信号がデータ信号に並行して伝送されているので、これらの信号の間で位相ずれが発生していない。したがって受信部52は、クロック信号に基づいて、データ信号の「0」または「1」の判定を正確に行うことができる。そして受信部52は、判定後のデータ信号を出力する。このようにしてデータ信号が送信側ICチップ22から受信側ICチップ50に伝送される。
【0030】
このような信号伝送装置10は、クロック信号伝送ライン42にSAWフィルタ44を設けているので、クロック信号がSAWフィルタ44を通過することにより、ノイズを除去することができる。したがって信号伝送装置10は、ノイズに起因するジッタが発生していないクロック信号を得ることができる。
【0031】
また信号伝送装置10は、クロック信号が受信側ICチップ50に入力される直前にジッタフィルタとなるSAWフィルタ44を設けているので、このSAWフィルタ44でノイズが除去されたクロック信号に対して新たにノイズか入ることがなく、受信側ICチップ50にクロック信号のみを入力させることができる。すなわち信号伝送装置10は、ジッタが生じていないクロック信号を受信側ICチップ50に入力させることができる。したがって信号伝送装置10の受信部52は、ジッタが生じていないクロック信号に基づいてデータ信号を正確に読み取ることができる。
また信号伝送装置10は、ジッタフィルタとして構成が簡単なSAWフィルタ44を用いているので、小型で安価にシステムを構成することができる。
【0032】
なお上述した実施形態では、送信側ICチップ22に第1PLL回路30を設けるとともに、受信側ICチップ50に第2PLL回路54を設けて、クロック信号の周波数を高くしているが、実施形態によっては第1PLL回路30と第2PLL回路54を設けない構成にしてもよい。すなわち送信部24は、クロック信号を発振器26から直接入力する構成とし、受信部52は、クロック信号伝送ライン42からクロック信号を直接入力する構成としてもよい。
【0033】
上述した実施例の変形例を図5に示す。図5に示す信号伝送装置104は、送信側ICチップ224および発振器26を備えた送信段204と、受信用ICチップ504を有している。そして信号伝送装置104は、この送信側ICチップ224に設けられている第1PLL回路30の出力を、SAWフィルタ44が途中に設けられたクロック信号伝送ライン42に接続し、受信部52はクロック信号伝送ライン42からクロック信号を直接入力する構成としている。この構成であれば、受信側ICチップ504にPLL回路を設ける必要がなく、受信側ICチップ504の回路構成を簡略化できる。なおこの構成において、第1PLL回路30は、クロック信号を予め定めた周波数帯域に拡散する、スペクトラム拡散タイプのPLL回路としてもよい。なおスペクトラム拡散タイプのPLL回路を用いる場合は、SAWフィルタ44は拡散させた前記周波数帯域を通過させるフィルタとする。
【0034】
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態に係る信号伝送装置の変形例について説明するので、第1の実施形態に係る信号伝送装置と同様の構成部分に同番号を付し、その説明を省略または簡略する。
【0035】
図3は第2の実施形態に係る信号伝送装置のブロック図である。信号伝送装置102は、送信部24および第1PLL回路30を備えた送信側ICチップ222を有している。そして、送信側ICチップ222および発振器26で送信段202が構成されている。送信側ICチップ222には、発振器26が接続されており、この発振器26からクロック信号が入力される。また信号伝送装置102は、受信部52および第2PLL回路54を備えた受信側ICチップ50を備えている。そして送信部24と受信部52がデータ信号伝送ライン40で接続されている。また発振器26と送信側ICチップ222の接続において、発振器26から出力されたクロック信号が送信側ICチップ222に入力する前段に、クロック信号伝送ライン42が接続されている。すなわち発振器26から出力されたクロック信号は、送信側ICチップ222に入力される前段において分岐されて、クロック信号伝送ライン42と送信側ICチップ222に供給される。そしてクロック信号伝送ライン42にSAWフィルタ44が設けられている。このSAWフィルタ44は、クロック信号が受信側ICチップ50に入力される直前に設けられている。
このような信号伝送装置102であっても、第1の実施形態で説明した信号伝送装置と同じ動作を行い、同じ効果を得ることができる。
【0036】
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第1,2の実施形態に係る信号伝送装置の変形例について説明するので、第1,2の実施形態に係る信号伝送装置と同様の構成部分に同番号を付し、その説明を省略または簡略する。
【0037】
図4は第3の実施形態に係る信号伝送装置のブロック図である。信号伝送装置103は、発振器26およびこの発振器26が接続された送信側ICチップ223を備えた送信段203を有している。送信側ICチップ223は第1PLL回路30および複数の送信部24を備えており、各送信部24は第1PLL回路30に接続されている。この第1PLL回路30の入力は、発振器26に接続されている。また信号伝送装置103は、第2PLL回路54および複数の受信部52を備えた受信側ICチップ503を有しており、各受信部52は第2PLL回路54に接続されている。そして送信部24は、データ信号伝送ライン40により受信部52と1対1に接続されている。また第2PLL回路54の入力は、クロック信号伝送ライン42により送信側ICチップ223を介して発振器26に接続されている。このクロック信号伝送ライン42にSAWフィルタ44が設けられており、SAWフィルタ44は、クロック信号が受信側ICチップ503に入力される直前、且つ受信側ICチップ503に近接して設けられている。
【0038】
このような信号伝送装置103は、送信側ICチップ223から受信側ICチップ503に複数のデータ信号を伝送することができる。そして、この信号伝送装置103は、第1の実施形態で説明した信号伝送装置と同様の効果を得ることができる。
【0039】
そして図4では、第1の実施形態に係る信号伝送装置と同様に送信側ICチップ223と受信側ICチップ503にクロック信号伝送ライン42を接続し、送信側ICチップ223を介して発振器26から受信側ICチップ503にクロック信号を伝送する構成を示している。しかし本実施形態では、第2の実施形態に係る信号伝送装置と同様に発振器26と受信側ICチップ503にクロック信号伝送ライン42を接続し、発振器26から受信側ICチップ503にクロック信号を直接伝送する構成であってもよい。
【0040】
なお信号伝送装置は、第1〜3の実施形態で説明した信号伝送装置の構成に加えて、受信側ICチップに送信部を設けるとともに、送信側ICチップに受信部を設けてこれらをデータ信号伝送ラインで接続し、受信側ICチップに設けられた送信部にクロック信号を出力する発振器を接続し、このクロック信号を送信側ICチップに設けられた受信部に導くクロック信号伝送ラインを設け、このクロック信号伝送ラインにおいて送信側ICチップにクロック信号が入力される直前にSAWフィルタを設けた構成としてもよい。これにより送信側ICチップと受信側ICチップが相互にデータ信号を伝送することができる。
また第1〜3の実施形態では、クロック信号源として送信側ICチップ付近に配置する発振器26を用いて説明したが、この発振器26の代わりに他の装置から伝送されてくるクロック信号を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】第1の実施形態に係る信号伝送装置のブロック図である。
【図2】第1PLL回路のブロック図を示す。
【図3】第2の実施形態に係る信号伝送装置のブロック図である。
【図4】第3の実施形態に係る信号伝送装置のブロック図である。
【図5】信号伝送装置の変形例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0042】
10,102,103,104………信号伝送装置、22,222,223,224………送信側ICチップ、24………送信部、26………発振器、30………第1PLL回路、40………データ信号伝送ライン、42………クロック信号伝送ライン、44………SAWフィルタ、50,503,504………受信側ICチップ、52………受信部、54………第2PLL回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号が伝送されるクロック信号伝送ラインと、
前記クロック信号に同期したデータ信号が伝送されるデータ信号伝送ラインとを有する信号伝送装置であって、
前記クロック信号伝送ラインに帯域フィルタを設けたことを特徴とする信号伝送装置。
【請求項2】
前記帯域フィルタは、SAWフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記クロック信号は、予め定められた周波数帯域に拡散されたスペクトラム拡散クロック信号であり、前記SAWフィルタは前記周波数帯域を通過させる帯域フィルタであることを特徴とする請求項1または2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
クロック信号を出力する発振器と、
パラレルデータをシリアルデータに変換し、該シリアルデータを前記クロック信号に同期して出力する送信部と、
前記シリアルデータを受信し、前記クロック信号に基づき前記シリアルデータをパラレルデータに変換する受信部とを有する信号伝送装置であって、
前記受信部へ前記クロック信号を供給するクロック信号伝送ラインに帯域フィルタを設けたことを特徴とする信号伝送装置。
【請求項5】
前記帯域フィルタは、SAWフィルタであることを特徴とする請求項4に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
前記発振器から前記受信部へ伝送される前記クロック信号は、予め定められた周波数帯域に拡散されたスペクトラム拡散クロック信号であり、前記帯域フィルタは前記周波数帯域を通過させる帯域フィルタであることを特徴とする請求項4または5に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
クロック信号を出力する発振器と、
前記発振器に接続され、前記クロック信号に同期してデータ信号を出力する送信部を備えた送信側ICチップと、
前記データ信号の受信部を備えた受信側ICチップと、
前記送信部と前記受信部とを接続し、前記データ信号を伝送するデータ信号伝送ラインと、
前記発振器から出力された前記クロック信号を前記受信側ICチップに伝送するクロック信号伝送ラインを設け、
前記クロック信号伝送ラインにSAWフィルタを設けたことを特徴とする信号伝送装置。
【請求項8】
前記送信側ICチップに複数の前記送信部を設けるとともに、前記受信側ICチップに複数の前記送信部と同じ数量の前記受信部を設け、
前記送信部と前記受信部とを前記データ信号伝送ラインで1対1に接続したことを特徴とする請求項7に記載の信号伝送装置。
【請求項9】
前記クロック信号伝送ラインは、前記送信側ICチップと前記受信側ICチップとの間を接続し、
前記送信側ICチップに供給される前記クロック信号を前記クロック信号伝送ラインに供給することを特徴とする請求項7または8に記載の信号伝送装置。
【請求項10】
前記クロック信号伝送ラインは、前記発振器と前記受信側ICチップとを接続していることを特徴とする請求項7または8に記載の信号伝送装置。
【請求項11】
前記クロック信号の周波数を高くする位相同期回路を前記送信側ICチップに設け、前記位相同期回路の出力に前記クロック信号伝送ラインを接続したことを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の信号伝送装置。
【請求項12】
前記クロック信号の周波数を高くする位相同期回路を前記送信側ICチップおよび前記受信側ICチップに設けたことを特徴とする請求項7ないし10のいずれかに記載の信号伝送装置。
【請求項13】
前記SAWフィルタは、前記受信側ICチップに近接して設けられたことを特徴とする請求項7ないし12のいずれかに記載の信号伝送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−74705(P2007−74705A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213654(P2006−213654)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】