説明

信号生成装置

【課題】位相に不連続を生じさせずに信号を生成する。
【解決手段】処理部6は、一の通過帯域の周波数の第1信号S1を第1DDS32で生成し、フィルタ35を介して出力信号Soとして出力させている状態において、出力信号Soの周波数を一の通過帯域に隣接する他の通過帯域(フィルタ36の通過帯域)の他の周波数に変更する際に、第1切替部34に対する切替制御を実行して第2DDS33をフィルタ36に接続すると共に、周波数設定制御を実行することによって各DDS32,33から出力される各信号S1,S2の周波数を一の通過帯域と他の通過帯域との重複する帯域の共通周波数に設定し、次いで、第2DDS33に対する位相設定制御を実行して第2信号S2の位相をフィルタ35から出力されている第1信号S1の位相に一致させた後に、第2切替部39に対する切替制御を実行して、出力信号Soを第1信号S1から第2信号S2に切り替える 。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力信号の周波数を変更可能に構成された信号生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の信号生成装置として、下記特許文献1に開示された信号生成装置(波形生成装置)が知られている。この信号生成装置は同特許文献1の従来の技術において開示された装置であって、この信号生成装置では、まず、波形読出用クロック信号に同期して波形データメモリから波形データを読み出し、その読み出した波形データをD/A変換回路がディジタル−アナログ変換することによりアナログ信号を生成する。次いで、アナログ信号をカットオフ周波数可変型のスムージングフィルタに入力することにより、そのアナログ信号に含まれている波形読出用クロック信号成分を除去してS/N比の良いアナログ信号を生成している。
【0003】
このようなスムージングフィルタとしては、下記特許文献1に開示されているような、複数のローパスフィルタと、複数のローパスフィルタを切り替えるためのマルチプレクサなどの電子式スイッチとを備えて構成されたフィルタが一般的に使用されている。この場合、各ローパスフィルタは、複数のRC型一次ローパスフィルタの直列接続、またはLC型二次ローパスフィルタで構成されると共にカットオフ周波数が互いに異なるようにそれぞれ規定されている。したがって、この信号生成装置によれば、電子式スイッチを切替制御することにより、D/A変換回路によって生成されたアナログ信号の周波数に応じたカットオフ周波数のローパスフィルタを選択することができるため、アナログ信号に含まれている読出用クロック信号成分や不要スプリアス成分を除去して、S/N比の良いアナログ出力信号を生成することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−165199号公報(第2頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の信号生成装置には、以下の解決すべき課題が存在している。すなわち、一般的に、カットオフ周波数の異なる各フィルタでは、フィルタを信号が通過する際に生じる位相遅れが相違する。このため、この信号生成装置には、複数のフィルタのうちの使用している一のフィルタを他のフィルタに切り替える際に、図6に示すように信号の位相に不連続が発生し、この位相の不連続に起因して、信号生成装置から信号の供給を受ける負荷が例えばインダクタンス成分を有するものである場合には、瞬間的に大きな逆起電力が発生したり、また信号生成装置から信号の供給を受ける負荷が例えば容量成分を有するものである場合には、瞬間的に過大な電流が流れたりすることから、信号生成装置自体や負荷に対して悪影響を与えるおそれがあるという解決すべき課題が存在している。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、位相に不連続を生じさせずに信号を生成する信号生成装置を提供することを主目的とする。また、この信号生成装置を用いたインピーダンス測定装置を提供することを他の主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載の信号生成装置は、通過帯域同士が部分的に重複するように規定された複数のフィルタと、設定された周波数の一の信号を生成して出力すると共に当該一の信号の位相を変更可能に構成された一のDDSと、設定された周波数の他の信号を生成して出力すると共に当該他の信号の位相を変更可能に構成された他のDDSと、前記一のDDSを前記複数のフィルタのうちから選択された一のフィルタに接続すると共に、前記他のDDSを当該一のフィルタを除く他の1つのフィルタに接続する第1切替部と、前記一のフィルタから出力される前記一の信号および前記他のフィルタから出力される前記他の信号のうちの1つを選択して出力信号として出力する第2切替部と、すべての前記DDSに対して同一の周波数を同時に設定する周波数設定制御、当該各DDSに対して前記位相を設定する位相設定制御、並びに前記第1切替部および前記第2切替部に対する切替制御を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記周波数設定制御を実行することによって前記複数のフィルタの前記複数の通過帯域のうちの一の通過帯域に含まれる一の周波数の前記一の信号を前記一のDDSから出力させると共に当該一の周波数の前記他の信号を前記他のDDSから出力させ、かつ前記第1切替部および前記第2切替部に対する切替制御を実行することによって当該一の信号を前記複数のフィルタのうちの前記通過帯域が前記一の通過帯域である一のフィルタを介して前記出力信号として出力させている状態において、当該一の信号に代えて前記複数の通過帯域のうちの当該一の通過帯域と部分的に重複する他の通過帯域に含まれる他の周波数の前記他の信号を当該出力信号として出力させる際に、前記第1切替部に対する切替制御を実行して前記他のDDSを前記複数のフィルタのうちの前記通過帯域が前記他の通過帯域である他のフィルタに接続すると共に、前記周波数設定制御を実行することによって前記各DDSから出力される前記一の信号および前記他の信号の周波数を前記一の通過帯域と前記他の通過帯域との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定し、次いで、当該他のDDSに対する前記位相設定制御を実行して当該他のフィルタから出力されている前記他の信号の位相を前記一のフィルタから出力されている前記一の信号の位相に一致させた後に、前記第2切替部に対する切替制御を実行して、前記出力信号を前記一の信号から前記他の信号に切り替える。
【0008】
また、請求項2記載の信号生成装置は、通過帯域同士が部分的に重複するように規定された複数のフィルタと、前記複数のフィルタの各々に対応して配設されて、設定された周波数の信号を生成して出力すると共に当該信号の位相を変更可能に構成された複数のDDSと、前記複数のフィルタから出力される前記信号のうちの1つを選択して出力信号として出力する切替部と、すべての前記DDSに対して同一の周波数を同時に設定する周波数設定制御、当該各DDSに対して前記位相を設定する位相設定制御、並びに前記切替部に対する切替制御を実行する処理部とを備え、前記処理部は、前記周波数設定制御を実行することによって前記複数のフィルタの前記複数の通過帯域のうちの一の通過帯域に含まれる一の周波数の前記信号を前記複数のDDSから出力させると共に、前記切替制御を実行することによって前記複数のフィルタのうちの前記通過帯域が前記一の通過帯域である一のフィルタに対応して配設された前記複数のDDSのうちの一のDDSから出力されている一の前記信号を前記出力信号として出力させている状態において、当該一の信号に代えて前記複数の通過帯域のうちの当該一の通過帯域と部分的に重複する他の通過帯域に含まれている他の周波数の他の前記信号を当該出力信号として出力させる際に、前記周波数設定制御を実行することによって前記複数のDDSから出力される前記信号の周波数を前記一の通過帯域と前記他の通過帯域との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定し、次いで、前記複数のフィルタのうちの前記通過帯域が前記他の通過帯域である他のフィルタに対応して配設された前記複数のDDSのうちの他のDDSに対する前記位相設定制御を実行して当該他のフィルタから出力されている前記他の信号の位相を前記一の信号の位相に一致させた後に、前記切替部に対する切替制御を実行して、前記出力信号を前記一の信号から前記他の信号に切り替える。
【0009】
また、請求項3記載の信号生成装置は、請求項1または2記載の信号生成装置において、前記処理部は、前記他のDDSに対する前記位相設定制御を実行して前記他のフィルタから出力されている前記他の信号の位相を前記一のフィルタから出力されている前記一の信号の位相に一致させる際に、前記一のDDSと前記他のDDSの前記各位相の差が、前記共通周波数における前記一のフィルタおよび前記他のフィルタの各位相シフト量の差分と等しくなるように当該他のDDSの位相を設定する。
【0010】
また、請求項4記載の信号生成装置は、請求項1から3のいずれかに記載の信号生成装置において、前記処理部は、前記共通周波数として、前記一の通過帯域内に規定された一の使用帯域と前記他の通過帯域内に規定された他の使用帯域との重複する帯域に含まれる周波数を設定する。
【0011】
また、請求項5記載のインピーダンス測定装置は、請求項1から4のいずれかに記載の信号生成装置と、前記信号生成装置から出力される出力信号を測定対象体に印加したときに前記測定対象体に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流が流れているときに前記測定対象体の両端間に発生する電圧を検出する電圧検出部とを備え、前記処理部は、前記電流検出部によって検出された前記電流、および前記電圧検出部によって検出された前記電圧に基づいて前記測定対象体のインピーダンスを測定する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の信号生成装置および請求項2記載の信号生成装置では、一の信号に代えて複数の通過帯域のうちの一の通過帯域と部分的に重複する他の通過帯域に含まれる他の周波数の他の信号を出力信号として出力させる際に、他のDDSを通過帯域が他の通過帯域である他のフィルタに接続すると共に、周波数設定制御を実行することによって各DDSから出力される一の信号および他の信号の周波数を一の通過帯域と他の通過帯域との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定し、次いで、他のDDSに対する位相設定制御を実行して他のフィルタから出力されている他の信号の位相を一のフィルタから出力されている一の信号の位相に一致させた後に、第2切替部に対する切替制御を実行して、出力信号を一の信号から他の信号に切り替える。
【0013】
したがって、これらの信号生成装置によれば、一のフィルタから出力されている一の信号および他のフィルタから出力されている他の信号の周波数が同一であって、かつ位相が一致した状態にあるため、一の信号から他の信号に切り替える際に、出力信号に生じる位相の不連続を大幅に低減させることができる。つまり、実質的に、位相に不連続を生じさせることなく一の信号から他の信号に切り替えて、出力信号を出力させることができる。
【0014】
また、請求項3記載の信号生成装置によれば、処理部が、他のDDSに対する位相設定制御を実行して他のフィルタから出力されている他の信号の位相を一のフィルタから出力されている一の信号の位相に一致させる際に、各DDSの位相の差が、共通周波数における一のフィルタおよび他のフィルタの各位相シフト量の差分と等しくなるように他のDDSの位相を設定するため、他のフィルタから出力されている他の信号の位相を一のフィルタから出力されている一の信号の位相に確実に一致させることができる。
【0015】
また、請求項4記載の信号生成装置によれば、一の通過帯域内に規定された一の使用帯域と他の通過帯域内に規定された他の使用帯域との重複する帯域に含まれる周波数を共通周波数として設定するため、この状態において、他のDDSに対する位相設定制御を実行して、この他のDDSに接続された他のフィルタから出力されている他の信号の位相を一のフィルタから出力されている一の信号の位相に一致させた後に、切替部(第2切替部)に対する切替制御を実行して、出力信号を一の信号から他の信号に切り替えることができるため、出力信号として各フィルタから出力される信号の周波数を、各フィルタにおいて不要スプリアス成分を適切に除去し得る使用帯域内に常に維持することができる結果、出力信号に含まれる不要スプリアス成分を大幅に低減することができる。
【0016】
また、請求項5記載のインピーダンス測定装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の信号生成装置を備え、この信号生成装置からの出力信号に基づく測定用信号を測定対象体に印加する構成を採用したことにより、測定用信号の周波数の変更時に測定用信号に位相の不連続が生じないため、測定対象体がインダクタンス成分を有するものであったとしても、瞬間的に大きな逆起電力が発生することを確実に回避することができ、また測定対象体が容量成分を有するものであったとしても、瞬間的に過大な電流が流れることを確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】信号生成装置2を備えたインピーダンス測定装置1の構成を示す構成図である。
【図2】図1の各フィルタの周波数特性を示す特性図である。
【図3】周波数を上昇または低下させる際のフィルタ切替処理のフローチャートである。
【図4】フィルタ切替時における切替前後のフィルタおよびDDSの種類と、切替後のDDSに設定する位相シフト量を説明するための説明図である。
【図5】他の信号生成装置2Aの構成を示す構成図である。
【図6】従来の信号生成装置で発生する位相の不連続を説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、信号生成装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、一例として、信号生成装置をインピーダンス測定装置に適用した例を挙げて説明する。
【0019】
最初に、信号生成装置2の構成をインピーダンス測定装置1の構成と併せて、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すインピーダンス測定装置1は、信号生成装置2、増幅部3、電圧検出部4、電流検出部5、処理部6、記憶部7および出力部8を備え、信号生成装置2から出力される出力信号Soを測定用信号Smに増幅すると共にプローブ9を介して測定対象体21に印加して、このときに測定対象体21の両端間に発生する電圧Vdを一対のプローブ10,11を介して検出すると共に、測定対象体21に流れる電流Idをプローブ12を介して検出して、検出された電圧Vdおよび電流Idに基づいて、測定対象体21のインピーダンスZを測定する。
【0021】
信号生成装置2は、基準信号生成部31、第1DDS(Direct Digital Synthesizer)32、第2DDS33、第1切替部34、複数(本例では4つ)のフィルタ35,36,37,38および第2切替部39を備え、後述する複数(フィルタの個数と同数(本例では4つ))の使用帯域(使用周波数帯域)W1,W2,W3,W4内の任意の1つの周波数の出力信号Soを生成して出力し得るように構成されている。なお、処理部6は、信号生成装置2における処理部としても機能する。
【0022】
基準信号生成部31は、例えば水晶発振器(図示せず)を備え、予め決められた周波数の基準信号(クロック信号)Scを生成して、各DDS32,33に出力する。また、図示はしないが、基準信号生成部31は、後述するようにCPUを含んで構成される処理部6に対しても、作動用のクロック信号を生成して出力する。
【0023】
第1DDS32は、基準信号Scに同期して作動して、処理部6によって設定された周波数データDfaで示される周波数faの第1信号(一例として正弦波信号)S1を生成して出力する。また、第1DDS32は、位相シフトレジスタ(不図示)を備え、処理部6によってこの位相シフトレジスタに設定された位相シフト量θaだけ位相をシフトして第1信号S1を出力する。
【0024】
第2DDS33も、基準信号Scに同期して作動して、処理部6によって設定された周波数データDfbで示される周波数fbの第2信号(一例として正弦波信号)S2を生成して出力する。また、第2DDS33は、位相シフトレジスタ(不図示)を備え、処理部6によってこの位相シフトレジスタに設定された位相シフト量θbだけ位相をシフトして第2信号S2を出力する。
【0025】
第1切替部34は、処理部6によって切替制御されて、2つのDDS32,33のうちの一方を複数のフィルタ35,36,37,38のうちから選択された1つのフィルタに接続すると共に、2つのDDS32,33のうちの他方を1つのフィルタ(一方のDDSと接続されたフィルタ)を除く他のフィルタ(残りのフィルタ)のうちから選択された他の1つのフィルタに接続する機能を備えている。一例として、第1切替部34は、処理部6によって切替制御される2つの切替スイッチ34a,34bを備え、切替スイッチ34aが第1DDS32と各フィルタ35,36,37,38との間に配設され、切替スイッチ34bが第2DDS33と各フィルタ35,36,37,38との間に配設されて構成されている。
【0026】
この構成により、第1切替部34は、各切替スイッチ34a,34bが処理部6によって切替制御されることにより、第1DDS32を切替スイッチ34aを介してフィルタ35,36,37,38のうちから選択された1つのフィルタに接続することで、第1信号S1をこの選択された1つのフィルタに出力し、また第2DDS33を切替スイッチ34bを介してフィルタ35,36,37,38のうちから選択された他の1つのフィルタ(第1DDS32に接続されたフィルタ以外のフィルタ)に接続することで、第2信号S2をこの選択された他の1つのフィルタに出力する。
【0027】
フィルタ35,36,37,38は、一例として、図2の周波数特性図で示されるように、通過帯域がそれぞれ異なるローパスフィルタで構成されている。一例として、フィルタ35,36,37,38は、それぞれのカットオフ周波数fc1,fc2,fc3,fc4がfc1<fc2<fc3<fc4となるように規定されることで、フィルタ35の通過帯域よりもフィルタ36の通過帯域がより高域側に拡がり、フィルタ36の通過帯域よりもフィルタ37の通過帯域がより高域側に拡がり、フィルタ37の通過帯域よりもフィルタ38の通過帯域がより高域側に拡がるように構成されている。
【0028】
この場合、図2に示すように、各使用帯域W1,W2,W3,W4は、使用帯域W1の高域側と使用帯域W2の低域側とが部分的に重複し、使用帯域W2の高域側と使用帯域W3の低域側とが部分的に重複し、使用帯域W3の高域側と使用帯域W4の低域側とが部分的に重複するように規定されることで、隣接する帯域同士が部分的に重複するように規定されている。なお、使用帯域W1,W2,W3,W4同士が重複する周波数帯域を、以下では重複帯域ともいう。
【0029】
フィルタ35は、これらの使用帯域W1,W2,W3,W4のうちの使用帯域W1に対応して配設されている。具体的には、フィルタ35は、自らの通過帯域内における自らのカットオフ周波数fc1の近傍に使用帯域W1の上限周波数が位置するようにカットオフ周波数fc1が規定されることで、使用帯域W1に対応して配設されている。また、フィルタ36は、自らの通過帯域内における自らのカットオフ周波数fc2の近傍に使用帯域W2の上限周波数が位置するようにカットオフ周波数fc2が規定されることで、使用帯域W2に対応して配設されている。また、フィルタ37は、自らの通過帯域内における自らのカットオフ周波数fc3の近傍に使用帯域W3の上限周波数が位置するようにカットオフ周波数fc3が規定されることで、使用帯域W3に対応して配設されている。また、フィルタ38は、自らの通過帯域内における自らのカットオフ周波数fc4の近傍に使用帯域W4の上限周波数が位置するようにカットオフ周波数fc4が規定されることで、使用帯域W4に対応して配設されている。これにより、各フィルタ35,36,37,38は、それぞれの通過帯域に含まれる使用帯域の上限周波数がそれぞれのカットオフ周波数の近くになるように規定されることで、通過する各信号S1,S2に含まれている不要スプリアス成分を適切に除去し得るように構成されている。
【0030】
第2切替部39は、処理部6によって切替制御されることにより、2つのDDS32,33に接続された2つのフィルタから出力される第1信号S1および第2信号S2のいずれか一方を選択して出力信号Soとして出力する。具体的には、第2切替部39は、フィルタと同数(本例では4つ)であって、処理部6によってオン・オフ状態が制御されるスイッチ39a,39b,39c,39dを備え、スイッチ39aの一端がフィルタ35の出力端子に接続され、スイッチ39bの一端がフィルタ36の出力端子に接続され、スイッチ39cの一端がフィルタ37の出力端子に接続され、スイッチ39dの一端がフィルタ38の出力端子に接続され、かつスイッチ39a,39b,39c,39dの各他端が共通接続されて信号生成装置2における出力端子として構成されている。また、各スイッチ39a,39b,39c,39dの他端(信号生成装置2の出力端子)は、増幅部3の入力端子に接続されている。
【0031】
この構成により、第2切替部39は、各スイッチ39a,39b,39c,39dが処理部6によってオン・オフ状態が制御されることにより、各フィルタ35,36,37,38のうちの任意の1つ(具体的には、第1信号S1および第2信号S2をそれぞれ出力している2つのフィルタのうちの任意の1つ)を選択して、選択したフィルタから出力されている信号S1,S2の一方を出力信号Soとして出力する。
【0032】
増幅部3は、信号生成装置2から出力された出力信号Soを利得G(Gは適宜決定される値であり1以上でも1以下でもよい)で増幅して測定用信号Smとして出力すると共に、プローブ9を介して測定対象体21の一端に測定用信号Smを印加(供給)する。なお、利得Gが1以下でよいときには、増幅部3の配設を省略して、出力信号Soを測定用信号Smとして測定対象体21に印加することができる。電圧検出部4は、プローブ10,11を介して測定対象体21の各端部に接続される。また、電圧検出部4は、測定用信号Smの印加によって測定対象体21の両端間に発生する電圧Vdをプローブ10,11を介して検出して、電圧Vdの信号波形を示す電圧データDvを処理部6に出力する。電流検出部5は、測定対象体21の他端と基準電位(グランド)との間に配設されている。また、電流検出部5は、測定用信号Smの印加によって測定対象体21に流れる電流Idを検出して、電流Idの信号波形を示す電流データDiを処理部6に出力する。
【0033】
処理部6は、CPUを含んで構成されて、記憶部7に記憶されている動作プログラムに従って作動して、第1DDS32および第2DDS33に対して同一の周波数を同時に設定する周波数設定制御、第1DDS32および第2DDS33に対して位相シフト量θa,θbを個別に設定する位相設定制御、並びに第1切替部34および第2切替部39に対する切替制御を実行する。また、処理部6は、使用するフィルタ35,36,37,38をこの順で順次切り替えつつ、出力信号Soの周波数を上昇させるフィルタ切替処理(周波数上昇時のフィルタ切替処理)、および使用するフィルタ38,37,36,35をこの順で順次切り替えつつ、出力信号Soの周波数を低下させるフィルタ切替処理(周波数低下時のフィルタ切替処理)を実行する。また、処理部6は、電圧データDvと電流データDiとに基づいてインピーダンスZを測定する測定処理を実行する。
【0034】
記憶部7は、処理部6の動作プログラムを記憶すると共に、処理部6のワークメモリとして機能する。また、記憶部7には、正弦波信号がフィルタ35を通過する際に生じる正弦波信号の周波数と位相シフト量との関係を示す位相についての周波数特性データテーブルDtp1、正弦波信号がフィルタ36を通過する際に生じる正弦波信号の周波数と位相シフト量との関係を示す位相の周波数特性データテーブルDtp2、正弦波信号がフィルタ37を通過する際に生じる正弦波信号の周波数と位相シフト量との関係を示す位相の周波数特性データテーブルDtp3、および正弦波信号がフィルタ38を通過する際に生じる正弦波信号の周波数と位相シフト量との関係を示す位相の周波数特性データテーブルDtp4が予め記憶されている。また、記憶部7には、出力信号Soの周波数を低下させる際の共通周波数f12,f23,f34が記憶されている。
【0035】
出力部8は、一例としてLCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置で構成されて、測定したインピーダンスZを画面に表示させる。
【0036】
次いで、インピーダンス測定装置1の動作について説明する。なお、フィルタ35,36,37,38の仕様(各周波数特性および各使用帯域W1,W2,W3,W4)が決定された時点で、例えば不図示の操作部から処理部6に対して、上記の各周波数特性データテーブルDtp1,Dtp2,Dtp3,Dtp4と共に、出力信号Soの周波数を低下させる際の共通周波数、つまり、フィルタ38からフィルタ37に切り替える際の周波数f34(使用帯域W3と使用帯域W4との重複帯域内に規定された周波数)、フィルタ37からフィルタ36に切り替える際の周波数f23(使用帯域W2と使用帯域W3との重複帯域内に規定された周波数)、フィルタ36からフィルタ35に切り替える際の周波数f12(使用帯域W1と使用帯域W2との重複帯域内に規定された周波数)が入力され、処理部6がこれらの各データを記憶部7に記憶するものとする。また、各プローブ9,10は測定対象体21の一端に、各プローブ11,12は測定対象体21の他端に予め接続されているものとする。
【0037】
また、処理部6は、第1DDS32および第2DDS33に対して、第1信号S1および第2信号S2の周波数を同一に設定した状態で同時に起動し、かつ起動後における各信号S1,S2の周波数の変更に際しても、同一の周波数に同時に切り替える周波数設定制御を実行する。このため、第1DDS32および第2DDS33は、両者に対して処理部6から特段の位相設定制御が個別に実行されていない状態では、同一の周波数で、かつ各位相シフトレジスタに設定された位相シフト量θa,θbが一致した状態(本例では共にゼロの状態)で第1信号S1および第2信号S2を出力しているものとする。
【0038】
インピーダンス測定装置1の作動状態では、基準信号生成部31は基準信号Scの出力を開始している。この状態において、処理部6は、最初に、測定用信号Smの周波数をf1,f2,f3,f4というように順次上昇させつつ、各周波数f1,f2,f3,f4の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときの測定対象体21のインピーダンスZの測定を実行する。
【0039】
この測定では、処理部6は、まず、第1切替部34に対する切替制御を実行することにより、切替スイッチ34aを介してフィルタ35(この場合には、一のフィルタ)に第1DDS32(この場合には、一のDDS)を接続する。また、処理部6は、第2切替部39に対する切替制御を実行することにより(具体的には、スイッチ39aをオン状態に移行させ、他のスイッチ39b〜39dをオフ状態に移行させることにより)、第2切替部39のスイッチ39aを介してフィルタ35を増幅部3に接続する。これにより、第1DDS32から出力される第1信号S1(この場合には、一の信号)が、第1切替部34、フィルタ35および第2切替部39を介して出力信号Soとして出力可能な状態となる。
【0040】
次いで、処理部6は、第1DDS32および第2DDS33に対して、周波数f1(同一の周波数)を示す周波数データDfa,Dfbをそれぞれ出力して設定する(周波数設定制御を実行する)。また、処理部6は、第1DDS32および第2DDS33の位相シフトレジスタの値をリセットする。具体的には、処理部6は、第1DDS32および第2DDS33に対して、位相シフト量θa,θb(共にゼロ)をそれぞれ出力して設定する(位相設定制御を実行する)。引き続いて、処理部6は、第1DDS32および第2DDS33を同時に作動させる。
【0041】
これにより、第1DDS32(一のDDS)が、複数のフィルタ35〜38の複数の通過帯域(図2に示される4つの通過帯域)のうちのフィルタ35の通過帯域(一の通過帯域)に含まれる周波数f1(一の周波数)の第1信号S1(一の信号)の出力を開始し、第2DDS33(この場合、他のDDS)が、第1信号S1と同一の周波数f1(一の周波数)で、かつ同位相の第2信号S2(この場合、他の信号)の出力を開始する。また、第1切替部34および第2切替部39に対して上記のような切替制御が処理部6によってなされているため、第1DDS32から出力されている第1信号S1が、図2に示す通過帯域(この場合、一の通過帯域)に規定されたフィルタ35を介して第2切替部39から出力信号Soとして出力される(つまり、信号生成装置2から第1信号S1が出力信号Soとして出力される)。
【0042】
増幅部3は、この出力信号Soを増幅して測定用信号Smとして出力し、プローブ9を介して測定対象体21に印加する。これにより、電流Idが測定対象体21に流れて、電圧Vdが測定対象体21の両端間に発生する。電圧検出部4は電圧Vdを検出して電圧データDvを処理部6に出力し、電流検出部5は電流Idを検出して電流データDiを処理部6に出力する。
【0043】
続いて、処理部6は、インピーダンスZの測定処理を実行する。この測定処理では、処理部6は、まず、電圧データDvおよび電流データDiを入力しつつ、記憶部7に予め決められたデータ数(例えば、測定用信号Smの1周期分のデータ数)を記憶させる。次いで、処理部6は、記憶部7に記憶されている電圧データDvおよび電流データDiに基づいて、電圧データDvで示される電圧Vdおよび電流データDiで示される電流Idの各振幅(電圧Vdの電圧振幅および電流Idの電流振幅)と、電圧Vdおよび電流Id間の位相差とを算出し、算出した各振幅と位相差とに基づいて、測定対象体21のインピーダンスZを算出する。続いて、処理部6は、算出したインピーダンスZを、測定用信号Smの周波数(この例では、上昇時の周波数f1)に対応させて記憶部7に記憶させる。これにより、周波数f1の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定についても完了する。
【0044】
次いで、このように両DDS32,33がフィルタ35の通過帯域に含まれている周波数f1(一の周波数)の第1信号S1および第2信号S2を出力し、これらの信号S1,S2のうちの第1信号S1(この場合、一の信号)がフィルタ35を介して出力信号Soとして出力されている状態において、信号生成装置2では、処理部6は、周波数f2(この場合、他の周波数)の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定を行うため、第1信号S1(一の信号)に代えて、フィルタ35の通過帯域(この場合、一の通過帯域)と部分的に重複する他の通過帯域(この場合、フィルタ36の通過帯域)に含まれる周波数f2の第2信号S2(この場合、他の信号)を出力信号Soとして出力させる処理を開始する。
【0045】
この処理では、処理部6は、まず、第1切替部34に対する切替制御を実行して第2DDS33(この場合、他のDDS)をフィルタ36〜38のうちの通過帯域が上記のようにフィルタ35(一のフィルタ)と部分的に重複するフィルタ36(他のフィルタ)に接続する。本例では、各フィルタ35〜38は共にローパスフィルタであって、図2に示すように、カットオフ周波数がこの順に高くなるように規定されているため、カットオフ周波数の低いフィルタの通過帯域が、カットオフ周波数のより高いフィルタの通過帯域内に包含される構成となっている。したがって、最もカットオフ周波数の低いフィルタ35の通過帯域が他のすべてのフィルタ36〜38の通過帯域に包含される構成となっていることから、フィルタ35の通過帯域と通過帯域が部分的に重複するフィルタとしては、他のすべてのフィルタ36〜38が該当するが、出力信号Soとして次に出力させる第2信号S2の周波数f2が、フィルタ35の使用帯域W1に隣接するフィルタ36の使用帯域W2に含まれるものであるため、第2DDS33をこのフィルタ36に接続する。
【0046】
次いで、処理部6は、図3に示すフィルタ切替処理50を実行することにより、出力信号Soとして信号生成装置2から出力される信号を、周波数f1の第1信号S1から周波数f2の第2信号S2に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替える。
【0047】
このフィルタ切替処理50では、処理部6は、まず、周波数前変更処理51を実行する。この周波数前変更処理51では、処理部6は、両DDS32,33に対する周波数設定制御を実行することにより、第1DDS32(一のDDS)から出力される第1信号S1(一の信号)および第2DDS33(他のDDS)から出力される第2信号S2(他の信号)の各周波数を、フィルタ35の通過帯域(一の通過帯域)およびフィルタ36の通過帯域(他の通過帯域)の重複する帯域に含まれる共通周波数に設定する。本例では、上記したように各フィルタ35〜38が図2に示す周波数特性のローパスフィルタに構成されているため、第1DDS32および第2DDS33が周波数f1の第1信号S1および第2信号S2を出力している状態において、この周波数f1が、既にフィルタ35の通過帯域とフィルタ36の通過帯域との重複する帯域に含まれた状態となっており、実質的に周波数前変更処理51を実行した状態となっている。このため、処理部6は、出力信号Soの周波数を上昇させる際のフィルタ切替処理50では、この周波数前変更処理51を実行したものとして、次に処理に移行する。
【0048】
続いて、処理部6は、位相補正処理52を実行する。この位相補正処理52では、処理部6は、第2DDS33(他のDDS)に対する位相設定制御を実行して、第2DDS33に接続されているフィルタ36(他のフィルタ)から出力されている第2信号S2(他の信号)の位相を、フィルタ35(一のフィルタ)から出力されている第1信号S1(一の信号)の位相に一致させる。
【0049】
具体的には、処理部6は、まず、周波数f1における各フィルタ35,36の位相シフト量b1,b2を記憶部7に記憶されている各フィルタ35,36についての周波数特性データテーブルDtp1,Dtp2を参照して特定する。次いで、処理部6は、現在、出力信号Soとしての第1信号S1を出力している第1DDS32(一のDDS)の位相シフトレジスタに設定されている現時点での位相シフト量θa(=0)、周波数f1(各フィルタ35,36での共通周波数)におけるフィルタ35(一のフィルタ)の位相シフト量b1、および周波数f1におけるフィルタ36(他のフィルタ)の位相シフト量b2に基づき、第2DDS33(他のDDS)の位相シフトレジスタに新たに位相シフト量θbを設定した場合に、第1DDS32および第2DDS33の各位相シフト量θa(=0),θbの差(θb−0)が、共通周波数f1におけるフィルタ35,36の各位相シフト量b1,b2の差分(b1−b2)と等しくなるように第2DDS33に対する位相シフト量θbを設定する。
【0050】
この場合、θb−0=b1−b2との関係式から、処理部6は、第2DDS33の位相シフトレジスタに設定すべき位相シフト量θbを(b1−b2)と算出して、これを第2DDS33に設定する(図4参照)。これにより、第2DDS33での第2信号S2の位相シフト量θbは(b1−b2)となり、この第2信号S2はフィルタ36を通過することによってフィルタ36の位相シフト量b2だけ遅延する。このため、第1DDS32から出力されている第1信号S1の位相を基準として、フィルタ36から出力される第2信号S2の位相は、b1(=(b1−b2)+b2)だけ遅延する。一方、第1DDS32から出力されている第1信号S1の位相を基準として、フィルタ35から出力される第1信号S1の位相は、フィルタ35の位相シフト量b1(=0+b1)だけ遅延する。したがって、フィルタ35から出力されている第1信号S1の位相と、フィルタ36から出力されている第2信号S2の位相とが一致した状態となる。
【0051】
なお、各DDS32,33では、各信号S1,S2の周波数が変更されることにより、周波数の変更の前後における各信号S1,S2の位相も変化するが、同一の周波数から他の同一の周波数に同時に変更される場合には、両DDS32,33から出力される信号S1,S2間の位相関係は変更されずに一定に保たれる。このため、位相補正処理において、切替後に使用されるDDSに対する位相シフト量の算出に際しては、それ以前に行った周波数変更の際に生じた位相シフト量を考慮する必要はない。
【0052】
次いで、処理部6は、信号切替処理53を実行する。この信号切替処理53では、処理部6は、第2切替部39に対する切替制御を実行して、出力信号Soを第1信号S1から第2信号S2に切り替える。具体的には、処理部6は、第2切替部39に対して、スイッチ39aをオン状態からオフ状態に移行させると同時に、オフ状態にある残りのスイッチ39b〜39dのうちのスイッチ39bのみをオン状態に移行させる切替制御を実行する。これにより、フィルタ35から出力されている第1信号S1に代えて、フィルタ36から出力されている第2信号S2が第2切替部39を介して出力信号Soとして信号生成装置2から出力される。この場合、上記したように、各フィルタ35,36から出力されている第1信号S1および第2信号S2の周波数が同一であって、かつ位相が一致した状態にあるため、第1信号S1から第2信号S2に切り替える際に生じる位相の不連続が、理論的にはゼロに、また第2切替部39において生じる各スイッチ39a〜39dのオンからオフへ、オフからオンへの遷移時間のばらつきを考慮したとしても大幅に低減されている。つまり、第1信号S1から第2信号S2に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替えられる。
【0053】
続いて、処理部6は、周波数変更処理54を実行する。この周波数変更処理54では、処理部6は、各DDS32,33に対して周波数設定制御を同時に実行することにより、各DDS32,33から出力される第1信号S1および第2信号S2の周波数をフィルタ36の通過帯域内に規定された使用帯域W2内における周波数f2に設定する。具体的には、処理部6は、第1DDS32および第2DDS33に対して、周波数f2を示す周波数データDfa,Dfbをそれぞれ出力して同時に設定する。これにより、第2DDS33から出力されている第2信号S2が、図2に示す通過帯域(この場合、他の通過帯域)に規定されたフィルタ36を介して第2切替部39から出力信号Soとして出力される(つまり、信号生成装置2から第2信号S2が出力信号Soとして出力される)。
【0054】
これにより、この周波数f2の出力信号Soが増幅部3において増幅されて、測定用信号Smとして測定対象体21に印加される。次いで、処理部6は、上記した周波数がf1の出力信号Soを印加したときのインピーダンスZの測定処理と同様にして、測定対象体21のインピーダンスZを算出し、算出したインピーダンスZを、測定用信号Smの周波数(この例では上昇時の周波数f2)に対応させて記憶部7に記憶させる。これにより、周波数f2の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定についても完了する。
【0055】
次いで、このように両DDS32,33がフィルタ36の通過帯域に含まれている周波数f2(一の周波数)の第1信号S1および第2信号S2を出力し、これらの信号S1,S2のうちの第2信号S2がフィルタ36を介して出力信号Soとして出力されている状態において、信号生成装置2では、処理部6は、周波数f3の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定を行うため、第2信号S2(この場合、一の信号)に代えて、フィルタ36(一のフィルタ)の通過帯域(この場合、一の通過帯域)と部分的に重複する他の通過帯域(この場合、フィルタ37の通過帯域)に含まれる周波数f3(この場合、他の周波数)の第1信号S1(この場合、他の信号)を出力信号Soとして出力させる処理を開始する。
【0056】
この処理では、処理部6は、まず、第1切替部34に対する切替制御を実行して第1DDS32(この場合、他のDDS)をフィルタ37(他のフィルタ)に接続する。本例では、カットオフ周波数の低いフィルタ36の通過帯域が、カットオフ周波数のより高い他のフィルタ37,38の通過帯域に包含される構成となっていることから、フィルタ36の通過帯域と通過帯域が部分的に重複するこの種のフィルタとしては、2つのフィルタ37,38が該当するが、出力信号Soとして次に出力させる第1信号S1の周波数f3が、フィルタ36の使用帯域W2に隣接するフィルタ37の使用帯域W3に含まれるものであるため、第1DDS32をこのフィルタ37に接続する。
【0057】
次いで、処理部6は、図3に示すフィルタ切替処理50を実行することにより、出力信号Soとして信号生成装置2から出力される信号を、周波数f2の第2信号S2から周波数f3の第1信号S1に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替える。
【0058】
このフィルタ切替処理50では、処理部6は、まず、周波数前変更処理51を実行する。この周波数前変更処理51では、処理部6は、両DDS32,33に対する周波数設定制御を実行することにより、第2DDS33(この場合、一のDDS)から出力される第2信号S2(この場合、一の信号)および第1DDS32(この場合、他のDDS)から出力される第1信号S1(この場合、他の信号)の各周波数を、フィルタ36の通過帯域(一の通過帯域)およびフィルタ37の通過帯域(他の通過帯域)の重複する帯域に含まれる共通周波数に設定する。本例では、第1DDS32および第2DDS33が周波数f2の第1信号S1および第2信号S2を出力している状態において、この周波数f2が、既にフィルタ36の通過帯域とフィルタ37の通過帯域との重複する帯域に含まれた状態となっている。このため、処理部6は、この周波数前変更処理51を実行したものとして、次に処理に移行する。
【0059】
続いて、処理部6は、位相補正処理52を実行する。この位相補正処理52では、処理部6は、第1DDS32(他のDDS)に対する位相設定制御を実行して、第1DDS32に接続されているフィルタ37(他のフィルタ)から出力されている第1信号S1(他の信号)の位相を、フィルタ36(一のフィルタ)から出力されている第2信号S2(一の信号)の位相に一致させる。
【0060】
具体的には、処理部6は、まず、周波数f2における各フィルタ36,37の位相シフト量b2,b3を記憶部7に記憶されている各フィルタ36,37についての周波数特性データテーブルDtp2,Dtp3を参照して特定する。次いで、処理部6は、現在、出力信号Soとしての第2信号S2を出力している第2DDS33(一のDDS)の位相シフトレジスタに設定されている現時点での位相シフト量θb(=b1−b2)、周波数f2(各フィルタ36,37での共通周波数)におけるフィルタ36(一のフィルタ)の位相シフト量b2、および周波数f2におけるフィルタ37(他のフィルタ)の位相シフト量b3に基づき、第1DDS32(他のDDS)の位相シフトレジスタに新たに位相シフト量θaを設定した場合に、第2DDS33および第1DDS32の各位相シフト量θb,θaの差(θa−(b1−b2))が、共通周波数f2におけるフィルタ36,37の各位相シフト量b2,b3の差分(b2−b3)と等しくなるように第1DDS32に対する位相シフト量θaを設定する。
【0061】
この場合、θa−(b1−b2)=b2−b3との関係式から、処理部6は、第1DDS32の位相シフトレジスタに設定すべき位相シフト量θaを(b1−b3)と算出して、これを第1DDS32に設定する(図4参照)。これにより、第1DDS32での第1信号S1の位相シフト量θaは(b1−b3)となり、この第1信号S1はフィルタ37を通過することによってフィルタ37の位相シフト量b3だけ遅延する。このため、第1DDS32がフィルタ35に出力していた第1信号S1の位相を基準として、フィルタ37から出力される第1信号S1の位相は、b1(=(b1−b3)+b3)だけ遅延する。一方、第2DDS33から出力されている第2信号S2の位相は、第1DDS32がフィルタ35に出力していた第1信号S1の位相を基準として、上記したようにb1だけ遅延している。したがって、フィルタ36から出力されている第2信号S2の位相と、フィルタ37から出力されている第1信号S1の位相とが一致した状態となる。
【0062】
次いで、処理部6は、信号切替処理53を実行する。この信号切替処理53では、処理部6は、第2切替部39に対する切替制御を実行して、出力信号Soを第2信号S2から第1信号S1に切り替える。具体的には、処理部6は、第2切替部39に対して、スイッチ39bをオン状態からオフ状態に移行させると同時に、オフ状態にある残りのスイッチ39a,39c,39dのうちのスイッチ39cのみをオン状態に移行させる切替制御を実行する。これにより、フィルタ36から出力されている第2信号S2に代えて、フィルタ37から出力されている第1信号S1が第2切替部39を介して出力信号Soとして信号生成装置2から出力される。この場合、上記したように、各フィルタ36,37から出力されている第2信号S2および第1信号S1の周波数が同一であって、かつ位相が一致した状態にあるため、第2信号S2から第1信号S1に切り替える際に生じる位相の不連続が大幅に低減されている。つまり、第2信号S2から第1信号S1に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替えられる。
【0063】
続いて、処理部6は、周波数変更処理54を実行する。この周波数変更処理54では、処理部6は、周波数設定制御を各DDS32,33に対して同時に実行することによって各DDS32,33から出力される第1信号S1および第2信号S2の周波数を、フィルタ37の通過帯域内に規定された使用帯域W3内における周波数f3に設定する。具体的には、処理部6は、第1DDS32および第2DDS33に対して、周波数f3を示す周波数データDfa,Dfbをそれぞれ出力して同時に設定する。これにより、第1DDS32から出力されている第1信号S1が、図2に示す通過帯域(この場合、他の通過帯域)に規定されたフィルタ37を介して第2切替部39から出力信号Soとして出力される(つまり、信号生成装置2から第1信号S1が出力信号Soとして出力される)。
【0064】
これにより、この周波数f3の出力信号Soが増幅部3において増幅されて、測定用信号Smとして測定対象体21に印加される。次いで、処理部6は、上記した周波数がf1の出力信号Soを印加したときのインピーダンスZの測定処理と同様にして、測定対象体21のインピーダンスZを算出し、算出したインピーダンスZを、測定用信号Smの周波数(この例では上昇時の周波数f3)に対応させて記憶部7に記憶させる。これにより、周波数f3の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定についても完了する。
【0065】
次いで、このように両DDS32,33がフィルタ37の通過帯域に含まれている周波数f3(一の周波数)の第1信号S1および第2信号S2を出力し、これらの信号S1,S2のうちの第1信号S1がフィルタ37を介して出力信号Soとして出力されている状態において、信号生成装置2では、処理部6は、周波数f4の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定を行うため、第1信号S1(この場合、一の信号)に代えて、フィルタ37の通過帯域(この場合、一の通過帯域)と部分的に重複する他の通過帯域(この場合、フィルタ38の通過帯域)に含まれる周波数f4(この場合、他の周波数)の第2信号S2(この場合、他の信号)を出力信号Soとして出力させる処理を開始する。
【0066】
この処理では、処理部6は、まず、第1切替部34に対する切替制御を実行して第2DDS33(この場合、他のDDS)を通過帯域がフィルタ37(一のフィルタ)と部分的に重複するフィルタ38(他のフィルタ)に接続する。
【0067】
次いで、処理部6は、図3に示すフィルタ切替処理50を実行することにより、出力信号Soとして信号生成装置2から出力される信号を、周波数f3の第1信号S1から周波数f4の第2信号S2に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替える。
【0068】
このフィルタ切替処理50では、処理部6は、まず、周波数前変更処理51を実行する。この周波数前変更処理51では、処理部6は、両DDS32,33に対する周波数設定制御を実行することにより、第1DDS32(この場合、一のDDS)から出力される第1信号S1(この場合、一の信号)および第2DDS33(この場合、他のDDS)から出力される第2信号S2(この場合、他の信号)の各周波数をフィルタ37の通過帯域(一の通過帯域)とフィルタ38の通過帯域(他の通過帯域)との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定する。本例では、第1DDS32および第2DDS33が周波数f3の第1信号S1および第2信号S2を出力している状態において、この周波数f3が、既にフィルタ37の通過帯域とフィルタ38の通過帯域との重複する帯域に含まれた状態となっている。このため、処理部6は、この周波数前変更処理51を実行したものとして、次に処理に移行する。
【0069】
続いて、処理部6は、位相補正処理52を実行する。この位相補正処理52では、処理部6は、第2DDS33(他のDDS)に対する位相設定制御を実行して、第2DDS33に接続されているフィルタ38(他のフィルタ)から出力されている第2信号S2(他の信号)の位相を、フィルタ37(一のフィルタ)から出力されている第1信号S1(一の信号)の位相に一致させる。
【0070】
具体的には、処理部6は、まず、周波数f3における各フィルタ37,38の位相シフト量b3,b4を記憶部7に記憶されている各フィルタ37,38についての周波数特性データテーブルDtp3,Dtp4を参照して特定する。次いで、処理部6は、現在、出力信号Soとしての第1信号S1を出力している第1DDS32(一のDDS)の位相シフトレジスタに設定されている現時点での位相シフト量θa(=b1−b3)、周波数f3(各フィルタ37,38での共通周波数)におけるフィルタ37(一のフィルタ)の位相シフト量b3、および周波数f3におけるフィルタ38(他のフィルタ)の位相シフト量b4に基づき、第2DDS33(他のDDS)の位相シフトレジスタに新たに位相シフト量θbを設定した場合に、第1DDS32および第2DDS33の各位相シフト量θa,θbの差(θb−(b1−b3))が、共通周波数f3におけるフィルタ37,38の各位相シフト量b3,b4の差分(b3−b4)と等しくなるように第2DDS33に対する位相シフト量θbを設定する。
【0071】
この場合、θb−(b1−b3)=b3−b4との関係式から、処理部6は、第2DDS33の位相シフトレジスタに設定すべき位相シフト量θbを(b1−b4)と算出して、これを第2DDS33に設定する(図4参照)。これにより、第2DDS33での第2信号S2の位相シフト量θbは(b1−b4)となり、この第2信号S2はフィルタ38を通過することによってフィルタ38の位相シフト量b4だけ遅延する。このため、第1DDS32がフィルタ35に出力していた第1信号S1の位相を基準として、フィルタ38から出力される第2信号S2の位相は、b1(=(b1−b4)+b4)だけ遅延する。一方、第1DDS32から出力されている第1信号S1の位相は、第1DDS32がフィルタ35に出力していた第1信号S1の位相を基準として、上記したようにb1だけ遅延している。したがって、フィルタ37から出力されている第1信号S1の位相と、フィルタ38から出力されている第2信号S2の位相とが一致した状態となる。
【0072】
次いで、処理部6は、信号切替処理53を実行する。この信号切替処理53では、処理部6は、第2切替部39に対する切替制御を実行して、出力信号Soを第1信号S1から第2信号S2に切り替える。具体的には、処理部6は、第2切替部39に対して、スイッチ39cをオン状態からオフ状態に移行させると同時に、オフ状態にある残りのスイッチ39a,39b,39dのうちのスイッチ39dのみをオン状態に移行させる切替制御を実行する。これにより、フィルタ37から出力されている第1信号S1に代えて、フィルタ38から出力されている第2信号S2が第2切替部39を介して出力信号Soとして信号生成装置2から出力される。この場合、上記したように、各フィルタ37,38から出力されている第1信号S1および第2信号S2の周波数が同一であって、かつ位相が一致した状態にあるため、第1信号S1から第2信号S2に切り替える際に生じる位相の不連続が大幅に低減されている。つまり、第1信号S1から第2信号S2に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替えられる。
【0073】
続いて、処理部6は、周波数変更処理54を実行する。この周波数変更処理54では、処理部6は、周波数設定制御を各DDS32,33に対して同時に実行することによって各DDS32,33から出力される第1信号S1および第2信号S2の周波数を、フィルタ38の通過帯域内に規定された使用帯域W4内における周波数f4に設定する。具体的には、処理部6は、第1DDS32および第2DDS33に対して、周波数f4を示す周波数データDfa,Dfbをそれぞれ出力して同時に設定する。これにより、第2DDS33から出力されている第2信号S2が、図2に示す通過帯域(この場合、他の通過帯域)に規定されたフィルタ38を介して第2切替部39から出力信号Soとして出力される(つまり、信号生成装置2から第2信号S2が出力信号Soとして出力される)。
【0074】
これにより、この周波数f4の出力信号Soが増幅部3において増幅されて、測定用信号Smとして測定対象体21に印加される。次いで、処理部6は、上記した周波数がf1の出力信号Soを印加したときのインピーダンスZの測定処理と同様にして、測定対象体21のインピーダンスZを算出し、算出したインピーダンスZを、測定用信号Smの周波数(この例では周波数f4)に対応させて記憶部7に記憶させる。これにより、周波数f4の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定についても完了する。
【0075】
次に、インピーダンス測定装置1では、処理部6が引き続いて、測定用信号Smの周波数を現在の周波数f4から、周波数f3,f2,f1というように順次低下させつつ、各周波数f3,f2,f1の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときの測定対象体21のインピーダンスZの測定を実行する。
【0076】
上記のようにして、両DDS32,33がフィルタ38の通過帯域に含まれている周波数f4(一の周波数)の第1信号S1および第2信号S2を出力し、これらの信号S1,S2のうちの第2信号S2がフィルタ38を介して出力信号Soとして出力されている状態において、信号生成装置2では、処理部6は、周波数f3の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定を行うため、第2信号S2(この場合、一の信号)に代えて、フィルタ38の通過帯域(この場合、一の通過帯域)と部分的に重複する他の通過帯域(この場合、フィルタ37の通過帯域)に含まれる周波数f3(この場合、他の周波数)の第1信号S1(この場合、他の信号)を出力信号Soとして出力させる処理を開始する。
【0077】
この処理では、処理部6は、まず、第1切替部34に対する切替制御を実行して第1DDS32(この場合、他のDDS)をフィルタ35〜37のうちの通過帯域が上記のようにフィルタ38(一のフィルタ)と部分的に重複するフィルタ37(他のフィルタ)に接続する。本例では、フィルタ38の通過帯域は、他のすべてのフィルタ35〜37の通過帯域を包含する形態で、これらフィルタ35〜37と通過帯域が部分的に重複する構成となっているが、出力信号Soとして次に出力させる第1信号S1の周波数f3がフィルタ37の使用帯域W3に含まれるものであるため、第1DDS32をこのフィルタ37に接続する。
【0078】
次いで、処理部6は、図3に示すフィルタ切替処理50を実行することにより、出力信号Soとして信号生成装置2から出力される信号を、周波数f4の第2信号S2から周波数f3の第1信号S1に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替える。
【0079】
このフィルタ切替処理50では、処理部6は、まず、周波数前変更処理51を実行する。この周波数前変更処理51では、処理部6は、周波数設定制御を各DDS32,33に対して同時に実行することによって各DDS33,32から出力される第2信号S2(一の信号)および第1信号S1(他の信号)の周波数を、フィルタ38の通過帯域(一の通過帯域)とフィルタ37の通過帯域(他の通過帯域)との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定する。
【0080】
本例では、上記したようにフィルタ38の通過帯域にフィルタ37の通過帯域が包含されるため、共通周波数はフィルタ37の通過帯域に含まれるいずれの周波数であってもよいが、本例では一例として、フィルタ38,37の各通過帯域内に規定された各使用帯域W4,W3における重複帯域に含まれる周波数f34が、フィルタ38からフィルタ37に切り替える際(周波数を低下させる際)の周波数として記憶部7に予め記憶されている。このため、処理部6は、記憶部7からこの周波数f34を読み出して、共通周波数に設定する。
【0081】
続いて、処理部6は、位相補正処理52を実行する。この位相補正処理52では、処理部6は、第1DDS32(他のDDS)に対する位相設定制御を実行して、第1DDS32に接続されているフィルタ37(他のフィルタ)から出力されている第1信号S1(他の信号)の位相を、フィルタ38(一のフィルタ)から出力されている第2信号S2(一の信号)の位相に一致させる。
【0082】
具体的には、処理部6は、まず、変更後の共通周波数f34における各フィルタ37,38の位相シフト量b3,b4を記憶部7に記憶されている各フィルタ37,38についての周波数特性データテーブルDtp3,Dtp4を参照して特定する。次いで、処理部6は、現在、出力信号Soとしての第2信号S2を出力している第2DDS33(一のDDS)の位相シフトレジスタに設定されている現時点での位相シフト量θb(=b1−b4)、共通周波数f34(各フィルタ37,38での共通周波数)におけるフィルタ38(一のフィルタ)の位相シフト量b4、および共通周波数f34におけるフィルタ37(他のフィルタ)の位相シフト量b3に基づき、第1DDS32(他のDDS)の位相シフトレジスタに新たに位相シフト量θaを設定した場合に、フィルタ38とフィルタ37の各位相シフト量の差((b1−b4)−θa)が、共通周波数f34におけるフィルタ37,38の各位相シフト量b3,b4の差分(b3−b4)と等しくなるように第1DDS32に対する位相シフト量θaを設定する。
【0083】
この場合、(b1−b4)−θa=b3−b4との関係式から、処理部6は、第1DDS32の位相シフトレジスタに設定すべき位相シフト量θaを(b1−b3)と算出して、これを第1DDS32に設定する(図4参照)。これにより、第1DDS32での第1信号S1の位相シフト量θaは(b1−b3)となり、この第1信号S1はフィルタ37を通過することによってフィルタ37の位相シフト量b3だけ遅延する。このため、第1DDS32がフィルタ35に出力していた第1信号S1の位相を基準として、フィルタ37から出力される第1信号S1の位相は、b1(=(b1−b3)+b3)だけ遅延する。一方、第2DDS33から出力されている第2信号S2の位相は、第1DDS32がフィルタ35に出力していた第1信号S1の位相を基準として、上記したようにb1だけ遅延している。したがって、フィルタ38から出力されている第2信号S2の位相と、フィルタ37から出力されている第1信号S1の位相とが一致した状態となる。
【0084】
次いで、処理部6は、信号切替処理53を実行する。この信号切替処理53では、処理部6は、第2切替部39に対する切替制御を実行して、出力信号Soを第2信号S2から第1信号S1に切り替える。具体的には、処理部6は、第2切替部39に対して、スイッチ39dをオン状態からオフ状態に移行させると同時に、オフ状態にある残りのスイッチ39a,39b,39cのうちのスイッチ39cのみをオン状態に移行させる切替制御を実行する。これにより、フィルタ38から出力されている第2信号S2に代えて、フィルタ37から出力されている第1信号S1が第2切替部39を介して出力信号Soとして信号生成装置2から出力される。この場合、上記したように、各フィルタ38,37から出力されている第2信号S2および第1信号S1の周波数が同一であって、かつ位相が一致した状態にあるため、第2信号S2から第1信号S1に切り替える際に生じる位相の不連続が大幅に低減されている。つまり、第2信号S2から第1信号S1に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替えられる。
【0085】
続いて、処理部6は、周波数変更処理54を実行する。この周波数変更処理54では、処理部6は、周波数設定制御を各DDS32,33に対して同時に実行することによって各DDS32,33から出力される第1信号S1および第2信号S2の周波数を、フィルタ37の通過帯域内に規定された使用帯域W3内における周波数f3に設定する。具体的には、処理部6は、第1DDS32および第2DDS33に対して、周波数f3を示す周波数データDfa,Dfbをそれぞれ出力して同時に設定する。これにより、第1DDS32から出力されている第1信号S1が、図2に示す通過帯域(この場合、他の通過帯域)に規定されたフィルタ37を介して第2切替部39から出力信号Soとして出力される(つまり、信号生成装置2から第1信号S1が出力信号Soとして出力される)。
【0086】
これにより、この周波数f3の出力信号Soが増幅部3において増幅されて、測定用信号Smとして測定対象体21に印加される。次いで、処理部6は、上記した周波数がf1の出力信号Soを印加したときのインピーダンスZの測定処理と同様にして、測定対象体21のインピーダンスZを算出し、算出したインピーダンスZを、測定用信号Smの周波数(この例では低下時の周波数f3)に対応させて記憶部7に記憶させる。これにより、周波数f3の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定についても完了する。
【0087】
次いで、このように両DDS32,33がフィルタ37の通過帯域に含まれている周波数f3(一の周波数)の第1信号S1および第2信号S2を出力し、これらの信号S1,S2のうちの第1信号S1がフィルタ37を介して出力信号Soとして出力されている状態において、信号生成装置2では、処理部6は、周波数f2の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定を行うため、第1信号S1(この場合、一の信号)に代えて、フィルタ37の通過帯域(この場合、一の通過帯域)と部分的に重複する他の通過帯域(この場合、フィルタ36の通過帯域)に含まれる周波数f2(この場合、他の周波数)の第2信号S2(この場合、他の信号)を出力信号Soとして出力させる処理を開始する。
【0088】
この処理では、処理部6は、まず、第1切替部34に対する切替制御を実行して第2DDS33(この場合、他のDDS)をフィルタ36(他のフィルタ)に接続する。本例では、フィルタ37の通過帯域は、フィルタ35,36の通過帯域を包含する形態で、各フィルタ35,36と通過帯域が部分的に重複する構成となっているが、出力信号Soとして次に出力させる第2信号S2の周波数f2がフィルタ36の使用帯域W2に含まれるものであるため、第2DDS33をこのフィルタ36に接続する。
【0089】
次いで、処理部6は、図3に示すフィルタ切替処理50を実行することにより、出力信号Soとして信号生成装置2から出力される信号を、周波数f3の第1信号S1から周波数f2の第2信号S2に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替える。
【0090】
このフィルタ切替処理50では、処理部6は、まず、周波数前変更処理51を実行する。この周波数前変更処理51では、処理部6は、周波数設定制御を各DDS32,33に対して同時に実行することによって各DDS32,33から出力される第1信号S1(一の信号)および第2信号S2(他の信号)の周波数を、フィルタ37の通過帯域(一の通過帯域)とフィルタ36の通過帯域(他の通過帯域)との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定する。
【0091】
本例では、上記したようにフィルタ37の通過帯域にフィルタ36の通過帯域が包含されるため、共通周波数はフィルタ36の通過帯域に含まれるいずれの周波数であってもよいが、本例では一例として、フィルタ37,36の各通過帯域内に規定された各使用帯域W3,W2における重複帯域に含まれる周波数f23が、フィルタ37からフィルタ36に切り替える際(周波数を低下させる際)の周波数として記憶部7に予め記憶されている。このため、処理部6は、記憶部7からこの周波数f23を読み出して、共通周波数に設定する。
【0092】
続いて、処理部6は、位相補正処理52を実行する。この位相補正処理52では、処理部6は、第2DDS33(他のDDS)に対する位相設定制御を実行して、第2DDS33に接続されているフィルタ36(他のフィルタ)から出力されている第2信号S2(他の信号)の位相を、フィルタ37(一のフィルタ)から出力されている第1信号S1(一の信号)の位相に一致させる。
【0093】
具体的には、処理部6は、まず、変更後の共通周波数f23における各フィルタ36,37の位相シフト量b2,b3を記憶部7に記憶されている各フィルタ36,37についての周波数特性データテーブルDtp2,Dtp3を参照して特定する。次いで、処理部6は、現在、出力信号Soとしての第1信号S1を出力している第1DDS32(一のDDS)の位相シフトレジスタに設定されている現時点での位相シフト量θa(=b1−b3)、共通周波数f23(各フィルタ36,37での共通周波数)におけるフィルタ37(一のフィルタ)の位相シフト量b3、および共通周波数f23におけるフィルタ36(他のフィルタ)の位相シフト量b2に基づき、第2DDS33(他のDDS)の位相シフトレジスタに新たに位相シフト量θbを設定した場合に、フィルタ37とフィルタ36の各位相シフト量の差((b1−b3)−θb)が、共通周波数f23におけるフィルタ36,37の各位相シフト量b2,b3の差分(b2−b3)と等しくなるように第2DDS33の位相シフト量θbを設定する。
【0094】
この場合、(b1−b3)−θb=b2−b3との関係式から、処理部6は、第2DDS33の位相シフトレジスタに設定すべき位相シフト量θbを(b1−b2)と算出して、これを第2DDS33に設定する(図4参照)。これにより、第2DDS33での第2信号S2の位相シフト量θbは(b1−b2)となり、この第2信号S2はフィルタ36を通過することによってフィルタ36の位相シフト量b2だけ遅延する。このため、第1DDS32がフィルタ35に出力していた第1信号S1の位相を基準として、フィルタ36から出力される第2信号S2の位相は、b1(=(b1−b2)+b2)だけ遅延する。一方、第1DDS32から出力されている第1信号S1の位相は、第1DDS32がフィルタ35に出力していた第1信号S1の位相を基準として、上記したようにb1だけ遅延している。したがって、フィルタ37から出力されている第1信号S1の位相と、フィルタ36から出力されている第2信号S2の位相とが一致した状態となる。
【0095】
次いで、処理部6は、信号切替処理53を実行する。この信号切替処理53では、処理部6は、第2切替部39に対する切替制御を実行して、出力信号Soを第1信号S1から第2信号S2に切り替える。具体的には、処理部6は、第2切替部39に対して、スイッチ39cをオン状態からオフ状態に移行させると同時に、オフ状態にある残りのスイッチ39a,39b,39dのうちのスイッチ39bのみをオン状態に移行させる切替制御を実行する。これにより、フィルタ37から出力されている第1信号S1に代えて、フィルタ36から出力されている第2信号S2が第2切替部39を介して出力信号Soとして信号生成装置2から出力される。この場合、上記したように、各フィルタ37,36から出力されている第1信号S1および第2信号S2の周波数が同一であって、かつ位相が一致した状態にあるため、第1信号S1から第2信号S2に切り替える際に生じる位相の不連続が大幅に低減されている。つまり、第1信号S1から第2信号S2に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替えられる。
【0096】
続いて、処理部6は、周波数変更処理54を実行する。この周波数変更処理54では、処理部6は、周波数設定制御を各DDS32,33に対して同時に実行することによって各DDS32,33から出力される第1信号S1および第2信号S2の周波数を、フィルタ36の通過帯域内に規定された使用帯域W2内における周波数f2に設定する。具体的には、処理部6は、第1DDS32および第2DDS33に対して、周波数f2を示す周波数データDfa,Dfbをそれぞれ出力して同時に設定する。これにより、第2DDS33から出力されている第2信号S2が、図2に示す通過帯域(この場合、他の通過帯域)に規定されたフィルタ36を介して第2切替部39から出力信号Soとして出力される(つまり、信号生成装置2から第2信号S2が出力信号Soとして出力される)。
【0097】
これにより、この周波数f2の出力信号Soが増幅部3において増幅されて、測定用信号Smとして測定対象体21に印加される。次いで、処理部6は、上記した周波数がf1の出力信号Soを印加したときのインピーダンスZの測定処理と同様にして、測定対象体21のインピーダンスZを算出し、算出したインピーダンスZを、測定用信号Smの周波数(この例では低下時の周波数f2)に対応させて記憶部7に記憶させる。これにより、周波数f2の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定についても完了する。
【0098】
次いで、このように両DDS32,33がフィルタ36の通過帯域に含まれている周波数f2(一の周波数)の第1信号S1および第2信号S2を出力し、これらの信号S1,S2のうちの第2信号S2がフィルタ36を介して出力信号Soとして出力されている状態において、信号生成装置2では、処理部6は、周波数f1の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定を行うため、第2信号S2(この場合、一の信号)に代えて、フィルタ36の通過帯域(この場合、一の通過帯域)と部分的に重複する他の通過帯域(この場合、フィルタ35の通過帯域)に含まれる周波数f1(この場合、他の周波数)の第1信号S1(この場合、他の信号)を出力信号Soとして出力させる処理を開始する。
【0099】
この処理では、処理部6は、まず、第1切替部34に対する切替制御を実行して第1DDS32(この場合、他のDDS)をフィルタ35(他のフィルタ)に接続する。
【0100】
次いで、処理部6は、図3に示すフィルタ切替処理50を実行することにより、出力信号Soとして信号生成装置2から出力される信号を、周波数f2の第2信号S2から周波数f1の第1信号S1に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替える。
【0101】
このフィルタ切替処理50では、処理部6は、まず、周波数前変更処理51を実行する。この周波数前変更処理51では、処理部6は、周波数設定制御を各DDS33,32に対して同時に実行することによって各DDS33,32から出力される第2信号S2(一の信号)および第1信号S1(他の信号)の周波数を、フィルタ36の通過帯域(一の通過帯域)とフィルタ35の通過帯域(他の通過帯域)との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定する。
【0102】
本例では、上記したようにフィルタ36の通過帯域にフィルタ35の通過帯域が包含されるため、共通周波数はフィルタ35の通過帯域に含まれるいずれの周波数であってもよいが、本例では一例として、フィルタ36,35の各通過帯域内に規定された各使用帯域W2,W1における重複帯域に含まれる周波数f12が、フィルタ36からフィルタ35に切り替える際(周波数を低下させる際)の周波数として記憶部7に予め記憶されている。このため、処理部6は、記憶部7からこの周波数f12を読み出して、共通周波数に設定する。
【0103】
続いて、処理部6は、位相補正処理52を実行する。この位相補正処理52では、処理部6は、第1DDS32(他のDDS)に対する位相設定制御を実行して、第1DDS32に接続されているフィルタ35(他のフィルタ)から出力されている第1信号S1(他の信号)の位相を、フィルタ36(一のフィルタ)から出力されている第2信号S2(一の信号)の位相に一致させる。
【0104】
具体的には、処理部6は、まず、変更後の共通周波数f12における各フィルタ35,36の位相シフト量b1,b2を記憶部7に記憶されている各フィルタ35,36についての周波数特性データテーブルDtp1,Dtp2を参照して特定する。次いで、処理部6は、現在、出力信号Soとしての第2信号S2を出力している第2DDS33(一のDDS)の位相シフトレジスタに設定されている現時点での位相シフト量θb(=b1−b2)、共通周波数f12(各フィルタ35,36での共通周波数)におけるフィルタ36(一のフィルタ)の位相シフト量b2、および共通周波数f12におけるフィルタ35(他のフィルタ)の位相シフト量b1に基づき、第1DDS32(他のDDS)の位相シフトレジスタに新たに位相シフト量θaを設定した場合に、フィルタ36とフィルタ35の各位相シフト量の差((b1−b2)−θa)が、共通周波数f12におけるフィルタ35,36の各位相シフト量b1,b2の差分(b1−b2)と等しくなるように第1DDS32の位相シフト量θaを設定する。
【0105】
この場合、(b1−b2)−θa=b1−b2との関係式から、処理部6は、第1DDS32の位相シフトレジスタに設定すべき位相シフト量θaを数値「0」と算出して、これを第1DDS32に設定する(図4参照)。これにより、第1DDS32での第1信号S1の位相シフト量θaはゼロとなり、この第1信号S1はフィルタ35を通過することによってフィルタ35の位相シフト量b1だけ遅延する。このため、第1DDS32がフィルタ35に出力していた第1信号S1の位相を基準として、フィルタ35から出力される第1信号S1の位相は、b1(=0+b1)だけ遅延する。一方、第2DDS33から出力されている第2信号S2の位相は、第1DDS32がフィルタ35に出力していた第1信号S1の位相を基準として、上記したようにb1だけ遅延している。したがって、フィルタ36から出力されている第2信号S2の位相と、フィルタ35から出力されている第1信号S1の位相とが一致した状態となる。
【0106】
次いで、処理部6は、信号切替処理53を実行する。この信号切替処理53では、処理部6は、第2切替部39に対する切替制御を実行して、出力信号Soを第2信号S2から第1信号S1に切り替える。具体的には、処理部6は、第2切替部39に対して、スイッチ39bをオン状態からオフ状態に移行させると同時に、オフ状態にある残りのスイッチ39a,39c,39dのうちのスイッチ39aのみをオン状態に移行させる切替制御を実行する。これにより、フィルタ36から出力されている第2信号S2に代えて、フィルタ35から出力されている第1信号S1が第2切替部39を介して出力信号Soとして信号生成装置2から出力される。この場合、上記したように、各フィルタ36,35から出力されている第2信号S2および第1信号S1の周波数が同一であって、かつ位相が一致した状態にあるため、第2信号S2から第1信号S1に切り替える際に生じる位相の不連続が大幅に低減されている。つまり、第2信号S2から第1信号S1に、実質的に位相に不連続を生じさせることなく切り替えられる。
【0107】
続いて、処理部6は、周波数変更処理54を実行する。この周波数変更処理54では、処理部6は、周波数設定制御を各DDS32,33に対して同時に実行することによって各DDS32,33から出力される第1信号S1および第2信号S2の周波数を、フィルタ35の通過帯域内に規定された使用帯域W1内における周波数f1に設定する。具体的には、処理部6は、第1DDS32および第2DDS33に対して、周波数f1を示す周波数データDfa,Dfbをそれぞれ出力して同時に設定する。これにより、第1DDS32から出力されている第1信号S1が、図2に示す通過帯域(この場合、他の通過帯域)に規定されたフィルタ35を介して第2切替部39から出力信号Soとして出力される(つまり、信号生成装置2から第1信号S1が出力信号Soとして出力される)。
【0108】
これにより、この周波数f1の出力信号Soが増幅部3において増幅されて、測定用信号Smとして測定対象体21に印加される。次いで、処理部6は、上記した周波数がf1の出力信号Soを印加したときの最初のインピーダンスZの測定処理と同様にして、測定対象体21のインピーダンスZを算出し、算出したインピーダンスZを、測定用信号Smの周波数(この例では低下時の周波数f1)に対応させて記憶部7に記憶させる。これにより、周波数f1の測定用信号Smを測定対象体21に印加したときのインピーダンスZの測定についても完了する。
【0109】
最後に、処理部6は、周波数を上昇させた際の各周波数f1,f2,f3,f4での各インピーダンスZと、周波数を低下させた際の各周波数f3,f2,f1での各インピーダンスZとを記憶部7から読み出して、出力部8に表示させる。これにより、インピーダンス測定装置1による測定対象体21のインピーダンスZの測定が完了する。
【0110】
このように、この信号生成装置2では、第1DDS32および第2DDS33に対して周波数設定制御を実行することによって各フィルタ35〜38の複数の通過帯域のうちの一の通過帯域に含まれる一の周波数の一の信号(第1信号S1および第2信号S2のうちの一方の信号)を一のDDS(第1DDS32および第2DDS33のうちの一方)から出力させると共に一の周波数の他の信号(第1信号S1および第2信号S2のうちの他方の信号)を他のDDS(第1DDS32および第2DDS33のうちの他方)から出力させ、かつ第1切替部34および第2切替部39に対する切替制御を実行することによって一の信号をフィルタ35〜38のうちの通過帯域が上記の通過帯域である一のフィルタを介して出力信号Soとして出力させている状態において、一の信号に代えて複数の通過帯域のうちの一の通過帯域と部分的に重複する他の通過帯域に含まれる他の周波数の他の信号を出力信号Soとして出力させる際に、処理部6が、第1切替部34に対する切替制御を実行して他のDDSをフィルタ35〜38のうちの通過帯域が他の通過帯域である他のフィルタに接続すると共に、周波数設定制御を実行することによって両DDS32,33から出力される一の信号および他の信号の周波数を一の通過帯域と他の通過帯域との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定し、次いで、他のDDSに対する位相設定制御を実行して他のフィルタから出力されている他の信号の位相を一のフィルタから出力されている一の信号の位相に一致させた後に、第2切替部39に対する切替制御を実行して、出力信号Soを一の信号から他の信号に切り替える。
【0111】
したがって、この信号生成装置2によれば、一のフィルタから出力されている一の信号(第1信号S1および第2信号S2の一方)および他のフィルタから出力されている他の信号(第1信号S1および第2信号S2の他方)の周波数が同一であって、かつ位相が一致した状態にあるため、一の信号から他の信号に切り替える際に、出力信号Soに生じる位相の不連続を大幅に低減させることができる。つまり、実質的に、位相に不連続を生じさせることなく一の信号から他の信号に切り替えて、出力信号Soを生成して出力させることができる。これにより、この信号生成装置2を備え、信号生成装置2からの出力信号Soに基づく測定用信号Smを測定対象体21に印加する(測定用信号Smを供給する)インピーダンス測定装置1においても、測定用信号Smの周波数の変更時に測定用信号Smに位相の不連続が生じないため、測定対象体21がインダクタンス成分を有するものであったとしても、瞬間的に大きな逆起電力が発生することを確実に回避することができ、また測定対象体21が容量成分を有するものであったとしても、瞬間的に過大な電流が流れることを確実に回避することができる。
【0112】
また、この信号生成装置2によれば、処理部6が、他のDDSに対する位相設定制御を実行して他のフィルタから出力されている他の信号の位相を一のフィルタから出力されている一の信号の位相に一致させる際に、両DDS32,33の各位相の差(位相シフト量θa,θb)が、共通周波数における一のフィルタおよび他のフィルタの各位相シフト量の差分と等しくなるように他のDDSの位相を設定することにより、他のフィルタから出力されている他の信号の位相を一のフィルタから出力されている一の信号の位相に確実に一致させることができる。
【0113】
なお、2つの第1DDS32および第2DDS33を第1切替部34を介してフィルタ35,36,37,38に選択的に切り替えながら接続する構成を採用して、DDSの数を最小限の2つにすることで、信号生成装置2自体、ひいてはインピーダンス測定装置1の構成を簡略化する例について上記したが、図5に示す信号生成装置2Aのように、フィルタ35,36,37,38毎に、第1DDS32、第2DDS33、第3DDS41および第4DDS42を配設する構成を採用することもできる。この構成によれば、DDSの数は増加するものの、第1切替部34の配設を省くことができる(つまり、第1切替部34に対する切替制御を省くことができる)ため、処理部6が実行する制御を軽減することができる。以下、信号生成装置2Aの構成と動作について説明する。なお、信号生成装置2と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0114】
この信号生成装置2Aは、図5に示すように、基準信号生成部31、第1DDS32、第2DDS33、、第3DDS41、第4DDS42、複数(本例では4つ)のフィルタ35,36,37,38、第2切替部39および処理部6を備え、信号生成装置2と同様にして、使用帯域W1,W2,W3,W4内の任意の1つの周波数の出力信号Soを生成して出力し得るように構成されている。
【0115】
基準信号生成部31は、基準信号Scを生成して、各DDS32,33,41,42に出力する。第1DDS32はフィルタ35に直接接続され、第2DDS33はフィルタ36に直接接続され、第3DDS41はフィルタ37に直接接続され、第4DDS42はフィルタ38に直接接続されている。
【0116】
また、第3DDS41は、上記した信号生成装置2の第1DDS32および第2DDS33と同様にして、基準信号Scに同期して作動して、処理部6によって設定された周波数データDfcで示される周波数fcの第3信号(一例として正弦波信号)S3を生成して出力すると共に、位相シフトレジスタ(不図示)を備え、処理部6によってこの位相シフトレジスタに設定された位相シフト量θcだけ第3信号S3の位相をシフトさせる。第4DDS42も、上記の第1DDS32および第2DDS33と同様にして、基準信号Scに同期して作動して、処理部6によって設定された周波数データDfdで示される周波数fdの第4信号(一例として正弦波信号)S4を生成して出力すると共に、位相シフトレジスタ(不図示)を備え、処理部6によってこの位相シフトレジスタに設定された位相シフト量θdだけ第4信号S4の位相をシフトさせる。
【0117】
また、各DDS32,33,41,42は、処理部6による周波数設定制御が同時になされることにより、同一の周波数が同時に設定される。なお、各位相シフト量θa,θb,θc,θdについては、処理部6による位相設定制御により、個別に設定される。
【0118】
この構成により、第2切替部39は、各スイッチ39a,39b,39c,39dが処理部6によってオン・オフ状態が制御されることにより、各フィルタ35,36,37,38のうちの任意の1つを選択して、選択されたフィルタに接続されているDDSから出力されている信号S1,S2,S3,S4のうちの1つの信号を出力信号Soとして出力する。
【0119】
この信号生成装置2Aでは、処理部6による周波数設定制御が各DDS32,33,41,42に対して実行されて、各フィルタ35〜38の各通過帯域のうちの一の通過帯域に含まれる一の周波数の信号S1〜S4を各DDS32,33,41,42から出力させると共に、処理部6による切替制御が第2切替部39に対して実行されて、各フィルタ35〜38のうちの通過帯域が上記の一の通過帯域である一のフィルタに対応して配設された一のDDSから出力されている一の信号を出力信号Soとして出力させている状態において、この一の信号に代えて各通過帯域のうちの一の通過帯域と部分的に重複する他の通過帯域に含まれている他の周波数の他の信号を出力信号Soとして出力させる際に、処理部6が、周波数設定制御を各DDS32,33,41,42に対して実行することによって各DDS32,33,41,42から出力される各信号S1〜S4の周波数を一の通過帯域と他の通過帯域との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定し、次いで、各フィルタ35〜38のうちの通過帯域が他の通過帯域である他のフィルタに対応して配設された他のDDSに対する位相設定制御を実行して他のフィルタから出力されている他の信号の位相を一の信号の位相に一致させた後に、第2切替部39に対する切替制御を実行して、出力信号Soを一の信号から他の信号に切り替える。
【0120】
一例として、フィルタ35,36,37,38をこの順に切り替えつつ、出力信号Soの周波数を上昇させる場合を例に挙げて説明する。最初に、第1DDS32(この場合、一のDDS)とフィルタ35(この場合、一のフィルタ)との組から出力される第1信号S1(この場合、一の信号)に代えて、第2DDS33(この場合、他のDDS)とフィルタ36(この場合、他のフィルタ)との組から出力される第2信号S2(この場合、他の信号)を出力信号Soとして出力するときには、各DDS32,33,41,42に対して周波数設定制御を同時に実行することによって各DDS32,33,41,42から出力される各信号S1〜S4の周波数を各フィルタ35,36の通過帯域の重複する帯域に含まれる共通周波数に設定し、次いで、第2DDS33に対する位相シフト量θbとして(b1−b2)を設定して両信号S1,S2の位相を一致させた後に、第1信号S1から第2信号S2に切り替える。
【0121】
また、第2DDS33(この場合、一のDDS)とフィルタ36(この場合、一のフィルタ)との組から出力される第2信号S2(この場合、一の信号)に代えて、第3DDS41(この場合、他のDDS)とフィルタ37(この場合、他のフィルタ)との組から出力される第3信号S3(この場合、他の信号)を出力信号Soとして出力するときには、各DDS32,33,41,42に対して周波数設定制御を同時に実行することによって各DDS32,33,41,42から出力される各信号S1〜S4の周波数を各フィルタ36,37の通過帯域の重複する帯域に含まれる共通周波数に設定し、次いで、第3DDS41に対する位相シフト量θcとして(b1−b3)を設定して両信号S2,S3の位相を一致させた後に、第2信号S2から第3信号S3に切り替える。
【0122】
また、第3DDS41(この場合、一のDDS)とフィルタ37(この場合、一のフィルタ)との組から出力される第3信号S3(この場合、一の信号)に代えて、第4DDS42(この場合、他のDDS)とフィルタ38(この場合、他のフィルタ)との組から出力される第4信号S4(この場合、他の信号)を出力信号Soとして出力するときには、各DDS32,33,41,42に対して周波数設定制御を同時に実行することによって各DDS32,33,41,42から出力される各信号S1〜S4の周波数を各フィルタ37,38の通過帯域の重複する帯域に含まれる共通周波数に設定し、次いで、第4DDS42に対する位相シフト量θdとして(b1−b4)を設定して両信号S3,S4の位相を一致させた後に、第3信号S3から第4信号S4に切り替える。なお、フィルタ38,37,36,35をこの順に切り替えつつ、出力信号Soの周波数を低下させる場合については、具体例を挙げての説明を省略するが、上記した周波数の上昇の手順と逆の手順を実行すればよい。
【0123】
これにより、この信号生成装置2Aによれば、一のフィルタと他のフィルタから出力されている各信号相互間の位相が一致させられているため、出力信号Soとして出力する信号を一の信号から他の信号に切り替える際に、出力信号Soに生じる位相の不連続を大幅に低減させることができる。つまり、実質的に、位相に不連続を生じさせることなく一の信号から他の信号に切り替えて、出力信号Soを生成して出力させることができる。したがって、この信号生成装置2Aを備え、信号生成装置2Aからの出力信号Soに基づく測定用信号を測定対象体21に印加する(測定用信号を供給する)インピーダンス測定装置においても、測定用信号Smの周波数の変更時に測定用信号Smに位相の不連続が生じないため、測定対象体21がインダクタンス成分を有するものであったとしても、瞬間的に大きな逆起電力が発生することを確実に回避することができ、また測定対象体21が容量成分を有するものであったとしても、瞬間的に過大な電流が流れることを確実に回避することができる。
【0124】
また、上記した信号生成装置2,2Aでは、各フィルタ35,36,37,38として、低域通過型フィルタを使用しているが、使用帯域W1,W2,W3,W4を通過帯域に含む帯域通過型フィルタ(バンドパスフィルタ)を使用することもできる。また、信号生成装置2,2Aをインピーダンス測定装置1に使用した例について上記したが、信号生成装置2,2Aを単独で使用してもよいし、インピーダンス測定装置1以外の各種計測装置や電子機器に使用してもよいのは勿論である。
【0125】
また、信号生成装置2,2Aでは、出力信号Soの周波数を上昇させる場合において、一のDDSに接続された一のフィルタから出力される一の周波数の一の信号に代えて、他のDDSが出力する他の周波数の他の信号を出力信号Soとして出力させる際に、各DDSから出力される信号の周波数を、一の周波数が含まれる一の通過帯域と他の周波数が含まれる他の通過帯域との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定し、この状態において、他のDDSに対する位相設定制御を実行して、この他のDDSに接続された他のフィルタから出力されている他の信号の位相を一のフィルタから出力されている一の信号の位相に一致させた後に、第2切替部39に対する切替制御を実行して、出力信号Soを一の信号から他の信号に切り替える構成を採用しているが、出力信号Soの周波数を上昇させる場合においても周波数を低下させる場合と同様にして、一の通過帯域内に規定された一の使用帯域と他の通過帯域内に規定された他の使用帯域との重複する帯域に含まれる周波数を共通周波数として設定し、この状態において、他のDDSに対する位相設定制御を実行して、この他のDDSに接続された他のフィルタから出力されている他の信号の位相を一のフィルタから出力されている一の信号の位相に一致させた後に、第2切替部39に対する切替制御を実行して、出力信号Soを一の信号から他の信号に切り替える構成を採用することもできる。
【0126】
この構成によれば、出力信号Soとして各フィルタ35,36,37,38から出力される信号の周波数を、各フィルタ35,36,37,38において不要スプリアス成分を適切に除去し得る使用帯域W1,W2,W3,W4内に常に維持することができる結果、出力信号Soに含まれる不要スプリアス成分を大幅に低減することができる。
【符号の説明】
【0127】
1 インピーダンス測定装置
2,2A 信号生成装置
6 処理部
32 第1DDS
33 第2DDS
34 第1切替部
35,36,37,38 フィルタ
39 第2切替部
W1,W2,W3,W4 使用帯域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通過帯域同士が部分的に重複するように規定された複数のフィルタと、
設定された周波数の一の信号を生成して出力すると共に当該一の信号の位相を変更可能に構成された一のDDSと、
設定された周波数の他の信号を生成して出力すると共に当該他の信号の位相を変更可能に構成された他のDDSと、
前記一のDDSを前記複数のフィルタのうちから選択された一のフィルタに接続すると共に、前記他のDDSを当該一のフィルタを除く他の1つのフィルタに接続する第1切替部と、
前記一のフィルタから出力される前記一の信号および前記他のフィルタから出力される前記他の信号のうちの1つを選択して出力信号として出力する第2切替部と、
すべての前記DDSに対して同一の周波数を同時に設定する周波数設定制御、当該各DDSに対して前記位相を設定する位相設定制御、並びに前記第1切替部および前記第2切替部に対する切替制御を実行する処理部とを備え、
前記処理部は、前記周波数設定制御を実行することによって前記複数のフィルタの前記複数の通過帯域のうちの一の通過帯域に含まれる一の周波数の前記一の信号を前記一のDDSから出力させると共に当該一の周波数の前記他の信号を前記他のDDSから出力させ、かつ前記第1切替部および前記第2切替部に対する切替制御を実行することによって当該一の信号を前記複数のフィルタのうちの前記通過帯域が前記一の通過帯域である一のフィルタを介して前記出力信号として出力させている状態において、当該一の信号に代えて前記複数の通過帯域のうちの当該一の通過帯域と部分的に重複する他の通過帯域に含まれる他の周波数の前記他の信号を当該出力信号として出力させる際に、
前記第1切替部に対する切替制御を実行して前記他のDDSを前記複数のフィルタのうちの前記通過帯域が前記他の通過帯域である他のフィルタに接続すると共に、前記周波数設定制御を実行することによって前記各DDSから出力される前記一の信号および前記他の信号の周波数を前記一の通過帯域と前記他の通過帯域との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定し、次いで、当該他のDDSに対する前記位相設定制御を実行して当該他のフィルタから出力されている前記他の信号の位相を前記一のフィルタから出力されている前記一の信号の位相に一致させた後に、前記第2切替部に対する切替制御を実行して、前記出力信号を前記一の信号から前記他の信号に切り替える信号生成装置。
【請求項2】
通過帯域同士が部分的に重複するように規定された複数のフィルタと、
前記複数のフィルタの各々に対応して配設されて、設定された周波数の信号を生成して出力すると共に当該信号の位相を変更可能に構成された複数のDDSと、
前記複数のフィルタから出力される前記信号のうちの1つを選択して出力信号として出力する切替部と、
すべての前記DDSに対して同一の周波数を同時に設定する周波数設定制御、当該各DDSに対して前記位相を設定する位相設定制御、並びに前記切替部に対する切替制御を実行する処理部とを備え、
前記処理部は、前記周波数設定制御を実行することによって前記複数のフィルタの前記複数の通過帯域のうちの一の通過帯域に含まれる一の周波数の前記信号を前記複数のDDSから出力させると共に、前記切替制御を実行することによって前記複数のフィルタのうちの前記通過帯域が前記一の通過帯域である一のフィルタに対応して配設された前記複数のDDSのうちの一のDDSから出力されている一の前記信号を前記出力信号として出力させている状態において、当該一の信号に代えて前記複数の通過帯域のうちの当該一の通過帯域と部分的に重複する他の通過帯域に含まれている他の周波数の他の前記信号を当該出力信号として出力させる際に、
前記周波数設定制御を実行することによって前記複数のDDSから出力される前記信号の周波数を前記一の通過帯域と前記他の通過帯域との重複する帯域に含まれる共通周波数に設定し、次いで、前記複数のフィルタのうちの前記通過帯域が前記他の通過帯域である他のフィルタに対応して配設された前記複数のDDSのうちの他のDDSに対する前記位相設定制御を実行して当該他のフィルタから出力されている前記他の信号の位相を前記一の信号の位相に一致させた後に、前記切替部に対する切替制御を実行して、前記出力信号を前記一の信号から前記他の信号に切り替える信号生成装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記他のDDSに対する前記位相設定制御を実行して前記他のフィルタから出力されている前記他の信号の位相を前記一のフィルタから出力されている前記一の信号の位相に一致させる際に、前記一のDDSと前記他のDDSの前記各位相の差が、前記共通周波数における前記一のフィルタおよび前記他のフィルタの各位相シフト量の差分と等しくなるように当該他のDDSの位相を設定する請求項1または2記載の信号生成装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記共通周波数として、前記一の通過帯域内に規定された一の使用帯域と前記他の通過帯域内に規定された他の使用帯域との重複する帯域に含まれる周波数を設定する請求項1から3のいずれかに記載の信号生成装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の信号生成装置と、
前記信号生成装置から出力される出力信号を測定対象体に印加したときに前記測定対象体に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流が流れているときに前記測定対象体の両端間に発生する電圧を検出する電圧検出部とを備え、
前記処理部は、前記電流検出部によって検出された前記電流、および前記電圧検出部によって検出された前記電圧に基づいて前記測定対象体のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−176667(P2011−176667A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39817(P2010−39817)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】