説明

信号終端装置、受信装置、及び出力制御プログラム

【課題】 信号終端装置と受信装置との距離(線路長)を高精度に推定し、所定の区域内で放送等の提供を実現する。
【解決手段】 少なくとも1つの受信装置に対して提供される放送信号を分配して出力するための信号終端装置において、前記受信装置と前記信号終端装置とにおける信号の伝搬時間を測定するための伝搬時間測定信号を生成する伝搬時間測定信号生成手段と、前記伝搬時間測定信号生成手段により得られる伝搬時間測定信号を前記受信装置に送信し、前記受信装置から送信した前記伝搬時間測定信号を受信する送受信手段と、前記送受信手段により得られる前記伝搬時間測定信号に基づいて、前記信号終端装置と前記受信装置との線路長を推定するための線路長推定手段と、前記線路長推定手段により得られる線路長と、予め設定された閾値とを比較する比較手段とを有することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号終端装置、受信装置、及び出力制御プログラムに係り、特に、信号終端装置と受信装置との距離(線路長)を高精度に推定し、所定の区域内で放送等の提供を実現するための信号終端装置、受信装置、及び出力制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタル放送等を分配して受信装置に伝送する伝送システム等においては、放送事業者がサービスを提供しようとする範囲(放送区域)内にある加入者宅にアンテナ端子又はケーブルテレビの加入者端子等と、受信装置(あるいはSTB:Set Top Box)等とを同軸ケーブル等で接続し、放送等の提供を行っている。
【0003】
このような情報提供の形態では、受信装置に対する入力信号の搬送波対雑音比が一定以上であれば、加入者端子と受信装置との距離を延長して受信することができる。
【0004】
ところで、従来の技術では、ある地点に設置される受信装置が、放送事業者等の情報提供者がサービスを提供しようとする範囲(放送区域)内にあることを識別する手段がない。そのため、例えば、放送区域内にある受信装置で放送信号を一旦受信した後、その受信した端子から信号を長距離伝送すれば、受信できる範囲が放送区域外にも及んでしまうという問題が生じる。
【0005】
そこで、情報提供者が放送を受信できる場所を放送区域内とするためには、加入者宅の信号終端装置と受信装置との間の信号伝送距離に制約を設けることによって、受信装置の動作の可否あるいはサービス再生の可否を判断するための機能を信号終端装置又は受信装置に実装することが必要となる。
【0006】
なお、放送区域を限定するための手法としては、信号終端装置と受信装置との間の信号伝搬時間を測定し、その測定内容から距離を算出する手法がある(例えば、特許文献1)。このように距離を測定し、距離に所定の上限を規定する等の条件を定めることにより受信装置の動作を制限することができる。
【0007】
また、現在では、双方向伝送システムにおいてネットワークに接続されている装置間の往復時間を測定するため、受信装置から“pingコマンド”等によりRTT(Round Trip Time)を測定する方法がある。
【0008】
この手法では、情報提供者側から送信される伝送信号にIP(Internet Protocol)パケットを多重し、ICMP(Internet Control Message Protocol)のデータ領域を用いて信号終端装置と受信装置との間の通信を行う。また、RFC(Request For Comment)792に示されているようにタイムスタンプ/タイムスタンプ応答メッセージを用いることで、1ms単位で時間の測定を行うことができる。そのため、タイムスタンプ/タイムスタンプ応答メッセージを用いることで信号終端装置と受信装置との間の距離を把握することができる。
【特許文献1】特開平8−62334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したようなタイムスタンプ応答による距離の測定では、時間分解能の1msは伝送距離の約300kmに相当するため、放送区域内であるか否かを判別するための精度としては不十分である。
【0010】
更に、特許文献1に示されている技術では、信号が実際に線路を伝搬する時間に加えて、信号が通過する各種装置(ハードウェア)内における処理時間も含まれてしまうため、信号終端装置と受信装置との間の実際の距離(線路長)を高精度に推定することは困難となっていた。
【0011】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、信号終端装置と受信装置との距離(線路長)を高精度に推定し、所定の区域内で放送等の提供を実現するための信号終端装置、受信装置、及び出力制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本件発明は、以下の特徴を有する課題を解決するための手段を採用している。
【0013】
請求項1に記載された発明は、少なくとも1つの受信装置に対して提供される放送信号を分配して出力するための信号終端装置において、前記受信装置と前記信号終端装置とにおける信号の伝搬時間を測定するための伝搬時間測定信号を生成する伝搬時間測定信号生成手段と、前記伝搬時間測定信号生成手段により得られる伝搬時間測定信号を前記受信装置に送信し、前記受信装置から送信した前記伝搬時間測定信号を受信する送受信手段と、前記送受信手段により得られる前記伝搬時間測定信号に基づいて、前記信号終端装置と前記受信装置との線路長を推定するための線路長推定手段と、前記線路長推定手段により得られる線路長と、予め設定された閾値とを比較する比較手段とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項1記載の発明によれば、伝搬時間に基づいて信号終端装置と受信装置との距離(線路長)を高精度に推定し、測定した結果を閾値と比較することで、所定の区域内あるか否かの判断を行うことができる。これにより、所定の区域内で放送等の提供を実現することができる。
【0015】
請求項2に記載された発明は、前記伝搬時間測定信号は、前記受信装置、前記信号終端装置、及び前記受信装置から前記信号終端装置までの間で中継装置により信号を中継する場合には前記中継装置の識別情報と、前記受信装置、前記信号終端装置、及び前記中継装置における前記伝搬時間測定信号の入力時刻及び出力時刻とを有することを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、伝搬時間測定信号が送受信された各装置を特定することができ、また、各装置間の伝搬時間をより高精度に取得することができる。
【0017】
請求項3に記載された発明は、伝搬時間測定信号生成手段は、前記受信装置からの受信許可リクエストを受信した場合、又は前記比較手段からの線路長測定リクエストを受信した場合に伝搬時間測定信号を生成することを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、必要に応じて伝搬時間測定信号を生成し、受信装置に対する放送信号の受信の可否を高精度に判断することができる。
【0019】
請求項4に記載された発明は、前記線路長推定手段は、前記伝搬時間測定信号生成手段により付加される前記伝搬時間測定信号の出力時刻と、前記受信装置により付加される前記伝搬時間測定信号の入力時刻及び出力時刻と、前記受信装置から得られる前記伝搬時間測定信号を受信した入力時刻とに基づいて線路長を推定することを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、受信装置内における処理時間を除いた時間で伝搬時間を取得することができる。これにより線路長を高精度に推定することができる。
【0021】
請求項5に記載された発明は、前記線路長推定手段は、所定の受信装置に対する複数の伝搬時間測定信号から得られる線路長のうち、最小値又は全線路長の平均値を線路長として推定することを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、より正確な線路長を推定することができる。
【0023】
請求項6に記載された発明は、前記比較手段は、比較結果から前記受信装置が放送区域内であるか否かを判断することを特徴とする。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、所定の放送区域内に限定して放送サービスを提供することができる。これにより、放送対象区域外でのデータの受信を防止することができる。
【0025】
請求項7に記載された発明は、少なくとも1つの受信装置に対して提供される放送信号を分配して出力するための信号終端装置において、前記受信装置から送られた前記受信装置と前記信号終端装置とにおける信号の伝搬時間を測定するための伝搬時間測定信号に、前記伝搬時間測定信号の入力時刻及び出力時刻を付加する時刻付加手段と、前記伝搬時間測定信号を受信し、前記時刻付加手段により得られる伝搬時間測定信号を前記受信装置に送信する送受信手段とを有することを特徴とする。
【0026】
請求項7記載の発明によれば、前記受信装置は伝搬時間に基づいて信号終端装置と受信装置との距離(線路長)を高精度に推定し、測定した結果を閾値と比較することで、所定の区域内あるか否かの判断を行うことができる。これにより、所定の区域内で放送等の提供を実現することができる。
【0027】
請求項8に記載された発明は、信号終端装置から分配して出力される放送信号を受信する受信装置において、前記信号終端装置により送られた前記受信装置と前記信号終端装置とにおける信号の伝搬時間を測定するための伝搬時間測定信号に、前記伝搬時間測定信号の入力時刻及び出力時刻を付加する時刻付加手段と、前記伝搬時間測定信号を受信し、前記時刻付加手段により得られる伝搬時間測定信号を前記信号終端装置に送信する送受信手段とを有することを特徴とする。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、前記信号終端装置は信号が実際に線路を伝搬する時間を高精度に取得することができる。
【0029】
請求項9に記載された発明は、前記受信装置を起動させる起動手段と、前記起動手段から得られる制御信号により、前記信号終端装置に対して前記放送信号の受信許可リクエストを行うための受信許可リクエスト信号を生成するリクエスト生成手段を有することを特徴とする。
【0030】
請求項9記載の発明によれば、受信許可リクエスト信号に対する特別な操作や指示を行うことなく、迅速に受信許可又は受信不許可等の結果を取得することができる。
【0031】
請求項10に記載された発明は、信号終端装置から分配して出力される放送信号を受信する受信装置において、前記受信装置と前記信号終端装置とにおける信号の伝搬時間を測定するための伝搬時間測定信号を生成する伝搬時間測定信号生成手段と、前記伝搬時間測定信号生成手段により得られる伝搬時間測定信号を前記信号終端装置に送信し、前記信号終端装置から送信した前記伝搬時間測定信号を受信する送受信手段と、前記送受信手段により得られる前記伝搬時間測定信号に基づいて、前記信号終端装置と前記受信装置との線路長を推定するための線路長推定手段と、前記線路長推定手段により得られる線路長と、予め設定された閾値とを比較する比較手段とを有することを特徴とする。
【0032】
請求項10記載の発明によれば、伝搬時間に基づいて信号終端装置と受信装置との距離(線路長)を高精度に推定し、測定した結果を閾値と比較することで、所定の区域内あるか否かの判断を行うことができる。これにより、所定の区域内で放送等の提供を実現することができる。
【0033】
請求項11に記載された発明は、前記比較手段により得られる比較結果に基づいて、前記信号終端装置から得られる前記放送信号の再生制御を行う再生制御手段を有することを特徴とする。
【0034】
請求項11記載の発明によれば、比較結果により放送信号を再生するか否かを制御することで、所定の区域内に限定して動作する受信装置を提供することができる。
【0035】
請求項12に記載された発明は、前記受信装置を起動させる起動手段を有し、前記伝搬時間測定信号生成手段は、前記起動手段からの制御信号に基づいて前記伝搬時間測定信号を生成することを特徴とする。
【0036】
請求項12記載の発明によれば、受信許可リクエスト信号に対する特別な操作や指示を行うことなく、迅速に受信許可又は受信不許可等の結果を取得することができる。
【0037】
請求項13に記載された発明は、放送信号を分配して出力させるための信号終端装置と、前記信号終端装置からの信号を受信する受信装置との線路長に基づいて、前記放送信号の出力を制御する処理をコンピュータに実行させるための出力制御プログラムにおいて、前記受信装置と前記信号終端装置とにおける信号の伝搬時間を測定するための伝搬時間測定信号を生成する伝搬時間測定信号生成処理と、前記伝搬時間測定信号生成処理により得られる伝搬時間測定信号を、前記受信装置及び前記信号終端装置との間で送受信を行う送受信処理と、前記送受信処理により得られる前記伝搬時間測定信号に基づいて、前記信号終端装置と前記受信装置との線路長を推定するための線路長推定処理と、前記線路長推定処理により得られる線路長と、予め設定された閾値とを比較する比較処理とをコンピュータに実行させる。
【0038】
請求項13記載の発明によれば、伝搬時間に基づいて信号終端装置と受信装置との距離(線路長)を高精度に推定し、測定した結果を閾値と比較することで、所定の区域内あるか否かの判断を行うことができる。これにより、所定の区域内で放送等の提供を実現することができる。また、特別な装置構成を必要とせず、低コストで出力制御処理を実現することができる。また、プログラムをインストールすることにより、容易に出力制御処理を実現することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、信号終端装置と受信装置との距離(線路長)を高精度に推定し、所定の区域内で放送等の提供を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
<本発明の概要>
本発明は、例えば、デジタル放送やコンテンツ等の放送信号を分配して伝送する分配伝送システムにおいて、加入者宅の信号終端装置と受信装置との間の信号の伝搬時間を正確に測定するため、信号終端装置と受信装置との信号の伝搬時間を測定する伝搬時間測定信号を定義する。また、受信装置等における信号の入出力時刻を伝搬時間測定信号に付加することで、信号終端装置と受信装置との往復時間を測定する際に装置内における処理時間を除いた線路上の伝搬時間を測定し線路長を推定する。
【0041】
また、推定された線路長と予め設定された閾値とを比較し、放送区域内であるか否かを判断する。つまり、線路長に基づいて提供される放送信号の受信を許可するか否か又は信号を再生するか否か等を判断する。これにより、放送対象区域外に存在する受信装置に対するデータの受信を防止することができる。
【0042】
以下に本発明の特徴を有する信号終端装置、受信装置、及び出力制御プログラムを好適に実施した形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0043】
<第1の実施形態>
図1は、本発明を適用した分配伝送システムのシステム構成の一例を示す図である。なお、図1では、有線系の分配伝送の一例としてケーブルテレビにおける放送信号の分配伝送を示している。
【0044】
図1に示す分配伝送システム10は、ヘッドエンド11と、信号終端装置12と、受信装置13−1〜13−nとを有するよう構成されている。なお、図1では、ヘッドエンド11及び信号終端装置12を1つ有し、受信装置13を複数有しているが、構成については、これに限定されることはなく、各装置が少なくとも1つ有していればよい。
【0045】
ヘッドエンド11は、CATVシステムで、地上波テレビ放送、FMラジオ放送、放送衛星、通信衛星等から受信した信号やVTR信号をCATV伝送ケーブルに送出する設備である。また、ヘッドエンド11は、CATV事業者の送信局そのものとすることもできる。
【0046】
ヘッドエンド11は、放送局等から伝送された信号を受信し複数のMPEG−2(Moving Picture Experts Group 2)のTS(Transport Stream)信号を信号終端装置12へ送出する。なお、ヘッドエンド11から伝送された信号は、伝送路を介して加入者の信号終端装置12に入力されるが、ヘッドエンド11から信号終端装置12まで伝送される信号は、各受信装置13−1〜13−nの少なくとも1つに出力する信号も含めて全ての信号が一括して伝送されている。
【0047】
ここで、ヘッドエンド11と加入者信号終端装置間12は、片方向伝送でもよく、双方向伝送路でもよい。また、加入者の信号終端装置12は、各受信装置13−1〜13−nと双方向伝送路により接続されている。なお、双方向伝送路としては例えば、LAN(Local Area Network)等がある。
【0048】
信号終端装置12は、各受信装置13−1〜13−nからのチャンネルリクエスト信号を受けつけると、ヘッドエンド11から伝送されたMPEG−2 TS信号を選択してリクエストのあった受信装置13に出力する。
【0049】
受信装置13は、所望するMPEG−2 TS信号を受信し放送信号を再生する。なお、図1に示すように信号終端装置12及び受信装置13は、加入者宅内等に設置される。ここで、1つの信号終端装置12に対して複数の受信装置13−1から13−nがある構成の例としては、マンションにおける各世帯に受信装置が設置されている場合や一戸建てでも家族にそれぞれ受信装置が設置されている場合等がある。
【0050】
次に、信号終端装置12と受信装置13との間で送受信される伝搬時間測定信号(パケット)について図を用いて説明する。図2は、伝搬時間測定データの一例を示す図である。
【0051】
図2に示すデータは、ヘッダ21とデータ22とを有する。このような構成としては、例えばEthenet(登録商標)フレーム信号のデータ領域を用いることができる。ここで、ヘッダ21のデータ項目としては、通常のIPパケット等に含まれる宛先アドレスや送信元アドレス等を有している。また、データ22のデータ項目としては、送出装置識別と、受信装置識別と、装置出力時刻と、装置入力時刻等を有している。
【0052】
送出装置識別には、伝送伝搬時間測定信号を送出する装置を特定するため、例えばMAC(Media Access Control)アドレスやIPアドレス等の識別情報が付加される。また、受信装置識別には、伝送伝搬時間測定信号を受信した装置のMACアドレスやIPアドレス等の識別情報が付加される。また、装置出力時刻1,2は、各装置における伝送伝搬時間測定信号を出力する際の出力時刻が付加される。また、装置入力時刻1,2には、各装置における伝送伝搬時間測定信号を入力した際に入力時刻が付加される。
【0053】
これらの装置識別情報及び時刻情報を用いることにより、受信装置13及び信号終端装置12の特定と、伝搬時間の測定の際に各装置内における処理時間を含むことなく、線路上での信号の伝搬時間のみを高精度に測定することができる。なお、受信装置を複数経由する場合には、装置入力時刻、装置出力時刻が随時付加される。また、受信装置13と前記信号終端装置12との間で中継装置により信号を中継する場合には、その中継装置の識別情報と入出力時刻を付加してもよい。
【0054】
次に、本発明における制御用フォーマットについて説明する。図3は、本発明における制御用フォーマットの一例を示す図である。なお、制御用フォーマットによる制御用信号(パケット)を用いて、例えば受信装置13から信号終端装置12に受信許可リクエストや、信号終端装置12からの受信装置13に対して放送区域内であるか否かの通知等を行う。
【0055】
図3に示す制御用フォーマットは、ヘッダ31と、パケット識別32と、受信装置識別33とを有している。ここで、ヘッダ31は、上述したヘッダ21と同様に宛先アドレスや送信元アドレス等を有している。また、パケット識別32は、受信装置識別33に付加された装置に対する制御の内容を識別するための識別情報を有している。
【0056】
例えば、パケット識別が“1”の場合は、制御用信号が受信装置識別33に示された受信装置から信号終端装置12に対する受信許可リクエストであることを示し、また、パケット識別が“2”の場合は、制御用信号が放送区域内であるか否かを判断して信号終端装置12から受信装置識別33に示された受信装置へ通知する信号(例えば、許可/不許可等)であることを示す。
【0057】
また、受信装置識別33は、受信装置固有の識別情報(例えば、受信装置13のMACアドレスやIPアドレス等)を用いて対象となる受信装置13を特定する。なお、受信装置識別33には、信号終端装置12の識別情報が付加されることもある。
【0058】
次に、本発明における信号終端装置12と、受信装置13とにおける具体的な装置構成とその処理動作について説明する。なお、本発明では、信号終端装置12と、受信装置13との線路長を測定するにあたり、信号終端装置12側で測定する場合と受信装置13側で測定する場合とがある。そのため以下の説明では、それぞれについての実施形態について説明する。
【0059】
<第1の実施形態:信号終端装置が受信装置との間の伝搬時間を測定する場合>
<第1の実施形態:信号終端装置>
図4は、第1の実施形態における信号終端装置の一構成例を示す図である。図4に示す信号終端装置40は、第1送受信手段41と、比較手段42と、伝搬時間測定信号生成手段43と、第2送受信手段44と、線路長推定手段45と、分配手段46とを有するよう構成されている。
【0060】
第1送受信手段41は、ヘッドエンドから受信装置に出力するための放送信号(例えば、デジタル放送信号やコンテンツ信号等を含む)を受信する。また、第1送受信手段41は、受信した放送信号を分配手段46に出力する。なお、第1送受信手段41は、比較手段42から得られる線路長と閾値(設定値)との比較結果をヘッドエンド等に送信することもできる。
【0061】
比較手段42は、線路長推定手段45により得られる線路長に基づいて予め設定されている閾値との比較を行う。また、比較手段42は、比較結果を分配手段46に出力する。また、必要に応じて比較結果を第1送受信手段41に出力する。なお、比較手段42は、線路長推定手段45から線路長情報を取得していない場合、閾値との比較ができない。
【0062】
そのため、比較手段42は、伝搬時間測定信号生成手段43に線路長を測定するための線路長測定リクエストを出力して、伝搬時間測定信号を生成させることで、受信装置との間で伝搬時間測定信号の送受信を行い、線路長推定手段45から線路長を取得することができる。これにより、比較手段42は、所定の時間間隔で定期的に線路長の測定を行うことができる。また、放送信号の提供前や提供時において、受信装置を監視して不正受信等を防止することができる。
【0063】
伝搬時間測定信号生成手段43は、第2送受信手段44から送られる受信装置からの受信許可リクエストや、比較手段42からの線路長測定リクエストに対して伝搬時間測定信号を生成し、第2送受信手段44に出力する。なお、伝搬時間測定信号生成手段43は、伝搬時間測定信号の出力時に図2に示す“送出装置識別”に信号終端装置の識別情報を付加し、また“装置出力時刻1”に時刻を付加する。
【0064】
第2送受信手段44は、受信装置から図3に示す制御用信号による受信許可リクエスト信号を受信すると伝搬時間測定信号生成手段43に出力する。また、第2送受信手段44は、伝搬時間測定信号生成手段43より得られる伝搬時間測定信号をリクエストのあった受信装置に出力する。また、第2送受信手段44は、受信装置から受信した伝搬時間測定信号を線路長推定手段45に出力する。更に、第2送受信手段44は、分配手段46より得られる放送信号等を対応する受信装置に出力する。なお、第2送受信手段44は、放送信号と伝搬時間測定信号とを同時に出力する場合は、放送信号と伝搬時間測定信号とを多重化した信号を送信する。
【0065】
線路長推定手段45は、第2送受信手段44により得られる伝搬時間測定信号に基づいて線路長を推定する。なお、第1の実施形態における線路長の具体的な推定手法については後述する。また、線路長推定手段45は、推定された線路長を比較手段42に出力する。
【0066】
分配手段46は、比較手段42により得られる比較結果に基づいて第1送受信手段41により得られる放送信号について受信装置に受信を許可させるか否かを判断し、図3に示す制御用信号を生成して、第2送受信手段44から受信装置に送信する。
【0067】
また、分配手段46は、送信を許可する場合には第2送受信手段44により放送信号を受信装置に送信する。
【0068】
<第1の実施形態:受信装置>
次に、第1の実施形態における受信装置について説明する。図5は、第1の実施形態における受信装置の一構成例を示す図である。図5に示す受信装置50は、送受信手段51と、受信時刻取得手段52と、分離手段53と、再生手段54と、時刻付加手段55と、起動手段56と、リクエスト生成手段57とを有するよう構成されている。
【0069】
送受信手段51は、リクエスト生成手段57から得られる受信許可リクエスト信号を信号終端装置40に出力する。また、送受信手段51は、信号終端装置40から得られる伝搬時間測定信号を受信時刻取得手段52に出力する。更に、時刻付加手段55より得られる伝搬時間測定信号を信号終端装置40に出力する。
【0070】
受信時刻取得手段52は、送受信手段51より信号が入力された時点の時刻を取得し、その時刻を時刻付加手段55に出力する。また、受信時刻取得手段52は、入力した信号は分離手段57に出力する。
【0071】
分離手段53は、入力した信号に含まれる放送信号(MPEG−2 TS)と、伝搬時間測定信号とを分離する。また、分離手段53は、放送信号を再生手段54に出力し、伝搬時間測定信号を時刻付加手段55に出力する。また、再生手段54は、分離手段53により得られる放送信号を再生してユーザに視聴させる。
【0072】
また、時刻付加手段55は、分離手段53から得られる伝搬時間測定信号について、受信装置50の識別情報を図2に示す“受信装置識別”に付加し、受信時刻取得手段52により得られる時刻を“装置入力時刻1”に付加する。更に、時刻付加手段55は、伝搬時間測定信号を出力する際に図2に示す“装置出力時刻2”に送出時刻を付加する。また、時刻付加手段55は、時刻情報等を付加した伝搬時間測定信号を信号終端装置40に送信するため送受信手段51に出力する。
【0073】
また、起動手段56は、受信装置50の電源のON/OFFを行う。また、起動手段56は、受信装置50の起動後に、受信許可のリクエストを信号終端装置40に対して行うことができるように、電源ON時の制御情報をリクエスト生成手段57に出力する。これにより、受信許可リクエスト信号に対する特別な操作や指示を行うことなく、迅速に受信許可又は受信不許可等の結果を取得することができる。
【0074】
リクエスト生成手段57は、起動手段56からの制御信号に基づいて、受信許可リクエスト信号を生成し送受信手段51に出力する。また、リクエスト生成手段57は、信号終端装置40に対して所望するチャンネルをリクエストするチャンネルリクエスト信号も生成することができる。
【0075】
<第1の実施形態:線路長の推定手法>
ここで、第1の実施形態に基づく線路長の推定手法について説明する。
【0076】
信号終端装置40と受信装置50との間の往復時間RTTは、受信装置の識別情報としての番号をnとし、信号終端装置と受信装置nとの間の片側伝搬時間をtnとし、受信装置での処理時間(伝搬時間測定信号において、装置出力時刻2−装置入力時刻1)をtrnとすると、次式で示される。
RTT=2×tn+trn [sec]
したがって、片側伝搬時間tnは、
tn=(RTT−trn)/2 [sec]
となる。
【0077】
なお、時刻情報の分解能をマイクロ秒(μsec)にすることにより、線路長の測定の分解能は300メートル単位まで向上させることができる。また、線路長dは、vを伝送速度とし、cを真空中の光速度とし、nを光ファイバーの屈折率とすると、
d=v×tn [m]
で表される(なお、v=c/n,c=3×10 [m/s]とする。)。
【0078】
また、同軸ケーブルの場合には、cに波長短縮率(例えば、約0.67等)を乗じることにより伝送速度が算出できる(v=c×0.67 [m/s])。
【0079】
以上により、受信装置内での処理時間を除いたより高精度な伝送時間を算出することができる。また、信号終端装置と受信装置との間の距離(線路長)を高精度に推定することができる。
【0080】
なお、線路長の推定方法としては、上述した線路長の算出を所定の受信装置に対する複数の伝搬時間測定信号を用いて行い、それぞれ伝搬時間測定信号得られる線路長のうちで、最小値又は平均値を線路長として推定してもよい。これにより、より正確な線路長を推定することができる。
【0081】
<第1の実施形態:出力制御処理>
次に、第1の実施形態における信号終端装置の出力制御処理について、フローチャートを用いて説明する。図6は、第1の実施形態における信号終端装置の出力制御処理の一例を示すフローチャートである。なお、図6では、信号終端装置が、受信装置との間の伝搬時間を測定して放送区域内であるか否かを判断し、放送区域内にあるときには放送信号の出力を行う形態を示すものである。
【0082】
まず、受信装置の電源を投入された際に信号終端装置に対して受信許可を得るため、上述の図3に示す受信許可リクエスト信号を受信する(S01)。次に、図2に示す伝搬時間測定信号を生成し(S02)、生成した図2に示す伝搬時間測定信号を、リクエスト信号を送信した受信装置に対して出力する(S03)。その際、伝搬時間測定信号に図2に示す“送出装置識別”に信号終端装置の識別情報を付加し、“装置出力時刻1”に送出時刻を付加する。
【0083】
次に、信号終端装置は、受信装置において“受信装置識別”、“装置入力時刻1”、及び“装置出力時刻2”が付加された伝搬時間測定信号を受信する(S04)。このとき、伝搬時間測定信号に“装置入力時刻2”を付加してもよい。
【0084】
次に、信号終端装置は、伝搬時間測定信号に付加された時刻情報等により伝送時間を算出し、線路長を推定する(S05)。また、S05にて取得した線路長に基づいて受信装置が放送対象区域内にあるか否かを判断する(S06)。具体的には、例えば、S05により推定された線路長と予め設定された閾値(例えば、500m等)とを比較し、閾値以下である場合は、受信装置が放送対象区域内にあるものとし、閾値を超える場合は、放送対象範囲内にないとすることにより判断を行う。
【0085】
ここで、S06において、放送対象区域内にある場合(S06において、YES)、図3に示す制御用信号のフォーマットに基づいて受信許可信号を生成して受信許可リクエストのあった受信装置に出力する(S07)。また、受信許可に基づいて放送信号の出力を行うこともできる(S08)。
【0086】
また、S06において、放送対象範囲内にない場合(S06において、NO)、図3に示す制御用信号のフォーマットに基づいて受信不許可信号を出力する(S09)。
【0087】
これにより、線路長を高精度に推定することができる。また、推定された線路長の情報に基づいてデジタル放送等の受信動作を有効とするか否か等を判断することができ、放送区域内に限定して動作する受信装置を提供することができる。
【0088】
ここで、第1の実施形態は、信号終端装置により出力制御を行っているが、本発明においてはこの限りではなく、例えば受信装置で伝搬時間測定信号の生成、閾値との比較、出力制御等の処理を行うこともできる。次に、上述の内容を第2の実施形態として、装置構成及び処理内容について、図を用いて説明する。
【0089】
<第2の実施形態:受信装置が信号終端装置との間の伝搬時間を測定する場合>
<第2の実施形態:信号終端装置>
図7は、第2の実施形態における信号終端装置の一構成例を示す図である。図7に示す信号終端装置70は、受信手段71と、分配手段72と、送受信手段73と、時刻付加手段74とを有するよう構成されている。
【0090】
受信手段71は、ヘッドエンドから所定の放送信号を受信する。また、受信手段71は、受信した放送信号を分配手段72に出力する。
【0091】
分配手段72は、受信手段71から得られる放送信号を送信可能な受信装置の全てについて送信するため、各受信装置のアドレス情報に基づいて送受信手段73に出力する。
【0092】
送受信手段73は、受信装置から得られる伝搬時間測定信号を受信すると、その信号を時刻付加手段74に出力する。また、送受信手段73は、時刻付加手段74により得られる伝搬時間測定信号を受信装置に出力する。また、送受信手段73は、放送信号と伝搬時間測定信号とを同時に出力する場合は、放送信号と伝搬時間測定信号とを多重化した信号を送信する。
【0093】
時刻付加手段74は、送受信手段73より得られる伝搬時間測定信号に対して信号終端装置の識別情報を図2に示す“受信装置識別”に付加し、また、入力時刻を“装置入力時刻1”に付加し、出力時刻を“装置出力時刻2”に付加して、送受信手段73に出力する。
【0094】
<第2の実施形態:受信装置>
次に、第2の実施形態における受信装置の構成について説明する。図8は、第2の実施形態における受信装置の一構成例を示す図である。図8に示す受信装置80は、送受信手段81と、分離手段82と、再生制御手段83と、再生手段84と、線路長推定手段85と、比較手段86と、起動手段87と、伝搬時間測定信号生成手段88とを有するよう構成されている。
【0095】
送受信手段81は、伝搬時間測定信号生成手段88から得られる伝搬時間測定信号を信号終端装置81に出力する。また、送受信手段81は、信号終端装置から得られる信号を分離手段82に出力する。
【0096】
分離手段82は、入力した信号を伝搬時間測定信号と放送信号(MPEG−2 TS)に分離し、伝搬時間測定信号を線路長推定手段85に出力し、放送信号を再生制御手段83に出力する。
【0097】
再生制御手段83は、分離手段82により得られる放送信号を比較手段86から得られる比較結果に基づいて再生手段84に出力するか否かを判断する。また、再生制御手段83は、比較の結果、放送信号を再生することが可能である場合には、再生手段84に放送信号を出力する。また、再生手段84は、再生制御手段83により得られる放送信号を再生してユーザに視聴させる。
【0098】
線路長推定手段85は、分離手段82により得られる伝搬時間測定信号に基づいて線路長を推定する。なお、第2の実施形態における線路長の具体的な推定手法については後述する。
【0099】
比較手段86は、線路長推定手段85により得られる線路長に基づいて受信装置80に予め設定されている閾値との比較を行う。また、比較結果を再生制御手段83に出力する。
【0100】
起動手段87は、受信装置80の電源のON/OFFを行う。また、起動手段87は、受信装置80の起動後に,受信許可のリクエストを信号終端装置70に対して行うことができるように、電源ON時の制御情報を伝搬時間測定信号生成手段88に出力する。これにより、受信許可リクエスト信号に対する特別な操作や指示を行うことなく、迅速に受信許可又は受信不許可等の結果を取得することができる。
【0101】
伝搬時間測定信号生成手段88は、起動手段87により得られる制御情報により図2に示す伝搬時間測定信号を生成し、送受信手段81に出力する。なお、このとき、図2に示す伝搬時間測定信号の“送出装置識別”に受信装置の識別情報を付加し、“装置出力時刻1”に送出時刻を付加する。
【0102】
<第2の実施形態:線路長の推定手法>
次に、第2の実施形態における線路長の推定手法について具体的に説明する。
【0103】
受信装置80と、信号終端装置70間の往復時間RTTは、nを受信装置の識別情報としての番号とし、tnを信号終端装置と受信装置nとの間の片側伝搬時間とし、teを信号終端装置での処理時間(伝搬時間測定信号において、装置出力時刻2−装置入力時刻1)とすると、
RTT=2×tn+te [sec]
となる。したがって、片側伝搬時間tnは、
tn=(RTT−te)/2 [sec]
となる。これにより、線路長は
d=v×tn [m]
となる。
【0104】
また、受信装置が放送区域内であるか否かを判断するために、上述したように推定された線路長dと、閾値との比較を行い、比較結果が放送区域内と判断された場合、受信装置はデジタル放送等の放送信号の再生が可能となる。
【0105】
<第2の実施形態:出力制御処理>
次に、第2の実施形態における受信装置の出力制御処理について、フローチャートを用いて説明する。図9は、第2の実施形態における受信装置の出力制御処理の一例を示すフローチャートである。なお、図9では、受信装置が信号終端装置との伝搬時間を測定して放送区域内であるか否かを判断し、放送区域内にあるときには受信装置の再生動作を可能とする場合の形態を示すものである。
【0106】
まず、受信装置の電源がONされ受信装置が起動する(S21)。次に、受信可能であるか否かを判断するため、図2に示す伝搬時間測定信号を生成し(S22)、生成した伝搬時間測定信号を信号終端装置に出力する(S23)。その際、伝搬時間測定信号に図2に示す“送出装置識別”に受信装置の識別情報を付加し、“装置出力時刻1”に送出時刻を付加する。
【0107】
次に、信号終端装置において“受信装置識別”、“装置入力時刻1”、及び“装置出力時刻2”が付加された伝搬時間測定信号を受信する(S24)。このとき、伝搬時間測定信号に“装置入力時刻2”を付加してもよい。
【0108】
次に、受信装置は、伝搬時間測定信号に付加された時刻情報等により伝送時間を算出し、線路長を推定する(S25)。また、S25にて取得した線路長に基づいて受信装置が放送対象区域内にあるか否かを判断する(S26)。
【0109】
ここで、S26において、放送対象区域内にある場合(S26において、YES)、放送信号の再生を行う(S27)。また、S26にて、放送対象範囲内にない場合(S26において、YES)、処理を終了する。
【0110】
これにより、線路長を高精度に推定することができる。また、推定された線路長の情報に基づいてデジタル放送等の受信動作を有効とするか否か、つまり、信号を再生するか否かを判断することができ、放送区域内に限定して動作する受信装置を提供することができる。
【0111】
ここで、本発明における信号終端装置及び受信装置は、上述した専用の装置構成等を用いて本発明における出力制御処理を行うこともできるが、各構成における処理をコンピュータに実行させることができる実行プログラムを生成し、例えば、汎用のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等にそのプログラムをインストールすることにより、上述した第1又は第2の実施形態における出力制御処理を実現することができる。
【0112】
<ハードウェア構成>
ここで、本発明における出力制御処理が実行可能なコンピュータのハードウェア構成例について図を用いて説明する。図10は、本発明における出力制御処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示す図である。
【0113】
図10におけるコンピュータ本体には、入力装置91と、出力装置92と、ドライブ装置93と、補助記憶装置94と、メモリ装置95と、各種制御を行うCPU(Central Processing Unit)96と、ネットワーク接続装置97とを有するよう構成されており、これらはシステムバスBで相互に接続されている。
【0114】
入力装置91は、ユーザが操作するキーボード及びマウス等のポインティングデバイスを有しており、ユーザからのプログラムの実行等、各種操作信号を入力する。出力装置92は、本発明における処理を行うためのコンピュータ本体を操作するのに必要な各種ウィンドウやデータ等を表示するディスプレイ(モニタ)を有し、CPU96が有する制御プログラムにより出力制御プログラムの実行経過や結果等を表示することができる。
【0115】
ここで、本発明において、コンピュータ本体にインストールされる実行プログラムは、例えば、CD−ROM等の記録媒体98等により提供される。プログラムを記録した記録媒体98は、ドライブ装置93にセット可能であり、記録媒体98に含まれる実行プログラムが、記録媒体98からドライブ装置93を介して補助記憶装置94にインストールされる。
【0116】
補助記憶装置94は、ハードディスク等のストレージ手段であり、本発明における実行プログラムや、コンピュータに設けられた制御プログラム等を蓄積し必要に応じて入出力を行うことができる。
【0117】
CPU96は、OS(Operating System)等の制御プログラム、及びメモリ装置95により読み出され格納されている実行プログラムに基づいて、各種演算や各ハードウェア構成部とのデータの入出力等、コンピュータ全体の処理を制御して、出力制御処理における各処理を実現することができる。プログラムの実行中に必要な各種情報等は、補助記憶装置94から取得することができ、また格納することもできる。
【0118】
ネットワーク接続装置97は、通信ネットワーク等と接続することにより、実行プログラムを通信ネットワークに接続されている他の端末等から取得したり、プログラムを実行することで得られた実行結果又は本発明における実行プログラム自体を他の端末等に提供することができる。
【0119】
上述したようなハードウェア構成により、特別な装置構成を必要とせず、低コストで上述した出力制御処理を実現することができる。また、プログラムをインストールすることにより、容易に出力制御処理を実現することができる。
【0120】
なお、本発明においては、図1に示す分配システムの構成の他にルータ等の中継装置を介して信号終端装置と受信装置とが接続される場合がある。この場合には、伝送時間測定信号に中継される中継装置毎の入出力時刻及び識別情報を付加する。ここで、上述のシステム構成例について図を用いて説明する。図11は、本発明を適用した中継装置を有する分配伝送システムのシステム構成の一例を示す図である。なお、図11では、図1と同様に有線系の分配伝送の一例としてケーブルテレビにおける放送信号の分配伝送を示している。
【0121】
図11に示す有線分配システム110は、ヘッドエンド111と、加入者信号終端装置112と、受信装置113−1〜113−nと、中継装置114−1〜114−mとを有するよう構成されている。なお、図11では、ヘッドエンド111及び加入者信号終端装置112を1つ有し、受信装置113及び中継装置114を複数有しているが、構成については、これに限定されることはなく、各装置が少なくとも1つ有していればよい。
【0122】
図11において、中継装置114−1〜114−mは、それぞれ信号終端装置112及び複数の受信装置113と接続可能であり、線路上の伝送負荷等の影響により、中継装置114が変更されて最適な経路で伝送が行われる。
【0123】
このような構成の場合は、図12に示す中継装置を介して伝送される伝搬時間測定信号の例に示すように、中継装置114が伝搬時間測定信号を受信及び送信した際に、その中継装置の識別情報、入力時刻、出力時刻の組を伝搬時間測定信号に付加する。この付加した情報に基づいて、予め設定された閾値とを対応させておくことにより、より高精度に線路長との比較を実現することができる。また、中継装置114における処理時間を含まない高精度な伝搬時間を測定することができ、また、伝搬時間から線路長を推定することができる。なお、中継装置の識別情報、入力時刻、出力時刻の組は中継される中継装置の数に対応して随時付加される。
【0124】
上述したように本発明によれば、信号終端装置と受信装置との距離(線路長)を高精度に推定し、所定の区域内で放送等の提供を実現することができる。つまり、線路長の情報に基づいて放送信号の受信動作を有効とするか否か又は信号を再生するか否かを判断することができ、放送区域内に限定して動作する受信装置を提供することができる。
【0125】
なお、上述した実施形態は、有線系の分配伝送システムについて説明しているが、本発明においてはこの限りではなく、無線系においても適用することができる。なお、無線系の伝送システムには、信号終端装置という概念が存在しないため、信号終端装置を中継装置に読み替えることで、容易に適用することができる。
【0126】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明を適用した分配伝送システムのシステム構成の一例を示す図である。
【図2】伝搬時間測定用パケットの一例を示す図である。
【図3】本発明における制御用フォーマットの一例を示す図である。
【図4】第1の実施形態における信号終端装置の一構成例を示す図である。
【図5】第1の実施形態における受信装置の一構成例を示す図である。
【図6】第1の実施形態における信号終端装置の出力制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施形態における信号終端装置の一構成例を示す図である。
【図8】第2の実施形態における受信装置の一構成例を示す図である。
【図9】第2の実施形態における受信装置の出力制御処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】本発明における出力制御処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示す図である。
【図11】本発明を適用した中継装置を有する分配伝送システムのシステム構成の一例を示す図である。
【図12】中継装置を介して伝送される伝搬時間測定信号の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0128】
10,110 分配伝送システム
11,111 ヘッドエンド
12,40,70,112 信号終端装置
13,50,80,113 受信装置
21,31 ヘッダ
22 データ
32 パケット識別
33 受信装置識別
41 第1送受信手段
42,86 比較手段
43,88 伝搬時間測定信号生成手段
44 第2送受信手段
45,85 線路長推定手段
46,72 分配手段
51,73,81 送受信手段
52 受信時刻取得手段
53,82 分離手段
54,84 再生手段
55 時刻付加手段
56,87 起動手段
57 リクエスト生成手段
71 受信手段
83 再生制御手段
91 入力装置
92 出力装置
93 ドライブ装置
94 補助記憶装置
95 メモリ装置
96 CPU
97 ネットワーク接続装置
98 記録媒体
114 中継装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの受信装置に対して提供される放送信号を分配して出力するための信号終端装置において、
前記受信装置と前記信号終端装置とにおける信号の伝搬時間を測定するための伝搬時間測定信号を生成する伝搬時間測定信号生成手段と、
前記伝搬時間測定信号生成手段により得られる伝搬時間測定信号を前記受信装置に送信し、前記受信装置から送信した前記伝搬時間測定信号を受信する送受信手段と、
前記送受信手段により得られる前記伝搬時間測定信号に基づいて、前記信号終端装置と前記受信装置との線路長を推定するための線路長推定手段と、
前記線路長推定手段により得られる線路長と、予め設定された閾値とを比較する比較手段とを有することを特徴とする信号終端装置。
【請求項2】
前記伝搬時間測定信号は、
前記受信装置、前記信号終端装置、及び前記受信装置から前記信号終端装置までの間で中継装置により信号を中継する場合には前記中継装置の識別情報と、
前記受信装置、前記信号終端装置、及び前記中継装置における前記伝搬時間測定信号の入力時刻及び出力時刻とを有することを特徴とする請求項1に記載の信号終端装置。
【請求項3】
伝搬時間測定信号生成手段は、
前記受信装置からの受信許可リクエストを受信した場合、又は前記比較手段からの線路長測定リクエストを受信した場合に伝搬時間測定信号を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の信号終端装置。
【請求項4】
前記線路長推定手段は、
前記伝搬時間測定信号生成手段により付加される前記伝搬時間測定信号の出力時刻と、
前記受信装置により付加される前記伝搬時間測定信号の入力時刻及び出力時刻と、
前記受信装置から得られる前記伝搬時間測定信号を受信した入力時刻とに基づいて線路長を推定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の信号終端装置。
【請求項5】
前記線路長推定手段は、
所定の受信装置に対する複数の伝搬時間測定信号から得られる線路長のうち、最小値又は全線路長の平均値を線路長として推定することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の信号終端装置。
【請求項6】
前記比較手段は、
比較結果から前記受信装置が放送区域内であるか否かを判断することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の信号終端装置。
【請求項7】
少なくとも1つの受信装置に対して提供される放送信号を分配して出力するための信号終端装置において、
前記受信装置から送られた前記受信装置と前記信号終端装置とにおける信号の伝搬時間を測定するための伝搬時間測定信号に、前記伝搬時間測定信号の入力時刻及び出力時刻を付加する時刻付加手段と、
前記伝搬時間測定信号を受信し、前記時刻付加手段により得られる伝搬時間測定信号を前記受信装置に送信する送受信手段とを有することを特徴とする信号終端装置。
【請求項8】
信号終端装置から分配して出力される放送信号を受信する受信装置において、
前記信号終端装置により送られた前記受信装置と前記信号終端装置とにおける信号の伝搬時間を測定するための伝搬時間測定信号に、前記伝搬時間測定信号の入力時刻及び出力時刻を付加する時刻付加手段と、
前記伝搬時間測定信号を受信し、前記時刻付加手段により得られる伝搬時間測定信号を前記信号終端装置に送信する送受信手段とを有することを特徴とする受信装置。
【請求項9】
前記受信装置を起動させる起動手段と、
前記起動手段から得られる制御信号により、前記信号終端装置に対して前記放送信号の受信許可リクエストを行うための受信許可リクエスト信号を生成するリクエスト生成手段を有することを特徴とする請求項8に記載の受信装置。
【請求項10】
信号終端装置から分配して出力される放送信号を受信する受信装置において、
前記受信装置と前記信号終端装置とにおける信号の伝搬時間を測定するための伝搬時間測定信号を生成する伝搬時間測定信号生成手段と、
前記伝搬時間測定信号生成手段により得られる伝搬時間測定信号を前記信号終端装置に送信し、前記信号終端装置から送信した前記伝搬時間測定信号を受信する送受信手段と、
前記送受信手段により得られる前記伝搬時間測定信号に基づいて、前記信号終端装置と前記受信装置との線路長を推定するための線路長推定手段と、
前記線路長推定手段により得られる線路長と、予め設定された閾値とを比較する比較手段とを有することを特徴とする受信装置。
【請求項11】
前記比較手段により得られる比較結果に基づいて、前記信号終端装置から得られる前記放送信号の再生制御を行う再生制御手段を有することを特徴とする請求項10に記載の受信装置。
【請求項12】
前記受信装置を起動させる起動手段を有し、
前記伝搬時間測定信号生成手段は、
前記起動手段からの制御信号に基づいて前記伝搬時間測定信号を生成することを特徴とする請求項10又は11に記載の受信装置。
【請求項13】
放送信号を分配して出力させるための信号終端装置と、前記信号終端装置からの信号を受信する受信装置との線路長に基づいて、前記放送信号の出力を制御する処理をコンピュータに実行させるための出力制御プログラムにおいて、
前記受信装置と前記信号終端装置とにおける信号の伝搬時間を測定するための伝搬時間測定信号を生成する伝搬時間測定信号生成処理と、
前記伝搬時間測定信号生成処理により得られる伝搬時間測定信号を、前記受信装置及び前記信号終端装置との間で送受信を行う送受信処理と、
前記送受信処理により得られる前記伝搬時間測定信号に基づいて、前記信号終端装置と前記受信装置との線路長を推定するための線路長推定処理と、
前記線路長推定処理により得られる線路長と、予め設定された閾値とを比較する比較処理とをコンピュータに実行させるための出力制御プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−165872(P2006−165872A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352835(P2004−352835)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】